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【発明の名称】 マグネシウム合金のリサイクル方法
【発明者】 【氏名】深津 敦
【住所又は居所】埼玉県和光市中央一丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】白石 隆
【住所又は居所】埼玉県和光市中央一丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】浜村 隆
【住所又は居所】東京都港区東新橋一丁目2番15号 日本金属株式会社内

【氏名】一中 勝則
【住所又は居所】東京都港区東新橋一丁目2番15号 日本金属株式会社内

【氏名】小林 尚誉
【住所又は居所】東京都港区東新橋一丁目2番15号 日本金属株式会社内

【要約】 【課題】カルシウムまたは希土類元素を添加したマグネシウム合金の廃材を再生する際に、作業環境の向上を図りつつ、再生コストを低く抑え、再生塊品質を新塊並に高めることを可能としたマグネシウム合金のリサイクル方法を提供する。

【解決手段】カルシウムまたは希土類元素を添加したマグネシウム合金の廃材を溶解させ、ガスの吹出孔を設けた攪拌子を用いて、吹出孔から不活性ガスを流しながら溶湯の攪拌精錬を行い、この攪拌精錬により溶湯の表面上へ浮上したマグネシウム合金溶湯中の酸化物および不純物を除去する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムまたは希土類元素を添加したマグネシウム合金の廃材を溶解させることでマグネシウム合金の溶湯を得る工程と、
ガスの吹出孔を設けた攪拌子を用いて、前記吹出孔から不活性ガスを流しながら、溶湯の攪拌精錬を行う工程と、
前記攪拌精錬により前記溶湯の表面上へ浮上した前記マグネシウム合金溶湯中の酸化物および不純物を除去する工程とを備えることを特徴とするマグネシウム合金のリサイクル方法。
【請求項2】
前記マグネシウム合金の廃材は、鋳造の際に離型剤を用いて得られた製品であり、前記不純物の中には離型剤が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム合金のリサイクル方法。
【請求項3】
前記離型剤はグラファイト系の離型剤であり、前記吹出孔から、不活性ガスとともに塩化物系フラックスを吹き出すことを特徴とする請求項2に記載のマグネシウム合金のリサイクル方法。
【請求項4】
新地金を使用しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマグネシウム合金のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム合金のリサイクル方法に係り、特に、カルシウムまたは希土類元素を添加したマグネシウム合金の廃材におけるリサイクル方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車産業においては、環境問題への関心が高まるにつれてさらなる燃費向上が要望されるようになってきている。このような要望に対応するために、自動車産業では、自動車車体の軽量化の検討が必要となり、実用金属の中で最も軽いマグネシウム合金を部品として使用することが多くなってきている。
【0003】
AZ91やAM60に代表されるマグネシウム合金においては、例えば、鋳造工程で発生するスクラップ、研削屑、回収した使用済みの鋳造製品、ダイカスト品、加工品等を、再溶解、精錬する際に、塩化物系フラックスを散布させて溶湯中の酸化物や不純物と反応させることで、その酸化物や不純物を溶湯表面に浮上あるいは溶湯底部へ沈降させ、溶湯を清浄化させて、リサイクルする方法が知られている。
【0004】
また、特開2000−226621号公報では、フラックスの使用に替えて、Arなどの不活性ガス、SF、CO、SO、N、乾燥空気などの混合ガスを細かく分散させながら吹き込むことにより、溶湯中の酸化物や不純物を浮上させ、溶湯を清浄化するマグネシウム系廃材の清浄化方法が報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、耐熱強度を向上させたマグネシウム合金には、カルシウムまたは希土類元素が添加されているものが多く、このようなカルシウムまたは希土類元素を添加したマグネシウム合金を、上記のマグネシウム合金のリサイクル方法に適用した場合、少量のフラックスの散布では、溶湯内にフラックスが満遍なく行き渡らず、一方、多量のフラックスの散布では、カルシウムや希土類元素がフラックスと反応して、スクラップを再溶解、精錬する際にマグネシウム合金中のカルシウムや希土類元素の成分濃度が低下してしまうため、不足した元素を追加添加しなければならなくなる。したがって、再生コストが高くなってしまうため、カルシウムや希土類元素を添加したマグネシウム合金においてはスクラップの再生が非常に困難であった。
