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【発明の名称】 対地作業機用制御装置
【発明者】 【氏名】塩崎 孝秀
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】小佐野 光
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【要約】 【課題】オペレータの操作負担を低減するべく、幅広い条件に適用可能な対地作業機用制御装置を提供する。

【解決手段】対地作業機用制御装置は、作業部7を昇降可能に備えて対地作業しつつ走行する機体の旋回動作を制御するとともに、その旋回動作と連動して作業部7の稼動と昇降を制御する制御部22を備えて構成され、この制御部22は、機体前進動作の終了による停車検出に基づいて作業部7を所定高さまで上昇制御し、その後に所定距離を機体後進制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部を昇降可能に備えて対地作業しつつ走行する機体の旋回動作を制御するとともに、その旋回動作と連動して作業部の稼動と昇降を制御する制御部を備える対地作業機の制御装置において、
上記制御部は、機体前進動作の終了による停車検出に基づいて作業部を所定高さまで上昇制御し、その後に所定距離を機体後進制御することを特徴とする対地作業機の制御装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、機体に備えた作業部により機体走行とともに対地作業をする田植機等の対地作業機に搭載され、機体の走行動作と作業部の動作を制御する対地作業機用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機体に備えた作業部により機体走行とともに対地作業をする田植機等の対地作業機において、特許文献1に示すように、機体の旋回動作と連動して作業部の動作を制御するようにした対地作業機用制御装置が知られている。この対地作業機用制御装置は、少なくとも、畦際部の周回植付け作業に到るまでの中央部の往復植付け作業において、往復走行する植付行程と、その端部で機体をUターンする旋回行程とを制御する。植付行程においては、植付部の下降と伝動クラッチオンにより、機体の前進走行にしたがって複数条の苗を植付けする。旋回行程においては、植付部のクラッチオフによって植付け動作を停止するとともに、植付部を上昇した上でUターンにより隣接位置に移る。この隣接位置において、植付部の下降とクラッチオンの制御により先の植付け終了位置から植付けを再開する。このように、旋回動作と付帯して植付部の制御を自動で行う旋回付帯制御を導入することにより、オペレータの負担を軽減することができる。
【0003】
しかし、上記旋回付帯制御においては、機体の旋回動作を基準に往復植付け範囲が決められることから、畦際部の周回植付けの植付け幅を残すために、畦際部の旋回動作領域内まで往復植付け範囲を拡大する場合には適用できないので、植付け条数等の作業機仕様と多様な圃場条件との相互関係により、機体旋回と作業部の取扱いのために煩わしい操作が要求され、オペレータが大きな負担を強いられる場合があった。
このような負担を軽減するべく、機体の後進操作と連動して作業部を上昇させるように、いわゆるバックリフト制御が用いられることがあるが、機体後進の際に作業部が上昇しきれずに圃場の表土に喰い込み、条件によっては作業部が破損する事態を招くことがあった。
【特許文献1】特開2002−335720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、畦際部の所要の旋回動作領域内まで往復植付けして機体旋回する際のオペレータの操作負担を低減するとともに、動作の確実性を担保することができる対地作業機用制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、作業部を昇降可能に備えて対地作業しつつ走行する機体の旋回動作を制御するとともに、その旋回動作と連動して作業部の稼動と昇降を制御する制御部を備える対地作業機の制御装置において、上記制御部は、機体前進動作の終了による停車検出に基づいて作業部を所定高さまで上昇制御し、その後に所定距離を機体後進制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の対地作業機用制御装置は、以下の効果を奏する。
