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【発明の名称】 トンネル管理図及びそのシステム
【発明者】 【氏名】中田 賢
【住所又は居所】北海道札幌市豊平区美園1条1丁目1−20 株式会社中田測量内

【氏名】中庭 和秀
【住所又は居所】大阪府箕面市坊島1丁目3番35号 関西工事測量株式会社内

【氏名】大浦 道哉
【住所又は居所】東京都港区港南二丁目15番2号 株式会社大林組東京本社内

【要約】 【課題】トンネルの経年的な変化を容易に且つ視覚的に把握できるトンネル管理図を得る。

【解決手段】トンネル管理図は、トンネル(2)の線形を表す基線(CL)と、トンネル(2)の基線(CL)に沿って所定の間隔をあけて設定された複数の測点〔P(i)〕と、各測点〔P(i)〕で計測された断面から計算された断面周長(Di)に対応する長さを有し且つ上記基線(CL)と直交又はほぼ直交する方向に伸びる線分を含む。この管理図には、少なくとも一つの三次元座標データを含む対象(トンネル内の変状又は施設)が、基線(CL)からの距離と測点〔P(i)〕からの距離によって三次元座標を特定可能に表示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル(2)の線形を表す基線(CL)と、トンネル(2)の基線(CL)に沿って所定の間隔をあけて設定された複数の測点〔P(i)〕と、各測点〔P(i)〕で計測された断面から計算された断面周長(Di)に対応する長さを有し且つ上記基線(CL)と直交又はほぼ直交する方向に伸びる線分を含む二次元平面図に、
少なくとも一つの三次元座標データを含む対象が、上記基線(CL)からの距離と上記測点〔P(i)〕からの距離を用いて表示されていることを特徴とするトンネル管理図。
【請求項2】
上記対象が時間データを含み、異なる時間データを有する複数の対象が異なる態様で表示されていることを特徴とする請求項1に記載のトンネル管理図。
【請求項3】
トンネル(2)の線形を表す基線(CL)と、トンネル(2)の基線(CL)に沿って所定の間隔をあけて設定された複数の測点〔P(i)〕と、各測点〔P(i)〕で計測された断面から計算された断面周長(Di)に対応する長さを有し且つ上記基線(CL)と直交又はほぼ直交する方向に伸びる線分を含むトンネル現況展開図を記憶した第1の記憶手段と、
トンネル内の変状又は施設を特定する属性と、この属性によって特定された変状又は施設の空間位置を特定する三次元座標を含むデータを記憶した第2の記憶手段と、
上記第1の記憶手段に記憶されたトンネル現況展開図を表示する第1の表示手段と、
上記第2の記憶手段に記憶されたデータに基づいて、トンネル内の変状又は施設を、上記トンネル現況展開図に、上記基線(CL)からの距離と上記測点〔P(i)〕からの距離によって上記三次元座標を特定可能な状態で表示する第2の表示手段とを備えたことを特徴とするトンネル管理システム。
【請求項4】
上記データは時間を含み、異なる時間を有する複数の変状が異なる態様で表示されることを特徴とする請求項3に記載のトンネル管理システム。
【請求項5】
上記トンネル現況図上の指定された点に対応する三次元座標データを取得する手段と、
上記取得された三次元座標データに対応するトンネル内の点を特定する手段とを備えたことを特徴とする請求項4に記載のトンネル管理システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネルの現況展開図にトンネルの変状(クラック等)、トンネル内施設(照明灯等)を電子的に記録するトンネル管理図及びそのシステムに関する。
【0002】
【発明の背景】
地球上に構築された構造物には何らかの活荷重が作用して経年的に変形する。とりわけ、岩盤を掘削して構築されたトンネルには大きな荷重(土圧、水圧、地殻変動に伴う動的荷重)が作用するため、変状の度合いも他の構造物に比べて多種多様である。また、トンネルの老朽化、変状に伴う側壁の剥落や崩落は、大きな災害の発生に繋がる危険性を含んでいる。
【0003】
