トップ :: C 化学 冶金 :: C23 金属質材料への被覆;金属質材料による材料への被覆;化学的表面処理;金属質材料の拡散処理;真空蒸着,スパツタリング,イオン注入法,または化学蒸着による被覆一般;金属質材料の防食または鉱皮の抑制一般



【発明の名称】 アルミニウム合金の表面処理方法
【発明者】 【氏名】鈴木 光夫
【住所又は居所】埼玉県上尾市原市1333−2 三井金属鉱業株式会社総合研究所内

【氏名】笠原 暢順
【住所又は居所】埼玉県上尾市原市1333−2 三井金属鉱業株式会社総合研究所内

【氏名】百武 正浩
【住所又は居所】埼玉県上尾市原市1333−2 三井金属鉱業株式会社総合研究所内

【氏名】土橋 誠
【住所又は居所】埼玉県上尾市原市1333−2 三井金属鉱業株式会社総合研究所内

【要約】 【課題】クロムフリーの処理液を使用してアルミニウム合金の表面を処理するが、クロム酸塩法やリン酸−クロム酸塩法で処理した場合と比較して同等以上の効果を達成できるアルミニウム合金の表面処理方法を提供する。

【解決手段】アルミニウム合金の表面を、過マンガン酸又はマンガン酸の水溶性塩の濃度が、KMnO量に換算して、0.5〜50g/Lであり、リン酸の水溶性塩の濃度が、NaPO量に換算して、0.5〜100g/Lであり、ピロリン酸の水溶性塩の濃度が、K量に換算して、0.5〜100g/Lであり、液温が25〜95℃である処理液で0.5〜20分間化成処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金の表面を、
過マンガン酸又はマンガン酸の水溶性塩の濃度が、KMnO量に換算して、0.5〜50g/Lであり、
リン酸の水溶性塩の濃度が、NaPO量に換算して、0.5〜100g/Lであり、
ピロリン酸の水溶性塩の濃度が、K量に換算して、0.5〜100g/Lであり、
液温が25〜95℃である
処理液で0.5〜20分間化成処理することを特徴とするアルミニウム合金の表面処理方法。
【請求項2】
アルミニウム合金の表面を、
過マンガン酸又はマンガン酸の水溶性塩の濃度が、KMnO量に換算して、1〜30g/Lであり、
リン酸の水溶性塩の濃度が、NaPO量に換算して、1〜50g/Lであり、
ピロリン酸の水溶性塩の濃度が、K量に換算して、1〜50g/Lであり、
液温が25〜95℃である
処理液で0.5〜20分間化成処理することを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金の表面処理方法。
【請求項3】
液温が30〜70℃である処理液で0.7〜15分間化成処理することを特徴とする請求項1又は2記載のアルミニウム合金の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミニウム合金の表面処理方法に関し、より詳しくは、クロムフリーの処理液を使用してアルミニウム合金の表面を処理するが、クロム酸塩法やリン酸−クロム酸塩法で処理した場合と比較して同等以上の効果を達成できるアルミニウム合金の表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金の化成処理方法として、従来、アルカリ−クロム酸塩法、クロム酸塩法、リン酸−クロム酸塩法等のクロム系や、リン酸亜鉛法、ノンクロメート化成処理法(タンニン酸法)等の非クロム系が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
クロム系であるクロム酸塩法やリン酸−クロム酸塩法でアルミニウム合金の表面を化成処理した場合には、耐食性及び塗膜の密着性は良好であるが、クロム酸塩を使用するので環境問題が生じる。非クロム系であるリン酸亜鉛法やタンニン酸法でアルミニウム合金の表面を化成処理した場合には、塗膜の密着性は良好であるが、耐食性がクロム酸塩法と比較し劣るという問題があった。
【0004】
近年、環境問題への配慮から、アルミニウム合金表面の化成処理について種々のノンクロメート法が提案されている(例えば、特許文献1〜6参照。)。しかしながら、耐食性及び塗膜の密着性の両方を同時に満足できる点でクロム酸塩法やリン酸−クロム酸塩法と同等以上の効果を達成できるノンクロメート化成処理方法がなく、更なる開発が続けられている。
【0005】
【非特許文献1】
