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【発明の名称】 害鳥忌避性銅合金、害鳥忌避資材、及び鳥害を防止する方法
【発明者】 【氏名】廣瀬 幸雄

【氏名】池田 貢

【氏名】徳田 圭康

【要約】 【課題】反復継続して使用しても学習効果が発現せず、二次的な薬害を引起こす恐れがない害鳥防止資材の提供。

【解決手段】銅70kg、鉛10kg、スズ10kg、及びヒ素10kgを溶融炉にて混合し1,083℃に加熱して全成分を均一に溶融混合した後、冷却して100kgのインゴットを製造し、任意の形状に成型加工して、害鳥の飛来個所に載置、垂下、あるいは張設する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅70〜80質量%およびヒ素5〜15質量%を主要合金元素として含む害鳥忌避性銅合金。
【請求項2】
さらに鉛3〜10質量%を添加した請求項1記載の害鳥忌避性銅合金。
【請求項3】
さらにスズ5〜10質量%を添加した請求項2記載の害鳥忌避性銅合金。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した害鳥忌避性銅合金を板材に加工した害鳥忌避資材。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した害鳥忌避性銅合金を線材に加工した害鳥忌避資材。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した害鳥忌避性銅合金を棒材に加した害鳥忌避資材。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した害鳥忌避性銅合金を粉体に加工した害鳥忌避資材。
【請求項8】
請求項4〜7に記載した害鳥忌避資材を、害鳥が飛来してくる個所に載置、垂下、あるいは張設することを含む鳥害を防止する方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、害鳥忌避性銅合金、害鳥忌避資材、及び鳥害を防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1996年度農林水産省植物防疫課が作成した鳥の種類別の穀物の被害量に関する統計によると、カラスが40000トン超、ハトが10000トン超、スズメ、カモ、ヒヨドリが、それぞれ5000トン超、ムクドリが2000トン超となっており、鳥全体の被害面積は15〜20万ヘクタールとなっている。
【0003】
これらの統計により、我が国では、カラス、スズメ、ヒヨドリ、ムクドリ等のスズメ目の鳥、カモ類、ハト類が代表的な害鳥とされていることが当然のことと理解される。
【0004】
1996年度の農林水産省園芸局植物防疫課のデータによると、スズメによる作物の収穫量に対する被害量の割合は、イネが0.06%超、豆類が0.02%、麦類が0.02%、果樹が0.01%、野菜が0.01%である。
【0005】
同じく、ハトによる作物の収穫量に対する被害量の割合は、豆類が1%、イネ、麦類、果樹、野菜が、それぞれ、0.01%である。
【0006】
同じく、ムクドリによる作物の収穫量に対する被害量の割合は、果樹が0.04%超、豆類が0.02%、野菜が0.01%、麦類及びイネ類が、それぞれ、0.002%である。
【0007】
同じく、ヒヨドリによる作物の収穫量に対する被害量の割合は、果樹が0.08%、野菜が0.04%超、豆類が0.01%超、イネ類、麦類及びいも類が、それぞれ、0.002%である。
【0008】
同じく、カモによる作物の収穫量に対する被害量の割合は、イネが0.06%超、野菜が0.01%超、豆類が0.01%、麦類及びいも類が、それぞれ、0.005%である。
【0009】
同じく、カラスによる作物の収穫量に対する被害量の割合は、豆類が0.5%、果樹が0.3%超、野菜が0.25%超、イネ、麦類、及びいも類が、それぞれ、0.05%超である。
【0010】
これらのデータから、鳥によって被害を受ける作物の種類の割合はそれぞれ異なるが、穀類、果樹、野菜、豆類が万遍なく被害を受けていることが理解される。
【0011】
なかでも、カラスによる農作物の被害は甚大である。ハト、スズメ、ヒヨドリ、ムクドリ等の他のスズメ目の鳥が被害を与える対象が、穀類や小果実と限定されているのに対して、カラスは、穀類、豆類、野菜等殆ど総ての作物、リンゴ、梨、ブドウ、柿、桃等果実類、西瓜等瓜類等殆どあらゆる農作物、果樹に及んでいる。
【0012】
カラスの被害は、農作物、果樹ばかりではなく、養殖場の魚介類、養鶏場の鶏、雛、卵を獲ることもある。また、北海道では、秋になって海浜の魚がとれなくなり、えさがなくなると、群をなして飼い犬を襲うこともある。
【0013】
さらに、近年、家庭或いは事業所から出る生ゴミをビニル袋に入れてゴミ集積場に集積するようになってから、ビニル袋を破って生ゴミを漁るようになり、街の景観上も、衛生上も諸問題を引き起こし、いわゆる「カラス公害」という用語が定着している。
【0014】
カラスの被害は上述したものに留まらず、送電線への被害も深刻である。1991年4月電気情報社発行の「電気現場技術」第30巻、347号、特集「鳥害の実態と対策の検討例」は、高圧送電線への鳥害、特にカラスによる被害は、送電線の様々な個所で発生しているが、特に、耐張碍子にカラスが止まって、隣接するアークホーン(電力用開閉装置)やジャンパ線といわれている導体架線装置、或いは懸垂装置を短絡させることであると報告している。
【0015】
1991年度の東北電力の調査は、2回線鉄塔でカラスの巣は123個、4回線鉄塔で134個発見されたと報告している。しかも、その70〜80%は、送電線鉄塔の最頂部に作られており、電力会社では極めて危険が伴う作業によりこれらを撤去しているということである。
【0016】
上述した鳥害を防止するために様々の方法が試みられてきた。
その一つとして、果樹園全体に防鳥網を張ったり、ハウス、或いはトンネルの中で栽培する方法が採用されている。防鳥網、ハウス或いはトンネルの中での栽培は、鳥の侵入を完全に防止するので、極めて効果的な方法である。然しながら、これらの方法は、資材自体にコストが掛かり、さらに設備をするための労務費、保守管理費等が嵩み、費用対効果が見合わない場合がある。
【0017】
また、鳥が嫌がる音で鳥の聴覚を刺激したり、各種造形物で鳥の視覚を刺激して、田畑、果樹園等から追い払う方法も採用されている。
【0018】
鳥の視覚を刺激する方法としえは、たとえば、目玉模様を付した風船或いはアドバルーン、反射光を利用した金属リボン、布製或いはビニール製吹流し、マネキン人形、剥製のカラス、猫のモデル、カラスの死骸等がある。然しながら、これらの方法のなかには、テレビ等のマスコミで採り上げられたために、一時的に流行したような側面もあり、また、鳥の学習効果のために、永続した忌避効果を挙げることはできない。
