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【発明の名称】 |
被削性に優れた鋼 |
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【氏名】橋村 雅之 【住所又は居所】室蘭市仲町12番地 新日本製鐵株式会社室蘭製鐵所内 【氏名】水野 淳 【住所又は居所】室蘭市仲町12番地 新日本製鐵株式会社室蘭製鐵所内 【氏名】平田 浩 【住所又は居所】室蘭市仲町12番地 新日本製鐵株式会社室蘭製鐵所内 【氏名】内藤 賢一郎 【住所又は居所】東京都千代田区大手町2−6−3 新日本製鐵株式会社内 【氏名】萩原 博 【住所又は居所】東京都千代田区大手町2−6−3 新日本製鐵株式会社内 |
【課題】被削性の良い鋼を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.001〜1.5%、Si:3%以下、Mn:0.01〜3%、P:0.001〜0.2%、S:0.0001〜1.2%、Zn:0.001〜0.5%、N:0.0001〜0.02%、O:0.0005〜0.05%、を含有することを特徴とする被削性に優れた鋼。さらに、必要に応じて被削性元素であるSn:0.002〜0.5%及び/またはB:0.0005〜0.05%を含有させることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 質量%で(以下、同じ)、 C:0.001〜1.5%、 Si:3%以下、 Mn:0.01〜3%、 P:0.001〜0.2%、 S:0.0001〜1.2%、 Zn:0.001〜0.5%、 N:0.0001〜0.02%、 O:0.0005〜0.05% を含有することを特徴とする被削性に優れた鋼。 【請求項2】 さらに、 Sn:0.002〜0.5% を含有することを特徴とする請求項1記載の被削性に優れた鋼。 【請求項3】 さらに、 B:0.0005〜0.05% を含有することを特徴とする請求項1または2記載の被削性に優れた鋼。 【請求項4】 さらに、 Cr:0.01〜7%、 Mo:0.01〜3%、 V:0.01〜3%、 Nb:0.001〜0.2%、 Ti:0.001〜0.5%、 W:0.01〜3% の内の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3の内のいずれかに記載の被削性に優れた鋼。 【請求項5】 さらに、 Ni:0.05〜7%、 Cu:0.02〜3% の内の1種または2種を含有すると共に、Cuが0.3%以上を含む場合はNi%≧Cu%を満足することを特徴とする請求項1乃至4の内のいずれかに記載の被削性に優れた鋼。 【請求項6】 さらに、 Al:0.001〜2%、 Ca:0.0002〜0.01%、 Zr:0.0003〜0.5%、 Mg:0.0002〜0.02% の内の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至5の内のいずれかに記載の被削性に優れた鋼。 【請求項7】 さらに、 Te:0.001〜0.5%、 Pb:0.01〜0.7%、 Bi:0.01〜0.7% の内の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至6の内のいずれかに記載の被削性に優れた鋼。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は自動車や一般機械などの部品に用いられる鋼に関するものであり、特に切削時の工具寿命、切削表面粗さおよび切り屑処理性等の被削性に優れた鋼に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 一般機械や自動車は多種の部品を組み合わせて製造されているが、その部品は要求精度と製造効率の観点から、多くの場合、切削工程を経て製造されている。その際、コスト低減と生産能率の向上が求められ、鋼にも被削性の向上が求められている。 【0003】 C添加量が0.2%未満の低炭快削鋼と呼ばれるSUM23やSUM24Lは被削性を重要視して開発されてきた。これまで被削性を向上させるためにS、Pbなどの被削性向上元素を添加するのが有効であることが知られている。