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【発明の名称】 種籾の消毒方法
【発明者】 【氏名】向畠 博行

【氏名】松本 美枝子

【氏名】梅沢 順子

【氏名】澤井 義昌

【氏名】上田 峻

【氏名】杉山 慎宗

【氏名】川島 謙藏

【氏名】村田 和昭

【氏名】黒子 吉彦

【氏名】川島 誠蔵

【要約】 【課題】酸性電解水とアルカリ性電解水を加温して50℃〜60℃に保ち、加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水に種籾をそれぞれ10分間ないし1時間浸漬することにより、種籾に存在する細菌類と真菌類を死滅ないしは不活化させることができる種籾の消毒方法を提供する。

【解決手段】海洋深層水、海洋表層水あるいは電解質を含む水を電気分解して酸性電解水とアルカリ性電解水を生成する。生成された酸性電解水とアルカリ性電解水を50℃〜60℃に加温した加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水に種籾をそれぞれ10分間ないし1時間浸漬して、種籾に存在する細菌類と真菌類を死滅ないしは不活化させる。加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水の温度を55℃に保ち、種籾の浸漬時間を各15分間とするのが好適ある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋深層水、海洋表層水あるいは電解質を含む水を電気分解して酸性電解水とアルカリ性電解水を生成し、生成された酸性電解水とアルカリ性電解水を50℃〜60℃に加温した加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水に種籾をそれぞれ10分間ないし1時間浸漬して、種籾に存在する細菌類と真菌類を死滅ないしは不活化させることを特徴とする種籾の消毒方法。
【請求項2】
加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水の温度を55℃に保ち、種籾の浸漬時間を各15分間とすることを特徴とする請求項1に記載の種籾の消毒方法。
【請求項3】
加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水の温度を60℃に保ち、種籾の浸漬時間を各10分間とすることを特徴とする請求項1に記載の種籾の消毒方法。
【請求項4】
加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水の温度を50℃に保ち、種籾の浸漬時間を各1時間とすることを特徴とする請求項1に記載の種籾の消毒方法。
【請求項5】
海洋深層水、海洋表層水あるいは電解質を含む水を15℃〜20℃程度に加温して電気分解することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の種籾の消毒方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、種籾を海洋深層水、海洋表層水あるいは電解質を含む水を電気分解して得られる酸性電解水とアルカリ性電解水にそれぞれ浸漬して、種籾に存在する細菌類(苗立枯細菌病菌、もみ枯細菌病菌、褐条病菌など)と真菌類(馬鹿苗病菌、いもち病菌など)を死滅ないしは不活化させる種籾の消毒方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収穫して乾燥した種籾には、その表面または籾殻と果皮との間に細菌類(苗立枯細菌病菌、もみ枯細菌病菌や褐条病菌など)と真菌類(馬鹿苗病菌やいもち病菌など)の病原菌が潜んでいるので、播種の前には種籾を消毒することが肝要であるが、消毒のために農薬を使用しない種籾の消毒方法としては、種籾を所定温度の温湯に所定時間浸漬する温湯浸漬法が開発されている(特開2000−316321公報参照)。
【0003】
種籾の温湯浸漬法による消毒は、消毒のために農薬を全く使用しないので、環境への負担軽減が図られ、食の安全面からもすぐれた方法である。しかしながら、種籾を浸漬する温湯の温度と浸漬時間とが発病苗率と発芽率に大きく関わるため、温湯の温度管理が非常に難しいのが実情である。
【0004】
また、種籾は播種前に浸種、催芽および出芽処理をするが、消毒処理した種籾に僅かでも病原菌が生き残っていたり不活化が不十分な病原菌が潜んでいると、浸種、催芽および出芽処理の段階での加湿、加温および酸素の供給によりそれらの病原菌が増殖して、せっかくの温湯浸漬による消毒処理が無意味になることも指摘されていた。
【0005】
このため、従来から種籾の浸種法による消毒の完全化を図る手段として、酸性電解水とアルカリ性電解水を用いた種籾の浸種消毒法が提案されているが(特開2000−360011公報の参照)、酸性電解水の浸種が6時間、アルカリ性電解水の浸種が12時間のように、種籾の浸漬消毒にきわめて長い時間を要するところから(同公報の段落「0011」参照)、種籾の消毒の信頼性は向上する反面、長い時間酸性電解水やアルカリ性電解水に種籾を浸漬することによって種籾の発芽能が大きく損なわれるおそれがある。
【0006】
なお、アルカリ性電解水による種子の浸漬消毒法としては特開平11−12112号公報に、酸性電解水による種子の浸漬消毒法としては特開平9−224422号公報に、海洋深層水または海洋表層水を電気分解して得られるアルカリ性電解水が殺菌作用を有することは特開2001−198575公報に、海洋深層水等の電気分解により酸性電解水とアルカリ性電解水を生成する方法は特開2002−153874公報に、それぞれ紹介されている。
【特許文献1】特開2000−316321公報
【特許文献2】特開2000−360011公報
【特許文献3】特開平11−12112号公報
【特許文献4】特開平9−224422号公報
【特許文献5】特開2001−198575公報
【特許文献6】特開2002−153874公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前掲の特開2000−360011公報に示すように、従来の酸性電解水とアルカリ性電解水による浸種消毒法では、種籾を酸性電解水とアルカリ性電解水に長時間の浸漬を要するところから、種籾の発芽能が大きく損なわれるおそれがあることは前述のとおりである。
【0008】