【0019】
また、鳥の聴覚を刺激する方法としては、爆音機、忌避音発生装置等がある。これらの方法の場合、爆発音が発生した時点では鳥は逃散するが、しばらくすると爆音機、或いは忌避音発生装置が設置してある場所に戻り、再度、爆発音が発生すると、逃散し、しばらくすると元の場所に戻るということを数回反復した後は、学習効果により慣れて、やはり、永続した忌避効果を挙げることはできない。
【0020】
その他に、田圃、畑、果樹林等の上に釣り糸(テグス)を張ったりは、高圧送電線やビルの屋上等に鳥が飛来して営巣するのを防止するため、針山や、一種の鳥もちである粘着物質を置く方法等も採用されている。
【0021】
いずれにしても、鳥が嫌がる音で鳥の聴覚を刺激したり、各種造形物や反射光で鳥の視覚を刺激して、追い払う方法の最大の欠点は、反復継続して刺激を与えている間に、鳥の学習効果により、その刺激に慣れ、永続した忌避効果を挙げることができないことである。
【0022】
その他に化学物質系忌避剤がある。我が国で許可されている忌避剤は、たとえば、スズメ、ハト、カラス等を駆除するジメチル・チオカルバモイル・ジスルフィド、酸化第2鉄、カラス、ムクドリに効果があるテトラヒドロチオフェン等がある。薬剤による鳥の殺傷と捕獲は、鳥獣保護法によって制約されており、用法を間違うと人体にも被害が及びかねない二次的な薬害を発生するという問題がある。
【0023】
薬剤による害鳥の殺傷による駆除は、アメリカで精力的に研究されている。然しながら、我が国では、農家の一戸当たりの所有する農地面積、即ち害鳥駆除対象面積がアメリカに比べて格段に狭いという理由、或いは法体系の問題等により、その研究開発は極めて限定されたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って、発明が解決しようとする主たる課題は、従来の害鳥の駆除方法のように、駆除対象個所全体に防鳥網等を張って鳥の侵入を防止したり、音、光、造形物等で鳥の視覚や聴覚を刺激して追い払ったり、或いは駆除対象個所にテグスを張って鳥の飛来を防止する方法に代えて、反復継続して使用しても学習効果が発現しない新しい鳥害防除方法を提供することである。
【0025】
発明が解決しようとする別の課題は、二次的な薬害を引起こす恐れがある化学物質系忌避剤ではく、何らかの作用機序により鳥の中枢神経に作用して嫌忌感覚を起こさせ、逃散させることができる新しい鳥害防除資材を提供することである。
【0026】
発明が解決しようとするさらに別の課題は、二次的な薬害を引起こす恐れがある化学物質系忌避剤ではなく、何らかの作用機序により鳥の中枢神経に作用して嫌忌感覚を起こさせ、逃散させることができる銅−ヒ素を主要合金元素として含む害鳥忌避性銅合金を提供することである。
【0027】
さらに、発明が解決しようとする別の課題は、銅−ヒ素を主要合金元素として含む害鳥忌避性銅合金を使用して鳥害を防止する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明者は、前述した機械的方法或いは薬剤によらない全く新規な鳥害防除方法を策定するに当たって、鳥の生理機能、特に学習能力を研究した。鳥の学習能力は、主として視覚と聴覚に基づくものである。即ち、鳥は、それまで見たことがない造形物を反復継続して見たり、或いはそれまで聴いたことがない音を反復継続して聴く過程で、それらを記憶し、同時に状況判断して、それらが鳥を殺傷するような危険物ではないと学習する。従って、鳥の視覚や聴覚を刺激する方法では、鳥の学習能力を破壊することは不可能である。
【0029】
ところで、ある種の植物や昆虫の中には、有毒な青酸配糖体(Nitril Glycoside)を自ら合成することが知られている。青酸配糖体は、ニトリル配糖体で、シアンヒドリンの水酸基に糖が結合したもので、酵素分解によりアルデヒド又はケトンと猛毒のシアン化水素(青酸)及び糖に分解する有毒物質である。キョウニンやトウニンなどに含まれるアミグダリン、アマ科の種皮または胚などに含まれるリナマリン、或いはマダラ蛾が生産するリナマリン、ロタウストラリンなどが知られている。多くの鳥は、極僅かの例外を除いて、これらの青酸配糖体を含有する植物、或いは昆虫を予め識別し忌避し食べないことがよく知られている。
【0030】
本発明者は、鳥が、有毒な青酸配糖体を含む植物や昆虫を識別し忌避し食べないのは、何世代にも亘る摂食により遺伝子に組み込まれた結果であると推断した。そこで、殺虫剤、除草剤、除木剤、落葉剤、乾燥剤ならびに殺鼠剤として使用されているヒ素に着眼した。
【0031】
即ち、鳥が、嘗て、ヒ素で汚染された昆虫、植物等を摂食した経験により、ヒ素を忌避する能力が遺伝子に組み込まれているのではないかと考えた。
【0032】
そこで、本発明者は、ヒ素をはじめ幾つかの金属を毒性という観点から検討し、それらを害鳥忌避材として使用することを検討した。さらに、毒性の強い金属を単体、或いは有機・無機化合物として使用することは水汚濁防止法、大気汚染防止法、毒物劇物法、危険物船舶運送及び貯蔵規則等各種の法令により規制されているので、それらを適当なマトリックス金属と合金化することを検討した。
【0033】
以下の記載において、ACGIH許容濃度とは、The American Conference of Governmental Industrial Hygienistsの略でアメリカ産業局衛生専門会議と訳されている。毎年、化学物質TLV委員会を開いて、ほとんど総ての労働者に悪影響を及ぼさないと考えられる化学物質濃度値(Threshold Limit Value:TLV)を勧告している。
【0034】
TWAは、Time−Weighted Averageの略で、1日8時間、一週40時間の時間荷重平均濃度で、この濃度ではほとんど総ての労働者が毎日繰り返し暴露しても健康に悪影響がない。
【0035】
LDは、実験動物に経口、経皮、または注射で化学物質を投与した場合の致死量(Lathal Dose)をいう。
LD50は50%致死量である。
LDL0は最小致死量(Lethal Dose Lowest)である。
【0036】
TDは、実験動物に経口または注射で化学物質を投与した場合に中毒を引き起こさせる量(Toxic Dose)をいう。
TDL0は最小中毒量(Toxic Dose Lowest)である。
【0037】
LCは、実験動物に経気量(ガス)等から化学物質を吸入させた場合の致死濃度(Lathal Concentration)をいう。
LDnは実験動物のn%が致死する濃度である。
LDL0は最小致死濃度(Lethal Concentartion Lowest)である。
