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【発明の名称】 薄板の疲労試験装置および方法
【発明者】 【氏名】石井 和夫
【氏名】小田切 義博
【氏名】石井 仁
【課題】特に、安定して実施可能な疲労試験装置および方法を提供する。

【解決手段】柱体と、柱体の長手方向の一端を加振する加振源と、柱体の加振により発生する定常波の腹位置で試験片をその長手方向が加振方向と直交するように固定する固定手段とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱体と、柱体の長手方向の一端を加振する加振源と、柱体の加振により発生する定常波の腹位置で試験片をその長手方向が加振方向と直交するように固定する固定手段とを備えることを特徴とする薄板の疲労試験装置。
【請求項2】
試験片の固定位置を柱体の自由端以外の腹位置とすることを特徴とする請求項1に記載の薄板の疲労試験装置。
【請求項3】
試験片を長手方向に互いに分割した柱体部分で挟持することを特徴とする請求項2に記載の薄板の疲労試験装置。
【請求項4】
試験片に負荷される振幅応力を算出するために、試験片の自由端の変位および柱体の自由端の変位を計測する計測手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄板の疲労試験装置。
【請求項5】
柱体の長手方向の一端を加振して、柱体の加振により発生する定常波の腹位置に長手方向が加振方向と直交するように固定した試験片を共振させることを特徴とする薄板の疲労試験方法。
【請求項6】
試験片の固定位置を柱体の自由端以外の腹位置とすることを特徴とする請求項5に記載の薄板の疲労試験方法。
【請求項7】
試験片を長手方向で互いに分割した柱体部分で挟持することを特徴とする請求項6に記載の薄板の疲労試験方法。
【請求項8】
試験片の被挟持部分の断面形状を柱体の挟持部分の断面形状と同一とすることを特徴とする請求項7に記載の薄板の疲労試験方法。
【請求項9】
試験片の自由端の変位および柱体の自由端の変位を計測して、試験片に負荷される振幅応力を算出することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の薄板の疲労試験方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄板の疲労試験装置および方法に係り、特に、安定して実施可能な疲労試験技術に関する。
【0002】
【従来技術】
金属ベローズやメタルガスケットなどを構成する薄板は、圧力および温度に対して十分な弾性や柔軟性を保ち、接合面からの漏れを生じないように必要な締付圧力を維持できるものでなければならない。このため、これらの薄板には優れた耐疲労特性が要求される。したがって、金属ベローズなどを製造する際には、それらを構成する薄板に対して疲労試験を実施し、耐疲労特性を確認しておくことが重要である。
【0003】
従来から提案されている薄板の疲労試験の例としては、JIS Z 2275 に規定されている「金属平板の平面曲げ疲れ試験方法」や、特開平8−54331号公報に記載されている「共振を利用した疲労試験方法及び疲労試験装置」などがある。
【0004】
上記の「金属平板の平面曲げ疲れ試験方法」は、曲げモーメントを設定して疲労試験を行うものである。したがって、たとえば厚さ0.5mm以下の極薄板を試験片とした場合には、曲げモーメントが極端に小さくなり、疲労試験を行うことができないという欠点がある。また、試験片の両端を繰返し曲げるにあたり、機械構造を用いてモーメントを加えるため、繰返し速度が50Hz程度と極めて低いものとなってしまう。このため、たとえば10回以上の超高サイクルの疲労試験には20日以上の時間を要し、迅速に疲労試験を実施することができないという欠点もある。
【0005】
これに対し、特開平8−54331号公報に記載されている「共振を利用した疲労試験方法及び疲労試験装置」は、上記技術の欠点を克服したものであり、すなわち、共振を利用することで極薄板に対しても疲労試験を実施可能とするとともに、迅速な疲労試験を実現したものである。しかしながら、この技術は、加振源から生じるエネルギーの一部が試験片に吸収される共振によるエネルギー吸収により、振幅の制御が困難であるため、安定して疲労試験を実施できないという欠点がある。特に周波数を高くした場合には振幅が小さくなることから、安定して試験片を共振させることが一層困難となる。このため、高周波数で疲労試験を実施する場合には、その安定性が極めて低くなってしまう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
よって本発明は、特に、安定性に優れた薄板の疲労試験装置および方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄板の疲労試験装置は、柱体と、柱体の長手方向の一端を加振する加振源と、柱体の加振により発生する定常波の腹位置で試験片をその長手方向が加振方向と直交するように固定する固定手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成の装置は、加振源により柱体の長手方向の一端を加振して、柱体の加振により発生する定常波の腹位置に長手方向が加振方向と直交するように固定した試験片を共振させるものである。この装置においては、加振源を駆動して柱体に定常波を発生させるに際し、定常波の振幅を加振源によって容易に制御することができる。このため、試験片を固定する柱体の定常波の腹位置の振幅が制御可能となる。以上の理由により、試験片にエネルギーの一部が吸収されても、この吸収エネルギーが柱体の定常波として蓄積されたエネルギーに対しては小さな値であるため、安定した振幅を付与することができる。したがって、本発明によれば、安定性に優れた薄板の疲労試験が実現できる。