一方、崩落などの危険性があるトンネルについて適切な維持・補修を行うためには、トンネルの老朽化の程度や変状の度合いを正確な位置情報をもとに予め把握する必要がある。しかし、日本国内に現存する約13,000〜14,000〔総延長:約12,000km(下水道トンネルを除く。)〕のトンネルについて実測に基づく正確な現況展開図が作成されていない状態であり、僅かに施工時に用いた設計図に変状(例えば、クラックや漏水個所)を記入した紙の現況展開図が散見できるだけである。しかも、既存の現況展開図は、作成者が目視観察した変状を記載しただけものであることから、その正確な形・大きさ・位置を表すものでなく、維持・補修計画を作成するうえで十分な判断材料となり得ないという問題がある。また、既存の現況展開図上の座標は実際の座標情報を正確に反映したものでないことから、図面上に表示した点を実際のトンネル内に展開できないという問題がある。さらに、この現況展開図は、トンネルの線形を無視したものであり、曲線部分を含むトンネルについても直線的に描かれている。そのため、現況展開図に描かれた変状がトンネル内の何処にあるのかを現場で容易に確認できないという問題がある。さらにまた、この現況展開図に表示された変状は正確な位置情報(三次元座標)を持たないために、経年的な変状の変化が把握できないという問題がある。
【0004】
【発明の概要】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、本発明のトンネル管理図は、
トンネル(2)の線形を表す基線(CL)と、トンネル(2)の基線(CL)に沿って所定の間隔をあけて設定された複数の測点〔P(i)〕と、各測点〔P(i)〕で計測された断面から計算された断面周長(Di)に対応する長さを有し且つ上記基線(CL)と直交又はほぼ直交する方向に伸びる線分を含む二次元平面図に、
少なくとも一つの三次元座標データを含む対象が、上記基線(CL)からの距離と上記測点〔P(i)〕からの距離を用いて表示されていることを特徴とする。
【0005】
本発明の他の形態のトンネル管理図は、上記対象が時間データを含み、異なる時間データを有する複数の対象が異なる態様で表示されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の他の形態のトンネル管理システムは、
トンネル(2)の線形を表す基線(CL)と、トンネル(2)の基線(CL)に沿って所定の間隔をあけて設定された複数の測点〔P(i)〕と、各測点〔P(i)〕で計測された断面から計算された断面周長(Di)に対応する長さを有し且つ上記基線(CL)と直交又はほぼ直交する方向に伸びる線分を含むトンネル現況展開図を記憶した第1の記憶手段と、
トンネル内の変状又は施設を特定する属性と、この属性によって特定された変状又は施設の空間位置を特定する三次元座標を含むデータを記憶した第2の記憶手段と、
上記第1の記憶手段に記憶されたトンネル現況展開図を表示する第1の表示手段と、
上記第2の記憶手段に記憶されたデータに基づいて、トンネル内の変状又は施設を、上記トンネル現況展開図に、上記基線(CL)からの距離と上記測点〔P(i)〕からの距離によって上記三次元座標を特定可能な状態で表示する第2の表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の他の形態のトンネル管理システムは、上記データは時間を含み、異なる時間を有する複数の変状が異なる態様で表示されることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の形態のトンネル管理システムは、上記トンネル現況図上の指定された点に対応する三次元座標データを取得する手段と、
上記取得された三次元座標データに対応するトンネル内の点を特定する手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明に係るトンネルの現況展開図(または変状管理図)及びその作成システムについて説明する。
【0010】
(1)システムの構成:
トンネル現況展開図を作成するために必要なシステムの構成について説明する。図1に示すように、トンネル2の現況展開図及び変状管理図を作成するシステム10は、測量装置であるトータルステーション12と、このトータルステーション12に接続され、レーザ式トータルステーション12で測定された座標データを記憶する携帯用小型コンピュータ14を有する。トータルステーション12は、例えばノートブック型、デスクトップ型のコンピュータ16と接続することもでき、このコンピュータ16から出力される座標データに基づいて、該座標データに対応する実際の点を現場にレーザで指示することもできる。また、小型コンピュータ14もコンピュータ16と接続することができ、小型コンピュータ14で取得された計測データをコンピュータ16に転送することもできる。そして、小型コンピュータ14から転送された計測データに基づいて、コンピュータ16が該コンピュータ16に記憶されているプログラムに基づいて、現況展開図及び管理図Aを作成し、これをディスプレイ18に表示することができる。
