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【発明の名称】 次亜塩素酸水の製造方法及び利用方法
【発明者】 【氏名】中島 孝俊

【要約】 【課題】電解に用いる陽極、陰極が耐久性に優れ、次亜塩素酸水を効率良く生成する電解装置と該電解装置を用いた次亜塩素酸水の製造方法及び利用方法を提供する。

【解決手段】基材であるチタン上に、予め大気中焼成又は電解酸化の併用により設けた厚さ0.5-50μmの酸化チタン層上に白金と酸化イリジウムを電極触媒、酸化チタンを担持体とした電極触媒被覆層を被覆し、さらに電極触媒被覆層を設けた焼成温度以上の温度で最終焼結して次亜塩素酸水の電解効率を向上し、逆通電に対する耐性を付与した電極を陽極と陰極に用いて電解するにあたり、陰極を下側、陽極を上側に配置し、陰極で発生する水素ガスのガスリフトによる攪拌作用で陽極への食塩水の供給と生成した次亜塩素酸水の陰極による還元を防止する。さらに電解液のpHを制御することにより、電解効率の高い電解装置を提供することが出来る。また、生成した次亜塩素酸水を氷結させたものを利用して、脱色等に利用する。さらに、電解装置を利用して室内の汚染物質の濃度低減等に利用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め基材となるチタンの表面を粗面化、酸洗により清浄化し、大気中で焼成後、陽極酸化を行い、これらの併用により5−50μmから成る酸化チタン被覆層を金属チタンより成長させて設けた後に白金及び酸化イリジウムの電極活性物質と電極活性物質の担持体である酸化チタンからなる電極触媒被覆層を形成し、該電極触媒被覆層の組成が酸化物で80モル%から20モル%であり、次いで該電極触媒被覆層を形成後に再度最終焼結を電極触媒被覆温度以上の温度で行い、次亜塩素酸電解効率の効率を上昇させた一対の電極により構成される無隔膜電解装置に於て、陰極を陽極の下側に配置した電解装置で塩化物イオンを含有する水溶液中に浸漬し、直流電解して次亜塩素酸水を生成することを特徴とする次亜塩素酸水の製造方法及び電解装置。
【請求項2】
担持体である酸化チタンの80%までを酸化アルミニウム又は酸化珪素で置き換えた電極触媒層を有する請求項1に記載の電極で直流電解し次亜塩素酸水を生成することを特徴とする次亜塩素酸水の製造方法及び電解装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電解装置に於て、陰極が予め基材となるチタンの表面を粗面化、酸洗により清浄化し、大気中で焼成又は電解酸化或はこれらの併用により5−50μmから成る酸化チタン被覆層を金属チタンより成長させて設けたチタンであることを特徴とする次亜塩素酸水の製造方法及び電解装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電解装置に於て、一定時間毎に極性を変換しながら直流電解を行うことを特徴とする次亜塩素酸水の製造方法及び電解装置。
【請求項5】
基材であるチタンの開孔率に於て陰極の開孔率が陽極の開孔率より大きい形状であるエキスパンドチタン、穴明けチタン板網状チタン、棒状チタンを電極基材とすることを特徴とする請求項1に記載の次亜塩素酸水の製造方法及び電解装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電解装置で製造した次亜塩素酸水を用いて、脱色、脱臭、除菌、滅菌、殺菌、分解、 洗浄、スケール除去・防止、排水処理、害虫・雑草駆除を目的することを特徴とする電解次亜塩素酸水の利用方法。
【請求項7】
請求項1に記載の次亜塩素酸水の製造方法に於て、電解液に炭酸又はリン酸、有機酸、有機酸塩の1種以上を含有する塩化物イオン水溶液を直流電解して次亜塩素酸水を製造することを特徴とする次亜塩素酸水の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の次亜塩素酸水の製造方法によって製造した次亜塩素酸水に炭酸又はリン酸、有機酸、有機酸塩の1種以上を含有する水溶液を混合して脱色、脱臭、除菌、滅菌、殺菌、分解、洗浄、スケール除去・防止、排水処理、害虫・雑草駆除をすることを特徴とする電解次亜塩素酸水の利用方法。
【請求項9】
請求項7及び請求項8に記載の有機酸又は有機酸塩がカルボキシル基、水酸基、スルホン基、スルフィン基、フェノール基、チオール基、スルフィド基、イミド基、アミン基、アミド基、オキシム基、スルホンアミド基、リン酸基のうち1種類以上の官能基を有する有機酸又は有機酸塩であることを特徴とする次亜塩素酸水の製造方法及び使用方法。
【請求項10】
請求項1に記載の電解装置で電解部の上下に電解液及びガス以外の異物侵入を防止する絶縁性防止具を備えた次亜塩素酸水の電解製造装置及び該電解製造装置による次亜塩素酸水の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の電解装置に於て、次亜塩素酸の生成量の制御を電解時間及び電流値を設定することにより行う機能を備えたことを特徴とする次亜塩素酸水の製造方法及び電解装置。
【請求項12】
室内の汚染物質を含有する空気を電解装置の陰極底部より導入し、電解により生成した次亜塩素酸水中に散気させてこれらを分解・除去又は滅菌等をして、空気を清浄しながら次亜塩素酸水を製造することを特徴とする請求項1に記載の次亜塩素酸水の製造方法及び電解装置。
【請求項13】
次亜塩素酸水又は請求項7に記載の次亜塩素酸水を冷却、氷結し、生成した氷又は氷を融解あるいは水等の溶媒に溶解、希釈して脱色、脱臭、除菌、滅菌、殺菌、分解、洗浄、スケール除去・防止、排水処理、害虫・雑草駆除をすることを特徴とする次亜塩素酸水の利用方法。
【請求項14】
請求項9に記載の次亜塩素酸水と炭酸又はリン酸、有機酸、有機酸塩の1種以上を含有する水溶液をそれぞれ別に冷却、氷結し、生成した氷を混合し、氷を融解あるいは水等の溶媒に溶解、希釈して脱色、脱臭、除菌、滅菌、殺菌、分解、洗浄、スケール除去・防止、排水処理、害虫・雑草駆除をすることを特徴とする次亜塩素酸水の利用方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、脱色、脱臭、除菌、滅菌、殺菌、分解、洗浄、スケール除去・防止、排水処理、害虫・雑草駆除等に使用される次亜塩素酸水を生成する電解用電極を用いた電解装置と該電解装置を使用して生成される次亜塩素酸水の製造法、製造装置、次亜塩素酸水の利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
