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【発明の名称】 成形性と建材特性に優れた薄板軽量形鋼からなる鋼製建材
【発明者】 【氏名】河合 良道
【住所又は居所】東京都千代田区大手町2−6−3 新日本製鐵株式会社内
【氏名】田中 重典
【住所又は居所】東京都千代田区大手町2−6−3 新日本製鐵株式会社内
【氏名】吉永 直樹
【住所又は居所】富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技術開発本部内
【課題】薄板軽量形鋼を建築材料として用いる際に、ヤング率と降伏耐力(YS)を所定値に設定することにより、ロール成形性に優れて、成形時にスプリングバックや成形不良が起こらず、且つ、建材としての必要な耐座屈性能を確保できるものを提供する。

【解決手段】板厚0.3mm〜2.3mm前後の薄板軽量形鋼による枠材35と構造用面材をドリルねじで止め付けて構築する鉄鋼系パネル構造に用いる成形性と建材特性に優れた薄板軽量形鋼であって、前記枠材35、32、31を構成する薄板軽量形鋼は、降伏応力(YS)<180N/mm 、かつ、ヤング率(E)>210kN/mm、望ましくは、120N/mm <降伏応力(YS)<180N/mm の材料からなる成形性と建材特性に優れた薄板軽量形鋼である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚0.3mm〜2.3mm前後の薄板軽量形鋼による枠材と構造用面材をドリルねじで止め付けて構築する鉄鋼系パネル構造に用いる鋼製建材であって、前記薄板軽量形鋼は、降伏応力(YS)<180N/mm 、かつ、ヤング率(E)>210kN/mmの材料を用いたことを特徴とする成形性と建材特性に優れた薄板軽量形鋼からなる鋼製建材。
【請求項2】
前記薄板軽量形鋼は、120N/mm <降伏応力(YS)<180N/mm を用いたことを特徴とする請求項1記載の成形性と建材特性に優れた薄板軽量形鋼からなる鋼製建材。
【請求項3】
前記薄板軽量形鋼の材料の成分が、IF鋼の成分中、C<0.004%、Si<0.3%、Mn<0.2%、P<0.2%、S<0.015%、Al=(min)0.003〜(max)0.10%、さらにTi=(min)0.003〜(max)0.08%、Nb=(min)0.003〜(max)0.06%、B<0.003%のうち1種又は2種以上の成分を含む鋼材を用いたことを特徴とする請求項1または2記載の成形性と建材特性に優れた薄板軽量形鋼からなる鋼製建材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の薄板軽量形鋼で所定長の枠材を形成し、該枠材に断面U形、V形などのスティフナーを長手方向に延長して形成したことを特徴とする成形性と建材特性に優れた薄板軽量形鋼からなる鋼製建材。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載の薄板軽量形鋼で枠材を形成すると共に、該枠材は、間仕切り壁用枠、天井用枠、胴縁用枠、母屋材用枠、たる木などの建築物における構造上主要とならない部位の枠を構成すること特徴とする成形性と建材特性に優れた薄板軽量形鋼からなる鋼製建材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性と建材特性に優れた薄板軽量形鋼からなる鋼製建材、特に、スチールハウス等の建築物用鋼製建材などに適した薄板軽量形鋼製の鋼製建材に関するものである。
【0002】
ここで、スチールハウス(鋼製住宅ともいう)とは、環境に優しい鋼を材料とした建物として近来注目を浴びている住宅であって、より具体的には、板厚0.3mm〜2.3mm前後の薄板軽量形鋼による枠材と構造用面材をドリルねじで止めつけて構築する鉄鋼系パネル構造の住宅をいう。
【0003】
【従来の技術】
前記スチールハウスが我が国で提案されて数年が経ち、その間に居住性、構造的強度、製作コスト等の面で多くの改良技術が特許出願されている。本発明は、前記改良技術の中で、特に、今後のスチールハウス普及のかぎを握ると予想される製作コスト面での改良に関するものである。
【0004】
