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【発明の名称】 不確かさを求める機能を備えた計測装置
【発明者】 【氏名】杉岡 幹生
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地 株式会社島津製作所内
【課題】計測データの合成不確かさ求めて表示するための作業時間を短縮する。

【解決手段】既知不確かさ保持部4に測定部2の器具公差の不確かさUc[器具公差]と器具操作の不確かさUc[器具操作]を保持しておく。検量線不確かさ算出部6は測定部2が標準試料を測定したときの検量線の不確かさUc[検量線]を算出する。測定部2で未知試料を測定すると、未知試料不確かさ算出部8はそのときの未知試料測定値に対する不確かさUc[未知試料]を算出する。合成不確かさ算出部10はこれらの不確かさUc[器具公差]、Uc[器具操作]、Uc[検量線]及びUc[未知試料]を合成して合成不確かさUcを算出し、表示部12がその算出された合成不確かさUcを未知試料の測定値とともに表示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の化学量又は物理量を定量測定する測定部と、
前記測定部の器具公差の不確かさUc[器具公差]及び器具操作の不確かさUc[器具操作]を保持する既知不確かさ保持部と、
前記測定部が標準試料を測定したときの検量線の不確かさUc[検量線]を算出する検量線不確かさ算出部と、
前記測定部が未知試料を測定したときの未知試料測定値に対する不確かさUc[未知試料]を算出する未知試料不確かさ算出部と、
これらの不確かさを合成して合成不確かさUcを算出する合成不確かさ算出部と、
前記合成不確かさ算出部が算出した合成不確かさUcを未知試料の測定値とともに表示する表示部とを備えたことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
合成不確かさ算出部が算出する不確かさは標準偏差を基にした合成標準不確かさである請求項1に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶液やガスなどの試料の化学量又は物理量を定量測定する分野において使用される液体クロマトグラフ(LC)、ガスクロマトグラフ(GC)、質量分析計(MS)などの計測装置に関し、特に試料を測定して得られた結果を検量線に当てはめて目的とする物質の定量値を求める計測装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
昨今、国際的に、分析の分野では、求めたデータに不確かさの値をつけて出力又は表示するようになってきている。
不確かさは、分析者の器具操作による不確かさ、器具自体の公差による誤差、そして計測装置のデータふらつきによる誤差等の、さまざまな不確かさを統合したものとして算出される。すなわち、不確かさとは、出てきた結果がどの程度の信頼度をもった値なのかを明確にするための指標といえる。
【0003】
そのための計算方法は、統計学等で確立されているが、この値を算出しようと思えば、かなり大変な作業となる。とくに、計測装置のデータのふらつき(ノイズ誤差、データのバラツキ、又は繰返し再現性誤差などとも呼ばれる)によるデータ自体の不確かさも含めて、全ての不確かさを計算し組み合わせて最終的な合成不確かさとして計測結果に反映させる作業は、コンピュータを用いて表計算ソフトExcel等により計算させることになるため、時間のかかる作業であった。
しかも、計測データ表示と不確かさの計算結果の表示とは時間差があるため、計測を行う者がその計測データの信頼性を直ちに知ることはできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、計測データの信頼性を表す合成不確かさを求めて表示するための作業時間をできるだけ短縮することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明は計測装置自体に不確かさを自動的に計算して表示する機能をもたせたものであり、図1に示されるように構成される。
2は試料の化学量又は物理量を定量測定する測定部である。4は既知不確かさ保持部であり、そこには測定部2の器具公差の不確かさUc[器具公差]及び器具操作の不確かさUc[器具操作]が保持される。6は検量線不確かさ算出部であり、測定部2が標準試料を測定したときの検量線の不確かさUc[検量線]を算出する。8は未知試料不確かさ算出部であり、測定部2が未知試料を測定したときの未知試料測定値に対する不確かさUc[未知試料]を算出する。10は合成不確かさ算出部であり、これらの不確かさUc[器具公差]、Uc[器具操作]、Uc[検量線]及びUc[未知試料]を合成して合成不確かさUcを算出する。表示部12は、合成不確かさ算出部10が算出した合成不確かさUcを未知試料の測定値とともに表示する。
【0006】
不確かさとしては一般に標準偏差が用いられる。また他の方法とし相対不確かさを用いることもできる。相対不確かさは標準偏差を平均値で割った値であり、相対標準偏差、又は変動係数とも呼ばれる。
【0007】
各不確かさを標準偏差又は相対標準偏差で表わした場合、合成不確かさは合成標準不確かさと呼ぶ。合成標準不確かさの求め方の一例は、平方和(2乗の平方和)であり、各不確かさを標準偏差又は相対標準偏差として求め、それぞれを2乗したものを足しあい、その和の平方根を求めたものである。
【0008】
器具公差の不確かさUc[器具公差]は計測装置により予め求められているものであり、標準物質の測定結果や既知の測定結果のデータに基づいて推定されたり、物理定数などに基づいて見積もられたりすることにより得られる不確かさである。
【0009】
器具操作の不確かさUc[器具操作]は、操作をする人の熟練度に依存する不確かさであり、一連の繰返し測定に基づいて統計的に評価することができる。
【0010】
器具公差の不確かさUc[器具公差]と器具操作の不確かさUc[器具操作]は予め求められているものであり、既知不確かさ保持部4にキーボードやパネルなどの入力部から入力されて設定されている。
【0011】
検量線不確かさUc[検量線]は、標準試料を測定して検量線データを求める際、標準試料を複数回測定し、そのデータのバラツキから求めることができ、例えば複数回の標準試料測定データの相対標準偏差として求めることができる。
【0012】
