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【発明の名称】 苗移植機
【発明者】 【氏名】岡田 卓也
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】塩崎 孝秀
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】鈴木 隆
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】草本 英之
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】矢野 省三
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】文田 博史
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【要約】 【課題】圃場に苗を植付ける苗植付装置を備える苗植付部を走行車体に装着し、原動機からの動力を植付用伝動経路を介して走行車体の走行速度に比例した速度で苗植付部へ伝動する構成とし、前記植付用伝動経路には苗を植付ける周期に合わせて苗植付装置を不等速で作動させる不等速伝動機構を設けた苗移植機において、各設定植付株間に対応してより適切な不等速伝動比で苗植付装置を不等速作動させて、設定株間に拘らず苗の植付姿勢を適正に安定させることを課題とする。

【解決手段】不等速伝動歯車対33c,33dを複数設け、該複数の不等速伝動歯車対33c,33dを介して苗植付部へ不等速伝動する第一伝動状態と、前記複数の不等速伝動歯車対33c,33dのうちの一部の不等速伝動歯車対33cのみを介して苗植付部へ不等速伝動する第二伝動状態とに切り替えるスライドキ−34を設けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に苗を植付ける苗植付装置37を備える苗植付部4を走行車体2に装着し、原動機13からの動力を植付用伝動経路を介して走行車体2の走行速度に比例した速度で苗植付部4へ伝動する構成とし、前記植付用伝動経路には苗を植付ける周期に合わせて苗植付装置37を不等速で作動させる不等速伝動機構33c,33dを設けた苗移植機において、前記不等速伝動機構33c,33dを複数設け、該複数の不等速伝動機構33c,33dを介して苗植付部4へ不等速伝動する第一伝動状態と、前記複数の不等速伝動機構33c,33dのうちの一部の不等速伝動機構33cのみを介して苗植付部4へ不等速伝動する第二伝動状態とに切り替える切替機構34,35を設けた苗移植機。
【請求項2】
複数の不等速伝動機構33c,33dをそれぞれ一対の不等速伝動歯車により構成すると共に、植付用伝動経路に一定の速比で伝動する一対の等速伝動歯車により等速伝動機構33a,33b,33e,33fを構成し、切替機構34,35により不等速伝動機構33c,33dを介さずに等速伝動機構33a,33bのみを介して苗植付部4へ等速伝動する等速伝動状態に切替可能に構成した請求項1に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機等の苗移植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場に苗を植付ける苗植付装置を備える苗植付部を走行車体に装着し、原動機からの動力を植付用伝動経路を介して走行車体の走行速度に比例した速度で苗植付部へ伝動する構成とし、前記植付用伝動経路には苗を植付ける周期に合わせて苗植付装置を不等速で作動させる単一の不等速伝動機構を設けた苗移植機において、不等速伝動機構を一対の不等速伝動歯車により構成すると共に、植付用伝動経路に一定の速比で伝動する一対の等速伝動歯車により等速伝動機構を構成し、不等速伝動機構を介して苗植付部へ不等速伝動する不等速伝動状態と、不等速伝動機構を介さずに等速伝動機構のみを介して苗植付部へ等速伝動する等速伝動状態とに切り替える切替機構を設けたものがある(特許文献1参照。)。
【0003】
この苗移植機においては、株間変速装置により走行速度に対して苗植付部の作動速度を低速にして広い株間で苗を植え付けるとき、切替機構により不等速伝動状態に切り替えると、苗植付装置が土中に突入して苗を植え付けるタイミングで速く作動するように該苗植付装置を不等速で作動させることができ、苗植付装置が土中に突入した状態で機体の走行によりひきずられて土壌の植付穴が不必要に大きくならないようにして植付穴の適正化を図ることにより、苗の植付姿勢を適正に安定させるようになっている。
【特許文献1】特開2004ー71号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術によると、広い株間で苗を植え付けるときに切替機構により不等速伝動状態に切り替えることができるが、不等速伝動状態の不等速伝動比を変更することができないので、株間変速装置による株間の設定変更範囲が広くなったり設定可能な株間が多くなると、各設定株間に対応して適切な不等速伝動比で苗植付装置を不等速作動させることを要する。
【0005】
従って、この発明は、各設定株間に対応してより適切な不等速伝動比で苗植付装置を不等速作動させて、設定株間に拘らず苗の植付姿勢を適正に安定させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するべく次の技術的手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1に係る発明は、圃場に苗を植付ける苗植付装置37を備える苗植付部4を走行車体2に装着し、原動機13からの動力を植付用伝動経路を介して走行車体2の走行速度に比例した速度で苗植付部4へ伝動する構成とし、前記植付用伝動経路には苗を植付ける周期に合わせて苗植付装置37を不等速で作動させる不等速伝動機構33c,33dを設けた苗移植機において、前記不等速伝動機構33c,33dを複数設け、該複数の不等速伝動機構33c,33dを介して苗植付部4へ不等速伝動する第一伝動状態と、前記複数の不等速伝動機構33c,33dのうちの一部の不等速伝動機構33cのみを介して苗植付部4へ不等速伝動する第二伝動状態とに切り替える切替機構34,35を設けた苗移植機とした。
【0008】
