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【発明の名称】 管体挿入台車
【発明者】 【氏名】石井 肇
【氏名】斎藤 泰彦
【氏名】辻本 潤
【課題】異なる外径の管体に取り付けて使用可能であり、さらに、十分な電気絶縁性を確保し得る管体挿入台車を提供する。

【解決手段】管体挿入台車10は、管体12の上部外周を覆う樹脂製パイプスペーサーからなる上部バンド30と、管体12の下部外周を覆って支持するとともに複数の軸方向走行用のローラ21、22を回転自在に支持するローラ支持部42を備える下部バンド40と、によって構成されている。それぞれのバンドは、可撓性を有する樹脂材料で形成され、周方向端部には接続用のフランジ部33、34、43を備え、かつ、それぞれのバンドの内周長の和が管体の外周長より短くされ、異なる外径の管体に対して同一周長とした下部バンドと、市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品から選択される上部バンドとを用いて、管体を締め付け固定する。さらに、ローラ支持部の撓みを抑える樹脂製補強板50をローラ支持部に沿わせて配置した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行して敷設された鞘管(11)内に管体(12)を挿入配管する際に、前記管体(12)に取り付けて用いられる管体挿入台車において、
当該台車は、前記管体(12)の上部外周を覆う樹脂製パイプスペーサーからなる上部バンド(30)と、前記管体(12)の下部外周を覆って支持するとともに複数の軸方向走行用のローラ(21、22)を回転自在に支持するローラ支持部(42)を備える下部バンド(40)と、によって構成され、
前記それぞれのバンド(30、40)は、可撓性を有する樹脂材料で形成され、周方向端部には接続用のフランジ部(33、34、43)を備え、かつ、前記それぞれのバンド(30、40)の内周長の和が前記管体(12)の外周長より短くされ、
異なる外径の管体に対して同一周長とした下部バンド(40)と、市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品から選択される上部バンド(30)とを用いて、前記管体(12)を締め付け固定し、
さらに、前記ローラ支持部(42)の撓みを抑える樹脂製補強板(50)をローラ支持部(42)に沿わせて配置したことを特徴とする管体挿入台車。
【請求項2】
前記上部バンド(30)として、市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品から選択した複数のセグメントを組み合わせたことを特徴とする請求項1に記載に管体挿入台車。
【請求項3】
前記下部バンド(40)に備えた2個の前記ローラ支持部(42)を、前記管体(12)の挿入方向に対してローラ回転面を外向きに傾けて前記下部バンド(40)と一体成形し、ローリング防止台車としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の管体挿入台車。
【請求項4】
前記ローラ(21、22)を、電気絶縁性を有する樹脂材料によって形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れか一つに記載の管体挿入台車。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、先行して敷設された鞘管内に管体を挿入配管する際に、管体に取り付けて用いられる管体挿入台車の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガス導管などの管体を河川、道路、鉄道などを横断して地中に設置する場合において、土圧の変動による不等沈下などから管体を保護するために、保護管つまり鞘管の内側に管体を通す二重構造配管が採用されている。なお、鞘管には、既設管更新工法やパイプインパイプ工法における老朽化した既設管も含まれる。
【0003】
先行して敷設された鞘管内に管体を挿入配管する工法として、挿入配管距離が短い場合は、プラスチック製のパイプスペーサー(例えば、株式会社ニシヤマ製の「パイピングスムーサー」)を管体の外周に装着して挿入できるが、挿入距離が長くなると摩擦抵抗が増大するため、ローラを備える管体挿入台車を管体に取り付け、管体の防食被覆層の損傷を防止しつつ、管体の挿入作業の容易化を図る技術が知られている。