【0011】
(2)作業工程:
現況展開図及び管理図Aを作成する概略の手順を説明する。図2に示すように、この手順には、▲1▼基本測量、▲2▼現況測量、▲3▼変状測量、▲4▼データ構築の工程が含まれる。
【0012】
▲1▼基本測量:
基本測量には、測量対象となるトンネルの踏査、基準点測量、水準測量が含まれる。この基準測量の際、トータルステーション12の機械座標は、既存の基準点を利用して計測することもできるし、地球上を周回する複数の人工衛星からの電波を受信・解析することにより位置を計測する全地球測位システム(GPS)を利用することもできる。そして、基本測量の測定データをもとに、トンネル2の線形・断面が決定される。
【0013】
▲2▼現況測量:
現況測量は、トンネル2の中心線に沿って適当な間隔をあけて設定された複数の測点P(1)…P(n)について、トンネル2の内空断面を計測するもので、この現況測量で得られたデータを用いて現況展開図が作成される。具体的に、図1に示すように、現況測量では、基本測量の際にトンネル2に設定された各測点P(1)…P(n)について、各測点P(i)上にある多数の計測点S(1)…S(m)の三次元座標データ(三次元内空断面データ、三次元位置情報)(x、y、z)を取得する。このとき、トータルステーション12は、該トータルステーション12(機械座標)からトンネル内測点までの斜距離、鉛直角(仰角又は俯角)、基準点(図示せず)からの水平角を取得する。トータルステーション12で取得されたデータ(斜距離、鉛直角、水平角)は、測点P(i)を特定するデータ(測点番号)とコンピュータ14に記憶される。図3に示すように、コンピュータ14は、通常のコンピュータと同様に、演算部(CPU)、入力部、出力部、記憶部、タイマ、通信部を備えており、トータルステーション12で取得された各計測点の三次元座標データS(j):(x、y、z)〔図4参照〕が記憶部に一旦記憶され、後に必要に応じてコンピュータ16に送信される。現況測量ではまた、トンネル2の内部に設置されている各種施設(消火栓、電話など)に関する座標データ及び画像データを取得する。取得されたデータは、コンピュータ14に送信され、その記憶部に保存される。記憶部に保存されるデータは、計測された一つの施設について一つのファイルとして保存され、各ファイルにはファイル番号、属性(施設の種類)、計測時間(開始又は終了の日時)、座標データが含まれる。
【0014】
▲3▼変状測量:
変状測量は、トンネル2の壁面に発生しているクラック・漏水などの変状に関する座標データ(三次元データ)を取得するもので、ここで取得されたデータを用いて管理図が作成される。具体的に、図5に示すように、変状測量では、トンネル2内に存在する種々の変状の三次元座標データを取得する。例えば、クラックの座標データを取得する場合、トータルステーション12でクラック20の始端から終端までの各点の座標(x、y、z)〜(x,y,z)を取得する。なお、(x、y、z)はトータルステーション12の機械座標である。取得された座標データは、コンピュータ14に送信され、その記憶部に保存される。記憶部に保存されるデータは、図6に示すように、計測された一つの変状について一つのファイルとして保存され、各ファイルにはファイル番号、属性(変状又は施設の種類)、計測時間(開始又は終了の日時)、座標データが含まれる。
【0015】
このような形式でデータを保存するために、コンピュータ14は特別に設計されており、例えば図7に示すように、コンピュータ14の入力部である接触式入力画面には、変状や施設を示す複数の属性選択ボタン12aと、開始ボタン12b、座標データ取得ボタン12c、終了ボタン12dが用意されている。そして、図5に示すように、クラック20のデータを取得する場合、属性選択ボタン12aの中からクラック選択ボタンを押す。次に、トータルステーション12でクラック20の始端を視準し、座標データ取得ボタン12cを押す。これにより、クラック始端の座標データ(x、y、z)が取得される。続いて、再びトータルステーション12でクラック20の次の点を視準し、座標データ取得ボタン12cを押す。これにより、次の点の座標データ(x、y、z)が取得される。以上の動作を繰返し、クラック終端までの座標データを取得すると、終了ボタン12dを押す。これにより、図6に示すように、クラック20について一つのファイルが作成され、そこにはファイル番号、属性(クラック)、開始ボタン又は終了ボタンが押されたときの日時、および座標データ(x、y、z)〜(x,y,z)が記憶される。