従って、請求項1に係る苗移植機は、走行車体2により機体を走行させながら原動機13からの動力を植付用伝動経路を介して走行車体2の走行速度に比例した速度で苗植付部4へ伝動して該苗植付部4を作動させることにより、苗植付装置37が圃場に苗を植付けていく。そして、切替機構34,35により、複数の不等速伝動機構33c,33dを介して苗植付部4へ不等速伝動する第一伝動状態と、前記複数の不等速伝動機構33c,33dのうちの一部の不等速伝動機構のみ33cを介して苗植付部4へ不等速伝動する第二伝動状態とに切り替えることができ、苗植付装置37を異なる不等速伝動比による伝動で作動させることができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、複数の不等速伝動機構33c,33dをそれぞれ一対の不等速伝動歯車により構成すると共に、植付用伝動経路に一定の速比で伝動する一対の等速伝動歯車により等速伝動機構33a,33b,33e,33fを構成し、切替機構34,35により不等速伝動機構33c,33dを介さずに等速伝動機構33a,33bのみを介して苗植付部4へ等速伝動する等速伝動状態に切替可能に構成した請求項1に記載の苗移植機とした。
【0010】
従って、請求項2に係る苗移植機は、請求項1に係る苗移植機の作用に加えて、苗植付装置37の作動速度を複数の不等速伝動比に切り替える同一の切替機構34,35により、苗植付装置37への伝動を等速伝動状態に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0011】
よって、請求項1に係る苗移植機は、切替機構34,35により苗植付装置37を異なる不等速伝動比で作動させることができるので、比較的広い株間に設定されているときは大きい不等速伝動比で苗植付装置37へ伝動し、比較的狭い株間に設定されているときは小さい不等速伝動比で苗植付装置37へ伝動することができ、設定株間に拘らず、より適切な不等速伝動比で苗植付装置37を不等速作動させて、苗植付装置37による土壌の植付穴の大きさ(苗植付装置37の土中でのひきずり量)を均一化でき、苗の植付姿勢を適正に安定させることができる。
【0012】
また、請求項2に係る苗移植機は、請求項1に係る苗移植機の効果に加えて、同一の切替機構34,35により苗植付装置37への伝動を等速伝動状態に切り替えることができるので、第一伝動状態、第二伝動状態並びに等速伝動状態の切り替えが容易に行え、株間の設定変更範囲が広くなったり設定可能な株間が多くなっても、各設定株間に対応してより適切な伝動比で苗植付装置37を作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の一形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1及び図2は、施肥装置付きの乗用型の田植機1を示すものであり、この乗用型の田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0015】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪6及び後輪7を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース8が配置され、そのミッションケース8の左右側方に前輪ファイナルケース9が設けられ、該前輪ファイナルケース9の変向可能な前輪支持部9aから外向きに突出する前輪車軸に前輪6が取り付けられている。また、ミッションケース8の背面部にメインフレーム10の前端部が固着されており、そのメインフレーム10の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸11を支点にして後輪ギヤケース12がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース12から外向きに突出する後輪車軸に後輪7が取り付けられている。
【0016】
原動機となるエンジン13はメインフレーム10の上に搭載されており、該エンジン13の回転動力が、第一ベルト伝動装置14を介して正逆転切替可能な伝動装置となる油圧式の前後進無段変速装置(HST)15へ入力される。そして、該前後進無段変速装置(HST)15からの出力が第二ベルト伝動装置16を介してミッションケース8に伝達される。ミッションケース8に伝達された回転動力は、該ケース8内の伝動分岐部8aで走行用伝動経路と植付用伝動経路とに分岐して伝動され、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース9に伝達されて前輪6を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース12に伝達されて後輪7を駆動する。また、外部取出動力は、取出伝動軸17を介して走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース18に伝達され、それから植付伝動軸19によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構(図示せず)によって施肥装置5へ伝動される。
【0017】
エンジン13の上部はエンジンカバー20で覆われており、その上に座席21が設置されている。座席21の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット22があり、その上方に前輪6を操向操作するハンドル23が設けられている。座席21の右側には、前記前後
進無段変速装置(HST)15を操作する前後進変速レバー24が設けられている。また、ハンドル23の近傍には、苗植付部4の昇降操作及び作動の入切操作がおこなえる植付昇降操作レバー25が設けられている。エンジンカバー20及びボンネット22の下端左右両側は水平状のフロアステップ26になっている。また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台27が設けられている。
【0018】
植付クラッチケース18内の構成について説明すると、取出伝動軸17からの動力が植付クラッチケース18の前側から入力される入力軸30と植付クラッチ31へ伝動する植付クラッチ軸32とが前後方向に互いに平行に設けられ、入力軸30と植付クラッチ軸32との間に歯車対33a〜33fを複数(6個)備える株間変速歯車部33を設けている。尚、この株間変速歯車部33が、株間変速装置を構成している。
【0019】