上記構成の対地作業機の制御装置は、その制御部の信号処理により、旋回の際に、作業部を稼動しつつ畦際まで機体を前進制御し、機体の停車に基づいて作業部を所定高さまで上昇制御し、その後に機体が後進される。このように、畦際まで作業部を稼動した後に機体を旋回するように制御することから、機体後進時の作業部の畦際部の所要の旋回動作領域内まで往復植付けして機体旋回する際のオペレータの操作負担を低減することができる。また、機体の停車と対応して作業部を上昇することから、作業部の対地接触等の不測の事態を招くことなく、機体の後進と旋回が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施の形態について、以下に図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の対地作業機用制御装置を図1の側面図に示す田植機に適用した例について説明する。田植機1は、転向車輪2、2と後輪3、3とによって4輪駆動可能に機体を支持し、操舵ハンドル4、オペレータシート5、エンジン6、植付部7のほか、各種機器を制御する後述の対地作業機用制御装置を備える。
【0008】
植付部7は、機体後部に昇降部11を介して昇降可能に取付け、図示せぬ植付クラッチを介して機体の走行に合わせて多条植え動作するほか、植付け動作と連動して苗を順次送り出す送出部13、薬肥を吐出する施肥部14、均平用のフロート部15…等を備える。
【0009】
対地作業機用制御装置は、図2のターン切替スイッチ(切替手段)21の切替操作により、「バックターン」「自動ターン」「枕地調節ターン」の中から選択に応じたパターンの旋回処理を行うべく構成する。「自動ターン」は、図3(a)に示すように、旋回のためのハンドル操作に対応して植付を停止し、機体旋回に付帯して所定の手順で植付けを再開する旋回パターンであり、「バックターン」は、図3(b)に示すように、畦に近接した位置まで進んで停車するとともに植付けを停止し、その後の機体後進に続く機体旋回に付帯して植付けを再開するものであり、「枕地調節ターン」は、図3(c)に示すように、機体旋回の手前位置から植付けを停止してさらに前進し、続く機体旋回に付帯して植付けを再開するものである。
【0010】
対地作業機用制御装置において信号処理をする制御部22の入出力構成は、図4の系統図に示すように、旋回パターンを選択するための切替スイッチ21の入力信号のほか、各種のスイッチ、センサの信号を受け、また、走行と作業動作用の各種機器のアクチュエータ類を制御する。具体的には、入力側に、植付け動作指令用のフィンガーレバースイッチ23a、植付け自動動作選択用の植始め自動切替スイッチ23、植付部7の自動上昇選択用の植付部上昇モードスイッチ24、変速操作検知用のHSTレバー位置センサ25、操舵操作検知用のハンドル切れ角センサ26、時間調節用のタイムラグ調節ダイヤル27、ブレーキ操作検知用のブレーキペダルセンサ28等、また、出力側に、油圧シリンダ11aを介して植付部7を昇降する電磁油圧バルブ11b、植付部動作用の植付クラッチ作動ソレノイド31、施肥機動作用の施肥クラッチ作動ソレノイド32、HSTレバー傾動用のHSTモータ33等を接続する。
【0011】
上記制御部22による制御処理は、図5のフローチャートに示すように、各センサ値読込(S1)の後に、変速位置が植付速(S2)になるまで待機してターン選択用の切替スイッチ21をチェック(S3)し、「バックターン」「自動ターン」「枕地調節ターン」の中から選択に応じたパターンの旋回処理を行う。それぞれの旋回処理は、植付停止位置の相違に伴う個別の処理を行う。
【0012】
各旋回パターンについて詳細に説明すると、「バックターン」は、HSTレバー位置センサ25の信号によりHSTレバーが中立(S11)で、主クラッチが「切」(S12)でないことを条件に、すなわち、主クラッチが「入」になるまで待機して植付部「上昇」と植付クラッチ「切」とを指令(S13)する。
【0013】
この場合、HSTレバーの中立検出によって旋回制御の感知精度を向上することができる。また、図示せぬ接触センサ等による畦検知センサを機体前端部に設け、畦の側面に最接近した時の検知信号によりレバー傾動装置33を介してHSTレバーを中立に戻し、自動停車するように構成することにより、畦との衝突を防止して位置決め精度を向上し、以降の制御精度を確保することができる。
【0014】
主クラッチ「切」の場合は、所定時間以上の停車継続を検出した場合を含め、旋回処理を中止することにより、植付け途中の異常停車等に対応することができる。この時は、オペレータが後進操作を行うことにより、「バックターン」の処理に復帰するように構成する。また、植付部「上昇」は、機体の後進動作の前に行われることから、機体後進とともに作業部を上昇する通常のバックリフト動作による機体後進の際に植付部7が上昇しきれずに表土に喰い込むという事態が回避されるので、フロート部15の破損を防止することができる。
【0015】