【0004】
従来の管体挿入台車として、鞘管内に挿入する管体の適宜間隔毎に、一対の軸方向走行用のローラを備えた下部リング取り付け具(下部バンド)を、上部リング取り付け具(上部バンド)を用いて締め付け固定した台車が知られている(例えば、特許文献1参照)。この台車は、前記ローラを挿入方向に対して外向きになるように傾けて設けることにより、移動時に管体が回転して転倒ないしローリングしないようにされている。
【0005】
上記特許文献1に開示されている台車の上部/下部のリング取り付け具の材質については特に明示されていないが、通常はスチールバンドが用いられ、管体との間にゴム板を介在させて管体の塗膜を傷つけないようにされている。上記台車では、使用する管体のサイズ(例えば、呼び径で400A、500A、600A)毎に専用の上部/下部のリング取り付け具が製作され、用いられている。
【0006】
また、従来の他の管体挿入台車として、複数に分割された可撓性を有しない樹脂製の分割バンドを管体の外周に締め付け固定する台車も知られている。この台車では、可撓性を有しない硬質樹脂からなるバンドが硬いことから、使用する管体のサイズ毎に専用の分割バンドが製作され、用いられている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−21063号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の台車のように、使用する管体のサイズ毎に専用の上部/下部のリング取り付け具を製作したのでは、製造コストの増加が避けられない。また、スチールバンドの場合には、樹脂射出成形のように同一形状品を量産できず、この点からも、製造コストの増加が避けられない。
【0009】
後者の台車においても、使用する管体のサイズ毎に専用の分割バンドを製作したのでは、多種類の樹脂成形金型を製作する必要があるため、製造コストの増加が避けられない。
【0010】
ところで、鞘管内に管体を挿入配管した台車を取り外さないで埋め殺し、まわりに土砂や発泡モルタルなどのグラウト材を注入する場合は、迷走電流の流入や流管体に流す電気防食電流を遮断するため絶縁状態を確保する必要がある。
【0011】
前者の台車においては、スチールバンドと管体との間にゴム板を介在させることによって、電気絶縁性はある程度確保されているが、十分なものとは言えない。
【0012】
このため、例えば、呼び径で400A、500A、600Aというように異なる外径の管体に取り付けて使用可能な汎用性に優れ、さらに、十分な電気絶縁性を確保した管体挿入台車が要望されている。
【0013】
本発明は、このような要望を満足するためになされたものであり、その目的は、例えば呼び径で400A、500A、600Aというように異なる外径の管体に取り付けて使用可能であり、さらに、十分な電気絶縁性を確保し得る管体挿入台車を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記する手段により達成される。
【0015】
(1)先行して敷設された鞘管内に管体を挿入配管する際に、前記管体に取り付けて用いられる管体挿入台車において、
当該台車は、前記管体の上部外周を覆う樹脂製パイプスペーサーからなる上部バンドと、前記管体の下部外周を覆って支持するとともに複数の軸方向走行用のローラを回転自在に支持するローラ支持部を備える下部バンドと、によって構成され、
前記それぞれのバンドは、可撓性を有する樹脂材料で形成され、周方向端部には接続用のフランジ部を備え、かつ、前記それぞれのバンドの内周長の和が前記管体の外周長より短くされ、
異なる外径の管体に対して同一周長とした下部バンドと、市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品から選択される上部バンドとを用いて、前記管体を締め付け固定し、
さらに、前記ローラ支持部の撓みを抑える樹脂製補強板をローラ支持部に沿わせて配置したことを特徴とする管体挿入台車。
【0016】
(2)前記上部バンドとして、市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品から選択した複数のセグメントを組み合わせたことを特徴とする上記(1)に記載に管体挿入台車。
【0017】