前記6個の歯車対33a〜33fのうち、最前2個及び最後2個の計4個の歯車対33a,33b,33e,33fは、等速伝動歯車で構成され、等速伝動機構となっている。この4個の等速伝動歯車対33a,33b,33e,33fのそれぞれの伝動比(入力軸30側の歯車の歯数を植付クラッチ軸32側の歯車の歯数で除した値)は、前側に配置された歯車対ほど大きくなっており、前側に配置された歯車対ほど植付クラッチ軸32側の歯車を高速回転させる構成となっている。尚、それぞれの等速伝動歯車対33a,33b,33e,33fにおいては、入力軸30側の歯車が駆動側歯車となり、植付クラッチ軸32側の歯車が従動側歯車となっている。これらの等速伝動歯車対33a,33b,33e,33fで挟まれた前から3乃至4個目の歯車対33c,33dは、偏心歯車すなわち不等速歯車で構成され、不等速伝動機構となっている。この2個の不等速伝動歯車対33c,33dにおいては、入力軸30側と植付クラッチ軸32側との歯車は、同じ形状で歯数が同一であり、一方の歯車の1回転につき他方の歯車が1回転する。尚、前側の不等速伝動歯車対33cは、入力軸30側の歯車が駆動側歯車となり、植付クラッチ軸32側の歯車が従動側歯車となっている。一方、後側の不等速伝動歯車対33dは、植付クラッチ軸32側の歯車が駆動側歯車となり、入力軸30側の歯車が従動側歯車となっている。また、この前後の不等速伝動歯車対33c,33dの入力軸30側の両歯車は、一体回転する構成となっている。また、植付クラッチ軸32に外嵌される筒軸41a,41bを前後に2個設けており、前側の筒軸41aは全6個の歯車対33a〜33fのうちの前側3個の歯車対33a〜33cの植付クラッチ軸32側の計3個の歯車と一体回転するように設けられ、後側の筒軸41bは残りの後側3個の歯車対33d〜33fの植付クラッチ軸32側の計3個の歯車と一体回転するように設けられている。
【0020】
前記株間変速歯車部33の入力軸30側の複数の歯車は入力軸30に遊転するように設けられ、前記複数の歯車のうちのどの歯車を入力軸30と一体回転させるかを選択する切替機構となるスライドキー34が入力軸30に設けられ、このスライドキー34を前後に操作して株間変速歯車部33における伝動比(伝動経路)を切り替えて変速し、走行速度に対する苗植付部の作動速度を変速して苗植付部4による植付株間を変更する構成となっている。すなわち、スライドキー34を最前の等速伝動歯車対33aの駆動側歯車に係合させると、入力軸30の動力が該最前の等速伝動歯車対33aを介して前側の筒軸41aへ伝達され、植付株間が70株/坪に設定される。スライドキー34を前から2個目の等速伝動歯車対33bの駆動側歯車に係合させると、入力軸30の動力が該等速伝動歯車対33bを介して前側の筒軸41aへ伝達され、植付株間が60株/坪に設定される。スライドキー34を前から3個目の不等速伝動歯車対33cの駆動側歯車に係合させると、入力軸30の動力が該不等速伝動歯車対33cを介して前側の筒軸41aへ不等速伝動され、植付株間が50株/坪に設定される。スライドキー34を前から5個目の等速伝動歯車対33eの駆動側歯車に係合させると、入力軸30の動力が該等速伝動歯車対33eを介して後側の筒軸41aへ伝達され、後側の筒軸41aから前から4個目の不等速伝動歯車対33d及び前から3個目の不等速伝動歯車対33cへ順に直列に伝達して前側の筒軸41aへ不等速伝動され、植付株間が42株/坪に設定される。尚、前から4個目の不等速伝動歯車対33d及び前から3個目の不等速伝動歯車対33cは、同じ位相で同じ速比が現出され、双方の不等速伝動歯車対33c,33dを介して伝動することにより、更に大きい不等速伝動比が得られるようになっている。スライドキー34を前から6個目(最後)の等速伝動歯車対33fの駆動側歯車に係合させると、入力軸30の動力が該等速伝動歯車対33fを介して後側の筒軸41aへ伝達され、後側の筒軸41aから前から4個目の不等速伝動歯車対33d及び前から3個目の不等速伝動歯車対33cへ順に直列に伝達して前側の筒軸41aへ不等速伝動され、植付株間が37株/坪に設定される。従って、計5段のいづれの設定株間に切り替えても、最終的に前側の筒軸41aに伝動される。尚、不等速伝動歯車対33c,33dは、苗植付装置37が苗を一株づつ植付ける周期で且つ苗植付装置37が土中に突入して苗を植え付けるタイミングで速く作動する位相で不等速伝動するように設定されている。また、植付株間が37株/坪と42株/坪とのときは同じ不等速伝動比で伝動し、植付株間が比較的狭い50株/坪のときは前記とは異なる小さい不等速伝動比で伝動し、植付株間が更に狭い70株/坪と60株/坪とのときは等速で伝動する構成となっている。
【0021】
前記スライドキー34を操作するための株間変速シフタ35が、株間変速歯車部33の前方の入力軸30部に設けられている。株間変速シフタ35と対向する植付クラッチ軸32部には安全クラッチ36が設けられ、該安全クラッチ36により苗植付部4の後述する苗植付装置37の作動において石がかみこんだりしてメカロックが生じていると判断される程度の駆動負荷が植付クラッチ軸32にあると伝動を断つようになっている。尚、安全クラッチ36の切れる荷重の調整は、植付クラッチケース18の前側から突出する植付クラッチ軸32に設けた調節ナット37を回転させることで、該調節ナット37と一体回転する筒状の調節軸38を介してこの調節軸38の外面に螺合する安全クラッチスプリング受け板39を前後移動させ、安全クラッチスプリング40の圧縮荷重を変更して行える。この安全クラッチ36を株間変速歯車部33の前側に配置したので、その分植付伝動軸19を長く構成でき、苗植付部4の昇降に追従するべく屈曲可能な軸継手(図示せず)を備える植付伝動軸19において前記軸継手の屈曲角度範囲を小さくすることができ、植付伝動軸19による伝動効率を良好に維持することができる。従来は、安全クラッチ36を株間変速歯車部33の後側で植付クラッチケース18の最後部に配置していたので、その分植付伝動軸19が短くなってその屈曲角度が大きくなり、良好に伝動できなくなるおそれがある。
【0022】
尚、株間変速歯車部33で変速された動力は植付クラッチ軸32に外嵌される前側の筒軸41aを介して前記安全クラッチ36へ伝動され、該安全クラッチ36から植付クラッチ軸32を介して株間変速歯車部33の後側に設けた植付クラッチ31へ伝動される構成となっている。植付クラッチ31は、前側の駆動クラッチ体42と後側の受動クラッチ体43とを備えて構成され、植付クラッチシフタアーム44の回動により前記駆動クラッチ体42を植付クラッチ軸32に沿って前後に操作して伝動の入切を行う構成となっている。受動クラッチ体43は植付クラッチ軸32の延長線上で植付クラッチケース19の後側から突出する出力軸45と一体の部材で構成され、該出力軸45から植付伝動軸19へ伝動する構成となっている。植付クラッチシフタアーム44の回動操作により、該植付クラッチシフタアーム44と一体で回動する定位置停止用アーム46が植付クラッチ軸32及び出力軸45の回転により受動クラッチ体43の外周に設けた係合溝43aに係合する位置にくると、更に植付クラッチシフタアーム44が回動して駆動クラッチ体42を非伝動位置まで前側に移動できる構成となっている。従って、植付クラッチ31は、定位置停止クラッチである。
【0023】
