| 【発明の名称】 |
発光素子 |
| 【発明者】 |
【氏名】小▲高▼ 秀文
【氏名】高田 章
【氏名】川崎 雅司
【氏名】橘 浩昭
【氏名】山田 寿一
【氏名】沖本 洋一
【氏名】澤 彰仁
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| 【要約】 |
【課題】高電流密度領域で発光効率が低下せず、さらに通電状態においても発光劣化しにくい発光素子の提供。
【解決手段】正極と、発光層と、負極とを有する発光素子であって、 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 正極と、発光層と、負極とを有する発光素子であって、 前記正極と前記発光層との間に第1の磁性層を有し、前記発光層と前記負極との間に第2の磁性層を有し、該第1の磁性層と該第2の磁性層との磁極の向きが互いに平行である発光素子。 【請求項2】 前記発光層の材料が、蛍光発光材料を含有する発光材料である請求項1に記載の発光素子。 【請求項3】 前記第1の磁性層および/または前記第2の磁性層の材料が、NiFe(ニッケル鉄)を含有する磁性材料である請求項1または2に記載の発光素子。 【請求項4】 前記第1の磁性層および/または前記第2の磁性層の材料が、400〜750nmの可視光の平均減衰係数が0.1以下の材料を含有する磁性材料である請求項1または2に記載の発光素子。 【請求項5】 前記磁性材料が、Co、Mn、FeおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を、酸化物および/または窒化物に添加してなる磁性材料である請求項4に記載の発光素子。 【請求項6】 前記第1の磁性層および/または前記第2の磁性層の材料が、スピン偏極率が20%以上の磁性材料である請求項1または2に記載の発光素子。 【請求項7】 前記磁性材料が、La(1−x) Sr(x) MnO3 (式中、xは0.2〜0.5の数を表す。)で表される磁性材料、A2 FeMO6 (式中、AはCa、BaまたはSrを表し、MはMo、ReまたはWを表す。)で表される磁性材料およびA2 CrMO6 (式中、AはCa、BaまたはSrを表し、MはMo、ReまたはWを表す。)で表される磁性材料からなる群より選択される少なくとも1つである請求項6に記載の発光素子。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は磁性層を有する発光素子に関する。 【0002】 【従来の技術】 有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子は、高速応答性や高効率の発光素子として応用研究が盛んに行われており、例えば、図2に示すような基本的な構成、すなわち、透明基板12と、透明電極(正極)13と、ホール輸送層15と発光層を兼ねる電子輸送層(発光層)16とからなる有機層19と、金属電極(負極)18とを積層した構成で表される有機EL発光素子10が、提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。 【0003】 このような構成を有する公知の有機EL素子は整流性を示し、また、金属電極が陰極に、透明電極が陽極になるように電界を印加すると、金属電極から電子が発光層に注入され、透明電極からはホール(正孔)が注入されることが知られている。 注入された電子とホールとは、発光層内で再結合することで励起子を生起させ、この励起子が基底状態に遷移する際に発光する。この際、ホール輸送層は電子のブロッキング層の役割を果たすため、発光層とホール輸送層との界面における再結合効率が上がり、発光効率が高くなる。 【0004】 また、透明電極として仕事関数が大きな錫ドープ酸化インジウム(In2 O3 −SnO2 、以下、「ITO」と略す。)等を用いることにより、透明電極からホール輸送層へのホール注入が容易となる。一方、金属電極としてアルミニウム、マグネシウムもしくはそれらの合金等の仕事関数の小さな金属材料を用いることにより、金属電極から電子輸送層(発光層)への電子注入が容易となる。 さらに、発光層として、電子輸送性と発光特性を有するアルミキノリノール錯体(例えば、Alq3)等が用いられ、ホール輸送層として、トリフェニルジアミン誘導体(例えば、α−NPD)等の電子供与性を有する材料が用いられている。 【0005】 このように、有機EL素子は、基板上に形成された厚さ数千オングストロングの有機層からなる発光層を、1対の電極が対向して挟む構造をとっており、その電極の一方から電子を、他方からホールを注入して、発光層内で電子とホールが再結合した時に光が発生する機構となっている。 