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【発明の名称】 発振回路
【発明者】 【氏名】西山 哲哉
【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティーディーケイ株式会社内

【氏名】小林 浩
【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティーディーケイ株式会社内

【要約】 【課題】位相雑音を低減可能な発振回路を提供する。

【解決手段】本構成の並列共振回路においては、並列共振周波数を少なくとも2つ有する。高い周波数の並列共振周波数をf、低い周波数の並列共振周波数をf、一番低い周波数をf’とする。ここで、いずれかの並列共振周波数f,fを、いずれかの直列共振周波数f,fに限りなく近づけることができ、共振周波数fの近傍におけるXとXが逆性となっていれば、共振回路のQを高くすることができ、位相雑音を低減することができる。このような共振周波数は存在する。ここでは、低い方の並列共振周波数fを、直列共振周波数fに限りなく近づけるように、第1リアクタンス素子列Xの可変容量を調整することとする。目的の周波数はfであるので、最終的には周波数fにおいてQ値が高くなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負性抵抗回路に結合した共振回路を有する発振回路において、
前記共振回路は、互いに並列接続された第1リアクタンス素子列及び基準リアクタンス素子列を備える並列共振回路を備え、
前記第1リアクタンス素子列及び前記基準リアクタンス素子列は、それぞれ、直列共振周波数を有し、
少なくとも前記第1リアクタンス素子列は可変容量のキャパシタを有し、
前記可変容量の可動範囲は、前記第1リアクタンス素子列及び前記基準リアクタンス素子列の直列共振周波数を前記並列共振回路における並列共振周波数に相対的に限りなく近づけることができるように設定されることを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記並列共振周波数近傍における前記第1リアクタンス素子列及び前記基準リアクタンス素子例のリアクタンスの一方は誘導性であり、他方は容量性であることを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記基準リアクタンス素子列に対して並列に設けられた付加リアクタンス素子列を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記可変容量の可動範囲は、並列接続された前記リアクタンス素子列それぞれのリアクタンスの逆数の和が零となることができるように設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発振回路。
【請求項5】
前記基準リアクタンス素子列は可変容量のキャパシタを含んでいることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発振回路。
【請求項6】
前記第1リアクタンス素子列の前記キャパシタの容量と、前記基準リアクタンス素子列の前記キャパシタの容量とを略等しくしたまま、これらの容量を変化させることができ、且つ、前記第1リアクタンス素子列のコイルのインダクタンスと前記基準リアクタンス素子列のコイルのインダクタンスとは一致しないように近接していることを特徴とする請求項5に記載の発振回路。
【請求項7】
前記基準リアクタンス素子列に対して並列に接続され、抵抗、キャパシタ及びコイルを結線してなり、並列共振周波数を有するバイアス回路を備え、
前記和が零となる解を与える前記並列共振回路の並列共振周波数は少なくとも2つあり、
前記バイアス回路の有する並列共振周波数と、前記並列共振回路の目的とする並列共振周波数とを略一致させたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発振回路。
【請求項8】
前記バイアス回路と前記基準リアクタンス素子列との間を接続するコイルを備えることを特徴とする請求項7に記載の発振回路。
【請求項9】
前記並列共振回路の形成される基板と前記基板を収容するパッケージを備え、前記コイルは前記基板及び前記パッケージのインダクタンスであることを特徴とする請求項7又は8に記載の発振回路。
【請求項10】
前記負性抵抗回路はトランジスタを有し、
前記トランジスタの電流経路とグランド電位の間に所定素子列が接続されており、
前記所定素子列はコイル及びキャパシタを含み、
前記並列共振回路は並列共振周波数を少なくとも2つ有し、
目的とする並列共振周波数における前記発振回路の全コンダクタンスが負となり、
目的外の並列共振周波数における前記発振回路の全コンダクタンスが正となるように、
前記所定素子列のコイル及びキャパシタの値が設定されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の発振回路。
【請求項11】
前記第1リアクタンス素子列又は前記基準リアクタンス素子列に含まれるキャパシタに対して並列に接続されたコイルを備えることを特徴とする請求項請求項1乃至10のいずれか1項に記載の発振回路。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発振回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