植付クラッチシフタアーム42は、植付クラッチケース18の左側(機体左右方向内側)に設けた電動の植付クラッチモータ47の駆動で作動する。植付クラッチモータ47はボルト48により植付クラッチケース18に固着したモータブラケット49に取り付けられ、植付クラッチモータ47のピニオン50が植付クラッチシフタアーム軸51と一体回転するシフタギヤ52にかみ合う構成となっている。植付クラッチシフタアーム軸51と一体回転するカム板53の突起53aを検出することにより植付クラッチ31の伝動状態、非伝動状態を検出する伝動検出スイッチ54及び非伝動検出スイッチ55がモータブラケット49に取り付けられている。ところで、植付クラッチケース18は、機体左右中央部から外側(右側)に延びる取付フレーム56にボルト57により取り付けている。従って、このボルト57を外して植付クラッチモータ47ごと植付クラッチケース18を機体に対して着脱でき、伝動検出スイッチ54、非伝動検出スイッチ55及び植付クラッチモータ47と植付クラッチシフタアーム44との位置調整等のメンテナンスを容易に行え、植付クラッチモータ47と植付クラッチシフタアーム44との位置関係の精度も向上するため、植付クラッチ31を精度良く安定して作動させることができる。
【0024】
植付クラッチ31の駆動クラッチ爪58及び受動クラッチ爪59は、図5に示すような形状である。すなわち、受動クラッチ爪59の植付クラッチ軸32方向の端面59aはクラッチ回転方向であるのに対し、駆動クラッチ爪58の植付クラッチ軸32方向の端面58aはクラッチ正転側の深さが大きくなるように(クラッチ正転側の端面58bが大きくなるように)傾斜面になっている。そして、定位置停止用アーム46が係合溝43aに係合せずに受動クラッチ体43の外周に当接する状態では、図5(b)に示すように、互いのクラッチ爪58,59の正転側の端面の一部が重複して係合するが逆転側の端面は重複せず係合しない状態となり、駆動クラッチ体42が逆転しても駆動クラッチ爪58の前記傾斜面58aにより逆転伝動が抑えられる。従って、この植付クラッチ31は、機体の後進操作に連動して逆転伝動を即座に抑止することのできる一方向クラッチを兼用している。尚、前後進変速レバー24を後進側に操作すると、植付クラッチ31の非伝動側に植付クラッチモータ47が作動するようになっており、逆転抑止状態となる。尚、この状態で、駆動クラッチ体42が逆転した場合、駆動クラッチ爪58の傾斜面58aが受動クラッチ爪59に接触するため受動クラッチ爪59に逆方向への伝動が若干伝わるおそれがある。一方、定位置停止用アーム46が係合溝43aに係合する状態では、図5(a)に示すように、互いのクラッチ爪58,59の端面が正転側及び逆転側共に重複せず係合しない状態となり、受動クラッチ体43が所定の位相で停止する。尚、植付昇降操作レバー25で苗植付部4の作動の切操作をした後、機体を前進させることにより駆動クラッチ体42が正転するので、この定位置停止状態となる。従って、通常作業における畦際旋回前の苗植付部4の作動の切操作では、旋回行程で機体を前進し続けるので、いずれは定位置停止状態となる。尚、植付クラッチモータ47を植付クラッチ31の伝動側に作動させる通常伝動状態では、互いのクラッチ爪58,59の端面が正転側及び逆転側共に重複して確実に係合する状態となる。
【0025】
株間変速歯車部33は苗植付部4の苗植付装置37の作動の適正化のために設定株間によっては偏心歯車により不等速伝動する構成となっており、株間変速歯車部33の伝動下手側に逆転防止クラッチを兼ねる植付クラッチ31を設けている。従って、従来のように、株間変速歯車部の伝動下手側に常時逆転伝動を抑止する一方向クラッチを設けると、株間変速歯車部の不等速伝動による駆動クラッチ体の脈動で受動クラッチ体が駆動クラッチ体に対して先行して回転し、苗植付装置の作動が不適正になって苗の植付姿勢が不適正になるおそれがある。ところが、上記構成により、通常伝動状態では、互いのクラッチ爪58,59の端面が正転側及び逆転側共に重複して確実に係合する状態となるので、苗植付装置37を適正に作動させて適正な苗の植付が行える。
【0026】
植付クラッチ31と対向する入力軸30部には施肥クラッチ60が設けられ、入力軸32から該施肥クラッチ60を介して入力軸30の延長線上に設けた施肥出力軸61へ伝動し、該施肥出力軸61と一体回転するクランクア−ム62を介して施肥装置5の後述する肥料繰出部63へ伝動する構成となっている。施肥クラッチ60の受動クラッチ体64は、植付クラッチ31と同様に、施肥出力軸61と一体の部材で構成されている。
【0027】
昇降リンク装置3は、1本の上リンク70と左右一対の下リンク71を備えている。これらリンク70,71は、その基部側がメインフレーム10の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム72に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク73が連結されている。そして、縦リンク73の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸74が挿入連結され、連結軸74を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム10に固着した支持部材と上リンク70に一体形成したスイングアーム75の先端部との間に昇降油圧シリンダ76が設けられており、該シリンダ76
を油圧で伸縮させることにより、上リンク70が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0028】
苗植付部4は8条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース77、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口78に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口78に供給すると苗送りベルト79により苗を下方に移送する苗載台80、苗取出口78に供給された苗を苗植付具37aで圃場に植付ける苗植付装置37等を備えている。
【0029】
苗載台80は、苗載面の裏側でその裏面側下部に左右方向に設けた横枠81に沿って左右動自在に支持されている。尚、前記横枠81に8条分の前記苗取出口78が設けられている。伝動ケース77の左右両側から突出して該伝動ケース77内の動力で左右往復移動する横移動棒82が設けられ、該横移動棒82の両端部に固着した連結部材83と苗載台80とが連結されていて、横移動棒82が左右往復動することにより苗載台80が左右往復動するようにしている。
