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【発明の名称】 透明導電膜とこの透明導電膜形成用塗布液および透明導電性積層構造体と表示装置
【発明者】 【氏名】行延 雅也
【住所又は居所】千葉県市川市中国分3丁目18番5号 住友金属鉱山株式会社中央研究所内

【要約】 【課題】優れた導電性と高い透過率、膜強度を有する単層の透明導電膜と透明導電膜形成用塗布液を提供し、この透明導電膜を有する透明導電性積層構造体と表示装置を提供すること。

【解決手段】上記透明導電膜は、平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲に設定された貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーを含有し、貴金属コート銀微粒子100重量部に対しバインダーが40〜200重量部の範囲に設定された透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布して形成される単層膜により構成され、この単層膜の表面抵抗が50〜2000Ω/□、上記基板を含まない単層膜だけの可視光線透過率が40〜95%であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成される透明導電膜において、
平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲に設定された貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーを含有し、上記貴金属コート銀微粒子100重量部に対しバインダーが40〜200重量部の範囲に設定されている透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布して形成された単層膜により構成され、この単層膜の表面抵抗が50〜2000Ω/□、上記基板を含まない単層膜だけの可視光線透過率が40〜95%であることを特徴とする透明導電膜。
【請求項2】
上記貴金属コート銀微粒子における貴金属が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された少なくとも1種類以上であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜。
【請求項3】
請求項1または2記載の透明導電膜を形成する透明導電膜形成用塗布液において、
溶媒と、この溶媒に分散されかつ平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲に設定された貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーを含有し、上記貴金属コート銀微粒子100重量部に対しバインダーが40〜200重量部の範囲に設定されていることを特徴とする透明導電膜形成用塗布液。
【請求項4】
上記貴金属コート銀微粒子における貴金属が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された少なくとも1種類以上であることを特徴とする請求項3記載の透明導電膜形成用塗布液。
【請求項5】
上記バインダーが、有機および/または無機バインダー、あるいは有機−無機複合バインダーであることを特徴とする請求項3または4記載の透明導電膜形成用塗布液。
【請求項6】
上記有機バインダーが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から選定される少なくとも1種類以上であることを特徴とする請求項3、4または5記載の透明導電膜形成用塗布液。
【請求項7】
上記無機バインダーがシリカゾルを主成分とすることを特徴とする請求項3、4または5記載の透明導電膜形成用塗布液。
【請求項8】
透明基板と、この上に形成された請求項1または2記載の透明導電膜とで構成されることを特徴とする透明導電性積層構造体。
【請求項9】
装置本体とこの前面側に配置された前面板とを備える表示装置において、
上記前面板として請求項8に記載の透明導電性積層構造体がその透明導電膜を外面にして組込まれていることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明導電膜とこの透明導電膜形成用塗布液に係り、特に、透明導電膜を基板に形成した基材が、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機/無機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の表示装置、シリコン半導体系やグレッツェル式等の太陽電池、タッチパネル等の電極等に適用された場合、優れた導電性と高透過率および高強度を発揮させることができる透明導電膜とこの透明導電膜形成用塗布液およびこの透明導電膜が形成された透明導電性積層構造体と表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
【特許文献1】
特開平10−110123号公報(請求項12、段落番号0043)
【特許文献2】
特開平10−142401号公報(請求項3、段落番号0008)
【特許文献3】
特開平10−182191号公報(請求項1、段落番号0032−0037、段落番号0043)
【特許文献4】
特開平11−329071号公報(請求項1、6、段落番号0007、0014、0019、0025)
【特許文献5】
特開2000−124662号公報(請求項1、3、段落番号0014、0019、0025)
【特許文献6】
特開2000−196287号公報(請求項17、段落番号0041−0043、0083−0092)
【特許文献7】
特開平09−115438号公報(請求項1、4、段落番号0015)
【特許文献8】
特開平10−1777号公報(請求項1、4、5、段落番号0012、0023)
【0004】
現在、各種ディスプレイ、各種太陽電池、タッチパネル等には透明電極が用いられており、この透明電極の形成方法として、スパッタリングによりインジウム錫酸化物(ITO)の被膜をガラス基板、プラスチック基板等に成膜する方法が広く利用されている。
【0005】