発振回路を用いる通信技術等の分野では、位相雑音の低減が要望されている。位相雑音はQ(Quality factor)値に依存するため、位相雑音を小さくするためには発振回路を構成する共振回路におけるQ値を高くすればよい。Q値は共振回路の共振の鋭さをあらわす量であり、共振周波数の周りの帯域幅(電力が半分になる範囲)を与える量である。従来の発振回路は、負性抵抗回路に並列共振回路を結合させてなり、並列共振回路における電力消費分を負性抵抗回路で補充することによって、発振を持続させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、通常の並列共振回路は、例えば、1つのコンデンサと1つのコイルを並列に接続しているのみであり、コイルの特性によってQ値が確定するため、原理的にQ値を高くすることはできず、したがって、位相雑音を低減することができない。詳説すれば、Q値は発振回路の抵抗と並列共振時の共振回路のリアクタンスで決定されるため、これらの値は有限であり、したがって、Q値を大きくすることができない。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、位相雑音を低減可能な発振回路を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するため、第1の発明は、負性抵抗回路に結合した共振回路を有する発振回路において、前記共振回路は、互いに並列接続された第1リアクタンス素子列及び基準リアクタンス素子列を備える並列共振回路を備え、前記第1リアクタンス素子列及び前記基準リアクタンス素子列は、それぞれ、直列共振周波数を有し、少なくとも前記第1リアクタンス素子列は可変容量のキャパシタを有し、前記可変容量の可動範囲は、前記第1リアクタンス素子列及び基準リアクタンス素子列の直列共振周波数を前記並列共振回路における並列共振周波数に相対的に限りなく近づけることができるように設定されることを特徴とする。
【0005】
すなわち、本願発明者らは、並列共振回路を鋭意検討した結果、並列共振回路において、上述の素子列を用いた場合には、並列共振周波数を目的の上記直列共振周波数に限りなく近づけることができる旨を発見した。したがって、第1リアクタンス素子列の可変容量の可動範囲を上記の如く設定すれば、並列共振周波数に目的の上記直列共振周波数を限りなく近づけることが可能となるので、この場合には並列共振回路のQ値を向上させることができる。換言すれば、Q値は発振回路における位相雑音と相関を有するため、当該位相雑音を低減させることができる。
【0006】
なお、上記素子列における「列」とは、単一の素子、例えば、キャパシタのみを理論的に有する場合を含むことと定義する。また、「略」、「近傍」、「近接」なる語は、対象となるパラメータの数値が目的の数値に対して30%以内の範囲に設定されることを意味し、それで十分目的を達成している。
【0007】
また、第2の発明は、前記並列共振周波数近傍における前記第1リアクタンス素子列及び前記基準リアクタンス素子例のリアクタンスの一方は誘導性であり、他方は容量性であることを特徴とする。
【0008】
この場合には、共振回路が並列共振周波数を有することとなる。
【0009】
また、第3の発明は、基準リアクタンス素子列に対して並列に設けられた付加リアクタンス素子列を備えることを特徴とする。
【0010】
すなわち、付加リアクタンス素子列を設けても、上述の作用と同様の作用を奏する。このような付加リアクタンスは、例えば、トランジスタ、パッケージ、パッド、ESD(静電気放電)素子等の寄生容量から構成される。
【0011】
また、第4の発明は、前記可変容量の可動範囲が、並列接続された前記リアクタンス素子列それぞれのリアクタンスの逆数の和が零となることができるように設定されていることを特徴とする。
【0012】
この場合、リアクタンスの値を適当に設定することによって、上述のように周波数の接近を達成することができる。
【0013】
すなわち、共振回路のQ値はリアクタンスの逆数に比例するため、リアクタンスが零に近づくほどQ値は高くなる。各素子列のリアクタンスのうちの2つが零に近づく容量とインダクタンスの組み合わせは存在する。
【0014】
第1リアクタンス素子列のリアクタンスが正(誘導性)で、付加リアクタンス素子列のリアクタンスが負(容量性)で、且つ、基準リアクタンス素子列のリアクタンスが負(容量性)の場合や、或いは、第1リアクタンス素子列のリアクタンスが負(容量性)で、付加リアクタンス素子列のリアクタンスが負(容量性)で、且つ、基準リアクタンス素子列のリアクタンスが正(誘導性)の場合である。符号の異なるリアクタンス同士が一致しようとする場合には、これらの値が異なるという条件がある場合においても、残りの素子列のリアクタンスが解を与えることができるので、リアクタンスの逆数の和は零とすることができる。したがって、各素子列のリアクタンスのうちの2つが零に近づく容量とインダクタンスの組み合わせ、すなわち、理論的にはQ値を無限大とする容量とインダクタンスの組み合わせが存在することとなる。
【0015】
これは、目的の素子列の直列共振周波数に、共振回路の並列共振周波数を相対的に限りなく近づけることができる解が存在するということに他ならない。
【0016】
第1リアクタンス素子列が誘導性、基準リアクタンス素子列が容量性の場合、Q値は、共振回路の等価並列抵抗又はコンダクタンスの逆数に比例し、第1リアクタンス素子列のリアクタンスに反比例して増加する傾向にある。第1リアクタンス素子列の直列共振周波数を一方の周波数とすると、この周波数に共振回路の並列共振周波数を相対的に近づけることができるのであるから、この周波数における共振回路のQ値は高くすることができる。
【0017】
第5の発明は、上述の発明において、基準リアクタンス素子列が可変容量のキャパシタを含んでいることを特徴とする。帯域が広いため、第1リアクタンス素子列の直列共振周波数を1つの並列共振周波数に近づけることができない場合においても、基準リアクタンス素子列の容量を変化させることによって、その直列共振周波数を変化させることができるので、基準リアクタンス素子列の直列共振周波数を第1リアクタンス素子列の直列共振周波数に近づけることによって、並列共振周波数に近づけることができ、したがって、この並列共振周波数におけるQ値を高くすることができる。
【0018】
また、第1リアクタンス素子列の可変容量のキャパシタと、基準リアクタンス素子列の可変容量のキャパシタのそれぞれの容量を略等しく保持し、第1リアクタンス素子列のコイルのインダクタンス(L1)と、基準リアクタンス素子列のコイルのインダクタンス(L3)とを略等しく(但し、L1≠L3)すれば、第1及び基準リアクタンス素子列の直列共振周波数の間隔は略固定したまま、並列共振周波数を移動させることができるため、可変容量の全範囲でQ値を高い値に保つことができる。なお、第1リアクタンス素子列は容量性であっても誘導性であってもよい。
【0019】
すなわち、第6の発明に係る発振回路は、第1リアクタンス素子列のキャパシタの容量と、基準リアクタンス素子列の前記キャパシタの容量を略等しくしたまま、これらの容量を変化させることができ、且つ、前記第1リアクタンス素子列のコイルのインダクタンスと前記基準リアクタンス素子列のコイルのインダクタンスとは一致しないように近接していることを特徴とする。