次いで、衝撃緩和のため所定時間の経過を挟んで所定距離後進(S14)する。この後進の際は、その時間的余裕により、走行方向切替によってオペレータが受けるショックを抑えるとともに、植付部7の上昇動作が遅い場合の表土への喰い込みを防止することができる。また、後進動作による車輪跡によって植え付け済みの圃場面が乱れ、その植苗を倒すことなく車輪跡を消すのは煩わしい手間を要するので、上記後進動作は、植え終わり位置までの範囲に規制する。
【0016】
所定時間の経過後に前進操作(S15)を待ってドライブシャフト回転による距離カウントを開始(S16)する。この前進操作に代えてHSTレバーの傾動指令によって機体を前進させるように構成することにより、操作性の向上を図ることができる。また、機体の前進開始までのタイムラグを設けることにより、オペレータが受けるショックを抑えることができ、さらに、タイムラグ調節ダイヤル27を設けることにより後進時と前進時について好みの時間に設定できるので、操作性を向上することができる。
【0017】
この前進開始に続く旋回のためのハンドル操作(S17)に応じて後述の左または右の所定のターン制御(S18,S18)により、機体の旋回動作に付帯して所定位置から植付けを再開する。所定のターン制御(S18)は、左右共通のサブルーチン処理によるものであり、他の旋回パターンにも組み込み可能に構成する。
【0018】
このように制御処理する「バックターン」の処理は、植付け条数の少ない田植機を使用する場合において、圃場中央部の往復植付け作業において畦に近接した位置まで植付けすることにより、作業部の植付け幅に適合させるべく畦際部の周回植付け作業幅を小さくすることができる。なお、ブレーキペダルセンサ28の信号によって旋回処理の制御を中止するべく構成した場合には、異状に際して安全性を確保することができる。
【0019】
「自動ターン」は、旋回のためのハンドル操作(S21)に応じて上記同様に距離カウントを開始(S22,S22)するとともに、対応するターン制御(S18,S18)により所定位置から植付けを再開する。また、「枕地調節ターン」は、植付「切」操作(S31)を条件として上記同様に距離カウントを開始(S32)し、前進を続行した後に旋回のためのハンドル操作(S33)に応じてターン制御(S18,S18)をすることにより所定位置から植付けを再開する。
【0020】
サブルーチン処理による左または右のターン制御処理の詳細は、図6のフローチャートに示すように、植付部7の上昇モードスイッチ24をチェック(S41)し、上昇モードでない場合にドライブシャフト回転数チェック(S42)によって所定の旋回距離n1になるまで待ち、旋回操作の判定のためにハンドル角度が規定値a(例えば90°)以上であることを条件に植付部「下げ」を指令(S44)する。逆に上昇モードの場合は、植付部「上げ」を指令(S41a)する。ハンドル角度が規定値a以上でない場合は、警報出力(S43a)の上で処理を終了する。
【0021】
次いで、ドライブシャフト回転数チェック(S45)によって所定の旋回距離n2’になるまで待機し、異常操作の判定のためにハンドル角度が規定値b(例えば180°)以上でないことを条件に施肥クラッチ「入」を指令(S47)する。ハンドル角度が規定値b以上であれば、上記同様に、警報出力(S43a)の上で処理を終了する。
【0022】
続いて、植始め自動切替スイッチ23が「入」であることを条件に、ドライブシャフト回転数チェック(S49)によって所定の旋回距離n2になるまで待機し、植付「入」を指令(S50)するとともにドライブシャフト回転カウントクリア(S51)により処理を終了する。また、植始め自動切替スイッチ23が「入」でない場合は処理を終了する。この場合は、後述のように手動操作可能に構成することにより自由度を確保することができる。
【0023】
このように、左または右のターン制御処理により、機体の旋回動作に付帯して植付部7が稼動されることによって所定位置から植付けが再開され、また、植付けに先立つ施肥部の稼動により、長い吐出路による吐出遅れを調整して施肥のタイミングを合わせることができる。
【0024】
また、サブルーチン処理の組み合わせに応じて各種の旋回パターンを簡易に構成することができるので、切替スイッチと簡易な制御処理構成により、条件に応じた旋回処理の適用が可能となる。
【0025】
つぎに、ティーチングにより旋回パターンを選択する方法について説明する。図7は、ティーチングにより旋回パターンを選択するフローチャートである。最初の行程は、オペレータが植付部の「入」「切」を行い、枕地に来た時の旋回状態を記憶させ、この1回目のティーチングにより適合するターン形態を自動選択する。
【0026】