次亜塩素酸水を製造する方法としては、食塩電解により陽極で製造される塩素ガスを同時に陰極で製造される苛性ソーダ等のアルカリに吸収させ工業規模で製造されている。しかしながら、次亜塩素酸は本来分解し易い物質であるため、分解を防ぐ目的で極めて危険な強アルカリ溶液とせざるを得なかった。
該危険極まりない強アルカリの次亜塩素酸水を滅菌、殺菌、脱色を目的とした家庭用洗浄剤として市販され、家庭内で使用される事は極めて危険である。
【0003】
さらに、最近オゾンによる殺菌、過酸化水素水殺菌、アルコール消毒、酸化チタンにUV照射させ殺菌する光触媒方法等の新規技術が開発され、商品化されているもののそれぞれの方法で問題がある。
【0004】
例えば、オゾンは殺菌、脱臭作用が強く極めて効果的ではあるが、毒性が強く、現行の許容濃度である0.1ppmでさえ発癌性であり、また、オゾンは水に溶けにくく使用上汎用的ではない。一方、過酸化水素水による殺菌は、過酸化水素自体が不安定であるばかりではなく、残留過酸化水素による発癌性が指摘されている。
【0005】
アルコールによる消毒は、取り扱いが容易で、残留する事もなく、殺菌効果も十分であり、脱色等の酸化効果を除けば、家庭で実施するには有効な方法である。
しかしながら、アルコール消毒は高価であり、高濃度のアルコールが要求され、台所、洗面所等の水を使用するところで使用された際、アルコールが、希釈されるとその効果が失われる。該アルコール消毒効果は、次亜塩素酸水の酸化力による殺菌効果とは異なり、表面張力の差異による細菌の細胞膜の破壊によって殺菌効果が発現されるという理由によるからである。したがって、水により希釈されると、アルコールが水に容易に溶解するため、アルコールの界面張力が容易に水の界面張力に近くなるため、アルコールの界面張力による該効果が極めて瞬時にして失われるし、効果の尺度も使用者自身が計り知ることが出来ない。
【0006】
一方、次亜塩素酸水は、前述したように、分解し易い物質であるため、分解を防ぐ目的で、極めて危険な強アルカリの溶液とせざるを得ない。
該危険極まりない強アルカリの次亜塩素酸水を滅菌、殺菌、脱色を目的とした家庭用洗浄剤として市販され、家庭内で使用される事は極めて危険である。
人畜無害で安全な濃度の希薄濃度領域の滅菌、殺菌効果のある次亜塩素酸水が容易に入手あるいは生成する装置が望まれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、次亜塩素酸水を効率よく且つ耐久性を有する電極と該電極を備えた次亜塩素酸水生成装置を供給することにある。すなわち、希薄食塩水や塩化物イオンを含有する水溶液中で高効率で次亜塩素酸水を生成するための陽極触媒として、白金、酸化イリジウム及び酸化チタンからなる被覆層を有するチタンを陽極、陰極とし、あるいは該被覆を有する陽極とチタンを陰極としてなる一対の陽極と陰極の組合せにおいて、陰極を下側に、陽極を上側に設置した電解装置にて食塩水や塩化物イオンを含有する水溶液中で直流電源により通電し、電解することにより次亜塩素酸水を生成する電極と該電極を備えた高効率で耐久性を有する電解装置と該電解装置を用いた次亜塩素酸水の製造方法及び利用方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
安全で滅菌、殺菌効果のある次亜塩素酸水を容易に入手することを困難にしている問題は、次亜塩素酸水がそれ自体では不安定で分解しやすいことである。しかしながら、不安定で分解しやすいが故に必要とするときに生成し、不必要なときに速やかに分解し、無害な食塩水や塩化物イオンを含有する水溶液に戻ることが望ましいのである。したがって、装置に求められる課題としては、次亜塩素酸水が短時間で生成すること、構成成分自体に害がなく安全であること、溶出が無いこと、操作が簡単であること、使用後の次亜塩素酸水が、短時間で分解し食塩水や塩化物イオンを含有する水溶液に戻る自己分解型であること等が挙げられる。
【0009】
電気化学的に次亜塩素酸を高効率で生成する触媒としては、塩素発生効率の高い酸化ルテニウムと酸化イリジウムの混合酸化物が食塩電解用電極として工業規模で使用されている(中川、ソーダと塩素、38(5)、1987)。しかしながら、塩素発生効率としては、酸化パラジウムが高いことが文献でも紹介されている(高橋、ソーダと塩素、1990年7号)。白金は、それ自体は塩素発生効率として高いものではないが、酸化イリジウムとの組み合わせで古くから紹介されている(高橋、ソーダと塩素、1990年7号)。しかし、工業規模で使用されるまでに至ってない。
特許としては、高効率組成として、白金、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム又は白金、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化ルテニウムが有り、塩素発生効率に寄与する有効成分として酸化パラジウム、酸化ルテニウムの効果が挙げられている(特公昭46−21884、特公昭48−3954、特公昭55−35473、特公昭55−8595)。
該電極触媒の成分自体の安定性に関しては、次亜塩素酸水を生成する領域が、ソーダ電解のような高温度、高濃度の食塩水ではないため、陽極で塩素を発生する際に副反応として酸素発生を伴う。該酸素発生を伴う電極反応では、白金、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウムは耐久性に乏しく、電極触媒としては使用に耐えない。
従って、該成分を使用する特許第3319880号特許では、スラリー状の塗布液を大量に被覆して、該成分の消耗を補い、短寿命である該技術の電極寿命を大量被覆で補うため、初期は良好であった電解効率も急速に減少してしまうという欠点を有している。よって、該技術も「耐久性に乏しく、電極触媒としては使用に耐えない。」という電極技術の致命的な問題点を根本的に解決し得た技術ではない。
【0010】
該要求される課題を解決するための手段としては、高活性で消耗少ない安定な電極触媒を担持した電極から成る電解効率に優れた電解装置が不可欠であるということである。次亜塩素酸水を効率よく生成するためには、電解により塩素を発生する陽極の電極触媒が重要であることは言うまでもない。
陽極及び陰極反応を以下に示す。


実際には、陽極反応には電極触媒、塩化物イオン濃度、温度等により副反応である酸素発生反応を伴う。
副反応: 2H2O → O2 + 4H+ + 4e−
陰極反応: 4H2O + 4e− → 2H2 + 4OH−
全反応: 2H2O → O2 + 2H2
該副反応を抑制し、効率よく塩素発生をする電極触媒を選択する必要がある。
【0011】