【0020】
また、第7の発明は、第1〜6の発明の場合に、基準リアクタンス素子列に対して並列に接続され、抵抗、キャパシタ及びコイルを結線してなり、並列共振周波数を有するバイアス回路を備え、和が零となる解を与える並列共振回路の並列共振周波数は少なくとも2つあり、バイアス回路の有する並列共振周波数と、並列共振回路の目的とする並列共振周波数とを略一致させたことを特徴とする。
【0021】
特定の周波数における共振回路側のコンダクタンス分が大きい場合には、発振回路における負性が低下し、発振が生じにくくなる。また、特定の周波数における共振回路側のコンダクタンス分が小さい場合には、発振がしやすくなる。
【0022】
ここでは、並列共振回路の目的外の並列共振周波数での共振回路側のコンダクタンスが大きくなるように設定されているので、目的とする並列共振周波数では負性を有し、発振させることができるが、目的外の並列共振周波数では負性がなくなり、発振を抑制することができる。
【0023】
また、逆に言えば、バイアス回路の容量及びインダクタンスの値を目的となる並列共振周波数に合うようにすることにより、共振回路側のコンダクタンスを小さくすることができるため、目的となる並列共振周波数では、目的外の並列共振周波数よりも高いQ値で共振を行うことができる。
【0024】
また、バイアス回路の持つ並列共振周波数を、第1リアクタンス素子列の直列共振周波数と基準リアクタンス素子列の直列共振周波数との間に設定することによって、バイアス回路の容量及びインダクタンスからなる系の並列共振周波数を、目的となる並列共振周波数に一致させることもできる。
【0025】
また、第8の発明に係る発振回路は、第7の発明において、前記バイアス回路と前記基準リアクタンス素子列との間を接続するコイルを備えることを特徴とする。バイアス回路と基準リアクタンス素子列との間にコイルを接続すると、このコイルの挿入によって、基準リアクタンス素子列のリアクタンスが零となる場合においても、理論的にQ値を無限大とすることができる。
【0026】
このようなコイルが挿入される場合には、コイルの後に基準リアクタンス素子列が接続されるようになっていれば、Q値を無限大とすることができる。コイルとしては、寄生コイルが考えられるが、寄生コイルを用いない場合においても、バイアス回路にコイルを接続することによって、共振回路側の等価並列抵抗の値を大きく、コンダクタンスの値を小さくすることができる。
【0027】
また、第9の発明は、第7又は8の発明において、並列共振回路の形成される基板と、この基板(例えば、IC)を収容するパッケージを備え、上記(寄生)コイルは基板及び前記パッケージのインダクタンスであることを特徴とする。すなわち、パッケージや基板による寄生コイルによっても、本発明の回路はQ値の低下を十分に抑制することができる。なお、基準リアクタンス素子列は、寄生コイルに接続される。
【0028】
また、負性抵抗回路はトランジスタを有し、トランジスタの電流経路とグランド電位の間に所定素子列が接続されており、所定素子列はコイル及びキャパシタを含み、所定素子列のコイル及びキャパシタからなる系の直列共振周波数は、並列共振回路の並列共振周波数に一致させて設定することもできる。
【0029】
トランジスタは共振回路に負性を与えるための素子であり、ベースへの電流入力やゲートへの電圧入力によって、トランジスタを流れる電流が変化する。これに並列に設けられた所定素子列は負性抵抗回路の直列共振周波数を決定するが、この直列共振周波数は原則的には並列共振回路の目的の並列共振周波数に一致する。もちろん、並列共振回路における目的外の並列共振周波数成分を抑制するため、負性抵抗回路の直列共振周波数と、並列共振回路の目的の並列共振周波数をずらすこともできる。
【0030】
すなわち、負性抵抗回路側の直列共振周波数は、本来、並列共振回路における目的となる並列共振周波数に一致することが好ましいが、この場合には、並列共振回路における目的外の並列共振周波数における負性を抑制することができない。ここでは、所定素子列の直列共振周波数から決定される負性抵抗回路の直列共振周波数を、並列共振回路における目的となる並列共振周波数からずらしているので、並列共振回路における目的外の並列共振周波数における負性を無くすことができる。
【0031】
目的周波数が、基準リアクタンス素子列及び第1リアクタンス素子列の直列共振周波数に近づくにつれ、共振回路側のアドミッタンスのコンダクタンス分は大きくなり、負性がなくなる。
【0032】
基準リアクタンス素子列及び第1リアクタンス素子列に直列に接続された寄生抵抗を考える場合、目的周波数が基準リアクタンス素子列及び第1リアクタンス素子列の直列共振周波数に近づくと、共振回路側のコンダクタンスが大きくなり、発振しにくくなる。目的周波数において、当該所定素子列のリアクタンスが零となるように、所定素子列を構成するコイルのインダクタンス及びキャパシタの容量を設定することで、この問題は解決することができ、負性を大きくすることができる。
【0033】
詳説すれば、所定素子列の直列共振周波数と並列共振回路の目的の並列共振周波数は一致することが本来望ましいが、並列共振回路における目的外の並列共振周波数における負性をなくすため、所定素子列における直列共振周波数を、目的の並列共振周波数と一致させず、また、目的外の並列共振周波数での発振回路の全コンダクタンスを正とすれば、並列共振回路における目的外の並列共振周波数における発振が抑制される。
【0034】
所定素子列のコイル及びキャパシタからなる系の直列共振周波数は、前記基準リアクタンス素子列の直列共振周波数からずらして設定することができる。もちろん、所定素子列のコイル及びキャパシタからなる系の直列共振周波数も、前記第1リアクタンス素子列の直列共振周波数からずらして設定することもできる。
【0035】
第10の発明では、第1〜第9の発明において、負性抵抗回路はトランジスタを有し、トランジスタの電流経路とグランド電位との間に所定素子列が接続されており、所定素子列はコイル及びキャパシタを含み、並列共振回路は並列共振周波数を少なくとも2つ有し、目的とする並列共振周波数における前記発振回路の全コンダクタンスが負となり、目的外の並列共振周波数(一方の並列共振周波数)における発振回路の全コンダクタンスが正となるように、所定素子列のコイル及びキャパシタの値が設定されることを特徴とする。