【0006】
また、カルシウムまたは希土類元素を添加したマグネシウム合金を、上記のマグネシウム系廃材の清浄化方法に適用した場合、溶湯中の混合ガス吹き込み口が溶湯底部より上部にあるため、吹き込んだ混合ガスは吹き込み口よりも下部にある溶湯を清浄化することができず、また、加熱による自然な対流しか期待できないため、精錬に大変な時間を要することになる。さらに、この精錬における長時間の加熱により、カルシウムは溶湯表面から酸化し、希土類元素は同時に添加しているアルミニウムと反応し、溶湯底部へ沈降してしまうため、これらの成分濃度の低下が起こり、不足した元素を追加添加する必要も生じてしまう。また、この浄化方法においては、溶湯下部の清浄化されない部分が混在し精錬不足となるため、再生塊を100%使用するのではなく、50%以上の新塊と50%以下の再生塊を混合して使用することが提唱されている。
【0007】
したがって、本発明は、カルシウムまたは希土類元素を添加したマグネシウム合金の廃材を再生する際に、作業環境の向上を図りつつ、再生コストを低く抑え、再生塊品質を新塊並に高めることを可能としたマグネシウム合金のリサイクル方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のマグネシウム合金のリサイクル方法は、カルシウムまたは希土類元素を添加したマグネシウム合金の廃材を溶解させることでマグネシウム合金の溶湯を得る工程と、ガスの吹出孔を設けた攪拌子を用いて、この吹出孔から不活性ガスを流しながら、溶湯の攪拌精錬を行う工程と、攪拌精錬により溶湯の表面上へ浮上したマグネシウム合金溶湯中の酸化物および不純物を除去する工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、カルシウムまたは希土類元素を添加したマグネシウム合金の廃材の溶解・精錬過程において、吹出孔を設けた溶湯攪拌用の攪拌子を用い、この吹出孔から微細な不活性ガスを吹き出させるとともに攪拌子の回転によりさらに微細化分散して溶湯中に満遍なく拡散させることにより、溶湯中の酸化物および不純物に対し、非常に効率的に不活性ガスを付着させて浮上させることができるため、主要成分低下を防ぎつつ、酸化物および不純物のみを除去できることから、高品質な再生塊を得ることができる。
【0010】
また、本発明によれば、上記のようにフラックスを使用しないため、作業環境を向上することができるとともに、攪拌と微細不活性ガスの吹き出しを同時に行えるため、歩留まり向上と精錬時間の大幅な短縮が可能となり、再生コストを低く抑えることができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、非常に効率良く酸化物および不純物を除去することができることから、再生塊品質を新塊並にまで高めることができるため、一定の割合以上の新塊と混合させる必要はない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のマグネシウム合金のリサイクル方法についてさらに詳細に説明する。
本発明のマグネシウム合金のリサイクル方法では、まず、カルシウムまたは希土類元素を添加したマグネシウム合金を溶解炉にて溶解する。その際の溶解温度は、650〜750℃が好ましく、より好ましくは700〜750℃が適している。650℃以下では溶解困難であり、一方、750℃を超えると酸化燃焼が激しく、作業環境が危険となるためである。また、本発明においては、精錬が完了した後に、20分程度、所定温度にて沈静化を行うことが望ましい。
【0013】
さらに、本発明におけるカルシウムまたは希土類元素を添加したマグネシウム合金の廃材は、鋳造の際に離型剤を用いて得られた製品であって、離型剤が不純物として含有されたものであってもよい。この離型剤は、シリコーン系、雲母系、グラファイト系等のいずれのものでも本発明に適応可能であるが、グラファイト系離型剤の場合には、精錬時の溶解温度を他の場合よりも高く、750℃程度にすることで、離型剤を取り除くことができるが、溶湯温度が高く、溶湯表面の燃焼が激しくなってしまうため、再生歩留まりが低下し、かつ、溶湯の取り扱いに注意が必要となる。
【0014】
そのため、グラファイト系離型剤が付着したマグネシウム合金廃材においては、後述する攪拌子の吹出孔から吹き出させる不活性ガスに塩化物系フラックスを混入させて、溶湯内部にフラックスを拡散させることにより、効率良く酸化物および不純物を取り除くことができるとともに、溶湯表面に散布する方法よりも、大気ヘのフラックス成分の漏洩量が大幅に低減され、フラックス使用量を減らすことができるとともに作業環境も向上する。また、この場合には、溶解温度を700℃程度とすることができるので、溶湯燃焼の生じることがなく、フラックスが原因で発生する成分ロスもごく僅かである。