【0038】
「毒物」とは、毒物及び劇物取締法(昭和25年12月28日 法律第303号)に規定されたものをいう。
【0039】
「劇物」とは、毒物及び劇物取締法(昭和25年12月28日 法律第303号)に規定されたものをいう。
【0040】
「危険物」とは、消防法(昭和22年4月7日 法律第22号)に規定されたものをいう。
【0041】
本発明者は、先ず、ヒ素を、本発明の害鳥忌避材の主忌避性物質として採用し、さらに、[危険有害性の分類]で「その他の有害性物質」に分類されている鉛を副忌避性物質として採用し、抗菌性金属材料として知られている銅をマトリックス金属として合金にすることとを検討した。
【0042】
ヒ素は、[危険有害性の分類]で「急性毒性物質、その他の有害性物質」に分類されている。ヒ素化合物は、従来から殺虫剤、除草剤、除木剤、落葉剤、乾燥剤ならびに殺鼠剤として使用されてきた。
【0043】
ヒ素の急性毒性は、下記の通りである。
ラット、経口、LD50、763mg/kg
ラット、腹腔内、LD50、13390mg/kg
モルモット、皮下、LDL0、300mg/kg
男性、経口、TDL0、7857mg/kg/55年
【0044】
ヒ素を合金元素という点から考察する。ヒ素は合金元素として多少の用途があるに過ぎない。金属ヒ素の合金元素としての主な用途は銅、或いは鉛との合金である。
【0045】
工業用純銅には主要不純物として酸素(O)、硫黄(S)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などが入っている。また、古くから自然銅を溶解して製造した製品の多くには数質量%のヒ素が入っている。これは、ヒ素が入ると冷間加工で硬度が増すからである。銅に0.3〜0.5質量%のヒ素を添加すると耐熱性が増し、鉛に少量のヒ素を添加すると硬度を増すのでPb−Sb系の軸受材料に添加され、Pb−Sb系を主体とした鉛合金の時効硬度化促進剤として有効に利用されている合金元素である。
【0046】
次ぎに、本発明者は、鉛を副忌避性物質として採用することを検討した。
【0047】
鉛(Pb)は、[危険有害性の分類]で「その他の有害性物質」に分類されている。鉛(Pb)の急性毒性は下記の通りである。
ラット、腹腔内、LDL0、1g/kg
ヒト、経気道、TCL0、10μg/m3
女性、経口、TDL0、450mg/kg/6年
【0048】
鉛は、ヒトの中枢神経系に作用して中毒症状を起こすことがある。鉛中毒は古くからある中毒で、古代ローマ人は鉛を食器に使用したため鉛毒の被害を受けたり、我が国でもお化粧に鉛を使用していた時代には、やはり鉛中毒が頻繁に発生したことがある。また、印刷業、塗料業、電池工業などに携わる人達には往々見られた職業病である。中毒量は酢酸鉛50g、鉛丹25g、鉛白20gを1回に内服するか、或いは鉛に換算して毎日5〜10mgを3〜4週間内服するか、または1m3中に1.0〜2mgの鉛を含む室内に居住していれば短時日に中毒を起こす。鉛は、経口的にも、経皮的にも、また呼吸によっても吸収される。
【0049】
鉛を合金元素という点から考察する。純鉛は一般に使用目的によっては柔軟すぎ、強度、硬度が不足する。この欠点を補い、純鉛にない特殊な発現させるために、Sn,Sb,Cd,Bi,As,Te,Li,Na,Caなどの金属元素と合金にされる。特に、Pb−Sn系合金、或いはヒ素を少量添加して硬度を増したPb−Sn−As系合金などが知られている。また、黄銅に1〜4質量%の鉛を添加して切削性を改善することも行われている。
【0050】
次ぎに、本発明者は、ヒ素、及び鉛を添加するマトリックス金属として銅を使用することを検討した。銅の許容濃度は0.2mg/m2で、皮膚に接触すると皮膚炎を起こす。毛髪と皮膚の変色を起こし、目、鼻を刺激し、蒸気を吸入すると金属熱を起こすことがある。
【0051】
また、銅の急性毒性は下記の通りである。
マウス、腹腔内、LD50、3500μg/kg
ヒト、経口、TDL0、120μmg/kg
【0052】
銅は、銀と同様に殺菌・抗菌作用を有することが古くから知られていて、毒物発見のため食器や箸などに使用されてきた。現在では、銅や銀を実用金属材料或いは複合材料に応用し、微生物の付着・増殖の抑制、殺菌効果、さらに異臭分解能をもつ材料が開発されている。たとえば、ステンレス鋼(γおよびα系)に銅を〜3質量%程度添加して合金化し、熱処理により素材中に均一にε−Cuを析出させたものがある。
【0053】
銅には各種の合金元素を添加して合金化して、その本来の導電率、機械的性質、切削性、耐食性、加工性等を改良することが行われている。銅添加される合金元素としては、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、銀(Ag)、ベリリウム(Be)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)等が例示される。それぞれ、単独で、あるいは2種以上銅(Cu)に添加することにより、上述した性質を改善することができる。
【0054】
本発明者は、本発明の銅合金が害鳥忌避資材として長期間野外で野ざらしで使用されることに鑑みて、銅合金の、強度、耐食性を改善することが重要であると考えて、スズを選択した。
【0055】
銅−スズ合金は、合金材料としては最も古い歴史をもっていて青銅として古くから知られていて、古来スズは約2〜35質量%の広い範囲で使用されているが、10質量%以上では偏析してもろい相が現れ、10質量%前後の合金は砲金とよばれ実用化されている。
【0056】
以上述べたように、本発明の合金は、銅をマトリックス金属としヒ素を必須の合金元素として添加し、さらに鉛、或いはスズを合金元素として添加したものである。本発明の合金において、ヒ素は、殺虫剤、除草剤、除木剤、落葉剤、乾燥剤ならびに殺鼠剤として使用されてきた毒性を、鉛は、生物の中枢神経系に作用して中毒症状を起こす作用を間接的に利用し、スズは本発明の銅合金に強度と耐食性を付与し、且つ、付随的に銅合金を微妙な色に着色する効果がある。
【0057】
工業用純銅には、本来、ヒ素は不純物として混入している場合があるが、本発明では、銅に積極的に添加するので、合金元素として取り扱う。また、ヒ素を銅に積極的に添加したことが特徴の1つである。
【0058】
銅に対するヒ素、鉛およびスズの添加量を決定するに当たっては、それぞれの銅に対する最大固溶度を参考にした。銅に対するヒ素、鉛およびスズの最大固溶度は表−1の通りである。




【0059】
本発明者は、本発明の合金設計を行うに当たって、本発明の合金を銅−スズ合金に、ヒ素及び鉛を合金元素として添加したものであるとして、先ず、銅に添加するスズの量的範囲を特定し、次いで、ヒ素及び鉛の添加量を特定することとした。
