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【発明の名称】 燃料電池/ランキンエンジンシステム
【発明者】 【氏名】齋藤 武雄

【要約】 【課題】従来技術では、水素と酸素から電力を得ることの可能な燃料電池において排出される温水からの排熱を効率よく回収することは困難であった。とくに燃料電池自動車においてはエアコンなどの補機類の動力源が不足しているという問題点がある。さらに、燃料電池からの排水が利用されていないという問題点および寒冷地におけるスタック凍結などの問題点がある。

【解決手段】本発明では、燃料電池からの排熱をランキンエンジンによって効率よく回収することによってシステム全体の高効率化を実現できる。さらに燃料電池自動車への導入することによってエアコンなどの補機類の動力源を確保できる効果がある。さらに、燃料電池からの排水をエネルギー貯蔵タンクに一時貯えることによって、蒸気および高温水としての利用が可能となり、空調設備や給湯、寒冷地における凍結防止用熱媒などとして活用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池からの排熱を熱源として駆動するランキンサイクルを形成し、膨張機(エキスパンダ)で動力を取り出し、発電、蓄電・蓄熱によるエネルギー回収・利用を行うという特徴を有する燃料電池/ランキンエンジンシステム。
【請求項2】
燃料電池を搭載する自動車などの移動体において、燃料電池からの排熱を熱源として駆動するランキンサイクルを形成し、膨張機(エキスパンダ)で動力を取り出し、直接利用、もしくは発電,蓄電・蓄熱によるエネルギー回収・利用を行い、動力のほかエアコンなどの補機類の動力源として用いるという特徴を有する燃料電池/ランキンエンジンシステム。
【請求項3】
燃料電池からの排水そのものを蓄熱タンクに貯え,水蒸気および温水として利用するという特徴を有する請求項1および請求項2記載の燃料電池/ランキンエンジンシステム。
【請求項4】
燃料電池からの排水そのものを蓄熱タンクに貯え,寒冷地での凍結防止用の熱媒に利用するという特徴を有する請求項1および請求項2記載の燃料電池/ランキンエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、燃料電池の排熱・排水を利用したエネルギー回収・利用に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、二酸化炭素(CO2)による地球温暖化などの環境問題の顕在化に伴って、より環境負荷の少ないエネルギー変換装置が求められている。燃料電池は水素と酸素を反応させることによって電力を得るエネルギー変換装置であり、排出物は水のみとなることから将来有望視されている。とくに道路運輸部門における石油消費量は全体の約40%にものぼり、自動車に内燃エンジンの代りに燃料電池を搭載した燃料電池自動車が開発されている。
【0003】
しかしながら、燃料電池から排出される水は、80℃〜130℃といった温度範囲で,燃焼した水素の約9倍の質量が水として排出される.もし、この排熱および排水をエネルギー回収・利用することができれば、システム全体の効率を向上させることができる。とくに燃料電池自動車においては、水素の持つ化学エネルギーの約70%が排熱として棄てられるため,動力のほかエアコンなどの補機類の動力源として利用できる。さらに現状の燃料電池では,寒冷地での使用に際して,水によってスタックなどが凍結するという問題点がある.
