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【発明の名称】 発振回路及び半導体集積回路
【発明者】 【氏名】二村 良彦
【住所又は居所】長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコーエプソン株式会社内

【要約】 【課題】水晶振動子等の発振素子を用いた発振回路において、温度ドリフトや回路素子のばらつきによる影響を低減し、消費電流を抑えながら高周波で安定した発振を行うことができるようにする。

【解決手段】この発振回路は、第1の端子及び第2の端子を有する発振素子1と、発振素子の第1の端子と第2の端子との間に直列に接続された複数の反転増幅器11〜13と、複数の反転増幅器の内の所定の反転増幅器について、入力端子と出力端子との間に接続されたインピーダンス素子21〜23とを具備する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子及び第2の端子を有する発振素子と、
前記発振素子の第1の端子と第2の端子との間に直列に接続された複数の反転増幅器と、
前記複数の反転増幅器の内の所定の反転増幅器について、入力端子と出力端子との間に接続されたインピーダンス素子と、
を具備する発振回路。
【請求項2】
前記発振素子の第1の端子と基準電位との間に接続された第1のコンデンサと、
前記発振素子の第2の端子と基準電位との間に接続された第2のコンデンサと、
をさらに具備する請求項1記載の発振回路。
【請求項3】
前記複数の反転増幅器の全てについて、入力端子と出力端子との間に接続された抵抗を具備する請求項1又は2記載の発振回路。
【請求項4】
前記複数の反転増幅器の内の最終段を除く全てについて、入力端子と出力端子との間に接続された抵抗を具備する請求項1又は2記載の発振回路。
【請求項5】
前記抵抗の抵抗値が、前段から後段にかけて次第に大きい値を有する、請求項3又は4記載の発振回路。
【請求項6】
前記直列に接続された反転増幅器のオープンループゲインの絶対値が、前段から後段にかけて次第に大きい値を有する、請求項5記載の発振回路。
【請求項7】
前記発振素子が水晶振動子、表面弾性波振動子、又は、セラミック振動子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の発振回路。
【請求項8】
前記反転増幅器がインバータであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の発振回路。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の発振回路を具備する半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水晶振動子、SAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)振動子、セラミック振動子等の発振素子を用いた発振回路に関する。さらに、本発明は、そのような発振回路を有する半導体集積回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ等の電子機器においては、動作の高速化に対する要求が年々高まっている。これらの電子機器は、内蔵する発振回路によって発生したクロック信号を用いて、各部の回路の動作タイミングを制御している。従って、これらの電子機器の動作を高速化するためには、発振回路における発振周波数を高くする必要がある。一方、発振周波数を高くすると、消費電力や発熱が増加する傾向にあるので、発振回路の消費電力をなるべく小さくすることが求められている。
【0003】
高い周波数安定度が必要とされる発振回路としては、水晶振動子を有する水晶発振器が最も多く用いられている。水晶振動子は、厚さが薄いほど振動周波数が高くなるという特徴を有しているが、一方、厚さが薄くなれば工業的に量産が難しいという側面も有している。
【0004】
そこで、水晶振動子の基本振動モードを用いるのではなく、基本振動モードの奇数倍の振動モード(オーバートーンモード)を利用する発振回路が使用されている。このような発振回路は、オーバートーン発振回路と呼ばれる。
【0005】
土岐政弘、服部伸一の「CMOSオーバートーン水晶発振器」、電子情報通信学会創立70周年記念総合全国大会507、1987年(以下、「文献1」ともいう)には、発振回路の帰還抵抗を小さくすることによってオーバートーンモードにおける発振を可能とした3次オーバートーン発振回路が開示されている。図5に、この発振回路の構成を示す。この発振回路においては、水晶振動子50とインバータ53と帰還抵抗54とが並列に接続され、それらの接続点と接地電位との間に、コンデンサ51及びコンデンサ52がそれぞれ接続されている。
【0006】
文献1によれば、帰還抵抗54の抵抗値をある限度以下にすると、基本振動モードにおける発振ができなくなり、オーバートーンモードで発振するようになる。その限度の抵抗値は、使用する水晶振動子50の基本波の周波数によって決まり、基本波の周波数が高いほど、その基本波で発振できなくなる限度の抵抗値は小さくなる。例えば、基本波の周波数が10MHz程度の水晶振動子の場合には、基本振動モードで発振できなくなる抵抗値は、約30kΩである。
【0007】
そこで、図5に示す発振回路においては、例えば、36MHzの発振周波数を得るために、水晶振動子50の基本波を12MHzとし、帰還抵抗54の抵抗値を30kΩ以下に設定して、3次オーバートーンモードにおける発振を実現している。