【0036】
この場合、上述の理由から、目的外の共振周波数における発振が抑制される。
【0037】
第11の発明では、第1リアクタンス素子列又は基準リアクタンス素子列に含まれるキャパシタに対して並列に接続されたコイルを備えることを特徴とする。この場合、当該コイルとキャパシタによって、それぞれの直列共振周波数におけるコンダクタンスが小さくなるため、Q値を高くすることができる。
【0038】
なお、この時、第1及び基準リアクタンス素子列の各リアクタンス素子列においては直列共振周波数が2つ生じるが、第1リアクタンス素子列と基準リアクタンス素子列のリアクタンスが、並列共振周波数近傍において、逆性(一方が誘導性、他方が容量性)となる構成とすれば、上述と同様な効果が得られる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態に係る発振回路ついて説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0040】
図1は実施の形態に係る発振回路の回路図である。なお、以下の回路図における結線は図示の通りであり、これは実際の回路の等価回路である。この回路はバイアス回路を有しているが図示していない。当該等価回路通りに回路設計と結線を行っても、これに基づいて実際の回路設計と結線を行ってもよい。また、各要素の物理量は、説明の便宜上、要素と同一の符号で示すものとする。なお、上記素子列における「列」とは、単一の素子、例えば、キャパシタのみを理論的に含む場合を含むことと定義する。
【0041】
この発振回路は、負性抵抗回路Nに端子Tを介して結合した共振回路を備えており、共振回路は並列共振回路Sからなる。並列共振回路Sにおける電力消費分は、これに結合した負性抵抗回路Nによって補充され、並列共振回路Sにおいては発振が持続する。
【0042】
並列共振回路Sは、互いに並列に接続された第1リアクタンス素子列X、付加リアクタンス素子列X及び基準リアクタンス素子列Xを備えている。本例では、並列接続の両端子の一方をグランド電位とし、当該端子の両端子間に発振が生じるものとする。
【0043】
負性抵抗回路Nの抵抗値を−Rvとする。また、各素子列X、X、Xに対して等価的に並列に抵抗Rrが挿入されている。発振回路全体の負性抵抗−Rtは、−RvとRrの並列合成抵抗であり、目的の共振周波数において負性に設定される。
【0044】
第1リアクタンス素子列Xは可変容量のキャパシタを有しており、当該容量を可変することにより、そのリアクタンスX及び直列共振周波数fを変化させることができる。なお、第1リアクタンス素子列Xからなる系の直列共振周波数fは、キャパシタとコイルを用いた場合、その容量及びインダクタンスの積の平方根に反比例する。基準リアクタンス素子列Xの直列共振周波数をfとする。
【0045】
<fを設定し、fとfの間の並列共振周波数を考えた場合、第1リアクタンス素子列XのリアクタンスXは誘導性(L性)であり、リアクタンスXの符号は正である。なお、誘導性、容量性なる語は、共振回路の並列共振周波数近傍におけるリアクタンスの特性を意味する。
【0046】
付加リアクタンス素子列Xは固定容量のキャパシタを有しており、容量を可変することにより、そのリアクタンスXを変化させることができる。
【0047】
基準リアクタンス素子列Xからなる系の直列共振周波数fは、キャパシタとコイルを用いた場合、その容量及びインダクタンスの積の平方根に反比例する。基準リアクタンス素子列XのリアクタンスXは、f<fとすると、容量性(C性)であり、リアクタンスXの符号は負である。すなわち、第1リアクタンス素子列Xと基準リアクタンス素子列Xのリアクタンスは逆性に設定される。換言すれば、リアクタンスXとXは、一方が容量性であって、他方が誘導性であればよい。
【0048】
直列共振周波数fよりも直列共振周波数fが大きくなるように設定する場合(f<f)、このとき、L>Lであるが(図14(3)参照)、この場合、並列共振周波数近傍(fとする)におけるリアクタンスXが誘導性、リアクタンスXが容量性となる。
【0049】
逆に、直列共振周波数fよりも直列共振周波数fが小さくなるように設定する場合(f<f)、この場合、並列共振周波数近傍におけるリアクタンスXが容量性、リアクタンスXが誘導性となる。
【0050】
バイアス回路を考えない場合、本構成の並列共振回路においては、並列共振周波数は、f<fにおいては2つ、f<fにおいても2つ存在することとなる。高い周波数の並列共振周波数をf、低い周波数の並列共振周波数をfとする。ここで、例えば、f<fの場合、並列共振周波数fを、直列共振周波数f,fに相対的に限りなく近づけることができれば、その周波数における共振回路のQを高くすることができ、位相雑音を低減することができる。このような共振周波数は存在する。
【0051】
ここでは、Q=|Rr/X|より、低い方の並列共振周波数fを、直列共振周波数fに相対的に限りなく近づけるように、第1リアクタンス素子列Xの可変容量を調整することとする。可変容量調整によって、直列共振周波数fばかりでなく、並列共振周波数fも移動するので、周波数移動は相対的なものである。目的の周波数はfであるので、最終的には周波数f付近においてQ値が高くなる。
【0052】
図15は周波数とリアクタンスの関係を示すグラフである。第1リアクタンス素子列Xの可変容量を調整することにより、直列共振周波数fを並列共振周波数fに近づけることができる。この場合、第1リアクタンス素子列Xの可変容量を調整することによって、並列共振周波数fも移動する。直列共振周波数fを直列共振周波数fに近づけていくと、結果的には直列共振周波数fとfは並列共振周波数fに限りなく近くなる。なお、Q値の増加によって位相雑音は低減する。
【0053】
なお、直列共振周波数fはリアクタンスが零となる周波数であり、並列共振周波数fは並列接続されたリアクタンスの逆数の和が零となる周波数である。なお、Q値は直列共振周波数fと並列共振周波数fとの間隔が狭いほど高くなる。なお、Q値とリアクタンスXの関係式は図14の(1)に示される。但し、XはX〜Xのいずれか1つである。
【0054】
とfを近づけた場合、Q値が理論的には無限大へと発散する条件は以下の通りである。なお、f<fとする。