しかしながら、このような機構では、それらのスピンの向きは統計的にランダムとなり、注入された電子とホールとの再結合によって生成する一重項励起子および三重項励起子の発生確率が1:3となることが、非特許文献2により確認されている。 そのため、Alq3、α−NPD等の蛍光発光材料を用いた有機EL素子においては、一重項励起子が励起子全体の25%であることから、その発光効率も25%以下に制約されていることが明らかとなっている。 【0006】 これに対して、一重項励起子を経由した蛍光発光を利用するのでなく、三重項励起子を経由したりん光発光を利用する有機EL素子の検討が提案されている(例えば、非特許文献3および4、特許文献1〜3参照。)。 りん光発光の利用が注目されている理由は、原理的に高い発光効率が期待できるからである。具体的には、上述したように、一重項励起子が基底状態に遷移する際の蛍光発光を利用する従来の有機EL素子の発光効率が最大で25%であるのに対し、三重項励起子が基底状態に遷移する際のりん光発光を利用すれば、原理的には75%の発光効率が期待でき、さらに、エネルギー的に高い一重項励起状態から三重項励起状態への項間交差による遷移をあわせれば、りん光発光材料を用いた有機EL素子では、原理的には100%の発光効率が期待できる。 【0007】 しかしながら、りん光発光材料を用いた場合、電流密度の低い領域においては高い発光効率が得られるが、電流密度の高い領域においてはtriplet−triplet (T−T) annihilationのため著しい発光効率の低下が起こるという問題があることが知られている(例えば、非特許文献5参照。)。特に、高電流密度領域における発光を利用するパッシブ型フルカラーディスプレーにおいては、T−T annihilationによる発光効率低下が問題となっており、その発光効率は、従来の蛍光発光材料を用いた場合と同程度となっている。 【0008】 また、りん光発光を利用した有機EL素子では、通電状態の発光劣化が問題となる。りん光発光素子の発光劣化の原因は明らかではないが、一般に三重項励起子の寿命が一重項励起子の寿命より、3桁以上長いために、分子がエネルギーの高い状態に長く置かれるため、周辺物質との反応、励起多量体(エキサイプレックスあるいはエキシマー)の形成、分子微細構造の変化、周辺物質の構造変化などが起こるのではないかと考えられている(例えば、特許文献4参照。)。 【0009】 【非特許文献1】 Macromol. Symp. ,1997,Vol. 125,p. 1−48 【非特許文献2】 M.A.Baldo, D.F.O’Brien, M.E.Thompson, S.R.Forrest 著,「Excitonic siglet−triplet ration in a semiconductiong organicthin film 」,Phys. Rev. B, 1999,Vol. 60,p. 14422−14428 【非特許文献3】 D.F.O’Brien ら著, 「Improved energy transfer in electrophosphorecent device 」, Applied Physics Letter ,1990,Vol. 74,No.3,p.422 【非特許文献4】 M.A.Baldo ら著,「Very high−effeciency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence 」,Applied Physics Letters ,1999,Vol.75,No. 1,p.4 【非特許文献5】 「有機ELデバイス材料の基礎から応用まで」 ,2002,日本表面科学会主催第23回表面科学セミナー 【特許文献1】 特開平11−329739号公報 【特許文献2】 特開平11−256148号公報 【特許文献3】 特開平8−319482号公報 【特許文献4】 特開2002−175884号公報 【0010】 【発明が解決しようとする課題】 そこで、本発明は、高電流密度領域で発光効率が低下せず、さらに通電状態においても発光劣化しにくい発光素子を提供することを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上述した種々の問題を解決すべく鋭意研究した結果、ホールおよび電子を磁極の向きが平行である2つの磁性膜を介して電極から注入することにより、ホールおよび電子のスピン状態を制御できること、および、それにより一重項励起子を用いて極めて高い発光効率を実現することができることを見出し、本発明を発光素子を達成するに至った。すなわち、本発明は以下に示す(1)〜(7)の発光素子を提供する。 【0012】 (1)正極と、発光層と、負極とを有する発光素子であって、 上記正極と上記発光層との間に第1の磁性層を有し、上記発光層と上記負極との間に第2の磁性層を有し、該第1の磁性層と該第2の磁性層との磁極の向きが互いに平行である発光素子。 