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【発明の名称】 ゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤および分解促進方法
【発明者】 【氏名】桑原 雅広
【住所又は居所】兵庫県姫路市土山6丁目5番12号 アグリテクノ矢崎株式会社内

【要約】 【課題】植物の苗立ち不良などの障害を引き起こすことなく、ゲル被覆種子の被覆ゲル層を速やかに分解させることができる方法を提供する。

【解決手段】水性ゲルからなる被覆ゲル層を備えたゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤において、該被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質を分解する酵素を含有するゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ゲルからなる被覆ゲル層を備えたゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤において、該被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質を分解する酵素を含有することを特徴とするゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤。
【請求項2】
上記ゲル被覆種子が被覆ゲル層を構成する水性ゲルの分散質としてアルギン酸塩を有し、かつ、分散質を分解する上記酵素がアルギン酸分解酵素であることを特徴とする請求項1に記載のゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤。
【請求項3】
水性ゲルからなる被覆ゲル層を備えたゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤において、該被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質を分解する酵素を産生する微生物を含有することを特徴とするゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤。
【請求項4】
水性ゲルからなる被覆ゲル層を備えたゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進方法において、該被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質を分解する酵素により分解促進処理を行うことを特徴とするゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進方法。
【請求項5】
上記ゲル被覆種子が被覆ゲル層を構成する水性ゲルの分散質としてアルギン酸塩を有し、かつ、分散質を分解する上記酵素がアルギン酸分解酵素であることを特徴とする請求項4に記載のゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進方法。
【請求項6】
播種前あるいは播種時にゲル被覆種子に対して分解促進処理を行うことを特徴とする請求項5に記載のゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進方法。
【請求項7】
播種後のゲル被覆種子に対してアルギン酸分解酵素を含む液を散布して前記分解促進処理を行うことを特徴とする請求項5に記載のゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進方法。
【請求項8】
水性ゲルからなる被覆ゲル層を備えたゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進方法において、該被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質を分解する酵素を産生する微生物を該被覆ゲル層に接触させることを特徴とするゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲル被覆種子は植物の種子や、生育能力のある胚あるいは不定胚などの種子類似物(以下、これらを併せて「種子」と云う)を、水を分散媒とし、水と分散質とからなる水性ゲルからなる被覆ゲル層内に封入してなるものであり、被覆ゲル層を構成する水分その他の成分により1粒の種から確実に苗を、延いては収穫を得ることができる全く画期的な技術であり、この確実さ故に、優秀でありながらも極めて高価なF1種子の利用を可能とし、結果として収量と品質の大幅な向上を達成することができるとされている。
【0003】
このようなゲル被覆種子は、例えば、アルギン酸ナトリウムを主成分とするゲル形成性水溶液中に種子を封入して、このゲル形成性水溶液を凝固させる金属イオン、例えば2価以上の金属イオンを有する水溶液、例えばカルシウム、バリウム、アルミニウム等の塩の水溶液等中に滴下することにより、種子周囲のアルギン酸ナトリウムとこれら金属イオンとを反応させてゲル化して作られている。