(3)前記下部バンドに備えた2個の前記ローラ支持部を、前記管体の挿入方向に対してローラ回転面を外向きに傾けて前記下部バンドと一体成形し、ローリング防止台車としたことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の管体挿入台車。
【0018】
(4)前記ローラを、電気絶縁性を有する樹脂材料によって形成したことを特徴とする上記(1)乃至(3)のうちの何れか一つに記載の管体挿入台車。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る管体挿入台車10が取り付けられた管体12を鞘管11内に挿入配管している状態を挿入方向に沿う後方側(発進坑側)から見た正面図、図2は、管体12に取り付けられた管体挿入台車10の側面図、図3は、管体12の挿入方向に対して管体挿入台車10のローラ21、22の回転方向が傾いている状態を示す図1の矢印3に沿う矢視図、図4は、管体挿入台車10の上部バンド30および下部バンド40を組み付ける前の状態を示す正面図、図5(A)は、下部バンド40を示す図1の矢印5に沿う矢視図、図5(B)は、下部バンド40のローラ支持部42に沿わせて配置される樹脂製補強板50を示す図である。
【0021】
図1および図2に示すように、管体挿入台車10は、先行して敷設された鞘管11内にガス管などの管体12を挿入配管する際に、管体12の外周の長手方向に適宜の間隔で取り付けて用いられる。
【0022】
この管体挿入台車10は、概説すれば、管体12の上部外周を覆う樹脂製パイプスペーサーからなる上部バンド30と、管体12の下部外周を覆って支持するとともに複数の軸方向走行用のローラ21、22を回転自在に支持するローラ支持部42を備える下部バンド40と、によって構成されている。それぞれのバンド30、40は、可撓性を有する樹脂材料で形成され、周方向端部には接続用のフランジ部33、34、43を備え、かつ、それぞれのバンド30、40の内周長の和が管体12の外周長より短くされ、異なる外径の管体に対して同一周長とした下部バンド40と、市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品から選択される上部バンド30とを用いて、管体12を締め付け固定している。さらに、ローラ支持部42の撓みを抑える樹脂製補強板50をローラ支持部42に沿わせて配置してある。以下、詳述する。
【0023】
なお、本明細書において、「異なる外径」のレベルは、数ミリ程度の外径差を意図したものではなく、例えば、呼び径で400A、500A、600Aというような管体間の外径差を意図したものである。
【0024】
まず、前記ローラ21、22は、図1に示すように、管体12の外周斜め下方の左右対称位置に2輪を一対として配置されている。鞘管11および管体12の軸直交断面で見て、一対のローラ21、22は、鞘管11の中心から半径方向に延長される線とローラ回転軸とが略直交するように設けられている。このようにすれば、ローラ21、22は、鞘管11の内周面に略直交するように接するため、円滑な走行が確保される。
【0025】
図3を参照して、管体12の挿入方向ないしローラ21、22の進行方向が矢印Sで示される。各ローラ21、22は、その回転面が挿入方向Sに対して外向きに傾けて取り付けられている。挿入方向Sからの開き角度θは、1度〜5度程度である。本実施形態では、開き角度θを4度に設定した。なお、図3中の符号「49」は、下部バンド40の進行方向を確認するために、下部バンド40に浮き出し形成された矢印あるいは下部バンド40に貼り付けられた矢印シールを示している。
【0026】
各ローラ21、22を挿入方向Sに対して外向きに傾けることにより、管体12の回転を抑えつつ、管体12を鞘管11内に挿入することができる。例えば、図1に示される状態から管体12が時計回り方向に回転した場合には、図中右側のローラ21にかかる荷重が図中左側のローラ22にかかる荷重よりも大きくなる。ローラ21の回転力とローラ22の回転力とのバランスがくずれるため、管体12は、荷重の大きい方のローラ21の回転方向に回転しようとする。この例では、管体12は、反時計回り方向に回転することになる。この結果、回転した管体12は、各ローラ21、22の回転力がバランスする図1に示される位置に復帰する。このように、管体12を鞘管11内に挿入しているときに管体12がいずれかの方向に回転してローラ21、22の位置が図1に示される正規位置からずれると、常に、ローラ21、22の位置ずれを戻そうとする回転力が生じる。これにより、管体12をほとんど回転させずに、当該管体12を挿入することができる。