【0013】 (2)上記発光層の材料が、蛍光発光材料を含有する発光材料である上記(1)に記載の発光素子。 【0014】 (3)上記第1の磁性層および/または上記第2の磁性層の材料が、NiFe(ニッケル鉄)を含有する磁性材料である上記(1)または(2)に記載の発光素子。 【0015】 (4)上記第1の磁性層および/または上記第2の磁性層の材料が、400〜750nmの可視光の平均減衰係数が0.1以下の材料を含有する磁性材料である上記(1)または(2)に記載の発光素子。 【0016】 (5)上記磁性材料が、Co、Mn、FeおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を、酸化物および/または窒化物に添加してなる磁性材料である上記(4)に記載の発光素子。 【0017】 (6)上記第1の磁性層および/または上記第2の磁性層の材料が、スピン偏極率が20%以上の磁性材料である上記(1)または(2)に記載の発光素子。 【0018】 (7)上記磁性材料が、La(1−x) Sr(x) MnO3 (式中、xは0.2〜0.5の数を表す。)で表される磁性材料、A2 FeMO6 (式中、AはCa、BaまたはSrを表し、MはMo、ReまたはWを表す。)で表される磁性材料およびA2 CrMO6 (式中、AはCa、BaまたはSrを表し、MはMo、ReまたはWを表す。)で表される磁性材料からなる群より選択される少なくとも1つである上記(6)に記載の発光素子。 【0019】 【発明の実施の形態】 以下に、本発明の発光素子について詳細に説明する。 本発明の発光素子は、正極と、発光層と、負極とを有する発光素子であって、該正極と該発光層との間に第1の磁性層を有し、該発光層と該負極との間に第2の磁性層を有し、該第1の磁性層と該第2の磁性層との磁極の向きが互いに平行である発光素子である。 ここで、発光素子とは、発光材料を含有する発光層に対して、正極からホールを、負極から電子を注入することが可能であって、該発光層内で生起するホールと電子との再結合によって光を放出することが可能な素子のことであり、該発光層は単一層であっても、または多層であってもよい。 また、本発明の発光素子の層構成の好適な実施態様の一例を示す模式図を図1に示すが、本発明はこれに限定されない。 【0020】 図1に示すように、発光素子1は、透明基板2上に、正極である透明電極3、第1の磁性層4、ホール輸送層5、発光層を兼ねる電子輸送層(発光層)6、第2の磁性層7および負極である金属電極8をこの順に積層させたものである。 次に、本発明の発光素子を構成する上記各要素について具体的に説明する。 【0021】 <透明基板> 上記透明基板は、本発明の発光素子の必須の構成要素ではないが、発光素子を使用する際に土台として必要なものであり、上記発光層で発生する光を透過するものであれば特に限定されない。このような透明基板としては、従来公知の透明基板を用いることがでる。具体的には、ガラス基板、プラスチック基板等を例示することができ、これらのうち、ガラス基板を用いることが好ましい。 上記ガラス基板としては、具体的には、例えば、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、石英ガラス、無アルカリガラス、その他の各種ガラスからなる透明ガラス板等を用いることができる。これらのうち、ソーダライムシリケートガラスを用いることが上記透明電極との密着性に優れる理由から好ましい。また、上記ガラス基板は、無色透明なものであっても、有色透明なものであってもよい。 また、上記ガラス基板は、特に平面状のものである必要はなく、本発明の効果を奏する範囲において、曲面状のガラス基板を用いてもよい。 なお、上記透明基板は、後述する透明電極の材料としてチタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )を用いれば、SrTiO3 が透明基板としても機能するため、本発明の発光素子を使用する際の土台として必ずしも独立して必要なものではない。 【0022】 <透明電極> 上記透明電極は、従来公知の透明電極を用いることができ、具体的には、例えば、ITO電極、亜鉛ドープ酸化インジウム(In2 O3 −ZnO、以下、「IZO」と略す)電極、フッ素ドープ酸化錫電極等が挙げられ、仕事関数が大きく透明な材料を用いて形成されていることが、発光層へのホールの注入が容易となる理由から好ましい。仕事関数が大きく透明な材料としては、具体的には、ITO、IZO、SrTiO3 、フッ素ドープ酸化錫等が好適に例示される。 