【0004】
ここで、ゲル被覆種子の被覆ゲル層は、播種するまでの取扱いにおいては潰れにくく、かつ、取扱いに優れることが求められるが、播種後は速やかに弾力を失って分解する性質が求められている。
【0005】
しかしながら実際には、播種後に乾燥によって種子を包む被覆ゲル層が水分を失い、乾燥して硬い膜状に変化してしまい、このため種子からの芽や根の生育が阻害され、植物の種類によっては通常の種子よりも苗立ちが劣っているなどの障害が生じる。このような障害を防ぐため、ゲル被覆種子では通常の種子よりも播種後の灌水に注意が必要となり、実際の栽培では却って労力を要すると云った問題点があった。
【0006】
この問題を解決するために、アルギン酸と反応しているカルシウムイオンに対してキレート能を有する薬剤(キレート剤)を使用することで、化学的に被覆ゲル層を崩壊させる方法が提案されているがこのとき、キレート剤が土壌中の電気伝導度に影響を与え、植物の苗立ち不良を引き起こす等の障害があり、キレート剤はゲル被覆種子の溶解剤としては不適当だと判断される。
【0007】
なお、本発明者等は特開9−15号公報で熱可逆性を有するマイクロカプセルにより少量のキレート剤であっても極めて効果的に被覆ゲル層を崩壊させることができる技術を提案しているが、この場合には植物の苗立ち不良の発生を極めて低く抑えることができるが、加熱処理が必要であるため、熱に弱い植物種子へは応用することができないと云う問題があった。
【特許文献1】特開平9−15号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、加熱処理が不要で、かつ、植物の苗立ち不良などの障害を引き起こすことなく、ゲル被覆種子の被覆ゲル層を速やかに分解させることができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、水性ゲルからなる被覆ゲル層を備えたゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤において、該被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質を分解する酵素を含有するゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤である。
【0010】
本発明のゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進方法は上記課題を解決するため、請求項3に記載の通り、水性ゲルからなる被覆ゲル層を備えたゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進方法において、該被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質を分解する酵素により分解促進処理を行うゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤によれば、植物の苗立ち不良などの障害を引き起こすことなく、ゲル被覆種子の被覆ゲル層を速やかに分解させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一般にゲルは、その形状を保つための分子レベルの網目構造を形成する分散質と、その分散質によって自由度が著しく制限された分散媒(水性ゲルの場合には分散媒は水)から構成されるが、本発明で用いる酵素はこの分散質を分解できるものである必要がある。
【0013】
ここで、ゲル被覆種子の被覆ゲル層を構成する水性ゲルの分散剤として用いることができるものは、例えば、ジュランガム、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ペクチン、ゼラチン、ローカストビーンガム、カラギーナン、ポリアクリル酸ナトリウム、寒天などが挙げられる。
【0014】
ここで、本発明で用いる酵素としては、上記分散質を分解し得える性質に加え、苗立ちを阻害せず、かつ、環境に悪影響を及ぼさないことが必要で、また、被覆ゲル層との接触が容易となることから水溶性であることが好ましい。
【0015】
本発明における分散質の分解とは分散質を構成する分子鎖を切断し分散質と分散媒とによって形成されている水性ゲルを崩壊させることであり、この分解によって被覆ゲル層の水性ゲルが流動性を有するゾルとなることが最も望ましいが、被覆ゲル層中の植物の生育を阻害しない程度に柔らかくなればよい。
【0016】
ここで、例えば水性ゲルを水と共に構成する分散質とその分解酵素との組合せのうち、ゲル被覆種子分野に用いることができる組合せとして、アルギン酸及びその塩とアルギン酸分解酵素、カルボキシメチルセルロースとセルラーゼ、寒天とアガラーゼ等の組合せが挙げられる。なお、これら組合せは単独で用いても良いが、本発明の効果が得られ、かつ、栽培目的の植物に悪影響を及ぼさない限りにおいて複数組を組み合わせても良い。
