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【発明の名称】 苗移植機
【発明者】 【氏名】加藤 哲
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【要約】 【課題】この発明の課題は、植付せずに走行することを防止し、補植の必要がないようにして、植付作業全体の効率化並びに省力化を図ることにある。

【解決手段】本発明は、走行車体に対して苗植付部を昇降可能に装備してある苗移植機において、苗植付部の苗植付装置には所定以上の過負荷に起因して該苗植付装置への伝動を断つ安全クラッチを設け、この安全クラッチが「切」作動していることを検出する安全クラッチ作動検出装置と車体の走行を停止させる走行停止装置を設け、前記安全クラッチ作動検出装置により安全クラッチが作動していることの検出に連動して、走行停止装置を走行停止状態に作動させる連動装置を設けてあることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体に対して苗植付部を昇降可能に装備してある苗移植機において、苗植付部の苗植付装置には所定以上の過負荷に起因して該苗植付装置への伝動を断つ安全クラッチを設け、この安全クラッチが「切」作動していることを検出する安全クラッチ作動検出装置と車体の走行を停止させる走行停止装置を設け、前記安全クラッチ作動検出装置により安全クラッチが作動していることの検出に連動して、走行停止装置を走行停止状態に作動させる連動装置を設けてあることを特徴とする苗移植機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、田植機等の苗移植機に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されているように、苗植付作業中、苗植付装置に過負荷が生じて安全クラッチが切られると、優先的にアクセルダウン制御が行われ、安全クラッチが切り作動状態にある間、安全クラッチへのエンジン出力を低くするようにした技術が存在する。
【特許文献1】特開2002−293171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる従来技術のものでは、苗植付作業中、過負荷によって安全クラッチが切れても、機体は走行しており植付作業が継続状態にあるので、欠植が発生し、以後補植の必要性が生じて能率低下を招く問題があった。
【0004】
本発明の課題は、植付せずに走行することを防止し、補植の必要がないようにして、植付作業全体の効率化並びに省力化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0006】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、走行車体に対して苗植付部を昇降可能に装備してある苗移植機において、苗植付部の苗植付装置には所定以上の過負荷に起因して該苗植付装置への伝動を断つ安全クラッチを設け、この安全クラッチが「切」作動していることを検出する安全クラッチ作動検出装置と車体の走行を停止させる走行停止装置を設け、前記安全クラッチ作動検出装置により安全クラッチが作動していることの検出に連動して、走行停止装置を走行停止状態に作動させる連動装置を設けてあることを特徴とする。
【0007】
苗植付作業中、苗植付部の苗植付装置に所定以上の過負荷がかかると、安全クラッチが切り作動される。安全クラッチ作動検出装置が安全クラッチ切り作動状態であることを検出すると、その検出結果に基づき、走行停止装置が自動的に作動して走行が停止される。これによって、植え付けしない状態での走行が防止されるので、以後、補植の必要性がなくなる。
【発明の効果】
【0008】
以上要するに、本発明によれば、植え付けしない状態での走行を防止できるので、補植の必要性がなくなり、植付作業全体の効率化並びに省力化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0010】
図1及び図2は、苗移植機の一例として6条植田植機を示すものであり、車体1の前後には走行車輪としての左右一対の前輪2,2及び後輪3,3が架設されている。車体上前部には上面に操作パネル4aを有する操作ボックス4及びステアリングハンドル5等を有する操縦装置が設置され、また、車体後方部には昇降可能な苗植付部6が装備されている。操縦装置の後側に運転席9が設置され、運転席の下側に田植機の各部に動力を伝達するエンジンEが搭載されている。