【0060】
銅−スズ合金は、いわゆる青銅として古くから知られている。スズは約2〜35質量%の広い範囲で添加することができる。本発明の銅合金は害鳥忌避資材として長期間野外で野ざらしで使用するので、強度、耐食性を改善することが重要である。従って、スズの上限値は10質量%が好ましい。スズが10質量%以上の場合、偏析してもろい相が現れるので好ましくない。また、スズの下限値は5質量%が好ましい。スズが5質量%以下の場合、強度、耐食性を改善することができないので好ましくない。
【0061】
ところで、銅−スズ合金の色は、スズの添加量が増加するに従って、通常、銅赤色→黄橙色→白色の順に微妙に変化する。この性質は、可視光線領域での電磁波吸収特性の変化による銅合金特有のものである。本発明の銅合金は、鳥の視覚を刺激して逃散させることを第1義的効果とするものではないが、それでも、鳥の視覚を刺激することは、本発明の銅合金の第2義的効果として重要である。その観点から、スズの添加量を5〜10質量%の範囲に設定すると、単なるモノトーンではなく、銅赤色→黄橙色の微妙な色調、いわゆる玉虫色になり、複雑、微妙な光を反射し、鳥の視覚を刺激する効果があるものと考えられる。
【0062】
次ぎに、ヒ素の添加量に関して考察する。ヒ素は合金添加元素としては多少の用途があるに過ぎない。たとえば、銅に0.3〜0.5質量%のヒ素を添加すると耐熱性が増し、鉛に少量のヒ素を添加すると硬度を増すのでPb−Sb系の軸受材料に添加されている。即ち、その添加量は〜0.5質量%程度である。また、自然銅を溶解して作った製品の多くには3〜5質量%のヒ素が入っている、これはヒ素が入ると冷間加工で硬度が増すからである。いずれにしても、従来、銅に添加されるヒ素の量は多くても5質量%程度であった。本発明者が調査、検討したところ、ヒ素が5質量%程度の銅合金では、鳥を忌避させるという本発明の所期の目的、効果が奏功されないことが分かった。従って、本発明の銅合金におけるヒ素の添加量は5〜15質量%の範囲が好ましい。ヒ素の添加量が5質量%以下の場合、鳥を忌避させる効果がなく、ヒ素の添加量15質量%は、銅に対する固溶限度に近く、合金製作過程で危険性が多くなり、暴露防止措置にコストが掛かるので好ましくない。
【0063】
次ぎに、鉛の添加量に関して考察する。合金元素としての鉛は、Sn,Sb,Cd,Bi,As,Te,Cu,Li,Na,Caなどの金属元素と合金を作ることが知れれている。銅系合金の場合、黄銅に1〜4質量%の鉛を添加して切削性を改善することが行われている。本発明者が調査、検討したところ、鉛を1〜4質量%含む黄銅には、鳥を忌避させる効果がないことが分かった。本発明で銅−錫合金に鉛を添加する理由は、それぞれ毒物であるヒ素との相乗効果により、合金になっても、鳥に対して何らかの作用機序により鳥を忌避する効果を奏功しようとするものである。従って、本発明の銅合金における鉛の添加量は3〜10質量%の範囲が好ましい。鉛の添加量が3質量%以下の場合、鳥を忌避させる効果がなく、鉛の添加量が10質量%では、銅に対する固溶限度に近く、合金製作過程で危険性が多くなり、暴露防止措置にコストが掛かるので好ましくない。
【0064】
以上の理由により、本発明の銅合金における合金元素としてのスズの添加量は5〜10質量%、ヒ素の添加量は5〜15質量%、鉛の添加量は3〜10質量%の範囲が好ましい。従って、本発明の銅合金におけるマトリックス金属としての銅は、70〜80質量%である。即ち、本発明により、銅70〜80質量%、スズ5〜10質量%、ヒ素5〜15質量%、鉛3〜10質量%から成る合金が提供される。尚、本発明の合金は、合金製作工程上、不可避的不純物(non−avoidable impurities)、たとえば、酸素、硫黄、鉄、リン、アンチモン、ビスマス等を含むことを妨げない。
【0065】
本発者は理論に拘束されることを好まず、また、本発明は、鳥が本発明の銅合金を忌避する理由或いは生理学的作用機序を理論的及び実験的に解明することを目的とするものではない。従って、以下、鳥が本発明の銅合金を忌避する現象を、実験に基づいた実証的推論で解説する。
【0066】
本発明の合金のマトリックスである銅が、銀と同様に殺菌・抗菌作用を有していて、毒物発見のため食器や箸などに使用されてきたこと、ヒ素が、殺虫剤、除草剤、除木剤、落葉剤、乾燥剤ならびに殺鼠剤として長年使用されてきたこと、鉛が、生物の中枢神経系に作用して中毒症状を起こすこと、及びスズが銅合金に強度と耐食性を付与し、且つ、付随的に微妙な色に着色する効果があることは前述した通りである。
【0067】
ところで、本発明の合金のマトリックスである銅の結晶は等軸晶系で、構造は面心立方格子(face−centered cubic lattice=f.c.c.)である。即ち、頂点と面の中心に格子点をもつ立方格子をとる。マトリックスとしての銅に、合金元素として錫、ヒ素、及び鉛を添加して合金化すると、一部が銅の結晶格子と置換し、一部が格子間隙に統計的に侵入して金属間化合物を形成するのではないかとも考えられる。なお、本発明は合金であるので、固溶体とは云わず、正確には規則格子あるいは金属間化合物と定義されているので、本発明でもその定義に従った。
【0068】
然しながら、金属間化合物は、通常、任意の金属間あるいは組成で形成されるものではなく、周期表の同族間では形成されないとされている。(ヒューム−ロザリの規則(Hume−Rothery’s rule))。本発明の合金元素の銅は周期表第I族、スズおよび鉛は同第IV族、ヒ素は同第V族に属する金属であって、本来金属間化合物を形成する範囲ではない。
【0069】
従って、本発明の合金は、金属間化合物よりも、むしろ各元素が共晶状態にあるものと推断される。本発明の合金が共晶状態にあると考えると、マトリックスである銅、合金元素であるヒ素、スズ或いは鉛が単なる混合状態にあり、それらの性質をその組成割合で加算したような状態にあると推断される。それ故に、マトリックスである銅、合金元素であるヒ素、スズ、或いは鉛本来の性質が幾分維持されているのではないかと推断される。
【0070】
本発明の合金は、害鳥忌避資材として使用するものである。然しながら、現段階で、鳥が本発明の合金を忌避する生理学的作用機序等を学術的に明らかにすることはことはできない。この学術的な解明は然るべき専門家の手に委ねたい。
【0071】
ただし、本発明者は、前述したように本発明の合金が共晶状態にあり、銅、スズ、鉛、及びヒ素本来の性質が幾分維持されているので、それを鳥が感知して忌避するのではないかと推断している。
【0072】
無論、鳥が本発明の合金を摂食したり、あるいは接触する訳ではないが、鳥特有の感知能力により、殺虫剤、除草剤、除木剤、落葉剤、乾燥剤ならびに殺鼠剤として長年使用されてきたヒ素、生物の中枢神経系に作用して中毒症状を起こさせ鉛の毒性を感知するのではないかと推断する。