【0030】
苗送りベルト79は、駆動ローラ84と従動ローラ85とに張架されている。駆動ローラ84は左右方向の苗送り駆動軸86と一体回転するように設けられている。苗送り駆動軸86は、ラチェット機構87により、苗送りベルト79が苗送りする方向にだけ回転を伝達するようになっている。
【0031】
苗送りベルト79の駆動機構は下記の構成となっている。すなわち、伝動ケース77の左右両側からそれぞれ突出して回転駆動する駆動側アーム88が設けられている。また、苗送り駆動軸86の上側には左右方向の中継軸89が設けられ、それに従動側アーム90が取り付けられている。中継軸89と苗送り駆動軸86とは、アーム91,92及びリンク93とからなるリンク機構94により伝動連結されている。
【0032】
苗載台80が左右移動行程の端部に到達すると、駆動側アーム88が従動側アーム90にその下側から当接して、中継軸89を所定角度回転させる。その回転がリンク機構94及びラチェット機構87を介して苗送り駆動軸86に伝達される。これにより、苗送りベルト79が所定量だけ作動する。尚、苗載台80が左右移動両端部でそれぞれ苗送り動力を伝達できるように、1個の駆動側アーム88に対して左右に2個の従動側アーム90が同一の中継軸89上に設けられている。駆動側アーム88が従動側アーム90から離れると、後述する揺動支点軸95に係止したスプリング96の張力によって中継軸89及び従動側アーム90は駆動前の位置に戻る。尚、中継軸89及び従動側アーム90は、スプリング96の張力で、中継軸89の端部に設けたストッパ97が苗載台80本体側の規制部材98に当接する位置まで戻る構成となっている。
【0033】
ところで、苗送り駆動軸86は、左側4条部分と右側4条部分とに分割されている。また、中継軸89も左側中継軸と右側中継軸とに分割されている。そして、左右の苗送り駆動軸86及び中継軸89に対応して、駆動側アーム88、リンク機構94及び左右2個の従動側アーム90も左右にそれぞれ設けられた構成となっている。
【0034】
従動側アーム90は、回動中心近くの基部分90aと駆動側アーム88が当接する回動先端側部分90bとが別体で構成され、両部分90a,90bがアーム90中途部に設けた左右方向の揺動支点軸95で連結されている。尚、前記基部分90aが中継軸89と一体回転する構成となっており、前記回動先端側部分90bは、揺動支点軸95に設けたトルクスプリング(図示せず)により揺動支点軸95回りに上側(苗送りベルト79への伝動において当接する側とは反対側)へ回動する方向へ付勢され、常態ではそれ以上上側へ回動しないように中継軸89に当接している。従って、駆動側アーム88が従動側アーム90にその下側から当接する通常の苗送り伝動時には、従動側アーム90の基部分90aと回動先端側部分90bとが一体的に中継軸89回りに上側へ回動する。一方、駆動側アーム88が逆転して従動側アーム90にその上側から当接するときは、基部分90aに対して回動先端側部分90bだけが下側(苗送りベルト79への伝動において当接する側)へトルクスプリングに抗して揺動するのである。
【0035】
また、駆動クラッチ爪58の傾斜面58aの角度や回転方向の長さ等により植付クラッチ31の駆動クラッチ体42が逆転回転し始めてから逆方向の回転動力を断つまでの逆回
転で最大量逆回転することを想定し、駆動側アーム88が従動側アーム90に伝達した直後の回転位置(図9(a)の状態)から逆回転し始めても、その回転角度は駆動側アーム88が従動側アーム90の先端側部分90bを乗り越えて該部分90bの下側へ位置しないように、従動側アーム90並びに駆動側アーム88の長さを設定している(図9(b)の状態)。従って、駆動側アーム88が従動側アーム90の下側に位置して再度正転方向へ作動することによる苗送りベルト79の2度送りを防止している。これにより、苗載台80上の苗が苗取出口78側に過大に送られることによる苗のつぶれを防止し、苗の一株当たりの植付本数が過剰になったり苗が変形して植付姿勢が悪化するようなことを防止している。尚、駆動側アーム88が従動側アーム90の先端側部分を乗り越えないように、クラッチ爪を多数設ける等してクラッチ体42,43の1回転当たりの植付クラッチ31の切れるタイミングを増やし、逆回転の回転量を小さく設定してもよい。
【0036】
よって、機体後進時に、駆動側ア−ム88が逆方向へ回転しても苗送りベルト79へ全く苗送りの動力が伝達されないので、逆方向に回転してメカロックを起こすことによりストッパ97、規制部材98、駆動側ア−ム88、従動側ア−ム90及びリンク機構94等の苗送りベルト79への伝動構造に変形や損傷を生じさせたり、苗送りベルト79が2度送りすることにより苗取出口78への苗の移送量が2倍になって苗の一株当たりの植付本数や植付姿勢等の植付精度が悪化するようなことを防止できる。
【0037】
苗植付部4の下部には、中央2条分の苗植付位置を整地するセンターフロート100、左右それぞれ最外2条分の苗植付位置を整地するサイドフロート101及びセンターフロート100とサイドフロート101との間で残り1条分の苗植付位置を整地するミッドフロート102が設けられている。これらフロート100,101,102を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート100,101,102が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置37により苗が植付けられる。各フロート100,101,102は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート100の前部の上下動が上下動検出機構103により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ76を制御する油圧バルブ(図示せず)を切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0038】
施肥装置5は、肥料貯留タンク(粉粒体貯留タンク)110に貯留されている肥料(粉粒体)を各条の肥料繰出部(粉粒体繰出部)63によって一定量づつ繰り出し、その肥料を肥料移送ホース(粉粒体移送ホース)111でフロート100,101,102に取り付けた施肥ガイド112まで導き、施肥ガイド112の前側に設けた作溝体113によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出するようになっている。モータ114で駆動のブロア115で発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバ116を経由して肥料移送ホース111内に吹き込み、肥料移送ホース111内の肥料を苗植付部4側の肥料吐出口(施肥ガイド112)へ強制的に移送するようになっている。施肥溝内に供給された肥料は、施肥ガイド112及び作溝体113の後方でフロート100,101,102に取り付けた覆土板117により覆土される。