(社)表面技術協会編、「表面技術便覧」、日刊工業新聞社、1998年2月、p.691
【特許文献1】
特開平7−90614号公報
【特許文献2】
特開平10−237667号公報
【特許文献3】
特開平11−131254号公報
【特許文献4】
特開2000−34577号公報
【特許文献5】
特開2002−249886号公報
【特許文献6】
特開2002−275649号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、クロムフリーの処理液を使用してアルミニウム合金の表面を処理するが、クロム酸塩法やリン酸−クロム酸塩法で処理した場合と比較して同等以上の効果を達成できるアルミニウム合金の表面処理方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記の課題を達成するために鋭意検討した結果、過マンガン酸又はマンガン酸の水溶性塩、リン酸の水溶性塩及びピロリン酸の水溶性塩を含有する処理液を用いてアルミニウム合金の表面を化成処理することにより耐食性及び塗膜の密着性の両方に優れたアルミニウム合金製品が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明のアルミニウム合金の表面処理方法は、アルミニウム合金の表面を、
過マンガン酸又はマンガン酸の水溶性塩の濃度が、KMnO量に換算して、0.5〜50g/Lであり、
リン酸の水溶性塩の濃度が、NaPO量に換算して、0.5〜100g/Lであり、
ピロリン酸の水溶性塩の濃度が、K量に換算して、0.5〜100g/Lであり、
液温が25〜95℃である
処理液で0.5〜20分間化成処理することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の表面処理方法で化成処理するアルミニウム合金としては、種々の技術分野で実用されている全てのアルミニウム合金、例えば、JIS H 5202で規定されているAC1A、AC1B、AC2A、AC2B、AC3A、AC4A、AAC4B、AC4C、AC4CH、AC4D、AC5A、AC7A、AC8A、AC8B、AC8C、AC9A、AC9B等のアルミニウム合金鋳物、JIS H 5302で規定されているADCl、ADC3、ADC5、ADC6、ADC10、ADC10Z、ADC12、ADC12Z、ADC14等のアルミニウム合金ダイカスト、JIS H 4000で規定されている合金番号2017、2219、3003、3104、4032、5005、5154、6101、6061、7075、8021等のアルミニウム合金展伸材が包含される。また、本発明で化成処理するアルミニウム合金製品の形態としては、金型鋳造品、砂型鋳造品、ダイカスト、展伸材等を例示することができる。
【0010】
アルミニウム合金の表面を化成処理する前に、前処理することが好ましい。前処理は、例えば、機械的方法、溶剤法、アルカリ法、酸洗法の何れでも実施できる。例えば、アクタン70(メルテックス社製、酸性フッ化アンモニウム)の濃度5g/Lで温度40℃の水溶液中に1分間浸漬し、その後水洗することで実施できる。
【0011】
本発明の表面処理方法で用いる化成処理液は過マンガン酸又はマンガン酸の水溶性塩を含有し、好適には、カリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩や、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩を含有することができ、その他にアンモニウム塩を含有することもできる。化成処理液中の過マンガン酸又はマンガン酸の水溶性塩の濃度は、KMnO量に換算して、0.5〜50g/Lであり、好ましくは1〜30g/Lである。化成処理液中の過マンガン酸又はマンガン酸の水溶性塩の濃度が、KMnO量に換算して、0.5g/L未満の場合には、化成処理後のアルミニウム合金表面の耐食性が不十分となる傾向がある。また、過マンガン酸又はマンガン酸の水溶性塩は化成処理液中に溶解度まで存在することができるが、化成処理液中の過マンガン酸又はマンガン酸の水溶性塩の濃度が50g/Lを超えて高くなってもそれに見合った耐食性の向上は見られない。
【0012】