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする問題点の第一は、従来技術では、燃料電池からの排熱を効率よく回収することが困難である点である。また第二は、燃料電池から排出される水を有効利用していない点である.また第三は,とくに寒冷地での燃料電池の使用に際して,水によってスタックなどが凍結する点である.第四は,燃料電池自動車において、エアコンなどの補機類の動力源が不足していることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決するために、請求項1の発明は、燃料電池からの排熱を熱源として駆動するランキンサイクルを形成し、膨張機(エキスパンダ)で動力を取り出し、発電、蓄電・蓄熱によるエネルギー回収・利用を行うという特徴を有する燃料電池/ランキンエンジンシステムである。
【0006】
また、請求項2の発明は、燃料電池を搭載する自動車などの移動体において、燃料電池からの排熱を熱源として駆動するランキンサイクルを形成し、膨張機(エキスパンダ)で動力を取り出し、直接利用、もしくは発電,蓄電・蓄熱によるエネルギー回収・利用を行い、エアコンなどの補機類の動力源として用いるという特徴を有する燃料電池/ランキンエンジンシステムである。
【0007】
また、請求項3の発明は、燃料電池からの排水そのものを蓄熱タンクに貯え,水蒸気および温水として利用するという特徴を有する請求項1および請求項2記載の燃料電池/ランキンエンジンシステムである。
【0008】
また、請求項4の発明は、燃料電池からの排水そのものを蓄熱タンクに貯え,寒冷地での凍結防止用の熱媒に利用するという特徴を有する請求項1および請求項2記載の燃料電池/ランキンエンジンシステムである。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、燃料電池/ランキンエンジンシステムによる燃料電池の排熱回収・利用の実施例を示す図である。
【0010】
燃料電池1は、燃料である水素2を供給されることによって酸素と反応し、電力3を発生する。その際、燃料電池1からは80℃〜130℃の排熱4が高温水または蒸気として排出される。この排熱を熱交換器である排熱ボイラ5に通し、そこで熱を熱媒体に受け渡す。熱媒体によって回収された熱をエネルギー貯蔵タンク6に貯蔵することによって、供給側の間欠性・希薄性を補うとともに、利用側の平準化を図るようにしてある。
【0011】
対象とする温度条件に適した熱物性値を持つ熱媒体をエネルギー貯蔵タンク6内に通すことによって、タンク内から気化熱を奪い蒸発・過熱し高圧ガスとなり、動力取り出し部である膨張機(エキスパンダ)7に送り込まれる。この高圧ガスによりエキスパンダ7で動力を発生させ、直結された発電機8で発電を行わせ電力3を得る。エキスパンダ7から排出した熱媒体のガスは凝縮器(コンデンサ)12で冷却水13によって液化される。このとき回収された熱水の形のエネルギーは、工場内の暖・冷房や給湯14に用いることが可能である。その後、ポンプ9で昇圧された液化された熱媒体は、再びエネルギー貯蔵タンク6内に送り込まれて、蒸発→膨張→凝縮→昇圧の密閉サイクルを繰り返す。
【0012】
通常の蒸気動力ランキンサイクルにおいてエキスパンダ7としては衝動・反動型のタービンが用いられる。装置は大型であり、大型の燃料電池で、なおかつ排熱温度が非常に高い場合には有効であるが、一般的に80℃〜130℃といわれる低中温度域では、動力を取り出すことは困難である。この場合、エキスパンダ7として、家庭用および自動車用エアコン等に普及している小型の容積型コンプレッサーをそのまま転用する。容積型エキスパンダの例としては、スクロール式、ロータリー式(ロータリーエンジン形式含む)、レシプロ式、スクリュー式などが考えられるが、現状では効率、信頼性、小型・軽量化の観点からスクロール式が適している。
【0013】
【実施例】
他の実施例として、燃料電池/ランキンエンジンシステムを燃料電池自動車に導入した場合について述べる。図2は、燃料電池/ランキンエンジンシステムによる燃料電池自動車での排熱回収の実施例を示す図である。
【0014】
燃料電池自動車の場合、図1におけるコンデンサ12は空冷式のラジエータ14に置き換えられ、外気16によって熱媒体を冷却し、液化する。その他の構成要素は図1の場合と同様であるが、燃料電池自動車の場合、エキスパンダ7によって取り出される動力を軸動力として直接利用する場合と動力を発電機8で電力3に変換する場合が考えられる。
【0015】
図3は、燃料電池/ランキンエンジンシステムから電力を得る場合の燃料電池自動車の構成を示す図である。
【0016】
図4は、燃料電池/ランキンエンジンシステムから動力を直接利用する場合の燃料電池自動車の構成を示すである。
【0017】
燃料電池自動車では、燃料タンク17に水素を直接貯蔵する場合と、ガソリンやメタノールなどの炭化水素系燃料を燃料タンク17に貯蔵し、改質器によって水素に改質して燃料電池1に供給する場合がある。いずれの場合も燃料電池1において電力3を発生し、その排熱として高温水または蒸気を排出する。図3の場合、この高温水を熱源として図2記載のランキンエンジン11において電力を発生し、コントローラを介して、2次電池19への貯蔵・取り出し、モーターおよび補機類への供給を行う。図4の場合は、図2記載のランキンエンジン11において得られる動力を直接に空調用エアコン圧縮機22の動力として利用する。ただし、エアコン圧縮機を稼働しない場合は、図3に示すように電力に変換しコントローラへと供給される。