塩素発生用電極触媒としては、酸化ルテニウムと酸化イリジウムの混合酸化物が高効率の電極触媒として実用化されている(中川、ソーダと塩素、38(5)、1987)。しかしながら、酸化ルテニウムは、酸素過電圧が低いために電解液中の塩化物イオン濃度が低い領域では酸素発生を加速し、塩素発生電流効率を著しく低下する。酸化イリジウムは塩素過電圧が高いが、陽極としての耐久性に優れているため低濃度塩化物イオン領域で使用される。しかし、前述したように塩素過電圧が高く、電解液温度が低下すると急激に塩素発生電流効率が低下するという致命的欠点を有している。
酸化パラジウムは、酸素過電圧が高く、少量でも塩素発生効率が高く塩素発生の触媒としては良いが耐久性に乏しく、使用に耐えない。
白金は酸素過電圧高いが白金族の中では塩素発生効率も高い。しかし、電解液温度が低下しても塩素発生効率が低下しないという特徴を有しているため酸化イリジウムとの組合わせで塩素発生効率の高い触媒となっている。ソーダ工業電解用触媒としては、白金は酸化ルテニウムや酸化イリジウムとの組合せにより使用されており特許も出願されている。しかしながら、白金は、耐久性に乏しく、選択的に消耗し酸化ルテニウムや酸化イリジウムを残留する。従って、該白金の効果も短時間のうち消失する欠点を有している。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、食塩水や塩化物イオンを含有する水溶液中で一対の陽極と陰極を電解し、高効率且つ耐久性を有する陽極あるいは陰極を提供することと該陽極、陰極を備えた電解装置を提供することにある。
次亜塩素酸水による漂白、殺菌あるいは滅菌は、家庭では日常的に行われている。
これらの漂白剤、殺菌剤はボトル詰めされ市販されている。 しかし、該漂白剤は、強アルカリ性溶液であり、次亜塩素酸濃度も高いため危険である。
隔膜を有する2室電解法では、操作上専門知識を必要とする。また、次亜塩素酸生成の電流効率が低下した分は酸素発生をし、その際水素イオンが陽極で生成し、陽極液のpHが低下して陽極より塩素ガスが発生する。従って、2室電解法は専門工場で使用する以外は極めて危険である。
【0013】
一方、無隔膜電解法は、次亜塩素酸水生成分はpHが上昇し、弱アルカリとなる以外、陽極で次亜塩素酸生成の電解効率が低下した分は酸素発生をし、その際水素イオンが陽極で生成するため、陰極で生成する水酸イオンと中和反応をするためpHは変化しない。
家庭や小規模事業所等にて食塩水や塩化物イオンを含有する水溶液を電解し、次亜塩素酸水を生成、使用する際は、発生し中性領域で使用されることが安全性の面で好ましい。しかしながら、電解次亜塩素酸は中性領域では分解しやすいという欠点を有している。
従って、食塩水や塩化物イオンを含有する水溶液を電解し、生成した次亜塩素酸水を使用するためには、使用時に必要な量の次亜塩素酸水を効率よく生成することが好ましい。
次亜塩素酸水を高効率で生成するためには、酸素発生の高い過電位を有し、且つ塩素発生電位の低い電極触媒を模索することと同時に生成した次亜塩素酸の陰極による還元を防止することが不可欠である。
【0014】
次亜塩素酸水を高効率で生成するためには、酸素発生過電圧の高い電極触媒として白金の触媒活性を活かし、酸化イリジウムの耐久性を活用する事が肝要である。白金と酸化イリジウムの電極触媒活性と耐久性を同時に引き出すために、鋭意研究の結果、白金と酸化イリジウムを担持体に高分散させることにより成し得ることを見い出し本特許を出願するに至った。
すなわち、電極の耐久性を得て且つ基材であるチタンに電極触媒を高分散させるためには、基材であるチタンと被覆層である電極触媒層との界面の結晶層の整合性を一致させることが極めて重要であり、予め基材となるチタンの表面を粗面化、酸洗により清浄化した後に大気中で焼成し、且つ該チタン基材を陽極酸化し5−50μm、好ましくは10−50μmから成る酸化チタン被覆層を金属チタンより成長させて設けた後に基材表面に形成した酸化チタンと被覆層の結晶が一致する酸化物層を形成する組成の触媒液を塗布し、大気中で焼成する事により白金、酸化イリジウム、酸化チタンからなる酸化物を主とする電極触媒を有する被覆層を形成することにより基材から触媒層まで整合性のとれた結晶層からなる密着強度のよい耐久性に優れた被覆層が生成する事が出来且つ触媒層には酸化チタンからなる担持体により高分散された触媒を有するため高い電流効率が発現することを見出した。
これらの担持体は、電気化学的に不活性であるため白金、酸化イリジウムの電気化学触媒を高分散に分散させる担持体としてのみ作用するために、各電極触媒の電極触媒としての効果が顕著に引き出されたものと考えられる。
該白金と酸化イリジウムを高分散させる担持体は、酸化チタン、酸化珪素、酸化アルミニウム又はこれらの混合物で効果がみられた。
酸化アルミニウムでは、結晶の整合性が異なるためか、耐久性に若干の減少がみられた。
該担持体は、電気伝導性が無いため、電極触媒として通電性を得るためには添加量に制限があることも見出した。
酸化パラジウムは、白金や酸化イリジウムと複合酸化物として酸化チタンの担持体と共に電極触媒として作用させたが、結晶構造が異なるためか短時間のうちに優先的に消耗した。
更に、電極触媒が白金と酸化イリジウムであり、該電極触媒は基材であるチタンと酸化物として結合し、被覆されている。そのため、白金含有量が多くなると、基材との密着性が悪くなり、剥離しやすくなる。
白金と酸化イリジウムの組成比は、前述したように、白金量が多くなると白金が基材より剥離するが、逆に、白金量が少なすぎると次亜塩素酸生成効率が減少する。
さらに、陰極には、基材としてチタンを用いても問題はないが、陽極で生成した次亜塩素酸水が陰極で還元され、次亜塩素酸水としての生成効率が減少する。
該問題を防止するため、陰極を陽極の下側に配置し、陰極で発生する水素ガスの上昇効果による対流を発生させることにより電解液を下側(陰極側)より上側(陽極側)に攪拌し生成した次亜塩素酸水の陰極への接触を防ぐことにより次亜塩素酸水としての生成効率の減少を防止することが可能となる。
【0015】
本発明の陽極と陰極の基材形状としては、電解により発生したガスや空気清浄の通気性、電解液の撹拌性を考慮し、エキスパンドチタン、パンチングチタン、穴明けチタン、網状チタン等の通気性、通液性に優れた形状のチタンが基材形状として重要である。
特に、陰極表面には、電解反応によりアルカリ性となるため、電解液中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンが水酸化物あるいは炭酸塩となって付着する。該陰極に付着したカルシウムイオンやマグネシウムイオンの水酸化物あるいは炭酸塩は、生成した次亜塩素酸水の陰極での還元を防止するため、次亜塩素酸水の生成効率の減少を防止するが、該付着物の沈積により陽・陰極間を閉塞するという問題を発生する。