【0011】
前記ステアリングハンドル5は、これの回動操作によりステアリング軸16から減速回転される出力軸17、ピットマンア−ム18及び操向ロッド19等を介して左右の前輪2,2を操向させ操舵するようになっている。
【0012】
エンジンEの回転動力は、エンジン出力軸21からベルト22を介して油圧式無段変速装置(HST)23の入力軸24に伝えられ、HST23の出力軸からミッションケ−ス10のミッション入力軸に伝えられるようになっている。
【0013】
なお、前記前輪2,2は、ミッションケ−ス10の側方に変向可能に設けた前輪支持ケ−ス25,25に軸支され、後輪3,3は、ロ−リング支持杆26の左右両端部に取り付けた後輪支持ケ−ス27,27に軸支され、前記ミッションケ−ス10内のミッション装置から後輪伝動軸31を介して動力伝達されるようになっている。ロ−リング支持杆26は、左右のメインフレ−ム28,28の後端を繋ぐ横フレ−ム28aに軸受保持されたロ−リング軸29に左右傾動自在に軸支されている。
【0014】
操作ボックス4近くにはHSTレバ−32が配置され、このHSTレバ−32の「中立」位置を挟む前後方向の操作でHST23を駆動し機体の前進及び後進制御を司るように構成されている。つまり、HSTレバ−32の操作位置をHSTレバ−センサ33で検出し、それに応じてHST電動モ−タ34によりHST23の斜板角度を変えて速度調節するものであり、HSTレバ−32が「中立」位置にある時は速度が零で、HSTレバ−を前進操作域に操作すると中立位置からの距離に応じた速度の前進速となり、後進操作域に操作すると中立位置からの距離に応じた速度の後進速となる。
【0015】
前記HSTレバ−32の握り部には、苗植付部の植付クラッチを入切するボタン式の植付クラッチ入切スイッチ35が設けられている。なお、38は主クラッチブレ−キペダルを示す。
【0016】
苗植付部6は、車体の後部に昇降リンク機構7を介して昇降可能に装着され、昇降用油圧シリンダ8の伸縮作動により昇降する構成としている。
【0017】
また、この苗植付部6には、左右に往復動する苗載タンク11、1株分の苗を切取って土中に植込む植込杆12を有する2条分植付装置13,13…、苗植付面を滑走しながら整地するフロ−ト(サイドフロ−ト)14,14、センサフロ−ト(センタフロ−ト)14S等を備えている。
【0018】
苗植付部6への動力伝達は、前記ミッションケ−ス10内のミッション装置から取り出される作業機用取出伝動軸39を介して車体後部に設けた植付クラッチケ−ス40内に伝達され、そこから植付伝動軸41によって苗植付部6へ伝達されるようになっている。
【0019】
植付クラッチケ−ス40内の構成について説明すると、作業機用取出伝動軸39からの動力が植付クラッチケ−ス40の前側から入力される入力軸42と植付クラッチ43へ伝動する植付クラッチ軸44とが前後方向に互いに平行に設けられ、入力軸42から植付クラッチ軸44へ伝動するギヤ一対を複数備える株間変速ギヤ機構45を設けている。前記株間変速ギヤ機構45の入力軸42側の複数のギヤのうち、いづれのギヤを入力軸42と一体回転させるかを選択するスライドキ−46が入力軸42に設けられ、このスライドキ−46を前後に操作して入力軸42から植付クラッチ軸44への伝動比を切り替えて苗植付部6による植付株間を切り替えるようにしている。前記スライドキ−46を操作するための株間変速シフタ47が株間変速ギヤ機構45の入力軸42部に設けられている。株間変速シフタ47と対向する植付クラッチ軸44部には安全クラッチ48が設けられ、該安全クラッチ48により苗植付部6の後述する苗植付装置13の作動時において石か噛み込んだりしてメカロックが生じていると判断される程度の駆動負荷が植付クラッチ軸44にかかると伝動を断つようになっている。なお、安全クラッチ48の切れる荷重の調整は、調節ナット49を回転調節することで、該調節ナット49と一体回転する調節軸50を介して安全クラッチスプリング受け板51を前後移動させ、安全クラッチスプリング52の圧縮荷重を変更するようにしている。
【0020】
植付クラッチ43は、前側の駆動クラッチ体53と後側の受動クラッチ体54とを備えて構成され、植付クラッチシフタア−ム55の回動により前記駆動クラッチ体53を植付クラッチ軸44に沿って前後操作して伝動の入切を行う構成となっている。受動クラッチ体54は植付クラッチ軸44の延長線上で植付クラッチケ−ス40の後側から突出する出力軸56と一体の部材で構成され、該出力軸56から植付伝動軸41へ伝動する構成である。植付クラッチシフタア−ム55の回動操作により、該植付クラッチシフタア−ム55と一体で回動する定位置停止用ア−ム57が植付クラッチ軸44及び出力軸56の回転により受動クラッチ体54の外周に設けた係合溝54aに係合する位置にくると、更に植付クラッチシフタア−ム55が回動して駆動クラッチ体53を非伝動位置まで前側に移動できる構成になっている。従って、植付クラッチ43は定位置停止クラッチの機能をもつ構成である。
