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【発明の名称】 乗用管理機
【発明者】 【氏名】矢野 典弘
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【要約】 【課題】薬液散布をより効果的に行い、作物の葉の表面だけでなく裏面にも薬液散布ができる薬液散布装置を備えた乗用管理機、あるいは乗用管理機の車輪の後方にも薬液散布ができ、しかもメンテナンス性の良い薬液散布装置を備えた乗用管理機を提供すること。

【解決手段】薬液散布用の噴霧ノズル33aを有するブーム33と圃場耕耘用のカルチ31を一体的に設け、カルチ31の側部に噴霧角度可変式の薬液噴霧ノズル33aを設けた乗用管理機であり、カルチ31はリヤブーム33と一体的に車体1に取り付けられているので、リヤブーム33を用いて育成中の作物の葉などに薬液散布を行いながら、同時にロータリカルチ31で圃場内の除草をすることができる。また、薬液噴霧ノズル33aの噴霧角度が調整可能であるので、該ノズル33aから畝上で育成中の作物の葉の裏面などに向けて薬液を噴出することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)に作業機昇降機構(R)を備え、該昇降機構(R)に各種作業機を装着する乗用管理機において、
前記昇降機構(R)に、圃場耕耘用の複数のロータリカルチ(31、31,31)を設け、同ロータリカルチ(31、31,31)の後部に噴霧ノズル(33a,33a)を有するリヤブーム(33)を一体的に設けると共に、前記噴霧ノズル(33a)の噴霧角度を可変式に構成したことを特徴とする乗用管理機。
【請求項2】
前記リヤブーム(33)には、前記ロータリカルチ(31、31,31)を作業状態に位置させた時に、車体(1)の後輪(13)後方に位置する噴霧ノズル(33a)を有することを特徴とする請求項1記載の乗用管理機。
【請求項3】
前記リヤブーム(33)はその左右長を前記カルチ(31)の作業幅と略同一に構成し、前記複数のロータリカルチ(31)のそれぞれに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の乗用管理機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液散布装置を備えた乗用管理機に関し、特に薬液散布装置の構造に特徴がある乗用管理機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用管理機は、その車体の前部に、平行リンク形態のリフトリンクを装着し、この前部のヒッチブラケットとロワリンクとの間にリフトシリンダを設けて、このリフトシリンダの伸縮によってリフトリンクを昇降させる構成となっている。
【0003】
そして前記リフトリンクのヒッチブラケットには薬液散布の散布ブームを取り付ける構成が知られている。
【0004】
上記リフトリンクに備えた薬液散布ブームは、野菜などの葉の表だけでなく葉の横から薬剤を散布するためのものであるが、このような薬液散布装置を用いて薬液散布効果を高めた発明が特許文献1に開示されている。
【0005】
また、薬液散布装置を備えた乗用管理機の後方にカルチ爪で畝の表面を浅く耕すカルチベータを備えた発明が特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開平11−28042号公報
【特許文献2】特開平9−37604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1記載の薬液散布装置は、野菜などの葉の表からだけでなく、葉の横側にも薬液が散布されるため、薬液散布効果が高まる。しかし、葉の上側と横から薬液を散布するだけであるので、葉の裏側への薬液の散布効果は十分ではなかった。
【0007】
また、前記特許文献2記載の作業車の後方に設けたカルチベータには薬液散布装置を備えていないので、作業車の走行輪が圃場面を踏み付けるため、その圃場面に伸びていた雑草は土の中に埋まってしまい、薬液散布効果が低下することがあった。
【0008】
