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【発明の名称】 元素変換体およびその製造方法
【発明者】 【氏名】岩村 康弘
【住所又は居所】兵庫県高砂市荒井町新浜2丁目1番1号 三菱重工業株式会社高砂研究所内

【氏名】伊藤 岳彦
【住所又は居所】神奈川県横浜市金沢区幸浦一丁目8番地1 三菱重工業株式会社先進技術研究センター内

【氏名】坂野 充
【住所又は居所】神奈川県横浜市金沢区幸浦一丁目8番地1 三菱重工業株式会社先進技術研究センター内

【氏名】坂井 智嗣
【住所又は居所】神奈川県横浜市金沢区幸浦一丁目8番地1 三菱重工業株式会社先進技術研究センター内

【要約】 【課題】サイズの大型化をもたらすことなく表面層の表面積を大きくすることによって、放射性の被変換物質を非放射性の安定元素へ変換する効率を高める。

【解決手段】本発明の元素変換体によれば、少なくとも一方の表面の立断面形状がシ゛ク゛サ゛ク゛形状をなし、Pr、Pr合金、Pr以外の水素貯蔵金属、およびPr合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる基板12と、基板12と同一の物質と、この物質よりも仕事関数が小さい物質とを混合してなり、基板12のシ゛ク゛サ゛ク゛形状をなす一方の表面上に積層配置された薄膜状の混合層14と、基板12と同一の物質から構成してなり、混合層14の非基板側の表面上に積層配置された薄膜状の表面層16とを備えている。そして、表面層16の非混合層側の表面上に被変換物質が配置され、表面層16側から基板12側へと重水素が通過されることによって、被変換物質の元素変換が行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平板形状をなす基板であって、この平板の少なくとも一方の表面の立断面形状がジグザグ形状をなし、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる基板と、
前記基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを混合してなり、前記基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に積層配置されることによって、自己の立断面形状がジグザグ形状をなす薄膜状の混合層と、
前記基板と同一の物質から構成してなり、前記混合層の非基板側の表面上に積層配置されることによって、自己の立断面形状がジグザグ形状をなす薄膜状の表面層とを備え、
前記表面層の非混合層側に被変換物質が配置され、前記表面層側から前記基板側へと重水素が通過されることによって、前記被変換物質の元素変換が行われるようにした元素変換体。
【請求項2】
略平板形状をなす基板であって、この平板の少なくとも一方の表面の立断面形状がジグザグ形状をなし、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる基板と、
前記基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを混合してなり、前記基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に積層配置されることによって、自己の立断面形状がジグザグ形状をなす薄膜状の混合層と、
前記基板と同一の物質からなる粉体によって、前記混合層の非基板側の表面上を覆うように配置されることによって、自己の立断面形状が略ジグザグ形状をなす薄膜状の表面層とを備え、
前記表面層の非混合層側に被変換物質が配置され、前記表面層側から前記基板側へと重水素が通過されることによって、前記被変換物質の元素変換が行われるようにした元素変換体。
【請求項3】
略平板形状をなす基板であって、この平板の少なくとも一方の表面の立断面形状がジグザグ形状をなし、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる基板と、
前記基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを混合してなり、前記基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に積層配置されることによって、自己の立断面形状がジグザグ形状をなす薄膜状の混合層と、
前記基板と同一の物質から構成してなり、前記混合層の非基板側の表面上に積層配置されることによって、自己の立断面形状が略ジグザグ形状をなす多孔質状の表面層とを備え、
前記表面層の非混合層側に被変換物質が配置され、前記表面層側から前記基板側へと重水素が通過されることによって、前記被変換物質の元素変換が行われるようにした元素変換体。
【請求項4】
パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる平板を真空雰囲気で所定のアニール時間に亘ってアニールした後に、重水素置換された強酸で少なくとも一方の表面を所定時間に亘ってエッジングすることによって、この表面の立断面形状がジグザグ形状をなす前記基板を形成し、