【0016】
▲4▼データ構築:
データ構築は、現況測量と変状測量によって得られたデータを加工し、現況展開図、管理図を作成するために必要なデータを構築する工程である。
【0017】
(3)現況展開図のデータ構築:
▲1▼コンピュータの構成:
コンピュータ14に記憶された種々のデータは別のコンピュータ16に送信され、このコンピュータ16に格納されたプログラムに従って処理され、現況展開図及び管理図の作成データに加工される。コンピュータ16は、図8に示すように、CPU22、演算部24、記憶部26を有し、コンピュータ16から転送された現況測量のデータが現況展開図基本データとして、また変状測量のデータが変状管理図基本データとして記憶されている。また、演算部24には、現況展開図基本データをもとに現況展開図を作成するプログラムと、変状管理図基本データをもとに変状管理図を作成するプログラムを記憶している。
【0018】
▲2▼トンネル現況展開図
トンネルの現況展開図について説明する。まず、図9は典型的なトンネル2を三次元的に表した斜視図、図10は図9に示すトンネル2の現況を二次元座標系に展開した現況展開図Aである。この現況展開図Aには、トンネル2の基線として中心線CLが表示されている。したがって、現況展開図Aを見れば、トンネル2の平面線形が理解できる。また、現況展開図Aには、トンネル2の中心線CLに沿って適当な間隔をあけて設定された各測点P(1)…P(n)と、各測点P(i)で測定された断面形状をもとに計算された断面周長D(i)が記載されている。当然のことであるが、現況展開図は実際の長さを適当な縮尺に縮小したものであるから、図面上に描かれている線分の長さは実際の周長D(i)に縮尺を乗じた長さである。なお、以下に詳細に説明するように、本明細書において、「周長」とは、図9に示すように、トンネル中心線CLと直交又はほぼ直交する面によって切断されたトンネル横断面のなかで、舗装面4の長さを除く、覆工面6の長さをいう。なお、図10において、符号8で示す線は、覆工面6において、曲線アーチ部と、この曲線アーチ部の最大幅員部であるスプリングラインを示し、このスプリングラインSLも現況展開図Aに表示することもできる。
【0019】
▲3▼現況展開図の作成:
現況展開図Aは図11の処理にしたがって作成される。
【0020】
ステップS1〔三次元データの取得〕:
上述のように、現況測量によって各測点P(i)について、当該測点P(i)上にある多数の計測点S(1)…S(m)の三次元座標データ(三次元内空断面データ、三次元位置情報)(x、y、z)を、記憶部26の現況展開図基本データから取得する。
【0021】
ステップS2〔中心線の決定〕:
トンネル2の中心線CLを決定する。具体的に、各測点P(i)について、舗装面4と覆工面6との境界にある計測点S(1)、S(m)の三次元データである座標(x、y、z)、(x、y、z)を用い、トンネル測量の分野では周知の回帰演算によってトンネル中心線CLを決定する。また、このトンネル中心線CL上にある各測点P(i)の中心線座標C(i)〔xci、yci、zci〕を計算する。計算された中心線座標は、現況展開図描画データとして記憶部26に記憶される。
【0022】
ステップS3〔周長中心座標の計算〕:
図12に示すように、ステップS2で計算された中心線座標C(i)〔xci、yci、zci〕を通る鉛直線を計算する。次に、鉛直線の近傍にある2つの計測点S(j),S(j+1)の座標を現況展開図基本データから取り出す。続いて、計測点S(j),S(j+1)を通る直線(図6に点線で表示されている直線。)を計算する。そして、この直線上の座標であって、鉛直線と交差する点又は鉛直線に最も近い点の座標を求め、この点を周長中心座標S(i):〔xcj、ycj、zcj〕として現況展開図描画データとして記憶部26に記憶する。
【0023】
ステップS4〔周長の計算〕:
図13に示すように、各測点P(i)について計算された周長中心座標S(i):〔xcj、ycj、zcj〕から計測点S(1)、S(m)までの距離である周長D(i),D(i)を計算する。この計算〔式(1),(2)参照〕は、周長中心座標S(i):〔xci、yci、zci〕と、各計測点S(1)…S(m)で取得された三次元データ(x、y、z)…(x、y、z)を用いて行われる。計算された周長は、現況展開図描画データとして記憶部24に記憶される。