未知試料不確かさUc[未知試料]は、未知試料を複数回繰返し測定したときのデータのバラツキから求めることができる。未知試料不確かさも複数回の繰返し測定のデータに基づく相対標準偏差として求めることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は液体クロマトグラフなどの分析装置で実現され、図1に示された検量線不確かさ算出部6、未知試料不確かさ算出部8及び合成不確かさ算出部10はその分析装置の制御部に備えられているCPU(中央処理装置)により実現される。また、器具公差の不確かさUc[器具公差]及び器具操作の不確かさUc[器具操作]を保持する既知不確かさ保持部4はその分析装置の制御部に備えられている記憶装置により実現される。
【0014】
この実施例の動作を図2のフローチャートを参照して説明する。
本発明を実現した分析装置の表示画面には、「不確かさ条件設定画面」が表示され、標準試料の種類M、繰返し誤差を見るための測定回数(n回)、器具公差の不確かさUc[器具公差]及び器具操作の不確かさUc[器具操作]をキーボードから入力して設定できるようになっている。
【0015】
不確かさは標準偏差として表すものとして説明する。
この分析装置の操作にあたり、分析者の器具操作での標準不確かさUc[器具操作]と器具自体の公差による不確かさUc[器具公差]の値を予め算出しておく。
【0016】
まず、それらの値、すなわち器具操作での標準不確かさUc[器具操作]と器具自体の公差による不確かさUc[器具公差]を「不確かさ条件設定画面」で予め入力しておく。また、表示画面の「不確かさ条件設定画面」で、標準試料の種類Mと、繰返し誤差を見るための測定回数(n回)も入力する。
【0017】
次に、測定部での測定値から濃度など、求めようとする値に変換するための検量線を作成する。その検量線の作成のために、M個の標準試料ごとのそれぞれにおいてn回ずつデータが測定され、そのn回データの平均値からそのM個データの検量線が求められる。そして、M個の標準試料それぞれのn回のバラツキを考慮した形で、検量線の標準不確かさUc[検量線]が算出される。
【0018】
次に、未知試料の測定に進む。最初の未知試料である未知試料1をn回繰り返して測定し、その測定結果から未知試料1自体のデータのふらつき(n回繰返し測定によるふらつき誤差)による標準不確かさUc[未知1]が算出される。
【0019】
そして、その未知試料1の不確かさの最終的な指標となる合成標準不確かさUclが、Uc[器具操作]、Uc[器具公差]、Uc[検量線]及びUc[未知1]からCPUでソフトウェアにより求められる。
【0020】
2番目の未知試料2についても、同様にn回の測定が行われ、未知試料2の標準不確かさUc[未知2]が算出され、Uc[器具操作]、Uc[器具公差]及びUc[検量線]とともに用いられて合成標準不確かさUc2が算出される。
【0021】
同様にして、順次測定すべき未知試料がn回ずつ測定され、各未知試料の測定値に検量線データを適用して濃度などの定量値が求められるとともに、各未知試料の合成標準不確かさUcが次々に算出されていく。
【0022】
図3には、求められた濃度値とともに、算出された合成標準不確かさの値を添付して表示する例を示す。不確かさが標準偏差で表わされている場合、分布が正規分布の場合には、標準偏差をσで表わすと、平均±1σ以内に存在する確率は約68%である。図3の例は、合成不確かさとして合成標準不確かさ±σを示したものである。したがって、分布が正規分布と仮定すれば、図3に表示された(定量値)±(不確かさ)以内に真値が存在する確率は約68%であることを意味する。
【0023】
また、濃度値などの測定結果とともに表示する合成不確かさの値としては、合成標準不確かさを2倍した拡張不確かさを用いてもよい。分布が正規分布の場合は、真値が平均±2σ以内に存在する確率は約95%であるので、拡張不確かさを添付して表示すれば、そこに表示された(定量値)±(拡張不確かさ)は信頼性95%を意味することになる。
【0024】
なお、合成標準不確かさを3倍した不確かさを用いたとすれば、分布が正規分布であれば平均±3σ以内に存在する確率は約99.7%であるので、そこに表示された(定量値)±(不確かさ)は信頼性約99.7%を意味することになる。
【0025】
【発明の効果】
これまでは、合成不確かさは測定後に自分で計算して出さなければならなかったが、本発明では、器具公差の不確かさUc[器具公差]及び器具操作の不確かさUc[器具操作]を設定しておけば、検量線不確かさ算出部により標準試料を測定したときの検量線の不確かさUc[検量線]が算出され、未知試料不確かさ算出部により未知試料を測定したときの未知試料測定値に対する不確かさUc[未知試料]が算出され、合成不確かさ算出部によりこれらの不確かさを合成して合成不確かさUcが算出され、その算出された合成不確かさUcが表示部に未知試料の測定値とともに表示されるようにしたので、未知試料の測定終了と同時に、その「不確かさ」が算出されて表示されるので、次のような効果を達成することができる。
▲1▼合成不確かさUcまで算出してくるまでの作業量が従来よりかなり減る。
▲2▼測定後すぐに不確かさが求まるので、分析者は、測定値の信頼性をリアルタイムに判断できる。
▲3▼依頼分析会社などで、今後は不確かさまでデータに添付して出すことが要求されるが、それを効率的に算出できるため、コストの面でも寄与が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を示すブロック図である。
【図2】一実施例の動作を示すフローチャート図である。
【図3】測定結果の表示画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
2   測定部
4   既知不確かさ保持部
6   検量線不確かさ算出部
8   未知試料不確かさ算出部
10   10は合成不確かさ算出部
12   表示部
【出願人】 【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
【住所又は居所】京都府京都市中京区西ノ京桑原町1番地
【出願日】 平成14年6月14日(2002.6.14)
【代理人】 【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄

【公開番号】 特開2004−20323(P2004−20323A)
【公開日】 平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願番号】 特願2002−174320(P2002−174320)