この形成方法により数十〜数百Ω/□の優れた導電性を有する透明導電膜を基板上に形成することは可能であるが、スパッタリングといった非常に高価な設備を必要とする問題や、成膜時に基板を加熱する必要があることから耐熱性の低い基板を用いることが困難となる等の欠点を有していた。
【0006】
そこで、貴金属等の微粒子が溶媒中に分散した透明導電膜形成用塗布液をスピンコート法等で基板上に塗布しかつ乾燥させた後、その上にシリカゾルから成る透明コート層形成用塗布液を塗布かつ乾燥し、更に200℃前後の温度で焼成して2層から成る透明導電膜を形成する方法が提案されている(特許文献1〜特許文献6参照)。
【0007】
しかし、この方法では透明導電膜形成用塗布液と透明コート層形成用塗布液をそれぞれ塗布し乾燥させて2層のコーティング膜を形成する必要があるため工程が煩雑で、かつ、透明導電膜の上に比較的電気絶縁性のある透明コート層が形成されるため透明導電膜との電気的接続が取り難い問題もあり、透明電極の形成方法としては未だ不十分な方法であった。
【0008】
尚、この問題に対処するため、これ等従来方法において、貴金属等の微粒子が溶媒中に分散した透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布しかつ乾燥させた後、透明コート層形成用塗布液を塗布することなく焼成して単層の透明導電膜を得る方法も考えられるが、この方法で得られる塗膜の膜強度は、例えば指で擦る程度で剥がれてしまう程非常に弱い問題があった。
【0009】
また、上記特許文献4や特許文献5には、貴金属等の微粒子が分散した透明導電膜形成用塗布液に平均粒径100nm以下のシリカ微粒子(コロイダルシリカ)を貴金属等の微粒子に対し1〜60重量%(好ましくは20〜40重量%)添加して膜強度(スクラッチ強度)を向上させる方法も記載されている。
【0010】
しかし、透明コート層形成用塗布液を塗布することなく上記透明導電膜形成用塗布液のみで形成された透明導電膜は依然として膜強度が不十分で、そのまま単層として用いることは困難であった。これは、上記特許文献4〜5に記載された従来方法において、一般の塗布液で用いられているシリカゾルに較べてその粒径がかなり大きいコロイダルシリカ(一般的にその平均粒径は5〜20nm)がバインダー成分として適用されていることに起因しているものと思われる。
【0011】
一方、透明導電膜形成用塗布液と透明コート層形成用塗布液を用いた上述の従来方法に代え、シリカゾル等のバインダー成分を透明導電膜形成用塗布液に添加して単層の透明導電膜を得る方法も提案されている(特許文献7〜8参照)。
【0012】
しかし、特許文献7〜8に記載された方法では、貴金属等の微粒子が単分散した透明導電膜形成用塗布液を用いており、塗布液の乾燥工程においてバインダー成分が貴金属等の微粒子同士間に介在して微粒子同士の接触を妨げ易く、添加するバインダー成分の量を少なく設定する必要があった。
【0013】
このため、得られる透明導電膜の強度も鉛筆硬度で3H程度と弱く、依然としてその膜強度は不十分であった。
【0014】
すなわち、低抵抗でかつ高透過率の透明導電膜は、透明導電膜形成用塗布液の乾燥工程において貴金属等の微粒子が互いに連結し、発達した網目状構造が形成されてはじめて得られるが、上記特許文献7〜8に記載された方法では、バインダー成分を添加することによる膜強度の改善と、上記微粒子による網目状構造の形成との両立を図ることが困難な問題が存在した。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、スピンコート法等により形成されしかも優れた導電性と高透過率および高強度を有する単層の透明導電膜とこの形成に提供される透明導電膜形成用塗布液を提供し、合わせて上記単層の透明導電膜を有する透明導電性積層構造体とこの構造体が組込まれた表示装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1に係る発明は、
基板上に形成される透明導電膜を前提とし、
平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲に設定された貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーを含有し、上記貴金属コート銀微粒子100重量部に対しバインダーが40〜200重量部の範囲に設定されている透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布して形成された単層膜により構成され、この単層膜の表面抵抗が50〜2000Ω/□、上記基板を含まない単層膜だけの可視光線透過率が40〜95%であることを特徴とし、
また、請求項2に係る発明は、
請求項1記載の透明導電膜を前提とし、
上記貴金属コート銀微粒子における貴金属が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された少なくとも1種類以上であることを特徴とするものである。
【0017】
次に、請求項3〜7は上記透明導電膜を形成するための透明導電膜形成用塗布液に関する。
【0018】
すなわち、請求項3に係る発明は、
請求項1または2記載の透明導電膜を形成する透明導電膜形成用塗布液を前提とし、
溶媒と、この溶媒に分散されかつ平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲に設定された貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーを含有し、上記貴金属コート銀微粒子100重量部に対しバインダーが40〜200重量部の範囲に設定されていることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項3記載の発明に係る透明導電膜形成用塗布液を前提とし、
上記貴金属コート銀微粒子における貴金属が、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された少なくとも1種類以上であることを特徴とし、
請求項5に係る発明は、
請求項3または4記載の発明に係る透明導電膜形成用塗布液を前提とし、
上記バインダーが、有機および/または無機バインダー、あるいは有機−無機複合バインダーであることを特徴とし、
請求項6に係る発明は、