該陽・陰極間の閉塞を緩和するために、陰極基材の開孔率は、陽極基材の開孔率より大きい方が望ましい。
従って、一旦陰極にカルシウムイオンやマグネシウムイオンが水酸化物あるいは炭酸塩となって付着すれば、陰極での生成した次亜塩素酸水の還元を防止するため、陽極、陰極間で上下を決める必要は無い。
しかしながら、長時間連続電解を継続する場合、陰極にカルシウムイオンやマグネシウムイオンが水酸化物あるいは炭酸塩となって付着し、電解電圧を上昇させるばかりでなく、陽極をも覆ってしまい電極の崩壊にいたる。
該陰極付着のカルシウム、マグネシウムの水酸化物や炭酸塩を除去するためには、家庭では酢酸等の有機酸で電極を洗浄することにより容易に除去可能である。
該有機酸を使用せず、陰極に付着したカルシウムイオンやマグネシウムイオンの水酸化物あるいは炭酸塩を除去する手段としては、陽極と陰極の極性を逆転し、電解することによりカルシウム、マグネシウムの水酸化物や炭酸塩で覆われた陽極(次亜塩素酸水生成時は陰極)より酸素ガスと水素イオンが生成し、該水素イオンによりカルシウム、マグネシウムの水酸化物や炭酸塩を溶解することが出来る。しかし、陰極としてチタンを使用すると、カルシウム、マグネシウムの水酸化物や炭酸塩を溶解する際、陽極となったチタンが不動態化し短時間の内に通電不能となったり、ブレークダウンを起こし、電極の破損に繋がる。
このため、陽極と同様に電極触媒を被覆したチタンを陰極として使用することにより、該問題は回避出来る。
さらに、陽極、陰極のチタン基材を予め、酸素雰囲気中で焼成し、さらに、チタンの陽極酸化により緻密な酸化被膜を付与し、該チタン基材の表面に5−50μmのチタン酸化物を生成させた後、電極触媒を焼成により被覆することで、基材であるチタンの耐食性が向上し、又は、ブレークダウン、水素脆化も起こりにくくなり、電極寿命の長い不溶性電極が得られる。
該酸素雰囲気中の焼成と陽極酸化により生成される酸化チタンの厚みは、5μm以下では厚みが十分ではなく効果が少ない、また50μm以上では厚過ぎて電気抵抗を増し、電解電圧が上昇してしまう。
また、チタンの陽極酸化により大気中で焼成した酸化チタンをさらに緻密にし、基材であるチタンの耐食性を向上させるためには、硫酸ナトリウム、硫酸、硝酸、クロム酸等の溶液中でチタンを陽極として電解して得られる、所謂「カラーチタン」と呼ばれるチタンの陽極酸化方法により可能である。
該操作は、大気中で焼成して得られる酸化チタンの結晶を陽極酸化によりさらに緻密化するものである。
陽極酸化電圧は、電極が使用される電圧以上の電圧で陽極酸化することが重要である。
通常に水溶液電解で使用する電極では、3V以上50V程度の範囲内で陽極酸化することで容易に大気中で焼成して得られる酸化チタンの結晶を緻密化することが可能である。
電極触媒である白金と酸化イリジウムの組成比は、いかなる組成比でも次亜塩素酸水の生成効率に関しては、特に問題とはならないが、白金と酸化イリジウムの2成分系の場合は、白金組成比が、酸化イリジウムより多い場合には、白金の選択的消耗が発生する。本特許の担持体酸化物が添加されるためこの様な白金の選択的消耗は発生しない。従って、次亜塩素酸水の高い生成効率を維持しながら電極寿命は長寿命となり、高価格の貴金属の節約に繋がる。
該技術に関しては、ソーダと塩素1995年7号において、高橋によりPt−IrO2電極の電解効率に関し、詳細に考察されている。
該文献では、Pt−IrO2電極の次亜塩素酸生成効率が食塩濃度の低下につれて減少することが記載され、0.5mol/dm3の食塩濃度では30%の生成効率まで低下する。
該食塩濃度の低領域では高橋はパラジウム(酸化パラジウム)を電極触媒とすることを提唱
している。
しかしながら、本特許の担持体添加してなる電極触媒を用いた電極では約60%生成効率であり、陰極を陽極の下側に配置した電解装置では約73%の生成効率を示した。
従って、本特許では、電極触媒として消耗が大きいパラジウム(酸化パラジウム)を使用することなく高効率で次亜塩素酸水を生成することが可能である。
さらに、電解効率の向上を図るために、消耗の大きいパラジウム(酸化パラジウム)を用いること無く、電解液中に有機酸又は有機酸塩を添加し、電解することにより電解効率の向上を図ることを見出した。
該技術は、有機酸や有機酸塩によるpHの低下による塩素発生効率の向上と有機酸や有機酸塩の陰イオンが陽極の表面に吸着することにより陽極での酸素発生過電圧が上昇し、塩素発生反応が優先的に進行することによるものと推察される。
さらに、類似技術としては、特願平4−341529がある。
該発明の目的は、電解によりアルカリ性イオン水を得る場合、極間の極性逆転を繰り返しても寿命が長く耐久性に優れた飲料水電解用電極を提供することと、塩素成分の発生の少ない飲料水電解用電極を提供することにある。
該特許は、電極触媒が、白金−酸化イリジウム−酸化タンタルの系であるが、該特許の発明者らは「具体的構成」に於て、該発明の構成理由として、酸化イリジウムを添加する目的を、「このように、上記組成に加え、さらに酸化イリジウム添加することにより、特に、陽極として使用する場合の電極寿命が延び、極性逆転での電極寿命も十分となる。イリジウムを40モル%以下とするのは、イリジウムが40モル%をこえると極性逆転での電極寿命が短くなるからである。また、陽極として使用する場合塩素が発生しやすくなることから飲料水のアルカリ性イオン水を得るときの使用には適さない。」と記載している。
しかしながら、白金−酸化イリジウムが塩素電解用に優れた電極触媒であることは以前より知られている。
該電極触媒に関する考察は、高橋らによって(ソーダと塩素・1990年7号)において、既になされている。
電極触媒が、白金のみの場合と異なり、白金−酸化イリジウム系の電極触媒は、容易に塩素発生を生じる。
従って、酸化イリジウムの添加は、特願平4−341529の発明者らの電極寿命を延ばしても、有害な塩素発生の少ない飲料水用の電極を供給するという本来の意図に反しているものと推察される。
また、本発明の電極に於て、担持体である酸化チタンの代替として、特願平4−341529の発明である酸化タンタルを用いて電極を作成し、本発明の無隔膜電解槽にて3%の塩水中で10日間電解し、電極成分を蛍光X線で分析したところ、酸化タンタルのみが減少していた。この時、電解液は、アルカリ性の次亜塩素酸水を生成していた。
酸化タンタルの選択的消耗にたいする理由は、不明であるが、アルカリ溶液中では、酸化タンタルは、電解中に加水分解を受け、溶解したものと推察された。