本発明の課題は、薬液散布をより効果的に行い、作物の葉の表面だけでなく裏面にも薬液散布ができる薬液散布装置を備えた乗用管理機、あるいは乗用管理機の車輪の後方にも薬液散布ができ、しかもメンテナンス性の良い薬液散布装置を備えた乗用管理機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、走行車体(1)に作業機昇降機構(R)を備え、該昇降機構(R)に各種作業機を装着する乗用管理機において、前記昇降機構(R)に、圃場耕耘用の複数のロータリカルチ(31、31,31)を設け、同ロータリカルチ(31、31,31)の後部に噴霧ノズル(33a,33a)を有するリヤブーム(33)を一体的に設けると共に、前記噴霧ノズル(33a)の噴霧角度を可変式に構成したことを特徴とする乗用管理機である。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記リヤブーム(33)には、前記ロータリカルチ(31、31,31)を作業状態に位置させた時に、車体(1)の後輪(13)後方に位置する噴霧ノズル(33a)を有することを特徴とする請求項1記載の乗用管理機である。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記リヤブーム(33)はその左右長を前記カルチ(31)の作幅と略同一に構成し、前記複数のロータリカルチ(31)のそれぞれに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の乗用管理機である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、リヤブーム(33)はカルチ(31)と一体的に取り付けられているので、カルチ(31)と同時に昇降操作し、リヤブーム(33)に備えた噴霧ノズル(33a)で育成中の作物の葉などに薬液散布を行いながら、同時にロータリカルチ(31)で圃場内の除草をすることができる。また畝上の作物の高さに応じて、葉の裏面などに向けて薬液を散布することができる。
【0013】
また請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、後輪(13)の後方に噴霧ノズル(33a)を備えることで、後輪(13)の踏み跡に噴霧することができ、例えば除草液を畝溝に散布する場合、同装置を前輪前方に備える構成と比較して、散布した除草液が車輪に付着することが無くなり、除草液が除去されることが無くなって除草効果が損なわれることが無くなる。
【0014】
また請求項3記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、リヤブーム(33)が左右幅に亘って複数に分割され、それぞれの対応するロータリカルチ(31)と一体的に車体1に取り付けられているので、前記ブーム(33)を複数のカルチ(31,31,31)の全作業幅に亘る一本状のフレームにて構成することと比較して、畝上、即ち作物の情報空間を高くとることができ、作物との干渉を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1に薬液散布装置を前部に取り付けた乗用管理機の側面図を示し、図2には前記乗用管理機の背面図を示す。本明細書では乗用管理機の進行方向に向かって左右方向を左右といい、前後方向を前後という。
【0016】
乗用管理機の車体1には、前輪12及び後輪13を軸装するアクスルハウジングをローリング自在に支持し、ハンドルポストにより支持されたステアリングハンドル14によって操向可能に設けられると共にボンネット15下のエンジン(図示せず)によって伝動走行される。この車体1には操縦席17の後部から左右両側にわたって操縦席17を囲うように形成された薬液タンク18を車体1に対し着脱自在に搭載し、タンク下方の防除ポンプが、車体1の操縦席17下方に設けられ、この薬液タンク18内の薬液を前側に設けられる散布ブーム19へ圧送する。
【0017】
前記車体1の前部には、ボンネット15の左右両側部に支持されたリフトリンク3が取り付けられている。リフトリンク3は、アッパリンク24とロワリンク25を平行状に配置して、この前端部間をヒッチブラケット4で連結し、後端部間を直立した支柱23に軸支して平行リンク形態に構成され、この平行リンクが進行方向に向かって左右一対の昇降シリンダ27,27により先端部が昇降移動することで散布ブーム19の薬剤散布高さを調節することができる。
【0018】
ヒッチブラケット4の下端部には機体左右方向に伸びる支持枠7を取り付けている。この支持枠7には散布ブーム19の内のセンターブーム43がその前面に取り付けられており、またその左右端部に上方に突出したシリンダ取付支柱26が設けられ、シリンダ取付支柱26の上端には電気的に作動制御される油圧タンク付ソレノイドバルブ28を介して伸縮するローリングシリンダである上下シリンダ(ローリングシリンダ)29の一端が取り付けられ、その下端にはサイドブーム44が回動自在に取り付けられている。ローリングシリンダの他端はサイドブーム44に連結しているのでローリングシリンダの伸縮でサイドブーム44が昇降される。
【0019】
前記散布ブーム19は、支持枠7に直接取付けられるセンターブーム43と、このセンターブーム43の外側に折畳可能に連結されるサイドブーム44とから構成され、各々薬剤噴霧用の噴霧ノズル45(45a、45b)が一定間隔で配置されている。