そこで本発明は、酸性電解水とアルカリ性電解水を加温して50℃〜60℃に保ち、加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水に種籾をそれぞれ10分間ないし1時間浸漬することにより、種籾に存在する細菌類と真菌類を死滅ないしは不活化させることができる種籾の消毒方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に係る種籾の消毒方法は、海洋深層水、海洋表層水あるいは電解質を含む水を電気分解して酸性電解水とアルカリ性電解水を生成し、生成された酸性電解水とアルカリ性電解水を50℃〜60℃に加温した加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水に種籾をそれぞれ10分間ないし1時間浸漬して、種籾に存在する細菌類と真菌類を死滅ないしは不活化させることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る種籾の消毒方法は、請求項1の手段において、加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水の温度を55℃に保ち、種籾の浸漬時間を各15分間とすることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に係る種籾の消毒方法は、請求項1の手段において、加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水の温度を60℃に保ち、種籾の浸漬時間を各10分間とすることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4に係る種籾の消毒方法は、請求項1の手段において、加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水の温度を50℃に保ち、種籾の浸漬時間を各1時間とすることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、本発明の請求項5に係る種籾の消毒方法は、請求項1ないし4のいずれかの手段において、海洋深層水、海洋表層水あるいは電解質を含む水を15℃〜20℃程度に加温して電気分解することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る種籾の消毒方法によれば、酸性電解水とアルカリ性電解水を加温して50℃〜60℃に保ち、加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水に種籾をそれぞれ10分間ないし1時間浸漬することにより、種籾に存在する細菌類と真菌類を死滅ないしは不活化させることができる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明に係る種籾の消毒方法を実施する装置の概要構成図である。
【0016】
図1に示すように、1は電解水生成装置であって、海洋深層水を電気分解によって、陽極側に酸性電解水を、陰極側にアルカリ性電解水をそれぞれ生成するものである。2は浸種槽であって、この浸種槽2には、電解水生成装置1からの酸性電解水を加温装置3により加温した加温酸性電解水を供給し、所要の水位まで満たして種籾4を浸漬する。次いで、浸種槽2内の加温酸性電解水を排出して、電解水生成装置1からのアルカリ性電解水を加温装置3により加温した加温アルカリ性電解水を所定の水位まで満たし、先に加温酸性電解水に浸漬した後の種籾を加温アルカリ性電解水浸漬する。このように加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水に浸漬して消毒した種籾は必要に応じて水洗および冷却したうえ、浸種、催芽、播種し、育苗する。
【0017】
図2に示すように、浸種槽2を酸性電解水槽2aとアルカリ性電解水槽2bの2槽とすれば、酸性電解水槽2aの酸性電解水とアルカリ性電解水槽2bのアルカリ性電解水は原則的に入れ替え不要となるので、酸性電解水およびアルカリ性電解水の節減を図ることができる。
【0018】
本発明に係る種籾の消毒方法によれば、電解水生成装置1で生成された酸性電解水とアルカリ性電解水を加温装置3により50℃〜60℃に加温した加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水として浸種槽2で種籾を浸漬するので、種籾を加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水にそれぞれ10分間ないし1時間浸漬すれば、種籾に存在する細菌類と真菌類を完全に死滅ないしは不活化させることができる。電気分解する水は、海洋深層水のほか海洋表層水や電解質を含んだ水でもよいが、海洋深層水を用いると種籾の消毒効果の高いことが、本発明者らの実験により確かめられている。
【0019】
そして、加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水の温度を55℃に保った場合には、種籾の浸漬時間が各15分間で種籾に存在する細菌類と真菌類を完全死滅ないしは不活化させることができ、しかも浸種時間がきわめて短くて済むので、種籾の発芽率の低下がほとんどみられない。このため、本発明に係る種籾の消毒方法はこの条件下で実施するのが最も好適である。
【0020】
また、加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水の温度を60℃に保った場合には、種籾の浸漬時間を各10分間とするのがよく、加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水の温度を50℃に保った場合には、種籾の浸漬時間を各1時間とするのが適当である。
【0021】
本発明に係る種籾の消毒方法においては、電解水生成装置1において海洋深層水、海洋表層水あるいは電解質を含む水を15℃〜20℃程度に加温して電気分解することができる。そして、この手段によれば水の電気分解効率が向上するうえ、比較的温度の高い酸性電解水とアルカリ性電解水が得られるので、その分加温装置3を簡略化することができて好適である。
【0022】
本発明者らの試験研究によれば、種籾の病原菌で細菌類の苗立枯細菌病菌やもみ枯細菌病菌などについては、アルカリ性電解水の浸漬による死滅や不活性効果が顕著であり、また、細菌類の褐条病菌、真菌類の馬鹿苗病菌やいもち病菌などについては、酸性電解水の浸漬による死滅や不活性効果が顕著であることが確かめられている。そして、前述のように、海洋深層水の電気分解による酸性電解水とアルカリ性電解水が種籾の消毒効果の高いことと相俟って、加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水の温度を比較的低い55℃としても浸種時間を極く短い15分間で十分であることも前述のとおりである。
【実施例】
【0023】
次に本発明に係る種籾の消毒方法について試験結果を表1ないし表5に示す。ここに、深層アルカリ性水とは海洋深層水を電気分解して得られるpHが10.0〜11.0程度のアルカリ性電解水であり、深層酸性水とは同様にpHが4.0〜4.5程度の酸性電解水である。また表層アルカリ性水および表層酸性水とは海洋表層水を同様に処理をしたものである。試験に用いた種籾は、平成14年度富山県産「コシヒカリ」、発芽勢は発芽試験開始後4日目、発芽率は同じく7日目の結果である。
【0024】
【表1】


