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【発明の名称】 乗用型苗植機
【発明者】 【氏名】瀬戸川 哲夫
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【要約】 【課題】傾斜のきつい畦斜面を登りながらの植付け作業時などにおいても良好な苗の植付けが行える乗用型苗植機を得ることを課題とする。

【解決手段】乗用型走行車体1に昇降リンク機構2を介して昇降自在に連結した苗植付装置3に装備した接地センサー13Mの揺動姿勢が予め設定された苗植付装置3に対する基準姿勢の許容範囲内になるように苗植付装置3の昇降を制御する昇降制御手段を備えた乗用型苗植機において、乗用型走行車体1または苗植付装置3の前後方向での傾斜角を検出する傾斜センサーKSの検出により、前記傾斜角が前上がり方向に大きくなるほど接地センサー13Mの基準姿勢を前下がり方向に補正する補正手段を備え、該補正手段が接地センサー13Mの基準姿勢を接地センサー13Mの前下がり限界姿勢よりも前下がり側に補正する場合には、昇降制御手段による苗植付装置3の上昇制御を行わない乗用型苗植機。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用型走行車体1に昇降リンク機構2を介して昇降自在に連結した苗植付装置3に装備した接地センサー13Mの揺動姿勢が予め設定された苗植付装置3に対する基準姿勢の許容範囲内になるように苗植付装置3の昇降を制御する昇降制御手段を備えた乗用型苗植機において、乗用型走行車体1または苗植付装置3の前後方向での傾斜角を検出する傾斜センサーKSの検出により、前記傾斜角が前上がり方向に大きくなるほど接地センサー13Mの基準姿勢を前下がり方向に補正する補正手段を備え、該補正手段が接地センサー13Mの基準姿勢を接地センサー13Mの前下がり限界姿勢よりも前下がり側に補正する場合には、昇降制御手段による苗植付装置3の上昇制御を行わないように構成したことを特徴とする乗用型苗植機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型走行車体に昇降リンク機構を介して苗植付装置を昇降自在に連結して、苗植付装置の昇降を制御する昇降制御手段を設けた乗用型苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用型田植機において、苗植付装置に装備した整地フロートの前部上下動を検出し、その検出値が所定の基準姿勢の許容範囲内になるように苗植付装置の昇降を制御して、植付け作業時における苗植付装置の対地高さを設定高さに維持し、苗植付装置にて適正な苗の植付け作業が行えるようにしたものがある。
【特許文献1】特開平9‐47115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乗用型苗植機は、乗用型走行車体に昇降リンク機構にて苗植付装置が一定姿勢で昇降するように装着構成している。また、整地フロートの予め設定される基準姿勢は、苗植付装置に対する整地フロートの揺動姿勢であることから、乗用型走行車体が傾斜のきつい畦斜面を登りながら苗植付装置で圃場の枕地に苗を植付けるような最終の植付け作業時などにおいては、苗植付装置も乗用型走行車体と同じく圃場泥面に対して大きく前が上がった傾斜姿勢となり、整地フロートの基準姿勢が圃場泥面に対して前上がり方向に大きく変更された状態となる。そのため、傾斜のきつい畦斜面を登りながらの植付け作業時などにおいては、昇降制御手段が、整地フロートの揺動姿勢が予め設定された基準姿勢の許容範囲内に復帰するように苗植付装置の昇降を制御すると、圃場泥面に対して前上がり方向に大きく変更された状態となる基準姿勢の許容範囲内に整地フロートが復帰するまで苗植付装置を下降させるようになって、圃場泥面に対する各整地フロートの沈下量が大幅に大きくなることから、各整地フロートによる泥押しが強くなって既植苗を倒伏させる不都合が生じるようになる。また、整地フロートの後部が泥面により押し上げられて、整地フロートの前部が基準値よりも下降して、昇降制御手段は苗植付装置を下降させるように制御してしまい、ますます、圃場泥面に対する各整地フロートの沈下量が大幅に大きくなって、苗植付け不可能な状態となる不都合が生じる。
【0004】