【0017】
これらのうちの、被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質としてアルギン酸及びその塩と分散質を分解する酵素としてのアルギン酸分解酵素との組合せにおいて、水性ゲルを構成する分散質としてアルギン酸分子鎖(アルギン酸またはその塩の分子鎖)を有する被覆ゲル層の場合、ここでアルギン酸分解酵素としてアルギン酸リアーゼを用い、このアルギン酸リアーゼを含有するゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤によりアルギン酸分子が分解されてオリゴマー化、ないし、モノマー化させる等により低分子化させることにより、被覆ゲル層を形成する水性ゲル層を崩壊させることができる。なお、このアルギン酸リアーゼは植物の苗立ちに悪影響を及ぼさない。
【0018】
なお、被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質としてアルギン酸及びその塩と分散質を分解する酵素としてのアルギン酸分解酵素との組合せにおいて、香川県産業技術センター食品研究所の松原等の研究によって、アルギン酸分解酵素によるアルギン酸の分解時の分解産物として得られるアルギン酸オリゴ糖が植物の根の伸長を促進するとの報告があるように、本発明の構成によれば被覆ゲル層の分解により、施肥を行ったのと同等の効果も得られる。
【0019】
本発明において、分散質を分解する酵素は、たとえば、その酵素を適当な溶媒(水であることが望ましい)に溶解させて調製した溶液としてゲル被覆種子の被覆ゲル層の外部から被覆ゲル層に接触させて用いるが、このとき、この溶媒に対して徐溶解性の材質からなるマイクロカプセルなどに封入して被覆ゲル層形成時に予め存在させておいても良い。また、比較的高い耐熱性を有する種子のゲル被覆種子の場合には、熱可逆性の水性ゲルを用いたマイクロカプセル(加熱すると内部に封入された物質を放出する)を用いて、被覆ゲル層の分解促進開始の際に被覆ゲル層を加熱するなどの手段を用いることもできる。また、中空針などを用いてゲル被覆種子の被覆ゲル層内部に酵素の溶液を注入するなどの手段を用いることもできる。
【0020】
このような酵素を溶解させた溶液をゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤として用いる場合であって、ゲル被覆種子の被覆ゲル層の外部から被覆ゲル層に接触させる方法としては、接触させる時期により3つに分けることができる。
【0021】
被覆ゲル層を備えたゲル被覆種子に対してその播種前に酵素を溶解させた溶液を、浸漬、噴霧、散布などの通常の手段で接触させ分解促進処理を行う播種前接触処理方法、また、播種する際に同様の手段により酵素を溶解させた溶液をゲル被覆種子に接触させる播種時接触処理方法、あるいは、セルトレイや圃場への播種後のゲル被覆種子に対して酵素を溶解させた溶液を散布して分解促進処理を行う播種後接触処理方法の3つである。
【0022】
上記播種前接触処理方法において、ゲル被覆種子を播種する前に酵素を溶解させた溶液に浸漬する場合、浸漬時問が長いほど被覆ゲル層の分解は進行し、播種してからの分解も早くなるが、分解が進行すると播種時の取扱い性が悪化し、あるいは、機械播種ができなくなるなどの障害が発生するため、溶液の濃度や浸潰時間の影響について予め検討し、ゲル被覆種子の被覆ゲル層の崩壊の進行が播種できる程度であるうちに播種する。
【0023】
また、上記播種前接触処理方法で、酵素を溶解させた溶液をゲル被覆種子と、散布、噴霧等により接触させる場合も、散布量、溶液濃度等の条件を選べば、酵素を溶解させた溶液との接触後、一般に数時間以内であれば、被覆ゲル層は機械播種可能な状態を保つことができるが、液の接触後から播種までの時間が長いと同様に播種時の取扱い性が悪化するので、やはり予め検討を要する。
【0024】
播種時接触処理方法では、酵素を溶解させた溶液を播種時のゲル被覆種子に対して散布、噴霧、浸漬等の手段で接触させるので、播種前接触処理方法での上記問題は通常は生じない。
【0025】
一方、播種後接触処理方法では、セルトレイや圃場に播種した後のゲル被覆種子に酵素を溶解させた溶液を噴霧する方法が挙げられる。この揚合も、播種作業に関してはゲル被覆種子の取扱い性は維持されるが、上記2つの方法に比べると、酵素を溶解させた溶液がより多く必要となる。
【0026】
なお、播種後接触処理方法では、ゲル被覆種子を播種した土壌が乾燥している場合、散布した酵素を溶解させた溶液が土壌に吸収され、その結果ゲル被植種子への分解効果が低下するおそれがあるので、播種後に灌水を行ってから酵素を溶解させた溶液を散布するか、あるいは、灌水された土壌に播種し、土壌が乾燥する前に酵素を溶解させた溶液を散布するなどして、酵素を溶解させた溶液散布時に土壌がある程度水分を含んでいるようにすることが望ましい。
【0027】
なお、播種したゲル被覆種子に覆土を行うかどうかはゲル被覆種子内に封入された種子の植物の性質によって適宜決定する。