【0023】 <発光層> 上記発光層は、透明電極から注入されるホールと、金属電極から発光層に注入される電子との再結合により励起子が生起する層である。 上記発光層の材料としては、ホールと電子との再結合により光を放射する発光分子であれば特に限定されず、従来公知の発光分子を用いることができ、具体的には、例えば、アルミキノリノール錯体(例えば、Alq3)等の蛍光発光材料;イリジウム錯体(例えば、Ir(ppy)3 )等のりん光発光材料;希土類金属錯体;アントラセン類(例えば、アントラセン);ポリフェニレンビニレン類(例えば、ポリフェニレンビニレン(PPV))、ポリフルオレン類、ポリチオフェン類等のπ共役系高分子材料;色素含有ポリマーである非共役系高分子材料を含有する発光材料が挙げられる。 これらのうち、アルミキノリノール錯体(例えば、Alq3)を含有する蛍光発光材料を用いることが、電子輸送性と発光特性を有する理由から好ましい。 【0024】 また、上記発光層は、注入されるホールの該発光層内での易動度を高めることが可能なホール輸送材料を含有していてもよく、同様に、注入される電子の該発光層内での易動度を高めることが可能な電子輸送材料を含有していてもよい。 上記ホール輸送材料としては、具体的には、例えば、トリフェニルジアミン誘導体(例えば、α−NPD)、TPD、アリールアミン類(例えば、ジフェニルアミン、N−フェニル−m−トルイジン)、ポリフェニレンビニレン等が挙げられる。 上記電子輸送材料としては、具体的には、例えば、上述したアルミキノリノール錯体(例えば、Alq3)、オキサジアゾール類(例えば、オキサジアゾール)、トリアゾール類(例えば、トリアゾール)、フェナントロリン類(例えば、フェナントロリン)等が挙げられる。 【0025】 さらに、上記発光層は、該発光層内に注入されるホールの注入効率を向上させることが可能なホール注入材料を含有していてもよく、同様に、該発光層内に注入される電子の注入効率を向上させることが可能な電子注入材料を含有していてもよい。 上記ホール注入材料としては、具体的には、例えば、アリールアミン類(例えば、ジフェニルアミン、N−フェニル−m−トルイジン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン)、ルイス酸ドープ有機材料、ポリアニリン+有機酸、ポリチオフェン+ポリマー酸等が挙げられる。 上記電子注入材料としては、具体的には、例えば、アルカリ金属(例えば、Li、Na、Ka)、フッ化リチウム、酸化リチウム、リチウム錯体、アルカリ金属ドープ有機材料、バリウム、カルシウム等が挙げられる。 【0026】 一方、上記発光層は、特定の空間的位置に、ホールまたは電子を補足しもしくは輸送性を低下させるためのホールブロック材料または電子ブロック材料を含んでいてもよい。 【0027】 また、上記ホール輸送材料、上記電子輸送材料、上記ホール注入材料、上記電子注入材料、上記ホールブロック材料および電子ブロック材料は、上述したように発光層に含有されていてもよいが、発光層とは別の層、すなわち、ホール輸送層、電子輸送層、ホール注入層、電子注入層、ホールブロック層および電子ブロック層を形成していてもよい。 したがって、本発明の発光素子の層構成としては、図1に示す層構成の一例以外に、具体的には、a)透明基板上に、透明電極、第1の磁性層、発光層、第2の磁性層および金属電極をこの順に積層する構成;b)透明基板上に、透明電極、第1の磁性層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、第2の磁性層および金属電極をこの順に積層する構成;c)透明基板上に、透明電極、第1の磁性層、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子注入層、第2の磁性層および金属電極をこの順に積層する構成;d)透明基板上に、透明電極、第1の磁性層、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、第2の磁性層および金属電極をこの順に積層する構成等が例示される。 【0028】 <金属電極> 上記金属電極は、従来公知の金属電極を用いることができ、具体的には、例えば、アルミニウム(Al)電極、マグネシウム(Mg)電極もしくはそれらの合金からなる電極等が挙げられ、仕事関数が小さな金属材料を用いて形成されていることが、発光層への電子の注入が容易となる理由から好ましい。仕事関数が小さな金属材料としては、具体的には、Al、Mgもしくはそれらの合金等が好適に例示される。 【0029】 <磁性層> 上記第1の磁性層は、上記透明電極から上記発光層に注入されるホールのスピンの向きを制御するために形成されており、同様に、上記第2の磁性層は、上記金属電極から発光層に注入されるホールのスピンの向きを制御するために形成されている。 