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【発明の名称】 高周波加熱装置の加熱制御方法、及び高周波加熱装置
【発明者】 【氏名】内山 智美
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【氏名】神崎 浩二
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【氏名】早川 雄二
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【氏名】渡辺 賢治
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【要約】 【課題】加熱室内に蒸気を供給して高周波加熱を行うと共に、赤外線センサにより被加熱物の加熱温度を正確に検出することのできる高周波加熱装置の加熱制御方法及び高周波加熱装置を提供する。

【解決手段】赤外線センサ20により被加熱物Mの温度を測定して加熱状態を監視する高周波加熱装置100の加熱制御方法であって、加熱室11への蒸気供給と高周波による低出力加熱を行う初期加湿時に、赤外線センサ20により被加熱物Mの温度を複数回測定し、被加熱物Mの加熱時間に対する温度上昇率を求め、初期加湿終了後に、加熱室11への蒸気の供給を停止すると共に、温度上昇率から推定される被加熱物Mの分量に応じた加熱条件により高周波本加熱を行い、高周波本加熱中に赤外線センサ20が被加熱物Mの指定された仕上がり温度を検出したときに、高周波本加熱を停止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された加熱条件に基づいて、被加熱物を収容する加熱室に高周波と蒸気との少なくともいずれかを供給して前記加熱物を加熱処理する一方、赤外線センサにより前記被加熱物の温度を測定して加熱状態を監視する高周波加熱装置の加熱制御方法であって、
前記加熱室への蒸気供給と高周波による低出力加熱を行う初期加湿時に、前記赤外線センサにより被加熱物の温度を複数回測定し、被加熱物の加熱時間に対する温度上昇率を求め、
前記初期加湿終了後に、前記加熱室への蒸気の供給を停止すると共に、前記温度上昇率から推定される被加熱物の分量に応じた加熱条件により高周波本加熱を行い、
前記高周波本加熱中に前記赤外線センサが被加熱物の指定された仕上がり温度を検出したときに、前記高周波本加熱を停止することを特徴とする高周波加熱装置の加熱制御方法。
【請求項2】
前記初期加湿の実施時間を、被加熱物の分量が多いときに長く、少ないときに短く設定することを特徴とする請求項1記載の高周波加熱装置の加熱制御方法。
【請求項3】
前記初期加湿時に前記赤外線センサによる温度測定結果から被加熱物が冷凍品か常温品であるかを識別し、冷凍品である場合は常温品である場合より前記高周波本加熱時の加熱を強く設定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の高周波加熱装置の加熱制御方法。
【請求項4】
前記赤外線センサが仕上がり温度を検出したときに、
(1)被加熱物の加熱による温度ムラが所定の許容値を超過した場合
(2)被加熱物が冷凍品である場合
(3)被加熱物の分量が規定の所定量を超過した場合
のうち、少なくともいずれかの場合に、前記加熱室へ蒸気を所定時間追加供給することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の高周波加熱装置の加熱制御方法。
【請求項5】
前記蒸気を追加供給する時間を、前記高周波本加熱の加熱時間に比例して設定することを特徴とする請求項4記載の高周波加熱装置の加熱制御方法。
【請求項6】
前記加熱室へ蒸気を追加供給するときに、高周波による低出力加熱を併せて行うことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の高周波加熱装置の加熱制御方法。
【請求項7】
前記高周波本加熱時に、循環ファンによる加熱室内の空気の撹拌を同時に行うことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の高周波加熱装置の加熱制御方法。
【請求項8】
前記初期加湿時に、循環ファンによる加熱室内の空気の撹拌を同時に行うことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の高周波加熱装置の加熱制御方法。
【請求項9】
被加熱物の分量に応じた最大加熱時間を設定し、加熱開始後からの経過時間が前記最大加熱時間に到達したとき、加熱処理を強制終了させることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の高周波加熱装置の加熱制御方法。
【請求項10】
入力された加熱条件に基づいて、被加熱物を収容する加熱室に高周波と蒸気との少なくともいずれかを供給して前記加熱物を加熱処理する一方、赤外線センサにより前記被加熱物の温度を測定して加熱状態を監視する高周波加熱装置の加熱制御方法であって、
前記赤外線センサによる被加熱物の温度測定を、加熱開始後の予め設定された測定時間内に行うことを特徴とする高周波加熱装置の加熱制御方法。
【請求項11】
前記加熱室の容量、蒸気発生用に供給する水の量、該水を加熱する加熱源の出力値のうち少なくともいずれかに応じて変化する前記赤外線センサの温度測定限界時間を求め、前記求めた温度測定限界時間をそれぞれテーブルへ登録しておき、該テーブルを参照することで前記測定時間を設定することを特徴とする請求項10記載の高周波加熱装置の制御方法。
【請求項12】
入力された加熱条件に基づいて、被加熱物を収容する加熱室に高周波と蒸気との少なくともいずれかを供給して前記加熱物を加熱処理する一方、赤外線センサにより前記被加熱物の温度を測定して加熱状態を監視する高周波加熱装置の加熱制御方法であって、
前記加熱室内の蒸気濃度が赤外線センサによる被加熱物の温度検出可能範囲を超えたときに、前記赤外線センサによる温度測定を停止又は測定温度を無効とし、前記蒸気濃度が前記温度検出可能範囲内に低下した後に、前記赤外線センサによる温度測定を開始又は測定温度を有効として、被加熱物の温度を測定することを特徴とする高周波加熱装置の加熱制御方法。