スチールハウスの製作コストについてさらに説明すれば、鋼材自体のコスト低減の問題と、鋼の持つ材料特性に影響される薄板軽量鋼の製作の難易性に基づく製作コストとの問題がある。本発明は、薄板軽量鋼の製作の容易性を追求することで、製作コストの低減を狙うものであって、前記製作の難易性に関係するところの、鋼材料自体が有するヤング率および降伏応力(YS)を適切な範囲に設定することにより、加工性と局部座屈耐力を兼ね備えた鋼製建材の実用化に関する発明である。
【0005】
前記に関連して、スチールハウスの骨組みの概要と、骨組みの各部をなす薄板軽量形鋼からなる枠材の断面形状の工夫による局部座屈耐力の向上と、そのロールフォーミングによる成形工程につき説明する。
【0006】
従来のスチールハウスにおける骨組み構造としては、図6に示すものが一般的である。同図において、布基礎上に組まれる柱、梁、根太その他のたて枠とよこ枠は、いずれも厚さ、1.0mm程度の一枚の薄鋼板を、その強度を補強すべくロールフォーミングにより各種断面形状に曲げ加工して成形された枠材が使用される。
【0007】
図6(a)おいて、布基礎(図示せず)上にアンカーボルトによって固定された下枠ランナー1から1階を構成する複数のたて枠2、3、4が立設され、この1階を構成する複数のたて枠2,3、4の上端には、頭つなぎ、上枠ランナー5等が設けられている。また、1階用窓開口部6を形成するため、まぐさ7とまぐさ受が設けられている。上枠ランナー5には、頭つなぎ10、ころび止め、あおり止め金物、ガセットプレート12、腕木9を介して屋根トラス13が取付けられている。
【0008】
前記薄板軽量形鋼によって構成されているたて枠は、大きな荷重に対しては座屈強度を補強するため、例えば、図6(b)、(c)、(d)の断面構造とされる。
【0009】
図6(b)の場合は、2つの溝形鋼18のウェブ19を背中合わせに当接し、両ウェブ19を貫通してドリルねじ20を打設して両溝形鋼18を結合することにより、部材21aとして溝形鋼の座屈強度を向上するものである。
【0010】
図6(c)の場合は、3つの溝形鋼18を用いて、その内2つの溝形鋼18の両ウェブ19をドリルねじ20で結合し、さらに、その一方の溝形鋼18の開口部を閉じるように第3の溝形鋼18を抱き合わせて各フランジ23同士を重ね合わせ、この重合部にドリルねじ20を打設して、長方形の箱形断面を構成し、部材21bとして溝形鋼の座屈強度を向上するものである。
【0011】
図6(d)は、箱形断面の薄板軽量形鋼製の部材21cの例を示す。この例では、薄板軽量鋼板をロールフォーミングにより4つの辺と、直角コーナ部29とからなる箱形断面形状に曲げ形成し、両端をかしめ部34でシームして部材(角形鋼)21cを構成する。この場合も、図6(b)、(c)の場合と同様、部材21cを箱形断面形状とすることにより、その座屈強度を向上するものである。ここで部材21a、21b、21cを総称して枠材22という。
【0012】
枠材22は、熱間圧延された帯状の薄板軽量鋼板を冷間成形手段としてのロールフォーミングにより所定形状に加工される。本発明は、そのロール加工の容易性に関係する鋼材の材料特性が主要素をなしているので、その理解を助けるため、ロールフォーミング工程の簡単な一例を図を参照して説明する。
【0013】
図7、図8は、熱間圧延によって製造され、ロール状に巻き取られた所定幅の薄板軽量鋼板(以下、素材22aという)を使用して、冷間加工として多段のロールフォーミング加工を採用して成形し、最終状態のC形溝形鋼(以下、枠材22という)を製造する場合の説明図である。
【0014】
図7(a)において、所定幅の薄板軽量鋼板からなる素材22aが、横軸により回転可能に設けられている上下部の搬送支承ロール24a、24bにより、一定のレベルに保持されて先工程に搬送される。続いて、図7(b)において、C形の枠材22のウェブ部22bとなる部分を形成する上下部のウェブ支承ロール25a、25bが横軸により回転可能に設けられ、駆動装置により駆動される。さらに、その先方には、C形の枠材22の左右両側のフランジ部22cとなる部分を形成する一対の第1段のフランジ部支承ロール26a、26bが傾斜軸により回転可能に設けられ、駆動装置により駆動される。
【0015】