【0027】
前記上部バンド30は、管体12の上部外周を覆う樹脂製パイプスペーサーからなる。一般に、樹脂製パイプスペーサーは、管体の外周に装着され、鞘管内周面上を摺動させながら管体を挿入配管する際に広く用いられている。パイプスペーサーは、例えば、株式会社ニシヤマから「パイピングスムーサー」名で市販されている。市販の樹脂製パイプスペーサーには、周長が異なる複数種類の規格品がある。
【0028】
図1を参照して、実施形態における上部バンド30としては、市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品から選択した複数(図示例では2個)の同形状のセグメント31、31を組み合わせてある。セグメント31は、管体12の外周を覆うフレーム部32と、フレーム部32の周方向図中上端に設けられた接続用の上フランジ部33と、フレーム部32の周方向図中下端に設けられた接続用の下フランジ部34と、フレーム部32の外周から径方向外方に向けて突出して設けられたランナー35と、を有している。これらフレーム部32、上フランジ部33、下フランジ部34およびランナー35は、樹脂材料から射出成形などにより一体的に形成されている。上フランジ部33には、ボルト36を挿通する複数個の通孔(図示例では3個)が形成されている。上フランジ部33同士をボルト36を介して接続することにより、上部バンド30が構成される。下フランジ部34には、下部バンド40と接続するためのボルト44を挿通する通孔(図示例では2個)が形成されている。
【0029】
前記下部バンド40は、管体12の下部外周を覆って支持するとともに複数の軸方向走行用のローラ21、22を回転自在に支持するローラ支持部42を備えている。管体12の外周を覆うフレーム部41の周方向両端のそれぞれには、接続用のフランジ部43が設けられている。これらフレーム部41、フランジ部43およびローラ支持部42は、樹脂材料から射出成形などにより一体的に形成されている。下部バンド40のフレーム部41は、フランジ部43と下フランジ部34とをボルト44を介して接続することにより、上部バンド30の周方向端部に接続される。
【0030】
下部バンド40は、異なる外径の管体に対して同一周長とされる一方、上部バンド30は、市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品から選択され、これら下部バンド40と上部バンド30とを用いて、管体12を締め付け固定している。
【0031】
前述したように上部バンド30は市販されている規格品から選択したセグメント31を複数個組み合わせて使用しているが、セグメント31の選択にあたっては、それぞれのバンド30、40の内周長の和が管体12の外周長に近く、かつ、短くなるようにしてある。この周長差により、上部バンド30と下部バンド40との間にクリアランスCL1が生じ、セグメント31の上フランジ部33間にクリアランスCL2が生じ、上部バンド30と下部バンド40とを管体12に締め付け固定できることになる。
【0032】
図示例では、上部バンド30および下部バンド40は、管体12の外周に施されている防食塗膜を保護するゴム板60を介して、ボルト36、44により相互に接続されて締め付けられ、管体12の外周に取り付けられている。このようにゴム板60を被覆する場合は、管体12の外周長は、介在したゴム板60の厚さを加味した外径寸法での外周長である。
【0033】
なお、下部バンド40が覆うべき管体12の下部外周の周方向長さは、特に限定されず、適宜選択できる。図1は、呼び径400Aの管体12に下部バンド40を取り付けた状態が示され、この場合には、下部バンド40の周長は、管体12の中心を基準にして約95度の範囲で管体12の下部外周を覆う長さに設定されている。同一の下部バンド40を呼び径300Aの管体に取り付けたときには、約120度の範囲で管体の下部外周を覆い、呼び径500Aの管体に取り付けたときには、約80度の範囲で管体の下部外周を覆うことになる。
【0034】