【0073】
このメカニズムは、前述したように、鳥が、有毒な青酸配糖体(Nitril Glycoside)を自ら合成するキョウニンやトウニン、アマ科の種皮または胚、マダラ蛾等ある種の植物或いは昆虫を予め識別し忌避し食べないのと相通じているのではないかと考えている。
【0074】
本発明の合金は、マトリックスである銅、合金元素であるスズ、鉛、及びヒ素を所定の組成比率で混合、融解、冷却することによって製造される。
【0075】
無論、本発明の合金を製造するに当たっては、毒物劇物法、危険物船舶運送および貯蔵規則、水質汚濁防止法、労働基準法、大気汚染防止法等関連法規を遵守し、且つ、規定の暴露防止措置を施すことは当然である。
【0076】
本発明の合金は、板材、棒材、線材、粉体等任意の形状に加工して使用することができる。また、本発明の合金は、所定の形状に加工して、それぞれ単品で、あるいは複合材として他の部材と組み合わせて建材等として使用することができる。
【発明の効果】
【0077】
請求項1の発明により、駆除対象個所全体に防鳥網等を張って鳥の侵入を防止したり、音、光、造形物等で鳥の視覚や聴覚を刺激して追い払ったり、或いは駆除対象個所にテグスを張って鳥の飛来を防止する方法に代えて、反復継続して使用しても学習効果が発現せず、二次的な薬害を引起こす恐れがなく、何らかの作用機序により鳥の中枢神経に作用して嫌忌感覚を起こさせ、逃散させることができる銅−ヒ素から成る合金が提供される。
【0078】
請求項2の発明では、請求項1記載の銅−ヒ素から成る合金害鳥忌避性銅合金にさらに鉛3〜10質量%を添加したので、切削性を改善すると共に、ヒ素との相乗効果により、何らかの作用機序により鳥を忌避する効果が向上することが期待される。
【0079】
請求項3の発明では、請求項2記載の銅−ヒ素から成る害鳥忌避性銅合金にさらにスズ5〜10質量%を添加したので、本発明の銅合金に強度と耐食性を付与し、且つ、付随的に銅合金を微妙な玉虫色に着色する効果がある。
【0080】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載した害鳥忌避性銅合金を板材に加工したので、それをそのままの形状で簡便に使用しても、さらに、その板材を材料として防鳥杭等任意の構造物に成形して害鳥忌避資材として使用することができる。
【0081】
請求項5の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載した害鳥忌避性銅合金を線材に加工したので、それをそのままの形状で簡便に使用しても、さらに、その線材を材料として防鳥杭等任意の構造物に成形して害鳥忌避資材として使用することができる。
【0082】
請求項6の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載した害鳥忌避性銅合金を棒材に加工したので、それをそのままの形状で簡便に使用しても、さらに、その棒材を材料として防鳥杭等任意の構造物に成形して害鳥忌避資材として使用することができる。
【0083】
請求項7の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載した害鳥忌避性銅合金を粉体に加工したので、それをのままの形状で容器等に容れて使用しても、さらに、その粉体をロープ等可撓性材料に接着させて可撓性害鳥忌避資材として使用することができる。
【0084】
請求項8の発明により、田畑、果樹園、牛舎、鶏舎、高圧鉄塔、穀物サイロ等害鳥が飛来する個所の状況、環境に応じた方法で本発明の害鳥忌避性銅合金を加工して、載置、垂下、あるいは張設することによて鳥害を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
自溶精錬法で製造した粗銅を電気精錬した古河機械金属製の電気銅(JIS H2121−61)を70kg、三菱コミンコ精錬の鉛(JIS H2105−55)10kg、三菱マテリアル製のスズ10kg、及び古河機械金属製のビン入り高純度ヒ素10kgを溶融炉にて混合し1,083℃に加熱して全成分を均一に溶融混合した後、冷却して100kgのインゴットを製造し、板材、線材、棒材、および粉体に加工して、害鳥が飛来してくる個所に載置、垂下、あるいは張設した。
【実施例1】
【0086】
銅として、自溶精錬法で製造した粗銅を電気精錬した古河機械金属製の電気銅(JIS H2121−61)を使用した。この銅の比重は8.92(20℃)、融点は1,083℃である。
【0087】
スズとして、三菱マテリアル製のスズを使用した。このスズの比重は7.3(20℃)融点は231.9℃である。
【0088】
鉛として、三菱コミンコ精錬の鉛(JIS H2105−55)を使用した。この鉛の比重は11.34(20℃)、融点は327℃である。
【0089】
ヒ素として、古河機械金属製のビン入り高純度ヒ素を使用した。このヒ素の比重は5.72,融点は817℃(35.5気圧)である。
【0090】
ACGIH許容濃度基準で、ヒ素0.01TWA(mg/m3)以下、鉛0.05TWA(mg/m3)以下、スズ2TWA(mg/m3)以下、及び銅1TWA(mg/m3)以下になるように局所排気施設を設置した特定施設において、上述した銅70kg(70質量%)、鉛10kg(10質量%),スズ10kg(10質量%)、及びヒ素10kg(10質量%)を溶融炉にて混合し1,083℃に加熱して全成分を均一に溶融混合した後、冷却して100kgのインゴットを製造した。
【実施例2〜15】
【0091】
表−2に示した配合量で、実施例1と同じ手順を繰り返してそれぞれ100kgのインゴットを製造した。尚、表中単位はkgである。実施例2〜15において総質量が100kgになるように配合したので、数値は質量%と同じである。


【0092】
実施例1〜15で製造したインゴットから、それぞれ下記のサンプルを製造した。
サンプルNo.1 35×40×2mmプレート 60枚
サンプルNo.2 40×80×2mmプレート 60枚
サンプルNo.3 40×80×3mmプレート 60枚
サンプルNo.4 4φ×500mm丸棒 60本
サンプルNo.5 50メッシュ粉体 600kg
サンプルNo.6 50メッシュ粉体を
4φ×500mmのロープ周囲に
接着させた粉体ロープ 60本
【0093】
[試験例1]
各々独立していて同じ条件に設定した12の実験室において、それぞれ20羽のカラス、スズメ、ヒヨドリ、ムクドリ、カモ、及びハトを、それぞれ種別毎にAグループとBグループに分けてケージに収容した。
【0094】