【請求項13】
前記温度検出可能範囲に低下するまでの調整時間を加熱室内の各種条件に応じてそれぞれ求め、前記求めた調整時間をそれぞれテーブルへ登録しておき、該テーブルを参照することで前記調整時間を設定することを特徴とする請求項12記載の高周波加熱装置の加熱制御方法。
【請求項14】
被加熱物を収容する加熱室に高周波を供給する高周波発生部と、
前記加熱室内に蒸気を供給する蒸気発生部と、
前記加熱室の壁面に設けた検出用孔を通して加熱室内の温度を検出する赤外線センサと、
前記請求項1〜6、請求項9〜13のいずれか1項記載の高周波加熱装置の加熱制御方法に基づいて制御する制御部とを備えたことを特徴とする高周波加熱装置。
【請求項15】
被加熱物を収容する加熱室に高周波を供給する高周波発生部と、
前記加熱室内に蒸気を供給する蒸気発生部と、
前記加熱室内の空気を撹拌する循環ファンと、
前記加熱室の壁面に設けた検出用孔を通して加熱室内の温度を検出する赤外線センサと、
前記請求項7又は請求項8記載の高周波加熱装置の加熱制御方法に基づいて制御する制御部とを備えたことを特徴とする高周波加熱装置。
【請求項16】
前記蒸気発生部が、前記赤外線センサの温度検出範囲から実質的に外れた位置に配設されていることを特徴とする請求項14又は請求項15記載の高周波加熱装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波加熱と蒸気加熱とを組み合わせて被加熱物を加熱処理する蒸気発生機能付き高周波加熱装置の加熱制御方法、及び高周波加熱装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、食品等の被加熱物を加熱する際には、まず加熱室内に被加熱物を載置して、高周波加熱のスイッチを押下することで加熱開始し、指定された所定時間或いは被加熱物が所定仕上がり温度となったときに加熱停止した後、被加熱物を取り出していた。しかし、加熱されるにつれ蒸気を発生する被加熱物に対しては、高周波加熱によって水分が奪われて、被加熱物表面が乾燥したり固くなったりする。そこで、高周波加熱による水分量の減少を抑えるために、例えば被加熱物をラップ(食品包装用の薄いフィルム)で包み、蒸気が逃げないようにして加熱処理している。
また、加熱時間や高周波加熱の出力値等の加熱条件は、例えば被加熱物の重量を検出して、その重量に見合った加熱量に制御したり、加熱中の被加熱物の温度を赤外線センサにより逐一検出して、過加熱を防止した制御を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、被加熱物を加熱の度にラップで包むことは操作者にとって面倒であり、また、加熱終了時にラップを取り外すことも被加熱物が高温になっている点から注意を要し、加熱作業が煩わしいものとなっていた。そこで、高周波加熱機能に加えて蒸気発生機能を付加した高周波加熱装置が種々検討されている。このような蒸気発生機能付き高周波加熱装置によれば、加熱室内を蒸気で充満させて高周波加熱を行うことで、被加熱物の水分を奪うことなく加熱できるが、その一方で、蒸気が加熱室内に充満すると、赤外線センサはこの充満した蒸気粒子の温度を測定するようになり、食品の温度が正確に検出できなくなってしまうという問題があった。
【0004】
また、ターンテーブル式の高周波加熱装置では、ターンテーブルの回転軸に重量センサを取り付けて被加熱物の重量を測定し、被加熱物の重量に応じた最適な加熱処理を施していた。一方、加熱室内を広く有効に使用することを目的に、マグネトロンにより発生させた高周波を回転駆動されるスタラー羽根に照射することで加熱室内へ拡散供給する方式がある。この方式では、被加熱物を直接加熱室底面に載置するため、ターンテーブル式のような重量センサを取り付けることができず、従って、被加熱物の分量を直接測定することができないという問題を生じていた。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、加熱室内に蒸気を供給して高周波加熱を行うと共に、赤外線センサにより被加熱物の加熱温度を正確に検出することのできる高周波加熱装置の加熱制御方法及び高周波加熱装置を提供することを目的とする。
【0006】
【発明が解決しようとする手段】
上記目的達成のため、本発明に係る請求項1記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、入力された加熱条件に基づいて、被加熱物を収容する加熱室に高周波と蒸気との少なくともいずれかを供給して前記加熱物を加熱処理する一方、赤外線センサにより前記被加熱物の温度を測定して加熱状態を監視する高周波加熱装置の加熱制御方法であって、前記加熱室への蒸気供給と高周波による低出力加熱を行う初期加湿時に、前記赤外線センサにより被加熱物の温度を複数回測定し、被加熱物の加熱時間に対する温度上昇率を求め、前記初期加湿終了後に、前記加熱室への蒸気の供給を停止すると共に、前記温度上昇率から推定される被加熱物の分量に応じた加熱条件により高周波本加熱を行い、前記高周波本加熱中に前記赤外線センサが被加熱物の指定された仕上がり温度を検出したときに、前記高周波本加熱を停止することを特徴とする。
【0007】
この高周波加熱装置の加熱制御方法では、加熱室への蒸気供給と高周波による低出力加熱を行い、加熱室内の蒸気濃度を赤外線センサによる被加熱物の温度検出が可能な範囲内で上昇させ、被加熱物の昇温を赤外線センサにより検出して、被加熱物の初期温度を求めると共に、複数回の温度測定によって被加熱物の温度上昇率を求める。この温度上昇率から被加熱物の分量を推定し、推定された分量に応じて高周波加熱出力値等の加熱条件を設定して高周波本加熱を行う。このときに、加熱室への蒸気供給を停止することで、加熱室内の蒸気濃度が必要以上に増大することを抑制して、高周波本加熱時においても赤外線センサによる被加熱物の温度検出が可能な蒸気濃度に留める。また、蒸気供給の停止により、高周波本加熱の出力に装置の略最大出力まで費やすことが可能となり、高周波本加熱の出力可変レンジが拡大される。そして、赤外線センサが被加熱物の仕上がり温度を検出したときに高周波本加熱を停止させる。このように、加熱室内が低い蒸気濃度であるうちに温度測定を行い、且つ、高周波本加熱中は蒸気発生を停止させて蒸気濃度を低下させることで、温度測定を行うときに、加熱室内が蒸気濃度の低い状況となるように制御することで、赤外線センサによる被加熱物の温度測定が正確に行えると共に、被加熱物から水分を奪うことなく加熱することが可能となる。