従って、無隔膜電解により次亜塩素酸水を生成し、アルカリ溶液となる本発明の無隔膜電解技術に電極材料として酸化タンタルを含有する電極を使用することは出来ない。また、使用する材料、考え方等において、陽極で酸素発生、陰極で水素発生を行い、隔膜が存在するが故に陽極液が酸性、陰極液がアルカリ性を呈す隔膜電解と本発明の無隔膜電解技術は全く異なる技術であると言わざるを得ない。
さらに、特願平4−341529の発明者らは電極寿命試験をアルカリイオン水では考えられない硫酸水溶液にて実施しており、該試験結果が弱酸性より弱アルカリ領域で使用されるアルカリイオン水や次亜塩素酸水生成の正当な評価結果とは考えられない。
また、特願平4−214744には「飲料水の消毒方法」として「…・熱分解法によりバルブ金属基体上に白金とチタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ及びスズから選ばれた一種以上の酸化物とを被覆させた不溶性電極…・」が開示されている。
さらに、「…・白金の含有率が、40−90mol%…・」と被覆層中の電極触媒である白金の含有量が開示されている。
該特許では、基体が、「バルブ金属基体としては、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ等があげられるが、安価なチタンが多く使用される。」と該特許の電極基体の選択に対する基準が、「どれでも使用可能であるが、価格が安いのでチタンを使用するのである」と基体の選択理由を述べているが、本発明の技術では、寿命を延ばすために基材−基材表面酸化物−触媒層酸化物の界面結晶層の整合性を一致させる必要があるため、基材を大気中で焼成し、表面に基体金属の酸化物層を成長させている。
食塩水中で陽極として使用可能で且つ基体表面に生成した基体金属酸化物が直流電気を通すことが出来る金属は、チタンのみであることを見出した。
例えば、特願平4−214744で開示されているチタン以外のタンタル、ジルコニウム、ニオブでは、これらの表面に僅かでも酸化層を形成するとこれらの酸化物は直流電気を流さないため電圧が上昇してしまい電解出来ない。
チタンのみが本発明を具現化し、電極寿命を延ばすための技術に関する唯一の金属である。チタンを母材とするチタン合金は本発明の技術に適応可能である。従って、本発明の技術は、同じ電極技術であるが、特願平4−214744とは異なる範疇の技術である。
さらに、該特許の発明者らは、白金族元素に関し、電極触媒として検討した結果を「白金以外のイリジウムやルテニウム等の白金族金属を用いて電極を作成して試験を行ったが、白金含有被覆の不溶性電極より長寿命の電極を見い出せなかった。」ことを開示している。
さらに、「本発明に用いる白金含有被覆の不溶性電極が、白金被覆の不溶性電極よりも長寿命である理由は明らかでないがチタン、タンタル等の卑金属酸化物を共存させたために、被覆がより均一になっており、また密着性も向上したことが考えられる。」と該特許による「白金含有被覆の不溶性電極」の長寿命化の理由として、「チタン、タンタル等の卑金属酸化物を共存」による被覆の均一化及び密着性の向上に基づくことをその根拠としている。
しかしながら、白金は、単独では塩素過電圧と共に酸素過電圧の高い電極触媒であると同時に金属状態の電極触媒であるため白金族金属酸化物型の電極触媒より消耗速度が速という欠点を有している(高橋;ソーダと塩素、1995年、4月号)。
また、高橋が該参考文献(ソーダと塩素、1995年、4月号)に記載しているように、Pt−IrO2電極はPt電極より長寿命である。
一方、特開2002−275697の「酸素発生電極」では「酸素発生を伴う電解工程に使用する不溶性電極において、陽分極だけでなく陰分極を伴う電解においても十分な耐久性を有する電極を提供する…・・」ための手段として「導電性金属基体上に、酸化イリジウムを主成分とする電極活物質を被覆してなる電解用電極において、電極活物質被覆層を650℃から850℃の酸化雰囲気中で加熱することにより、陰分極を伴う電極に対する優れた耐久性を有する酸素発生用電極が得られる。」を開示している。すなわち、該技術の「電極活物質被覆層を650℃から850℃の酸化雰囲気中で加熱すること」による目的は、電極活物質である酸化イリジウムと電極活性層を形成するバルブ金属酸化物を「650℃から850℃の酸化雰囲気中
で加熱すること」により、陰分極時に選択的溶解するバルブ金属酸化物の結晶化度を向上し、陰分極時におけるバルブ金属酸化物の選択的溶解を防止することによる寿命延長化であることを開示している。
しかしながら、該技術の発明者らは、「陰分極時に、バインダーとして添加しているタンタル酸化物あるいは他のバルブ酸化物の選択的溶解によるものである。
……」として、バルブ酸化物の選択的溶解のメカニズムに関して詳細を述べていないが、該技術の発明者らの「発明の属する技術分野」から「…・、主として亜鉛、錫、または銅の電気めっきやステンレス鋼の表面処理、金属の電解採取に使用される…・」と示されている。
一方、該技術の発明者らは、「従来の技術」で「通常、鋼板の電気メッキでは、鋼板の両面をメッキするために陽極を二枚用いており、二枚の陽極の電位に差がある場合、より低電位側の電極の板道外部は断続的に陰極として働いていることがわかっている(陽極の陰極化現象)。」を開示している。
これらのことより、めっき中に「陽極の陰極化現象」により、陽極が「陰極として働いている」とき、陽極の電極活物質被覆層には、めっきすべき金属が析出していることになる。
めっきの電解効率が100%でなければ、僅かの水素も発生していることになる。
従って、特開2002−275697「酸素発生電極」の技術は、めっきに使用する陽極が陰極として作用し、めっき金属が陽極上に析出し、陽極として作用する際、めっき金属が溶解するときバルブ酸化物の選択的溶解が発生し陽極としての寿命が短くなるため「電極活物質被覆層を650℃から850℃の酸化雰囲気中で加熱すること」によりバルブ金属酸化物の結晶化度を向上し寿命の向上を図る特許である。
また、実施例に記載の発明の評価方法が、めっき金属を添加しない「極性反転寿命試験」は、特開2002−275697の評価方法として適正であるか、極めて疑問である。
以上のことより、特開2002−275697「酸素発生電極」の技術は、電解における陽極の特許であることは、本発明の技術と同じであるが、その技術目的、分野、技術内容は、全く異なる技術である。
また、特開2002−275697「酸素発生電極」の電極は、実施例で開示されている「極性反転寿命試験」で、「次に、5分間10A/dm2の逆電流を流して(陰分極)測定した。」結果200時間程度の寿命では、使用に耐えないし、本発明の技術とは格段の差異があることからも技術目的、技術内容が全く異なることが明らかである。