【0018】
さらに他の実施例として、燃料電池から排出される高温水そのものをエネルギー貯蔵タンクに貯蔵する方法がある。
【0019】
図5は燃料電池から排出される高温水をエネルギー貯蔵タンクに貯蔵する方式の燃料電池/ランキンエンジンシステムの実施例である。
【0020】
燃料電池1から排出される高温水4を一時、エネルギー貯蔵タンク6に貯え、それを熱源として図1記載の実施形態と同様にランキンエンジン11を稼働する。さらに残った高温水は、給湯・暖房、寒冷地における燃料電池スタック凍結防止14などの蒸気および高温水として利用可能なあらゆるものに利用され、温度が低下した後、一部ランキンエンジン11の冷却水にも利用され、最終的には、低温水4となって外部へ排出される。
【0021】
図6は、さらに他の実施例として、燃料電池から排出される高温水をエネルギー貯蔵タンクに貯蔵する方式の燃料電池自動車における実施例である。
【0022】
燃料電池1から排出される高温水4を一時、エネルギータンク6に貯え、それを熱源として図2記載の実施例と同様にランキンエンジン11を稼働する。さらに残った高温水は、車内の空調設備や寒冷地における燃料電池スタック凍結防止14などの蒸気および高温水として利用可能なあらゆるものに利用され、温度が低下した後、一部ランキンエンジン11の冷却水にも利用され、最終的には、低温水4となって外部に排出される。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の燃料電池/ランキンエンジンシステムでは、燃料電池からの排熱をランキンエンジンによって効率よく回収・利用することによってシステム全体の高効率化を実現できる。また、燃料電池自動車への導入することによって軸出力およびエアコンなどの補機類の動力源を確保できる効果がある。さらに、燃料電池からの排水を一時エネルギー貯蔵タンクに貯えることによって、蒸気および高温水としての利用が可能となり、暖房などの空調や寒冷地における燃料電池スタックの凍結防止用の熱媒としても活用できる。
【0024】
燃料電池は、CO2排出が少ない近未来の有望なエネルギー変換装置とみなされているが、改質過程や物質変換過程でポンプなどの補機類を多く必要とし、従来の、たとえばガソリンエンジンの2〜3倍の余分な動力が要る。燃料電池単体の効率は40%を超え良好であるが、この補機類の動力を差し引くと従来のディーゼルエンジン並みとなる欠点がある。
【0025】
本発明のランキンエンジンをボトミングとして組み合わせることにより、20%以上の効率向上が期待でき、燃料電池の機能を大幅に改善できる。
【0026】
もうひとつの重要な効果はヒートアイランド(都市温暖化)緩和効果である。現在の東京などのヒートアイランドの成因の約25%は車からの排熱であるが、燃料電池自動車はCO2排出はかなり抑制できるが、依然として排熱の方は、抑制できず、ヒートアイランドの形成要因となる可能性が高い。本発明では、まず軸出力としてエネルギーを回収し、残りのエネルギーをエネルギー貯蔵タンクに一旦貯え、直接、都市大気に排出しないという根本的対策がとれる。貯蔵したエネルギーは、後刻、給湯などに有効に使えるほか、さらにランキンエンジンを稼働して再び発電が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池/ランキンエンジンシステムによる燃料電池の排熱回収・利用の実施例を示す図である。
【図2】燃料電池/ランキンエンジンシステムによる燃料電池自動車での排熱回収の実施例を示す図である。
【図3】燃料電池/ランキンエンジンシステムから電力を得る場合の燃料電池自動車の構成を示す図である。
【図4】燃料電池/ランキンエンジンシステムから動力を直接利用する場合の燃料電池自動車の構成を示す図である。
【図5】燃料電池から排出される高温水をエネルギー貯蔵タンクに貯蔵する方式の燃料電池/ランキンエンジンシステムの実施例を示す図である。
【図6】燃料電池から排出される高温水をエネルギー貯蔵タンクに貯蔵する方式の燃料電池自動車における実施例を示す図である。
【符号の説明】
1 燃料電池
2 水素
3 電力
4 排熱(高温水および低温水)
5 排熱ボイラ
6 潜熱エネルギー貯蔵タンク
7 エキスパンダ(膨張機)
8 発電機
9 ポンプ
10 熱媒体の流れ
11 ランキンエンジン
12 コンデンサ(凝縮器)
13 冷却水
14 暖・冷房、給湯、凍結防止、蒸気・温水利用
15 ラジエータ
16 外気
17 燃料タンク
18 コントローラ
19 2次電池
20 モーター
21 補機類
22 エアコン圧縮機
【出願人】 【識別番号】000253352
【氏名又は名称】齋藤 武雄
【出願日】 平成14年7月30日(2002.7.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−60550(P2004−60550A)
【公開日】 平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願番号】 特願2002−220766(P2002−220766)