【0008】
請求項2記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、前記初期加湿の実施時間を、被加熱物の分量が多いときに長く、少ないときに短く設定することを特徴とする。
【0009】
この高周波加熱装置の加熱制御方法では、被加熱物の分量が多いときに加湿を長くすることで、必要十分な水分が加熱室内に供給され、被加熱物が加熱時に乾燥することがなくなる。また、分量が少ないときに加湿を短くすることで、加熱室内の蒸気濃度を必要以上に大きくすることが防止され、また、無駄な加熱時間を削減できるため、効率よく加熱処理が行える。
【0010】
請求項3記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、前記初期加湿時に前記赤外線センサによる温度測定結果から被加熱物が冷凍品か常温品であるかを識別し、冷凍品である場合は常温品である場合より前記高周波本加熱時の加熱を強く設定することを特徴とする。
【0011】
この高周波加熱装置の加熱制御方法では、被加熱物が冷凍品である場合に、常温品に対してより強い加熱に設定することにより、被加熱物の種類に応じた加熱処理が行え、加熱不足や過加熱の発生を未然に防止できる。従って、冷凍品・常温品の区別なく適切な加熱処理を行えるようになる。
【0012】
請求項4記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、前記赤外線センサが仕上がり温度を検出したときに、
(1)被加熱物の加熱による温度ムラが所定の許容値を超過した場合
(2)被加熱物が冷凍品である場合
(3)被加熱物の分量が規定の所定量を超過した場合
のうち、少なくともいずれかの場合に、前記加熱室へ蒸気を所定時間追加供給することを特徴とする。
【0013】
この高周波加熱装置の加熱制御方法では、被加熱物の加熱が不十分である場合に、仕上がり温度の検出加熱室内へ蒸気を追加供給することで、仕上がり状態を良好なものとし、また、高周波本加熱により水分が蒸発した場合に、その水分を補うことができる。
【0014】
請求項5記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、前記蒸気を追加供給する時間を、前記高周波本加熱の加熱時間に比例して設定することを特徴とする。
【0015】
この高周波加熱装置の加熱制御方法では、高周波本加熱の時間が短い場合には、蒸気の追加供給時間を短く、高周波本加熱の時間が長い場合には、蒸気の追加供給時間を長く設定する。これにより、加熱条件に応じた適度な加湿を施すことができる。
【0016】
請求項6記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、前記加熱室へ蒸気を追加供給するときに、高周波による低出力加熱を併せて行うことを特徴とする。
【0017】
この高周波加熱装置の加熱制御方法では、蒸気供給に合わせて高周波加熱を行うことで、被加熱物の内部からも加熱が進み、被加熱物全体を温度ムラの少ない均等な温度分布にすることができる。
【0018】
請求項7記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、前記高周波本加熱時に、循環ファンによる加熱室内の空気の撹拌を同時に行うことを特徴とする。
【0019】
この高周波加熱装置の加熱制御方法では、高周波本加熱時には蒸気の供給を停止した状態で加熱室内の空気の撹拌を行うことで、被加熱物に蒸気を吹き当てて加湿及び加熱効果を均等化させると共に、加熱室内に充満する蒸気を加熱室の壁面等に結露させて徐々に蒸気濃度を低下させ、赤外線センサによる温度測定が正確に行われる蒸気濃度範囲にいち早くすることができる。
【0020】
請求項8記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、前記初期加湿時に、循環ファンによる加熱室内の空気の撹拌を同時に行うことを特徴とする。
【0021】
この高周波加熱装置の加熱制御方法では、初期加湿時に加熱室内の空気の撹拌を行うことで、装置の連続使用時に加熱室内に蒸気が充満していても、蒸気が撹拌されて赤外線センサによる温度測定が正確に行われる。
【0022】
請求項9記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、被加熱物の分量に応じた最大加熱時間を設定し、加熱開始後からの経過時間が前記最大加熱時間に到達したとき、加熱処理を強制終了させることを特徴とする。
【0023】
この高周波加熱装置の加熱制御方法では、被加熱物の分量に応じた最大加熱時間の経過時に加熱処理を強制終了させることにより、装置動作の異常時における被加熱物や装置自体の過加熱が防止され、これにより高周波加熱装置の安全性を維持できる。
【0024】
請求項10記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、入力された加熱条件に基づいて、被加熱物を収容する加熱室に高周波と蒸気との少なくともいずれかを供給して前記加熱物を加熱処理する一方、赤外線センサにより前記被加熱物の温度を測定して加熱状態を監視する高周波加熱装置の加熱制御方法であって、前記赤外線センサによる被加熱物の温度測定を、加熱開始後の予め設定された測定時間内に行うことを特徴とする。
【0025】
この高周波加熱装置の加熱制御方法では、赤外線センサによる被加熱物の温度測定を、加熱開始後の加熱室内の蒸気濃度が比較的低い状態にある予め設定された測定時間内に行うことで、被加熱物の温度をより正確に測定することができる。
【0026】