【0015】
次いで、上記のようにして得られたマグネシウム合金溶湯中において、攪拌子を坩堝の底部より10〜15cm程度浮かせた状態で回転させ、溶湯を攪拌させる。なお、この攪拌子には、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の不活性ガスを連続的に吹き出す吹出孔が設けられており、この吹出孔からの不活性ガスの吹き出しにより、溶湯の攪拌と同時に、非常に微細な不活性ガスの気泡を溶湯中に分散させることができる。このとき、攪拌子の回転数は毎分100〜300回転が好ましく、より好ましくは毎分150〜250回転が適している。この回転数が毎分100回転よりも遅いと不活性ガスの分散が均一とならず、一方、毎分300回転よりも早いと攪拌子の回転軸部より大気を巻き込む恐れがある。
【0016】
また、攪拌子より吹き出す不活性ガスの流量は毎分5〜25リットルが好ましく、より好ましくは毎分18〜22リットルが適している。この流量が毎分5リットルよりも少ないと十分な清浄化効果が得られず、一方、毎分25リットルよりも多いと微細な気泡とならず、効果が激減してしまう。
【0017】
さらに、本発明における攪拌子回転および不活性ガスの吹き出しの時間は、溶解する量に比例するが、概ね、500kg溶解に対し30〜60分、2000kg溶解に対し45〜80分が好ましい。これら下限値よりも短い時間だと清浄化が完全になされず、一方、上限値よりも長く行っても効果は比例しない。
【0018】
また、本発明における攪拌子には、一般に行われているマグネシウム精錬の溶湯攪拌に比べ遙かに小型の羽根を用いることが好ましい。小型の羽根を用い高速で回転させることで、吹き出された不活性ガス、フラックス等をさらに微細化して分散させ、溶湯との接触・付着反応を促進させることができる。
【0019】
さらに、上記したように、離型剤がグラファイト系のものである場合には、攪拌子回転および不活性ガス吹き出しの際に、不活性ガスの吹出孔から、不活性ガスと同時に塩化物系フラックスを吹き出すことができるが、この場合、カルシウムまたは希土類元素とフラックスとの反応が懸念されるため、攪拌子回転時間は通常よりも10分程度短い方が好ましい。通常の回転時間では、精錬時のドロス発生が多くなり、最終的な再生歩留まりが低下し、最悪の場合、主要成分の低下を招く恐れがある。
【0020】
【実施例】
次に、具体的な実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
<試料1>
耐熱マグネシウム合金として、ダイカスト鋳造で製造された製品の廃材で、表面にシリコーン系離型剤が付着した、Mg−6wt%Al−2.9wt%Mm−1.2%Ca−0.4wt%Mn合金(以下、Mg−6Al−3Mm−1Caと略記する)を用いた。ここで、Mm(ミッシュメタル)は、セリウム(Ce)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、プラセオジウム(Pr)の混合金属であり、成分のうち約半分をCeが占めるものである。このMg−6Al−3Mm−1Caを、2000kg溶解できる溶解炉により溶解温度700℃で溶解した。
【0021】
次いで、この溶湯を、不活性ガスの吹出孔を設けた攪拌子により毎分200〜250回転で攪拌しつつ、吹出孔からアルゴンを流量毎分20リットルで60分間吹き出させ、アルゴンガスの微細気泡を酸化物および不純物に付着させ、この酸化物および不純物を除去した。その後、この溶湯を地金用の舟形鋳型に注湯し、試料1の再生インゴットを得た。
【0022】
<試料2>
試料1のMg−6Al−3Mm−1Caを、500kg溶解できる溶解炉により溶解温度700℃で溶解した後、塩化物系フラックスを表面散布することにより、マグネシウム合金中の酸化物および不純物を除去した。その後、この溶湯を地金用の舟形鋳型に注湯し、従来の一般公知のリサイクル方法による、試料2の再生インゴットを得た。
【0023】
<試料3>
試料1のMg−6Al−3Mm−1Caを、500kg溶解できる溶解炉により溶解温度650℃で溶解した後、この溶湯中に、上記試料1の再生方法で用いた攪拌子を回転させずに、その吹出孔からアルゴンを流量毎分20リットルで60分間吹き出させ、アルゴンガスの微細気泡を酸化物および不純物に付着させ、この酸化物および不純物を除去した。その後、この溶湯を地金用の舟形鋳型に注湯し、特開2000−226621号公報に開示の方法による、試料3の再生インゴットを得た。