請求項3、4または5記載の発明に係る透明導電膜形成用塗布液を前提とし、上記有機バインダーが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から選定される少なくとも1種類以上であることを特徴とし、
請求項7に係る発明は、
請求項3、4または5記載の発明に係る透明導電膜形成用塗布液を前提とし、
上記無機バインダーがシリカゾルを主成分とすることを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に係る発明は、
透明導電性積層構造体を前提とし、
透明基板と、この上に形成された請求項1または2記載の透明導電膜とで構成されることを特徴とし、
請求項9に係る発明は、
装置本体とこの前面側に配置された前面板とを備える表示装置を前提とし、
上記前面板として請求項8に記載の透明導電性積層構造体がその透明導電膜を外面にして組込まれていることを特徴とするものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明は、貴金属等の微粒子として、平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲に設定された貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体を適用した場合、膜強度の改善が図れる量のバインダー成分を透明導電膜形成用塗布液内に添加した場合でも、塗布液の塗布かつ乾燥工程においてバインダー成分に妨げられることなく貴金属コート銀微粒子の網目状構造が形成されることを見出して完成されている。
【0022】
すなわち、貴金属等の微粒子が単分散しかつバインダー成分が添加された従来の透明導電膜形成用塗布液を用いた場合、透明導電膜形成用塗布液の塗布かつ乾燥工程において上記バインダー成分が貴金属等の微粒子同士間に介在し易く、貴金属等の微粒子同士の接触を妨げると同時に上記網目状構造の形成を阻害する欠点が存在した。この網目状構造は、貴金属等の微粒子を用いた透明導電膜において、高い透過率と優れた導電性を達成するためには不可欠であり、上記微粒子から成る網目の網部分は導電性の役割を担い、網目の孔部分が光線を透過させる役割を担っている。
【0023】
そこで、溶媒中に貴金属等の微粒子を単分散させた従来法に代えて、本発明においては、平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲に設定された貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体を溶媒中に分散させた透明導電膜形成用塗布液を用いると共に、この透明導電膜形成用塗布液内に貴金属コート銀微粒子100重量部に対し40〜200重量部の範囲内に設定したバインダー成分を添加する手法を採用することで、バインダー成分の存在にも拘わらず上記貴金属コート銀微粒子における網目状構造の形成を可能としている。
【0024】
ここで、貴金属コート銀微粒子における上記鎖状凝集体の平均主鎖長さが100〜500nm(好ましくは200〜500nm)、平均太さが1〜30nm(好ましくは5〜30nm)、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲とする条件から外れた場合、貴金属コート銀微粒子における網目状構造の形成が困難となる等の不都合が生ずる。すなわち、上記平均主鎖長さが100nm未満であったり平均主鎖長さと平均太さの比が3未満であると得られる透明導電膜の抵抗が高くなり、反対に、上記平均主鎖長さが500nmを超えたり平均主鎖長さと平均太さの比が100を超えると透明導電膜形成用塗布液の調製段階におけるろ過処理等が困難となる不都合が生ずる。また、上記平均太さが1nm未満であると透明導電膜形成用塗布液の製造が困難となり、また、平均太さが30nmを超えた場合にも得られる透明導電膜における可視光線の散乱が大きくなる(つまり膜のヘイズ値が高くなる)等の不都合が生ずる。従って、本発明においては、貴金属コート銀微粒子における鎖状凝集体の平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲とする条件を満たすことを要する(請求項1、3)。尚、本明細書において貴金属コート銀微粒子における鎖状凝集体の平均主鎖長さおよび平均太さは、透過電子顕微鏡(TEM)で観察された微粒子に対する値を示している。
【0025】
ここで、従来の透明導電膜形成用塗布液においては、貴金属等の微粒子として、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等から選択された貴金属微粒子が適用されていた。
【0026】
ここで、銀、金、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウムなどの比抵抗を比較した場合、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウムの比抵抗は、それぞれ10.6、4.51、7.6、10.8μΩ・cmで、銀、金の1.62、2.2μΩ・cmに比べて高いため、表面抵抗の低い透明導電膜を形成するには銀微粒子や金微粒子を適用した方が有利と考えられる。
【0027】
但し、銀微粒子が適用された場合、硫化や食塩水による劣化が激しいという耐候性の面からその用途が制限され、他方、金微粒子、白金微粒子、ロジウム微粒子、ルテニウム微粒子、パラジウム微粒子等が適用された場合には上記耐候性の問題はなくなるがコスト面を考慮すると必ずしも最適とは言えない。
【0028】
そこで、本発明においては、耐候性とコストの両条件を満たす上記微粒子として、銀微粒子の表面に銀以外の貴金属、例えば、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムから選択された貴金属がコーティングされた貴金属コート銀微粒子を適用している(請求項1〜4)。
【0029】
次に、透明導電膜を形成する透明導電膜形成用塗布液におけるバインダー成分の配合量は、貴金属コート銀微粒子100重量部に対し40〜200重量部(好ましくは50〜150重量部)の範囲に設定することを要する(請求項1、3)。バインダー配合量が40重量部未満だと得られる透明導電膜の膜強度が不十分となり、反対に200重量部を超えると透明導電膜の抵抗が高くなるからである。
【0030】