【0021】
植付クラッチシフタア−ム55は、植付クラッチケ−ス40の一側に設けた電動用植付クラッチモ−タ60の駆動で作動する。植付クラッチモ−タ60のピニオン61は、植付クラッチシフタア−ム軸62と一体回転するシフタギヤ63に噛み合う構成となっている。植付クラッチシフタア−ム軸62と一体回転するカム板64の突起64aを検出することにより、植付クラッチ43の伝動状態、非伝動状態を検出する伝動検出スイッチ65及び非伝動検出スイッチ66が設けられている。
【0022】
植付クラッチ43の駆動クラッチ爪67及び受動クラッチ爪68は、図5に示すような形状で、図5(a)(b)のように係脱自在な構成としている。
【0023】
前記受動クラッチ体54と一体回転する出力軸56から植付伝動軸41への伝動経路中には、植付伝動軸の回転、非回転状態を検出する植付伝動軸回転センサ70が設けられ、この植付伝動軸回転センサ70による植付伝動軸41の非回転状態検出結果に基づき、制御部71から出力されるHST電動モ−タ34の作動によりHSTレバ−センサ値が中立位置となるよう連動制御する構成としている。 更に、図8に示す制御回路図において、HST電動モ−タ34及び植付クラッチモ−タ60は、制御部71によって作動制御されるようになっており、この制御部71には、前記HSTレバ−(位置)センサ33、植付クラッチ入切スイッチ35、植付伝動検出スイッチ65、植付非伝動検出スイッチ66、植付伝動軸回転センサ70等が接続されてあり、各種の検出情報に基づいてHST電動モ−タ34及び植付クラッチモ−タ60が作動制御される。つまり、HSTレバ−32の操作によってHSTレバ−センサ33が操作位置を検出し、その検出値に応じてHST電動モ−タ34が作動して走行速度が変速制御される。この時、植付クラッチ入切スイッチ35によって植付クラッチ43への「入」操作状態にあるときには、植付伝動検出スイッチ65がONになるよう植付クラッチモ−タ60へ出力される。そして、この作業中における苗植付装置13への過負荷に起因して安全クラッチ48が切れると、植付伝動軸回転センサ70が植付伝動軸41の非回転状態を検出し、この検出結果に基づき、HST電動モ−タ34へ出力され、HST23が中立に戻ることによって機体の走行は停止される。
【0024】
なお、図4中、前記植付クラッチケ−ス40内の入力軸42側には、施肥クラッチ75が設けられ、該入力軸42から施肥クラッチ75を介して入力軸42の延長線上に設けた施肥出力軸76へ伝動し、該施肥出力軸76と一体回転するクランクア−ム77を介して施肥装置の肥料繰出部へ伝動する構成となっている。
【0025】
次に、図10及び図11に示す実施例について説明する。
【0026】
制御部71の入力側には、HSTレバ−32の操作位置を検出するHSTレバ−センサ33、機体の前後傾斜を検出する前後傾斜センサ80、オペレ−タが運転席に着座状態で運転しているか否かを検出する着座センサ81が接続されてあり、これら各種の検出情報に基づいて制御部71の出力側に設けられたHST電動モ−タ34が作動制御されるようになっている。つまり、HSTレバ−32の操作によってHSTレバ−センサ33が操作位置を検出し、その検出値に応じてHST電動モ−タ34が作動して走行速度が変速制御される。そこで、機体の前後方向の傾斜角が所定値以上に大きく傾斜すると、前後傾斜センサ80による傾斜角検出結果に基づき、変速(操作)時におけるHST電動モ−タ34の作動速度(回転速度)が遅くなるように制御される。これによって畦越え時等での急激な走行速度の変化による危険を回避でき、安全性が確保される。また、オペレ−タが運転席に着座していない時には、畦での脱出時等において急に速度変化があると危険であるため、着座センサ81の検出結果に基づき、HST電動モ−タ34の作動速度がダウン制御される。更に、機体後進時は後方確認が必要で急に走行速度が変化(増速)すると危険であるため、HSTレバ−センサ値が「後進」状態にあるときには変速時の走行速度変化が小さくなるように制御して安全性の向上を図るようにしている。
【0027】