詳細には、ティーチングモード(S61)まで待機後、植付クラッチ「入」のチェック(S62)によって該当しなくなるまで待機し、ハンドル操作(S63)があれば自動ターンモードに設定(S63a)する。ハンドル操作なしにHSTモータの「機体前進」(S64)に該当すれば、枕地調節ターンモードに設定(S64a)する。いずれも非該当であれば、タイマ設定(S65)して待機し、その範囲でHSTモータが「機体前進」(S66)であれば、バックターンモードに設定(S66a)する。
【0027】
このように制御部を構成することにより、ティーチングモードでオペレータが最初の行程を行うことにより、ターン選択スイッチ21を操作しなくても旋回パターンが自動的に選択されるので、操作が簡単になり操作性を向上することができる。
【0028】
つぎに、ターン後の植付クラッチの別の取扱いについて説明する。図8は、ターン後の植付クラッチの別の制御処理のフローチャートである。180°旋回の後において、回転センサ読込(S71)の後、植付クラッチの自動処理の選択スイッチ「オン」をチェック(S72)し、該当すれば、回転カウント値が規定値以上(S73)となるまで待機した上で植付クラッチ「入」を指令(S75)する。また、選択スイッチ「オン」に非該当であれば、フィンガップレバーの下げ操作(S72a)がされるまで待機した上で植付クラッチ「入」を指令(S75)する。
【0029】
このように制御部を構成することにより、植付動作の自動処理と手動処理を植始め自動切替スイッチ23で選択できる。手動処理の場合は、フィンガーレバースイッチ23aの操作に応じて植始めをオペレータが調節することができるので、自動処理と手動処理を作業現場の状況に合わせて使い分けることにより、旋回時の作業性を向上することができる。
【0030】
また、機体旋回と連動して植付けクラッチ「切」とする一方で、昇降モード選択スイッチによって植付部7の昇降モードを自動又は手動とするべく構成することにより、旋回中における植付部7の連動上昇を停止して作業中のままの高さ位置に維持しつつ旋回することが可能となる。このように機体を旋回することにより、植付部7に備えたフロート部15によって圃場の表面を均平することができるので、走行車輪の跡が圃場に残る程度の硬さの場合において、その車輪跡を消して圃場をきれいにすることができる。その一方で、高畦では当たらないように植付部7を上昇して旋回することができる。このように、植付部7についてクラッチと昇降の旋回連動処理のほかに、昇降のみ手動とする2モードのスイッチにより、ユーザの選択範囲が拡大し、適応性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の対地作業機用制御装置を適用した田植機の側面図である。
【図2】ターン選択スイッチである。
【図3】「自動ターン」(a)、「バックターン」(b)、「枕地調節ターン」(c)の各旋回構成図である。
【図4】対地作業機用制御装置の入出力系統図である。
【図5】制御処理のフローチャートである。
【図6】ターン制御の詳細フローチャートである。
【図7】ティーチングにより旋回パターンを選択するフローチャートである。
【図8】ターン後の植付クラッチの別の制御処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1 田植機(対地作業機)
2 転向車輪
3 後輪
4 操舵ハンドル
7 植付部(作業部)
7a 油圧シリンダ
7b 電磁油圧バルブ
11 昇降部
14 施肥部
15 フロート部
21 ターン切替スイッチ(切替手段)
22 制御部(対地作業機用制御装置)
23a フィンガーレバースイッチ
23 自動切替スイッチ
24 上昇モードスイッチ
24 植付部上昇モードスイッチ
25 レバー位置センサ
26 ハンドル切れ角センサ
27 タイムラグ調節ダイヤル
28 ブレーキペダルセンサ
31 植付クラッチ作動ソレノイド
32 施肥クラッチ作動ソレノイド
33 レバー傾動モータ
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市馬木町700番地
【出願日】 平成15年12月25日(2003.12.25)
【代理人】 【識別番号】100077779
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 哲郎

【識別番号】100078260
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 レイ子

【識別番号】100086450
【弁理士】
【氏名又は名称】菊谷 公男

【公開番号】 特開2005−185129(P2005−185129A)
【公開日】 平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願番号】 特願2003−428560(P2003−428560)