【0024】
▲4▼現況展開図の表示:
コンピュータ16で現況展開図の表示が指示されると、CPU22は記憶部26の現況展開図描画データから周長中心座標S(i):〔xcj、ycj、zcj〕を取り出す。また、周長中心座標のうち、二次元座標〔xcj、ycj〕を用いて二次元平面図に展開して中心線CLを描画する。さらに、現況展開図描画データから周長長D(i),D(i)を取り出し、中心線の描かれている二次元平面図に周長線を展開する。このとき、各周長D(i),D(i)は、中心線CLと直交又はほぼ直交する方向に向けて該中心線CLから左右に伸ばして描かれる。続いて、平面図上に展開された周長D(i),D(i)の先端(両端)をそれぞれ繋ぎ合せて周長連結線G,Gを描く(図10,14参照)。なお、周長中心座標からスプリングラインSLまでの周長を計算し、その周長を現況展開図に併せて表示してもよい。この場合、周長中心座標からスプリングラインSLまでの周長、また各測点のスプリングラインSLを繋ぐ連結線のデータもまた現況展開図描画データとして記憶部26に記憶される。
【0025】
▲5▼ファイルの保存:
以上のようにして作成された現状展開図描画データは、測定日ごとに別のファイルとして保存することができる。また、現況展開図基本データも同様に、測定日ごとに別のファイルとして保存することができる。
【0026】
▲6▼座標変換
以上のようにして作成された現況展開図を用いることにより、コンピュータ16は、ディスプレイ18上の出力画面に表示された二次元平面図上で指示された任意の点の三次元座標を与えることができる。例えば、ディスプレイ18に描写された平面図上で、周長中心座標S(i)の点を入力部22のポインティングデバイスによって指示すれば、演算部26が指示点座標演算部28で指示された点の座標S(i)の三次元座標データ〔x、ycj、zcj〕を与える。同様に、ディスプレイ18に描写された平面図上で、周長D(i),D(i)の先端を適当なポインティングデバイスによって指示すれば、これらの点はS(1)、S(m)の点に対応しているので、その指示された点が座標〔x、y、z〕、〔x、y、z〕が得られる。
【0027】
各周長D(i),D(i)を表す線分上における任意の点は、測点P(i)上の対応する点(座標)を特定する。例えば、図15に示す測点P(5)について、周長中心座標Sc(5)から計測点S(k)〔座標既知点〕までの線分長L(k)は、当該計測点Sk)の座標(x、y、z)を特定する。同様に、測点P(5)について、周長中心座標Sc(5)から計測点S(k−1)〔座標既知点〕までの線分長L(k−1)は、当該計測点S(k−1)の座標(xk−1、yk−1、zk−1)を特定する。そして、測点P(5)について、周長中心座標Sc(5)から計測点S(k)、S(k−1)の間にある任意の中間点S(k/k−1)までの線分長L(k/k−1)は、計測点S(k)の座標(x、y、z)と計測点S(k−1)の座標(xk−1、yk−1、zk−1)を用い、以下の比例計算〔式(3)、(4)、(5)参照〕によって、この中間点Sk/k−1)に対応する測点断面上の点の三次元座標(x/k−1、y/k−1、z/k−1)を近似的に特定する。


【0028】
同様にして、別の測点P(4)上で指定された点は、この点に対応する三次元座標データを与える。
【0029】
続いて、図15に示すように、2つの隣接する測点〔例えば、測点P(4),P(5)〕の間にある任意の点(指示点Q)の座標は、以下に説明する2つの方法(第1の方法又は第2の方法)のいずれかにより特定できる。
【0030】
第1の方法は、指示点の座標に最も近い測点の三次元座標データを用いる方法(近接測点利用法)である。この方法では、図15に示すように、コンピュータ16に接続された画面上に表示された現況展開図において、マウス等のポインティングデバイスによって任意の点(指示点Q)が指示されると、図16に示すように、コンピュータ16の演算部24はまず、指示点Qが中心線CLを境に左右いずれの領域にあるかを判断する(ステップS21)。次に、現況展開図上で指示点Qに最も近い測点を特定する(ステップS22)。図示する例の場合、指示点Qは測点P(4)に近いので、この測点P(4)が特定される。
【0031】