請求項11記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、前記加熱室の容量、蒸気発生用に供給する水の量、該水を加熱する加熱源の出力値のうち少なくともいずれかに応じて変化する前記赤外線センサの温度測定限界時間を求め、前記求めた温度測定限界時間をそれぞれテーブルへ登録しておき、該テーブルを参照することで前記測定時間を設定することを特徴とする。
【0027】
この高周波加熱装置の制御方法では、各条件に応じて変化する温度測定限界時間を各種条件毎に予め求めたテーブルを参照することで、測定時間を設定するので、加熱条件に応じた時間内に温度測定を終了させることができ、蒸気に影響されない温度検出を一層確実に実施できる。
【0028】
請求項12記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、入力された加熱条件に基づいて、被加熱物を収容する加熱室に高周波と蒸気との少なくともいずれかを供給して前記加熱物を加熱処理する一方、赤外線センサにより前記被加熱物の温度を測定して加熱状態を監視する高周波加熱装置の加熱制御方法であって、前記加熱室内の蒸気濃度が赤外線センサによる被加熱物の温度検出可能範囲を超えたときに、前記赤外線センサによる温度測定を停止又は測定温度を無効とし、前記蒸気濃度が前記温度検出可能範囲内に低下した後に、前記赤外線センサによる温度測定を開始又は測定温度を有効として、被加熱物の温度を測定することを特徴とする。
【0029】
この高周波加熱装置の加熱制御方法では、蒸気の供給によって加熱室内の蒸気濃度が赤外線センサによる被加熱物の温度検出可能範囲を超えたときに、赤外線センサによる温度測定を停止又は測定温度を無効とし、蒸気濃度が温度検出可能範囲内に低下した後に、赤外線センサによる温度測定を開始又は測定温度を有効とすることで、加熱室内の蒸気に影響されることなく被加熱物の温度を正確に測定できる。
【0030】
請求項13記載の高周波加熱装置の加熱制御方法は、前記温度検出可能範囲に低下するまでの調整時間を加熱室内の各種条件に応じてそれぞれ求め、前記求めた調整時間をそれぞれテーブルへ登録しておき、該テーブルを参照することで前記調整時間を設定することを特徴とする。
【0031】
この高周波加熱装置の加熱制御方法では、風量等の加熱室内の条件に応じて変化する調整時間を各種条件毎に予め求めたテーブルを参照することで、調整時間を設定するため、加熱条件に応じた調整時間の経過後に温度測定を行うことができ、蒸気に影響されない温度検出を一層確実に実施できる。
【0032】
請求項14記載の高周波加熱装置は、被加熱物を収容する加熱室に高周波を供給する高周波発生部と、前記加熱室内に蒸気を供給する蒸気発生部と、前記加熱室の壁面に設けた検出用孔を通して加熱室内の温度を検出する赤外線センサと、前記請求項1〜6、請求項9〜13のいずれか1項記載の高周波加熱装置の加熱制御方法に基づいて制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0033】
この高周波加熱装置では、高周波発生部と、蒸気発生部と、赤外線センサとを制御部により統括制御することにより、前述の加熱制御方法を実現することができる。以て、加熱室内に蒸気を供給して高周波加熱を行うと共に、赤外線センサにより被加熱物の加熱温度を正確に検出することができる。
【0034】
請求項15記載の高周波加熱装置は、被加熱物を収容する加熱室に高周波を供給する高周波発生部と、前記加熱室内に蒸気を供給する蒸気発生部と、前記加熱室内の空気を撹拌する循環ファンと、前記加熱室の壁面に設けた検出用孔を通して加熱室内の温度を検出する赤外線センサと、前記請求項7又は請求項8記載の高周波加熱装置の加熱制御方法に基づいて制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0035】
この高周波加熱装置では、高周波発生部と、蒸気発生部と、循環ファンと、赤外線センサとを制御部により統括制御することにより、前述の加熱制御方法を実現することができる。以て、加熱室内に蒸気を供給して高周波加熱を行うと共に、赤外線センサにより被加熱物の加熱温度を正確に検出することができる。
【0036】
請求項16記載の高周波加熱装置は、前記蒸気発生部が、前記赤外線センサの温度検出範囲から実質的に外れた位置に配設されていることを特徴とする。
【0037】
この高周波加熱装置では、蒸気発生部を赤外線検出範囲外の位置に配設することにより、高温となる蒸気発生部を加熱室内に設けた構成にも係わらず、加熱室内の被加熱物の温度測定に何ら支障を与えることがなくなる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る高周波加熱装置の加熱制御方法及び高周波加熱装置の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態の蒸気発生機能付き高周波加熱装置の開閉扉を開けた状態を示す正面図、図2はこの装置に用いられる蒸気発生部の蒸発皿を示す斜視図、図3は蒸気発生部の蒸発皿加熱ヒータと反射板を示す斜視図、図4は蒸気発生部の断面図である。
【0039】
この蒸気発生機能付き高周波加熱装置100は、被加熱物を収容する加熱室11に、高周波(マイクロ波)と蒸気との少なくともいずれかを供給して被加熱物を加熱処理する加熱調理器であって、高周波を発生する高周波発生部としてのマグネトロン13と、加熱室11内で蒸気を発生する蒸気発生部15と、加熱室11内の空気を撹拌・循環させる循環ファン17と、加熱室11内を循環する空気を加熱する室内気加熱ヒータとしてのコンベクションヒータ19と、加熱室11の壁面に設けた検出用孔18を通じて加熱室11内の温度を検出する赤外線センサ20とを備えている。
【0040】
加熱室11は、前面開放の箱形の本体ケース10内部に形成されており、本体ケース10の前面に、加熱室11の被加熱物取出口を開閉する透光窓21a付きの開閉扉21が設けられている。開閉扉21は、下端が本体ケース10の下縁にヒンジ結合されることで開閉可能となっている。加熱室11と本体ケース10との壁面間には所定の断熱空間が確保されており、必要に応じてその空間には断熱材が装填されている。特に加熱室11の背後の空間は、循環ファン17及びその駆動モータ23(図8参照)を収容した循環ファン室25となっており、加熱室11の後面の壁が、加熱室11と循環ファン室25とを画成する仕切板27となっている。仕切板27には、加熱室11側から循環ファン室25側への吸気を行う吸気用通風孔29と、循環ファン室25側から加熱室11側への送風を行う送風用通風孔31とが形成エリアを区別して設けられている。各通風孔29,31は、多数のパンチ孔として形成されている。