【0039】
各条の施肥ガイド112及び作溝体113は、対応する苗植付装置37との位置関係(距離)を均一にして各条の肥効を均一化することが望ましいので、それぞれ前後方向において同じ位置(機体側面視で同じ位置)に配置される。同様に、各条の覆土板117も対応する施肥ガイド112、作溝体113及び苗植付装置37との位置関係を(距離)を均一にすることが望ましい。何故ならば、覆土板を前寄りに位置させて施肥ガイドに近づけ過ぎると、覆土板で押し寄せられる泥が施肥ガイド内に供給されて該施肥ガイドに泥が詰まるおそれがあり、覆土板を後寄りに位置させて施肥ガイドから離し過ぎると、覆土板で覆土するまでに圃場内の水等により施肥溝の底から肥料が若干浮き上がって、その結果覆土量が少なくなり、適切な肥効が得られなくなるおそれがあるからである。
【0040】
肥料貯留タンク110に貯留された粒状肥料は、肥料貯留タンク110へ補給するにあたり該タンク110上部の蓋110aを開閉することもあって、雨天時等は特に吸水して湿り易く、粒状肥料が湿ると肥料繰出部63や肥料移送ホース111等の肥料搬送過程に
おいて肥料詰まり等のトラブルが生じやすくなり、適正に施肥作業が行えなくなるおそれがある。そこで、図11に示すような平面視格子状の仕切りを形成する高吸水、高吸湿繊維からなる乾燥促進材120を肥料貯留タンク110内の下部に収容させ、粒状肥料の乾燥を促進させるとよい。この乾燥促進材120は、ポリアクリル酸ナトリウム塩を主成分とするポリマーを直接紡糸し、繊維形状化させた繊維を含有するもので、吸水、吸湿しても天日干しにより繰り返し使用でき、耐熱性、難燃性能、消臭性能があり、繰り返し使用により吸水、吸湿性能が低下すれば焼却することができるものである。これにより、肥料貯留タンク110内の肥料の乾燥を促進でき、以降の肥料搬送過程を円滑にできる。また、乾燥促進材120には平面視格子状の仕切りが形成されているので、肥料繰出部63の作動に伴って肥料貯留タンク110内で流下する肥料の整流作用を得ることができ、肥料貯留タンク110内でブリッジを生じさせずにスムーズに肥料繰出部63へ肥料を流下させることができる。また、前記乾燥促進材120に代えて、図12に示すような超吸水性樹脂を入れた筒121を肥料貯留タンク110内に収容するようにしてもよい。
【0041】
以上により、この乗用型の田植機1は、圃場に苗を植付ける苗植付装置37を備える苗植付部4を走行車体2に装着し、エンジン13からの動力を植付用伝動経路を介して走行車体2の走行速度に比例した速度で苗植付部4へ伝動する構成とし、前記植付用伝動経路には苗を植付ける周期に合わせて苗植付装置37を不等速で作動させる不等速伝動歯車対33c,33dを2個設け、スライドキー34及び株間変速シフタ35からなる切替機構により、37株/坪並びに42株/坪の株間に設定すると、該2個の不等速伝動歯車対33c,33dを介して苗植付部4へ不等速伝動する第一伝動状態に切り替えられ、50株/坪の株間に設定すると、前記2個の不等速伝動歯車対33c,33dのうちの一方の不等速伝動歯車対33cのみを介して苗植付部4へ不等速伝動する第二伝動状態に切り替えられ、60株/坪並びに70株/坪の株間に設定すると、不等速伝動歯車対33c,33dを介さずに等速伝動歯車対33a,33bのみを介して苗植付部4へ等速伝動する等速伝動状態に切り替えられる。
【0042】
よって、株間変速シフタ35による株間変速操作に連動して苗植付装置37を異なる不等速伝動比で作動させることができるので、37株/坪並びに42株/坪の比較的広い株間に設定されているときは大きい不等速伝動比で苗植付装置へ伝動し、50株/坪の比較的狭い株間に設定されているときは小さい不等速伝動比で苗植付装置へ伝動することができ、設定株間に拘らず、より適切な不等速伝動比で苗植付装置を不等速作動させて、苗植付装置による土壌の植付穴の大きさ(苗植付装置の土中でのひきずり量)を均一化でき、苗の植付姿勢を適正に安定させることができる。また、株間変速シフタ35による同一の株間変速操作に連動して苗植付装置37への伝動を等速伝動状態に切り替えることができるので、株間変速シフタ35を操作する共通の株間変速操作具(例えば株間変速レバー)で第一伝動状態、第二伝動状態並びに等速伝動状態の切り替えが株間変速操作に連動して容易に行える。また、複数の等速伝動歯車対33a,33b,33e,33f及び複数の不等速伝動歯車対33c,33dを同じ伝動軸(入力軸30、植付クラッチ軸31)上に並列に配置したので、第一伝動状態、第二伝動状態並びに等速伝動状態の切り替えを同一のスライドキー34により容易に行えると共に、これら複数の歯車対33a〜33fからなる株間変速歯車部33をコンパクトにでき、また植付用伝動経路における伝動構造の簡素化を図ることができる。
【0043】
ところで、図13乃至図15は、異なる株間変速装置を示すものである。この株間変速装置は、前述の植付クラッチケース18に代えて設けられるものであり、取出伝動軸17からの動力をベルト式の無段変速装置122、不等速伝動切替ケース123内を介して植付伝動軸19へ伝達するものである。ベルト式の無段変速装置122は、伝動ベルト124側に付勢されるテンションプーリ125を備え、株間変速レバー126の操作によりプーリ操作ケーブル127を介して従動側プーリ128のプーリ幅を変更して株間を無段階に変速できるものである。尚、植付昇降操作レバー25で植付クラッチを伝動状態から非伝動状態に操作すると、テンションプーリ125を伝動ベルト124から離間させてしてベルト式の無段変速装置122を非伝動状態に切り替える構成となっている。不等速伝動切替ケース123内には、入力軸129と植付伝動軸19に接続される出力軸130とを備え、この入出力軸129,130間に等速伝動歯車対131と不等速伝動歯車対132とを設けたものである。そして、株間変速レバー126を狭い株間の設定域に操作すると、スライドキー133の係合により等速伝動歯車対131が伝動状態となって等速伝動され、株間変速レバー126を広い株間の設定域に操作すると、スライドキー133の係合により不等速伝動歯車対132が伝動状態となって不等速伝動される。尚、図13では等速伝動歯車対131と不等速伝動歯車対132とで計2組の歯車対131,132を設けた構成を示しているが、前述のように不等速伝動歯車対を複数設け、株間変速レバー126の操作に連動して不等速伝動比が切り替わる構成としてもよい。また、ベルト式の無段変速装置122の伝動下手側(苗植付部4側)に不等速伝動切替ケース123を設けているので、ベルト式の無段変速装置122の変速比に拘らず不等速伝動歯車対132が苗植付装置37が苗を一株づつ植付ける周期で且つ苗植付装置37が土中に突入して苗を植え付けるタイミングで速く作動する位相で不等速伝動でき、苗植付装置による土壌の植付穴の大きさ(苗植付装置の土中でのひきずり量)を均一化でき、苗の植付姿勢を適正に安定させることができる。