両グループへの給餌を約2時間停止した後Aグループのケージの底にはサンプルNo.1を1枚づつ置き、Bグループは対照とした。両グループにおいて、スズメには米と麦を、カラスには豆類、トマト、スイカ、リンゴを、ヒヨドリ及びムクドリにはサクランボとリンゴを、カモには稲穂を、ハトには豆類を給餌して、実験室から退室した。
【0095】
約1時間経過後、実験室に入り、補食状態を観察した。その結果、Bグループの鳥は餌を完全に食べていたが、Aグループの鳥は全く食べていなかった。
【0096】
AグループのケージからサンプルNo.1を取り除いた後、前述した試験と同じ手順で実験した。約1時間経過後、実験室に入り、補食状態を観察した。その結果、Bグループの鳥は餌を完全に食べていたが、Aグループの鳥は全く食べていなかった。
【0097】
このように、Aグループ及びBグルプ2時間給餌停止後、AグループにサンプルNo.1を配置、給餌、1時間経過後観察、AグループからサンプルNo.1の除去を1サイクル(クルー)として3日間繰り返したが、殆ど同じ結果であった。Aグループの鳥が餓死しかねないので、実験を停止した。
【0098】
[試験例2〜3]
試験例1においてサンプルNo.1を、サンプルNo.2(試験例2)及びサンプルNo.3(試験例3)に変えて、試験例1と同じ手順を繰り返して、試験例1と同じ結果を得た。
【0099】
[試験例4]
従来から使用している木製ケージの木棒10本をサンプルNo.4の丸棒に換えてケージ6個を作成した。Aグループの鳥をそれぞれこれらのケージに収容した。Bグループの鳥は、従来のケージに収容した。
【0100】
両グループの鳥への給餌を約2時間停止した後、両グループのケージA及びBにおいて、スズメには米と麦を、カラスには豆類、トマト、スイカ、リンゴを、ヒヨドリ及びムクドリにはサクランボとリンゴを、カモには稲穂を、ハトには豆類を給餌して、実験室から退室した。
【0101】
約1時間経過後、実験室に入り、補食状態を観察した。その結果、Bグループの鳥は餌を完全に食べていたが、Aグループの鳥は全く食べていなかった。
【0102】
さらに、両グループの鳥への給餌を約2時間停止した後、同じ手順を繰り返した。その結果、Bグループの鳥は餌を完全に食べていたが、Aグループの鳥は全く食べていなかった。
【0103】
このように、Aグループ及びBグルプ2時間給餌停止後、給餌、1時間経過後観察の1サイクル(クルー)として3日間繰り返したが、殆ど同じ結果であった。Aグループの鳥が餓死しかねないので、実験を停止した。
【0104】
[試験例5]
野外試験として中規模の牛舎を使用した。この牛舎の構造は、間口50メートル、奥行き100メートルで、箱棟付き切妻屋根で覆われている。箱棟の最高位までの高さは約30メートルである。内部には、作業用中央通路を挟んで、両脇に数十個の牛囲いが設けてあり、牛が一頭づつ収容されている。入口及び出口は、牛、作業要員、作業用車両等が移動、出入りするために常時開けてある。風通しを良くするために、両側壁の上部は開口状態にして防鳥ネットを張ってある。このような牛舎が敷地内に隣接して4棟設置されている。近辺には飼料用穀物を収容するサイロが2基設置されている。
【0105】
牛舎内の中央通路は、飼料を置く場所にも利用されているので、鳥にとっては、中央通路に常時飼料穀物が十分過ぎるほどある状態である。従って、絶えず、カラス、スズメ、ヒヨドリ、ムクドリ、ハト等殆どの害鳥が牛舎内に侵入してきて穀物を漁っている。また、2基の飼料サイロの鉄枠にはカラス等が止まって、牛舎に作業要員がいなくなるまで待機している。
【0106】
牛舎から100メートル離れていて開放された資材置き場に、オカラ、油揚げ、残飯を放置して、トンビ、カラス、スズメ等を餌付けした。このようにして1ヶ月続けると、餌を放置する前か等予め飛来してきて、給餌を待つような状態になった。1ケ月後、オカラ、油揚げ、残飯を放置して、その中央、及び周囲に50cm間隔にサンプルNo.1を置いたところ鳥は飛来してきたが、直ちに逃散した。
【0107】
このテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した。
【0108】
[試験例6〜9]
試験例5と同じ場所で試験例5と同じようにして、サンプルNo.2.サンプルNo.3、サンプルNo.4を置いたところ鳥は飛来してきたが、直ちに逃散した。
【0109】
このテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した。
【0110】
[試験例10]
試験例5と手順で、オカラ、油揚げ、残飯を放置した。次いで、その周囲を、地上高30cmの位置で、サンプルNo.6で製作したロープで囲繞した。餌付けされたカラス、スズメ等が飛来してきたが、直ちに逃散した。
【0111】
このテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した。
【0112】
[試験例11]
試験例10と同じ手順で、オカラ、油揚げ、残飯を放置した。次いで、その周囲を、地上高1mの位置で、サンプルNo.6で製作したロープで囲繞した。餌付けされたカラス、スズメ等が飛来してきたが、直ちに逃散した。
【0113】
このテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した。
【0114】
[試験例12]
牛舎の中央通路に、サンプルNo.1、サンプルNo.2、サンプルNo.3を50cm間隔で置いた。中央通路に散在している穀物を漁りに来ていたカラス、スズメ等の鳥が飛来してこなくなった。1時間経過後、サンプルNo.1、サンプルNo.2、サンプルNo.3を総て除去した。2時間中断後、再度、中央通路に、サンプルNo.1、サンプルNo.2、サンプルNo.3を50cm間隔で置いた。中央通路に散在している穀物を漁りに来ていたカラス、スズメ等の鳥が飛来してこなくなった。このテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した。
【0115】
[試験例13]
牛舎の入口の土間に、サンプルNo.6で製作した4φ×500mmのロープを埋め込んだ。中央通路に散在している穀物を漁りに来ていたカラス、スズメ等の鳥が飛来してこなくなった。1時間経過後、ロープを除去した。2時間中断後、再度、ロープを埋め込んだ。中央通路に散在している穀物を漁りに来ていたカラス、スズメ等の鳥が飛来してこなくなった。このテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した。
【0116】
[試験例14]