▲1▼第1リアクタンス素子列XのリアクタンスXが誘導性(正)であること。▲2▼基準リアクタンス素子列XのリアクタンスXが容量性(負)であること。▲3▼上記可変容量の可動範囲は、第1リアクタンス素子列XのリアクタンスXの逆数(1/X)と、基準リアクタンス素子列XのリアクタンスXの逆数(1/X)との和が零となることができるように設定されていること。付加リアクタンス素子列Xを用いる場合には、リアクタンスXの逆数(1/X)を含めた和が零となるように設定されており(図14の(2)参照)、並列共振周波数fは、f〜fまで可変する。
【0055】
第1リアクタンス素子列X及び基準リアクタンス素子列Xが直列共振周波数f、fを有し、リアクタンスXとリアクタンスXが逆性の場合、fとfの間に並列共振周波数を有することが前提である。
【0056】
なお、f>fである場合、リアクタンスXが容量性であって、リアクタンスXが誘導性となる。
【0057】
この場合、リアクタンスの値を適当に設定することによって、上述の周波数の近接を達成することができる。
【0058】
詳説すれば、並列共振回路のQ値はリアクタンスの逆数に比例し、共振回路側の等価並列抵抗Rrに比例する。リアクタンスが零に近づくほどQ値は高くなる。f<fの場合、第1リアクタンス素子列XのリアクタンスXが正(誘導性)で、付加リアクタンス素子列XのリアクタンスXが負(容量性)で、且つ、基準リアクタンス素子列XのリアクタンスXが負(容量性)となる。すなわち、3つの並列ラインのリアクタンスが、それぞれL性、C性、C性の組み合わせの場合、f<f<fが存在し、上記条件を満たす上述の値が存在する。このようなパラメータは数値解析をすれば求めることができる。
【0059】
また、f<fの場合、第1リアクタンス素子列XのリアクタンスXが負(容量性)で、付加リアクタンス素子列XのリアクタンスXが負(容量性)で、且つ、基準リアクタンス素子列XのリアクタンスXが正(誘導性)となる。すなわち、3つの並列ラインのリアクタンスが、それぞれC性、C性、L性の組み合わせの場合、f<f<fが存在し、上記条件を満たす上述の値が存在する。
【0060】
符号の異なるリアクタンス同士が一致しようとする場合には、これらの値が異なるという条件がある場合においても、残りの素子列のリアクタンスが解を与えることができるので、各リアクタンスX、X、Xの逆数の和は零とすることができる。
【0061】
したがって、各素子列のリアクタンスX、Xが零に近づく容量とインダクタンスの組み合わせは存在し、すなわち、Q値はリアクタンスに反比例するのであるから、理論的にはQ値を無限大とする容量とインダクタンスの組み合わせは存在することとなる。
【0062】
これは目的の素子列の直列共振周波数に、並列共振回路Sの並列共振周波数を相対的に限りなく近づけることができる解が存在するということに他ならない。
【0063】
一例としては、第1リアクタンス素子列Xの直列共振周波数fを目的の周波数とすると、fとfを近づけることによって、結果的にfとfを近づけることができるので、この周波数における共振回路のQ値を高くすることができる。逆に言えば、fとfだけを近づけることはできず、fの移動にfも同調してfに近づく。
【0064】
図2は図1に記載の共振回路の好適な例を示す回路図である。
【0065】
第1リアクタンス素子列Xは直列接続されたコイルL及び可変容量キャパシタCを含んでなる。基準リアクタンス素子列Xは直列接続されたコイルL及び可変容量キャパシタCを含んでなる。付加リアクタンス素子列XはキャパシタCを含んでなる。
【0066】
上述のように、誘導性の第1リアクタンス素子列Xは容量を変化させることで、リアクタンスX及び直列共振周波数fを変化させることができたが、同様に、容量性の基準リアクタンス素子列Xも可変容量のキャパシタCを含んでいる。キャパシタCの容量を変化させることによって、直列共振周波数fを変化させることができる。広帯域でキャパシタCの容量変動に伴う直列共振周波数fの変化に追従するように、キャパシタCの容量変化させることにより、常に高いQ値を得ることができる。
【0067】
キャパシタCの容量と、キャパシタCの容量とを略等しくしたまま、これらの容量を変化させ、且つ、コイルLのインダクタンスとコイルLのインダクタンスとが一致しないように近接させる。この場合、直列共振周波数f,fの間隔は略固定したまま、並列共振周波数fを移動させることができるため、可変容量の全範囲でQ値を高い値に保つことができる。
【0068】
図3は図1に記載の共振回路の別の好適な例を示す回路図である。この回路では、図2に示した共振回路において、基準リアクタンス素子列Xに対して並列に接続され、抵抗、キャパシタ及びコイルを結線してなるバイアス回路Bを備えたものである。バイアス回路Bは、共振回路Sの両端子間に、すなわち、各素子列に対して並列に抵抗Rを挿入し、抵抗Rとグランド電位との間にキャパシタCを挿入し、キャパシタCに対して並列にコイルLを接続したものである。
【0069】
上述のように、上述の逆数和が零となる解を与える並列共振回路Sの並列共振周波数はfとfの少なくとも2つある。バイアス回路BのキャパシタCの容量C及びコイルLのインダクタンスLは、並列共振周波数の一方(f)におけるバイアス回路BのアドミッタンスのコンダクタンスG(f=f)分が、並列共振周波数の他方(f)におけるバイアス回路BのアドミッタンスのコンダクタンスG(f=f)分に対して相対的に大きくなるように設定されている。
【0070】
すなわち、特定の周波数における共振回路側のコンダクタンス分が大きい場合には、発振回路における負性が低下し、発振が生じにくくなる。また、特定の周波数における共振回路側のコンダクタンス分が小さい場合には、発振がしやすくなる。ここでは、L、Cの値が、並列共振回路Sの目的となる並列共振周波数(f)に合わせて設定されているので、目的外の並列共振周波数(f)において発振を抑制することができる。また、逆に言えば、このようなL、Cの並列のバイアス回路Bを用いることにより、目的となる並列共振周波数(f)では、目的外の並列共振周波数(f)よりも高いQ値で共振を行うことができる。
【0071】
なお、バイアス回路Bの有する並列共振周波数と、並列共振回路Sの目的とする並列共振周波数(f)とは略一致する。
【0072】