しかし、近年、Pbは環境負荷として使用を避ける傾向に有り、その使用量を低減する方向にある。 【0004】 これまでもPbを添加しない場合にはSのようにMnSのような切削環境下で軟質となる介在物を形成して被削性を向上させる手法が使われている。しかしいわゆる低炭鉛快削鋼SUM24Lには低炭硫黄快削鋼SUM23と同量のSが添加されている。したがって従来以上のS量を添加する必要がある。しかし多量S添加ではMnSを単に粗大にするだけで、被削性向上に有効なMnS分布にならないだけでなく、圧延、鍛造等において破壊起点になって圧延疵等の製造上の問題を多く引き起こす。さらにSUM23をベースとする硫黄快削鋼では構成刃先が付着しやすく、構成刃先の脱落および切り屑分離現象に伴う、切削表面に凹凸が生じ、表面粗さが劣化する。従って被削性の観点からも表面粗さが劣化による精度低下が問題である。切り屑処理性においても、切り屑が短く分断しやすい方が良好とされているが、単なるS添加だけではマトリックスの延性が大きいため、十分に分断されず、大きく改善できなかった。 S以外の元素、Te、Bi、P等も被削性向上元素として知られているが、ある程度被削性を向上させることができても、圧延や熱間鍛造時に割れを生じ易くなるため、極力少ない方が望ましいとされている。 【0005】 また0.2%以上のCを含有する鋼ではC、Cr、Mo等の合金元素を多く含み、比較的高強度を有する。このような構造用鋼の場合、構成刃先生成とそれによって生じる切削表面の凹凸(粗さ)の問題は小さく、元来が硬い材料なので、表面粗さは比較的良好である。しかし、基本的な強度が高いために被削性向上元素のSを多く添加すると、生成されるMnSが圧延や鍛造で伸延するために機械的性質に異方性を生じるため、部品への適用には大きく制約をうける。実質高強度鋼には被削性向上のためのS添加は行われず、被削性を犠牲にすることがほとんどである。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 上記のような情況から、本発明は、圧延や鍛造および製品性能上の不具合を避けつつ、C含有量が0.15%に満たないいわゆる低炭素鋼に関しては工具寿命と表面粗さの両者を改善した優れた被削性を有する鋼を供給することであり、また、0.15%以上のCを含有する構造用鋼、高強度鋼の場合には機械的性質(異方性も含む)と被削性が両立する鋼を提供することを課題とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】 切削は切り屑を分離する破壊現象であり、それを促進させることが一つのポイントとなる。しかし、前述したごとく、Sを単純に増量するだけでは限界がある。 【0008】 そこで、本発明者らは実験を重ね鋭意研究した結果、Sを増量するだけでなく、基本成分としてZnを含有させることによりマトリックスを脆化させ、破壊を容易にして工具寿命を延長すると共に切削表面の凹凸を抑制できることを知見した。 【0009】 本発明は以上の知見に基づいてなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。 【0010】 (1) 質量%で(以下、同じ)、 C:0.001〜1.5%、 Si:3%以下、 Mn:0.01〜3%、 P:0.001〜0.2%、 S:0.0001〜1.2%、 Zn:0.001〜0.5%、 N:0.0001〜0.02%、 O:0.0005〜0.05% を含有することを特徴とする被削性に優れた鋼。 【0011】 (2) さらに、 Sn:0.002〜0.5% を含有することを特徴とする上記(1)記載の被削性に優れた鋼。 (3) さらに、 B:0.0005〜0.05%、 を含有することを特徴とする上記(1)または(2)記載の被削性に優れた鋼。 【0012】 (4) さらに、 Cr:0.01〜7%、 Mo:0.01〜3%、 V:0.01〜3.0%、 Nb:0.001〜0.2%、 Ti:0.001〜0.5%、 W:0.01〜3% の内の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)乃至(3)の内のいずれかに記載の被削性に優れた鋼。 