尚、本発明においては、平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲に設定された貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体を適用したことにより、膜強度の改善が図れる量のバインダー成分、すなわち、貴金属コート銀微粒子100重量部に対し40〜200重量部(好ましくは50〜150重量部)のバインダー成分を透明導電膜形成用塗布液内に添加した場合ても、透明導電膜形成用塗布液の塗布かつ乾燥工程においてこのバインダー成分に妨げられることなく貴金属コート銀微粒子における網目状構造の形成を可能としている。
【0031】
また、上記バインダーとしては、有機および/または無機バインダーあるいは有機−無機複合バインダーを用いることが可能である(請求項5)。
【0032】
そして、バインダーの種類については、適用する基板や透明導電膜の硬化条件等を考慮して適宜選定することができる。
【0033】
上記有機バインダーとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から選定される少なくとも1種類以上が挙げられ(請求項6)、例えば、熱可塑性樹脂にはアクリル樹脂、PET樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、PVP樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等、熱硬化性樹脂にはエポキシ樹脂等、常温硬化性樹脂には2液性のエポキシ樹脂やウレタン樹脂等、紫外線硬化性樹脂には各種オリゴマー、モノマー、光開始剤を含有する樹脂等、電子線硬化性樹脂には各種オリゴマー、モノマーを含有する樹脂等を挙げることができる。但し、当然のことながらこれら樹脂に限定されるものではない。
【0034】
また、無機バインダーとしては、シリカゾルを主成分とするバインダーを挙げることができる(請求項7)。無機バインダーは、弗化マグネシウム微粒子、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル等を含んでいてもよい。上記シリカゾルとしては、オルトアルキルシリケートに水や酸触媒を加えて加水分解し、脱水縮重合を進ませた重合物、あるいは既に4〜5量体まで重合を進ませた市販のアルキルシリケート溶液を、さらに加水分解と脱水縮重合を進行させた重合物等を利用することができる。尚、脱水縮重合が進行すると、溶液粘度が上昇して最終的には固化してしまうので、脱水縮重合の度合いについては、ガラス基板やプラスチック基板などの透明基板上に塗布可能な上限粘度以下のところに調整する。また、脱水縮重合の度合いは上記上限粘度以下のレベルであれば特に指定されないが、膜強度、耐候性等を考慮すると重量平均分子量で500から50000程度が好ましい。そして、アルキルシリケート加水分解重合物は、透明導電膜形成用塗布液の塗布かつ乾燥後の加熱時において脱水縮重合反応がほぼ完結し、硬いシリケート膜(酸化ケイ素を主成分とする膜)になる。
【0035】
また、上記有機−無機複合バインダーとしては、例えば、有機バインダーと無機バインダーの複合体あるいはシロキサン系ポリマー等が挙げられる。
【0036】
次に、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体が分散された透明導電膜形成用塗布液は以下のような方法で製造することができる。
【0037】
まず、既知の方法[例えば、Carey−Lea法、Am.J.Sci.、37、47(1889)、Am.J.Sci.、38(1889)]により銀微粒子のコロイド分散液を調製する。すなわち、硝酸銀水溶液に、硫酸鉄(II)水溶液とクエン酸ナトリウム水溶液の混合液を加えて反応させ、沈降物を濾過・洗浄した後、純水を加えることにより簡単に銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.1〜10重量%)が調製される。この銀微粒子のコロイド分散液の調製方法は、平均粒径1〜30nm程度の銀微粒子が分散されたものであれば任意でありかつこれに限定されるものではない。
【0038】
次に、得られた銀微粒子のコロイド分散液に、還元剤を含む溶液、および、下記(A)〜(C)のいずれかの溶液をそれぞれ別々に滴下して加えることで銀微粒子の表面に金若しくは白金単体または金と白金の複合体をコーティングし、貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液を得ることができる(貴金属コート銀微粒子調製工程)。
(A)アルカリ金属の金酸塩溶液またはアルカリ金属の白金酸塩溶液
(B)アルカリ金属の金酸塩溶液およびアルカリ金属の白金酸塩溶液
(C)アルカリ金属の金酸塩並びに白金酸塩の混合溶液
尚、この貴金属コート銀微粒子調製工程で、必要により、銀微粒子のコロイド分散液、還元剤を含む溶液、(A)〜(C)の溶液の少なくともいずれか一つ、または、それぞれに少量の分散剤を加えてもよい。
【0039】
以上のようにして得られた貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液は、この後、透析、電気透析、イオン交換、限外濾過等の脱塩処理方法により分散液内の電解質濃度を下げることが好ましい。これは、電解質濃度を下げないとコロイドは電解質で一般に凝集してしまうからであり、この現象は、Schulze−Hardy則としても知られている。
【0040】
次に、脱塩処理された貴金属コート銀微粒子のコロイド状分散液を濃縮処理すると貴金属コート銀微粒子が高濃度で単分散した分散液が得られる。
【0041】
この貴金属コート銀微粒子が高濃度で単分散した分散液に、ヒドラジン溶液を添加して貴金属コート銀微粒子を凝集させ、その後、例えば、室温で数分〜1時間程度保持した後、過酸化水素溶液を添加することで、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体が高濃度で分散した分散液が得られる。
【0042】
この貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体が高濃度で分散した分散液に、バインダーおよび有機溶剤等を添加して成分調整(微粒子濃度、バインダー濃度、水分濃度、有機溶剤濃度等)を行えば、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーとを含有する透明導電膜形成用塗布液が得られる。