【0009】
本発明においては、好ましくは試験片の固定位置を柱体の自由端以外の腹位置とする。柱体に定常波を発生させるには、自由端で反射波を発生させるよう柱体の自由端の形状を平坦面としなければならない。また、試験片を柱体の定常波の腹位置とするには、試験片を柱体の最端部に支持する必要もある。このため、固定手段を接着剤とすることが考えられるが、実際の試験に際しては、試験片の柱体への着脱が困難であるのみならず、疲労試験中に接着面が剥離するなどの問題がある。このような問題を避けるため、試験片の固定位置を柱体の自由端以外の腹位置とすることが望ましい。たとえば、試験片を長手方向で互いに分割した柱体部分で挟持することなどが考えられる。
【0010】
さらに、試験片に負荷される振幅応力を算出するために、試験片の自由端の変位および柱体の自由端の変位を計測する計測手段を備えることが望ましい。このような構成によれば、柱体の自由端の変位を試験片の加振端の変位とみなして、柱体の自由端の変位と試験片の自由端の変位とを減算することで試験片に付与される曲げ変位を算出し、試験片に負荷される振幅応力を容易に計算することができる。
【0011】
以上のように、本発明は疲労試験装置であるが、本発明は、上記のような特徴を備えた疲労試験方法でもある。すなわち、本発明の疲労試験方法は、柱体の長手方向の一端を加振して、柱体の加振により発生する定常波の腹位置に長手方向が加振方向と直交するように固定した試験片を共振させることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に示すところに基づいて説明する。
試験片にエネルギーを吸収されても安定した振幅で加振できるようなものとし提案したのが、図1に示すような装置である。この図に示すように、柱体10の一端には、柱体10を軸方向Xに加振する加振源11が配置されている。なお、この図には、試験片をその長手方向が加振方向と直交するように固定する固定手段は示していない。柱体10の反対側の一端は自由端とすることが装置の構成上は簡単であるが、図2に示すように、固定端とすることもできる。そして、柱体10の共振周波数で加振源11を駆動させることで、柱体10に軸方向Xに振動する定常波が生じる。このとき、定常波の腹位置は、柱体10の軸方向Xに大きく振動するが、節位置は変位しない。この定常波の振幅は加振源11によって容易に制御可能である。つまり、定常波の腹位置の変位は容易に制御できる。
【0013】
この柱体10に生じた定常波の腹位置に、柱体10の軸方向Xと直交するように平板の試験片を配置する。試験片は、柱体10に生じた定常波の周波数で共振するような形状および寸法とする。このような態様とすることで、試験片にエネルギーの一部が吸収されても、この吸収エネルギーが柱体10の定常波として蓄積されたエネルギーに対しては小さな値であるため、試験片に安定した振幅を付与することができる。
【0014】
このような装置において、試験片の最も簡単な取付け態様としては、図3に示すように、柱体10の自由端に試験片12を取付けるものが考えられる。しかしながら、柱体10に定常波を生じさせるためには、自由端で反射波を生じるように、自由端を平坦面とすることが要求される。また、試験片12を定常波の腹位置に配置するには試験片12を柱体10の最端部に支持する必要がある。したがって、柱体10と試験片12とを接着などの手法で固定する必要があり、実際の試験に際しては、試験片12の着脱が困難となるばかりでなく、試験中に接着面が剥離するなどの実用上の問題も生じ易い。
【0015】
そこで、図4に示すように、試験片12を柱体10の自由端以外の腹位置に配置し、上記問題を回避することができる。たとえば図5に示すように、柱体10を長手方向に互いに柱体部分10aと柱体部分10bと分割して、これらで試験片12を挟持する構成とする。同図に示すように、柱体部分10aには雄ねじ部10cを、また柱体部分10bには雌ねじ部10dを設けるとともに、試験片12には取付穴12aを設けて固定手段を形成し、試験片の着脱を容易に行うことができる。
【0016】
このとき、図6に示すように、試験片12の被挟持部分12bの断面形状を柱体10の挟持部分の断面形状と同一とすると、試験片により安定して定常波を発生させることができるので、疲労試験をより一層安定して実施することができる。ちなみに、図中12cは試験片12の試験部を示す。
【0017】
以上のような方法で、安定して薄板の曲げ疲労試験が可能となるが、さらに高サイクルの疲労を短時間に実施するためには、振動周波数を高くする必要がある。しかしながら、加振源の出力が一定であれば、振動周波数を高くすると振幅が小さくなり、疲労試験が困難となってしまう反面、加振源の出力を大きくすると加振源の共振周波数が低下してしまう。このような問題を克服するためには、図7に示すように、柱体10の、加振源11の固定位置と試験片12の固定位置との間に、円錐台状のホーン10eを設けることが有効である。このようなホーン10eによって定常波の振幅を増大させることで、高い周波数でも大きな振幅の変位を得ることができ、高周波数での疲労試験が可能となる。