前記形成された基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に、前記基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを、スパッタリングによって交互に配置させることによって、前記基板に混合層を積層配置させ、
前記積層配置された混合層の非基板側に、前記基板と同一の物質をスパッタリングすることによって、前記混合層に表面層を積層配置させることによって請求項1に記載の元素変換体を製造するようにした元素変換体の製造方法。
【請求項5】
パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる平板を真空雰囲気で所定のアニール時間に亘ってアニールした後に、少なくとも一方の表面を機械加工することによって、この表面の立断面形状がジグザグ形状をなす基板を形成し、
前記形成された基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に、前記基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを、スパッタリングによって交互に配置させることによって、前記基板に混合層を積層配置させ、
前記積層配置された混合層の非基板側の表面上に、前記基板と同一の物質をスパッタリングすることによって、前記混合層に表面層を積層配置させて請求項1に記載の元素変換体を製造するようにした元素変換体の製造方法。
【請求項6】
パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる平板を真空雰囲気で所定のアニール時間に亘ってアニールした後に、重水素置換された強酸で少なくとも一方の表面を、所定時間に亘ってエッジングするかまたは機械加工することによって、この表面の立断面形状がジグザグ形状をなす基板を形成し、
前記形成された基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に、前記基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを、スパッタリングによって交互に配置させることによって、前記基板に混合層を積層配置させ、
前記積層配置された混合層の非基板側の表面上に、前記基板と同一の物質からなる粉体を分散配置させた後に焼結し、前記混合層に表面層を積層配置させることによって請求項2に記載の元素変換体を製造するようにした元素変換体の製造方法。
【請求項7】
パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる平板を真空雰囲気で所定のアニール時間に亘ってアニールした後に、重水素置換された強酸で少なくとも一方の表面を、所定時間に亘ってエッジングするかまたは機械加工することによって、この表面の立断面形状がジグザグ形状をなす基板を形成し、
前記形成された基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に、前記基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを、スパッタリングによって交互に配置させることによって、前記基板に混合層を積層配置させ、
前記積層配置された混合層の非基板側の表面上に、前記基板と同一の物質を電着させることによって、前記混合層に多孔質状の表面層を積層配置させることによって請求項3に記載の元素変換体を製造するようにした元素変換体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば原子力施設において生成される長寿命の放射性物質を、重水素と反応させることによって、非放射性の安定元素に変換させるための元素変換体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電所等の原子力施設において発生するCs−137(セシウム137)や、Sr−90(ストロンチウム90)等の長半減期の放射性元素を、安定した非放射性元素に変換させるための技術として、例えば、本出願人によって出願された特願2001−201875がある。
【0003】
特願2001−201875では、図9に示すように、Pd(パラジウム)等の複合体からなる平板状の元素変換体50が、2つのセル51,52から構成されてなる反応室53の、両セル51,52の境界部に配置される。そして、Cs−137や、Sr−90等の被変換物質54が元素変換体50のセル51側の表面に配置された状態で、セル51側からセル52側へと重水素ガスが図中の矢印Dに示す方向に供給される。
【0004】
元素変換体50は、その構成を図10に示すように、平板状(例えば25mm平方で0.1mm厚)の基板56と、その上面に積層配置された薄膜状の混合層57と、さらに混合層57の上面に積層配置された薄膜状の表面層58とからなる3層の積層構造体である。