本発明は、傾斜のきつい畦斜面を登りながらの植付け作業時などにおいても良好な苗の植付けが行える乗用型苗植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、乗用型走行車体1に昇降リンク機構2を介して昇降自在に連結した苗植付装置3に装備した接地センサー13Mの揺動姿勢が予め設定された苗植付装置3に対する基準姿勢の許容範囲内になるように苗植付装置3の昇降を制御する昇降制御手段を備えた乗用型苗植機において、乗用型走行車体1または苗植付装置3の前後方向での傾斜角を検出する傾斜センサーKSの検出により、前記傾斜角が前上がり方向に大きくなるほど接地センサー13Mの基準姿勢を前下がり方向に補正する補正手段を備え、該補正手段が接地センサー13Mの基準姿勢を接地センサー13Mの前下がり限界姿勢よりも前下がり側に補正する場合には、昇降制御手段による苗植付装置3の上昇制御を行わないように構成した乗用型苗植機としたものである。
【0006】
従って、圃場内での通常の植付け作業走行時や植付け作業終了時の傾斜のきつい畦斜面を登りながらの植付け作業時において、乗用型走行車体1が傾斜した圃場耕盤や畦斜面を走行することによって、傾斜角検出手段により検出される乗用型走行車体1又は苗植付装置3の前後方向での傾斜角が前上がり方向の値になると、補正手段が、その傾斜角が前上がり方向に大きくなるほど接地センサー13Mの基準姿勢を前下がり方向に補正する補正作動を行い、昇降制御手段が、接地センサー13Mの揺動姿勢が補正後の基準姿勢の許容範囲内に復帰するように苗植付装置の昇降を制御するようになる。
【0007】
つまり、圃場内での通常の植付け作業走行時や傾斜のきつい畦斜面を登りながらの植付け作業時において乗用型走行車体1及び苗植付装置3が前上がり傾斜姿勢になった場合には、それに伴って、圃場泥面に対する接地センサー13Mの基準姿勢が乗用型走行車体1及び苗植付装置3と同じ角度で前上がり方向に変更された状態になることを考慮して、補正手段が、その変更角に応じた角度で接地センサー13Mの基準姿勢を前下がり方向に補正するようにしているから、乗用型走行車体1及び苗植付装置3が前上がり方向に傾斜する作業状況において、圃場泥面に対する接地センサー13Mの基準姿勢を略一定に維持することができるようになり、これによって、昇降制御手段が、接地センサー13Mの揺動姿勢が基準姿勢の許容範囲内に復帰するように苗植付装置3の昇降を制御する自動昇降制御の実行中は、圃場泥面に対する各整地フロート13M・13L・13Rの沈下量を略一定量に維持することができるようになる。
【0008】
その結果、乗用型走行車体1及び苗植付装置3が前上がり方向に傾斜する作業状況においては、その傾斜の大小にかかわらず、それに起因して、圃場泥面に対する各整地フロート13M・13L・13Rの沈下量が大きくなって各整地フロート13M・13L・13Rによる泥押しが強くなる、といった不都合が生じることを回避できるようになり、各整地フロート13M・13L・13Rの泥押しに起因した苗倒れを防止できるようになる。
【0009】
一方、整地フロート13M・13L・13Rは、路上走行時などにおいては走行面から浮上させる必要があることから、前下がり方向での限界姿勢が設定されている。そのため、乗用型走行車体1及び苗植付装置3が極端に前上がり方向に傾斜した際に、補正手段が、接地センサー13Mの基準姿勢をその前下がり限界姿勢よりも前下がり側に補正すると、その補正後の接地センサー13Mの基準姿勢に基づく昇降制御手段の制御作動によって苗植付装置3が上昇しても、接地センサー13Mの揺動姿勢が補正後の基準姿勢の許容範囲内に収まることがないことから、整地フロート13M・13L・13Rが圃場泥面から浮上するようになって苗の植付けが行えなくなる不都合が生じるようになる。そこで、上記請求項1記載の発明では、補正手段が接地センサー13Mの基準姿勢を接地センサー13Mの前下がり限界姿勢よりも前下がり側に補正する場合には、昇降制御手段による苗植付装置3の上昇制御を行わないように構成したので、これによって、乗用型走行車体1及び苗植付装置3が極端に前上がり方向に傾斜する作業状況であっても苗の植付けが行える。
【発明の効果】
【0010】