【0013】 (5) さらに、 Ni:0.05〜7%、 Cu:0.02〜3% の内の1種または2種を含有すると共に、Cuが0.3%以上を含む場合はNi%≧Cu%を満足することを特徴とする上記(1)乃至(4)の内のいずれかに記載の被削性に優れた鋼。 【0014】 (6) さらに、 Al:0.001〜2%、 Ca:0.0002〜0.01%、 Zr:0.0003〜0.5%、 Mg:0.0002〜0.02% の内の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)乃至(5)の内のいずれかに記載の被削性に優れた鋼。 【0015】 (7) さらに、 Te:0.001〜0.5%、 Pb:0.01〜0.7%、 Bi:0.01〜0.7% の内の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)乃至(6)の内のいずれかに記載の被削性に優れた鋼。 【0016】 【発明の実施の形態】 本発明の基本思想は、鋼の必須成分としてSの他にZnを含有させることにより、機械的性質を損なうことなく、被削性を向上させることにある。 【0017】 即ち、Znは、本発明で特に重要な元素である。Znには鋼を脆化させる効果があり、被削性を向上させる効果を持つ。特に切削表面粗さを改善する効果がある。また従来から知られているMnSのような粗大な介在物の形態をとらず、マトリックス中に存在するために機械的性質の劣化は最低限に抑制することができる。この効果は特に異方性として顕著に認められる。逆に同程度の機械的性質を有していても、Znが添加されている場合には良好な被削性を得ることができる。これは切削熱によって温度上昇したときにZnの脆化効果が顕著になるためと考えられる。さらに切削中には工具/被削材界面で潤滑効果を生み出すと考えられる。Zn:0.001%未満ではその効果が小さい。一方、Znは溶製時に非常に気化しやすいことから、Znを溶鋼中に残留させ、凝固後も0.5%を超えるZn量を維持するには、多量のZnの投入が必要であり、コストの点から工業的に成立しないため0.5%を上限とした。従って、本発明鋼のZnの成分範囲を0.001〜0.5%に限定した。 【0018】 Znに加えて、さらに、Sn、B、Te等の被削性向上元素を含有させることができるが、Snは単独では被削性は向上せず、Znとの相互作用により被削性が向上する。 【0019】 以下に、Zn以外の鋼成分を限定した理由を説明する。 【0020】 C:0.001〜1.5% Cは、鋼材の基本強度と鋼中の酸素量に関係するので被削性に大きな影響を及ぼす。Cを多く添加して強度を高めると被削性を低下させるのでその上限を1.5%とした。一方、被削性を低下させる硬質酸化物生成を防止しつつ、凝固過程でのピンホール等の高温での固溶酸素の弊害を抑制するため、酸素量を適量に制御する必要がある。単純に吹錬によってC量を低減させすぎるとコストがかさむだけでなく、鋼中酸素量が多量に残留してピンホール等の不具合の原因となる。従って、ピンホール等の不具合を容易に防止できるC量0.001%を下限とした。 【0021】 Si:3%以下 Siの過度な添加は熱間延性が低下して圧延等が困難になるが、適度な添加は機械的性質を付与したり、酸化物を軟質化させ、被削性を向上させる。その上限は3%であり、それ以上では熱間延性が低下して圧延等が困難になり工業生産が困難になる。また、硬質酸化物を生じて被削性を低下させるなどの弊害も生じる。 【0022】 Mn:0.01〜3.0% Mnは、脱酸元素として、また鋼中硫黄をMnSとして固定・分散させるために必要である。また鋼中酸化物を軟質化させ、酸化物を無害化させるために必要である。その効果は添加するS量にも依存するが、0.01%未満では添加SをMnSとして十分に固定できず、SがFeSとなり脆くなる。Mn量が大きくなると素地の硬さが大きくなり被削性や冷間加工性が低下するので、3.0%を上限とした。 【0023】 P:0.001〜0.2% Pは、鋼中において素地の硬さが大きくなり、冷間加工性だけでなく、熱間加工性や鋳造特性が低下するので、その上限を0.2%にしなければならない。一方、脆化させることで切削を容易にして被削性向上に効果がある元素で下限値を0.001%とした。 【0024】 S:0.0001〜1.2% Sは、Mnと結合してMnS介在物として存在する。