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【発明の名称】 透明導電性フィルムの製造方法
【発明者】 【氏名】浅川  幸紀
【住所又は居所】千葉県袖ヶ浦市長浦580番地32  三井化学株式会社内

【氏名】吉開 正彰
【住所又は居所】千葉県袖ヶ浦市長浦580番地32  三井化学株式会社内

【氏名】岡田  知
【住所又は居所】千葉県袖ヶ浦市長浦580番地32  三井化学株式会社内

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基体(A)の一方の主面上に金属酸化物または金属硫化物からなる高屈折率透明薄膜層(B)と少なくとも銀を含む金属薄膜層(C)からなる透明導電層が(B)/(C)を繰り返し単位として1回から5回繰り返し積層され、さらにその上に高屈折率透明薄膜層が形成された透明導電性フィルムの製造方法であって、各高屈折率透明薄膜層(B)を2回以上に分割して成膜し、金属薄膜層(C)と接する高屈折率透明薄膜層(B)の少なくとも1層を表面処理したのちに高屈折率透明薄膜層(C)層を成膜することを特徴とする透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記表面処理が酸素プラズマに暴露する酸素グロー処理であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項3】
各高屈折率透明薄膜層を2回〜10回に分割して複数の成膜室(チャンバー)で成膜することを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項4】
透明基体(A)が透明プラスチックフィルムであって、ロールトゥロールで透明導電性フィルムを形成することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項5】
ターゲット、アプリケーションを有する雰囲気分離のために隔壁で隔離された成膜室(チャンバー)を3個以上有し、該製膜室を透明基体(A)繰り出し側から、金属薄膜層(C)用、2個以上の高屈折率透明薄膜層(B)用に割り当てた装置で製造することを特徴とする請求項4に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項6】
高屈折率透明薄膜層(B)の金属酸化物を酸化インジウム、酸化インジウム―錫、および酸化錫の中から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物であるターゲットを用いて形成することを特徴とする請求項5に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は透明導電性フィルムの製造方法に関する。詳しくは、プラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管(CRT)、液晶表示装置(LCD)等の表示装置から発生する電磁波を効率良く低減させることのできる透明導電性フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の社会情勢にみられる高度情報化に伴い、マンーマシンインタフェイスの役割を担う表示装置の重要性が高まっている。その中でテレビジョン用、パーソナルコンピュータ用、駅や空港などの案内表示用その他各種の情報提供用に用いられる大画面表示装置には高画質化、高効率化、薄型化が要求される。
現在、次世代大画面フラットパネルディスプレイとして、プラズマディスプレイパネル(以下、PDP)が注目されており、また、すでに一部が市場に出始めている。しかしながら、PDPにはその原理上の問題から強度の漏洩電磁界を発生するという問題点を有している。漏洩電磁界は他の電気電子機器等の誤作動、通信障害などを引き起こし、最近では人体に対する影響も懸念されている。特にPDP装置は、そのプラズマ中の励起原子から発生する近赤外線光がコードレスフォン、リモコン等の電子機器に作用する問題がある。
【0003】
そのため、一般的にディスプレイ装置とくにPDPには、漏洩電磁界および近赤外光をシールドするためのフィルター(以下、電磁波フィルター)が用いられている。一般的な電磁波フィルターの構成は、支持板の片面に電磁波シールド層を形成し、支持板の他の片面および電磁波シールド層が形成されたフィルム表面に反射防止層が形成されたものが挙げられる。これらの部材を貼り合わせ、塗布等の手法で組み合わせてPDP光学フィルターとして用いられる。