【0024】
<試料4>
耐熱マグネシウム合金として、ダイカスト鋳造で製造された製品の廃材で、表面にシリコーン系離型剤が付着した、Mg−3wt%Gd−6wt%Nd合金(以下、Mg−3Gd−6Ndと略記する)を用いた。このMg−3Gd−6Ndを、500kg溶解できる溶解炉により溶解温度700℃で溶解した以外は、試料1と同様の方法により、試料4の再生インゴットを得た。
【0025】
<試料5および6>
耐熱マグネシウム合金として、ダイカスト鋳造で製造された製品の廃材で、表面にグラファイト系離型剤または雲母系離型剤が付着した、Mg−6Al−3Mm−1Caを用い、このMg−6Al−3Mm−1Caを、500kg溶解できる溶解炉により溶解温度700℃で溶解した以外は、試料1と同様の方法により、試料5および6の再生インゴットを得た。
【0026】
<試料7〜9>
試料1のMg−6Al−3Mm−1Caを、500kg溶解できる溶解炉により溶解温度700℃で溶解した後、吹出孔からのアルゴンの吹き出し時間を30,20,または10分間と変更した以外は、試料1と同様の方法により、試料7〜9の再生インゴットを得た。
【0027】
<試料10および11>
耐熱マグネシウム合金として、ダイカスト鋳造で製造された製品の廃材で、表面にグラファイト系離型剤が付着した、Mg−6Al−3Mm−1Caを用い、このMg−6Al−3Mm−1Caを、500kg溶解できる溶解炉により溶解温度650℃または750℃で溶解した以外は、試料1と同様の方法により、試料10および11の再生インゴットを得た。
【0028】
<試料12>
耐熱マグネシウム合金として、ダイカスト鋳造で製造された製品の廃材で、表面にグラファイト系離型剤が付着した、Mg−6Al−3Mm−1Caを用い、このMg−6Al−3Mm−1Caを、500kg溶解できる溶解炉により溶解温度700℃で溶解した。次いで、この溶湯を、不活性ガスの吹出孔を設けた攪拌子により毎分200〜250回転で攪拌しつつ、吹出孔からアルゴンを流量毎分20リットルで60分間吹き出させるとともに、塩化物系フラックスをこのアルゴンガスに混入させて溶湯内に拡散させることにより、アルゴンガスの微細気泡を酸化物および不純物に付着させ、および塩化物系フラックスを酸化物および不純物と反応させ、これらの酸化物および不純物を除去した。その後、この溶湯を地金用の舟形鋳型に注湯し、試料12の再生インゴットを得た。
【0029】
<試料13>
耐熱マグネシウム合金として、ダイカスト鋳造で製造された製品の廃材で、表面にグラファイト系離型剤が付着した、Mg−6Al−3Mm−1Caを用い、このMg−6Al−3Mm−1Caを、500kg溶解できる溶解炉により溶解温度700℃で溶解した後、試料1と同様の方法により、アルゴンガスによる酸化物および不純物の除去を行うと同時に、塩化物系フラックスを表面散布することによる酸化物および不純物の除去も行った。その後、この溶湯を地金用の舟形鋳型に注湯し、試料13の再生インゴットを得た。
【0030】
このようにして得られた試料1〜13の再生インゴットについて、以下に示すICP成分分析、塩水噴霧試験、引張試験、および歩留まり計算を行った。これらの評価結果は表1〜5に示す。
【0031】
▲1▼ ICP成分分析
再生インゴット中央部より、切り出した試験片にてICP成分分析を行い、再生インゴットを作製したときのマグネシウム合金の廃材を再溶解した時点での成分値と比較した。分析結果は、主要添加成分の低下割合が各元素において0.05%未満であるものを◎、少なくとも1種類において低下割合が0.05〜0.1%にあるものを○、少なくとも1種類において低下割合が0.1%を超えるものを×として評価した。
【0032】
▲2▼ 塩水噴霧試験
再生インゴット中央部を厚さ20mmに切り出し、JIS Z 2371に従い、5%食塩水にて24h噴霧した後の試料において、断面部位の錆発生を目視にて観察を行った。試験結果は、錆発生の見られなかったものを◎、僅かに錆発生が見られたものを○、錆発生が明白なものを×として評価した。
【0033】
▲3▼ 引張試験
再生インゴットよりダイカストにて部品を鋳造し、平面部位より引張試験片を切り出して、破断強度を測定した。この結果を新地金からの同様の試験結果と比較し、新地金からの試験片における引張試験結果の強度範囲内に収まるものを◎、新地金からの試験片における引張試験結果の下限値の95%以上を確保しているものを○、そうでないものを×として評価した。
【0034】
▲4▼ 歩留まり計算
再生インゴットを作製するために再溶解したマグネシウム合金の廃材の総重量に対し、その廃材より作製された再生インゴットの総重量の割合を計算した。
【0035】
【表1】