【0005】
基板56は、Pd、Pd合金、Pd以外の水素貯蔵金属、およびPd合金以外の水素貯蔵合金によって構成されている。
【0006】
混合層57は、基板56に用いられている物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とが混合して形成されている。Pdの仕事関数は、5.0eVであるので、基板56にPdが用いられたとき、例えば、PdとCaO(酸化カルシウム)とが混合されることによって、あるいはPdとY(酸化イットリウム)とが混合されることによって、あるいはPdとTiC(炭化チタン)とが混合されることによって混合層が形成される。CaO、Y、およびTiCの仕事関数はそれぞれ1.6eV、2.0eV、および2.3eVでありいずれもPdの仕事関数より小さい。このようにして形成される混合層57の厚みは数10nm〜数100nmである。
【0007】
表面層58は、基板56に用いられている物質と同一の物質から構成され、その厚みは、1μm以下である。
【0008】
このように構成された元素変換体50の表面層58の表面に放射性の被変換物質54が塗布等により配置された状態で、図9中の矢印Dに示す方向に重水素ガスが供給されると、以下のようなメカニズムによって、被変換物質54が非放射性の安定元素に変換される。
【0009】
すなわち、図11に示すように、混合層57の光電効果に対する仕事関数は、表面層58の光電効果に対する仕事関数よりも低いことから、混合層57は表面層58よりも電子を放出し易い。このため、表面層58は、混合層57から放出された電子(e)が供給された電子過剰の状態となっている。
【0010】
このような電子過剰の状態の表面層58に重水素(d)が供給されると、以下に示す(1)式に示すような反応によって、中性子(n)とニュートリノ(ν)とが生成される。
−1 → +ν ・・・・(1)
更に、上記(1)式にしたがって生成された中性子(n)が被変換物質54と結合することによって、非放射性の安定元素に変換される。例えば、被変換物質54がCs−133の場合、以下に示す(2)式に示すような反応によって、Cs−133が、非放射性の安定元素であるPr−141(プラセオジウム141)に変換される。
55Cs133+4 → 59Pr141 ・・・・(2)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の元素変換体では、以下のような問題がある。
【0012】
すなわち、被変換物質54を非放射性の安定元素に変換するための変換効率は、表面層58の表面積に依存する。つまり、表面層58に対して、できる限り多量の被変換物質54を配置することができれば、それだけ多くの被変換物質54を非放射性の安定元素に変換することができるために、変換効率を高めることができる。
【0013】
しかしながら、従来技術の元素変換体50は、図10に示すように、表面層58が平坦であるために、変換効率を高めるためには、表面層58の大きさそのものを大きくする必要があり、元素変換体50のサイズの大型化をもたらしてしまう。これは、元素変換体50のみならず、反応室53の大型化をももたらし、コストアップにつながるという問題がある。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、サイズの大型化をもたらすことなく表面層の表面積を大きくすることによって、放射性の被変換物質を非放射性の安定元素へ変換する効率を高めることが可能な元素変換体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0016】
すなわち、請求項1の発明の元素変換体は、略平板形状をなす基板であって、この平板の少なくとも一方の表面の立断面形状がジグザグ形状をなし、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる基板と、基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを混合してなり、基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に積層配置されることによって、自己の立断面形状がジグザグ形状をなす薄膜状の混合層と、基板と同一の物質から構成してなり、混合層の非基板側の表面上に積層配置されることによって、自己の立断面形状がジグザグ形状をなす薄膜状の表面層とを備えている。そして、表面層の非混合層側の表面上に被変換物質が配置され、表面層側から基板側へと重水素が通過されることによって、被変換物質の元素変換が行われる。
【0017】
従って、請求項1の発明の元素変換体においては、以上のような手段を講じることにより、ジグザグ形状によって表面層の表面積を増やすことによって、サイズの大型化をもたらすことなく、より多くの被変換物質を配置することができるようになる。その結果、変換効率を高めることが可能となる。
【0018】