【0004】
電磁波フィルターの近赤外線および電磁界のシールド材料としては現在のところ大きく分けて▲1▼アースした金属メッシュまたは、合成樹脂または金属繊維のメッシュに金属を被覆したものと近赤外線を吸収する色素とを組み合わせたもの、▲2▼アースした酸化インジウム−錫(ITO)に代表される透明導電性薄膜と(場合によっては)近赤外線を吸収する色素とを組み合わせたものがある。
【0005】
▲1▼の例としては特開平9−330667号公報には透明樹脂板上に導電性ペーストをメッシュ状に塗布乾燥させて作成した電磁波シールド板がある。▲2▼の透明導電性薄膜を基体上に形成した例としては特開平10−73719号公報などに記載された、透明高分子フィルムの一方の主面上に、高屈折率透明薄膜層(B)、金属薄膜層(C)が順次、(B)/(C)を繰り返し単位として4回以上繰り返し積層され、さらにその上に高屈折率透明薄膜層(B)、透明樹脂層が形成された調光フィルムが貼り合わされたディスプレイ用光学フィルターが挙げられる。これらの電磁波フィルターを用いると効率良くPDP(匡体)から発生する電磁波、および近赤外線をシールドすることが可能となる。特に後者の例では、電磁波シールド層として透明導電性薄膜を使用しており、前者と比較してメッシュによる遮光部分の発生やモワレの発生がない。これらの電磁波シールド層自体は、機械的強度が充分ではないためにガラス板やプラスチック板などの支持板とともに用いられる。
【0006】
また、この中で、ITO等の金属酸化物に代表される高屈折率薄膜層と銀を主成分とする金属薄膜層とを積層したものは、透明性が高く、表面抵抗率が低く、良好な電磁波シールド機能を有するために好ましく用いることができる。しかしながら一般の製造条件では、この高屈折率薄膜層と金属薄膜層とを積層した基体の場合、高屈折率薄膜層と金属薄膜層の密着性が弱く透明導電性薄膜自体のもつ耐久性、さらにはディスプレイ用電磁波フィルターに加工時にも剥離等の障害が生じる場合がある。
【0007】
この問題を解決するためさまざまな検討が試されてきたが、充分な効果が得られていないのが現状であった。一般にプラスチックフィルムなどの透明基体上に金属酸化物などの高屈折率薄膜層を成膜する場合、ポリマー基体と高屈折率薄膜層の密着強度を向上させる目的でポリマー基体表面をコロナ放電、プラズマや紫外線に曝したり、アルカリ性のエッチング液に浸漬して表面改質したりすることや、シランカップリング材や別種のポリマーを用いて基材表面を修飾すること等が公知の技術として存在する。
一方、透明導電薄膜を積層する場合の高屈折率透明薄膜層(B)と金属薄膜層(C)界面の密着強度は特に連続的に積層される場合、高屈折率透明薄膜層(B)/金属薄膜層(C)界面の密着強度を上げるため高屈折率透明薄膜層(B)、金属薄膜層(C)成膜条件、形成材料を変更することで可能であることは公知の技術であるがディスプレイ用電磁波フィルター形成時における目的の光学特性及び電気特性が制限されるため好ましくない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の技術では解決することの困難であった電磁波シールド用フィルターとして用いた場合に積層薄膜界面の高密着性を達成できる透明導電性フィルムの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、透明導電層の銀層の剥離は銀層と接触している高屈折率薄膜層表面の活性化エネルギー及び酸化度が銀層の濡れ性に作用し変化させること、高屈折率層表面の活性化、改質は銀層成膜直前に酸素プラズマ処理を施すことにより解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
透明基体(A)の一方の主面上に金属酸化物または金属硫化物からなる高屈折率透明薄膜層(B)と少なくとも銀を含む金属薄膜層(C)からなる透明導電層が(B)/(C)を繰り返し単位として1回から5回繰り返し積層され、さらにその上に高屈折率透明薄膜層が形成された透明導電性フィルムの製造方法であって、各高屈折率透明薄膜層(B)を2回以上に分割して成膜し、金属薄膜層(C)と接する高屈折率透明薄膜層(B)の少なくとも1層を表面処理したのちに高屈折率透明薄膜層(C)層を成膜することを特徴とする透明導電性フィルムの製造方法。