MnSは被削性を向上させるが、伸延したMnSは鍛造時の異方性を生じる原因の一つである。大きなMnSは避けるべきであるが、被削性向上の観点からは多量の添加が好ましい。従ってMnSを微細分散させることが好ましい。被削性向上には0.0001%以上の添加が必要で、好ましくは0.001%以上の添加がよい。一方、1.2%を越えると粗大MnSの生成が避けられないだけでなく、FeS等による鋳造特性、熱間変形特性の劣化から製造中に割れを生じるので、これを上限とした。 【0025】 N:0.0001〜0.02% Nは、固溶Nの場合、鋼を硬化させる。特に切削においては動的ひずみ時効によって刃先近傍で硬化し、工具の寿命を低下させるが、切削表面粗さを改善する効果もある。またBと結びついてBNを生成して被削性を向上させる。N含有量が0.0001%未満では固溶窒素による表面粗さ向上効果やBNによる被削性改善効果が認められないので、これを下限とした。またN含有量が0.02%を越えると固溶窒素が多量に存在するためかえって工具寿命を低下させる。また鋳造途中に気泡を生成し、疵などの原因となる。従って本発明ではそれらの弊害が顕著になる0.02%を上限とした。 【0026】 O:0.0005〜0.05% Oは、freeで存在する場合には冷却時に気泡となり、ピンホールの原因となる。また酸化物を軟質化し、被削性に有害な硬質酸化物を抑制するためにも制御が必要である。さらにMnSの微細分散させる際にも析出核として酸化物を利用する。O含有量が0.0005%未満では十分にMnSを微細分散させることができず、粗大なMnSを生じ、機械的性質にも悪影響を及ぼす。従って0.0005%を下限とした。さらにO含有量が0.05%を越えると鋳造中に気泡となりピンホールとなるため、0.05%以下とした。 【0027】 Sn:0.002〜0.5% Snは、軟質金属であり、鋼中では粒界等に分布して鋼を脆化させる。このことで被削性を向上させる。0.002%以下ではその効果が認められず、0.5%を越えると、鋼を脆化させることで鋳造および圧延を困難にする。したがってその範囲を0.002〜0.5%とした。 【0028】 B:0.0005〜0.05% Bは、被削性向上に効果がある。この効果は0.0005%未満では顕著でなく、0.05%を超えて添加してもその効果が飽和し、熱履歴によってBNが多く析出しすぎるとかえって鋳造特性、熱間変形特性の劣化から製造中に割れを生じる。そこで0.0005〜0.05%を範囲とした。 【0029】 Cr:0.01〜7% Crは焼入れ性向上、焼戻し軟化抵抗付与元素である。また多量に添加することで耐食性を得られる。そのため高強度化が必要な鋼には添加される。その場合、0.01%以上の添加を必要とする。しかし多量に添加するとCr炭化物を生成し脆化させるため、7%を上限とした。 【0030】 Mo:0.01〜3% Moは、焼戻し軟化抵抗を付与するとともに、焼入れ性を向上させる元素である。0.01%未満ではその効果が認められず、3%を超えて添加してもその効果が飽和しているので、0.01%〜3%を添加範囲とした。 【0031】 V:0.01〜3% Vは、炭窒化物を形成し、二次析出硬化により鋼を強化することができる。0.01%未満では高強度化に効果はなく、3%を超えて添加すると多くの炭窒化物を析出し、かえって機械的性質を損なうので、これを上限とした。 【0032】 Nb:0.001〜0.2% Nbも炭窒化物を形成し、二次析出硬化により鋼を強化することができる。0.001%未満では高強度化に効果はなく、0.2%を超えて添加すると多くの炭窒化物を析出し、かえって機械的性質を損なうので、これを上限とした。 【0033】 Ti:0.001〜0.5% Tiも炭窒化物を形成し、鋼を強化する。また脱酸元素でもあり、軟質酸化物を形成させることで被削性を向上させることが可能である。0.001%未満ではその効果が認められず、0.5%を超えて添加してもその効果が飽和する。また、Tiは高温でも窒化物となりオーステナイト粒の成長を抑制する。そこで上限を0.5%とした。 【0034】 W:0.01〜3% Wは、炭窒化物を形成し、二次析出硬化により鋼を強化することができる。0.01%未満では高強度化に効果はなく、3%を超えて添加すると粗大な炭窒化物を析出し、かえって機械的性質を損なうので、これを上限とした。 