さらに、本発明の技術は、酸素過電圧の高い白金を酸化イリジウムと組み合わせて電極触媒を構成し、これら電極触媒を酸化チタンに高分散し、酸化チタンの結晶層の整合性を一致させることにより高電流効率で長寿命のPt−IrO2−TiO2/TiO2−TiOx/Tiから成る電極を発明した。
基体であるチタン表面に酸化チタン層を有しているため酸化イリジウム触媒層の酸化物と結晶性は良く、基体表面の酸化チタンは逆通電状態においても水素化チタンを形成することがないので水素脆性によるチタン崩壊が防止でき逆通電条件下でも電極寿命が長寿命となることを見出し、本発明に至ったのである。
【0016】
本特許の基体であるチタンは、純チタン(所謂、JIS1種、JIS2種 チタン)及びチタンを母材とするチタン合金であれば特に純度に無関係に選択出来る。しかし、純チタンが最も安価であり、入手し易い。
エンボス加工、ダル加工、ブラスト、ローレット加工、切削加工等の物理的方法により該チタンの表面を粗面化し、フッ酸、塩酸、硫酸、シュウ酸、クエン酸及びこれらの混酸水溶液により表面を酸洗後、水洗し乾燥する。
基体であるチタンの粗面化は、電極触媒層との密着性を良くする為に重要である。
基体が薄い場合には、前述の物理的手法が使用できない場合には、酸洗条件である酸の種類、酸洗温度、酸洗時間を制御することにより、チタン基体の表面を粗面化することが可能である。
例えば、希硫酸を使用し、60℃の低温で2時間程度で酸洗すれば、チタンの粒界が腐食され表面に粗い粗面化が可能である。
また、シュウ酸水溶液を沸騰させてチタンを酸洗することにより細かいピットが形成され、細かい粗面化をすることが出来る。
さらに、これらを併用することにより、粒界腐食と細かいピットの粗面化を付与すること可能である。
次いで、チタンの転移温度以下好ましくは、大気中で700℃以下加熱する事によりチタン表面に酸化チタン層を形成する。酸化層の厚みを制御するためには、550−700℃の範囲が適当である。
又、前述した公知の金属チタンの電解による陽極酸化によってもチタン表面に酸化チタン層を形成することが出来る。
大気中焼成により酸化層の厚い酸化チタンを形成し、さらに陽極酸化により緻密な酸化チタンを形成させる。該異なる酸化チタンの形成方法を併用することにより、本発明の酸化チタン層は、基体である金属チタンから表面の酸化チタンまで緻密な酸化チタン層が連続的に形成される。
表面層の酸化チタンは、一般的にはルチル相が形成されるが、アナターゼであっても特に問題は無く、基体である金属チタンより表面層の酸化チタンまで連続的に酸化層が整合性良く成長していることが重要である。
連続的に酸化層が整合性良く成長していることにより、且つ緻密な酸化チタンが形成されることにより、密着性が向上し剥離等を防止することが可能となる。
該酸化チタンの厚みは10−50μm程度が良い。5μm以下では金属チタンから表面層の酸化チタンまでの成長が十分ではなく、十分な密着性を得られないばかりではなく、逆通電状態において、水素化チタンを形成することにより発生する水素脆性によるチタンの崩壊を防止することが出来ず、酸化チタン層生成による電極寿命の長寿命化の効果が得られない。
逆に、50μm以上のルチル若しくはアナターゼを成長させるとその電気的抵抗の増加により次亜塩素酸水生成の電解電圧が上昇してしまい消費電量のアップを招くので好ましくない。
また、酸化チタンの厚みが厚過ぎると基体チタンより剥離し易くなる。
酸化チタン層を付与するため、大気中で所定の温度、時間で加熱されたチタン基体は、急冷すると基体チタンと表面層の酸化チタンの収縮速度が異なるため、酸化チタン層が剥離する可能性がある。
従って、チタン基体表面に大気中で所定の温度、時間で加熱し、酸化チタン層を付与した後は、200℃程度まで徐冷する事が望ましい。
該酸化チタンの厚み制御は、酸化チタンを形成したチタン基体の断面を電子顕微鏡観察によりその厚みを計測し、そのときの酸化温度と時間の関係より容易に決定することが出来る。
該酸化チタン層を付与したチタン基体に電極触媒層である白金、酸化イリジウムの電極触媒と酸化チタンもしくは酸化チタンの一部を酸化珪素又は酸化アルミニウムで置き換えた担持体の複合酸化物を被覆するが、該被覆層は、既に公知の方法、すなわち、大気中で所定の温度で加熱することにより分解し、金属や金属酸化物の被覆層を形成する熱分解法により可能である。
CVD、PVD等の方法でも被覆は可能であるが高価である。
電気めっき、化学めっきでも被覆は可能であるが、安価で同時に多成分の金属又は金属酸化物被覆を行うには熱分解法が好適である。
熱分解法を例に取り本発明をさらに詳細に説明する。
本発明に使用するチタン、白金、イリジウム、珪素、アルミニウムでは、例えば、これらの金属のアルコキシド、塩化物、硝酸塩、アミン等の有機金属化合物のアルコール溶液、塩酸溶液、硝酸溶液等が被覆溶液としてあげられる。
これらの化合物は、大気中で700℃以下の加熱により分解し、金属あるいは金属酸化物を形成する。
該被覆溶液の適量を前記チタン基体に塗布し、300℃から700℃の温度範囲で焼成して白金と他成分の金属酸化物をチタン基体に被覆する。被覆量は、塗布溶液中の金属濃度、塗布液量により制御される。
最終被覆量は、塗布溶液の塗布、焼成を繰り返すことにより所望の量を被覆することが可能である。
一回毎の焼成時間を長くし焼成することにより一層毎の密着性を向上することができるが、最終焼成後に焼成温度以上の温度で長時間追加焼成すること、すなわち「焼結」することにより、基体金属チタン−酸化チタン層−電極被覆層間の密着性の向上を図ることができる。
基体金属チタン−酸化チタン層−電極被覆層間の密着性が向上することにより、腐食性の電解液が基体チタンまで浸透することが困難になるため、基体チタンの腐食が防止され、電極寿命が約3倍以上向上した。
さらに、焼結することにより電極触媒である白金の被覆層内での分散性が改善されるため、電解効率の上昇に繋がることを見出した。
焼結したものと、しなかったものとでは、焼結したものの電解効率が、約50%以上向上した。
焼結による該白金の分散性向上に基づく電解効率の増加は、担持体に対する白金含有率、焼結温度と焼結時間により依存されるが、各白金含有率に対しては一定の値となる。
しかしながら、過度の焼結は、基体チタンの酸化を促進させることとなり、電解電圧の上昇を招いたり、被覆層の焼結度が増加して、脆くなり電気伝導性の低下とともに電極寿命の低下に繋がるので危険である。
該焼結条件もチタン基体表面に酸化チタンを形成した時と同様に、焼結温度と焼結時間の関係と酸化チタンの該焼結条件により生成した酸化チタン層の厚みを電子顕微鏡観察によりその断面厚みを計測することにより容易に決定することが出来る。