上記のように乗用型苗植機を構成することにより、植付け作業中に乗用型走行車体1及び苗植付装置3が前後方向に傾斜した際に生じる各整地フロート13M・13L・13Rの泥押しに起因した苗倒れを効果的に防止できるとともに、乗用型走行車体1及び苗植付装置3が極端に前上がり方向に傾斜する作業状況であっても苗の植付けが行えて、良好なる苗植付け作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
乗用型走行車体の前後方向での傾斜角を検出する傾斜センサーの検出により、傾斜角が前上がり方向に大きくなるほど接地センサーの基準姿勢を前下がり方向に補正する補正手段を備え、該補正手段が、接地センサーの基準姿勢を接地センサーの前下がり限界姿勢よりも前下がり側に補正する場合には、昇降制御手段による苗植付装置の上昇制御を行わないように構成した。
【実施例1】
【0012】
この発明の一実施例である6条植え乗用型田植機を図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
乗用型走行車体1の後部に昇降リンク機構2を介して6条植えの苗植付装置3を昇降自在に連結して、6条植え乗用型田植機が構成されている。そして、乗用型走行車体1の後部には、施肥装置4が設けられている。また、乗用型走行車体1の前部にはエンジン5が搭載され、エンジン5の動力が変速装置を有するミッションケース6を経由して、左右一対の前輪7・7と後輪8・8、苗植付装置3、及び、施肥装置4へ伝達される。
【0014】
昇降リンク機構2は、油圧シリンダ2aの伸縮作動で昇降揺動して、苗植付装置3を乗用型走行車体1に対して一定姿勢で昇降するようになっている。
【0015】
苗植付装置3は、フレームを兼用する植付部伝動ケース9から後方に向けて延設された3つの縦植付伝動ケース10、各縦植付伝動ケース10の後部左右両側に回転自在に設けられたロータリ式植付機構11、各植付機構11に対して左右方向に往復移動する苗載台12、及び、各植付機構11による苗植付け箇所に対して前もって整地作用をする中央整地フロート13M,左右整地フロート13L・13R等によって構成されている。
【0016】
そして、各縦植付伝動ケース10の前下部には、各縦植付伝動ケース10に亘って架設された植付深さ調節軸14がその軸芯P1周りで回動自在に支持されており、植付深さ調節軸14から後方に向けて3つの支持アーム15が延設され、各支持アーム15の後端に各々中央整地フロート13M・左右整地フロート13L・13Rが、横軸芯P2周りでその前部が上下揺動自在となるように支持されている。植付深さ調節軸14から前方に向けて延設された植付深さ調節レバー16は、植付部伝動ケース9に設けられた板状フレーム17に形成したガイド孔で操作案内され、ガイド孔に設けられた複数の係止溝18との係合で所定の操作位置に固定できるようになっている。従って、植付深さ調節レバー16の操作位置を変更することにより、各植付機構11に対する各整地フロート13M・13L・13Rの高さ位置を一体的に変更することができ、それによって、植付け作動時における各植付機構11の圃場に対する突入量を一体的に調節できることから、各植付機構11の苗植付け深さを所定の植付け深さに調節できるようになっている。
【0017】
一方、乗用型走行車体1は、その中央上部に運転座席19が配置され、その前方には操縦ハンドル20a・植付クラッチレバー20が設けられている。植付クラッチレバー20には、その操作位置を検出するポテンショメータからなるレバーセンサSaが装備されている。乗用型走行車体1に搭載された制御装置21は、レバーセンサSaの検出に基づいて、油圧シリンダ2aに対する作動油の流動状態を切り換えるソレノイドバルブ22の切り換え操作、及び、苗植付装置3と施肥装置4への動力伝達を入り切りする植付クラッチ23を作動する植付クラッチモータ24の駆動操作を行うことによって、苗植付装置3の昇降及び作動を制御する構成となっている。
【0018】
制御装置21は、レバーセンサSaにより植付クラッチレバー20の「上昇」位置への操作が検出されると、ソレノイドバルブ22を切換えて油圧シリンダ2aに圧油を供給して伸長させ、苗植付装置3を上昇させる。また、レバーセンサSaにより植付クラッチレバー20の「下降」位置への操作が検出されると、ソレノイドバルブ22を圧油排出に切換えて油圧シリンダ2aを縮小させ、苗植付装置3を下降させる。そして、レバーセンサSaにより植付クラッチレバー20の「中立」位置への操作が検出されると、ソレノイドバルブ22を圧油給排停止に切換えて油圧シリンダ2aを作動停止させ、苗植付装置3を昇降停止させる。また、レバーセンサSaにより植付クラッチレバー20の「入」位置への操作が検出されると、植付クラッチモータ24が駆動操作されて植付クラッチ23を伝動入り状態に切換え、苗植付装置3を作動させる。また、レバーセンサSaにより植付クラッチレバー20の「入」位置から「切」位置への操作が検出されると、植付クラッチ23を伝動切り状態に切り換えて苗植付装置3を作動停止させる。