【0043】
尚、バインダーにシリカゾルを用いる場合、シリカゾルをイオン交換処理することが好ましい。シリカゾル中にイオン不純物が含まれていると貴金属コート銀微粒子における鎖状凝集体の分散安定性を損なう恐れがあるからである。
【0044】
ここで、ヒドラジン溶液の添加により上記貴金属コート銀微粒子の凝集が起こる理由については定かでないが、ヒドラジンのアルカリイオンとしての作用あるいは還元剤として系の酸化還元電位を低下させる作用により、貴金属コート銀微粒子の分散安定性が低下するものと考えられる。
【0045】
すなわち、貴金属コート銀微粒子が溶媒に単分散した貴金属コート銀微粒子の分散液にヒドラジン(N)溶液を添加すると、貴金属コート銀微粒子の分散安定性が低下(系のゼータ電位[絶対値]は低下)し貴金属コート銀微粒子が鎖状に凝集して貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体を生じること、更に、過酸化水素(H)溶液を添加すると、過酸化水素の作用で上記ヒドラジンが分解かつ除去されて鎖状凝集体の凝集状態は保たれたままその分散安定性が再度向上(系のゼータ電位[絶対値]は増加)すること、かつ、これ等一連の反応が以下の化学式(1)に示されるように、反応生成物が水(HO)および窒素ガス(N)だけで不純物イオンの副生がないことから、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体を得るこの方法は極めて簡便で有効な方法である。
【0046】
+2H→4HO+N↑             (1)
尚、上記貴金属コート銀微粒子におけるコロイド状分散液の濃縮処理は、減圧エバポレーター、限外濾過等の常用の方法で行うことができ、この濃縮度合いによって、透明導電膜形成用塗布液中の水分濃度を、例えば1〜50重量%の範囲に制御することができる。
【0047】
ここで、貴金属コート銀微粒子における鎖状凝集体の凝集状態(すなわち、貴金属コート銀微粒子における鎖状凝集体の平均主鎖長さと平均太さおよび平均主鎖長さと平均太さの比)については、添加するヒドラジン溶液量で自由に制御することが可能であるが、更に、ヒドラジン溶液を添加した後の過酸化水素溶液を添加するまでの時間(保持時間)と温度(保持温度)によっても制御することが可能である。これは、ヒドラジン溶液の添加による貴金属コート銀微粒子の分散不安定化状態が、過酸化水素を添加するまで持続されるためである。
【0048】
次に、上記透明導電膜形成用塗布液に用いる溶剤としては特に制限はなく、塗布方法や製膜条件により適宜に選定される。例えば、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGM−AC)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)等のグリコール誘導体、フォルムアミド(FA)、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0049】
次に、この透明導電膜形成用塗布液を用いて、例えば、透明基板と、この上に形成された単層の透明導電膜とで構成される透明導電性積層構造体(請求項8)を得ることができる。
【0050】
そして、この透明導電性積層構造体については、その透明導電膜を外面にして前面板として組込むことで、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機/無機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の表示装置(請求項9)を構成することができる。特に、液晶ディスプレイ(LCD)においては、透明基板上に順次形成された着色層(カラーフィルター層)と透明保護層の上に、単層の透明導電膜が形成された透明導電性積層構造体を適用することが可能である。
【0051】
そして、透明基板上に単層の透明導電膜を形成するには以下の方法でこれを行うことができる。
【0052】
すなわち、平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲に設定された貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーとを含有し、貴金属コート銀微粒子100重量部に対しバインダーが40〜200重量部の範囲に設定されている透明導電膜形成用塗布液をガラス基板、プラスチック基板等の基板上にスピンコート、スプレーコート、ワイヤーバーコート、ドクターブレードコート等の手法にて塗布し、必要に応じて乾燥させた後、例えば50〜350℃程度の温度で加熱処理を施して塗布液の硬化を行い単層の上記透明導電膜を形成する。ここで、金または白金がコートされた貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体を含有する透明導電膜形成用塗布液が適用された場合の、硬化時における最適加熱処理条件は、50〜250℃、2〜60分間程度で行うことができ、より好ましくは、80〜200℃、2〜30分間である。但し、バインダー成分として紫外線・電子線硬化性樹脂を用いた場合は、紫外線・電子線の照射エネルギーが貴金属コート銀微粒子の網目状構造を発達させるため、50〜150℃、数秒〜数十秒という比較的低温かつ短時間での膜硬化が可能である。
【0053】
この様にして形成された単層の透明導電膜は、膜内の貴金属コート銀微粒子100重量部に対しバインダーが40〜200重量部に設定されかつ貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体で構成された網目状構造の孔の部分を上記バインダーが埋める構造をとるため、透明導電膜の可視光線透過率が40〜95%と高透過率となり、かつ、表面抵抗も50〜2000Ω/□と優れた導電性を示し、更に、網目状構造の孔の部分を介して基板とバインダーとの接触面積が増大するため両者間の結合が強くなり膜強度の向上も図られる。
【0054】