ローラ支持部42は、フレーム部41の外周から外方に向けて突出する一対の支持リブ45a、45bを有している。一対の支持リブ45a、45bは、所定の間隔を隔てて設けられている。ローラ21、22は、支持リブ45a、45bに貫通して設けられたローラシャフト46を介して、支持リブ45a、45bに回転自在に支持されている。ローラシャフト46は、ボルト46aおよびナット46bを備え、割りピン46cによりナット46bの戻り回転が防止されている。
【0035】
図3に示すように、一対の支持リブ45a、45bは、管体12の挿入方向Sに対して外向きに傾けて設けられ、ローラ21、22の開き角度θを定めている。支持リブ45bは、周方向に伸びる2個の補強リブ47bを介して、フレーム部41に接続されている。また、支持リブ45aは、図5(A)にも示すように、周方向に伸びる3個の補強リブ47aを介して、フレーム部41およびフランジ部43に接続されている。補強リブ47bの後方面には、下部バンド40の後方面であることを表すシール48が貼り付けられている(図1、図4参照)。作業者の注意を喚起するため、シール48を赤色などに着色するのが好ましい。作業者は、後方面側からシール48を目視確認することにより、下部バンド40の前後が挿入方向に沿って正しく取り付けられていることを容易に確認できる。
【0036】
前記樹脂製補強板50は、図5(A)(B)に示すように、ローラ支持部42の撓みを抑えるために、ローラ支持部42に沿わせて配置されている。樹脂製補強板50には、ローラシャフト46が挿通される孔51と、中央の補強リブ47aに挿し込まれる凹部52とが形成されている。樹脂製補強板50は、ローラシャフト46のボルト46aと支持リブ45aとの間で挟持される。ローラ21、22には、下部バンド40の周方向外方に向けて拡がろうとする方向の荷重が作用している。このため、樹脂製補強板50は、一対の支持リブ45a、45bのうち、少なくとも、下部バンド40の周方向外方側に位置する支持リブ45aに沿わせて配置すればよい。
【0037】
下部バンド40およびパイプスペーサーからなる上部バンド30は、可撓性を備える樹脂材料から形成され、樹脂製補強板50は、ローラ支持部42の撓みを抑える強度を備える樹脂材料から形成されている。図4に示すように、上部バンド30を構成する各セグメント31は、矢印Aで示される方向に撓みないし変形自在であり、下部バンド40は、矢印Bで示される方向に撓みないし変形自在である。上部バンド30および下部バンド40が撓みないし変形することにより、各フレーム部32、41の曲率半径が変化する。また、ボルト36、44を締結したときに、上フランジ部33相互間の周方向のクリアランスCL2と、下フランジ部34とフランジ部43との間の周方向のクリアランスCL1とを調整することによっても、各フレーム部32、41の曲率半径が変化する。したがって、上部バンド30および下部バンド40の撓みが可能な範囲内、かつ、周方向のクリアランスCL1、CL2の調整が可能な範囲内において、上部バンド30および下部バンド40を異なる外径の管体12に取り付けることが可能となる。
【0038】
下部バンド40におけるローラ支持部42は可撓性を備えるが、本実施形態では、ローラ支持部42に樹脂製補強板50を沿わせて配置し、ローラ支持部42の撓みを抑えている。このため、ローラ支持部42に荷重がかかっても、当該ローラ支持部42が倒れたり、ローラシャフト46を挿通する孔が変形したりすることを防止できる。これにより、ローラ21、22の円滑な回転を維持することができ、管体12の挿入作業を円滑に行うことができる。
【0039】
本明細書において、「可撓性を備える樹脂材料」という用語は、上部バンド30および下部バンド40を異なる外径の管体12に取り付けて共用するという目的を達成し得る範囲内において選択可能な樹脂材料、と定義される。「可撓性を備える樹脂材料」には、異なる外径の管体12に取り付けて共用するために撓みないし変形させても破壊しない曲げ強さおよび曲げ弾性率が必要である。また、「ローラ支持部42の撓みを抑える強度を備える樹脂材料」という用語は、選択した「可撓性を備える樹脂材料」との関連において、ローラ支持部42の撓みを抑えてローラ21、22の円滑な回転を維持するという目的を達成し得る範囲内において選択可能な樹脂材料、と定義される。具体的には、上部バンド30および下部バンド40は、柔軟性のあるポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂を使用して、射出成形により製作される。また、樹脂製補強板50は、圧縮強さが強い樹脂、例えば、圧縮強さ130MPa以上の樹脂から製作するのが好ましい。具体的には、樹脂製補強板50は、圧縮強さが130MPa以上である、繊維強化プラスチック(FRP)、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などから製作される。