【0041】
循環ファン17は、矩形の仕切板27の中央部に回転中心を位置させて配置されており、循環ファン室25内には、この循環ファン17を取り囲むようにして矩形環状のコンベクションヒータ19が設けられている。そして、仕切板27に形成された吸気用通風孔29は循環ファン17の前面に配置され、送風用通風孔31は矩形環状のコンベクションヒータ19に沿って配置されている。循環ファン17を回すと、風は循環ファン17の前面側から駆動モータ23のある後面側に流れ、加熱室11内の空気が、吸気用通風孔29を通して循環ファン17の中心部に吸い込まれ、循環ファン室25内のコンベクションヒータ19を通過して、送風用通風孔31から加熱室11内に送り出される。従って、この流れにより、加熱室11内の空気が、撹拌されつつ循環ファン室25を経由して循環されるようになっている。
【0042】
マグネトロン13は、例えば加熱室11の下側の空間に配置されており、マグネトロンより発生した高周波を受ける位置には電波攪拌部としてのスタラー羽根33が設けられている。そして、マグネトロン13からの高周波を、回転するスタラー羽根33に照射することにより、該スタラー羽根33によって高周波を加熱室11内に撹拌しながら供給するようになっている。なお、マグネトロン13やスタラー羽根33は、加熱室11の底部に限らず、加熱室11の上面や側面側に設けることもできる。
【0043】
蒸気発生部15は、例えば本体ケース10内に設けられている水タンク16から水を供給され、図2に示すように加熱により蒸気を発生する水溜凹所35aを有した蒸発皿35と、蒸発皿35の下側に配設され、図3及び図4に示すように蒸発皿35を加熱する蒸発皿加熱ヒータ37と、該ヒータの輻射熱を蒸発皿35に向けて反射する断面略U字形の反射板39とから構成されている。蒸発皿35は、例えばステンレス製の細長板状のもので、加熱室11の被加熱物取出口とは反対側の奥側底面に長手方向を仕切板27に沿わせた向きで配設されている。なお、蒸発皿加熱ヒータ37としては、ガラス管ヒータ、シーズヒータ、プレートヒータ等が利用できる。この蒸気発生部15は、赤外線センサ20の温度検出範囲外の位置に配設することで、高温となる蒸気発生部15を加熱室11内に設けたにも係わらず、赤外線センサ20による加熱室11内の被加熱物Mの温度測定に支障を与えることを防止している。
【0044】
図5は蒸気発生機能付き高周波加熱装置100を制御するための制御系のブロック図である。この制御系は、例えばマイクロプロセッサを備えてなる制御部501を中心に構成されている。制御部501は、主に、電源部503、記憶部505、入力操作部507、表示パネル509、加熱部511等との間で信号の授受を行っている。
【0045】
入力操作部507には、加熱の開始を指示するスタートスイッチ519、高周波加熱や蒸気加熱等の加熱方法を切り替える切替スイッチ521、予め用意されているプログラムをスタートさせる自動調理スイッチ523等の種々の操作スイッチが接続されている。
加熱部511には、高周波発生部13、蒸気発生部15、循環ファン17、赤外線センサ20等が接続されている。また、高周波発生部13は、電波撹拌部(スタラー羽根の駆動部)33と協働して動作し、蒸気発生部15には、蒸発皿加熱ヒータ37、室内気加熱ヒータ19(コンベクションヒータ)等が接続されている。
【0046】
次に、本発明の高周波加熱装置の加熱制御方法について、図6のフローチャート、図7のタイムチャート及び高周波加熱装置内部の状態を示した図8を参照しながら説明する。
加熱開始前の前処理として、加熱条件入力工程Pにより、まず、加熱しようとする被加熱物Mを皿等に載せて加熱室11内に入れ、開閉扉21を閉める。そして、加熱条件を入力操作部507により設定して、スタートスイッチをONにする(ステップ1、以降はS1と略記する)。なお、ここでは、加熱条件としてスチーム加熱を選択した場合について説明する。
【0047】
スタートスイッチがONにされると、最初に予熱工程Pが開始される(S2)。この予熱工程Pは、主に蒸気発生部15の蒸発皿加熱ヒータ37により蒸発皿35を加熱して蒸気発生の準備を行うものであって、制御部501の制御により、循環ファン17をON、高周波加熱をOFF、蒸気発生部15をONに設定する。また、赤外線センサ20を作動させて、被加熱物Mの温度を測定する。なお、高周波加熱装置100の連続使用時等に、蒸発皿35の温度に応じて、この予熱工程Pの時間を短縮できる。
【0048】
具体的には、蒸気発生部15をONに設定することで、蒸発皿加熱ヒータ37がONにされて蒸発皿35の水が加熱され、加熱室11内で蒸気Sが発生する。また、循環ファン17がONに設定されることにより、蒸発皿35から上昇する蒸気Sは、仕切板27の略中央部に設けた吸気用通風孔29から循環ファン17の中心部に吸引され、循環ファン室25を経由して、仕切板27の周部に設けた送風用通風孔31から、加熱室11内へ向けて吹き出される。吹き出された蒸気は、加熱室11内で撹拌されて、再度、仕切板27の略中央部の吸気用通風孔29から循環ファン室25側に吸引される。これにより加熱室11内と循環ファン室25に循環経路が形成される。なお、仕切板27の循環ファン17の配置位置下方には送風用通風孔31を設けずに、発生した蒸気を吸気用通風孔29に導かれるようにしている。そして、図中白抜き矢印で示すように、蒸気が加熱室11を循環することによって、被加熱物Mに蒸気が吹き付けられる。
なお、この予熱工程Pにおいては、まだ蒸気発生部15がONに設定されたばかりであり、加熱室11内の蒸気濃度が低く、赤外線センサ20による被加熱物Mの温度測定に何ら支障を与えることはない。
【0049】