請求項2の発明の元素変換体は、略平板形状をなす基板であって、この平板の少なくとも一方の表面の立断面形状がジグザグ形状をなし、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる基板と、基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを混合してなり、基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に積層配置されることによって、自己の立断面形状がジグザグ形状をなす薄膜状の混合層と、基板と同一の物質からなる粉体によって、混合層の非基板側の表面上を覆うように配置されることによって、自己の立断面形状が略ジグザグ形状をなす薄膜状の表面層とを備えている。そして、表面層の非混合層側の表面上に被変換物質が配置され、表面層側から基板側へと重水素が通過されることによって、被変換物質の元素変換が行われる。
【0019】
以上のような手段を講じることによって、請求項1の発明の元素変換体よりも更に表面層の表面積を増やすことができる。その結果、サイズの大型化をもたらすことなく、変換効率を高めることが可能となる。
【0020】
請求項3の発明の元素変換体は、略平板形状をなす基板であって、この平板の少なくとも一方の表面の立断面形状がジグザグ形状をなし、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる基板と、基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを混合してなり、基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に積層して密着配置されることによって、自己の立断面形状がジグザグ形状をなす薄膜状の混合層と、基板と同一の物質から構成してなり、混合層の非基板側の表面上に積層配置されることによって、自己の立断面形状が略ジグザグ形状をなす多孔質状の表面層とを備えている。そして、表面層の非混合層側に被変換物質が配置され、表面層側から基板側へと重水素が通過されることによって、被変換物質の元素変換が行われる。
【0021】
以上のような手段を講じることによって、請求項1の発明の元素変換体よりも更に表面層の表面積を増やすことができる。その結果、サイズの大型化をもたらすことなく、変換効率を高めることが可能となる。
【0022】
請求項4の発明の元素変換体の製造方法は、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる平板を真空雰囲気で所定のアニール時間に亘ってアニールした後に、重水素置換された強酸で少なくとも一方の表面を所定時間に亘ってエッジングすることによって、この表面の立断面形状がジグザグ形状をなす基板を形成する。次に、形成された基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に、基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを、スパッタリングによって交互に配置させることによって、基板に混合層を積層配置させる。そして、積層配置された混合層の非基板側の表面上に、基板と同一の物質をスパッタリングによって配置することによって、混合層に表面層を積層配置させることによって請求項1の発明の元素変換体を製造する。
【0023】
従って、請求項4の発明の元素変換体の製造方法においては、以上のような手段を講じることにより、表面層の立断面形状がジグザグ形状をなすような元素変換体を製造することができる。その結果、表面層が平坦な場合よりも、大きく表面積をとれることから、元素変換体のサイズの大型化をもたらすことなく、より多くの被変換物質を同時に変換処理することが可能となる。
【0024】
請求項5の発明の元素変換体の製造方法は、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる平板を真空雰囲気で所定のアニール時間に亘ってアニールした後に、少なくとも一方の表面を機械加工することによって、この表面の立断面形状がジグザグ形状をなす基板を形成する。次に、形成された基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に、基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを、スパッタリングによって交互に配置させることによって、基板に混合層を積層配置させる。そして、積層配置された混合層の非基板側の表面上に、基板と同一の物質をスパッタリングすることによって、混合層に表面層を積層配置させて請求項1の発明の元素変換体を製造する。
【0025】
従って、請求項5の発明の元素変換体の製造方法においては、以上のような手段を講じることにより、表面層を機械加工することによって、その立断面形状に精密にジグザグ形状を形成することができる。その結果、表面層が平坦な場合よりも、大きく表面積をとれることから、元素変換体のサイズの大型化をもたらすことなく、より多くの被変換物質を同時に変換処理することが可能となる。
【0026】