【0008】
一方、日本国特許第3229900号(特開平6−6135号公報に相当、以下、「文献2」ともいう)には、反転増幅器の増幅率を大きくして発振起動性を高めた3次オーバートーン発振回路が開示されている。図6に、この発振回路の構成を示す。この発振回路においては、第1のインバータ61の出力が、第2のインバータ62のゲートに接続され、第2のインバータ62の出力が、第3のインバータ63のゲートに接続されている。さらに、第3のインバータ63の出力と第1のインバータ61のゲートとの間に、ある限度以下の抵抗値を有する帰還抵抗64を接続することにより、反転増幅器が形成されている。この帰還抵抗64と並列に水晶振動子50を接続し、これらの接続点と接地電位との間にコンデンサ51及びコンデンサ52をそれぞれ接続して発振回路を構成する点は、図5に示す発振回路と同様である。
【0009】
文献2によれば、通常のAT板の水晶振動子は基本波の周波数で発振しようとする性質が強く、前述のように帰還抵抗の抵抗値を小さくしただけでは3次オーバートーンモードにおける発振は困難であり、反転増幅器の駆動力を大きくして発振起動性を高めることが必要である。しかしながら、発振起動性を高めるために駆動力の大きいインバータを使用すると、消費電流が増加してしまうという問題がある。
【0010】
そこで、図6に示す発振回路においては、インバータ61〜63によってインバータ61の入力信号を大きく増幅することにより、各々のインバータの駆動力が小さくても3次オーバートーンモードにおける発振が可能である。また、インバータの波形整形効果により、第2のインバータ62及び第3のインバータ63のゲートの入力波形は矩形波に近くなる。これらにより、全体として発振回路の消費電流の低減が可能である。
【0011】
しかしながら、図6に示す発振回路によれば、インバータ61〜63によって構成される反転増幅回路のゲインが非常に大きくなるため、インバータ61に入力される微小ノイズも大きく増幅されてしまい、ノイズによる影響を受け易い。また、高周波においては、インバータ61〜63によって構成される反転増幅回路の位相回転が大きくなって、温度ドリフトや回路素子のばらつきによる影響を受け易くなり、発振が不安定になるという問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、水晶振動子等の発振素子を用いた発振回路において、温度ドリフトや回路素子のばらつきによる影響を低減し、消費電流を抑えながら高周波で安定した発振を行うことができるようにすることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、本発明に係る発振回路は、第1の端子及び第2の端子を有する発振素子と、発振素子の第1の端子と第2の端子との間に直列に接続された複数の反転増幅器と、複数の反転増幅器の内の所定の反転増幅器について、入力端子と出力端子との間に接続されたインピーダンス素子とを具備する。
【0014】
ここで、発振回路は、発振素子の第1の端子と基準電位との間に接続された第1のコンデンサと、発振素子の第2の端子と基準電位との間に接続された第2のコンデンサとをさらに具備するようにしても良い。
【0015】
また、発振回路は、複数の反転増幅器の全てについて、入力端子と出力端子との間に接続された抵抗を具備するようにしても良いし、複数の反転増幅器の内の最終段を除く全てについて、入力端子と出力端子との間に接続された抵抗を具備するようにしても良い。これらの抵抗の抵抗値は、前段から後段にかけて次第に大きい値を有することが望ましい。さらに、直列に接続された反転増幅器のオープンループゲインの絶対値が、前段から後段にかけて次第に大きい値を有することが望ましい。
【0016】
以上において、発振素子としては、水晶振動子、表面弾性波振動子、又は、セラミック振動子を使用することができる。また、反転増幅器としては、インバータを使用することができる。また、本発明に係る半導体集積回路は、上記のいずれかの発振回路を具備する。
【0017】
本発明によれば、複数の反転増幅器の内の所定の反転増幅器について、入力端子と出力端子との間にインピーダンス素子を接続することにより、ノイズの影響を抑えると共に、反転増幅回路の位相回転を振動子に適合する値として、温度ドリフトや回路素子のばらつきによる影響を低減し、消費電流を抑えながら高周波で安定した発振を行うことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1に、本発明の一実施形態に係る発振回路を示す。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る発振回路は、第1の端子及び第2の端子を有する発振素子(本実施形態においては水晶振動子)1と、水晶振動子1の第1の端子と第2の端子との間に直列に接続された複数の反転増幅器(本実施形態においてはインバータ)11〜13と、インバータ11〜13の入力端子と出力端子との間にそれぞれ接続されたインピーダンス素子(本実施形態においては帰還抵抗)21〜23とを含んでいる。さらに、この発振回路は、水晶振動子の第1の端子と基準電位(本実施形態においては接地電位)との間に接続されたコンデンサ2と、水晶振動子の第2の端子と接地電位との間に接続されたコンデンサ3とを含んでいる。
【0020】