本発明の表面処理方法で用いる化成処理液はリン酸の水溶性塩を含有し、好適にはNa PO、NaHPO、NaHPO、NHPO、Mn(HPO、Zn(HPO等を含有することができる。化成処理液中のリン酸の水溶性塩の濃度は、NaPO量に換算して、0.5〜100g/Lであり、好ましくは1〜50g/Lである。化成処理液中のリン酸の水溶性塩の濃度が、NaPO量に換算して、0.5g/L未満の場合には、化成処理後のアルミニウム合金表面の耐食性が不十分となる傾向がある。また、化成処理液中のリン酸の水溶性塩の濃度が100g/Lを超える場合には、アルミニウム合金の表面にスマットが生じ、塗装した時に外観不良となる。
【0013】
本発明の表面処理方法で用いる化成処理液はピロリン酸の水溶性塩を含有し、好適にはK、Na、Na、K、(NH等を含有することができる。化成処理液中のピロリン酸の水溶性塩の濃度は、K量に換算して、0.5〜100g/Lであり、好ましくは1〜50g/Lである。化成処理液中のピロリン酸の水溶性塩の濃度が、K量に換算して、0.5g/L未満の場合には、化成処理後のアルミニウム合金表面への塗膜の密着性が不十分となる傾向がある。また、化成処理液中のピロリン酸の水溶性塩の濃度が100g/Lを超える場合には、アルミニウム合金の表面にスマットが生じ、塗装した時に外観不良となる。
【0014】
本発明の表面処理方法で用いる化成処理液は上記の組成を有するので、その化成処理液のpHは10〜13程度になる。
本発明の表面処理方法においては、化成処理液の液温を25〜95℃、好ましくは30〜70℃に維持して実施する。液温が25℃未満の場合には、化成処理後のアルミニウム合金表面の耐食性が不十分となる傾向がある。また、液温が95℃を超える場合には、化成処理液の蒸発が激しくなり、浴の管理が難しくなる傾向がある。
【0015】
本発明の表面処理方法においては、化成処理時間は0.5〜20分間であり、好ましくは0.7〜15分間である。化成処理時間が0.5分間未満の場合には、化成処理後のアルミニウム合金表面の耐食性が不十分となる傾向がある。また、化成処理時間が20分間を超えて長くなってもそれに見合った耐食性の向上は見られない。
【0016】
上記の条件下で化成処理した後、水洗及び純水洗浄を行い、次いで乾燥する。乾燥については一般的には室温〜90℃程度で10〜120分間実施する。
本発明の表面処理方法で得られる表面処理アルミニウム合金製品は耐食性及び塗膜の密着性の両方に優れており、クロム酸塩法やリン酸−クロム酸塩法で処理した場合と比較して同等以上の効果を達成できる。
【0017】
【実施例】
以下に、実施例及び従来例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1〜17
ADC−12合金製の多数の試験片(50mm×40mm×0.5mm)を、アクタン70(メルテックス社製)の濃度5g/Lで液温40℃の水溶液中に1分間浸漬し、その後室温での水道水洗浄を30秒間実施し、次いで室温での純水洗浄を30秒間実施した。
【0018】
上記のように処理した各々の試験片を、次に、KMnO、NaPO及びK を第1表に示す濃度で含有する50℃の化成処理液中に1分間浸漬し、その後室温での水道水洗浄を30秒間実施し、次いで室温での純水洗浄を30秒間実施した。最後に80℃で20分間乾燥を実施した。
【0019】
次にカチオン電着塗装を室温の電着液中で150Vで2.5分間通電して実施し、電着後に150℃で20分間の焼きつけを実施した。その後、更に、浸漬塗装法によりアクリル系焼きつけ塗料を塗布し、10分間静置した後、150℃で20分間の焼きつけを実施した。
【0020】
塗装を行った試験片の外観について目視観察による評価した。その結果は第1表に示す通りであった。また、JIS K 5400の8.5.2に準拠した碁盤目テープ法(1mm間隔)による塗膜密着性試験を実施した。その結果は第1表に示す通りであった。更に、JIS K 5400の9.1に準拠した耐塩水噴霧試験法による耐食性試験(但し試験後の評価に関してはクロスカットの片側2mm、合計4mm幅以外の領域における腐食の有無で判定した。)を実施した。その結果は第1表に示す通りであった。
【0021】
実施例18〜27