このような第1の磁性層および第2の磁性層をともに有する本発明の発光素子においては、該第1の磁性層と該第2の磁性層との磁極の向きが互いに平行である。 本発明者らは、発光素子をこのような構成とすることにより、上記透明電極から発光層に注入されるホールのスピンの向きと上記金属電極から発光層に注入されるホールのスピンの向きとが反平行となるため、発光層における一重項励起子の生成比率を増大させることができ、理論的には、一重項励起子と三重項励起子の比が2:2(発光効率が50%)となるまで増大させることができることを見出し、本発明を完成させたものである。 【0030】 このような第1の磁性層および第2の磁性層の材料としては、それぞれ同一のものであっても、異なったものであってもよく、従来公知の磁性体(例えば、Fe、Co、Ni、Al等の金属元素を含む強磁性体、反磁性体)を用いることができ、NiFe(ニッケル鉄)を含有する磁性材料が好適に例示される。しかしながら、これらの磁性体は400〜750nmの可視光をわずかではあるが吸収するため、上記透明電極上に積層される第1の磁性層の材料として用いる場合は、発光層で発生する光を効率良く取り出せる観点から、膜厚が0.05〜200nmとなるように用いることが好ましい。 そのため、上記第1の磁性層および第2の磁性層の材料、特に第1の磁性層の材料としては、400〜750nmの可視光の平均減衰係数が0.1以下の材料を含有する磁性材料であることが好ましく、Co、Mn、FeおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を、酸化物および/または窒化物に添加してなる磁性材料であることがより好ましい。 【0031】 ここで、400〜750nmの可視光の平均減衰係数とは、T=T0 exp(−4π/λ・kx)(式中、Tは透過率(%)、T0 は初期透過率(%)を表し、λは測定波長(nm)、xは膜厚(nm)を表し、kは減衰係数を表す。)で表される数式から求められる減衰係数kの平均値である。 400〜750nmの可視光の平均減衰係数が0.1以下の材料としては、具体的には、Coを6原子%添加したTiO2 等が好適に例示される。また、TiO2 中に添加するCoは、0.001〜20原子%であることが好ましい。 上記第1の磁性層および第2の磁性層の材料が、400〜750nmの可視光の平均減衰係数が0.1以下の材料であるとき、該第1の磁性層および該第2の磁性層の膜厚は、それぞれ0.1〜500nmであることが好ましい。 【0032】 また、上記第1の磁性層および第2の磁性層の材料は、スピン偏極率が20%以上の磁性材料であることが好ましく、40%以上の磁性材料であることがより好ましい。これは、発光層における発光効率が、上記第1の磁性層および第2の磁性層のそれぞれから発光層に注入されるホールおよび電子のスピン注入効率と、発光層内でのスピン散乱に依存するためである。 ここで、スピン偏極率とは、磁性材料における電子のスピンのうち、上向きスピン数をX、下向きのスピンの数をYとしたときの、数式(X−Y)/(X+Y)×100により求められる上向きスピン数の割合である。 このようなスピン偏極率が20%以上の磁性材料としては、La(1−x) Sr(x) MnO3 (式中、xは0.2〜0.5の数を表す。)で表される磁性材料(スピン偏極率80〜100%)、A2 FeMO6 (式中、AはCa、BaまたはSrを表し、MはMo、ReまたはWを表す。)で表される磁性材料(スピン偏極率70〜100%)、A2 CrMO6 (式中、AはCa、BaまたはSrを表し、MはMo、ReまたはWを表す。)で表される磁性材料(スピン偏極率70〜100%)、CrがドープされたGaAs(スピン偏極率70〜100%)等が好適に例示される。 【0033】 また、上記第1の磁性層と上記第2の磁性層との磁極の向きを互いに平行にする手段としては、上記第1の磁性層および上記第2の磁性層が積層された発光素子の状態で、該発光素子を磁場中に入れることにより磁極の向きを互いに平行にする手段が好適に例示される。 【0034】 また、本発明の発光素子は、上述した透明電極、発光層、ホール輸送層、電子輸送層、ホール注入層、電子注入層、第1の磁性層、第2の磁性層および金属電極以外に、所望により中間層を適宜設けていてもよい。 このような中間層としては、具体的には、例えば、光の反射特性を変調するための反射鏡や部分透過鏡、特定光を透過するフィルタ、光の出射タイミングを調整する光スイッチ、光の位相特性を調整するための波長板、光の出射方向を拡散するための拡散板、素子を構成する物質の外部光や熱、酸素、水分等による劣化を防ぐための保護膜等が挙げられる。 