【0040】
上部バンド30および下部バンド40は樹脂材料から形成されているため、ローラ21、22を非絶縁性材料(例えば、金属)から形成することもできるが、鞘管11と管体12との電気的な絶縁をより確実なものとするために、ローラ21、22のそれぞれは、電気絶縁性の樹脂材料、例えば、MCナイロンから形成するのが好ましい。
【0041】
上記のように構成した本実施形態によれば、ローラ21、22が取り付けられた1種類の下部バンド40を異なる外径の管体12に取り付けて使用することができるため、管体12の外径寸法ごとに専用の下部バンド40を製作する必要がない。換言すれば、予め準備しておくべき下部バンド40の種類を減らすことができる。このため、下部バンド40を製作するための例えば射出成形型の個数を減らすことができ、型費の低減を通して、下部バンド40の製造コストの増加を抑制することができる。さらに、上部バンド30は市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品から選択しているので、汎用品を使用することができ、コスト的にも有利である。したがって、本実施形態の管体挿入台車10は、異なる外径の管体12に取り付けて使用することができるという汎用性に富むとともに、コスト的に優れたものとなる。
【0042】
また、上部バンド30として、市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品から選択した複数のセグメント31、31を組み合わせたので、対象となる管体12の外径に合致した上部バンド30を簡単かつ安価に得ることができる。
【0043】
また、下部バンド40に備えた2個のローラ支持部42を、管体12の挿入方向に対してローラ回転面を外向きに傾けて下部バンド40と一体成形して、ローリング防止台車としたので、ローラ21、22の開き角度θなどの製作精度の確保を図ることができる。
【0044】
また、ローラ21、22のそれぞれを電気絶縁性の樹脂材料から形成したので、迷走電流が鞘管11を通っても、管体12における電食(電気化学的腐食)の発生をより一層防止することができる。
【0045】
管体挿入台車10は、締め付け用のボルト36、44やローラシャフト46を除いて、樹脂材料からなるため、軽量化を図ることができ、取り扱いが容易で、取り付け時の作業性も向上する。
【0046】
なお、同形状のセグメント31、31から上部バンド30を構成する場合を図示したが、本発明はこの場合に限定されず、複数のセグメントは非対称の形状であってもよい。
【0047】
また、バンド30、40を締結するためのボルト36、44や、ローラシャフト46などを樹脂製品としてもよい。かかる構成の場合には、電食の発生をより一層防止することができる。
【0048】
【実施例】
鞘管内に挿入配管される呼び径400A、500A、600Aの異なる外径の管体に装着固定される管体挿入台車の実施例について説明する。
【0049】
図6(A)(B)(C)は、それぞれ、呼び径400A、500A、600Aの管体400、500、600に装着固定される管体挿入台車を示す図である。
【0050】
ローラ支持部42を一体成形したポリプロピレン製の下部バンド40は、上記3種類の異なる管体400、500、600に共通して使用される。
【0051】
また、上部バンドは市販されている規格品から選択したポリプロピレン製のセグメント480、640を複数個組み合わせて使用した。セグメント480、640の選択にあたっては、下部バンド40の周長と上部バンドのそれぞれの周長の和が管体400、500、600の外周長(ゴム板を被覆する場合は、被覆したゴム板を含む外周長)に近く、かつ、短くなるようにした。この周長差により、上部バンドと下部バンド40との間およびセグメント480、640の接合端部間にクリアランスが生じ、上部バンドと下部バンド40とを管体400、500、600に締め付け固定できることになる。
【0052】
具体的に設定した下部バンド40と上部バンドのセグメント480、640の組み合わせ例を表1に示す。
【0053】