図12に示す制御手段においては、前後(又は左右)傾斜センサ80が機体の所定角以上の傾斜を検出すると、図13(イ)に示すような低速域での変速時にHST23の変速比に対してエンジン回転が大きくなる「エンジン優先モ−ド」で、HSTレバ−センサ値に基づきアクセルモ−タ82、HST電動モ−タ34へ出力するようにしている。また、機体の傾斜が所定角以上に達しない場合には、図13(ロ)に示すような「通常モ−ド」で、HSTレバ−センサ値に基づいてアクセルモ−タ82、HST電動モ−タ34へ出力する(図14に示すフロ−チャ−ト参照)。要するに、機体が所定角以上に傾いた場合には、高速側への変速時にはエンジン回転が優先して上昇することで、走行負荷に応じて変速(増速)が緩やかに行われることになるため、十分な走行駆動力を得ることができると共に、危険を未然に回避することができる。
【0028】
また、図15に示すようにエンジン優先モ−ド(a)を変速域に拘らず変速時にHST23の変速比の変化に対してエンジン回転の変化が大きくなるように設定し、畦越え時やアユミによるトラックへの登坂時等において、前後傾斜センサ80によって機体の前後傾斜角が所定角以上「前上がり」であることを検出すると、この検出結果に基づき、エンジン優先モ−ド(a)で、アクセルモ−タ82、HST電動モ−タ34へ出力し(図16に示すフロ−チャ−ト参照)、HSTレバ−の動きに対しアクセル側の動きを大きくするように制御してもよい。これによれば、変速域に拘らず十分な走行駆動力を得ることができるので、畦越えやトラックへの登坂が容易で安全に行うことができる。
【0029】
図17及び図18に示す実施例では、ボンネット85を支点P周りに揺動開放すると、この開放動作に連動して駐車ブレ−キ86が効くように連動ワイヤ87等を介して連動連結している。ボンネット内には、コントロ−ラ88やヒュ−ズボックス89、バッテリ−90等が内装されているため、これらのメンテ作業が機体を走行させることなく安全に行なえる。
【0030】
図19及び図20に示す実施例について説明する。
【0031】
制御装置91の入力側には、圃場の前後方向の凹凸変化を検出する前後傾斜角センサ92、苗植付部の左右傾斜を検出する植付部ロ−リングセンサ93が接続されている。植付部ロ−リングセンサ93のセンサ値が制御装置91に入力され、制御装置91により出力側の植付部ロ−リング用電磁バルブ94を作動してロ−リング制御するようになっている。植付部ロ−リングセンサ値が大きく変化するとき、又は頻繁に変化するときには、ロック用ソレノイド95が作動して後輪のロ−リング状態をロックして走行姿勢を安定させるようにしている。また、圃場の前後の凹凸変化が激しく前後傾斜角が大きく変化するとき、又は頻繁に変化するときには、前後傾斜角センサ92の検出値に基づき、前記ロック用ソレノイド95を作動し後輪のロ−リング状態をロックして直進性を良好に維持するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】田植機の側面図
【図2】同上平面図
【図3】同上要部の平面図
【図4】植付クラッチケ−スの側断面図
【図5】植付クラッチ要部の作用面図(a)(b)
【図6】植付クラッチケ−スと植付クラッチモ−タとの関係側面図
【図7】同上背面図
【図8】制御ブロック図
【図9】フロ−チャ−ト
【図10】制御ブロック図
【図11】フロ−チャ−ト
【図12】制御ブロック図
【図13】エンジン回転数とHST変速比との関係グラフ
【図14】フロ−チャ−ト
【図15】エンジン回転数とHST変速比との関係グラフ
【図16】フロ−チャ−ト
【図17】田植機の一部の側面図
【図18】同上一部の作用側面図
【図19】制御ブロック図
【図20】フロ−チャ−ト
【符号の説明】
【0033】
1 走行車体 6 苗植付部
13 苗植付装置 23 HST
32 HSTレバ− 33 HSTレバ−センサ
34 HST電動モ−タ 35 植付クラッチ入切スイッチ
40 植付クラッチケ−ス 41 植付伝動軸
43 植付クラッチ 48 安全クラッチ
60 植付クラッチモ−タ 65 植付伝動検出スイッチ
66 植付非伝動検出スイッチ 70 植付伝動軸回転センサ
71 制御部
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市馬木町700番地
【出願日】 平成16年5月13日(2004.5.13)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−323528(P2005−323528A)
【公開日】 平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願番号】 特願2004−143808(P2004−143808)