次に、図8(a)において、C形の枠材22の左右両側のフランジ部22cとなる部分を最終的に形成する一対の第2段のフランジ部支承ロール27a、27bが縦軸により回転可能に設けられ、駆動装置により駆動される。続いて、図8(b)において、C形の枠材22のリップ部22dとなる部分を形成する一対の第1段のリップ部支承ロール30a、30bが傾斜軸により回転可能に設けられ、駆動装置により駆動される。さらに、図8(c)に示すように、その先方には、左右両側のフランジ部22cに対し直角のリップ部22dとなる部分を形成する一対の第2段のフランジ部支承ロール31a、31bが横軸により回転可能に設けられ、駆動装置により駆動される。
【0016】
前述のようにして、薄板軽量鋼板の素材22aが、上流側から下流側にかけて複数段に設けた支承ロール間を通過することにより、各段のロールにより所定形状に曲げ形成されて、フラットな所定幅の薄板軽量鋼板が最終的に、C字形断面を有する枠材22に形成される。C字形断面の枠材22は一例であって、その他各種断面形状の枠材も同様の多段のロールフォーミングにより成形される。
【0017】
本発明の主要素に関係する事項について、さらに説明する。
【0018】
前記建材用の枠材22を薄板軽量形鋼で構成する場合、加工性の問題と、局部座屈耐力の問題がある。加工性は降伏応力(YS)に関係し、局部座屈耐力はヤング率に関係する。つまり、加工性を向上することは、降伏応力(YS)の低下につながり、また、局部座屈耐力を大きくすることは、ヤング率を高くすることにつながる。そして、加工性向上をめざす上では降伏応力(YS)が低い鋼材を使い、また、局部座屈耐力が大をめざすときはヤング率が高い鋼材を使うことになる。通常の鋼材(SPCC)のヤング率(E)は、E=180〜190kN/mm程度である。板の座屈耐力は、ヤング率に比例するので、10%向上すると、耐力は5%向上する。
【0019】
前記から、ロール成形による加工性をより多く考慮するときは、降伏応力(YS)が低い鋼材を使うことになる。これは、ヤング率が低い材料で、局部座屈耐力を犠牲にすることになり易い。例えば、ヤング率(E)が低い、Eが180〜190kN/mmなどの普通鋼を使用することになる。この場合、スプリングバックが少なく、加工性がよく歩留りがよい。局部座屈耐力低下の問題は、枠材の断面形状を工夫することで強度確保している。
【0020】
前記と反対に、局部座屈耐力が大きい鋼材の使用に重点をおくときは、ヤング率(E)が高い鋼材を使用することになり、ヤング率(E)は、E>210kN/mmなどの鋼材料を使用することになるが、ロール成形時にスプリングバックが発生し、加工性、成形性の面で問題が起こりやすい。この問題を解決するため、より多段のロール成形装置を設けたり、成形装置を大型にすることなどで解決することになるが、これは製作コストアップにつながる。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、スチールハウス等の建築物における製作コストの低減という課題を解決する観点から、薄板軽量形鋼の加工性の向上と局部座屈耐力確保の問題を同時に解決すべく研究した結果、薄板軽量形鋼の加工性に関係する降伏応力(YS)と、局部座屈耐力確保に関係するヤング率を関係づけ、それぞれを所定の値に設定することで、解決の余地があるとの知見を得た。
【0022】
本発明者が検討した問題点をさらに詳しく説明する。建材の耐座屈性を向上させるためにヤング率を上げることが行われるが(例えば、通常の鋼材(SPCC)のヤング率(E)は、E=180〜190kN/mmであるのに対し、E>210kN/mmの鋼材を使う)、ヤング率を上げると降伏応力(YS)も上がり、前述の薄板軽量鋼板からなる素材22aにより枠材22をロール成形するときにスプリングバックが起り易くなり、成形不良が起こりやすい。
【0023】
本発明者は、前記の問題点に鑑みて種々研究を行った。その結果、所定の降伏応力(YS)と、所定のヤング率の値を適切に設定することにより、必要な加工容易性と局部座屈耐力を併せ持つ鋼材料が開発できる。そしてこの材料を用いたロールフォーミングによるとスプリングバックが起こらず、それ故、成形不良が起こりにくくて歩留りが向上し、しかも実用に耐えうる局部座屈耐力を持つ建材の実現が可能との知見を得た。さらに、成形の容易性が加わることで、複雑な断面構造を持たせることができ、それにより局部座屈耐力の問題を補うべく強度向上が可能な鋼製建材の実現が可能との知見を得た。