該厚みは、チタン基体の酸化チタン層形成に関して述べたように、焼結後において50μm以下であることが望ましい。
【0017】
電解による次亜塩素酸水の製造は、陽極及び陰極の電極反応を「課題を解決する方法」において示したが、pHの変動は生じない。
しかしながら、生成した次亜塩素酸イオンは極めて弱い酸であるため、該水溶液は加水分解をしてアルカリ性を示す。
次亜塩素酸水の脱臭、殺菌効果等をより効果的にするためには、電解水のpHを低減させる必要がある。
塩酸や硫酸等の鉱酸は強酸であり、これらによってpHを低下させることは、容易であるが、塩酸や硫酸等の鉱酸は劇物であり、これらを使用することは危険である。
又、これらの使用によるpHの変動は激しく、制御することは困難であり、酸性領域では次亜塩素酸が分解して有毒な塩素ガスが発生する。
従って、安全に且つ活性の高い次亜塩素酸水を得る方法としては、弱酸である炭酸やリン酸、有機酸もしくはこれらの塩との緩衝液を用いて、pHを低下させもしくはpHを制御しながら電解することにより活性の高い次亜塩素酸水を得るか、電解により製造した次亜塩素酸水を使用する際、弱酸である炭酸やリン酸、有機酸もしくはこれらの塩との緩衝液を該次亜塩素酸水と混合して使用することも効果的である。
又、次塩素酸水を脱色、脱臭、除菌、滅菌、殺菌、分解、洗浄、スケール除去・防止、排水処理、害虫・雑草駆除等に使用する際、有機酸又は有機酸塩を添加して使用することにより次亜塩素酸水の活性向上と該有機酸が細胞や汚れの表面に吸着し、浸透圧や表面張力を低下させることにより界面活性剤と同様の効果が作用し、脱色、脱臭、除菌、滅菌、殺菌、分解、洗浄、スケール除去・防止、排水処理、害虫・雑草駆除等に対する効果が上記効果の協同効果により一層効果あるものとなることを見出した。
該有機酸又は有機酸塩としては、その分子構造内にカルボキシル基、水酸基、スルホン基、スルフィン基、フェノール基、チオール基、スルフィド基、イミド基、アミン基、アミド基、オキシム基、スルホンアミド基を有する有機酸及び有機酸塩又はリン酸、リン酸エステル又はこれらの塩等が挙げられる。
該有機酸又は有機酸塩に関しては、構成する炭素数に限定は無く、水溶液を形成すればよい。例えば、エタノール、酢酸、クエン酸、グルタミン酸、システイン、アミノエタンスルホン酸、グルコース−6−リン酸、グルコン酸等の炭素数の少ないものから脂肪酸類、糖酸類、アミノ酸、タンパク質等の高分子化合物が挙げられる。
特に、アルキル又はアルキルアリールベンゼンスルホン酸の様な陰イオン界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム又は塩化ベゼトニウム等の陽イオン界面活性剤又はポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、ポリアクリルアミド等の両性界面活性剤は、洗浄効果、殺菌効果が得られるので好適である。
上記有機酸等とエタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン、グルコン酸等の水酸基を有するアルコール類を併用することで上記協同効果による次亜塩素酸水の高活性効果が得られる。
該有機酸等は、使用目的とする効果により、人体に悪影響のないことを考慮し適宜選択されるものである。
電解による次亜塩素酸水は、本発明の目的である「装置に求められる課題として、次亜塩素酸水が短時間で生成すること、構成成分自体に害がなく安全であること、溶出が無いこと、操作が簡単であること、使用後の次亜塩素酸水が、短時間で分解し食塩水や塩化物イオンを含有する水溶液に戻る自己分解型であること等が挙げられる。」としたが、例えば、殺菌作用でみた場合、食品等の有機物を多く含有するものの殺菌では次亜塩素酸が反応し、短時間のうちに効果が失われたり、次亜塩素酸水が水溶液であるため保持することが困難であるため殺菌時間を要す処理にも関わらず、一定の殺菌時間を得られないまま流失してしまうことがある。
該場合、次亜塩素酸水を冷却、氷結し、生成した氷又は氷を融解あるいは水等の溶媒に溶解、希釈しながら被処理物と接触させ脱色、脱臭、除菌、滅菌、殺菌、分解、洗浄、スケール除去・防止、排水処理、害虫・雑草駆除の処理を必要とする次亜塩素酸水濃度で且つ適切な時間で処理することが可能となった。
又、冷却してあるため次亜塩素酸自体の分解を防ぐことが可能である。
さらに、次亜塩素酸水の活性を高め且つ上記氷結による高濃度の次亜塩素酸を適切な処理時間を可能とするためには、次亜塩素酸水の製造時、電解液として炭酸又はリン酸、有機酸、有機酸塩の1種以上を含有する塩化物イオン水溶液を直流電解して次亜塩素酸水を製造後、該次亜塩素酸水を冷却、氷結し、生成した氷又は氷を融解あるいは水等の溶媒に溶解、希釈しながら被処理物と接触させ脱色、脱臭、除菌、滅菌、殺菌、分解、洗浄、スケール除去・防止、排水処理、害虫・雑草駆除の処理を必要とする次亜塩素酸水濃度で且つ適切な時間で処理することも可能であるし、又は、次亜塩素酸水と炭酸又はリン酸、有機酸、有機酸塩の1種以上を含有する水溶液をそれぞれ別に冷却、氷結し、生成したそれぞれの氷を任意に混合して氷を融解あるいは水等の溶媒に溶解、希釈して用いることも可能である。
【0018】
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳細に説明する。
実施例1.
チタン製のメッシュにブラストを掛け表面を粗化した後、沸騰した10%蓚酸水溶液中に浸漬して酸洗・乾燥した。
該処理したチタンを700℃のマッフル炉内で大気中1時間焼成後炉内で室温まで放冷し、1%硫酸ナトリウム水溶液中で30Vまで陽極酸化たのち、以下の組成(モル%)を含有する塩酸溶液を調製し、清浄した上記チタン製メッシュに刷毛でイリジウムと白金の総量が1g/m2となるよう塗布した。室温にて乾燥後550℃で20分間焼成し、取り出し室温まで冷却する操作を10回繰り返し、イリジウムと白金の総量で10g/m2被覆した本発明の組成電極を作製した。また、本発明の組成電極をさらに600℃で60分間焼結し、本発明の焼結電極を製作した。


さらに、該電極を陽極、陰極として用い、極間を2mmとして陰極を下側に陽極を上側に配置し、電流密度を5A/dm2、食塩濃度を高橋(ソーダと塩素、1995年7月号)が試験した0.1mol/dm3の食塩水中で電解し、電解後の液を計り取り、ヨウ素法によりチオ硫酸水溶液の規定液で滴定を行い次亜塩素酸の電解効率をもとめた。結果を以下に示す。


本発明のいずれの組成領域でも、高電解効率の結果が得られ、さらに焼結による電解効率の改善及び陰極を下側に、陽極を上側に配列した本発明の効果が顕著に現れた。
比較例1.