【0028】
また、本発明のゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤において酵素を直接は含まずに、被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質を分解する酵素を産生する微生物を含有していて、この微生物によって被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質を分解する酵素を産生させても良い。
【0029】
本発明において用いるゲル被覆種子には、本発明の効果が得られる限り、他のゲル状物質を形成する物質、例えば合成・半合成の各種吸水性ポリマー(スターチ・ポリアクリレート系やセルロース系等)、あるいは寒天などの天然ゲル形成性高分子と水とからなるゲル状の分散粒子(通常は目視されない程度の大きさの粒子)、あるいは、含有する植物種子の成長に寄与するような他の成分、例えば肥料成分(固形であっても、成分として被覆ゲル層内の水に溶解されていても良い)、あるいは空気や酸素がその被覆ゲル層内に配されていても良い。
【実施例】
【0030】
以下に本発明のゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤の実施例について具体的に説明する。
≪被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質としてアルギン酸及びその塩とこれら分散質を分解する酵素としてのアルギン酸リアーゼとを用いる組合せでの実施例≫
まず、被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質としてアルギン酸及びその塩とこれら分散質を分解する酵素としてのアルギン酸リアーゼとを用いる組合せでの実施例についてのべる。
【0031】
この例ではゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤としてアルギン酸リアーゼ水溶液を用いたが、これらアルギン酸リアーゼ水溶液を調製するに当たり、次のような点に注意する必要がある。すなわち、市販のアルギン酸リアーゼは製品毎に酵素活性が異なるため、有効な活性を有する濃度を設定する際に重量パーセント濃度では所望の濃度を示すことができない。そのため、本発明では1mL当たりのアルギン酸リアーゼ水溶液に含まれる酵素量濃度(U/mL)を濃度単位として用いた。
【0032】
ここで、酵素量の単位「U(ユニット)」は次のように規定される。すなわち、0.1%アルギン酸溶液(0.2M燐酸緩衝液、pH6,3)4.5mLに0.15mLの酵素液を加え、37℃、30分間反応させた後、0.1MのNaOH4.65mLを加え反応停止させた後、1分問に反応溶液1mLあたりの波長235nmの吸光度を1増加させる酵素量を1Uと定義する。
【0033】
被覆ゲル層の水性ゲルを構成する分散質としてアルギン酸及びその塩とこれら分散質を分解する酵素としてのアルギン酸リアーゼとを用いる組合せにおいて、使用するアルギン酸リアーゼ水溶液の濃度は、0.1U/mL以上であることが望ましい。0.1U/mL未満の濃度では、アルギン酸塩を有するゲルの分解効果が殆ど得られず、その結果、苗立ち率の上昇効果も少ない。また、水溶液の中の酵素濃度が高いほど分解効果は高まるが、0.1U〜4U/mLの範囲では最終的な苗立ち率に有意差は認められず、4U/mL超の濃度としても苗立ちの向上は期待できない。そして、このときアルギン酸リアーゼの使用量が多くなり、高コストとなるため、使用するアルギン酸リアーゼ水溶液の濃度の上限は4U/mL以下であることが望ましい。
【0034】
圃場やセルトレイへの播種後のゲル被覆種子に対してのアルギン酸リアーゼ水溶液の散布量はその目安としてはゲル被覆種子1個あたり上記濃度範囲のアルギン酸リアーゼ水溶液1mLである。しかし液量の多少は、ゲルの分解促進に対する影響よりも、散布時の作業性に大きく影響及ぼすため、播種後の覆土の有無も考慮し、必要最少限な量を予め検討し、作業性を勘案しながら、実際の散布量を決定する。
【0035】
また、濃度が1U/mLのアルギン酸リアーゼ水溶液を用いる場合、散布回数としては通常、播種直後の1回で充分であるが、散布を複数回に分割する際は、ゲルが乾燥することによってリアーゼの分解効果が低下するため、播種後2日以内に終了させるのが望ましい。濃度と回数との関係については予め検討を行う。
【0036】
なお、本実施例においてゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤として上記アルギン酸リアーゼの代わりにアルギン酸リアーゼを産生する微生物(シュードアルテロモナス アトランティカ(Pseudoalteromonas atlantica)等)を被覆ゲル層に接触させても良く、この場合も本発明に含まれる。この際、これら微生物と共にその微生物を培養するための必須成分を含む培地あるいは/及び培養液を接触させるか、そのような必須成分を被覆ゲル層に含有させたゲル被覆種子を用いることが望ましい。