呼び径400A、500A、600Aの管体に共通して同じ周長355mmの下部バンド40を使用した。上部バンドは、株式会社ニシヤマから「パイピングスムーサー」名で市販されているセグメントの規格品からもっとも適した組み合わせを選択して用いた。すなわち、400AではタイプLS−480のセグメント480を2個用い、500AではタイプLS−640のセグメント640を2個用いた。また、600AではタイプLS−640のセグメント640を1個、タイプLS−480のセグメント480を2個の組み合わせとした。
【0054】
これらのセグメント480、640の選択により、下部バンド40および上部バンドの周長の和Σがゴム板厚を含むそれぞれの管体外周長Dより30〜24mm短くなり、適切な締め代ΔLが得られた。
【0055】
【表1】


【0056】
【発明の効果】
請求項1に記載の管体挿入台車によれば、呼び径で例えば400A、500A、600Aというように異なる外径の管体に下部バンドを共通して使用でき、さらに、市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品から選択される上部バンドを用いているので、コスト的に優れ、さらに、十分な電気絶縁性を確保でき、しかも、樹脂製補強板によりローラ支持部の撓みを抑えているので、ローラの円滑な回転を維持して管体の挿入作業を円滑に行うことが可能となる。
【0057】
請求項2に記載の発明によれば、市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品から選択した複数のセグメントを組み合わせて上部バンドとしたので、対象となる管体の外径に合致した上部バンドを簡単かつ安価に得ることができる。
【0058】
請求項3に記載の発明によれば、ローリング防止台車として使用することが可能となる。
【0059】
請求項4に記載の発明によれば、電気絶縁性をより一層確保して、管体における電食の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る管体挿入台車が取り付けられた管体を鞘管内に挿入配管している状態を挿入方向に沿う後方側(発進坑側)から見た正面図である。
【図2】管体に取り付けられた管体挿入台車の側面図である。
【図3】管体の挿入方向に対して管体挿入台車のローラの回転方向が傾いている状態を示す図1の矢印3に沿う矢視図である。
【図4】管体挿入台車の上部バンドおよび下部バンドを組み付ける前の状態を示す正面図である。
【図5】図5(A)は、下部バンドを示す図1の矢印5に沿う矢視図、図5(B)は、下部バンドのローラ支持部に沿わせて配置される樹脂製補強板を示す図である。
【図6】図6(A)(B)(C)は、それぞれ、呼び径400A、500A、600Aの管体に装着固定される管体挿入台車を示す図である。
【符号の説明】
10…管体挿入台車
11…鞘管
12…管体
21、22…ローラ
30…上部バンド
31…セグメント
33、34…上下のフランジ部(接続用のフランジ部)
40…下部バンド
41…フレーム部
42…ローラ支持部
43…接続用のフランジ部
45a、45b…支持リブ
50…樹脂製補強板
480、640…市販の樹脂製パイプスペーサーの規格品のセグメント
CL1、CL2…クリアランス
【出願人】 【識別番号】000134903
【氏名又は名称】株式会社ニシヤマ
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成14年9月18日(2002.9.18)
【代理人】 【識別番号】100072349
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄

【識別番号】100102912
【弁理士】
【氏名又は名称】野上 敦

【識別番号】100110995
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰男

【識別番号】100111464
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悦子

【識別番号】100114649
【弁理士】
【氏名又は名称】宇谷 勝幸

【公開番号】 特開2004−108498(P2004−108498A)
【公開日】 平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願番号】 特願2002−272130(P2002−272130)