この計算は、例えば図17に示すように、指示点Qから隣接する2つの周長中心座標S(i)、S(i+1)を結ぶ各直線を仮定し、指示点Qから各直線に対して垂線を下ろし、その垂線と直線との交点をQ’とし、その交点Q’が対応する2つの隣接する周長中心座標の間にあるか否によって、まず近接する2つの測点を特定する。例えば、図示する例の場合、指示点Qから周長中心座標S(i)、S(i+1)を結ぶ直線(点線)に下ろした垂線と該直線との交点Q’はこれら2つの周長中心座標S(i)、S(i+1)を結ぶ領域の外側に存在するのに対し、指示点Qから周長中心座標S(i)、S(i−1)を結ぶ直線(点線)に下ろした垂線と該直線との交点Q’はこれら2つの周長中心座標S(i)、S(i−1)の間に存在する。したがって、指示点Qは、測点P(i)とP(i−1)の間に存在することが分かる。次に、交点Q’から周長中心座標S(i)、S(i−1)までの距離h,hi−1を計算して比較し、距離の短い方の周長中心座標S(i)を指示点Qに最も近い測点として特定する。
【0032】
図15に戻り、演算部24は、現況展開図上におけるQQ’の距離(長さ)Lqを計算する(ステップS23)。また、現況展開図描画データから呼び出した周長中心座標S(i)、S(i−1)と、交点Q’から周長中心座標S(i)、S(i−1)までの距離h,hi−1を用い、比例配分法によって交点Q’の座標(xq’、yq’、z)を計算する(ステップS24)。
【0033】
続いて、指示点Qに最も近い測点上において指示点Qに対応する点の座標を求める。例えば、図9に示すように、いま指示点Qが中心線CLの左側領域にあって、測点P(4)が指示点Qに最も近い測点として特定された場合、現況展開図描画データから周長中心座標S(4)と、同一測点上にあって指示点Qの存在する左側領域又は右側領域にある複数の計測点の座標を呼び出し、周長中心座標S(4)から各計測点までの距離を順次計算すると共に、その計算値(距離)とQQ’の距離Lとを比較する。いま、周長中心座標Sc(4)から計測点S(k)までの距離L(k)はQQ’の距離Lよりも短いが、周長中心座標Sc(4)から計測点S(k−1)までの距離L(k−1)はQQ’の距離Lよりも大きいと判断された場合、指示点Qに対応する点〔この対応点をS(k/k−1とする。〕は計測点S(k)とS(k−1)の間に存在することがわかる。そこで、演算部24は上述した式(3)、(4)、(5)を用いて、これら距離L、L(k)、L(k−1)及び計測点S(k)、S(k−1)の座標をもとに、対応点S(k/k−1)の座標(x/k−1、y/k−1、z/k−1)を計算する。次に、この対応点S(k/k−1)と、この対応点を含む測点P(4)の中心点座標Sc(4)との三次元空間上における関係(ベクトル量)を求める(ステップS26)。


最後に、このベクトル量と点Q’の座標(xq’、yq’、zq’)とを用いて、指示点Qの座標(x、y、z)を求める(ステップS27)。
【0034】
第2の方法は、指示点に隣接する2つの測点の三次元データを用いて内挿する方法(内挿法)である。この方法では、例えば指示点Qの両側にある2つの測点〔P(4),P(5)〕が特定される。次に、演算部24は、指示点Qから中心線CLに垂直に下ろした点をQ’とし、現況展開図上におけるQQ’の距離(長さ)Lqを計算する。続いて、2つの測点〔P(4),P(5)〕上にそれぞれあって、距離Lqに対応する点(対応点S(k/k−1))の座標を上述のようにして求める。いま、測点P(4)における対応点の座標を(x(4)/k−1、y(4)/k−1、z(4)/k−1)、測点P(5)における対応点の座標を(x(5)/k−1、y(5)/k−1、z(5)/k)とする。そして、2つの測点上の対応点の座標値と、距離h、hの比を用いて、以下の式(5)、(6)、(7)により点Qの座標(x、y、z)を計算する。


【0035】
したがって、上述のシステムによれば、コンピュータ16のディスプレイ18に表示されている現況展開図上で任意の点を指示すると、その指示された点に対応する三次元座標が得られる。
【0036】
そのため、図1に示すようにコンピュータ16とレーザ式トータルステーション12が電気的に接続されている場合、ディスプレイ18上で任意の点を指示すると、指示された点の座標をコンピュータ16が上述のようにして計算し、その計算値に基づいて、トータルステーション12から発信したレーザを、トンネル内面の対応する点に照射(投影)することができる。
【0037】
(4)管理図のデータ構築:
管理図基本データは、図6に示す状態で、ファイル単位で記憶部26に記憶されている。したがって、記憶部26に記憶されているファイルを例えば属性ごとに抽出することができるし、また抽出されたファイルを経時的に組み替えることも可能である。したがって、以上のようにして作成された現況展開図上に、図18に示すように、トンネルの内面に現れているクラック32、漏水個所34、コールドジョイント36などの変状や、トンネルの内面に設置されている各種施設(例えば、照明)などを表示できる。
【0038】
(5)管理図の作成:
現況展開図に変状等を同時に表示した変状管理図の作成について更に詳細に説明する。いま、図19に示すように隣接する2つの測点P(4)とP(5)の間にクラック32があり、このクラック32について複数の点r…r13の座標(x、y、z)…(x13、y13、z13)が取得されて記憶されているものとする(図20:ステップS31)。
【0039】
コンピュータ16では、測定された点r…r13を現況展開図に展開するにあたって、図21に示すように各点r…r13に対応した内空断面R…R13を仮想する(図20:ステップS32)。この仮想内空断面R…R13は、各点r…r13に最も近い測点の内空断面である。各点に最も近い測点は、図17を参照して説明したように、隣接する2つの周長中心座標Sc(i),Sc(i1)又は中心線座標C(i)、C(i−1)を結ぶ各線に各点からそれぞれ垂線を下ろし、次にこの垂線と中心線との交点の座標を求め、続いてこの交点とこれに隣接する2つの中心点座標との距離を求めて、それらの距離の短い方にある中心点を含む測点が最も近い測点として与えられる。
【0040】
いま、点rが測点P(5)よりもP(4)に近い場合、この点rに対してP(4)の内空断面が仮想断面として与えられたとする。しかし、この内挿された仮想内空断面R…R13は、測点r…r13が実際に存在する現実の内空断面R…R13と異なる。そこで、コンピュータ16は、図21に示すように、中心線上の点tと、測点rとを結ぶ線Tを仮定し、この線と仮想内空断面との交点に新たな仮想点r…r13を設定すると共に、これら仮想点r…r13の座標(x、y、z)…(x13、y13、z13)を演算する(図20:ステップS35)。
【0041】
次に、コンピュータ16は、仮想点r…r13の座標(x、y、z)…(x13、y13、z13)をもとに、対応する仮想内空断面R…R13上における周長L…L13を演算し(図20:ステップS34)、その長さに対応する点を現況展開図Aにプロットし(図20:ステップS35)、プロットされた複数の点を繋ぎ合わせてクラックを表示し、管理図を得る。
【0042】
なお、以上の説明ではトータルステーションで視準した点に最も近い測点を特定し、その特定された断面のデータを用いて現況展開図上における周長を求めたが、上述した内挿法と同様の方法により、視準点に近い2つの断面のデータを用いて周長を演算することもできる。
【0043】
このようにして、トータルステーション12で視準されたトンネル上の任意の点は、現況展開図A上に表示されると共に、トンネル内に存在する変状や施設はすべて現況展開図上に表示することができる。
【0044】
また、以上の説明では基線としてトンネル中心線CLを用いたが、この基線として覆工面の端部であるS(1)又はS(m)を用いることもできる。
【0045】
このようにして得られた管理図は、上述のように現況展開図上の任意の点をポインティングデバイスで指示すればその点の三次元座標が得られるので、例えば管理図上に表示されたクラックの始点又は終点若しくはそれらの間の任意の点をポインティングデバイスで指示すれば、その指示された点の三次元座標が得られる。また、コンピュータ16とトータルステーション12を接続すれば、コンピュータ16で形成された三次元座標に対応するトンネル内の点を、トータルステーション12で視準できる。したがって、図23に示すように、ある日時に計測されたクラックが始点(x、y、z)から終点(x、y、z)までのものであり、その時点からある期間が経過した後の時点までの間にクラックが成長している場合、現場で前回(上記の「ある日時」に)計測されたクラックの終点(x、y、z)を視覚的に確認することは不能であるが、本システムによれば前回の計測によって得られたクラック終端の座標データに基づき、その点を現場にレーザ等で指示(投影)することができる。そのため、前回計測されたクラック終点(x、y、z)から現在のクラック終点までの(x、y、z)のクラック部分だけを確実に計測できる。また、新たに計測されたクラック部分の座標データを別のファイルとして保存できる。さらに、ファイルに記録されている時間データをもとに、前回計測されたクラック部分と今回計測されたクラック部分を異なる色で表示することもできる。