すなわち、目的外の並列共振周波数での発振を防ぐことができる。バイアス回路Bのコンダクタンス分Gを構成するパラメータのうちの容量C及びコイルLを適切な値に設定すれば、共振周波数fでの発振を防ぎ、共振周波数fでの共振を増加させることもできる。
【0073】
また、第3素子列Xの直列共振周波数fを、Cが最小値の時の直列共振周波数fよりも大きく設定することによって、Cの最小値、すなわち、並列共振周波数範囲の高い方でQ値が大きくなる。Cの値に追従して、Cも可変させることによって、広帯域で常にQ値を高くすることができる。
【0074】
図4は図1に記載の並列共振回路の別の好適な例を示す回路図である。この回路では、図3に示した並列共振回路Sにおいて、バイアス回路Bと基準リアクタンス素子列Xとの間を接続する寄生コイルLを備えている。バイアス回路Bと基準リアクタンス素子列Xとを接続すると、寄生コイルLの挿入によっても、理論的にはQ値を無限とすることができる。
【0075】
すなわち、図4に示した並列共振回路Sの形成される基板(図示せず)と、この基板(例えば、IC)を収容するパッケージ(図示せず)を備え、寄生コイルLは、基板及び前記パッケージのインダクタンスであることを特徴とする。すなわち、パッケージや基板による寄生コイルがある場合でも、これをXとXの間に挿入される形とすることによって、本回路はQ値の低下を十分に抑制することができる。
【0076】
図5は比較例に係る並列共振回路の回路図である。この回路の場合、コイルLの有るなしに拘らず、Xが誘導性の場合、Q=ωCRr(ω;角周波数、Rr;共振回路側の等価並列抵抗)となり、Q値は有限な値となる。
【0077】
図6は図1に示した発振回路の好適な一例を示す回路図であり、図4に示した発振回路において、出力端子OUTから差動をとる構成とされたものである。このため、バイアス回路Bにおいて抵抗R’が直列に付加されている。
【0078】
ここで、負性抵抗回路Nの一例について例示しておく。負性抵抗回路Nは上述のトランジスタQの電流経路とグランド電位との間に接続された所定素子列Xを備えている。このトランジスタQは、バイポーラトランジスタであるため、ベースへの電流入力によって、エミッタとコレクタ間を流れる電流が変化する。トランジスタQがMOSFET等の電界効果トランジスタである場合には、ゲートへの電圧入力によって、ソースとドレイン間を流れる電流が変化する。どちらも機能は同等であるので、ここでは、トランジスタQは高周波特性に優れたバイポーラトランジスタであることとして説明する。このようなトランジスタとしては、GHz帯では化合物半導体を用いたものを用いることもできる。
【0079】
基準リアクタンス素子列Xは直列接続されたコイルL及びキャパシタCを含んでいるが、同様に、所定素子列Xも直列接続されたコイルL及びキャパシタCを含んでいる。負性抵抗回路Nは、入力電圧に逆比例して電流を供給する回路であり、図示の如く、例えば、エミッタ接地のバイポーラトランジスタQから構成することができる。
【0080】
この発振回路は差動構成を採用する。トランジスタのベースと共振回路の両端子間にキャパシタCが挿入されており、直流電圧のベースへの入力が抑制されている。差動構成を採用することにより、同相のノイズを除去することができる。また、トランジスタQのベースには直流バイアス電圧VB、VB’が入力される。なお、差動回路を用いない場合でも、本発明の効果は十分得られる。
【0081】
所定素子列Xの直列接続されたコイルL及びキャパシタCからなる系の直列共振周波数fは、理想的には発振周波数fの値に設定することが好ましいが、fの発振を防ぐ目的で、fの値からずらすように設定すれば、相対的にfの負性を無くすことができる。
【0082】
すなわち、この発振回路では、負性抵抗回路NはバイポーラトランジスタQを有し、バイポーラトランジスタQのエミッタ抵抗に対して並列に所定素子列Xが接続されており、所定素子列Xは直列接続されたコイルL及びキャパシタCを含み、所定素子列Xの直列接続されたコイルL及びキャパシタCからなる系の直列共振周波数fは、並列共振回路Sの並列共振周波数fからずらして設定される。
【0083】
なお、f>fの場合、第1リアクタンス素子列Xのリアクタンスは共振周波数fの近傍において容量性であり、基準リアクタンス素子列Xは誘導性である。
【0084】
また、f<fの場合、第1のリアクタンス素子列Xが誘導性であり、基準リアクタンス素子列Xが容量性である。なお、fとfは本来一致させることで、負性を大きくすることができる。
【0085】
トランジスタQは並列共振回路Sに負性を与えるための素子であり、ベースへの電流入力やゲートへの電圧入力によって、トランジスタQを流れる電流が変化する。これに接続された所定素子列Xは負性抵抗回路Nの直列共振周波数fを決定するが、この直列共振周波数fは原則的には並列共振回路Sの並列共振周波数fに一致する。上述のように、並列共振回路Sにおける一方の並列共振周波数成分fを抑制するため、本例では、負性抵抗回路Nの直列共振周波数fと、並列共振回路Sの並列共振周波数fをずらしてある。
【0086】
負性抵抗回路N側の直列共振周波数fは、本来、並列共振回路Sにおける他方の並列共振周波数fに一致することが好ましいが、この場合には、並列共振回路Sにおける一方の並列共振周波数fにおける負性を抑制することができない。ここでは、所定素子列Xの直列共振周波数から決定される負性抵抗回路Nの直列共振周波数fを、並列共振回路Sにおける他方の並列共振周波数fからずらしているので、並列共振回路Sにおける一方の並列共振周波数fにおける負性を無くすことができる。
【0087】
目的とする並列共振周波数、すなわち、発振周波数が、基準リアクタンス素子列X及び第1リアクタンス素子列Xの直列共振周波数f,fに近づくにつれ、並列共振回路Sのアドミッタンスのコンダクタンス分は大きくなり、負性がなくなる。
【0088】
基準リアクタンス素子列X及び第1リアクタンス素子列Xに直列に接続された寄生抵抗を考える場合、発振周波数が基準リアクタンス素子列X及び第1リアクタンス素子列Xの直列共振周波数f,fに近づくと、並列共振回路Sのコンダクタンスが大きくなり、発振しにくくなる。発振周波数において、所定素子列XのリアクタンスXが零となるように、所定素子列Xを構成するコイルLのインダクタンス及びキャパシタCの容量を設定することで、この問題は解決することができ、負性を大きくすることができる。
【0089】