【0025】
【表2】


【0026】
【表3】


【0027】
【表4】


【0028】
【表5】


【0029】
表1、表2から明らかなように、深層アルカリ性水による種籾の浸漬処理によれば、苗立枯細菌病ともみ枯細菌病に対してきわめて高い消毒効果が得られる(実施例1,実施例3)。表層アルカリ性水の場合は深層アルカリ性水に比較してやや効果が低いが、十分高い消毒効果が認められる(実施例2、実施例4)。
【0030】
また、表3から明らかなように、深層酸性水による種籾の浸漬処理によれば、褐条病に対して高い消毒効果が得られる(実施例5)。表層酸性水の場合は深層酸性水に比較してやや効果が低いが、十分高い消毒効果が認められる(実施例6)。
【0031】
また、表4から明らかなように、深層酸性水による種籾の浸漬処理によれば、馬鹿苗病に対して高い防除効果が得られる(実施例7)。表層酸性水の場合は深層酸性水に比較してやや効果が低いが、十分高い消毒効果が認められる(実施例8)。いもち病に対しても、深層酸性水、表層酸性水ともに馬鹿苗病とほぼ同程度の結果が認められる。
【0032】
これに対して、水道水の温湯浸漬処理では、表1ないし表4から明らかなように、温度が50℃、55℃では十分な消毒効果が認められないが、60℃の10分間浸漬処理により比較的高い消毒効果が得られる(比較例1、比較例2、比較例3、比較例4)。そして、表5から明らかなように、水道水の温湯浸漬処理が真水の温湯の1回処理で深層酸性水・アルカリ性水や表層酸性水・アルカリ性水の浸漬処理の半分の浸漬時間であるにもかかわらず、60℃、10分間浸漬処理によって発芽勢が83.0(%)、発芽率が83.1(%)に低下することが認められた(比較例5)。
【0033】
表1ないし表4から明らかなように、深層水または表層水のいずれであっても、それによる酸性水とアルカリ性水の浸漬処理によれば、十分高い消毒効果が得られるが、深層水による酸性水とアルカリ性水の浸漬処理を行った場合には、発芽勢および発芽率の向上が認められる(表5の実施例9、実施例10)。そして、深層水による酸性水およびアルカリ性水を55℃に保ち、浸漬時間を各15分間(合計30分間)とするのが種籾の消毒効果も高く、しかも種籾の発芽勢、発芽率ともにが損なわれないので、本発明の実施の態様としてはこの条件によるのが最も好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る種籾の消毒方法によれば、特に海洋深層水による加温酸性電解水と加温アルカリ性電解水の温度を比較的低い55℃としても浸種時間は極く短い15分間でよいから、種籾に対して安全であり、作業性にもすぐれ、エネルギー消費も低率である。したがって、稲作農業の環境への負担軽減や食の安全確保などの面からも、将来に向けての発展が大いに期待されるところである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る種籾の消毒方法を実施する装置の一例を示す概要構成図である。
【図2】本発明に係る種籾の消毒方法を実施する装置の他例を示す概要構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 電解水生成装置
2 浸種槽
2a 酸性電解水槽
2b アルカリ性電解水槽
3 加温装置
4 種籾
【出願人】 【識別番号】000132792
【氏名又は名称】株式会社タイガーカワシマ
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
【出願日】 平成16年3月23日(2004.3.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−269940(P2005−269940A)
【公開日】 平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願番号】 特願2004−85594(P2004−85594)