に関する。本発明に使用する成膜方法はスパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、真空蒸着法、湿式塗工法など公知の手法を用いることができる。これらの内、スパッタリング法が最も好ましい。さらに成膜装置はターゲットなどのリソース、制御などのアプリケーション、雰囲気分離のための隔壁などが1組になった成膜室(チャンバー)を複数有し、それぞれが独立に動作する成膜装置であることが望ましい。連続的に形成する場合、透明基体(A)を連続的かつ順番に複数の成膜室(チャンバー)中に搬送する必要があるので、成膜装置には透明基体(A)の形態に適した搬送機能を有する必要がある。この場合ロールトゥロールで製造できる装置が最も好ましい。
【0011】
本発明に係わる透明導電性フィルムは、高屈折率透明薄膜層(B)の金属酸化物が酸化インジウム、酸化インジウムー錫、および酸化錫の中から選ばれた少なくとも1種の酸化物であることが好ましく、更に高屈折率透明薄膜層(B)の厚みが5〜200nmであることが好ましく、金属薄膜層(C)の厚みが4〜30nmであることが好ましく、高屈折率透明薄膜層(B)層中、化学量論的な組成比に比べて充分に酸化または硫化されていない厚みが(B)/金属薄膜層(C)界面から1〜50nmの範囲にあることが更に好ましい態様である。
【0012】
高屈折率透明薄膜層(B)の表面処理方法としては高屈折率薄膜層表面をコロナ放電、プラズマや紫外線に曝したり、アルカリ性のエッチング液に浸漬して表面改質したりすることや、シランカップリング材や別種のポリマーを用いて基材表面を修飾する方法など特に限定されるものではないが、高屈折率薄膜層表面をプラズマに曝すことは、簡便に実施可能であり、かつ、効果的である。
【0013】
特に高屈折率薄膜層表面を酸素含有のプラズマに曝すことは非常に効果的であり、その発生方法はプラズマ発生電極に直流または交流の電圧を印加することにより可能である。また、プラズマを発生させるのに用いるガスとしては、酸素あるいは、亜酸化窒素、一酸化炭素、二酸化炭素などの酸素を分子内に含有するガス、空気に代表される酸素との混合ガス、例えば、窒素、アンモニアなどの窒素を含有するガスと酸素の混合ガスなど、適宜選択可能である。これらの混合ガスにおいて酸素に添加する酸素以外のガスの割合は特に限定されるものではないが、好ましくは0〜70%の範囲である。また、混合に用いるガスは単独であっても2つ以上の混合ガスであってもかまわない。
【0014】
本発明に係わる透明導電性フィルムの製造方法は一般の製造方法と比べ、使用材料を変更することなく、電磁波シールド能が高く、しかも耐環境性に優れるものが得られる。そのため、本発明によって製造された透明導電性フィルムはプラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管(CRT)、液晶表示装置(LCD)等のディスプレイの電磁波シールド用フィルターとして好適に使用することができる。
【0015】
本発明に用いる透明基体は透明プラスチックフィルムが好ましく用いられる。透明プラスチックフィルムとしては透明であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド等のホモポリマー、およびこれらの樹脂のモノマーと共重合可能なモノマーとのコポリマーからなる高分子フィルムが挙げられる。
【0016】
透明プラスチックフィルムの形成法としては、溶融押し出し法、キャスト法、カレンダー法等、公知のプラスチックフィルムの製造法を用いることが可能である。
また、後述するように透明導電性フィルムは透過色・反射色ともに好ましくない色である場合がある。その際の色の補正を目的として透明プラスチックフィルムを着色することも可能である。
着色の方法としては、前記プラスチックフィルムを形成する際に色素と混合してからフィルム化する方法、樹脂中に色素を分散させインキ化し、塗布乾燥させる方法、着色したプラスチックフィルムを貼り合わせる方法等が挙げられる。
【0017】
透明プラスチックフィルムの全光線透過率は、70%以上であることが好ましく、75%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが最も好ましい。