【0035】 Ni:0.05〜7% Niは、フェライトを強化し、延性を延性向上させるとともに焼入れ性向上、耐食性向上にも有効である。0.05%未満ではその効果は認められず、7%を超えて添加しても、機械的性質の点では効果が飽和するので、これを上限とした。 【0036】 Cu:0.02〜3% Cuは、フェライトを強化し、延性を延性向上させるとともに焼入れ性向上、耐食性向上にも有効である。0.02%未満ではその効果は認められず、3%を超えて添加しても、機械的性質の点では効果が飽和するので、これを上限とした。またCuは単独で添加すると熱間延性を極端に低下させて、割れ等の鋳造、圧延におけるトラブルの原因となる。その添加量が0.3%を越える場合には、製造上のトラブルをそれを避けるために、Niの添加量をNi%≧Cu%となるように添加することが好ましい。 【0037】 Al:0.001〜2% Alは、脱酸元素で鋼中ではAl2O3やAlNを形成する。 それにより焼入れ時のオーステナイト粒径の粗大化防止さらには靭性の向上に有効である。しかし0.001%未満ではその効果が認められず、2%を越えると粗大な介在物を生じて、かえって機械的性質を低下させる。さらにAl2O3は硬質なので切削時に工具損傷の原因となり、摩耗を促進する場合がある。そこでオーステナイト粒等の粗大化効果が飽和し、Al2O3の弊害が顕著となる2%を上限とした。特に被削性を優先する場合にはAl2O3を多量に生成しない0.015%以下にすることが好ましく、さらに酸化物の軟質化を優先させる場合には0.005%以下が好ましい。 【0038】 Ca:0.0002〜0.01% Caは、脱酸元素であり、軟質酸化物を生成し、被削性を向上させるだけでなく、MnSに固溶してその変形能を低下させ、圧延や熱間鍛造してもMnS形状の伸延を抑制する働きがある。したがって異方性の低減に有効な元素である。0.0002%未満ではその効果は顕著ではなく、0.01%を超えて添加しても歩留まりが極端に悪くなるばかりでなく、硬質のCaO、CaSなどを大量に生成し、かえって被削性を低下させる。したがって成分範囲を0.0002〜0.01%と規定した。 【0039】 Zr:0.0003〜0.5% Zrは、脱酸元素であり、酸化物を生成する。酸化物はMnSの析出核になりMnSの微細均一分散に効果がある。またMnSに固溶してその変形能を低下させ、圧延や熱間鍛造してもMnS形状の伸延を抑制する働きがある。したがって異方性の低減に有効な元素である。0.0003%未満ではその効果は顕著ではなく、0.5%を越えて添加しても歩留まりが極端に悪くなるばかりでなく、硬質のZrO2やZrSなどを大量に生成し、かえって被削性を低下させる。したがって成分範囲を0.0003〜0.5%と規定した。 【0040】 Mg:0.0002〜0.02% Mgは、脱酸元素であり、酸化物を生成する。酸化物はMnSの析出核になりMnSの微細均一分散に効果がある。したがって異方性の低減に有効な元素である。0.0002%未満ではその効果は顕著ではなく、0.02%を超えて添加しても歩留まりが極端に悪くなるばかりで効果は飽和する。したがって成分範囲を0.0002〜0.02%と規定した。 【0041】 Te:0.001〜0.5% Teは、被削性向上元素である。またMnTeを生成したり、MnSと共存することでMnSの変形能を低下させてMnS形状の伸延を抑制する働きがある。したがって異方性の低減に有効な元素である。この効果は0.001%未満では認められず、0.5%を超えると効果が飽和する。 【0042】 Pb、Bi:0.01〜0.7% PbおよびBiは、被削性向上に効果のある元素である。その効果は0.01%未満では認められず、0.7%を超えて添加しても被削性向上効果が飽和するだけでなく、熱間鍛造特性が低下して疵の原因となりやすい。そのことからそれぞれの含有量を0.01〜0.7%とした。 【0043】 【実施例】 本発明の効果を実施例によって説明する。表1に示す化学成分を有する供試材の一部は270t転炉で溶製後、ビレットに分解圧延、さらにφ50mmの棒鋼に圧延した。他は2t−真空溶解炉にて溶製、圧延した。表2の実施例1〜40に示す材料の被削性評価はドリル穿孔試験で表3に切削条件を示す。