実施例1.と同様に試料No.比1から比10の組成の電極を作成した。但し、チタンの初期700℃焼成及び陽極酸化処理と最終600℃焼結は実施しなかった。


該電極を陽極、陰極として用い、実施例1.と同条件で電解し、次亜塩素酸の電解効率を求めた結果を以下に示す。


実施例2. 寿命試験
実施例1.及び比較例1.にて製作した試料を陽極及び陰極として、極間を1mm、食塩濃度が1g−NaCl/dm3の濃度の食塩水中で5A/dm2の連続電解試験と15分毎の極性変換電解試験を実施した。
セル電圧が初期10Vであったためセル電圧が15Vに達した時点を寿命と判断した。
結果を下表に示す。




上記電解効率及び電解寿命の結果より本発明の効果が明らかである。
実施例3.
実施例1.と同様にチタン製メッシュにブラスト、酸洗・乾燥処理後、700℃のマッフル炉内で大気中焼成後炉内で室温まで放冷したのち、該チタン製メッシュを陽極として5%硫酸水溶液中で30V電圧まで陽極酸化したのち、イリジウムと白金及びチタンの組成比が40モル%、40モル%、20モル%となる塩酸水溶液の塗布液をイリジウムと白金の総量が1g/m2となるよう塗布し、室温にて乾燥後450℃で20分間焼成し、取り出し室温まで冷却する操作を10回繰り返し、イリジウムと白金の総量で10g/m2被覆した電極を作成した。さらに該試料を550℃で60分間焼結し、酸化チタンの厚みが約1、3、5、10、20、30、50、60、80μmとなる焼結電極を製作した。
これら金属チタンより成長させて設けた酸化チタン被覆層の厚みの異なる電極の塩素発生電解電圧を測定した。
さらに、実施例2.と同様の条件で極性変換電解寿命試験を実施した。
その結果を以下に示す。


以上の結果より酸化チタン被覆厚みが50μm以上では塩素発生電解電圧が1.24Vとなり、数μm程度の被覆厚みの場合と比較して100mV以上上昇し、さらに厚くなると加速度的に電解電圧の上昇がみられた。
実施例4.
1m3密閉容器に一酸化窒素濃度1.0 vol ppmのガスを封入し、該容器中へ食塩濃度が1g−NaCl/dm3、酢酸及び酢酸ナトリウムによりpH4.5に緩衝液とした水溶液1リットル中に実施例1.のNo.7組成の50mm×50mmの2枚のメッシュ電極を用い、陰極を下側、陽極を上側に配置、浸漬した本発明の無隔膜電解装置に0.05A直流電流を通電し電解しながら陰極の下側より3.0dm3/min.の流量で密閉容器中の一酸化窒素ガスを電解装置の陰極の下側より散気させ、10時間密閉容器中の一酸化窒素濃度を測定し、その変化を調査した。
比較例として本発明の電極の代わりに板状白金めっき電極を陽極・陰極を用い、並列配置し実施例と同様に電解しながら密閉容器中の一酸化窒素濃度を測定した。
結果を以下に示した。


本発明の電極、電解装置が優れていることが明らかである。
実施例5.
カットレタスを試料として、一般細菌への除菌効果を検証するため、水道水、市販次亜塩素酸ナトリウムを希釈し次亜塩素酸ナトリウム濃度を90ppmとした水溶液、及び食塩濃度が1g−NaCl/dm3の水溶液へ実施例4.の本発明の無隔膜電解装置を浸漬し0.05A直流電流を通電しながら生成した次亜塩素酸水に浸漬したもの、さらに、食塩濃度が1g−NaCl/dm3の水溶液をグルコン酸及びグルコン酸ナトリウムによりpH4に緩衝液とした水溶液に実施例4.の本発明の無隔膜電解装置を浸漬し0.05Aの直流電流を通電しながら生成した次亜塩素酸水に浸漬したものを4,7,24時間後SA培地での細菌培養試験を行った。


本発明電解装置
本発明の電極、電解装置が優れていることが明らかである。
実施例6.
カットレタスを試料として、一般細菌への除菌効果を検証するため、市販次亜塩素酸ナトリウムを希釈し次亜塩素酸ナトリウム濃度を90ppmとした水溶液、食塩濃度が10g−NaCl/dm3の水溶液へ実施例4.の本発明の無隔膜電解装置を浸漬し0.5A直流電流を通電しながら生成した次亜塩素酸水を製氷した氷に浸漬したもの、さらに、食塩濃度が10g−NaCl/dm3の水溶液にイソプロピルアルコールを添加し、酢酸によりpH2とした水溶液を実施例4.の本発明の無隔膜電解装置を浸漬し0. 5A直流電流を通電しながら生成した次亜塩素酸水を製氷した氷に浸漬したものを4,7,24時間後SA培地での細菌培養試験を行った。


本発明電解装置製氷
本発明の電極、電解装置が優れていることが明らかである。
【0019】
【発明の効果】
本発明は、次亜塩素酸水を生成するにあたり、安全、高効率で且つ長寿命である電極を備えた電解装置を提供することにある。
本発明の電解装置は、基材であるチタン上に予め大気中焼成及び電解酸化の併用により厚さ5−50μm酸化チタン上に白金と酸化イリジウムを電極触媒、酸化チタンを担持体とした電極触媒被覆層を被覆し、さらに電極触媒被覆層を設けた焼成温度以上の温度で最終焼結して次亜塩素酸水の電解効率を向上し、且つ逆通電に対する耐性を付与した電極を陽極と陰極に用い食塩水を電解するにあたり陰極を下側、陽極を上側に配置し、陰極で発生する水素ガスのガスリフトによる攪拌作用で陽極への食塩水の供給と生成した次亜塩素酸水の陰極による還元を防止し、電解効率の高い電解装置を供給することが出来る。
さらに、該電解装置を食塩水に浸漬し電解をしながら室内の空気を電解液内に導入し、バブリングさせることで室内の空気中のホルムアルデヒドやNOx等の汚染物質分解、浮遊カビ等の雑菌を滅菌することにより、室内の汚染物質の濃度低減、カビ、雑菌数の低下により汚染物質やカビ等の過敏症に対しても効果が期待出来る。
又、一方で電解により発生する酸素ガスや水素ガスのキャビテーションにより生成するマイナスイオンが空気中に放出され、所謂「レナード効果」による癒しの効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
電解装置の説明
【図1】本発明の電解装置/平面図(実施例1)
【図2】本発明の電解装置/断面図(実施例2)
【符号の説明】
1 直流電源
2 本発明のメッシュ陽極
3 本発明のメッシュ陰極
4 保護メッシュ
5 保護メッシュ
6 絶縁性樹脂
【出願人】 【識別番号】302070039
【氏名又は名称】中島 孝俊
【出願日】 平成14年12月26日(2002.12.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−204328(P2004−204328A)
【公開日】 平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願番号】 特願2002−377146(P2002−377146)