<実験条件>
カルセオラリアのゲル被覆種子
使用種子:カルセオラリア F1 ミダス
温度条件:20℃一定、12時間日長
播種後の覆土:なし
<ゲル被覆種子の作製>
アルギン酸ナトリウム及び粉状のスターチ・ポリアクリレート系吸水性ポリマーをそれぞれ液中濃度が0.9重量%及び0.2重量%となるようにはかり取り、水を添加し充分に攪拌し、ゲル形成性液を作製した。液中の含水した吸水性ポリマーからなる粒を分散したゲル形成性液中に分散している含水した吸水ポリマー粒を顕微鏡で観察したところ、その直径は0.2mm以下0.1mm以上で平均は0.15mmであった。
【0037】
このゲル形成性液を用いて、その液滴を中空管下端に形成し、この液滴中に中空管内部からカルセオラリア種子を供給して液滴内に種子を導入するとともに、この液滴をそれぞれ10重量%の濃度の塩化カルシウム水溶液(硬化液)中に滴下させて、アルギン酸系水性ゲルからなる被覆ゲル層中に種子を配してなるゲル被覆種子を得た。なお、これら得られたゲル被覆種子の大きさは直径がおよそ1cmの略球形である。なお、上記のように被覆ゲル層に吸水性ポリマーを添加したのは、ゲル被覆種子の製造直後も、貯蔵乾燥後の復元後も取り扱いに充分な強度を有しながら良好な苗立ち性を付与するためである。
<実施の手順>
上記で作製したゲル被覆種子をセルトレイ(288穴、土はメトロミックス350(スコッツ(Scotts)社製)を使用)に播種する。次いで灌水を行い、ゲル被覆種子の周囲を湿潤状態にする。
【0038】
その後、直ちに0.4、1、2あるいは4U/mLの濃度に調製したアルギン酸リアーゼ水溶液をゲル被覆粒子1個あたり1mL、セルトレイ上に噴霧器により均一に噴霧する。なお、それぞれのアルギン酸リアーゼ水溶液の濃度を用いて、ゲル被覆種子48個ずつに対して散布を行った。散布以降は通常の場合と同様に栽培を行った。
<評価>
播種後の苗立ちの推移について、本発明に係るゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤である、0.4、1、2あるいは4U/mLの濃度に調製したアルギン酸リアーゼ水溶液を用いた結果(それぞれ、「0.4U/mL」、「1U/mL」、「2U/mL」あるいは「4U/mL」)を同時に播種を行った、アルギン酸リアーゼ水溶液の散布を行わないゲル被覆種子の結果(「無処理」)と共に、図1に示す。
【0039】
図1により、本発明に係るゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤を用いた場合、0.4、1、2あるいは4U/mLの濃度のいずれの濃度のアルギン酸リアーゼ水溶液を用いた場合であっても、ゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤による処理を行わない場合に比べて苗立ちが著しく向上していることが判る。
【0040】
なお、上記実験過程において、本発明に係るゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤を用いた場合には、ゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解が良好であることが観察され、一方、ゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤を用いない場合には、被覆ゲル層が分解せずに、硬質の膜状となって種子を覆っているのが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、ゲル被覆種子において、植物の苗立ち不良などの障害を引き起こすことなく、ゲル被覆種子の被覆ゲル層を速やかに分解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤を用いたときの播種後の苗立ち率の経緯について調べた結果を、ゲル被覆種子の被覆ゲル層の分解促進剤を用いない場合の結果と共に示したグラフである。
【出願人】 【識別番号】597041747
【氏名又は名称】アグリテクノ矢崎株式会社
【住所又は居所】兵庫県姫路市土山6丁目5番12号
【出願日】 平成16年1月30日(2004.1.30)
【代理人】 【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄

【識別番号】100097858
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 浩史

【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男

【識別番号】100075421
【弁理士】
【氏名又は名称】垣内 勇

【公開番号】 特開2005−210980(P2005−210980A)
【公開日】 平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願番号】 特願2004−22965(P2004−22965)