以上説明したように、本発明の透明導電膜は、平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲に設定された貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーを含有し、かつ、貴金属コート銀微粒子100重量部に対しバインダーが40〜200重量部の範囲に設定されている透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布して形成された単層膜で構成され、この単層膜の表面抵抗が50〜2000Ω/□、上記基板を含まない単層膜だけの可視光線透過率が40〜95%であることから優れた導電性と高透過率、高い膜強度を有しており、この透明導電膜を具備する透明導電性積層構造体については、上述したようにプラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機/無機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の表示装置に適用することができ、更に、シリコン半導体系やグレッツェル式等の太陽電池、タッチパネル等の透明電極等として用いることができる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、本文中の「%」は、透過率、反射率、ヘイズ値の(%)を除いて「重量%」を示し、また「部」は「重量部」を示している。
【0056】
[実施例1]
前述のCarey−Lea法により銀微粒子のコロイド分散液を調製した。
【0057】
具体的には、9%硝酸銀水溶液330gに、23%硫酸鉄(II)水溶液390gと37.5%クエン酸ナトリウム水溶液480gの混合液を加えた後、沈降物をろ過・洗浄した後、純水を加えて、銀微粒子のコロイド分散液(Ag:0.15%)を調製した。
【0058】
この銀微粒子のコロイド分散液600gに、ヒドラジン1水和物(N・HO)の1%水溶液80.0gを加えて攪拌しながら、金酸カリウム[KAu(OH)]水溶液(Au:0.075%)4800gと1%高分子分散剤水溶液2.0gの混合液を加え、金単体がコーティングされた貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液を得た。
【0059】
この貴金属コート銀微粒子のコロイド分散液をイオン交換樹脂(三菱化学社製商品名ダイヤイオンSK1B,SA20AP)で脱塩した後、限外ろ過を行い、貴金属コート銀微粒子分散液の濃縮を行った。得られた液にエタノール(EA)を加えて貴金属コート銀微粒子が高濃度に単分散された分散液(Ag−Au:1.6%、水:20.0%、EA:78.4%、)(B液)を得た。
【0060】
次に、B液60gを攪拌しながら、ヒドラジン水溶液(N・HO:0.75%)0.8g(1.6%のAg−Au分散液に対しヒドラジンが100ppmに相当)を1分間かけて添加した後、室温で15分間保持し、さらに過酸化水素水溶液(H:1.5%)0.6gを1分間かけて添加することで、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体が高濃度に分散された分散液(C液)を得た。
【0061】
尚、上記貴金属コート銀微粒子が高濃度に単分散された分散液(B液)にヒドラジン溶液を添加した際の貴金属コート銀微粒子における分散安定性の低下、および、貴金属コート銀微粒子が凝集した分散液に過酸化水素溶液を添加した際の鎖状凝集体における分散安定性の向上は、各分散液のゼータ電位の測定値から科学的に確認されている。
【0062】
次に、このようにして得られた貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体が高濃度に分散された分散液(C液)にバインダー成分としてのシリカゾル(D液)、アセトン、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加えて、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダー成分を含有しかつ透明導電膜の形成に直接適用される濃度に調整された実施例1に係る透明導電膜形成用塗布液(Ag:0.08%、Au:0.32%、SiO:0.4%、水:5.8%、アセトン:20%、EA:53.3%、PGM:15%、DAA:5%、FA:0.03%)を得た。
【0063】
尚、この透明導電膜形成用塗布液を透過電子顕微鏡で観察したところ、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体は、一次粒径6nm程度の貴金属コート銀微粒子が数珠状に連なり、かつ、一部分岐した形状[長さ:100〜500μm(個々の鎖状凝集体における長さの最大値)、平均長さ:250nm、平均太さ:6nm、平均長さと平均太さの比:17〜70]を有していた。
【0064】
次に、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダー成分を含有する透明導電膜形成用塗布液を濾過精度(ポアサイズ):10μmフィルターで濾過した後、40℃に加熱されたガラス基板(厚さ3mmのソーダライムガラス)上にスピンコート(100rpm,90秒間)した後、180℃、20分間硬化させて、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーから成る単層の透明導電膜付きガラス基板、すなわち、実施例1に係る透明導電性積層構造体を得た。
【0065】
尚、上記ガラス基板は、使用前に酸化セリウム系研磨剤で研磨処理し、純水による洗浄・乾燥後、40℃に加熱して用いた。
【0066】
ここで、上記シリカゾル液(D液)は、メチルシリケート51(コルコート社製商品名)を19.6部、エタノール57.8部、1%硝酸水溶液7.9部、純水14.7部を用いて、SiO(酸化ケイ素)固形分濃度が10%で、重量平均分子量が1200のものを調製し、最終的に、SiO固形分濃度が5.0%となるようにエタノールで希釈し、さらにアニオン交換樹脂で脱イオン処理して得られている。
【0067】
そして、ガラス基板上に形成された単層の透明導電膜における膜特性(表面抵抗、可視光線透過率、ヘイズ値、可視光線反射率、膜強度)を以下の表1に示す。尚、表1において基板(ガラス基板)を含まない単層の透明導電膜だけの(可視光線)透過率は、以下の様にして求められている。すなわち、
基板を含まない単層の透明導電膜だけの透過率(%)
=[(基板ごと測定した透過率)/(基板の透過率)]×100