請求項6の発明の元素変換体の製造方法は、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる平板を真空雰囲気で所定のアニール時間に亘ってアニールした後に、重水素置換された強酸で少なくとも一方の表面を、所定時間に亘ってエッジングするかまたは機械加工することによって、この表面の立断面形状がジグザグ形状をなす基板を形成する。次に、形成された基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に、基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを、スパッタリングによって交互に配置させることによって、基板に混合層を積層配置させる。そして、積層配置された混合層の非基板側の表面上に、基板と同一の物質からなる粉体を分散配置させた後に焼結し、混合層に表面層を積層配置させることによって請求項2の発明の元素変換体を製造する。
【0027】
従って、請求項6の発明の元素変換体の製造方法においては、以上のような手段を講じることにより、請求項2の発明の元素変換体を製造することができる。
【0028】
請求項7の発明の元素変換体の製造方法は、パラジウム、パラジウム合金、パラジウム以外の水素貯蔵金属、およびパラジウム合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる平板を真空雰囲気で所定のアニール時間に亘ってアニールした後に、重水素置換された強酸で少なくとも一方の表面を、所定時間に亘ってエッジングするかまたは機械加工することによって、この表面の立断面形状がジグザグ形状をなす基板を形成する。次に、形成された基板のジグザグ形状をなす一方の表面上に、基板と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを、スパッタリングによって交互に配置させることによって、基板に混合層を積層配置させる。そして、積層配置された混合層の非基板側の表面上に、基板と同一の物質を電着させることによって、混合層に多孔質上の表面層を積層配置させることによって請求項3の発明の元素変換体を製造する。
【0029】
従って、請求項7の発明の元素変換体の製造方法においては、以上のような手段を講じることにより、請求項3の発明の元素変換体を製造することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0031】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を図1から図3を用いて説明する。
【0032】
図1は、第1の実施の形態に係る元素変換体の製造方法によって製造した元素変換体の構成例を示す立断面図である。
【0033】
すなわち、図1にその立断面図を示すような元素変換体10は、基板12と、混合層14と、表面層16とからなる3層の積層構造体である。
【0034】
基板12は、平板形状(例えば25mm平方で0.1mm厚)をなし、混合層14側の表面の立断面形状がジグザグ形状をなし、Pd、Pd合金、Pd以外の水素貯蔵金属、およびPd合金以外の水素貯蔵合金のうちの何れかから構成してなる。ジグザグのピッチpおよび高低差hともに数μm程度である。
【0035】
混合層14は、従来技術と同様、基板12と同一の物質と、この物質よりも光電効果における電子発生効率に対する仕事関数が小さい物質とを混合してなる。従来技術で説明したように、基板56にPdが用いられたとき、例えば、PdとCaO(酸化カルシウム)とを混合することによって、あるいはPdとY(酸化イットリウム)とを混合することによって、あるいはPdとTiC(炭化チタン)とを混合することによって混合層14を形成する。そして、基板12のジグザグ形状をなす一方の表面上に、立断面形状がジグザグ形状をなすように積層配置している。混合層14の厚みtは、数10nm〜数100nmである。
【0036】
表面層16もまた、従来技術で説明したように、基板12に用いられている物質と同一の物質から構成され、その厚みtは、1μm以下の薄膜状の層である。そして、混合層14の非基板側の表面上に、立断面形状がジグザグ形状をなすように積層配置している。
【0037】
このように構成された元素変換体10の表面層16のジグザグ面に、Cs−137やSr−90等の放射性の被変換物質54を配置する。そして、図9に示すように、この元素変換体10を、元素変換体50と同様に、2つのセル51,52から構成されてなる反応室53の、両セル51,52の境界部に配置する。そして、セル51側からセル52側へと重水素ガスを図中の矢印Dに示す方向に供給する。これによって、従来技術で説明したようなメカニズムにしたがって被変換物質54を非放射性の安定元素に変換する。
【0038】
このように、表面層16にジグザグ面を形成することによって、表面層16の表面積を増やすことができる。これによって、元素変換体10のサイズの大型化をもたらすことなく、より多くの被変換物質54を表面層16に配置することができるようにしている。その結果、より多くの被変換物質54を安定元素に変換することができるようになり、変換効率を高めている。