【0035】 このような層構成を有する本発明の発光素子は、上述したように発光層における発光効率が高く、さらに、100mA/cm2 以上、特に120mA/cm2 以上という高電流密度領域でも発光効率が低下せず、一重項励起子による蛍光発光を利用しているため通電状態においても発光劣化が発生しにくく、輝度半減時間が長くなり有用である。 【0036】 本発明の発光素子を製造する製造方法としては、有機ELの製造プロセスとして公知の前処理工程および成膜工程により製造することができる。 ここで、上記前処理工程とは、透明基板上に透明電極を形成させる工程と、形成された透明電極をパターニングする工程と、パターニングされた透明電極上に絶縁膜を形成させる工程と、洗浄工程とを具備する工程である。 本発明においては、この前処理工程として、具体的には、例えば、スパッタリング法によりガラス基板上にITOからなる透明電極を形成し、該透明電極をエッチング法によりパターニングし、パターニングされた透明電極上にフォトレジストを絶縁膜として形成し、さらに絶縁膜が形成された基板をUV、酵素プラズマ等で洗浄する工程を用いることができる。 【0037】 また、上記成膜工程とは、上記前処理工程後の基板に、発光層および所望により備えられるホール輸送層、電子輸送層、ホール注入層、電子注入層を成膜する工程と、金属電極を形成する工程とを具備する工程であって、本発明においては、上記第1の磁性層を上記前処理工程で形成した絶縁膜上に成膜し、上記第2の磁性層を発光層または所望により備えられる電子輸送層もしくは電子注入層上に成膜させる工程を具備している。 ここで、発光層および所望により備えられるホール輸送層、電子輸送層、ホール注入層、電子注入層は、上述した各層の材料(ホール輸送材料、電子輸送材料、ホール注入材料、電子注入材料)を、例えば、真空蒸着法もしくはスピンコーティング法による塗布を用いて成膜することができる。 また、第1の磁性層および第2の磁性層は、上述した磁性層の材料を、例えば、スパッタリング法もしくは真空蒸着法を用いて成膜することができ、金属電極は、上記透明電極と同様、上述した金属電極の材料をスパッタリング法もしくは真空蒸着法を用いて形成することができる。 【0038】 また、本発明においては、上記成膜工程後、外観、特性の向上、長寿命化のための後処理を行ってもよい。このような後処理の処理方法としては、具体的には、例えば、熱アニーリング、放射線照射、電子線照射、光照射、電波照射、磁力線照射、超音波照射等が挙げられる。さらに、接着、融着、電着、蒸着、圧着、染着、熔融成形、混練、プレス成形および塗工等で例示される手段を用いて、得られる発光素子を複合化させることができる。 【0039】 【実施例】 以下に、実施例を用いて本発明の発光素子について詳細に説明する。だたし、本発明はこれに限定されるものではない。 (実施例1) 実施例1の発光素子として、図3の模式図に示す層構成[32:透明基板、33:ITO(正極)、34:Ni0.8 Fe0.2 (第1の磁性層)、35:α−NPD(ホール輸送層)、36:Alq3(電子輸送層(発光層))、37:Ni0.8 Fe0.2 (第2の磁性層)、38:Al(負極)]を有する有機EL素子を、以下に示す条件で作成した。 ソーダライムシリケートガラス基板(厚さ:0.5mm)上に、SiO2 をアルカリバリア層として膜厚が100nmになるように成膜し、その上に透明電極としてITOをスパッタリング法により厚さ100nmになるように形成した後、該透明電極上に、Ni0.8 Fe0.2 からなる第1の磁性層を膜厚が4nmになるようにスパッタリング法により成膜した。Ni0.8 Fe0.2 のスピン偏極率は40%であった。 上記透明電極の形成は、ITOの抵抗値を下げるため、Ar=97sccm、O2 =3sccmの流量とし、Snが6原子%添加されたIn2 O3 ターゲットを用い、基板温度300℃で、DC(直流)スパッタリング法により行った。また、上記第1の磁性層の成膜は、Ni0.8 Fe0.2 と同様の組成を有するターゲットを用い、Ar雰囲気中で、DCスパッタリング法により行った。 次に、上記第1の磁性層上に、以下の有機層、第2の磁性層および金属電極を、真空チャンバー(真空度:10−4Pa)内で抵抗加熱による真空蒸着法で、この順に成膜(形成)することで発光素子が得られた。 有機層は、α−NPDからなるホール輸送層(膜厚:80nm)と、発光特性および電子輸送特性を有するAlq3からなる電子輸送層(発光層)(膜厚:60nm)とからなっており、また、該有機層上の第2の磁性層は、Ni0.8 Fe0.2 からなる膜(膜厚:10nm)であって、該第2の磁性層上の金属電極は、厚さ100nmのAlであった。 得られた発光素子を、超伝導磁石を用いて、第1の磁性層と第2の磁性層との磁極の向きが互いに平行となるように磁化した。 