ここで、本明細書においては、特に言及しない限り、透過率としては、基板を含まない単層の透明導電膜だけの可視光線透過率の値を用いている。
【0068】
また、単層の透明導電膜の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用い測定した。ヘイズ値と可視光線透過率は、村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(HR−200)を用いて測定した。反射率は、日立製作所(株)製の分光光度計(U−4000)を用いて測定した。また、貴金属コート銀微粒子における鎖状凝集体の形状、粒子サイズ(平均主鎖長さ、平均太さ、平均主鎖長さと平均太さの比)は日本電子製の透過電子顕微鏡で評価している。更に、単層の透明導電膜における膜強度は、膜を爪で擦って傷の入り具合で評価し、また、単層の透明導電膜における膜硬度は、以下に述べる鉛筆硬度評価法により行っている。
【0069】
[実施例2]
メチルシリケート51(コルコート社製商品名)を17.4部、メチルトリメトキシシラン2.52部、エタノール57.48部、1%硝酸水溶液7.9部、純水14.7部を用いて、SiO(酸化ケイ素換算)固形分濃度が10%で、重量平均分子量が1360のものを調製し、最終的に、SiO換算固形分濃度が2.0%となるようにエタノールで希釈し、さらにアニオン交換樹脂で脱イオン処理してメチル基を含有するシリカゾル(E液)を得た。
【0070】
次に、実施例1における貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体が高濃度に分散された分散液(C液)に、上記E液、アセトン、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加えて、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダー成分を含有しかつ透明導電膜の形成に直接適用される濃度に調整された実施例2に係る透明導電膜形成用塗布液(Ag:0.08%、Au:0.32%、メチル基含有SiO:0.2%、水:5.8%、アセトン:20%、EA:53.5%、PGM:15%、DAA:5%、FA:0.03%)を得た。
【0071】
そして、この透明導電膜形成用塗布液を用い、40℃に加熱されたPETフィルム基板(厚さ100ミクロン、コロナ放電処理済み)上に、スピンコート(90rpm、10秒間−150rpm,70秒間)した後、140℃、20分間硬化させた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーから成る単層の透明導電膜付きPETフィルム基板、すなわち、実施例2に係る透明導電性積層構造体を得た。
【0072】
PETフィルム基板上に形成された単層の透明導電膜における膜特性(表面抵抗、可視光線透過率、ヘイズ値、可視光線反射率、膜強度)を表1に示す。
【0073】
[実施例3]
実施例1における貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体が高濃度に分散された分散液(C液)に、熱硬化性エポキシ樹脂液、アセトン、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加えて、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダー成分を含有しかつ透明導電膜の形成に直接適用される濃度に調整された実施例3に係る透明導電膜形成用塗布液(Ag:0.08%、Au:0.32%、熱硬化性エポキシ樹脂:0.2%、水:5.8%、アセトン:20%、EA:53.5%、PGM:15%、DAA:5%、FA:0.03%)を得た。
【0074】
そして、この透明導電膜形成用塗布液を用い、40℃に加熱されたPETフィルム基板(厚さ100ミクロン、コロナ放電処理済み)上に、スピンコート(90rpm、10秒間−150rpm,70秒間)した後、120℃、120分間硬化させた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーから成る単層の透明導電膜付きPETフィルム基板、すなわち、実施例3に係る透明導電性積層構造体を得た。
【0075】
PETフィルム基板上に形成された単層の透明導電膜における膜特性(表面抵抗、可視光線透過率、ヘイズ値、可視光線反射率、膜強度)を表1に示す。
【0076】
[比較例1]
実施例1における貴金属コート銀微粒子が高濃度に単分散された分散液(B液)に、バインダー成分としてのシリカゾル(D液)、アセトン、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、フォルムアミド(FA)を加え、個々の微粒子が凝集していない貴金属コート銀微粒子とバインダーを含有する比較例1に係る透明導電膜形成用塗布液(Ag:0.08%、Au:0.32%、SiO:0.4%、水:5.8%、アセトン:20%、EA:53.3%、PGM:15%、DAA:5%、FA:0.03%)を得た。
【0077】
そして、この透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子とバインダーから成る単層の透明導電膜付きガラス基板、すなわち、比較例1に係る透明導電性積層構造体を得た。
【0078】
ガラス基板上に形成された単層の透明導電膜における膜特性(表面抵抗、可視光線透過率、ヘイズ値、可視光線反射率、膜強度)を以下の表1に示す。
【0079】
[比較例2]
実施例1における貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体が高濃度に分散された分散液(C液)に、バインダー成分としてのシリカゾル(D液)、アセトン、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダー成分を含有し、透明導電膜の形成に直接適用される濃度に調整された比較例2に係る透明導電膜形成用塗布液(Ag:0.08%、Au:0.32%、SiO:1.6%、水:8.0%、アセトン:20%、EA:49.9%、PGM:15%、DAA:5%、FA:0.03%)を得た。
【0080】
そして、この透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーから成る単層の透明導電膜付きガラス基板、すなわち、比較例2に係る透明導電性積層構造体を得た。