これらの透明プラスチックフィルムの全光線透過率は92%を越えることは一般的にはない。ただし、反射防止層などを形成して光線透過率を上げることにより上記の値を越えることは可能である。
また、透明プラスチックフィルムの厚みには特に規定を設けないが、ハンドリング性の観点から25〜250μmが好ましい。
更に透明導電層との密着性を向上させることを目的として、透明導電層を形成する面に、例えば水性ポリウレタン系、シリコン系コート剤等の密着性を向上させるための下地層を形成することも可能である。
【0018】
透明導電性フィルムは、メッシュの場合と異なり、電磁波シールド面全体を覆っており、ディスプレイの表示分解能を落とすことがない。また、近赤外線の反射能も兼ね備えており、更にロール状での加工が可能であるなど多くの優れた特徴を有しており、本発明の目的に良く合致する。
【0019】
透明導電層の形成は、透明プラスチックフィルムの片面上に形成することが好ましい。両面上に形成すると透明導電層のアースが困難となり好ましくない。本発明に用いる透明導電層としては、透明性が高く、電磁波シールド能は表面抵抗に比例するため低抵抗率の高屈折率薄膜層(B)と金属薄膜層(C)とからなることが好ましい。一般的に透明導電性薄膜として知られている酸化インジウムー錫(ITO)や酸化亜鉛(ZnO)などの金属酸化物系透明導電性薄膜層単独の場合、表面抵抗値を下げるためには薄膜層を厚くする必要があり、その場合、全光線透過率が大幅に低下し好ましくない。また、高屈折率透明薄膜層(B)と金属薄膜層(C)とは繰り返し積層することが好ましい。この場合、最表面層は、高屈折率透明薄膜層(B)であることが好ましい。最表面層が金属薄膜層(C)である場合、空気層もしくは樹脂層と金属層との間に直接反射する界面ができるため、光の反射が大きくなり、光線透過率が大幅に低下するために好ましくない。また、金属層が直接外気にさらされ金属層の劣化が進行し、この観点からも好ましくない。
【0020】
透明プラスチックフィルムの一方の主面上に、高屈折率透明薄膜層(B)、金属薄膜層(C)が順次、(B)/(C)を繰り返し単位として1回から5回繰り返し積層され、さらにその上に高屈折率透明薄膜層(B)が形成されていることが好ましい。繰り返し回数が上記の範囲よりも多い場合には、各層の膜厚の誤差が全体の光学特性の精度に大きく影響をおよぼすようになり、しかも生産性が悪くなるために好ましくない。
【0021】
本発明で製造する透明導電性フィルムの表面抵抗率は、0.5〜8Ω/□であることが好ましく、0.7〜4Ω/□であることが更に好ましい。表面抵抗率が上記の範囲内である場合、良好なシールド特性と光学特性とを両立することが可能となる。表面抵抗率が上記の範囲よりも低い場合、電磁波シールド特性自身は良好であるものの、光線透過率が著しく低下するために好ましくない。また、表面抵抗率が上記の範囲よりも高い場合は、光学特性は良好になるものの、電磁波シールド特性が悪くなるために好ましくない。
【0022】
上記透明導電性フィルムの全光線透過率は40%以上であることが好ましく、50%以上であることが更に好ましく、55%以上であることが最も好ましい。全光線透過率が上記の値よりも低い透明導電性フィルムを用いた電磁波フィルターをディスプレイに組み付けると画面が暗くなるために好ましくない。
【0023】
本発明では透明導電層として一部に金属薄膜層(C)を用いている。そのため、金属薄膜層(C)と透明屈折率薄膜層(B)との厚みを光学的に最適化しても金属薄膜層による光の吸収・反射を避けることはできない。従って、本発明で用いる透明導電層の全光線透過率は80%を越えることは一般的にはない。
【0024】
本発明で製造する高屈折率透明薄膜層(B)としては特に材質が限定されるものではないが、好ましくは屈折率が1.8以上の材料が好ましい。このような高屈折率透明薄膜層(B)を形成しうる具体的な材料としては、インジウム、チタン、ジルコニウム、ビスマス、錫、亜鉛、アンチモン、タンタル、セリウム、ネオジウム、ランタン、トリウム、マグネシウム、ガリウム等の酸化物、これらの酸化物の混合物、複合酸化物や硫化亜鉛等が挙げられる。これらの材料の中で酸化インジウムや酸化インジウム−錫(ITO)、酸化錫は透明性が高く、屈折率が高いことに加えて、成膜速度が速く、金属薄膜層との密着性が良好であることから好ましく用いることができる。