【0039】
次に、以上のように構成した元素変換体10の製造方法について、図2に示すフローチャートを用いて以下に説明する。
【0040】
すなわち、図1に示すような元素変換体10を製造するためには、まず、基板12の材料で構成してなる平板を、10−7気圧程度の真空雰囲気で、約10時間に亘ってアニールする(S1)。
【0041】
その後、DCl/DOと、DNO/DOとの混合溶液である重王水等の重水素置換された強酸を用いて、少なくとも一方の表面を100秒間に亘ってエッジングする(S2)。これによって、エッジングした表面に山谷が形成される。
【0042】
しかる後に、アルゴンイオンビームスパッタ法によって、厚み2nm程度の例えばCaOと、厚み18nm程度の例えばPdとを交互に4回ずつスパッタすることによって、図3に示すように、厚み80nm程度の混合層14が形成される(S3)。
【0043】
更に、混合層14の表面に表面層16を形成する物質(例えばPd)を、その厚みが40nm程度になるまでスパッタリングすることによって、図3にその拡大図を示すように、断面がジグザグ形状の表面層16が形成される(S4)。
【0044】
なお、ステップS2におけるエッジングに代えて、ナノオーダで機械加工し、基板12の表面に凹凸をつけることによって、その立断面形状をジグザグ形状にするようにしても良い。
【0045】
上述したように、本実施の形態に係る元素変換体の製造方法によって、表面層16の表面の立断面形状がジグザグ形状の元素変換体10を製造することができる。
【0046】
このようにして製造された元素変換体10は、表面層16の表面積を増やすことができる。これによって、元素変換体10のサイズの大型化をもたらすことなく、より多くの被変換物質54を表面層16に配置することが可能となる。その結果、変換効率の向上を図ることが可能となる。
【0047】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を図4から図5を用いて説明する。
【0048】
図4は、第2の実施の形態に係る元素変換体の製造方法によって製造した元素変換体の構成例を示す立断面図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0049】
すなわち、図4にその立断面図を示すような元素変換体18は、図1にその立断面図を示すような元素変換体10と同様に、立断面形状がジグザグ形状をなす表面を有する基板12と、立断面形状がジグザグ形状をなす表面に積層配置された混合層14と、表面層とからなる3層の積層構造体であるが、混合層14の表面に多数の粉体20を分散配置させることによって、その立断面形状が略ジグザグ形状となるような表面層を形成している。この粉体は、第1の実施の形態で説明したように、基板12に用いられている物質と同一の物質を粉体化したものである。
【0050】
次に、以上のように構成した元素変換体18の製造方法について、図5に示すフローチャートを用いて以下に説明する。
【0051】
すなわち、図4に示すような元素変換体18を製造するためには、図2のフローチャートに示すステップS1からステップS3と同様の処理を行うことによって、図3に示すような、厚み100nm程度の混合層14が形成される。
【0052】
更に、表面層16を形成する物質(例えばPd)の粉体20を、混合層14の表面に分散させる(S5)。なお、粉体20の径は、40nm程度が好適である。粉体20を分散後、10気圧程度のアルゴン雰囲気で高温にして焼結させることによって、厚みが40nm程度の表面層が形成される(S6)。
【0053】
なお、第1の実施の形態と同様に、ステップS2におけるエッジングに代えて、ナノオーダで機械加工し、基板12の表面に凹凸をつけることによって、その立断面形状をジグザグ形状にするようにしても良い。
【0054】
上述したように、本実施の形態に係る元素変換体の製造方法によって、多数の粉体20から形成されてなり、かつその表面の立断面形状がジグザグ形状の表面層を有する元素変換体18を製造することができる。
【0055】
このような構成の元素変換体18は、第1の実施の形態の元素変換体10よりも表面層の表面積を更に増やすことができる。これによって、元素変換体18のサイズの大型化をもたらすことなく、更により多くの被変換物質54を一度に配置することが可能となる。その結果、更なる変換効率の向上を図ることが可能となる。
【0056】
(第3の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を図6から図8を用いて説明する。
【0057】
図6は、第3の実施の形態に係る元素変換体の製造方法によって製造した元素変換体の構成例を示す立断面図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0058】