【0020】
噴霧ノズル45bを有するサイドブーム44はシリンダ取付支柱26を介して支持枠7に取り付けられているが、サイドブーム44は支持枠7に設けられた開閉シリンダ30により開閉される。
またブーム受け40(図1)は車体1の両側面に設けられ、左右のサイドブーム44、44の後端部をそれぞれ支持する構成となっている。
【0021】
乗用管理機の後部にはリフトアーム5及び昇降シリンダ6を有する作業機昇降機構Rが設けられ、作業機昇降機構Rに複数のロータリカルチ31が並列状に連結されており、ロータリカルチ31は圃場に成形した畝間(以下畝溝)の雑草を取り除くために利用される。
【0022】
また、図2に示す本実施例では、車体1の左右方向の幅とほぼ同じ長さのリヤブーム33が車体1の後方に設けられ、該リヤブーム33には複数のカルチ31と一体的に設けられている。カルチは圃場上に設けられた畝溝を耕耘するためのものであり、図2に示す例では3個設けられている。
【0023】
また、上記3つのカルチ31はリヤブーム33と一体的に車体1に取り付けられており、各カルチ31の両端に相当するリヤブーム33の部位に薬液噴霧ノズル33aが設けられている。噴霧ノズル33aの薬液噴霧角度を変更できる構成にしているので、噴霧ノズル33aから畝上で育成中の作物の葉の裏面などに向けて薬液を噴出することができる。
【0024】
従って、散布ブーム19とリヤブーム33を用いて育成中の作物の葉などに薬液散布を行いながら、同時にロータリカルチ31で圃場内の除草をすることができる。
【0025】
このように圃場で育成中の作物の上部からの散布と作物の葉の表だけでなく、裏にも薬液散布を行うことで防除効果が大いに高まり、また同時に中耕作業(畝溝を深く耕す作業)を行えるので、作業効率がよい。
【0026】
また、各ロータリカルチ31と一体のリヤブーム33の薬液噴霧ノズル33aには薬液タンク18と一体の散布ホース35を介して薬液タンク18から薬液が供給されるが、該散布ホース35とリヤブーム33の配管との間には電磁弁34が設けられ、それぞれの薬液噴霧ノズル33aへの薬液供給量を制御している。
【0027】
さらにリヤブーム33の薬液噴霧ノズル33aの噴霧角度が調整可能であるので、後輪13による圃場面の踏み跡にも噴霧でき、後輪13による圃場面の踏み跡における除草効果が従来より良くなる。
【0028】
図3には別の実施例の前記乗用管理機の背面図を示す。
本実施例では図2に示す実施例と同一の構成部材には同一番号を付した。
本実施例ではリヤブーム33が分割され、それぞれ対応するロータリカルチ31の後部と一体的に車体1に取り付けられている。
【0029】
各ロータリカルチ31に対応するリヤブーム331〜333の両端部にはそれぞれ薬液噴霧ノズル331a,331b〜333a,333bが設けられている。
【0030】
また、薬液タンク18と一体の散布ホース35を介して薬液タンク18から薬液が供給されるが、該散布ホース35とリヤブーム33の配管との間には薬液分配器36を設ける。薬液分配器36はロータリカルチ31のフレーム37に設置され、該薬液分配器36と各リヤブーム331〜333の端部とはそれぞれL字状の配管継ぎ手38a〜38cで接続されている。
【0031】
このように、薬液分配器36と各リヤブーム331〜333の間を最短のホース長さで配索できる位置にL字状継ぎ手38a〜38cを設け、かつ噴霧ノズル331a,331b〜333a,333bと散布ホース35が干渉しないよう鉛直方向に向けた構造とした。
【0032】
また、薬液分配器36と散布ホース35の接続部はワンタッチクイックカプラ39で構成されているので、各リヤブーム331〜333とそれぞれ一体物であるロータリカルチ31を乗用型管理機本体から取り外す必要がある場合には、前記ワンタッチクイックカプラ39の部分で分離が容易に行え、修理時などには便利である。
【0033】
そのため、これらの薬液供給構造を低コストで設計でき、カルチ31を支持フレーム37に対して左右調整する時にも、散布ホース35が邪魔にならない。さらに噴霧ノズル331a,331b〜333a,333bと散布ホース35及び配管継ぎ手38a〜38cの干渉がないので、薬液散布性能が高まる。
【0034】
更に、両端のロータリカルチ31を挟んで畝とは反対側の各リヤブーム331,333の側面の噴霧ノズル331b,333aは、その薬液噴霧角度が調整可能であるので、該ノズル331b,333aを乗用型管理機の後輪13の直後方部に位置させることができる。
【0035】
これは、後輪13の通り道となる圃場面がタイヤに踏まれて薬液が土中に埋もれて薬効が無くなり、最も草が生えやすくなるので、タイヤ踏み跡に集中的に薬液を散布できるようにするためである。後輪13の走行踏となる圃場面に噴霧ノズルから薬液が噴霧されると畝上の作物の高さに応じて、葉の裏面などに向けて薬液を散布することができるなどの効果がある。