【0044】
従動側プーリ128の出力軸すなわち不等速伝動切替ケース123の入力軸129の外周の適宜位置には突起134aを設け、該突起134aをセンシングして前記軸の回転速度(回転数)を検出する光電式の出力軸回転センサ122bを設けている。前後進変速レバー24を前進位置に操作していることを前後進変速レバーセンサ24aで検出し、且つ植付昇降操作レバー25で植付クラッチを伝動状態に操作していることを植付昇降操作レバーセンサ25aで検出しているにも拘らず、株間変速レバー126による設定株間を検出する株間変速レバーセンサ126aの検出値に基づいて軸129が回転していない(極端に回転速度が低下する状態)ことを出力軸回転センサ134より検出すると、制御部136からの出力により警報装置137を作動させてオペレータに告知すると共に、植付停止用ソレノイド138を作動させ、植付停止用ケーブル139を介してベルト式の無段変速装置122のテンションプーリ125を伝動ベルト124から離してベルト式の無段変速装置122を非伝動状態に連動させる構成となっている。これにより、苗植付装置37の作動において石がかみこんだりしてメカロックが生じていることを認識できると共にその状態で強制的に苗植付装置37を作動させて破損させることを防止でき、前述のような安全クラッチ36が不要となりコストダウンが図れる。尚、前記警報装置137は、音声やブザーによるものの他、モニターやランプ等により表示して告知するものでもよい。
【0045】
尚、前後進変速レバー24を後進側に操作すると、後進連動ケーブル140、中継具141、植付停止用ケーブル139を介してテンションプーリ125を伝動ベルト124から離間させてしてベルト式の無段変速装置122を非伝動状態に切り替える構成となっている。これにより、前記した植付クラッチ31等の伝動クラッチによる逆転防止クラッチを設けた場合と比較して、逆転時に不等速伝動による伝動負荷変化の影響を受けずに確実に停止させることができる。
【0046】
また、前記した油圧式の前後進無段変速装置(HST)15の代わりに、図17に示すような伝動装置を設けてもよい。この伝動装置は、油圧式の正逆転無段変速装置(HST)142を設けると共に、太陽ギヤ143と該太陽ギヤ143に噛み合う複数個の遊星ギヤ144と該複数個の遊星ギヤ144に噛み合うリングギヤ145とで構成される遊星ギヤ機構146を備え、正逆転無段変速装置142の出力軸147から一対の出力軸側カウンタギヤ148,149を介して遊星ギヤ機構146の太陽ギヤ143を駆動すると共に、正逆転無段変速装置142の入力軸150から一対の入力軸側カウンタギヤ151,152を介して遊星ギヤ機構146の複数個の遊星ギヤ144を公転させ、該正逆転無段変速装置142の出力軸147と該正逆転無段変速装置142の伝動を経由しない正逆転無段変速装置142の入力軸150との動力を合成してリングギヤ145を回転させ、リングギヤ145の回転を第一クラッチ153を介してミッションケース8内へ伝動する伝動軸154へ出力するものである。尚、この伝動装置は、正逆転無段変速装置142を変速操作することにより、伝動軸154を無段変速させることができるものである。これにより、伝動軸154の正逆転中立を正逆転無段変速装置142の逆転側にシフトされて伝動軸154の正転側すなわち機体前進側の変速域が大きくなり、無段変速において前進高速域を得ることができると共に、油圧式の正逆転無段変速装置142の伝動だけでなくギヤ伝動を合成して出力するものであるから、伝動効率が向上し高い負荷に対応できる。そして、正逆転無段変速装置の出力軸147から一対の直結用カウンタギヤ155,156、第二クラッチ157を介して伝動軸154へ伝動することもできる。このときは、全ての動力が正逆転無段変速装置142を介して伝動されるので、伝動効率は低下するが正逆転無段変速装置142自体の利点である前後進切替操作が容易になり、前後進を頻繁に繰り返すようなときに便利である。尚、第一クラッチ153及び第二クラッチ157の何れか一方のみが接続できるように構成し、何れのクラッチ153,157を接続するかで伝動モードが切り替えられる構成となっている。また、畦際での機体旋回時には走行負荷が増大するため、ハンドル23や左右一方の後輪7のサイドブレーキ又はサイドクラッチ等の旋回操作に起因して第一クラッチ153を接続し、伝動効率を向上させる構成としている。
【0047】
図18は、上記伝動装置に前後進中立を確実に得るための中立保持機構158を設けたものである。この中立保持機構158は、一対の出力軸側カウンタギヤ148,149のうち従動カウンタギヤ149と一体で伝動軸154上をシフト可能な中立用従動ギヤ159を設ける一方、正逆転無段変速装置142の入力軸150から伝動される中立用駆動ギヤ160及び該中立用駆動ギヤ160と噛み合う中立用カウンタギヤ161を設け、変速レバー等の操作に連動して中立用従動ギヤ159及び前記従動カウンタギヤ149をシフトさせて中立用従動ギヤ159と中立用カウンタギヤ161とを噛み合わせると共に一対の出力軸側カウンタギヤ148,149の噛み合いを外し、遊星ギヤ機構146の遊星ギヤ144の公転方向と反対に太陽ギヤ143を回転させてリングギヤ145が回転しないようにする。これにより、変速レバーの前後進中立幅を所望の幅に適宜設定することができ、また前後進中立時は油圧式の正逆転無段変速装置142を介して伝動されずギヤ伝動のみになるので、確実に走行停止させることができると共に前後進中立時に油圧式の正逆転無段変速装置142に負荷がかからない分、正逆転無段変速装置142の劣化を防止できる。
【0048】
また、図19は、油圧式の正逆転無段変速装置142の入力軸150、出力軸147及び遊星ギヤ機構146の中心軸(伝動軸154)を同じ高さで且つ機体平面視で順に配置した伝動装置を判りやすく示したものである。この軸の配置により、正逆転無段変速装置142が小型でも該伝動装置のギヤ(遊星ギヤ機構146等のギヤ)の径を小さくせずに所望の歯数に設定することができ、該ギヤの強度維持並びにバックラッシを減少化による伝達精度の向上を図ることができる。また、前記入力軸150、出力軸147及び遊星ギヤ機構146の中心軸を同じ高さに配置することにより、伝動装置全体の上下幅を縮小でき、その分フロアステップ26の低位置化ひいては機体の低重心化が図れる。従来、この種の伝動装置は、油圧式の正逆転無段変速装置と遊星ギヤ機構とを備えているため、装置全体のスペースが大きくなりやすい。