【0040】 (実施例2) 実施例2の発光素子として、図4の模式図に示す層構成[42:透明基板、43:ITO(正極)、44:Co添加TiO2 (第1の磁性層)、45:α−NPD(ホール輸送層)、46:Alq3(電子輸送層(発光層))、47:Ni0.8 Fe0.2 (第2の磁性層)、48:Al(負極)]を有する有機EL素子を、以下に示す条件で作成した。 実施例1と同様の条件で、ソーダライムシリケートガラス基板(厚さ:0.5mm)上に、SiO2 をアルカリバリア層として膜厚が100nmになるように成膜し、その上に透明電極としてITOを厚さ100nmになるように形成した後、該透明電極上に、Coを6原子%添加したTiO2 膜からなる第1の磁性層を膜厚が100nmになるようにRFスパッタリング法により成膜した。Coを6原子%添加したTiO2 の400〜750nmの可視光の平均減衰係数は0.01であり、スピン偏極率は60%であった。 このRFスパッタリング法による成膜は、ターゲットとしてCoを6原子%添加したTiO2 を用い、酸素雰囲気中、基板温度300℃の条件で行った。成膜後のXRD分析の結果から、第1の磁性層は、アナターゼ構造をもつTiO2 であることが分かった。 有機層、第2の磁性層および金属電極については、実施例1と同様の条件で成膜、形成することで、発光素子が得られた。 得られた発光素子を、実施例1と同様、超伝導磁石を用いて、第1の磁性層と第2の磁性層との磁極の向きが互いに平行となるように磁化した。 【0041】 (実施例3) 実施例3の発光素子として、図5の模式図に示す層構成[52:SrTiO3 (透明基板)、54:LSMO(第1の磁性層)、55:α−NPD(ホール輸送層)、56:Alq3(電子輸送層(発光層))、57:Ni0.8 Fe0.2 (第2の磁性層)、58:Al(負極)]を有する有機EL素子を、以下に示す条件で作成した。 透明電極としての機能を有するSrTiO3 基板(厚さ:2mm)上に、La0.75Sr0.25MnO3 (LSMO)からなる第1の磁性層を膜厚が10nmになるようにRFスパッタリング法により成膜した。LSMOのスピン偏極率は90%であった。 このRFスパッタリング法による成膜は、ターゲットとしてLa0.75Sr0.25MnO3 を用い、酸素雰囲気中、酸素圧力1mTorr下、基板温度870℃の条件で行い、成膜後、1気圧の酸素雰囲気で試料を冷却した。 有機層、第2の磁性層および金属電極については、実施例1と同様の条件で成膜、形成することで、発光素子が得られた。 得られた発光素子を、実施例1と同様、超伝導磁石を用いて、第1の磁性層と第2の磁性層との磁極の向きが互いに平行となるように磁化した。 【0042】 (比較例1) 比較例1の発光素子として、図6の模式図に示す層構成[62:透明基板、63:ITO(正極)、65:α−NPD(ホール輸送層)、66:Alq3(電子輸送層(発光層))、68:Al(負極)]を有する、磁性層がない有機EL素子を、以下に示す条件で作成した。 磁性層以外の透明電極および金属電極の形成条件、ホール輸送層および電子輸送層(発光層)の成膜条件は、実施例1と同様とした。 【0043】 (比較例2) 比較例2の発光素子として、図7の模式図に示す層構成[72:透明基板、73:ITO(正極)、75:α−NPD(ホール輸送層)、80:Ir(ppy)3 (発光層)、81:BCP(ホールブロック層)、76:Alq3(電子輸送層(発光層))、78:Al(負極)]を有する有機EL素子を、以下に示す条件で作成した。 実施例1と同様の条件で、ソーダライムシリケートガラス基板(厚さ:0.5mm)上に、SiO2 をアルカリバリア層として膜厚が100nmになるように成膜し、その上に透明電極としてITOを厚さ100nmになるように形成し、該透明電極上に、α−NPDからなるホール輸送層を膜厚が80nmになるように成膜した。 次に、上記ホール輸送層上に、りん光発光性を示すイリジウム金属錯体(Ir(ppy)3 )を6重量パーセント含有するCBPを膜厚が50nmになるように成膜し、さらにホールブロック層としてBCPを膜厚が20nmになるように成膜した。 また、発光特性および電子輸送特性を有するAlq3からなる電子輸送層(発光層)、および、厚さ100nmのAlからなる金属電極については実施例1と同様の方法で作成した。 【0044】 実施例1〜3、比較例1および2で得られた各発光素子(有機EL素子)の発光効率、輝度半減時間を以下に示す条件で評価した。なお、発光素子の劣化の原因として酸素および水が考えられるため、その原因を除くために、真空チャンバーから取り出し後、乾燥窒素フロー中で各測定を行った。 【0045】 (発光効率) 得られた各発光素子において、透明電極(ITO)を正極に、金属電極(Al)を負極にして電圧を印加し、一定の電流密度(50、100、200mA/cm2 )で輝度(cd/m2 )を測定した。この結果を下記表1に示す。 【0046】 【表1】
