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【発明の名称】 卓上プラズマ実験装置
【発明者】 【氏名】門 信一郎

【要約】 【課題】直流グロー放電によるプラズマ実験装置は真空ポンプや放電管、高圧電源や各種計測機器等の構成が大掛かりで、研究機関や科学館等に設置されないと十分な演示ができないうえ、専門知識をもったものでないと発注、組み立て、解体作業ができなかった。

【解決手段】真空ポンプ103上部に直接すべての真空部品を統括する枝管を有したチャンバー108を連通し、それに放電管105を連通することで卓上の直流プラズマ放電装置が実現される。さらに安定抵抗を内臓した高圧電源装置111を用いることにより、電源電圧表示計109と放電電圧表示計110両方を電源装置内に組み込むことが可能となり、また設置、移動が容易な、いわゆるポータブルな装置にできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成からなるグロー放電装置及び高圧電源装置とを有することを特徴とする卓上プラズマ実験装置。
真空ポンプと、この真空ポンプに連通される状態で上方に固定支持され複数の枝管を有したチャンバーと、前記枝管に連通された放電管と、前記枝管に連通されたガス導入系・排気系装置と、前記枝管に連通された真空計と、を有するグロー放電装置。
前記放電管の電極に接続される電源供給線と、筐体内に内蔵された安定抵抗と、この安定抵抗の電圧降下を含まない電源電圧を表示する電源電圧表示計と、この安定抵抗の電圧降下を含む放電電圧を表示する放電電圧表示計と、を有する高圧電源装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、理科教育・科学啓蒙のための演示実験教材、及びプラズマ応用技術において同一放電条件下での気体及び材料特性の比較実験への利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からプラズマの専門書において、グロー放電の性質は図4のような非線形性を表すことが説明されている。放電の電流電圧特性は401のようになり、極板間に流れる電流量と電圧によって様々な領域に分れる。放電開始電圧(402)時の電流値Iを超えた状態がいわゆる持続放電であり、高電圧低電流のグロー放電領域(403)と低電圧高電流のアーク放電領域(404)に大別され、その両者の間には遷移点(405)がある。しかしながら、放電回路の動作は放電管と直列に接続した抵抗の値Rによって電源電圧Eと放電電圧Vの間にはV=E−IRの関係式がある。すなわち、V=E−IRの直線(406)と401との交点が放電回路の動作点となる。Rの値が100kΩのように大きい場合、407のようになり、動作点は408の一点であるが、20Ωの場合は410,411,412の3点で交わる。その中で安定な動作点はグロー放電領域にある410とアーク放電領域にある412であることが知られており、特に抵抗Rを挿入しない場合には急激な電流の増加によって電源の破壊を生じることがあるためアーク放電は異常放電ともいわれ、グロー放電回路ではこれを回避することが不可欠である。そこで安定なグロー放電を維持するのに不可欠な、電流を制限する抵抗Rを安定抵抗という。
このグラフからわかるよう、グロー放電装置として要求されるのは、放電開始電圧(ガス種類、真空度、電極の距離・形状等に依存)以上の高電圧発生可能な電源、安定抵抗、真空排気装置である。
【0003】
このような放電特性の基礎研究や現象の説明に用いられている直流グロー放電によるプラズマ発生装置は、図5のように放電管(501)、ガス配管(502)、真空ポンプ(503)、排気系(504)、電源(505)、異常放電への遷移による機器の破損を防ぎつつ電流量を調節する目的の安定抵抗ボックス(506)をおのおの用意し、放電管内の真空度を真空計(507)によってモニタしつつ電流導入端子(508)を介して陽極(509)−陰極間(510)に数百ボルトの高電圧をかけプラズマ柱(511)を発生されるものである。なお、直流放電の利用は、直流放電に特徴的な陰極(510)近傍の明るい負グロー(512)、光らないファラデー暗部(513)はプラズマ発生の物理過程を知る上で重要な現象であるため、特に教育・啓蒙用途には交流ではなく直流放電によるプラズマ生成が望ましい。