【0036】
また、操縦席17の横には、ロータリカルチ31を上昇させるためのポジションレバー10が設けられているが、ロータリカルチ31の最上げ時にポジションレバー10の端部と接触する箇所に薬液噴霧停止スイッチ11を設けている。そのためロータリカルチ31がポジションレバー10の操作により最上げ位置にリフトされると同時に噴霧ノズル331a,331b〜333a,333bからの薬液噴霧が停止する。
【0037】
このようにリヤブーム331〜333からの薬液散布をポジションレバー10の動きに連動化させることで、乗用管理機が旋回する毎に操縦者が行う薬液散布用コックなどの入り切り操作の煩わしさを無くし、乗用管理機の操作性を向上することができる。
【0038】
リヤブーム33、331〜333には畝の作物の左右から葉の裏側にも薬液を噴霧できる噴霧ノズル33a,331a,331b〜333a,333bを配置するが、噴霧ノズル33a,331a,331b〜333a,333bは、その噴霧ノズル角度を変えることができるスイッチノズル構造としたので、それぞれの作物に対して最適な効果(例えば除草液を畝溝に散布する場合、同装置を前輪前方に備える構成と比較して、散布した除草液が車輪に付着することが無くなり、除草液が除去されることが無くなって除草効果が損なわれることが無くなる。)のあがる散布角度で薬液を散布できる構成とした。
【0039】
乗用管理機が既に中耕(カルチ作業)及び薬液散布した部分を再度通ることがないので、車体前部に備える構成と比較して、車輪が散布済みの薬液を踏みつけて薬液を除去する事がないので、作業能率が高まる。
【0040】
従来は、図2に示す乗用管理機の背面図において、右端部カルチ31と左端部カルチ31の間に単一のリヤブーム33を設けているので、畝上の作物が成長してくるとリヤブーム33と作物が干渉し、作物を損傷することで病気の発生や収量低下の要因となっていた。
【0041】
しかし、図3に示す構造では、リヤブーム331〜333が各ロータリカルチ31毎に独立して設置され、しかも、それぞれのリヤブーム331〜333の噴霧ノズル331a,331b〜333a,333bが畝上の作物の上方付近に突出しないようにしている。
【0042】
そのため、リヤブーム331〜333と作物が干渉することがなくなり、薬液散布精度を高めることができたので、作物の安定収穫につながる。
また、それぞれのリヤブーム331〜333とカルチ31を一体的に動かすことができるので作物の植付け条間の調節を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、薬液散布装置を備えた乗用管理機に関し、例えば、薬液、散水等の流体を蓄えた各種タンクに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態の薬液散布装置を取り付けた乗用管理機の側面図である。
【図2】図1の乗用管理機の背面図である。
【図3】本発明の実施の形態の薬液散布装置を取り付けた乗用管理機の背面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 乗用管理機車体 3 リフトリンク
4 ヒッチブラケット 5 リフトアーム
6 昇降シリンダ 7 支持枠
10 ポジションレバー 11 薬液噴霧停止スイッチ
12 前輪 13 後輪
14 ステアリングハンドル 15 ボンネット
17 操縦席 18 薬液タンク
19 散布ブーム 23 支柱
24 アッパリンク 25 ロワリンク
26 シリンダ取付支柱 27 昇降シリンダ
28 ソレノイドバルブ 29 上下シリンダ(ローリングシリンダ)
30 開閉シリンダ 31 カルチ
33(331〜333) リヤブーム
33a(331a〜333b) 薬液噴霧ノズル
34 電磁弁 35 散布ホース
36 薬液分配器 37 フレーム
38a〜38c 配管継ぎ手 39ワンタッチクイックカプラ
40 ブーム受け 43 センターブーム
44 サイドブーム 45(45a、45b) 噴霧ノズル
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市馬木町700番地
【出願日】 平成16年1月30日(2004.1.30)
【代理人】 【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義

【公開番号】 特開2005−211014(P2005−211014A)
【公開日】 平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願番号】 特願2004−24280(P2004−24280)