【0024】
前記にもとづく研究をさらに進めた結果、スチールハウス等の建築物においては、骨組みとして用いられる多くの薄板軽量形鋼製の枠材のうち、荷重を支持するなど大きな強度が必要な部位に用いられる枠材と、大きな強度が要求されない部位に用いられる枠材がある。この大きな強度が要求されない部位に用いられる枠材は、スチールハウス1棟に平均5トンの鋼材が使用されるとして、その内の1トン程度あることも確認した。そして、大きな強度が要求されない部位には、強度的には若干劣るが、成形の容易性からコスト面で安く作れる枠材を用いることで、建物全体の大幅な製作コスト低減に寄与できるとの知見を得た。
【0025】
本発明は、前記の観点から提案するもので、ロール成形性に優れて、且つ、建材としての特性も優れたスチールハウス等の建築物用の建材、その他に適用可能な成形性と建材特性に優れた薄板軽量形鋼からなる鋼製建材を提供するものである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するため、本発明は次のように構成する。
【0027】
第1の発明は、板厚0.3mm〜2.3mm前後の薄板軽量形鋼による枠材と構造用面材をドリルねじで止め付けて構築する鉄鋼系パネル構造に用いる鋼製建材であって、前記薄板軽量形鋼は、降伏応力(YS)<180N/mm 、かつ、ヤング率(E)>210kN/mmの材料を用いてなり、成形性と建材特性に優れた薄板軽量形鋼であることを特徴とする。
【0028】
第2の発明は、第1の発明における前記薄板軽量形鋼は、120N/mm <降伏応力(YS)<180N/mm を用いたことを特徴とする。
【0029】
第3の発明は、第1または第2の発明における、前記薄板軽量形鋼の材料の成分が、IF鋼の成分中、C<0.004%、Si<0.3%、Mn<0.2%、P<0.2%、S<0.015%、Al=(min)0.003〜(max)0.10%、さらにTi=(min)0.003〜(max)0.08%、Nb=(min)0.003〜(max)0.06%、B<0.003%のうち1種又は2種以上の成分を含む鋼材を用いたことを特徴とする。
【0030】
第4の発明は、第1〜第3の何れかの発明に記載の薄板軽量形鋼で所定長の枠材を形成し、該枠材に断面U形、V形などのスティフナーを長手方向に延長して形成したことを特徴とする。
【0031】
第5の発明は、第1〜第4の何れかの発明に記載の薄板軽量形鋼で枠材を形成すると共に、該枠材は、間仕切り壁用枠、天井用枠、胴縁用枠、母屋材用枠、たる木などの建築物における構造上主要とならない部位の枠を構成すること特徴とする。
【0032】
【作用】
本発明に係る鋼製建材用の薄板軽量形鋼は、降伏応力(YS)とヤング率の値を適切に組み合わせた材料からなるので、ロールフォーミングによる成形時のスプリングバックが小さく加工性に優れると共に、成形ラインを小くできる。しかも、成形された薄板軽量形鋼は、必要な局部座屈耐力は有しており、かつ、複雑断面を伴うスチフナーの成形性の容易性などに優れ、複雑断面形状の成形が容易で、この点でも座屈耐力を向上させた建材の容易な製作に大きく寄与するものである。
【0033】
また、スチールハウス等の建築物に用いられる多くの薄板軽量形鋼製の枠材のうち、大きな荷重を支持するため大きな強度が必要な部位に用いられる枠材と、強度が余り要求されない部位に用いられる枠材とを区別し、大きな強度が要求されない部位には強度的には他のものより若干劣るが、成形の容易性からコスト面では安く作れる前述の枠材を用いることで、住宅全体の製作コスト低減に大きく寄与できる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
【0035】
本発明の薄板軽量形鋼をスチールハウス等の建築物の建材に用いた1例を説明する。図1(a)、(b)に示すように、たて枠その他に用いられる枠材35は、箱形断面形状に構成されており、その4辺の中間部には、当該枠材35の長手方向に沿って内側に突出したU形、あるいはV形のスティフナー36が設けられている。
【0036】