【0018】
以上述べたような疲労試験装置の構成により、極薄板の疲労試験を実施することができるが、疲労試験に際しての負荷パラメータは加振変位であるため、試験片に付与される実際の負荷を計算する必要がある。また、試験片は共振してはいるものの、どのような態様で振動するかは微妙な条件で変化してしまうため、これを把握する必要もある。図8および図9に、柱体10に固定した試験片12の振動パターンの代表例を示す。このような試験片12の振動パターンと振幅とを測定するためには、図10に示すように、試験片12の加振端Aの変位と自由端Bの変位との経時変化を測定する必要がある。この測定結果は、図8の場合は図11に示す同位相の波形に、図9の場合は図12に示す逆位相の波形となる。実際には、試験片12の加振端Aの変位と自由端Bの変位とを減算して、試験片に付与される曲げ変位を算出し、振幅応力を計算する。
【0019】
なお、試験片12を柱体10の自由端以外の腹位置に配置する場合は、加振端Aの変位を測定することが困難であるが、柱体10に発生している定常波の振幅がいずれの腹位置においても同一であることに鑑みれば、柱体10の自由端で計測した振幅を試験片12に入力する変位として用いることができる。したがって、図13に示すように、柱体10の自由端での変位を測定することで、容易に試験片12の加振端Aの変位を判断することができる。しかしながら、試験片12の加振端Aと柱体10の自由端とでは定常波が逆位相となる場合もあるので注意を要する。
【0020】
【実施例】
つぎに、以上に述べた装置を用いて実際に疲労試験を実施した例について述べる。
図14に一の実施例のブロック図を示す。図中11は加振源としての圧電アクチュエータを、13は発振器を、14は渦流式変位計を、15はレーザー変位計を、そして16はオシロスコープをそれぞれ示す。加振周波数は20kHzとし、試験片12および柱体10も20kHzで共振するような形状および寸法とした。このような条件の下、図15に示すように、SUS304からなる試験片12に対して疲労試験を実施した。ここで試験片の厚さは0.2mmとし、試験部12cにはノッチ12dを形成した。そして、試験片12に負荷される振幅応力は、試験片12の加振端Aと自由端Bとの相対変位を片持ち梁に付与した場合に発生する応力として計算した。
【0021】
図16に試験の結果得られたS−N線図(試験片に負荷される振幅応力とサイクルとの関係)を示す。このように、極薄板を用いた高周波数での疲労試験がばらつきも少なく、すなわち安定して可能となった。また実施例で用いた20kHzの試験周波数の場合には、サイクル10回まで約1.4時間、また10回まで約14時間で試験可能であることが確認されたため、疲労試験を迅速に行うことも可能となった。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、薄板の疲労試験を実施するにあたり、極薄板に対しても安定して実施することができ、また高周波数でも十分な安定性をもって行うことができることから、極めて有望である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の一例と、柱体に生じる定常波の状態とを示す図である。
【図2】本発明の装置の他の例と、柱体に生じる定常波の状態とを示す図である。
【図3】本発明の装置に試験片を取付けた一例と、柱体に生じる定常波の状態とを示す図である。
【図4】本発明の装置に試験片を取付けた他の例と、柱体に生じる定常波の状態とを示す図である。
【図5】図4に示す柱体、加振源および試験片の分解図である。
【図6】柱体の挟持部分の断面形状と試験片の断面形状とを示す図である。
【図7】本発明の装置に試験片を取付けた他の例と、柱体に生じる定常波の状態とを示す図である。
【図8】試験片の振動パターンの一例を示す図である。
【図9】試験片の振動パターンの他の例を示す図である。
【図10】試験片の振動パターンおよび振幅を測定する試験片の加振端および自由端を示す図である。
【図11】試験片の加振端および自由端での波形の一例を示す図である。
【図12】試験片の加振端および自由端での波形の他の例を示す図である。
【図13】本発明の装置に試験片を取付けた他の例と、柱体に生じる定常波の状態とを示す図である。
【図14】一の実施例のブロック図である。
【図15】一の実施例で使用した試験片の断面図である。
【図16】試験片に負荷される振幅応力とサイクルとの関係を示す図である。
【符号の説明】
10…柱体、11…加振源(圧電アクチュエータ)、12…試験片、13…発振器、14…渦流式変位計、15…レーザー変位計、16…オシロスコープ。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成14年6月19日(2002.6.19)
【代理人】 【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生

【公開番号】 特開2004−20472(P2004−20472A)
【公開日】 平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願番号】 特願2002−178312(P2002−178312)