【0019】
苗植付装置3の左右中央に配置された接地センサーとして機能する中央整地フロート13Mは、その前部を下降方向に付勢するバネ25を備えたリンク機構26を介して、その整地フロート13Mの植付け作業時の走行に伴う横軸芯P2周りでの上下揺動角度θを検出するポテンショメータPに連係されている。従って、中央整地フロート13Mは、植付け作業時における圃場耕盤や圃場泥面の起伏に起因した苗植付装置3に対する圃場泥面高さの変化を検出するセンサとして機能する。また、制御装置21の昇降制御手段により、ポテンショメータPの検出に基づいて、中央整地フロート13Mの揺動姿勢が予め設定された苗植付装置3に対する基準姿勢の許容範囲内(不感帯幅内)になるように苗植付装置3は昇降制御される。尚、制御装置21の昇降制御手段は、植付クラッチレバー20が「下降」位置と「入」位置に操作されたときに、実行されるようになっている。
【0020】
中央整地フロート13Mの基準姿勢は、ダイヤル調整式の設定器30の操作で、その基準姿勢に対応するポテンショメータPの基準値を変更することによって所望の姿勢に設定変更できるようになっており、又、その基準姿勢の設定変更に応じた昇降制御手段の制御作動によって中央整地フロート13Mの接地圧が変更されることから、中央整地フロート13Mの感知感度を調節できるようになっている。つまり、設定器30は、中央整地フロート13Mの感知感度を調節する感度設定手段である。
【0021】
中央整地フロート13Mの感知感度は圃場泥土の硬さに応じて調節され、例えば、圃場の泥土が硬い場合、その硬さに応じて中央整地フロート13Mの基準姿勢を前上がり方向に変更するようにすると、中央整地フロート13Mの接地圧を高めることができて中央整地フロート13Mの感知感度を鈍感側に調節することができるのであり、これによって、泥土の硬さに応じた強い整地作用を得られるようになることから、泥土の硬い圃場においても所望の植付け深さでの好適な苗の植付けを行えるようになる。逆に、圃場の泥土が柔らかい場合、その柔らかさに応じて中央整地フロート13Mの基準姿勢を前下がり方向に変更するようにすると、中央整地フロート13Mの接地圧を弱めることができて中央整地フロート13Mの感知感度を敏感側に調節することができるのであり、これによって、泥土が柔らかいことに起因して圃場泥土の起伏に応じて適度に中央整地フロート13Mが揺動しなくなることを抑制でき、その揺動に基づく昇降制御手段の制御作動により、苗植付装置3を柔らかい圃場泥土の起伏に応じて適度に昇降させることができて各整地フロート13M・13L・13Rによる泥押しが強くなる不都合を回避できることから、泥土の柔らかい圃場においても所望の植付け深さでの好適な苗の植付けを行えるようになる。尚、ポテンショメータPは、その検出姿勢が、植付け深さ調節にかかわらず一定に維持されるように周知の連係機構で植付深さ調節レバー16に連係されている。
【0022】
ここで、ポテンショメータPの検出による昇降制御手段の制御について詳述する。昇降制御手段は、植付け作業時において、例えば、圃場耕盤が深くなる(または、圃場泥面に盛り上がりなどがある)ように苗植付装置3に対する圃場泥面高さが高くなると、中央整地フロート13Mの揺動姿勢が予め設定された基準姿勢の許容範囲内に位置する状態から前上がり方向に上昇揺動し、その上昇揺動をポテンショメータPが検出して、中央整地フロート13Mの揺動姿勢が予め設定された基準姿勢の許容範囲内に復帰するように苗植付装置3を上昇させることによって、植付け作業時における苗植付装置3の対地高さを目標対地高さに維持する。逆に、圃場耕盤が浅くなる(または、圃場泥面に凹みなどがある)ように苗植付装置3に対する圃場泥面高さが低くなると、中央整地フロート13Mの揺動姿勢が予め設定された基準姿勢の許容範囲内に位置する状態から前下がり方向に下降揺動し、その下降揺動をポテンショメータPが検出して、中央整地フロート13Mの揺動姿勢が予め設定された基準姿勢の許容範囲内に復帰するように苗植付装置3を下降させることによって、植付け作業時における苗植付装置3の対地高さを目標対地高さに維持する。このように、このポテンショメータPの検出に基づく昇降制御手段の制御作動によって、苗植付装置3による所望の植付け深さでの苗の植付けを安定して行える。