すなわち、図6にその立断面図を示すような元素変換体22は、図1にその立断面図を示すような元素変換体10と同様に、立断面形状がジグザグ形状をなす表面を有する基板12と、立断面形状がジグザグ形状をなす表面に積層配置された混合層14と、表面層とからなる3層の積層構造体であるが、混合層14の表面に多孔質状の表面層24を配置している。多孔質状の表面層24は、その詳細を図7に示すように、多数の空洞26を有している。このような表面層24もまた、第1の実施の形態で説明したように、基板12に用いられている物質と同一の物質からなるものである。
【0059】
次に、以上のように構成した元素変換体22の製造方法について、図8に示すフローチャートを用いて以下に説明する。
【0060】
すなわち、図6に示すような元素変換体22を製造するためには、図2のフローチャートに示すステップS1からステップS3と同様の処理を行うことによって、図3に示すような、厚み100nm程度の混合層14が形成される。
【0061】
その後、表面層24を形成する物質(例えばPd)を含んだ溶液中で、厚みが40nm程度の表面層形成物質(例えばPd)を電着させる(S7)。これによって、多数の空洞26を有する多孔質状の表面層24が形成される。なお、表面層24の表面積を決定する空洞26の大きさ、および分布密度については、電着の際の電流密度によって制御することが可能である。
【0062】
なお、第1の実施の形態と同様に、ステップS2におけるエッジングに代えて、ナノオーダで機械加工し、基板12の表面に凹凸をつけることによって、その立断面形状をジグザグ形状にするようにしても良い。
【0063】
上述したように、本実施の形態に係る元素変換体の製造方法によって、多数の空洞26を有する多孔質状の表面層24を有する元素変換体22を製造することができる。
【0064】
このような構成の元素変換体22もまた、第1の実施の形態の元素変換体10よりも表面層の表面積を更に増やすことができる。これによって、元素変換体22のサイズの大型化をもたらすことなく、更により多くの被変換物質54を一度に配置することが可能となる。その結果、更に変換効率の向上を図ることができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、サイズの大型化をもたらすことなく表面層の表面積を大きくすることによって、放射性の被変換物質を非放射性の安定元素へ変換する効率を高めることが可能な元素変換体およびその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係る元素変換体の製造方法によって製造した元素変換体の構成例を示す立断面図
【図2】第1の実施の形態に係る元素変換体の製造方法における処理を示すフローチャート
【図3】第1の実施の形態に係る元素変換体の製造方法によって製造した元素変換体の表面層近傍の立断面構成例を示す模式図
【図4】第2の実施の形態に係る元素変換体の製造方法によって製造した元素変換体の構成例を示す立断面図
【図5】第2の実施の形態に係る元素変換体の製造方法における処理を示すフローチャート
【図6】第3の実施の形態に係る元素変換体の製造方法によって製造した元素変換体の構成例を示す立断面図
【図7】第3の実施の形態に係る元素変換体の製造方法によって製造した元素変換体の多孔質状の表面層を示す模式図
【図8】第3の実施の形態に係る元素変換体の製造方法における処理を示すフローチャート
【図9】元素変換体に重水素ガスを供給することによって元素変換反応を引き起こす反応室の構成を示す立断面図
【図10】従来技術による元素変換体の構成を示す立断面図
【図11】混合層から放出された電子によって電子過剰となっている表面層の状態を説明するための概念図
【符号の説明】
10,18,22,50…元素変換体
12,56…基板
14,57…混合層
16,24,58…表面層
20…粉体
26…空洞
51,52…セル
53…反応室
54…被変換物質
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区港南二丁目16番5号
【出願日】 平成14年8月12日(2002.8.12)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦

【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男

【識別番号】100068814
【弁理士】
【氏名又は名称】坪井 淳

【識別番号】100092196
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 良郎

【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲

【識別番号】100100952
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 鉄也

【公開番号】 特開2004−77200(P2004−77200A)
【公開日】 平成16年3月11日(2004.3.11)
【出願番号】 特願2002−235123(P2002−235123)