ここで、帰還抵抗21、22、23の抵抗値をそれぞれRf、Rf、Rfで表すと、Rf≦Rf≦Rfとすることが望ましい。特に、Rf<Rf<Rfとすることにより、インバータ11〜13のゲイン(絶対値)を、前段から後段にかけて次第に大きくすることができる。最終段のインバータ13のゲインを大きくすると、発振回路の等価回路における負性抵抗を大きくすることができるので、エネルギー効率が改善される。このため、回路条件によっては、最終段のインバータ13には帰還抵抗を接続しないようにしても良い。
【0021】
また、インバータ11〜13のオープンループゲインをそれぞれA、A、Aで表すと、A≦A≦Aとすることが望ましい。特に、A<A<Aとすることにより、帰還抵抗21、22、23の抵抗値をRf<Rf<Rfとした場合において、インバータ11〜13の帰還量を均一に近付けることができる。
【0022】
図2は、帰還抵抗によるゲインの変化を説明するための図であり、図3は、帰還抵抗による位相回転の変化を説明するための図である。なお、これらの図において、周波数を表す横軸は、対数スケールとしている。
【0023】
図2の実線で示すように、インバータに帰還抵抗を接続しない場合には、インバータによって定まる周波数fより高い周波数領域において、周波数が高くなるに従ってインバータのゲイン(絶対値)が減少する。一方、図2の破線で示すように、インバータに帰還抵抗を接続する場合には、全体的にゲインが抑えられるが、fより高い周波数においてもゲインが一定となる周波数領域が伸びる。これによりインバータのゲインを設定することが容易になる。また、インバータのゲインを不必要に大きくしないことにより、インバータ11に入力するノイズの増幅を抑えられる。
【0024】
また、図3の実線で示すように、インバータに帰還抵抗を接続しない場合には、概ねf/10より高い周波数領域において、位相が180°(反転状態)よりも大きく遅れる。一方、図3の破線で示すように、インバータに帰還抵抗を接続する場合には、概ねf/10より高い周波数領域においても、位相回転を180°に近付けることが可能である。
【0025】
そこで、図1に示すように、インバータ11〜13に帰還抵抗21〜23をそれぞれ接続することにより、各増幅段におけるゲインと位相回転を設定している。具体的には、発振周波数において、発振ループのループゲインが1以上となり、インバータ11〜13の位相回転が(180+α)°となるように、帰還抵抗21〜23の値を決定する。ここで、水晶振動子1とコンデンサ2及び3における位相回転を(180−α)°付近に設定すれば、発振ループを一巡する位相回転が360°付近となって、安定した発振動作を実現できる。
【0026】
図4は、水晶振動子の位相回転と発振周波数との関係を示す図である。水晶振動子における位相回転の最大値がθである場合に、水晶振動子の位相回転がθ付近となる状態で発振回路を動作させると、周波数に対する位相の勾配が小さいので、位相がわずかに変化しても周波数は大きく変化してしまう。そこで、水晶振動子の位相回転がθよりも小さいθ付近となる状態で発振回路を動作させるようにすれば、周波数に対する位相の勾配が大きいので、同じ位相変化に対する周波数変化を小さくすることができる。このようにして、上記の角度αを決定する。本実施形態によれば、水晶振動子における位相回転がθとなるように、インバータ11〜13における位相回転を高精度で合わせ込むことができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、インバータを3段構成とする場合について説明したが、インバータの段数は複数であれば良い。ただし、インバータの段数が偶数である場合には、発振ループがDC的に安定してしまうので、起動に関して注意が必要である。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、水晶振動子等の発振素子を用いた発振回路において、温度ドリフトや回路素子のばらつきによる影響を低減し、消費電流を抑えながら高周波で安定した発振を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る発振回路を示す図である。
【図2】帰還抵抗によるゲインの変化を説明するための図である。
【図3】帰還抵抗による位相回転の変化を説明するための図である。
【図4】水晶振動子の位相回転と発振周波数との関係を示す図である。
【図5】従来の発振回路の構成を示す回路図である。
【図6】従来の発振回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
1、50 水晶振動子
2、3、51、52 コンデンサ
11〜13、53、61〜63 インバータ
21〜23、54、64 帰還抵抗
【出願人】 【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿2丁目4番1号
【出願日】 平成14年6月12日(2002.6.12)
【代理人】 【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇

【識別番号】100107526
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 直郁

【識別番号】100110777
【弁理士】
【氏名又は名称】宇都宮 正明

【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温

【公開番号】 特開2004−23109(P2004−23109A)
【公開日】 平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願番号】 特願2002−170890(P2002−170890)