【0023】
一方、苗植付装置3は、乗用型走行車体1に対して昇降リンク機構2にて一定姿勢で昇降し、また、予め設定される基準姿勢は、苗植付装置3に対する中央整地フロート13Mの揺動姿勢であることから、乗用型走行車体1が傾斜のきつい畦斜面を登りながら苗植付装置3で圃場の枕地に苗を植付けるような最終の植付け作業時などにおいては、苗植付装置3も乗用型走行車体1と同じく圃場泥面に対して大きく前が上がった傾斜姿勢となり、中央整地フロート13Mの基準姿勢が圃場泥面に対して前上がり方向に大きく変更された状態となる。
【0024】
そのため、傾斜のきつい畦斜面を登りながらの植付け作業時などにおいては、昇降制御手段が、単純に中央整地フロート13Mの揺動姿勢が予め設定された基準姿勢の許容範囲内に復帰するように苗植付装置3の昇降を制御すると、圃場泥面に対して前上がり方向に大きく変更された状態となる基準姿勢の許容範囲内に中央整地フロート13Mが復帰するまで苗植付装置3を下降させるようになって、圃場泥面に対する各整地フロート13M・13L・13Rの沈下量が大幅に大きくなることから、各整地フロート13M・13L・13Rによる泥押しが強くなって既植苗を倒伏させる不都合が生じるようになる。また、中央整地フロート13Mの後部が泥面により押し上げられて、中央整地フロート13Mの前部が基準値よりも下降して、昇降制御手段は苗植付装置3を下降させるように制御してしまい、ますます、圃場泥面に対する各整地フロート13M・13L・13Rの沈下量が大幅に大きくなって、苗植付け不可能な状態となる。
【0025】
そこで、本発明の実施例では、乗用型走行車体1にその前後方向での傾斜角を検出する傾斜センサKSを設け、そして、制御装置21には、傾斜センサKSからの検出に基づいて、乗用型走行車体1の前後方向での傾斜角が予め設定された設定値(通常の植付け作業走行時における乗用型走行車体1の前後方向での傾斜角の一般的な最大値よりも大きい値で例えば7度)以上の前上がり方向の値になると、その傾斜角が前上がり方向に大きくなるほど中央整地フロート13Mの基準姿勢(ポテンショメータPの基準値)を前下がり方向に補正する補正作動を開始し、補正作動をしていて、その傾斜角が予め設定された設定値(通常の植付け作業走行時における乗用型走行車体1の前後方向での傾斜角の一般的な最大値よりも大きい値で例えば7度)よりも前上がり方向で小さい値になると補正作動を終了する補正手段が設けられている。
【0026】
従って、植付け作業終了時の傾斜のきつい畦斜面を登りながらの植付け作業などのように傾斜センサKSにより検出される乗用型走行車体1の前後方向での傾斜角が設定値以上の前上がり方向の値になる場合には、それに伴って、圃場泥面に対する中央整地フロート13Mの基準姿勢が乗用型走行車体1と同じ角度で前上がり方向に大きく変更された状態になることを考慮して、補正手段が、その変更角に応じた角度で中央整地フロート13Mの基準姿勢を前下がり方向に補正するようになることから、乗用型走行車体1が前上がり方向に大きく傾斜する作業状況であるにもかかわらず、圃場泥面に対する中央整地フロート13Mの基準姿勢を略一定に維持することができ、その基準姿勢に基づく昇降制御手段の制御作動によって、圃場泥面に対する各整地フロート13M・13L・13Rの沈下量を略一定量に維持することができるようになり、苗植付装置3の対地高さを目標高さ位置に維持できる。
【0027】
従って、傾斜のきつい畦斜面を登りながらの植付け作業時などのように乗用型走行車体1が前上がり方向に大きく傾斜する作業状況であっても、圃場泥面に対する各整地フロート13M・13L・13Rの沈下量が大幅に大きくなって各整地フロート13M・13L・13Rによる泥押しが強くなるといった不都合(また、中央整地フロート13Mの後部が泥面により押し上げられて、中央整地フロート13Mの前部が基準値よりも下降して、昇降制御手段は苗植付装置3を下降させるように制御してしまい、ますます、圃場泥面に対する各整地フロート13M・13L・13Rの沈下量が大幅に大きくなって、苗植付け不可能な状態となる不都合)が生じることを回避でき、良好に傾斜のきつい畦斜面を登りながらの植付け作業が行える。