この枠材35は、板厚が0.3〜2.3mmの薄平鋼板をロールフォーミングにより箱形断面形状に曲げ形成するもので、両端をかしめ部37でシームして、外形(4つの辺)40mm〜120mmに形成してなり、その4辺の中間部には、前記ロールフォーミングの工程に際して、内側に凸の断面略U字形またはV字形にスティフナー36を形成するものである。ここで、特に、スティフナー36の内側突出寸法Lを適切な値に設定することにより、当該スティフナー36の保有剛性に必要剛性を付与することができる。
【0037】
次に、図1(c)は、薄板軽量鋼板をロールフォーミングで成形してなる枠材32の例を示し、ウェブ33の部分が略半円弧状に形成され、その両端にフランジ部34を介してリップ部39が形成され、かつ先端39aを介して一方には雄側係合部40が形成され、他方には雌側係合部41が形成されたリップ付き略C字形の断面形状に形成されている。また、図1(d)は、前記一対の枠材32を向かい合わせた上、相手側の凸部および凹部からなる雄側係合部40と雌側係合部41を互いに係合させることで、外形が円筒形状の枠材31が構成されている。
【0038】
図1に示した各枠材35、32、31は、本発明に係る成形性と建材特性に優れた薄板軽量形鋼、すなわち、降伏応力(YS)<180N/mm 、かつ、ヤング率(E)>210kN/mmの材料で成形されている。これにより、各枠材は、ロールフォーミングによる加工性に優れ、図示のような断面形状を容易に成形でき、かつ、必要な局部座屈耐力を具備させることができる。
【0039】
再度説明すると、スチールハウス等の建築物などに用いる枠材を薄板軽量形鋼で構成する場合、加工性の問題と、局部座屈耐力の問題がある。加工性、成形性の面をより多く考慮するときは、ヤング率(E)が低い、(E)=180〜190kN/mmなどの普通鋼を使用し、したがって、スプリングバックが少なくて成型性がよく、歩留りがよく製作コスト低減につながる。この場合、局部座屈耐力の問題は、枠材の厚さや断面形状で強度確保することになる。
【0040】
反対に、局部座屈耐力を大きくする面を重要視するときは、ヤング率(E)が高い、(E)>210kN/mmなどの鋼を使用するが、降伏応力(YS)もそれに伴って高くなり、ロール成形時スプリングバックが起こりやすく加工性、成形性が低下する。この問題を解決するためには、より多段のロール成形装置を設けたり、成形装置を大型にすることなどで解決することになるが、その分製作コストはアップする。
【0041】
本発明では、加工性に関係する降伏応力(YS)と、局部座屈耐力に関係するヤング率を関連つけて考慮し、加工性と局部座屈耐力の向上を同時に達成するという所期目的の下に、前記の各値を一定値に設定した。つまり、降伏応力(YS)<180N/mm 、かつ、ヤング率(E)>210kN/mmの材料とすることで、前記加工性と局部座屈耐力の両方の面で求められる条件を同時に満たし得るようにし、それにより前記の問題を解決した。この点が本発明の主要素である。
【0042】
本発明において、板厚0.3mm〜2.3mm前後の薄板軽量形鋼の材料特性につき、降伏応力(YS)<180N/mm 、かつ、ヤング率(E)>210kN/mmに数値を限定した根拠は、本発明者が、各種断面の枠材を多段のロール成形装置を使って実験を繰り返して得られた経験に基づく値である。つまり、降伏応力(YS)とヤング率(E)を関係つけたうえで、それぞれの数値が異なる組み合わせからなる多数種の材料につき、シミュレーションし、かつ、既存の鋼材との比較試験も行った。その結果、既存の材料、つまり、ロール成形に際して、降伏応力(YS)とヤング率を関連させず、何れか一方を基準に選択し、しかも、前記の数値を外れた鋼材を用いてロール成形する場合に比べて、前記降伏応力(YS)とヤング率(E)を前記の数値に設定した材料を使用するとき、ロール成形時のスプリングバックを少なくできて、加工性を大幅向上できることが確認された。しかも、この鋼材からなる枠材をスチールハウス等の建築物において、比較的強度が要求されない部位用いる場合、その部位に求められる必要な局部座屈耐力が十分確保できることも確認された。
【0043】
さらに、実験を繰り返した結果、前記値は、一層望ましくは、120N/mm <降伏応力(YS)<180N/mmを選択するのがよいことも実験的に確認できた。