予熱工程Pを終了すると、次に被加熱物判別工程Pに移る(S3)。この被加熱物判別工程Pでは、循環ファン17は引き続きONに、高周波加熱は低出力でONに、蒸気発生部15は引き続きONに設定される。なお、高周波加熱を低出力に設定することは、例えば装置の最大出力が1000Wである場合に、300〜500W程度の出力に設定することである。高周波加熱を低出力に設定することで、P工程において小負荷の場合でも過加熱にならないようにできる。また、赤外線センサ20は、常時被加熱物Mの温度を測定している。
【0050】
被加熱物判別工程Pにおいては、加熱室11内の蒸気濃度が増加して赤外線センサ20による被加熱物Mの温度測定に支障が生じる前に、被加熱物Mの温度測定を済ませ、測定された温度データによって初期温度の判定を行うと共に被加熱物Mの温度上昇率ΔTを算出する。
図9を参照して、この赤外線センサ20による被加熱物Mの温度測定について説明する。被加熱物Mは、加熱室11内に載置されているが、加熱開始時では被加熱部Mが加熱室底面のどの位置に載置されたかは不明である。そこで、赤外線センサ20により得られる加熱室11内の温度分布から、被加熱物Mの位置を割り出す。即ち、図9(a)に示すように、赤外線センサ20は、一度に複数点(n点)の温度を同時に検出しながら、赤外線センサ20自体を揺動させることで、図中矢印方向にスキャンし、加熱室11内を複数の測定点(スキャン方向にm点)に対する温度検出を行う。従って、1スキャンで、図9(b)に示すn×m点の測定点における温度検出を行うことができる。
【0051】
図9(b)に示した赤外線センサ20の1スキャンにより測定された加熱室11内の温度分布から明らかなように、通常、被加熱物Mが存在する場所の温度は、他の部分とは異なる温度が検出されるので、加熱室11内における被加熱物Mの位置を検出できる。例えば、被加熱物Mが冷凍品の場合には、加熱室11底面の温度に比べて低い温度が検出され、常温品の場合には、加熱に伴い底面より高い温度が検出される。
図10に、赤外線センサ20によるスキャンを連続的に複数回行ったときの図9(b)におけるL線位置の温度分布を示した。図10において、1スキャン幅内で温度が特に変化している温度分布のピーク位置は、図9(b)におけるL線上の被加熱物Mの位置に対応する。従って、加熱室11における被加熱物Mの位置は、この温度分布のピーク存在位置から求められる。そして、この被加熱物Mの位置に対応する温度を、加熱初期時或いは温度測定開始時まで遡って求め、被加熱物Mの初期温度を判定する。この初期温度が、所定温度以下の場合には被加熱物Mが冷凍品であると判定し、所定温度を超えている場合には常温品であると判定する。
【0052】
初期温度の判定を完了したら、図10における温度分布曲線のピーク同士を連結する線(図10における点線)の勾配から被加熱物Mの温度上昇率ΔTを求める。この温度上昇率ΔTにより、被加熱物Mの分量を推定する。これは、図11に示すように、同じ初期温度で重量の異なる2つの被加熱物M、Mを同じ条件で加熱すると、その重量に応じて温度上昇率ΔTが異なることを利用して分量を推定している。例えば、分量の少ない被加熱物Mを加熱した場合には温度上昇率がΔTとなり、分量が多い被加熱物Mを加熱した場合には温度上昇率がΔTより小さなΔTとなる。
【0053】
このようにして、被加熱物Mの初期温度の判定及び温度上昇率ΔTから被加熱物Mの分量の推定を完了して被加熱物判別工程Pを終了する。ここで、被加熱物Mの分量が多いと判断された場合には、追加加湿工程Pを実行する(S4)。この追加加湿工程Pの加湿時間は、温度上昇率ΔTに応じて設定する。例えばK/ΔT(Kは定数)として求められる。また、ここでは、被加熱物Mの分量に応じた最大加熱時間の設定も行う。以降の加熱処理においては、加熱時間の合計が最大加熱時間を超過するとき、この加熱処理を強制的に終了させる制御を行う。これにより、過加熱を防止して装置の安全性を確保できる。
【0054】
なお、追加加湿工程Pにおいては、循環ファン17を回転し続けると被加熱物Mが循環風により冷却されることがあるため、循環ファン17をOFFに切り替える。また、高周波加熱は低出力状態を維持し、蒸気発生部15も継続してONとして加熱室11に蒸気を供給する。このときの加熱室11内は、蒸気密度が高い状態となるが、必要な温度測定は既に完了しているため、赤外線センサ20による温度測定はこの時点では行わない。或いは、測定を行っても温度測定結果を制御に用いることはない。
以上の予熱工程P、被加熱物判定工程P、追加加湿工程Pを合わせて初期加湿工程と総称する。被加熱物Mが冷凍品である場合のように初期温度が低い場合や、被加熱物Mの分量が多い場合には、初期加湿工程の時間を長く設定すると以降の本加熱工程において水分が不足することがなくなる。また、初期加湿工程で、できるだけ多くの水分を被加熱体の表面に浸透させることで、加熱ムラを改善することができる。一方、被加熱物Mが常温品である場合や分量が少ない場合には、初期加湿工程の時間を短くすることで、無駄のない加湿を短時間で行うことができる。
【0055】
追加加湿工程Pの終了後は、本加熱工程Pを開始する(S5)。本加熱工程Pでは、循環ファン17をONに設定すると共に、蒸気発生部15をOFFに設定し、先に検出された被加熱物Mの分量に応じた高周波加熱の出力設定で高周波加熱を行う。例えば、被加熱物Mの分量が多かったり、冷凍品であると判定された場合には、高周波の出力を高め、強く加熱する。
このとき、高周波加熱の出力を高める設定としても、電力消費の多い蒸気発生部15をOFFに設定してあるため、高周波加熱の出力に装置の略最大出力までを利用することが可能となる。従って、加熱力を最大限に強めた加熱処理が行える。なお、本加熱工程Pでは、加熱室11へ蒸気が前段の加湿工程によって相当量供給されており、蒸気密度が不足することはない。
【0056】
本加熱工程Pの進行につれ、蒸気供給が停止しているため加熱室11内の蒸気密度は徐々に減少する傾向にあるが、一方で被加熱物Mから発生する蒸気により、必要量の蒸気は常に加熱室11に存在することになる。そして、被加熱物Mが仕上がり温度に近くなる頃には、蒸気密度が赤外線センサ20による測定可能範囲内に収まるので、赤外線センサ20による温度測定結果を監視し始める。赤外線センサ20が被加熱物Mの温度を測定して、所定の仕上がり温度まで加熱されていると検出したら、本加熱工程Pを終了する。このときに、被加熱物Mの温度ムラの検出も同時に行う。
【0057】