【0028】
一方、各整地フロート13M・13L・13Rは、路上走行時などにおいて走行面から上方に離れるから、周知の規制機構によって所定値(例えば12度)より大きく前下がり方向に下降揺動しないように前下がり方向での限界姿勢が設定されている。そのため、乗用型走行車体1が極端に前上がり方向に傾斜した際に、補正手段が、補正後の中央整地フロート13Mの基準姿勢が整地フロート13Mの前下がり限界姿勢よりも前下がり側(例えば13度の前下がり姿勢)になるように中央整地フロート13Mの基準姿勢を補正すると、その補正後の中央整地フロート13Mの基準姿勢に基づく昇降制御手段の制御作動によって苗植付装置3が上昇しても、中央整地フロート13Mの揺動姿勢が補正後の基準姿勢の許容範囲内に収まることがないことから、各整地フロート13M・13L・13Rが圃場泥面から浮上するようになって苗の植付けが行えなくなる不都合が生じる。
【0029】
そこで、乗用型走行車体1の前上がり傾斜が非常に大きくなって、補正手段が、補正後の中央整地フロート13Mの基準姿勢が整地フロート13Mの前下がり限界姿勢よりも前下がり側(12度よりも前下がり姿勢)になるように中央整地フロート13Mの基準姿勢を補正する状態になった場合には、その基準姿勢の補正は続けるが、制御装置21の昇降制御手段による苗植付装置3を上昇させる方向の制御を停止して(ポテンショメータPの中央整地フロート13Mの揺動姿勢が基準姿勢の許容範囲内から前上がり方向に上昇揺動した検出を無視する)、各整地フロート13M・13L・13Rが圃場泥面から浮上して苗の植付けが行えなくなるような不都合を解消する制御を行う。これによって、乗用型走行車体1が極端に前上がり方向に傾斜する作業状況であっても、各整地フロート13M・13L・13Rが圃場泥面から浮上するようになることを防止できて、苗の植付けを良好に行える。
【0030】
尚、設定器30により感知感度を調節しても、同様に、補正手段が、補正後の中央整地フロート13Mの基準姿勢が整地フロート13Mの前下がり限界姿勢よりも前下がり側(12度よりも前下がり姿勢)になるように中央整地フロート13Mの基準姿勢を補正する状態になった場合には、その基準姿勢の補正は続けるが、制御装置21の昇降制御手段による苗植付装置3を上昇させる方向の制御を停止する(ポテンショメータPの中央整地フロート13Mの揺動姿勢が基準姿勢の許容範囲内から前上がり方向に上昇揺動した検出を無視する)。また、補正手段による基準姿勢の補正値は、設定器30により感知感度を調節できる範囲内である。更に、設定器30により感知感度を調節しても、補正手段による補正量は一定である。
【実施例2】
【0031】
乗用型走行車体1の前上がり傾斜が非常に大きくなって、補正手段が、補正後の中央整地フロート13Mの基準姿勢が整地フロート13Mの前下がり限界姿勢よりも前下がり側(12度よりも前下がり姿勢)になるように中央整地フロート13Mの基準姿勢を補正する状態になった場合に、その基準姿勢の補正は続けるが、制御装置21の昇降制御手段による苗植付装置3を上昇させる方向の制御を停止して(ポテンショメータPの中央整地フロート13Mの揺動姿勢が基準姿勢の許容範囲内から前上がり方向に上昇揺動した検出を無視する)方法に代えて、補正手段が、補正後の中央整地フロート13Mの基準姿勢が整地フロート13Mの前下がり限界姿勢よりも前下がり側(12度よりも前下がり姿勢)になるように中央整地フロート13Mの基準姿勢を補正する状態になった場合に、その基準姿勢の補正は続けるが、基準範囲の許容範囲をフロート前上がり側だけ限界姿勢よりも少ない角度(12度未満)まで広げると、同様に、乗用型走行車体1が極端に前上がり方向に傾斜する作業状況であっても、各整地フロート13M・13L・13Rが圃場泥面から浮上するようになることを防止できて、苗の植付けを良好に行える。
【実施例3】
【0032】
図5・図6・図7は、乗用型田植機において、薬剤散布機能を施肥装置4に装備させた他の例を示す。
【0033】