累積穴深さ1000mmまで切削可能な最高の切削速度(いわゆるVL1000)で被削性を評価した。 【0044】 さらに表面粗さは突切工具によって工具形状を転写する、いわゆるプランジ切削によって評価した。その実験方法の概要を図1に示す。即ち、図1(a)に示すように、切削方向1に回転する試験材2を工具3により切削し、図1(b)に示すように、工具3を動かして表面粗さ測定面4を形成する。また切削条件を表4に示す。実験では200溝加工した場合の表面粗さ(10点表面粗さRzμm)を測定した。ここで表2に示す切り屑処理性に関して、切り屑はカール形状となるが、カールが5巻き以下で切り屑が破断し、短い切り屑を生成している場合を「○」、5巻をこえても破断しない長い切り屑を生成している場合を「×」と表記した。 【0045】 【表1】
【0046】 【表2】
【0047】 【表3】
【0048】 【表4】
【0049】 発明例はいずれも比較例に対してドリル工具寿命に優れるとともに、プランジ切削における表面粗さが良好であった。これはC、S等の添加量が異なっても、その順位が変わることはなく、Zn、Sn、B等の元素が添加された場合、同一C、S等の比較鋼に比べ、工具寿命と表面粗さに優れた。S量の多い方が被削性が良好な傾向にあったが、S量が比較的少量の場合でも切り屑処理性に改善が見られた。 【0050】 一方、実施例中の比較例6および26のようにSnが添加された場合でもZnが添加されていなければ被削性は向上しなかった。 【0051】 さらに従来から知られているTe、Pb、Bi等の被削性向上元素の含まれる場合であってもZnを添加した方がより優れた被削性を示した。 【0052】 同じく、構造用炭素鋼をベースとした鋼の被削性、機械的性質を評価したサンプルの化学成分を表5に評価結果を表6に示す。それぞれの供試材は一部は270t転炉で溶製後、ビレットに分解圧延、さらにφ65mmの棒鋼に圧延した。他は2t−真空溶解炉にて溶製、圧延した。 【0053】 衝撃値(J/cm2)はJISに準拠して2mm深さのUノッチ試験片を作成して評価した。 【0054】 0.1%程度のCを含有する実施例41〜43に関する被削性評価はドリル穿孔試験で表3に切削条件を示す。累積穴深さ1000mmまで切削可能な最高の切削速度(いわゆるVL1000)で被削性を評価した。 【0055】 さらに表面粗さは突切工具によって工具形状を転写する、いわゆるプランジ切削によって評価した。実験では200溝加工した場合の表面粗さを測定した。表4に示すプランジ切削により表面粗さを評価した。 【0056】 約0.3%のCを含有する実施例44〜46およびそれらを超えるC量の実施例47〜77に関しては機械的性質を重要視するため、衝撃値およびその異方性を示した。ここでは棒鋼の横断面方向から切り出した試料の衝撃値を示す(「C方向」欄)とともに、異方性として (横断面方向試料の衝撃値)/(長手方向試料の衝撃値)を示した(「異方性」欄)。この値が大きいほど異方性が少ないことを示す。 【0057】 なお実施例44〜77の被削性評価はドリル穿孔特性VL1000で行い、表7に示す切削条件で評価した。これらの場合、切削表面粗さは評価していない。 【0058】 【表5】
【0059】 【表6】
【0060】 【表7】
【0061】 実施例41〜43の比較では発明例はVL1000および表面粗さで比較例より勝っていた。また実施例44〜77に関しては、発明例はほぼ同等のCおよび他の合金元素を含有した比較例に対して硬度HV、横断面方向試料の衝撃値および(横断面方向試料の衝撃値)/(長手方向試料の衝撃値)は、ほぼ同等であるにも拘わらず、発明例の方が、VL1000が良好で被削性に優れることがわかる。 【0062】 さらに比較例53のようにSを増量することで被削性を向上させた場合、衝撃値の異方性が低下するため、構造用鋼としての性能が発明例47、48より劣ると考えられた。 【0063】 表8に、合金元素を多量に添加し、焼入れ性を向上させた鋼をベースとした実施例を示す。供試材は一部は270t転炉で溶製後、ビレットに分解圧延、さらにφ50mmに圧延した。他は2t−真空溶解炉にて溶製、圧延した。 【0064】 実施例78〜82はSCr420をベースとした鋼に関して、焼準(920℃×1hr→空冷)を施した後、切削試験に供した。