【0047】 表1に示す結果から、実施例1〜3の発光素子が、磁性層がない比較例1の発光素子よりも、高い発光効率を有していることが分かり、特に、100mA/cm2 、200mA/cm2 の高電流密度領域では、りん光発光材料を用いた比較例2の発光素子と同等もしくはそれ以上の発光効率を示すことが明らかとなった。 【0048】 (輝度半減時間) 得られた各発光素子において、透明電極(ITO)を正極に、金属電極(Al)を負極にして電圧を印加し、電流密度150mA/cm2 の下で輝度半減時間を測定することにより、通電状態における発光劣化を確認した。この結果を下記表2に示す。 【0049】 【表2】
【0050】 表2に示す結果から、実施例1〜3の発光素子は、比較例1の発光素子と同等もしくはそれ以上の輝度半減時間を示すことが分かり、りん光発光材料を用いた比較例2の発光素子よりも2倍以上の輝度半減時間を示すことが明らかとなった。これにより、実施例1〜3の発光素子は、りん光発光材料を用いた比較例2の発光素子よりも、通電状態において発光劣化しにくいことが分かった。 【0051】 【発明の効果】 以上のことから、本発明は、高電流密度領域で発光効率が低下せず、さらに通電状態においても発光劣化しにくい発光素子を提供することができるため有用である。 【図面の簡単な説明】 【図1】図1は、本発明の発光素子の層構成の好適な実施態様の一例を示す模式図である。 【図2】図2は、従来の有機EL発光素子の層構成の一例を示す模式図である。 【図3】図3は、実施例1の発光素子の層構成を示す模式図である。 【図4】図4は、実施例2の発光素子の層構成を示す模式図である。 【図5】図5は、実施例3の発光素子の層構成を示す模式図である。 【図6】図6は、比較例1の発光素子の層構成を示す模式図である。 【図7】図7は、比較例2の発光素子の層構成を示す模式図である。 【符号の説明】 1 発光素子 2,12 透明基板 3,13 透明電極(正極) 4 第1の磁性層 5,15 ホール輸送層 6,16 電子輸送層(発光層) 7 第2の磁性層 8,18 金属電極(負極) 10 有機EL発光素子 19 有機層 32 透明基板 33 ITO(正極) 34 Ni0.8 Fe0.2 (第1の磁性層) 35 α−NPD(ホール輸送層) 36 Alq3(電子輸送層(発光層)) 37 Ni0.8 Fe0.2 (第2の磁性層) 38 Al(負極) 42 透明基板 43 ITO(正極) 44 Co添加TiO2 (第1の磁性層) 45 α−NPD(ホール輸送層) 46 Alq3(電子輸送層(発光層)) 47 Ni0.8 Fe0.2 (第2の磁性層) 48 Al(負極) 52 SrTiO3 (透明基板) 54 LSMO(第1の磁性層) 55 α−NPD(ホール輸送層) 56 Alq3(電子輸送層(発光層)) 57 Ni0.8 Fe0.2 (第2の磁性層) 58 Al(負極) 62 透明基板 63 ITO(正極) 65 α−NPD(ホール輸送層) 66 Alq3(電子輸送層(発光層)) 68 Al(負極) 72 透明基板 73 ITO(正極) 75 α−NPD(ホール輸送層) 76 Alq3(電子輸送層(発光層)) 78 Al(負極) 80 Ir(ppy)3 (発光層) 81 BCP(ホールブロック層)
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| 【出願人】 |
【識別番号】301021533 【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所 【識別番号】000000044 【氏名又は名称】旭硝子株式会社
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| 【出願日】 |
平成15年3月26日(2003.3.26) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100080159 【弁理士】 【氏名又は名称】渡辺 望稔
【識別番号】100090217 【弁理士】 【氏名又は名称】三和 晴子
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| 【公開番号】 |
特開2004−296224(P2004−296224A) |
| 【公開日】 |
平成16年10月21日(2004.10.21) |
| 【出願番号】 |
特願2003−85933(P2003−85933) |
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