【0036】
【表2】


【0037】
【表3】


【0038】
【表4】


【0039】
【表5】


【0040】
表1に示すように、シリコーン系離型剤が付着したMg−6Al−3Mm−1Ca合金を本発明のリサイクル方法により再生した試料1と、従来の一般公知のリサイクル方法により再生した試料2と、特開2000−226621号公報に開示の方法により再生した試料3とを比較すると、試料1では、各成分濃度が低下せず、耐食性も良好で、引張強度も新塊同等の強度を保ちながら、再生歩留まり95%以上を確保していた。これに対して、試料2では、各成分濃度が低下し、耐食性および引張強度が劣り、再生歩留まりが75%未満であった。また、試料3では、引張強度は十分保たれているものの、各成分濃度が低下し、耐食性が劣り、再生歩留まりが75%未満であった。したがって、本発明のリサイクル方法の有用性が示された。
【0041】
また、表2に示すように、再生するマグネシウム合金を、シリコーン系離型剤が付着したMg−3Gd−6Nd合金に代えた試料4では、いずれの評価結果も試料1と同等であり、再生歩留まりも95%以上を確保していた。したがって、本発明のリサイクル方法は、Mg−6Al−3Mm−1Ca合金だけではなくMg−3Gd−6Nd合金に対しても有効であることが示された。
【0042】
さらに、表3に示すように、Mg−6Al−3Mm−1Ca合金に付着した離型剤をグラファイト系離型剤に代えた試料5および雲母系離型剤に代えた試料6を、試料1と比較すると、試料5において、やや各評価結果が劣り、再生歩留まりが75.2%と低下しているものの、実用上問題のないものであり、試料6では、各成分濃度の低下がみられず、耐食性および引張強度も良好で、再生歩留まりが90.2%と申し分ない結果であった。したがって、本発明のリサイクル方法は、合金に付着する離型剤の種類に関係なく用いられることが示された。
【0043】
また、表4に示すように、アルゴンガスの吹き出し時間を30,20,または10分間に代えた試料7〜8を、試料1と比較すると、吹き出し時間が20分間以下である(試料8および9)場合には、酸化物および不純物の除去が不十分なため、耐食性および引張強度が劣っていた。また、吹き出し時間が30分間である試料7では、各評価結果が良好となるものの、再生歩留まりが劣っていた。したがって、本発明のリサイクル方法では、60分間以上の不活性ガスの吹き出し時間を要することが示された。
【0044】
さらに、表5に示すように、グラファイト系離型剤が付着したMg−6Al−3Mm−1Ca合金に対して、溶解温度を650℃とした試料10および750℃とした試料11を、試料5と比較すると、試料10では、耐食性および引張強度が劣り、一方、試料11では、いずれの評価結果においても良好であるが、他の離型剤が付着した試料と比べると、再生歩留まりがやや低くかった。したがって、グラファイト系離型剤が付着したマグネシウム合金に対しては、溶解温度を750℃程度まで上げる必要があることが示された。
【0045】
次いで、グラファイト系離型剤が付着したMg−6Al−3Mm−1Ca合金に対して、700℃で溶解させた溶湯中に、不活性ガスと共に塩化物系フラックスも吹き出させた試料12、および不活性ガスとは別に溶湯表面に塩化物系フラックスを散布させた試料13を、試料5と比較すると、試料12では、耐食性が向上し、さらに、再生歩留まりが81.5%に上昇した。一方、試料13では、耐食性が向上したものの、各成分濃度が低下し、引張強度が劣り、再生歩留まりが75%未満に低下していた。したがって、グラファイト系離型剤が付着したマグネシウム合金に対しては、700℃程度の溶解温度で、不活性ガスと共に塩化物系フラックスを溶湯中に吹き出させることが最適であることが示された。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のマグネシウム合金のリサイクル方法によれば、カルシウムまたは希土類元素を添加したマグネシウム合金の廃材を再生する際に、吹出孔を設けた溶湯攪拌用の攪拌子を用い、この吹出孔から微細な不活性ガスを吹き出させて溶湯中に満遍なく拡散させることにより、溶湯中の酸化物および不純物に対し、非常に効率的に不活性ガスを付着させて浮上させることにより、作業環境の向上を図りつつ、再生コストを低く抑え、再生塊品質を新塊並に高めることができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
【識別番号】592185552
【氏名又は名称】日本金属株式会社
【住所又は居所】東京都港区東新橋1丁目2番15号
【出願日】 平成14年6月25日(2002.6.25)
【代理人】 【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生

【公開番号】 特開2004−27287(P2004−27287A)
【公開日】 平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願番号】 特願2002−184865(P2002−184865)