被削性評価はドリル穿孔試験で切削条件は表5と同じ、評価項目は累積穴深さ1000mmまで切削可能な最高の切削速度(いわゆるVL1000)である。このVL1000の単位はm/minで、大きい程良好な工具寿命に優れる。さらに硬度を測定するとともに、図2に示すように9mmφの試験片にR1.16mmのノッチを形成したノッチ付き小野式回転曲げ試験片を作成し、図3(a)及び(b)に示す条件で浸炭した後に疲労特性を評価した。 【0065】 その結果、図3(b)に示す焼準後の硬さはほとんど同一にも関わらずVL1000は開発鋼の方が優れていた。浸炭後の疲労特性はほぼ同等であり、本発明の技術が被削性を向上させるものの、その後の歯車性能を低下させないことがわかる。 【0066】 【表8】
【0067】 表9に、さらに合金元素を多量に添加し、焼入れ性を向上させた鋼をベースとした実施例を示す。供試材は一部は270t転炉で溶製後、ビレットに分解圧延、さらにφ50mmに圧延した。他は2t−真空溶解炉にて溶製、圧延した。被削性評価はドリル穿孔試験で切削条件は表7と同じ、評価項目は累積穴深さ1000mmまで切削可能な最高の切削速度(いわゆるVL1000)である。 【0068】 実施例83〜88はSCM440をベース鋼として、焼入れ焼戻し処理によって硬度をHV310程度に合わせ、被削性評価はVL1000で行った。また機械的性質として衝撃値を評価した。衝撃値は試料を棒鋼の長手方向から切り出し、JIS3号試験片(2mmU切欠き試験片)によって測定した。その結果、発明例は比較例に対してほぼ同一の硬度、衝撃値(J/cm2)を有するにもかかわらず、被削性VL1000は比較例よりも大きく、優れていた。 【0069】 また実施例89〜94は軸受け鋼をベースとし、球状化焼鈍処理700℃×20hr保定により軟質化させ、被削性VL1000を測定した。その結果、発明例は比較例と比較して、ほぼ同等の硬度を有しているにも関わらず、被削性VL1000は大きく、比較例より優れていた。 【0070】 【表9】
【0071】 【発明の効果】 本発明鋼によれば、鋼中マトリックスの破断を促進することで、0.15%未満のC量のいわゆる低炭快削鋼においては工具寿命と切削表面粗さを改善し、Pbを含まない場合でも良好な工具寿命と切削表面粗さを得ることができ、また、0.15%以上のCを含む構造用鋼においても、被削性を向上させるとともに、機械的性質の劣化、特に異方性を最低限に抑制することができる。あるいは同程度の機械的性質を有する鋼よりも本発明鋼は良好な被削性を得ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】プランジ切削試験の概要を示す図で、(a)はプランジ切削試験方法、(b)は工具の動きを示す図である。 【0072】 【図2】ノッチ部付の小野式回転曲げ試験片を示す図である。 【0073】 【図3】浸炭条件を示す模式図で、(a)は浸炭焼入を(b)は焼準の条件を示す模式図である。 【符号の説明】 1 切削方向 2 試験材 3 工具 4 表面粗さ測定面
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006655 【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番3号
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| 【出願日】 |
平成14年6月14日(2002.6.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100105441 【弁理士】 【氏名又は名称】田中 久喬
【識別番号】100107892 【弁理士】 【氏名又は名称】内藤 俊太
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| 【公開番号】 |
特開2004−18925(P2004−18925A) |
| 【公開日】 |
平成16年1月22日(2004.1.22) |
| 【出願番号】 |
特願2002−174645(P2002−174645) |
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