所定素子列Xの直列共振周波数fと並列共振周波数fは一致することが本来望ましいが、並列共振回路Sにおける一方の並列共振周波数fにおける負性をなくすため、所定素子列Xにおける直列共振周波数fを、発振周波数と一致させず、並列共振周波数fでの発振回路の全コンダクタンスを正とすれば、並列共振周波数fにおける発振が抑制される。なお、目的とする並列共振周波数fにおける発振回路の全コンダクタンスは負に設定される。
【0090】
図6に示した回路において、f>f、f<fのどちらの場合でも同様の効果が得られる。
【0091】
この場合においても、直列共振周波数fを、直列共振周波数fや直列共振周波数fからずらして設定することができるのは言うまでもなく、上記と同様の効果が得られる。
【0092】
上述の発振回路では、目的外の共振周波数fにおける発振回路の全コンダクタンスが正となるように、所定素子列XのコイルL及びキャパシタCの値が設定される。この場合、fにおける負性が、fに比して相対的に抑制される。
【0093】
具体的な一例としては、以下の通りである。
=2.84GHz
=4.34GHz
における全コンダクタンス=13.24mS(S=1/Ω)
における全コンダクタンス=−14.92mS(S=1/Ω)
=4nH
=0.6pF
=3.24GHz
【0094】
負性抵抗回路Nにおいて当該設定を行った場合、基準リアクタンス素子列X,第1リアクタンス素子列Xにおいて発振周波数がf,fに近づくにつれ、並列共振回路のアドミッタンスのコンダクタンス分が大きくなった時でも、負性を大きくできる。したがって、共振の減衰に対してエネルギーが十分に補充されることとなり、発振しやすくなる。
【0095】
また、並列共振回路Sは、第1リアクタンス素子列X又は基準リアクタンス素子列Xに含まれるキャパシタC,Cに対して並列に接続されたコイルを備えることとしてもよい。この場合、このコイルとキャパシタC,Cによって、それぞれの直列共振周波数f,fにおけるコンダクタンスが小さくなるため、Q値を高くすることができる。
【0096】
なお、この時、第1リアクタンス素子列X及び基準リアクタンス素子列Xの各リアクタンス素子列においては直列共振周波数が2つ生じるが、第1リアクタンス素子列Xと基準リアクタンス素子列Xのリアクタンスが目的とする並列共振周波数近傍において、逆性(一方が誘導性、他方が容量性)となる構成とすれば、同様の効果が得られる。
【0097】
なお、寄生抵抗の低減によりQ値を高くするため、上述のコイルとして積層チップインダクタを用いてもよい。積層チップインダクタとして、スパイラル状の内部導体を素子に形成し、その両端に端子電極を設けたものを用いることもでききる。この場合、寄生抵抗が極小化し、低損失・ハイQ特性を実現することができる。上述の発振回路は、携帯電話等におけるギカヘルツ帯の信号処理回路に用いることができる。
【0098】
図7は図6の共振回路(本発明)に係るデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【0099】
図7(a)は周波数とインビーダンス(|Z|:Ω)の関係を示すグラフである。
【0100】
第1リアクタンス素子列Xの直列共振周波数fは2.63GHz(C=0.65pF)であり、基準リアクタンス素子列Xの直列共振周波数fは3.75GHzであり、所定素子列Xの直列共振周波数fは2.65GHzに設定されている。なお、f<fである。この共振回路の共振周波数は2.84GHzと、4.34GHzである。
【0101】
ピークAは、Xが誘導性(L性)、Xが容量性(C性)、Xが容量性(C性)、Xが容量性(C性)の場合である。
【0102】
ピークBは、Xが誘導性(L性)、Xが容量性(C性)、Xが誘導性(L性)、Xが容量性(C性)の場合である。
【0103】
ピークCは、Xが容量性(C性)、Xが容量性(C性)、Xが容量性(C性)、Xが誘導性(L性)の場合である。
【0104】
図7(b)は、アドミッタンスの全コンダクタンス分(実数部分)と周波数の関係を示すグラフである。この値が正となると負性が無くなり発振しなくなる。なお、一番低い共振周波数をf’とする。本発明では、共振周波数fの他にf’とfが存在するため、この点の負性は正とする必要がある。この工夫がバイアス回路Bと負性抵抗回路N側にあり、周波数fでの負性は十分に確保できる。f’とfでは正である。後述の比較例と本発明の負性の値を比べると、本発明の方が負性が大きくなっている。
【0105】
図7(c)は周波数と位相雑音の関係を示すグラフである。10kHzでは、位相雑音は−100dBc/Hzである。
【0106】
図8は図6の共振回路(本発明)に係るデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【0107】
図8(a)は周波数とインビーダンス(|Z|:Ω)の関係を示すグラフである。
【0108】
第1リアクタンス素子列Xの直列共振周波数fは2.03GHz(C=6pF)であり、基準リアクタンス素子列Xの直列共振周波数fは3.75GHzであり、所定素子列Xの直列共振周波数fは2.65GHzに設定されている。なお、f<fである。この共振回路の共振周波数は2.47GHzと、4.34GHzである。
【0109】
ピークAは、Xが誘導性(L性)、Xが容量性(C性)、Xが容量性(C性)、Xが誘導性(L性)の場合である。
【0110】
ピークBは、Xが誘導性(L性)、Xが容量性(C性)、Xが誘導性(L性)、Xが容量性(C性)の場合である。
【0111】
ピークCは、Xが容量性(C性)、Xが容量性(C性)、Xが容量性(C性)、Xが誘導性(L性)である。
【0112】
図8(b)は、アドミッタンスの全コンダクタンス分(実数部分)と周波数の関係を示すグラフである。後述の比較例と本発明の負性の値を比べると、本発明の方が負性が大きくなっている。
【0113】
図8(c)は周波数と位相雑音の関係を示すグラフである。10kHzでは、位相雑音は−95dBc/Hzである。
【0114】
図9は、図6の共振回路において、バイアス回路Bを用いず、比較例のバイアス回路を用いた場合のデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【0115】
図9(a)は周波数とインビーダンス(|Z|:Ω)の関係を示すグラフである。C=0.65pFである。この共振回路でも、3つのピークが現れている。
【0116】