【0044】
またさらに、前記の建材特性を有する薄板軽量形鋼の成分は、下記表1に示す、IF鋼の成分中、C<0.004%、Si<0.3%、Mn<0.2%、P<0.2%、S<0.015%、Al=(min)0.003〜(max)0.10%、さらにTi=(min)0.003〜(max)0.08%、Nb=(min)0.003〜(max)0.06%、B<0.003%のうち1種又は2種以上の成分を含む鋼材が該当することも確認した。
【0045】
IF鋼の成分表を以下に示す。なお、下の表は、スペースの都合上分割してあり、上側の分割表の右端に、下側の分割表の左端が接続する。
【0046】
【表1】


なお、Cr、Sn、Cu、Zr、Mo、Mg、REMをトータル2%以下含んでも、本特性は満足する。
【0047】
なお、参考比較技術として、特開2000−87181が存在するので、これを簡単に説明する。この先行技術は、IF鋼成分の極低炭鋼〜低炭鋼の成分値を特定することで、圧延方向に直角な方向のr値が、0.7以下であるように成形し、もってポケットウェーブが発生しにくいロール成形用薄鋼板を製作する技術である。このように先行技術は、IF鋼成分の値を特定することでr値を一定以下にしてポケットウェーブの発生を防止するもので、本発明とは解決しようとする課題と手段を異にしている。
【0048】
前記のように、本発明に係る薄板軽量形鋼製の枠材は、加工性がよく、かつ必要な局部座屈耐力は具備しているが、特に、スチールハウス等の建築物において大きな強度が要求されない部位に使用するに適している。このような部位に用いられる枠材の具体例としては、間仕切り壁用枠材、天井用枠材、胴縁用枠材、母屋材用枠材などがある。しかも、枠材の断面を工夫することで、局部座屈耐力の大きさは一層向上する。
【0049】
前記の加工性がよいという利点を生かして、局部座屈耐力を補強すべく断面形状を工夫した枠材で、図1に示したもの以外の他の例を図2〜図5に示す。これらは、前述の大きな強度が要求されない部位に使用するのに適している。
【0050】
図2、図3(a)、(b)には、枠材の一具体例として鋼板たるき49が示されている。この鋼製たるき49は、例えば、1.0mm厚で、所定長さの一枚の薄板軽量形鋼を、ロールフォーミングにより曲げ加工して図示の端面形状(略逆J形と略称する)に成形されている。すなわち、ウェブ50と、ウェブ50の上下両端にそれぞれ第1フランジ(上部フランジ)44と第2フランジ(下部フランジ)45が形成され、第1フランジ44の先端を上に折り返して前記第1フランジ44の上面に重合させて第3フランジ42の幅寸法の中心線Lが、後述の取付金物48の中心線と同一直線上に配置されるように、前記第2フランジ45側と反対側のウェブ50の一側面(後述の背面)から取付け金物48の厚さの1/2tの距離だけ変位する位置になるように、当該第3フランジ42の幅寸法を設定して鋼製たるき49が構成されている。
【0051】
前記鋼製たるき49は、図2に示されるように所定の長さ寸法Lを有し、取付金物48を介して母屋材である下部構造物46に取付けられる。つまり、母屋材等の下部構造物46の上面に、垂直に起立する取付け金物48の下端の水平な脚部47が溶接またはボルト等の固着手段により固定されており、取付け金物48の一側面に水平配置の鋼製たるき49のウェブ50の背面が当てがわれ、取付け金物48とウェブ50のボルト挿入孔53にわたって取付けボルト54を挿通し、ナット55を締結することで、鋼製たるき49が取付け金物48に固定される。
【0052】
鋼製たるき49の各部の寸法関係を前記のように設けてあるので、図2のように、取付け金物48に取付けたとき、取付け金物48の中心線Sと、第3フランジ42の中心線(L)が合致する。また、同図に示すように鋼製たるき49の第3フランジ42の上面に野地板56を載置し、野地板56を貫通してドリルねじ57を第3フランジ42に打設することにより、野地板56が鋼製たるき49に固着される。そして、鋼製たるき49が野地板56の荷重を受けるとき、第3フランジ42の中心線(L)が設計上のモジュール線と一致しているので、第3フランジ42の左右にほぼバランスして野地板56からの荷重が加わり、それによりウェブ50では、その幅方向に沿って力が作用して、ウェブ50を曲げる方向には作用せず、したがって、強度的に最も望ましい態様で荷重を受けることができる。本発明に係る枠材は、前記鋼製たるき49として構成してもよい。