【0046】
クラック以外のトンネル内の変状(例えば、漏水箇所、剥落、吹付など)や、トンネル内の施設(例えば、電話、消火栓、配電盤、照明灯な)についても同様に現況管理図上に表示した変状/施設管理図を得ることができるとともに、変状/施設管理図上に表示された変状又は施設を指示すれば、その指示された変状/施設に対応する三次元座標が計算されるとともに、この計算された座標に対応する実際の点がトータルステーションで現場に投影できる。
【0047】
また、コンピュータ16には、トンネル内の変状や施設をデジタルカメラで撮影した画像データを、その画像データに対応する変状又は施設と対応づけて記憶するとともに、トンネル管理図上に変状又は施設と同時に写真の存在を示すマークを表示し、この表示されたマークが指定されたときに対応する画像を表示するようにしてもよい。
【0048】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、管理図から該管理図上に表示された対象(変状又は施設)の三次元座標を得ることができる。また、対象が時間データを有する場合、異なる時間データを有する対象(変状又は施設)を区別して表示することができる。そのため、トンネルの経年的な変化を容易に、しかも視覚的に把握することができる。その結果、トンネルの危険度を客観的に判断できるとともに、補修及び危険回避処置を即座に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシステムの概略構成を示す図。
【図2】現況展開図及び現況管理図を作成するまでの工程を示す図。
【図3】トータルステーションから得られるデータを処理するコンピュータの構成を示す図。
【図4】現況測量のデータを示す図。
【図5】クラックの座標を取得する状態を示す図。
【図6】変状/施設測量データの構成を示す図。
【図7】トータルステーションから得られるデータを処理するコンピュータの入力部(接触式入力画面)の構成を示す図。
【図8】トータルステーションから得られるデータを処理する別のコンピュータの構成を示す図。
【図9】トンネルの斜視図。
【図10】トンネル現況展開図。
【図11】トンネル現況展開図の作成プロセスを示すフローチャート。
【図12】図5のフローチャートと共にトンネル現況展開図の作成プロセスを示す図。
【図13】図6と共にトンネル現況展開図の作成プロセスを示す図。
【図14】図5,6と共にトンネル現況展開図の作成プロセスを示す図。
【図15】トンネル現況展開図上の任意点の三次元座標計算を説明する図。
【図16】図9と共にトンネル現況展開図上の任意点の三次元座標計算を説明する図。
【図17】指示点に最も近い測点を特定する方法を説明する図。
【図18】クラック等の変状を表示したトンネル現況展開図。
【図19】クラックの表示方法を説明する図。
【図20】図19と共にクラックの表示方法を説明する図。
【図21】図19、図20と共にクラックの表示方法を説明する図。
【図22】図19〜図21と共にクラックの表示方法を説明する図。
【図23】クラックの測量を説明する図。
【符号の説明】
A:現況展開図
2:トンネル
4:舗装面
6:覆工面
10:システム
12:コンピュータ
14:トータルステーション
16:ディスプレイ
5:プリンタ
【出願人】 【識別番号】502166307
【氏名又は名称】株式会社中田測量
【住所又は居所】北海道札幌市豊平区美園1条1丁目1−20
【識別番号】599157284
【氏名又は名称】関西工事測量株式会社
【住所又は居所】大阪府箕面市坊島1丁目3番35号
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜東4番33号
【出願日】 平成14年7月8日(2002.7.8)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆

【識別番号】100086405
【弁理士】
【氏名又は名称】河宮 治

【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二

【公開番号】 特開2004−37419(P2004−37419A)
【公開日】 平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願番号】 特願2002−198695(P2002−198695)