このように、真空配管、バルブ類(514)を含め多くの部品群で真空・高電圧を扱うため、ガラス等の易損材料や金属等の重量材料で作られる放電管(501)を固定する重い架台(515)等を用意し、主に大学、研究所、工場、科学館等に据え付けて利用する、典型的な人の大きさ(516)、実験テーブルの大きさ(517)との比較に示されるよう、かなり大型のものである。
【0004】
また、従来の方法では、放電安定化のための抵抗ボックス(506)を電源(505)と放電管(501)の間に設置し電源電圧測定装置(518)と放電電圧測定装置(519)をそれぞれ別々に接続して測定する構成にしなければならなず、電流計(520)、真空度表示計(521)、及びこれらを固定収納する計器ラック(522)を含めた典型的総設置面積は1800mm x 900mmの作業デスク2台分程度必要である。
【0005】
また従来技術では例えば「特公平7−105210」のように放電開始用に定常の直流主電源とパルス高電圧印可のトリガ電源等2種類の電源を実装して放電を起こし安くするなどしている。この場合、電源装置がさらに大型化する。
【0006】
さらにまた、従来の方法では、安定抵抗の代わりに例えば「特許第3191135号」や「特許第3047277号」のように異常電流を検知し放電を瞬時に止め、その後再度電圧をかける方法が開発されている。この場合、プラズマを維持しやすく、抵抗による発熱損失を回避できるものの、回路構成が複雑になるため電源全体が大型、高額化し、また持続放電ではなく、間欠的放電になる。
【0007】
さらにまた、従来技術による大規模装置は同一放電条件における気体や材料特性の比較実験のために多数の装置を設置する場合に多大な設備費用と場所を要すし、単一の装置で気体や材料交換を行う場合、長時間を要する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、今日、実習・実験を通じた理科教育・科学啓蒙の重要性が再認識され、先端技術には欠くべからざるプラズマの性質を実感してもらうために中学・高等学校や一般向けの公開講座等の教材として利用する場合、以上の従来技術によれば、大掛かりな装置類を搬入し、専門技術をもった者によって組み立て、調整を行わなければならならず、電圧測定機器も多数用意しなければならないため、装置を設置してある場所を見学するか、費用をかけて大掛かりな輸送、設置を行なわないかぎり実現が困難であった。
またこれら部品の供給メーカはガラス、真空、ガス配管、電気部品等多岐にわたるため、部品の交換や補修に多大な手間がかかる。
【0009】
さらに、異常放電を起こさない工夫として電流検知による間欠的放電を用いれば、分光診断を行う際重要になる光の絶対量の時間平均値に誤差を生じるため、産業への応用に関する基礎研究の場において様々な放電条件、ガス等の比較実験を行う際の誤差になる。また大規模装置では多数の装置の並行運転による比較実験ができない。
【0010】
さらにまた、啓蒙教育としてプラズマの放電特性を演示する際に安定抵抗の作用による持続放電における異常放電の抑制原理を解説したり、体験させたりすることができない。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、請求項1の発明は、以下の構成からなるグロー放電装置及び高圧電源装置とを有することを特徴とする卓上プラズマ実験装置である。
真空ポンプと、この真空ポンプに連通される状態で上方に固定支持され複数の枝管を有したチャンバーと、前記枝管に連通された放電管と、前記枝管に連通されたガス導入系・排気系装置と、前記枝管に連通
された真空計と、を有するグロー放電装置。
前記放電管の電極に接続される電源供給線と、筐体内に内蔵された安定抵抗と、この安定抵抗の電圧降
下を含まない電源電圧を表示する電源電圧表示計と、この安定抵抗の電圧降下を含む放電電圧を表示する
放電電圧表示計と、を有する高圧電源装置。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を、図1に示す。典型的な人の大きさ(101)、演示テーブル(102)と比較して記載する。小型真空ポンプ(103)の上に排気量調整のバルブ(104)を介し、その上部に、放電管(105)、ガス導入系(106)、真空ポンプ(103)、真空計(107)を通連することが可能な枝管を有した小型のチャンバー(108)を直接支持し、安定抵抗を筐体内部に組み込むことによって可能になった電源電圧(109)と放電電圧(110)両方が同時に表示できる電源(111)を接続してある。小型チャンバー(108)への取り付けはすべて汎用のφ15mmゲージポートアダプタ(GP)、国際規格のKF継手、1/4インチ配管を使ってある。