即ち、乗用型走行車体1の後部に装着した施肥装置4は、各条毎に分離した各条タンク50−1…50−6を一体に設けた貯留タンク50と、各条タンク50−1…50−6内の肥料と薬剤(殺虫剤・殺菌剤等)とを繰出す各条繰出し部51−1…51−6と、各条繰出し部51−1…51−6から繰出された肥料を各植付機構11にて植付ける各状苗の側方に配置した各条作溝器52−1…52−6まで各々搬送案内する各状施肥パイプ53−1…53−6と、各条繰出し部51−1…51−6から繰出された薬剤を苗載台12の各状苗載せ部12−1…12−6に各々散布する各状薬剤散布パイプ54−1…54−6と、各条繰出し部51−1…51−6から繰出された肥料と薬剤とを各状施肥パイプ53−1…53−6と各状薬剤散布パイプ54−1…54−6とを介して空気搬送する空気圧送装置Aとから構成されている。
【0034】
各条タンク50−1…50−6は、その内部が各々隔壁50a−1…50f−6にて2分割されており、一方側に粒状肥料を貯留し、他方側に薬剤を分離して貯留できる構成となっている。
【0035】
各条繰出し部51−1…51−6は、各々その繰出ロール55−1…55−6に肥料溝56−1…56−6と薬剤溝57−1…57−6とが設けられている。そして、各繰出ロール55−1…55−6が回転することにより、肥料溝56−1…56−6各々が各条タンク50−1…50−6内の粒状肥料を各状施肥パイプ53−1…53−6内に繰出し、薬剤溝57−1…57−6各々が各条タンク50−1…50−6内の薬剤を各状薬剤散布パイプ54−1…54−6内に繰出す。そして、各繰出された粒状肥料及び薬剤は空気圧送装置Aにて搬送される。
【0036】
各状薬剤散布パイプ54−1…54−6の先端は、各々苗載台12の各状苗載せ部12−1…12−6の上部に対応して開口している。
【0037】
従って、乗用型田植機にて圃場に田植作業を行うと、苗植付けと同時に、植付けた苗の側方の土中に粒状肥料が施肥され、苗載台12の各状苗載せ部12−1…12−6に載置された苗には薬剤が散布される。よって、田植作業と同時に施肥作業及び薬剤散布作業が同時に行なえる。
【0038】
上記のように乗用型走行車体1の後部に薬剤散布装置と施肥装置の貯留タンク及びその繰出し部を配置すると、乗用型田植機の前後方向中央部で然も後輪8・8の上方位置に薬剤散布装置と施肥装置の貯留タンク及びその繰出し部が位置する構成となるので、乗用型田植機の後部に薬剤散布装置を設けた(乗用型走行車体1に対して上下昇降する苗植付装置3に薬剤散布装置を設けた)従来の構成に比較して機体の前後バランスが良好となり、且つ、貯留タンク内の粒状肥料・薬剤の増減による前後バランスの変化も少なくて、乗用型田植機は優れた走行性能を発揮でき、良好なる苗の植付け作業が行える。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、乗用型田植機以外に、乗用型野菜移植機や乗用型イ草移植機等の色々な乗用型苗植機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。(実施例1)
【図2】中央整地フロートの装着部の構成を示す側面図である。(実施例1)
【図3】制御構成を示すブロック図である。(実施例1)
【図4】他の例を示す傾斜角検出手段からの検出値と中央整地フロートの基準姿勢との関係を表すグラフである。(実施例2)
【図5】他の例を示す乗用型田植機の全体側面図である。(実施例3)
【図6】他の例を示す乗用型田植機の全体平面図である。(実施例3)
【図7】他の例を示す作用説明用の要部断面図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0041】
1…乗用型走行車体
2…昇降リンク機構
3…苗植付装置
13M…中央整地フロート(接地センサー)
13L…左整地フロート
13R…右整地フロート
21…制御装置
30…感度設定手段
KS…傾斜センサ
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市馬木町700番地
【出願日】 平成16年2月24日(2004.2.24)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−237217(P2005−237217A)
【公開日】 平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願番号】 特願2004−48216(P2004−48216)