【0053】
次に、図4(a)は、本発明に係る薄板軽量形鋼の他の適用例の図である。同図において、薄板軽量形鋼の枠材61は、直角折り曲げ部67を有し、その先端にフランジ64の内側に沿って折り曲げた平行な折り返し部68を有している。また、図4(b)では、直角折り曲げ部67の先端にフランジ64の内側に向けた湾曲の折り曲げ部68aを有している。各図において、薄板軽量形鋼フレーム61のフランジ64に内装材62を当てがい、内装材62とフランジ64および、平行な折り返し部68又は、湾曲の折り返し部68aを貫通して釘66を打設する。このとき、釘66はフランジ64と各折り返し部68又は68aの2枚の薄板軽量形鋼を貫通することで、釘66には、その傾きを阻止し、かつ2点支持で、この支持部が抜けに対しても抵抗するように作用するので、打設後の釘66が安定し、フランジ64および内装材62から抜けにくくなる。
【0054】
次に、図5(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、本発明に係る薄板軽量形鋼のさらに他の適用例としての鋼製力板の5例を示す。鋼製力板とは、壁に絵、時計、装飾品を掛け、あるいは手すりを付けるため室内側から壁を貫通して釘打ちする場合の下地となり、壁内部に位置して柱間に渡って横方向に架け渡される部材をいう。
【0055】
図5(a)は、鋼製力板71の基本形として、上下両端部79、73にフラットなかしめ部を有し、中間部両側に平行なウェブ72a、72bを有する台形の力板の例を示す。図5(b)〜(e)は、その変形例を示す。例えば、図5(b)に示すように、かしめ部がなく、ウェブ72a、72bを有する台形の鋼製力板77の断面形状にしてもよい。また、図5(c)に示すように、薄鋼板を上端部79で折り返すことで、後側にフラットなウェブ72aを有し、前側には、中央頂部72を境として、その上下に緩い傾斜のあるウェブ72bを有する、略山形の鋼製力板83の断面形状にしてもよい。
【0056】
さらに、図5(d)に示すように、薄鋼板を上端部79で折り返すことで、後側にフラットなウェブ72aを有し、その上下に小盛り上がり部74のある断面略ハット形の鋼製力板75の断面形状にしてもよい。さらに、図5(e)に示すように、薄鋼板を上端部79で折り返すことで、後側にフラットなウェブ72aを有し、前側に中央部が円弧状に盛り上がったウェブ72bを有する断面略円形の鋼製力板76の断面形状を構成してもよい。
【0057】
図1〜図5では、本発明に係る薄板軽量形鋼の適用例として各種断面形状の枠材の例を示したが、コ型、ロ型、エ型など何れでも良い。特に、本発明の主要素は、これら枠材の材料である薄板軽量形鋼の特性を請求の範囲記載の数値に限定したことで、ロールフォーミング成形工程の簡易化、合理化、複雑断面成形の容易化により、トータルとして薄板軽量鋼板製の枠部材の製作コスト低減を図ったものである。
【0058】
【発明の効果】
本発明に係る鋼製建材用の薄板軽量形鋼は、降伏応力(YS)とヤング率の値を適切に組み合わせた材料からなるので、ロールフォーミングによる成形時のスプリングバックが小さく加工性に優れると共に、成形ラインを小さくできる。しかも、成形された薄板軽量形鋼は、必要な局部座屈耐力は有しており、かつ、複雑断面を伴うスチフナーの成形性の容易性などに優れ、複雑断面形状の成形が容易で、この点でも座屈耐力を向上させた建材の容易な製作に大きく寄与するものである。さらに、本発明によると構造材としての特性が向上することで、耐力を同じにして、板厚を従来に比べ2.5%減らして軽量化することができる。
【0059】
また、スチールハウス等の建築物に用いられる多くの薄板軽量形鋼製の枠材のうち、大きな荷重を支持するため強度が必要な部位に用いられる枠材と、大きな強度が余り要求されない部位に用いられる枠材とを区別し、大きな強度が要求されない部位には強度的には他のものより若干劣るが、成形の容易性からコスト面では安く作れる前述の枠材を用いることで、建築物全体の製作コスト低減に大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明に係る薄板軽量形鋼をスチールハウス等の建築物の建材に用いる角形枠材として構成した例の破断斜視図、(b)は、(a)の横断面図、(c)は、半円状枠材として構成した例の端面図、(d)は、図(c)の部材を2つ組み合わせて半円状枠材として構成した例の端面図である。