【0081】
ガラス基板上に形成された単層の透明導電膜における膜特性(表面抵抗、可視光線透過率、ヘイズ値、可視光線反射率、膜強度)を以下の表1に示す。
【0082】
[比較例3]
実施例1における貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体が高濃度に分散された分散液(C液)にバインダー成分としてのシリカゾル(D液)、アセトン、エタノール(EA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジアセトンアルコール(DAA)、ホルムアミド(FA)を加え、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダー成分を含有し、透明導電膜の形成に直接適用される濃度に調整された比較例3に係る透明導電膜形成用塗布液(Ag:0.08%、Au:0.32%、SiO:0.04%、水:5.1%、アセトン:20%、EA:54.4%、PGM:15%、DAA:5%、FA:0.03%)を得た。
【0083】
そして、この透明導電膜形成用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーから成る単層の透明導電膜付きガラス基板、すなわち、比較例3に係る透明導電性積層構造体を得た。
【0084】
ガラス基板上に形成された単層の透明導電膜における膜特性(表面抵抗、可視光線透過率、ヘイズ値、可視光線反射率、膜強度)を以下の表1に示す。
【0085】
【表1】


注1:貴金属コート銀微粒子100重量部に対するバインダーの量(重量部)。
注2:透明導電膜付き基板のヘイズ値から透明基板のヘイズ値を引いた値。
注3:指でこすると簡単に剥がれた。
【0086】
『鉛筆硬度評価』
単層の透明導電膜が形成された実施例1に係るガラス基板に対し、鉛筆硬度の測定を行ったところ、「6H」であった。
【0087】
尚、鉛筆硬度の測定は、単層の上記透明導電膜表面に、荷重1kg下、硬度H〜9Hの鉛筆でラインを引き、擦傷を観察して評価した。
【0088】
『評 価』
表1に示された結果から以下のことが確認される。
【0089】
1.貴金属コート銀微粒子を単分散させた透明導電膜形成用塗布液が適用された比較例1に係る単層の透明導電膜およびバインダーの含有量が200重量部を超えた(すなわち400重量部)透明導電膜形成用塗布液が適用された比較例2に係る単層の透明導電膜における各表面抵抗が>10(Ω/□)と高いのに対し、各実施例に係る単層の透明導電膜における表面抵抗は308(Ω/□)〜895(Ω/□)であり導電性が優れていることが確認される。
【0090】
2.バインダーの含有量が40重量部未満(すなわち10重量部)の透明導電膜形成用塗布液が適用された比較例3に係る単層の透明導電膜における表面抵抗は203(Ω/□)と良好ではあるがこの透明導電膜を指で擦ると簡単に剥がれてしまうのに対し、各実施例に係る単層の透明導電膜における表面抵抗は良好であり、かつ、膜強度も実用レベルに維持されていることが確認される。
【0091】
3.また、実施例1に係る単層の透明導電膜に対して行った鉛筆硬度測定から、透明導電膜の膜硬度も高い(6H)ことが確認される。
【0092】
【発明の効果】
請求項1〜2記載の発明に係る透明導電膜によれば、
平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲に設定された貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーを含有し、上記貴金属コート銀微粒子100重量部に対しバインダーが40〜200重量部の範囲に設定されている透明導電膜形成用塗布液を基板上に塗布して形成された単層膜により構成され、この単層膜の表面抵抗が50〜2000Ω/□、上記基板を含まない単層膜だけの可視光線透過率が40〜95%であることから、優れた導電性と高透過率および高い膜強度を具備する効果を有する。
【0093】
また、請求項3〜7記載の発明に係る透明導電膜形成用塗布液によれば、
溶媒と、この溶媒に分散されかつ平均主鎖長さが100〜500nm、平均太さが1〜30nm、平均主鎖長さと平均太さの比が3〜100の範囲にそれぞれ設定された貴金属コート銀微粒子の鎖状凝集体とバインダーを含有し、上記貴金属コート銀微粒子100重量部に対しバインダーが40〜200重量部の範囲に設定されていることから、請求項1〜2記載の透明導電膜を安価に形成できる効果を有する。
【0094】
次に、請求項8記載の発明に係る透明導電性積層構造体によれば、
透明基板とこの上に形成された請求項1〜2記載の透明導電膜とで構成され、この透明導電膜は優れた導電性と高透過率、高い膜強度を有しているため、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光表示管(VFD)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機/無機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の表示装置に適用できると共に、シリコン半導体系やグレッツェル式等の太陽電池、タッチパネル等の透明電極等にも適用できる効果を有している。
【0095】
また、請求項9記載の発明に係る表示装置によれば、
前面板として請求項8に記載の透明導電性積層構造体がその透明導電膜を外面にして組込まれ、この透明導電膜は優れた導電性と高透過率、高い膜強度を有しているため、機械的強度に優れしかも電界シールド効果並びに高画質効果を具備する表示装置として提供できる効果を有する。
【出願人】 【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
【住所又は居所】東京都港区新橋5丁目11番3号
【出願日】 平成15年3月13日(2003.3.13)
【代理人】 【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三

【公開番号】 特開2004−6263(P2004−6263A)
【公開日】 平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願番号】 特願2003−68706(P2003−68706)