ここで、被加熱物Mの温度ムラの検出について説明する。通常、高周波加熱では、被加熱物Mが冷凍品の場合や、被加熱物Mの分量が比較的多い場合や、大負荷で急激に加熱した場合等には、被加熱物Mに、中央部の温度よりも周縁部の温度の方が高くなる等の温度ムラが発生することがある。そこで、このときの被加熱物M周縁部の温度と、被加熱物M中央部の温度との差を求め、この温度差が所定の許容値よりも大きい場合には、温度ムラが大きいと判断する。
【0058】
即ち、赤外線センサ20で加熱室11内の温度をスキャンした際に、図12(a)に示すように、被加熱物Mの周縁部の温度が高く、中央部の温度が低い場合には温度ムラがあると判断する。一方、図12(b)に示すように、周縁部及び中央部が一様に加熱されて昇温している場合には、温度ムラがないと判断する。この温度ムラ判定で、被加熱物Mに温度ムラはないと判定された場合には追加加熱は行わない。一方、温度ムラがあると判定された場合には追加加熱を行う。
【0059】
追加加熱が必要であると判定された場合には、追加加熱工程Pを行う(S6)。この追加加熱工程Pでは、被加熱物Mの冷却を避けるために循環ファン17をOFFに設定すると共に、高周波加熱を低出力でONに、且つ蒸気発生部15をONに設定して被加熱物Mを加湿して温度ムラをなくす。この追加加熱時間は、本加熱工程Pの加熱時間に比例して設定され、例えばT・K(ただしKは定数)から求める。通常、被加熱物Mの分量が多い場合、被加熱物Mが冷凍品のように初期温度が低い場合、大負荷で急激に加熱した場合等には、より長い追加加熱工程Pを実施する。
【0060】
追加加熱工程Pにおいて所定時間追加加熱を行った後、あるいは追加加熱工程Pを要さない場合には、本加熱工程Pの終了後、加熱終了工程Pを行う(S7)。この加熱終了工程Pでは、循環ファン17、高周波加熱、蒸気発生部15を全てOFFに設定して、加熱処理を終了する。
【0061】
このように、本実施形態の高周波加熱装置の加熱制御方法、及び高周波加熱装置によれば、蒸気が加熱室11内に充満するまでの間に被加熱物Mの初期温度判定を完了させるので、赤外線センサ20によって正確な初期温度の判定を行うことができる。また、蒸気が充満する前に温度上昇率の算出を行い、この温度上昇率から被加熱物Mの分量を推定するので、重量センサがなくても被加熱物Mの分量に基づいて自動で且つ加熱処理の強さを適正に設定することができる。
【0062】
また、スチーム加熱の中心である本加熱工程Pでは、蒸気発生部15をOFFに設定して、蒸気が加熱室11に供給されないようにしているので、蒸気濃度が徐々に減少し、加熱処理中でも赤外線センサ20により被加熱物Mの温度測定を行うことが可能となる。これにより、仕上がり検知を正確に行うことができる。また、装置の略最大出力までを高周波加熱に費やすことができ、出力レンジ幅が広く、自由度の高い加熱処理が行える。なお、本加熱工程Pでは、加熱室11内の蒸気は必要量存在しているので、被加熱物Mの水分が過剰に蒸発することはない。
【0063】
また、被加熱物Mの初期温度により冷凍品か否か等を判断し、温度上昇率により被加熱物Mの分量を推定して、追加加湿工程P及び追加加熱工程Pの必要の有無を判断し、必要な場合はその実行時間も設定する。このため、被加熱物Mをラップで包まなくても、表面の乾燥や硬化を防止でき、また温度ムラの発生を抑制することができ、ラップレスであっても被加熱物Mを良好な出来映えに加熱処理することができる。また、冷凍品あるいは常温品の区別なく、適正な加熱処理を自動で行うことができる。
【0064】
また、高周波本加熱時の加熱時間に対応して蒸気の追加供給時間を決定するので、加熱時間が長い場合には、蒸気の追加供給時間を長くして、加熱条件に応じた適度な加湿を行うことができる。そして、蒸気の追加供給を行う際に、高周波による低出力加熱を併せて行うので、被加熱物の内部からも加熱することができ、温度ムラをなくすことができる。
【0065】
次に、本高周波加熱装置の赤外線センサ20による温度測定を、データベースに予め登録された時間内に行うように制御する第2実施形態を説明する。
本実施形態においては、前述した第1実施形態における加熱初期の温度測定を、規定の時間内に行うように制御する。加熱室内に蒸気が所定濃度以上に充満すると赤外線センサ20による被加熱物の温度測定が実質的に行えなくなる。このときの、蒸気発生時から温度測定不能になるまでの時間(温度測定限界時間)は、加熱室11の容積、蒸発皿35への水の供給量、蒸発皿加熱ヒータ37の出力等の条件によって変化する。そこで、これらの条件によって温度測定不能になるまでの時間を予め実験的に割り出しておき、その情報をデータベースとして記憶部505に保存しておく。そして、実際の加熱処理時において、加熱条件に応じた前記時間を、保存されたデータベースの情報から求め、この時間までの間に赤外線センサ20による温度測定を完了させるようにする。
【0066】
このように指定された時間内に温度測定を行うことで、被加熱物の温度を加熱室内の蒸気の影響を受けることなく、確実かつ正確に測定することが可能となる。
以下に、具体的なデータベースの内容を一例として説明するが、本発明はこの方法に限定されるものではない。
図13は加熱室11の容量と蒸発皿の水の量との関係から1つのテーブルが選択されるルックアップテーブルを示す説明図であり、図14は選択されたテーブルの内容を示す説明図である。
図13に示すように、加熱室11の容積を任意の幅をもってランク分け(A,B,C,D,E,…)すると共に、蒸発皿の水の量を複数段階にレベル分け(1,2,3,4,5,…)する。そして、加熱室容量の各ランク毎に、それぞれ複数段階にレベル分けしたテーブル(A−1〜F−5等)を用意する。
【0067】
これら各テーブルには、予め実験等により求めた蒸気発生量の特性を入力しておく。即ち、図14に示すように、例えば蒸発皿加熱ヒータ37の出力を300[W],450[W],600[W]等の任意の設定値として、出力設定値毎に求めた蒸気発生量の経過時間に対する変化を求め、これらを登録しておく。登録内容には、赤外線センサの温度検出限界に達するまでの時間t1,t2,t3も含まれる。
【0068】