電源(109)筐体(201)内部における各構成部分の機能配置を図2に示す。高電圧発生部(202)は放電開始電圧発生に十分な数100V以上の高電圧を発生できる電源モジュールである。電源筐体(201)内に安定抵抗部(203)も組み込まれており、電源部(202)の両端電圧を測定する電源電圧表示計(204)及び出力端子(205)間の電圧を測定する放電電圧表示計(206)の両方が電源筐体(201)外面に設置されている。高電圧の測定になるため分圧抵抗(207)で低電圧に落として測定する。
また(204)、(206)の対向面には電源筐体外面の電源電圧調整部(208)、安定抵抗調整部(209)、放電電流表示計(210)、電流検知回路部(211)からの過電流を知らせるインディケータ(212)がある。(204)(206)(210)はLED表示方式である。
本実施形態による電源の外観の斜視図は例えば図3のようになる。裏面は演示者側にあり、表面は聴衆側にあるとする。表面には、電源電圧表示計(301)と放電電圧表示計(302)がある。裏面には電源電圧操作つまみ(303)、安定抵抗調整つまみあるいはスイッチ(304)、放電電流表示計(305)、過電流検知インディケ
ータ(306)がある。高電圧の放電管への接続は端子(307)から行う。
【0013】
「実施形態の効果」
この実施形態によれば、真空ポンプ等の排気装置上に、ガス配管、真空計、プラズマ放電管等必要な真空部品すべてを接続できる小型軽量のチャンバーを直接支持するため、卓上にプラズマ放電装置全体を自立させることができる。したがって大掛かりな放電管固定用の架台やケース、排気管を必要としない。国際規格準拠で、しかも扱いの簡単な継ぎ手を採用しているため破損、消耗、紛失等による交換品の支給は容易であり、専門知識がなくても簡単な練習で誰にでも交換作業が可能となる。
【0014】
安定抵抗を高圧電源装置内に組み込むことによって、高電圧電源部全体の小型化、が達成できる。高圧部分が電源の筐体内部におさまり専門家でない者の操作も安全に行える。さらに電源電圧と放電電圧を電源上で同時に表示させることができるために電圧測定機器を別途用意する必要がない。
【0015】
50mTorr程度まで到達可能な定格5L/min程度の小型真空ポンプ・定格1kV−数mA程度の小型高電圧電源基板はすでに市場に出ているので、例えばそれらを利用することで、400mmx500mm程度のスペースがあれば演示実験が可能である。
また全部品を講演者が自ら手荷物として演示場所に運ぶことも可能な体積・重量に収まり、小型で自立型であるため、学校の机や教壇、ワゴン等の空間で十分組み上げることができ、可搬性がよい。
【0016】
電源電圧と放電電圧の表示と電圧、抵抗調整、電流表示が対向に位置した配位で製作することにより、教壇での演示の際に演示者が電流超過インディケータが点灯しない範囲で電流値を見ながら操作し、聴衆には電源電圧と放電電圧の違いを印象付けることができるため、理科教育、科学啓蒙に適する。
【0017】
LED表示であるため暗幕下で表示値が読める。
【0018】
「他の実施形態」
図1の実施形態は、ガスボンべを接続せず、空気を導入することによって空気のプラズマを生成したが、他の実施形態では、必要に応じたガスを接続してもよい。
さらに他の実施形態は必要に応じ5つ以上の枝管を有したチャンバーを用い、1台のポンプに対し複数の放電管等を接続し、並行運転をする構成にしてもよい。
さらに他の実施形態では供給に問題がなければ規格外の継ぎ手を採用してもよい。
さらに他の実施形態は、発光測定、レーザー入射用の窓を放電管に接着してもいい。
さらに他の実施形態では、使用目的によっては電圧モニタと操作が対面に位置しなくてもよい。
さらに他の実施形態では、電圧は表示ではなく、計測機器に取り込んで解析を行うシステムに構築してもよい。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、本来的に重量物である真空ポンプの上方に、グロー放電装置の部分を固定支持することができ、重量物である従来の架台を用いなくても済むので、その分、小型化、軽量化が図れ、よって可搬性に優れ、いわゆるポータブルな装置にできる。