【0049】
尚、この発明の実施の形態は乗用型の田植機1について記述したが、本発明は乗用型の田植機に限定されるものではない。
【0050】
ところで、乗用型の田植機1で植付けるマット状の苗は次のような播種育苗施設で播種、育苗される。
【0051】
図20は、播種育苗施設の平面レイアウト図である。この播種育苗施設は、2階が育苗箱置場となっており、その育苗箱置場の育苗箱が育苗箱供給装置201によって1階に設置した播種設備202に1枚ずつ順次供給される。播種設備202は、育苗箱を一定方向に搬送する育苗箱搬送コンベヤ203に沿って、育苗箱に床土を入れて鎮圧・均平する床土供給装置204、灌水装置205、床土の上に種籾を播種する播種装置206、覆土を施す覆土供給装置207が設けられている。播種設備202によって播種等を施された育苗箱は、段積み設備208によってパレット又は出芽台車の上に所定段数ずつ段積みされる。そして、段積みされた育苗箱を出芽室209に搬入して出芽させる。出芽室209で出芽させた段積状の育苗箱は育苗箱積替装置210で緑化台車に棚積みされ、該緑化台車
ごと温度管理された緑化室211へ搬入して所定の大きさに苗が成育するまで育苗する。尚、前記出芽室209及び緑化室211は、それぞれ3室設けられている。
【0052】
播種設備202の播種装置206の貯留する種籾の減少に伴って、種籾コンテナ212から自動的に該播種装置206へ種籾を供給する種籾供給コンベア213を設けている。この播種育苗施設には浸種水槽214を複数個(5個)設けており、水を張った該浸種水槽214内へ種籾を収容した状態の種籾コンテナ212を沈めて浸種して種子の芽出しを促進した後、その種子を播種装置206へ供給するようになっている。浸種水槽214へは薬液(消毒液)も供給し、この浸種行程において種子の消毒も行う。従って、浸種水槽214は、種子消毒設備でもある。前記薬液(消毒液)を混合した水は、所望の温度に維持するべく共通の緑化室211に設けた水タンク215に貯留されている。尚、この播種育苗施設には種籾コンテナ212ごと収容できる催芽設備216も備えており、種籾コンテナ212内で種子を催芽させることもできる。
【0053】
浸種水槽214で使用済みの排液は、中継部となる中継タンク217に供給される。この中継タンク217は、上部に浸種水槽214から排液が供給される供給口218と該中継タンク217に貯留した排液からあまり汚染されていない上澄みの液を別途設ける清掃水タンク(図示せず)ヘ排出するための清掃水排出口219とを設け、下部に凝集剤や薬剤等で排液を中和するための排液集水槽220へ排出するための主排出口221を設けている。また、該主排出口221から排液集水槽220への排液排出路222には開閉可能な排出弁223を設けている。従って、中継タンク217により、浸種水槽214からの排液のうち、あまり汚染されていない液を清掃水排出口219を介して別途設けたバイパス経路にて分岐して清掃水タンクへ供給することができ、排水のために中和する必要のない排液までも排液集水槽220へ供給する必要がないので、排液集水槽220で不必要に凝集剤や薬剤等の中和剤を使用するのを抑えることができ、播種育苗施設のランニングコストを低減することができる。中継タンク217での具体的な排液の選別方法としては、供給口218から中継タンク217へ排液を供給しながら、排出弁223の開度を適宜調節して下部の汚染された排液を主排出口221を介して排液集水槽220へ排出すると同時に、あまり汚染されていない上澄みの液を清掃水排出口219を介して清掃水タンクヘ排出することが考えられる。また、液を排出する前の浸種水槽214又は排液されてきた中継タンク217の液の汚染度を確認し、汚染が著しい場合は排出弁223を全開にして全ての排液を排液集水槽220へ供給し、あまり汚染されていない場合は排出弁223を全閉にして全ての排液を清掃水タンクへ供給されるようにしてもよい。尚、この中継タンク217へは、浸種水槽214からの排液のみが供給される構成としたが、併せて播種設備202からの排液(灌水装置205で生じる排液等)も供給される構成としてもよい。また、清掃水タンクに貯留された水は施設内の清掃(例えば播種設備41の洗浄等)に使用できるように、施設内に設けた蛇口(図示せず)から吐出できるようになっている。従来は、上記のような中継部がなく、浸種水槽からの排液が全て排液集水槽へ供給される排液経路となっていたので、あまり汚染されていない排液も排液集水槽で汚染された排液と混合され、凝集剤や薬剤等の中和剤を不必要に多量に要するおそれがある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】乗用型の田植機の側面図
【図2】乗用型の田植機の平面図
【図3】走行車体の一部を省略した平面図
【図4】植付クラッチケ−スの展開断面図
【図5】駆動クラッチ爪と受動クラッチ爪との関係を示す図
【図6】植付クラッチケ−スを示す側面図
【図7】植付クラッチケ−スを示す背面図
【図8】苗植付部の構成を判りやすく示す展開平面図
【図9】苗送りベルトへの伝動機構を示す一部断面側面図
【図10】駆動側アーム及び従動側ア−ムを示す側面図
【図11】乾燥促進材を示す斜視図
【図12】筒を示す斜視図
【図13】異なる株間変速装置を判りやすく示す平面図
【図14】異なる株間変速装置を示す背面図
【図15】テンションプ−リの作動連繋機構を示す図
【図16】ブロック図
【図17】異なる伝動装置の伝動機構を示す図
【図18】異なる伝動装置の伝動機構を示す図
【図19】異なる伝動装置の伝動機構を示す図
【図20】播種育苗施設の平面レイアウト図
【図21】排液経路を判りやすく示す図
【符号の説明】
【0055】
1…乗用型の田植機、2…走行車体、4…苗植付部、13…エンジン(原動機)、33…株間変速歯車部、33a,33b,33e,33f…等速伝動歯車対(等速伝動機構)、33c,33d…不等速伝動歯車対(不等速伝動機構)、34…スライドキー(切替機構)、35…株間変速シフタ(切替機構)、37…苗植付装置
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市馬木町700番地
【出願日】 平成16年4月28日(2004.4.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−312339(P2005−312339A)
【公開日】 平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願番号】 特願2004−133007(P2004−133007)