1本のロープにサンプルNo.1のプレートを3枚締結して、牛舎の入口に1メートル間隔で、入口の全高さに亘って垂下した。中央通路に散在している穀物を漁りに来ていたカラス、スズメ等の鳥が、ロープの間から侵入した。この間隔を50cmにしたところ、カラス、スズメ等の鳥が、牛舎内に侵入しなくなった。このテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した。
【0117】
[試験例15]
1本のロープにサンプルNo.1のプレートを3枚締結して、作業用車両が出入り可能なように、牛舎の入口に50cm間隔で地上高さ1.6メートルで垂下し、その直下にサンプルNo.6で製作した粉体ロープを置いて観察した。その結果、中央通路に散在している穀物を漁りに来ていたカラス、スズメ等の鳥が飛来しなくなった。
【0118】
1時間経過後、サンプルNo.1のプレートを締結したロープ、及びサンプルNo.6で製作した粉体ロープを総て除去した。1時間経過後、入口からカラス、スズメ等の鳥が牛舎内に侵入して穀物を漁っていた。1時間経過後、再度、サンプルNo.1のプレートを締結したロープ、及びサンプルNo.6で製作した粉体ロープを同じように設置したところ、カラス、スズメ等の鳥が飛来しなくなった。
【0119】
同じ手順でこのテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した、
【0120】
[試験例16]
1本のロープにサンプルNo.1のプレートを3枚締結したロープ全部を、サンプルNo.6で製作した粉体ロープに換えたことを除いて、試験例16と同じ手順を繰り返した結果、カラス、スズメ等の鳥は侵入しなくなった。
【0121】
1時間経過後、サンプルNo.6で製作した粉体ロープを総て除去した。1時間経過後、入口からカラス、スズメ等の鳥が牛舎内に侵入して穀物を漁っていた。1時間経過後、再度、サンプルNo.6で製作した粉体ロープを同じように設置したところ、カラス、スズメ等の鳥が飛来しなくなった。
【0122】
同じ手順でこのテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した、
【0123】
[試験例17]
牛舎の所定の数カ所に、サンプルNo.5の50メッシュ粉体を陶製の皿に容れて載置したところ、カラス、スズメ等の鳥が侵入しなくなった。
【0124】
1時間経過後、サンプルNo.5の50メッシュ粉体を陶製の皿から全部除去した。1時間経過後、入口からカラス、スズメ等の鳥が牛舎内に侵入して穀物を漁っていた。1時間経過後、再度、サンプルを容れたところ、カラス、スズメ等の鳥が飛来しなくなった。
【0125】
同じ手順でこのテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した、
【0126】
[試験例18]
飼料用穀物を収容するサイロが2基互いに隣接して設置されている。この2基の飼料サイロの鉄枠には、カラス等が10数羽止まって、牛舎に作業要員がいなくなるまで待機しているのが常態である。
【0127】
一方の鉄枠に、サンプルNo.3の40×80×3mmプレートを1.2メートル間隔で5ヶ設置した。サンプルを設置したサイロにはカラスが一羽も止まらなくなった。サンプルを設置しないサイロに止まるカラスも2〜3羽に減っていた。
【0128】
1時間経過後、総てのサンプルをサイロから除去した。1時間経過後、いつものように、両方のサイロの鉄枠にカラスが10数羽止まって、牛舎に作業要員がいなくなるまで待機しているのが観察された。
【0129】
1時間経過後、サンプルを取り付けたところ、カラスは飛来しなくなった。同じ手順でこのテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した、
【0130】
[試験例19]
牛舎の両側壁の上部は開口状態にして防鳥ネットを張ってあるが、この防鳥ネットの破れている個所、あるいはカラスが破って、牛舎内に侵入することがある。そこで、ネットが破損している数カ所に、サンプルNo.1のプレート、サンプルNo.2のプレート、及びサンプルNo.3のプレートを置いたところ、カラスは侵入しなくなった。
【0131】
1時間経過後、総てのサンプルを除去した。1時間経過後、いつものように、防鳥ネットの破損個所からカラスが侵入した。
【0132】
1時間経過後、再度サンプルを置いたところ、カラスは飛来しなくなった。同じ手順でこのテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した、
【0133】
[試験例20]
養牛場に隣接してキューリ、豆が植えてある3000m2の畑がある。この畑には播種の時季、苗が発生した時季、成長時季、収穫時季にカラス、スズメを始め各種の害鳥が飛来してきて、これらを食べる。その害を防ぐ目的で畑の周囲に防鳥ネットを張り巡らしてあるが、破損した個所から侵入して加害する。
【0134】
そこで、サンプルNo.6の50メッシュ粉体を4φ×500mmのロープの周囲に接着させた粉体ロープを、防鳥ネットに所定の間隔で取り付けたところ、鳥は飛来して来なかった。
【0135】
1時間経過後、総ての粉体ロープを除去した。1時間経過後、いつものように、防鳥ネットの破損個所からカラス、スズメが侵入した。
【0136】
1時間経過後、再度粉体ロープを取り付けたところ、カラス、スズメは飛来しなくなった。同じ手順でこのテストを一日2回繰り返して、そのサイクルを1ケ月繰り返したところ、同じ効果を奏功した、
【0137】
[比較例1〜14]
表−3に示した配合量で、実施例1と同じ手順を繰り返してそれぞれ100kgのインゴットを製造した。尚、表中単位はkgである。比較例1〜14において総質量が100kgになるように配合したので、数値は質量%と同じである。


【0138】
比較例1〜14で製造したインゴットから、実施例1と同じサンプルを製造した。
【0139】
[比較試験例]
比較例1〜14で製造したインゴットから、実施例1と同じようにして製造したそれぞれのサンプルを使用して、試験例1〜20と同じ手順で比較試験例を行ったが、害鳥を防止することはできなかった。
【0140】
比較例1〜14における配合成分の中で、銅、鉛、及びスズは、本発明の銅、鉛、及びスズの配合比率範囲に含まれているが、ヒ素は、本発明の範囲外、即ち、5質量%以下、及び10質量%以上である。従って、比較試験例の結果から、ヒ素が5質量%以下でも、あるいは10質量%以上でも、本発明の所期の効果が奏功されないことが理解される。
【0141】
[比較例15〜28]
表−4に示した配合量で、実施例1と同じ手順を繰り返してそれぞれ100kgのインゴットを製造した。尚、表中単位はkgである。比較例15〜28において総質量が100kgになるように配合したので、数値は質量%と同じである。


【0142】
比較例15〜28で製造したインゴットから、実施例1と同じサンプルを製造した。
【0143】
[比較試験例]