また、高圧電源装置は、筐体内に安定抵抗を内蔵することで、この安定抵抗の電圧降下を含まない電源電圧を表示する電源電圧表示計と、この安定抵抗の電圧降下を含む放電電圧を表示する放電電圧表示計と、をひとつの筐体の装置にまとめることができるので、聴衆にとってプラズマの非線形性と安定抵抗の役割を実感し易くなる。また従来のように複数の装置が別体になっている場合に比べ、可搬性に優れ、いわゆるポータブルな装置にできる。
【0020】
また、部品数が少ないため真空、高電圧等の専門知識がなくても安全に組み立てることができ、保守が容易である。
【0021】
限られた設置場所と経費にて多数の装置の持続放電による並行運転が可能となるため、同一の放電条件における気体・材料の比較実験の効率向上が期待できる。
【0022】
また間欠放電ではないので、分光法による時間平均測定の誤差を生じず、ガス圧力を最適化して抵抗値で放電電流を制限できるので、高電圧をかけて放電開始電圧をこえても異常放電に遷移することを抑制でき、トリガ電源不要のため、さらに小型軽量にできる。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】高圧電源装置の内部における構成要素配置の一実施形態図である。
【図3】高圧電源装置外観の一実施形態を表す斜視図である。
【図4】従来技術を示す斜視図である。
【図5】放電特性及び安定抵抗の役割を示すグラフである。
【符号の説明】
101 典型的な人の大きさ
102 テーブルあるいはワゴン
103 真空ポンプ
104 排気量調整のバルブ
105 放電管
106 ガス導入系
107 真空計
108 小型のチャンバー
109 電源電圧表示計
110 放電電圧表示計
111 高圧電源
201 高圧電源筐体
202 高電圧発生部
203 安定抵抗部
204 電源電圧表示計
205 出力端子
206 放電電圧表示計
207 分圧抵抗
208 電源電圧調整部
209 安定抵抗調整部
210 放電電流表示計
211 電流検知回路部
212 超過電流のインディケータ
301 電源電圧表示計
302 放電電圧表示計
303 電源電圧調整つまみ
304 安定抵抗値調整スイッチあるいはつまみ
305 放電電流表示計
306 超過電流のインディケータ
307 高電圧出力端子
401 放電の典型的電流電圧特性
402 放電開始電圧
403 グロー放電領域
404 アーク放電領域
405 グロー・アーク遷移点
406 電源電圧700V時の回路方程式 V=E−IR
407 100kΩ抵抗時の回路方程式
408 100kΩ抵抗時の回路動作点
409 20Ω抵抗時の回路方程式
410 20Ω抵抗時のグロー領域動作点
411 20Ω抵抗時の不安定動作点
412 20Ω抵抗時のアーク領域動作点
501 放電管
502 ガス配管
503 真空ポンプ
504 排気系
505 高圧電源装置
506 安定抵抗ボックス
507 真空計
508 電流導入端子
509 陽極
510 陰極
511 プラズマ柱
512 負グロー
513 ファラデー暗部
514 バルブ類
515 架台
516 典型的な人の大きさ
517 典型的な実験テーブルの大きさ
518 電源電圧測定装置
519 放電電圧測定装置
520 電流計
521 真空度表示計
522 計器ラック
【参考文献】
【文献】特公平7−105210 (JP、B2)
(プラズマ放電用電源装置)
特許第3191135号(P3191135)
(直流グロー放電処理装置におけるアーク遮断方法及び装置)
特許第3047277号(P3047277)
(アークからの復帰)
【出願人】 【識別番号】303005481
【氏名又は名称】門 信一郎
【出願日】 平成15年3月13日(2003.3.13)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−279573(P2004−279573A)
【公開日】 平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願番号】 特願2003−68394(P2003−68394)