【図2】本発明に係る薄板軽量形鋼を用いた鋼製たるきの取付け金物への取付け状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は、図2の鋼製たるきの斜視図、(b)は、鋼製たるきの取付け金物への取付け状態を示す断面図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明に係る薄板軽量形鋼を用い釘止め性能に優れた鋼製フレーム部材を内装部材へ取付けた状態の2例を示す断面図である。
【図5】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、本発明に係る薄板軽量形鋼を用いて構成した鋼製力板の5例を示す端面図である。
【図6】(a)は、従来のスチールハウス等の建築物の骨組みの斜視図、(b)、(c)、(d)は、前記骨組みの各部位に用いられるたて枠の3つの例の断面図である。
【図7】(a)は、薄板軽量形鋼でC形枠材をロールフォーミング加工により製造する場合の第1工程におけるロール配置を示す縦断正面図、(b)は、同じく両フランジを曲げ成形する途中である第2工程におけるロール配置を示す縦断正面図である。
【図8】(a)は、図8の工程が進み、C形枠材の両フランジの曲げ成形が終了する第3工程におけるロール配置を示す縦断正面図、(b)は、続いてリップ部を曲げ成形する途中である第4工程におけるロール配置を示す縦断正面図、(c)は、リップ部の曲げ成形が終了する第5工程におけるロール配置を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
1 下枠ランナー
2 たて枠
3 たて枠
4 たて枠
5 上枠ランナー
6 1階用窓開口部
7 まぐさ
9 腕木
13 屋根トラス
18 溝形鋼
19 ウェブ
20 ドリルねじ
21a たて枠
21b たて枠
22a 素材
22b ウェブ部
22c フランジ部
22d リップ部
23 フランジ
24 搬送支承ロール
24a 上部搬送支承ロール
24b 下部搬送支承ロール
25 ウェブ支承ロール
26a 第1段上フランジ支承ロール
26b 第1段下フランジ支承ロール
27a 第2段上フランジ支承ロール
27b 第2段下フランジ支承ロール
29 直角コーナ部
30a 第1段上リップ部支承ロール
30b 第1段下リップ部支承ロール
31 枠材
31a 第2段上リップ部支承ロール
31b 第2段下リップ部支承ロール
32 枠材
33 ウェブ
35 枠材
36 スティフナー
37 かしめ部
39 リップ部
40 雄側係合部
41 雌側係合部
42 第3フランジ
44 第1フランジ
45 第2フランジ
46 下部構造物
47 水平な脚部
48 取付け金物
49 鋼製たるき
50 ウェブ
53 ボルト挿入孔
54 取付けボルト
55 ナット
56 野地板
57 ドリルねじ
61 枠材
62 内装材
64 フランジ
67 直角折曲げ部
68 折返し部
68a 折返し部
72 中央頂部
72a ウェブ
72b ウェブ
73 下端部
74 小盛り上がり部
77 鋼製力板
79 上端部
83 鋼製力板
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番3号
【出願日】 平成14年7月5日(2002.7.5)
【代理人】 【識別番号】100107250
【弁理士】
【氏名又は名称】林 信之

【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦

【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀

【公開番号】 特開2004−36315(P2004−36315A)
【公開日】 平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願番号】 特願2002−197700(P2002−197700)