いま、加熱室11の容積が30[l]、蒸発皿の水の量が45[ml]、蒸発皿加熱ヒータ37の出力が450Wであると仮定する。この場合には、図13に示すルックアップテーブルのE−4が選択され、図14に示すE−4のテーブルが参照される。図14に示すように、E−4の蒸気発生特性によれば、蒸発皿加熱ヒータが450Wの場合、赤外線センサ20の温度検出限界に、加熱開始後の時間t2経過後に到達する。そのため、この条件の場合は、図7に示す被加熱物判定工程Pの終了時点を時間t2の経過時、或いは時間t2以内に設定する加熱制御を行こととする。これにより、加熱条件が変化しても被加熱物の温度測定が一層正確に行え、また、温度検出限界までの時間が単純なテーブル参照処理により設定できるので、制御部の計算負担が軽減されると共に迅速な設定が可能となる。
【0069】
また、上記以外にも、例えば加熱室容量、蒸発皿の水量、蒸発皿加熱ヒータの出力等の種々の条件をパラメータとして、予め数式を設定しておき、この数式に基づいて、実際の加熱処理時における赤外線センサ20による温度測定時間を決定するものであってもよい。この場合には、データベースの容量を少なく抑えることができる。
【0070】
さらに、本実施形態においては、前述した第1実施形態における加熱途中で、加熱室11内の蒸気濃度が赤外線センサ20の温度検出可能範囲を超えたときに、規定の調整時間の間、加熱室11内の空気を積極的に循環又は入れ替えを行ったり、或いはそのままの状態にして、蒸気濃度が温度検出可能範囲内に低下した後、温度測定を行うように制御する。
【0071】
加熱室内に蒸気が所定濃度以上に充満すると、赤外線センサ20による被加熱物の温度測定が実質的に行えなくなる。そこで、このときの加熱室内の空気を循環又は入れ替えを行ったり、そのままの状態にして加熱室11内の蒸気濃度を温度検出可能範囲にまで低下させる。これに必要な調整時間は、空気の循環又は入れ替えのための風量等、加熱室11内の条件に応じて変化する。そのため、これらの条件によって変化する温度測定可能になるまでの調整時間を予め実験的に求めて、その情報をデータベースとして記憶部505にそれぞれ保存しておく。そして、実際の加熱処理時において、各条件に応じた調整時間を、保存されたデータベースの情報から求め、この調整時間の間は赤外線センサ20による温度測定を停止或いは測定結果を無効として、調整時間の後に温度測定を行うようにする。これにより、被加熱物の温度を加熱室内の蒸気の影響を受けることなく、確実かつ正確に測定することができる。
【0072】
なお、本発明の高周波加熱装置の加熱制御方法、及び高周波加熱装置は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。
【0073】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係る高周波加熱装置の加熱制御方法、及び高周波加熱装置によれば、加熱室内の蒸気が充満するまでの間に、被加熱物の温度を赤外線センサにより測定するので、蒸気の影響を受けることなく被加熱物の温度を正確に求めることができる。また、高周波本加熱の際に、加熱室への蒸気の供給を停止するので、加熱室内の蒸気濃度が必要以上に増大することを抑制して、高周波本加熱時においても赤外線センサによる被加熱物の温度検出を可能にできる。また、赤外線センサにより得られた初期温度及び温度上昇率を基に、加熱の強弱や追加加熱等を任意に設定するので、被加熱物を特にラップ等で包まなくても、表面の乾燥や硬化を防止し、温度ムラをも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高周波加熱装置の開閉扉を開けた状態を示す正面図である。
【図2】蒸気発生部の蒸発皿を示す斜視図である。
【図3】蒸気発生部の蒸発皿加熱ヒータと反射板を示す斜視図である。
【図4】蒸気発生部の断面図である。
【図5】蒸気発生機能付き高周波加熱装置を制御するための制御系のブロック構成図である。
【図6】本発明に係る高周波加熱装置の加熱制御方法のフローチャートである。
【図7】本発明に係る高周波加熱装置の加熱制御方法における各部位の制御状態を示すタイムチャートである。
【図8】加熱時における高周波加熱装置内部の状態を示す断面図である。
【図9】(a)は赤外線センサによる被加熱物の温度測定の状態を示す斜視図であり、(b)は温度測定の結果を示すグラフである。
【図10】赤外線センサによるスキャンを連続的に行ったときの図9(b)におけるL線位置の温度分布を示すグラフである。
【図11】分量の違いによる加熱時間と測定温度との関係を示すグラフである。
【図12】赤外線センサにより検出された測定温度を示すグラフであり、(a)は温度ムラがある場合、(b)は均一に加熱された場合を示す。
【図13】加熱室の容量と蒸発皿の水の量との関係から1つのテーブルが選択されるルックアップテーブルを示す説明図である。
【図14】選択されたテーブルの内容を示す説明図である。
【符号の説明】
11 加熱室
13 高周波発生部
15 蒸気発生部
17 循環ファン
20 赤外線センサ
20a 検出用孔
100 高周波加熱装置
501 制御部
M 被加熱物
ΔT 温度上昇率
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地
【出願日】 平成14年6月5日(2002.6.5)
【代理人】 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平

【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳

【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光

【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛

【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】栗宇 百合子

【公開番号】 特開2004−11994(P2004−11994A)
【公開日】 平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願番号】 特願2002−164836(P2002−164836)