比較例15〜28で製造したインゴットから、実施例1と同じようにして製造したそれぞれのサンプルを使用して、試験例1〜20と同じ手順で比較試験例を行ったが、害鳥を防止することはできなかった。
【0144】
比較例15〜19における配合成分の中で、銅、スズ、及びヒ素は、本発明の銅、スズ、及びヒ素の配合比率範囲に含まれているが、鉛は、本発明の範囲外、即ち、5質量%以下、及び10質量%以上である。従って、比較試験例の結果から、鉛が5質量%以下でも、あるいは10質量%以上でも、本発明の所期の効果が奏功されないことが理解される。このことは、鉛とヒ素が相乗効果を奏功しているのではないかと推断される。
【0145】
比較例20における配合成分の中で、スズ及びヒ素は本発明のスズ及びヒ素の配合比率範囲に含まれているが、銅及び鉛は、本発明の範囲外である。即ち、鉛は10質量%以上、及び銅は70質量%以下である。従って、比較試験例の結果から、鉛が10質量%以上でも、また、銅が70質量%以下でも、本発明の所期の効果が奏功されないことが理解される。このことは、銅及び鉛が、ヒ素及びスズと相乗効果を奏功しているのではないかと推断される。
【0146】
比較例21における配合成分の中で、銅、スズ及びヒ素は本発明の銅、スズ及びヒ素の配合比率範囲に含まれているが、鉛は、本発明の範囲外である。即ち、鉛は10質量%以上である。従って、比較試験例の結果から、鉛が10質量%以上でも、本発明の所期の効果が奏功されないことが理解される。このことは、銅、スズ及びヒ素が、鉛と相乗効果を奏功しているのではないかと推断される。
【0147】
比較例22における配合成分の中で、スズ及びヒ素は本発明のスズ及びヒ素の配合比率範囲に含まれているが、銅及び鉛は、本発明の範囲外である。即ち、銅は70質量%以下、鉛は10質量%以上である。従って、比較試験例の結果から、銅が70質量%以下でも、鉛が10質量%以上でも、本発明の所期の効果が奏功されないことが理解される。このことは、銅及び鉛、スズ及びヒ素と相乗効果を奏功しているのではないかと推断される。
【0148】
比較例23における配合成分の中で、銅、鉛及びヒ素は、本発明の銅、鉛及びヒ素の配合比率範囲に含まれているが、スズは、本発明の範囲外である。即ち、スズは5質量%以下である。従って、比較試験例の結果から、スズが5質量%以下では、本発明の所期の効果が奏功されないことが理解される。このことは、銅、鉛及びヒ素が、スズと相乗効果を奏功しているのではないかと推断される。
【0149】
比較例24における配合成分の中で、銅、鉛及びヒ素は、本発明の銅、鉛及びヒ素の配合比率範囲に含まれているが、スズは、本発明の範囲外である。即ち、スズは10質量%以上である。従って、比較試験例の結果から、スズが11質量%以上でも、本発明の所期の効果が奏功されないことが理解される。このことは、銅、鉛及びヒ素が、スズと相乗効果を奏功しているのではないかと推断される。
【0150】
比較例25における配合成分の中で、銅、鉛及びヒ素は、本発明の銅、鉛及びヒ素の配合比率範囲に含まれているが、スズは、本発明の範囲外である。即ち、スズは5質量%以下である。従って、比較試験例の結果から、スズが5質量%以下でも、本発明の所期の効果が奏功されないことが理解される。このことは、銅、鉛及びヒ素が、スズと相乗効果を奏功しているのではないかと推断される。
【0151】
比較例26における配合成分の中で、銅、鉛及びヒ素は、本発明の銅、鉛及びヒ素の配合比率範囲に含まれているが、スズは、本発明の範囲外である。即ち、スズは10質量%以上である。従って、比較試験例の結果から、スズが10質量%以上でも、本発明の所期の効果が奏功されないことが理解される。このことは、銅、鉛及びヒ素が、スズと相乗効果を奏功しているのではないかと推断される。
【0152】
比較例27における配合成分の中で、銅及びスズは、本発明の銅、及びスズの配合比率範囲に含まれているが、鉛及びヒ素は、本発明の範囲外である。即ち、鉛は10質量%以上、ヒ素は5質量%以下である。従って、比較試験例の結果から、鉛が10質量%以上、及びヒ素が5質量%以下でも、本発明の所期の効果が奏功されないことが理解される。このことは、銅及びスズが、鉛及びヒ素と相乗効果を奏功しているのではないかと推断される。
【0153】
比較例28における配合成分の中で、ヒ素だけが、本発明のヒ素の配合比率範囲に含まれているが、銅、鉛及びスズは、本発明のそれぞれの範囲外である。即ち、銅は70質量%以下、鉛は10質量%以上、及びスズは10質量%以上である。従って、比較試験例の結果から、銅が70質量%以下、鉛が10質量%以上、及びスズが10質量%以上でも、本発明の所期の効果が奏功されないことが理解される。このことは、銅、鉛及びスズが、ヒ素と相乗効果を奏功しているのではないかと推断される。
【0154】
[参考例1〜10]
参考のために、表−5に示した配合量で、鉛、及びヒ素を含有しない各種の銅合金を製造して、100gのインゴットを製造した。尚、表中単位はグラムである。参考例1〜12において総質量が100gになるように配合したので、数値は質量%と同じである。




【0155】
[参考試験例]
参考例で製造したインゴットからサンプルNo.1と同じようなプレートを製造して、試験例と同じ手順で鳥の忌避効果をテストしたが、試験例で得たと同じ効果は確認できなかった。このことにより、鉛及びヒ素が、鳥の忌避作用に相乗的に大きく影響していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、新規な合金設計による銅−ヒ素系害鳥忌避性合金を提供し、スズメ、カラス、ハト、ムクドリ、ヒヨドリ等の害鳥による野菜、果樹、飼料作物等への被害を軽減し、集合地でのフン害・騒音の防止、送電線への鳥害、高圧鉄塔への営巣を防止すると共に、銅−ヒ素系害鳥忌避性合金を任意の形状に加工することにより、害鳥忌避性を発現する資材を提供する。
【出願人】 【識別番号】000167820
【氏名又は名称】広島化成株式会社
【識別番号】594079349
【氏名又は名称】広瀬 幸雄
【識別番号】302042771
【氏名又は名称】有限会社ジェイ・スタッフ
【識別番号】503007092
【氏名又は名称】有限会社エス・ピー・エスかなざわ
【識別番号】500067710
【氏名又は名称】北陸テクノ株式会社
【出願日】 平成15年12月19日(2003.12.19)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−218085(P2004−218085A)
【公開日】 平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願番号】 特願2003−436723(P2003−436723)