図9(b)は、アドミッタンスの全コンダクタンス分(実数部分)と周波数の関係を示すグラフである。後述の比較例と本発明の負性の値を比べると、本発明の方が負性が大きくなっている。また、本例に示す回路よりも、図7(b)に示した回路の方が負性が大きい。
【0117】
図9(c)は周波数と位相雑音の関係を示すグラフである。10kHzでは、位相雑音は−95dBc/Hzである。
【0118】
図10は、図6の共振回路において、バイアス回路Bを用いない場合のデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【0119】
図10(a)は周波数とインビーダンス(|Z|:Ω)の関係を示すグラフである。C=6pFである。この共振回路でも、3つのピークが現れている。
【0120】
図10(b)は、アドミッタンスの全コンダクタンス分(実数部分)と周波数の関係を示すグラフである。後述の比較例と本発明の負性の値を比べると、本発明の方が負性が大きくなっている。
【0121】
図10(c)は周波数と位相雑音の関係を示すグラフである。10kHzでは、位相雑音は−86dBc/Hzである。
【0122】
図11は図5の共振回路(比較例)に係るデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【0123】
図11(a)は周波数とインビーダンス(|Z|:Ω)の関係を示すグラフである。C=0.65pFである。この共振回路では2つのピークが現れている。
【0124】
図11(b)は、アドミッタンスの全コンダクタンス分(実数部分)と周波数の関係を示すグラフである。負性の値は小さくなっている。
【0125】
図11(c)は周波数と位相雑音の関係を示すグラフである。10kHzでは、位相雑音は−86dBc/Hzである。
【0126】
図12は図5の共振回路(比較例)に係るデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【0127】
図12(a)は周波数とインビーダンス(|Z|:Ω)の関係を示すグラフである。C=6pFである。この共振回路では2つのピークが現れている。
【0128】
図12(b)は、アドミッタンスの全コンダクタンス分(実数部分)と周波数の関係を示すグラフである。負性の値は小さくなっている。
【0129】
図12(c)は周波数と位相雑音の関係を示すグラフである。10kHzでは、位相雑音は−84dBc/Hzである。
【0130】
図13は図5の共振回路にバイアス回路Bを設けた共振回路(比較例)に係るデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【0131】
図13(a)は周波数とインビーダンス(|Z|:Ω)の関係を示すグラフである。C=0.65pF、L=3.3nH、f=2.77GHz、C=0.5pFである。この共振回路では2つのピークが現れている。
【0132】
図13(b)は、アドミッタンスの全コンダクタンス分(実数部分)と周波数の関係を示すグラフである。
【0133】
図13(c)は周波数と位相雑音の関係を示すグラフである。10kHzでは、位相雑音は−90dBc/Hzである。
【0134】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の発振回路によれば、位相雑音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る発振回路の回路図である。
【図2】図1に記載の共振回路の好適な例を示す回路図である。
【図3】図1に記載の共振回路の別の好適な例を示す回路図である。
【図4】図1に記載の並列共振回路の別の好適な例を示す回路図である。
【図5】比較例に係る並列共振回路の回路図である。
【図6】図1に示した発振回路の好適な一例を示す回路図である。
【図7】図6の共振回路(本発明)に係るデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図8】図6の共振回路(本発明)に係るデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図9】図6の共振回路において、バイアス回路Bを用いない場合のデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図10】図6の共振回路において、バイアス回路Bを用いない場合のデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図11】
図5の共振回路(比較例)に係るデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図12】図5の共振回路(比較例)に係るデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図13】図5の共振回路にバイアス回路Bを設けた共振回路(比較例)に係るデータのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図14】数式を示す表である。
【図15】周波数とリアクタンスの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
S…並列共振回路、X…第1リアクタンス素子列、X…付加リアクタンス素子列、X…基準リアクタンス素子列。
【出願人】 【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋1丁目13番1号
【出願日】 平成14年6月20日(2002.6.20)
【代理人】 【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹

【識別番号】100092657
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 史朗

【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆

【公開番号】 特開2004−23762(P2004−23762A)
【公開日】 平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願番号】 特願2002−180328(P2002−180328)