ADC−12合金製の多数の試験片(50mm×40mm×0.5mm)を、アクタン70(メルテックス社製)の濃度5g/Lで液温40℃の水溶液中に1分間浸漬し、その後室温での水道水洗浄を30秒間実施し、次いで室温での純水洗浄を30秒間実施した。
【0022】
上記のように処理した各々の試験片を、次に、KMnO濃度が5g/L、NaPO濃度が10g/L、K濃度が10g/Lである化成処理液中に第2表に示す液温で第2表に示す時間浸漬し、その後室温での水道水洗浄を30秒間実施し、次いで室温での純水洗浄を30秒間実施した。最後に80℃で20分間乾燥を実施した。
【0023】
次にカチオン電着塗装を室温の電着液中で150Vで2.5分間通電して実施し、電着後に150℃で20分間の焼きつけを実施した。その後、更に、浸漬塗装法によりアクリル系焼きつけ塗料を塗布し、10分間静置した後、150℃で20分間の焼きつけを実施した。
【0024】
塗装を行った試験片の外観について目視観察による評価した。その結果は第2表に示す通りであった。また、JIS K 5400の8.5.2に準拠した碁盤目テープ法(1mm間隔)による塗膜密着性試験を実施を実施した。その結果は第2表に示す通りであった。更に、JIS K 5400の9.1に準拠した耐塩水噴霧試験法による耐食性試験(但し試験後の評価に関してはクロスカットの片側2mm、合計4mm幅以外の領域における腐食の有無で判定した。)を実施した。その結果は第2表に示す通りであった。
【0025】
従来例1(クロム酸塩法)
ADC−12合金製の試験片(50mm×40mm×0.5mm)を、アクタン70(メルテックス社製)の濃度5g/Lで液温40℃の水溶液中に1分間浸漬し、その後室温での水道水洗浄を30秒間実施し、次いで室温での純水洗浄を30秒間実施した。
【0026】
上記のように処理した試験片を、次に、アロジン600(日本パーカライジング社製、クロム酸イオン及びフッ素イオンを含有する)を1.5g/Lの濃度で含有する30℃の化成処理液中に1.5分間浸漬し、その後室温での水道水洗浄を30秒間実施し、次いで室温での純水洗浄を30秒間実施した。最後に80℃で20分間乾燥を実施した。
【0027】
次にカチオン電着塗装を室温の電着液中で150Vで2.5分間通電して実施し、電着後に150℃で20分間の焼きつけを実施した。その後、更に、浸漬塗装法によりアクリル系焼きつけ塗料を塗布し、10分間静置した後、150℃で20分間の焼きつけを実施した。
【0028】
塗装を行った試験片の外観について目視観察による評価した。その結果は第3表に示す通りであった。また、JIS K 5400の8.5.2に準拠した碁盤目テープ法(1mm間隔)による塗膜密着性試験を実施を実施した。その結果は第3表に示す通りであった。更に、JIS K 5400の9.1に準拠した耐塩水噴霧試験法による耐食性試験(但し試験後の評価に関してはクロスカットの片側2mm、合計4mm幅以外の領域における腐食の有無で判定した。)を実施した。その結果は第3表に示す通りであった。
【0029】
【表1】


【0030】
【表2】


【0031】
第1〜3表に示すデータからも明らかなように、クロムフリーの処理液を使用してアルミニウム合金の表面を処理する本発明の表面処理方法においては、クロム酸塩法やリン酸−クロム酸塩法で処理した場合と比較して同等の効果を達成できる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の表面処理方法においては、クロムフリーの処理液を使用してアルミニウム合金の表面を処理するが、クロム酸塩法やリン酸−クロム酸塩法で処理した場合と比較して同等以上の効果を達成でき、クロム酸塩を使用しないので環境問題が生じない。
【出願人】 【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
【住所又は居所】東京都品川区大崎1丁目11番1号
【出願日】 平成14年11月20日(2002.11.20)
【代理人】 【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之

【公開番号】 特開2004−169120(P2004−169120A)
【公開日】 平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願番号】 特願2002−336364(P2002−336364)