【0025】
高屈折率透明薄膜層の厚みとしては要求する光学特性から求まるものであり、特に制限されるものではないが、各層の厚みは2〜600nmが好ましく、5〜200nmが更に好ましい。また、先にも述べたように高屈折率透明薄膜層は金属薄膜層と繰り返し積層して用いるが、各高屈折率透明薄膜層は同じ材料である必要はなく、また、同じ厚みである必要もない。高屈折率透明薄膜層の成膜方法としてはスパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、真空蒸着法、湿式塗工法など公知の手法を用いることができる。これらの内、スパッタリング法が最も好ましい。
【0026】
金属薄膜層(C)の材料としては、銀金属単体もしくは銀を含む金属層であることが好ましい。銀はその表面抵抗率の低さ、赤外反射特性が良好なこと、高屈折率透明薄膜層(B)と積層した場合の可視光線透過特性が優れるために好ましく用いることができる。
【0027】
高屈折率透明薄膜層の場合と同じように各金属薄膜層の厚みは要求する光学特性と表面抵抗率から求まるものであり、また、各金属層の厚みは島状構造でないことが好ましいため4nm以上が好ましく、透明性の観点から30nm以下が好ましい。先にも述べたように金属薄膜層は高屈折率透明薄膜層と繰り返し積層して用いるが、各金属薄膜層は同じ材質である必要はなく、また、同じ厚みである必要もない。金属薄膜層の成膜方法としてはスパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、真空蒸着法、湿式塗工法など公知の手法を用いることができる。これらの内、スパッタリング法が最も好ましい。
【0028】
本発明で用いる成膜装置は一般にいうロールコーターが望ましい。ロールコーターはターゲット、成膜用ガスなどのリソース、成膜条件、基体搬送、真空ポンプ制御などのアプリケーション、雰囲気分離のための隔壁などが1組になった成膜室(チャンバー)を2個以上有することが好ましく、5個以上有することが最も好ましい。また、プラズマ発生用電極を上記のチャンバーとは別に隔離された真空層中に設置されている必要がある。チャンバーの割り当ては透明導電性フィルムを成膜する場合2通りある。ロール状の透明基体(A)の繰り出し側に位置するチャンバーにプラズマ発生装置、金属薄膜層(C)用ターゲット、その他のチャンバーに各高屈折率透明薄膜層(B)用ターゲットを並べる場合と(以下(C)/(B)オーダー)、ロール状の透明基体(A)の繰り出し側と巻取り側の中央に位置するチャンバーに金属薄膜層(C)用ターゲット、その繰り出し側チャンバーにプラズマ発生装置、その他のチャンバーに各高屈折率透明薄膜層(B)用ターゲットを並べる場合(以下(B)/(C)/(B)オーダー)である。成膜装置のそれぞれのチャンバーは独立に動作する成膜装置であることが好ましいが、本発明では各高屈折率透明薄膜層(B)成膜用に割り当てられたチャンバーはその装置が得られる最大の堆積速度を実現する成膜条件で一定に保たれているため、高屈折率透明薄膜層(B)成膜用チャンバーの制御は独立である必要はない。
【0029】
この場合、高屈折率透明薄膜層(B)膜厚は透明基体(A)を搬送する速度で、金属薄膜層(C)膜厚は金属薄膜層(C)成膜用チャンバーに印加する出力と透明基体(A)の搬送速度の比で調整する必要がある。成膜装置のチャンバー数によらず本発明では所望の積層数の透明導電フィルムを得るために透明基体を複数回成膜装置内で搬送・成膜する必要がある。つまり高屈折率透明薄膜層(B)、金属薄膜層(C)が順次、(B)/(C)を繰り返し単位として、(C)/(B)オーダーの場合は繰り返し数+1回の搬送・成膜(以下パス)、(B)/(C)/(B)オーダーの場合は繰り返し数のパスをもつことにより所望の透明導電フィルムが得られる。
【0030】
高屈折率薄膜層(B)表面に施すプラズマ処理の度合はプラズマ発生装置に印加する直流または交流電圧の大きさとラインスピードに対する出力で制御する。通常直流の場合高電圧を印加するほど高屈折率薄膜層(B)の表面改質および高屈折率薄膜層(B)に対する金属薄膜層(C)の密着強度は上昇するが、プラズマ発生装置に導入するガス圧が低くなり放電が安定しない。従ってプラズマ発生装置に導入するガス圧は0.5〜2.0Paが好ましく、印加電圧は700〜1400Vが好ましい。また上記の製造装置によって高屈折率薄膜層(B)/金属薄膜層(C)積層体を製造する場合、高屈折率薄膜層(B)表面をプラズマ処理した直後に金属薄膜層(C)を形成することが好ましく、ロールコーター真空槽が0.0001Paまで排気されている場合、2〜10秒以内に金属薄膜層(C)の成膜を開始することが好ましい。
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
なお、評価項目・評価方法に関しては以下のようにして行なった。
(1)全光線透過率(%)
分光光度計[(株)日立製、製品名:U−3500型]を用いて、得られた各試料の任意の5点を測定し、その平均値を用いた。
(2)表面抵抗率(%)
4探針式表面抵抗率測定装置[三菱化学(株)製、製品名:ロレスタSP]を用いて得られた各試料の任意の10点を測定し、その平均値を用いた。
(3)密着性(箇所/100箇所)
密着性は碁盤目剥離試験JISD0202で行った。測定膜にカッターナイフで透明基体まで達する線を縦横各11本、1mm間隔で引き、1平方mmの区画を100箇所作製した。次に作製した区画を覆うようにセロテープ(登録商標)をしっかりはり付けてから一気にはがし、透明基体から剥がれなかった透明導電薄膜の箇所数を測定した。
(実施例1)
厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人株式会社製、製品名:OGX)の一方の主面上にPETフィルム側から酸化インジウム―錫薄膜/銀薄膜/酸化インジウム―錫薄膜/銀薄膜/酸化インジウム―錫薄膜/銀薄膜/酸化インジウム―錫薄膜の積層構造からなり、それぞれの厚みが40/10/80/10/80/10/40nmである透明導電性フィルムを得た。
成膜装置は6個のチャンバーを有しており、透明基材繰り出し側から順にプラズマ発生装置(#1)/銀(#2)/インジウム―錫(#3)/酸化インジウム錫(#4)/酸化インジウム―錫(#5)/酸化インジウム錫(#6)がそれぞれプラズマ処理およびスパッタリングできるよう成膜装置を設定した。はじめに40nmの酸化インジウム―錫薄膜を形成し、次にプラズマ処理後10nm/80nmの銀薄膜/酸化インジウム―錫薄膜を2回積層して、最後にプラズマ処理後10nm/40nmの銀薄膜/酸化インジウム―錫薄膜を1回積層して目標の透明導電性フィルムを得た。なお、酸化インジウム薄膜の形成は、圧力が0.01Paとなるように排気した後、スパッタリングガス流量比をアルゴンガス:酸素ガス=100:7とし、それぞれ全圧が0.5Paになるまで導入した。この状態でマグネトロンDCスパッタリング法により成膜した。
また、銀薄膜の形成は、ターゲットに銀を用い、圧力が0.01Paとなるように排気した後、全圧が0.5Paになるまでアルゴンガスを導入した。この状態でマグネトロンDCスパッタリング法により成膜した。
プラズマ処理条件は圧力が0.01Paとなるように排気した後、全圧が1Paになるよう酸素ガスを導入した。印加電圧は直流1000V、プラズマ処理時間は4秒、プラズマ処理後3秒以内に銀薄膜の形成を開始した。
得られた透明導電性フィルムの全光線透過率、表面抵抗率、密着性を上記方法により測定し、結果を表1にまとめた。
(比較例1)
銀薄膜形成前にプラズマ処理を施さない以外はすべて実施例1と同様に行った。
得られた透明導電性フィルムの全光線透過率・表面抵抗率・密着性の測定結果を表1に示す。
【表1】


【発明の効果】
本発明における透明導電性フィルムの製造方法を用いると、従来の方法では不可能であった高透過かつ電磁波シールド能が高い電磁波シールドフィルターを構成することができ、透明導電性フィルムの薄膜間の密着性が良いため加工性にすぐれ、歩留まりの向上、コストダウンを実現することができる。
【出願人】 【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区霞が関三丁目2番5号
【出願日】 平成14年6月3日(2002.6.3)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−6171(P2004−6171A)
【公開日】 平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願番号】 特願2002−161172(P2002−161172)