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【発明の名称】 セイヨウミツバチ由来の抗菌ペプチド
【発明者】 【氏名】犬伏 順也

【氏名】前田 拓也

【氏名】高麗 寛紀

【要約】 【課題】カチオン性抗菌ペプチドのような陰イオン性物質などに吸着して抗菌活性の低下がない抗菌ペプチドを提供し、当該抗菌ペプチドを用いた抗菌剤、消毒剤および保存剤に関する。

【解決手段】古くから様々な生理活性を持つ生薬として珍重されてきたセイヨウミツバチ(Apis mellifera)の雄蛹に抗菌活性を持った成分が含まれること、およびこの抗菌成分が塩基性アミノ酸を含まないペプチド(サンプル2はPro、Glx、Gly、AlaおよびThrを、サンプル3はIle、LeuおよびTyrのアミノ酸を含有するもの)であること見出し、本発明を完成させた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セイヨウミツバチの蛹抽出物由来でプロリン、グルタミン酸またはグルタミン、グリシン、アラニンおよびトレオニンを含有する抗菌ペプチド。
【請求項2】
セイヨウミツバチの蛹抽出物由来でイソロイシン、ロイシンおよびチロシンを含有する抗菌ペプチド。
【請求項3】
請求項1または請求項2にそれぞれ記載の抗菌ペプチドを成分とする抗菌剤または消毒剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)由来の抗菌ペプチド、および抗菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
抗菌ペプチドは幅広い抗菌スペクトルを有し、薬剤耐性菌が出現し難いと考えられている。このことから、ヒトおよび動物の細菌感染性疾患の予防や治療、或いは、食材などの物品に抗菌性を付与する目的に抗菌ペプチドを利用することが考えられている。
【0003】
これまでに多くの抗菌ペプチドが動植物から単離されている。例えば、タイワンカブトムシ由来の抗菌ペプチドおよび当該抗菌ペプチドを有効成分とする抗菌剤が開示されている(特許文献1参照。)。
サソリ毒由来の抗菌ペプチドおよび当該抗菌ペブチドを有効成分とする抗菌剤が開示されている(例えば特許文献2参照。)。
また、ミツバチなどのハチ類由来の抗菌ペプチドも、報告されている(例えば非特許文献1 参照。)。
【0004】
上記記載の抗菌ペプチドは、いずれもリジン、アルギニンおよび/またはヒスチジンなどの塩基性アミノ酸を含むもので、ペプチド分子全体の電荷が正となるカチオン性抗菌ペプチドと呼ばれるものである。これら抗菌ペプチドの作用原理は、抗菌ペプチド中の正に荷電した塩基性アミノ酸部分が菌表面の膜と静電相互作用することによるものと考えられている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0005】
このようなカチオン性抗菌ペプチドは、プラスチック製の容器や陰イオン性の物質に強く吸着し、抗菌活性が低下する場合があることが指摘されている(例えば非特許文献3参照。)。
【0006】
カチオン性抗菌ペプチド以外の抗菌ペプチドについては、若干報告があるもののほとんど知られていない(例えば、非特許文献4参照。)。
【0007】
○先行文献
【特許文献1】
特開2000−063400号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開2001−186887号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】
P.Casteels,外3名,「The Journal of Biological Chemistry」,1993年,268巻,p.7044−7054
【非特許文献2】
M.Zasloff、「Nature」,2002年,415巻,p.389−395
【非特許文献3】
A.Giacometti,外6名,「Antimicrobial Agents and Chemotherapy」,2000年、44巻,p.1694−1696
【非特許文献4】
K. Brogden,外2名,「Antimicrobial Agents and Chemotherapy」,1997年,41巻,p.1615−1617
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
カチオン性抗菌ペプチドのような陰イオン性物質などに吸着して抗菌活性の低下がない抗菌ペプチドを提供し、当該抗菌ペプチドを用いた抗菌剤、消毒剤および保存剤に関する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、課題を解決するため鋭意研究を行った結果、古くから様々な生理活性を持つ生薬として珍重されてきたセイヨウミツバチ(Apis mellifera)の雄蛹(ハチの子、食用としても使用)に抗菌活性を持った成分が含まれること、そしてこの抗菌成分は塩基性アミノ酸を含まないペプチド(サンプル2はPro、Glx、Gly、AlaおよびThrを、サンプル3はIle、LeuおよびTyrのアミノ酸を含有するもの)であること見出し、本発明を完成させた。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
凍結したセイヨウミツバチの蛹をドライアイスで冷却したアセトンで抽出し(アセトン可溶画分)、このアセトン可溶画分について、0.1%トリフルオロ酢酸/40%アセトニトリル水溶液で抽出した(アセトニトリル可溶画分)。このアセトニトリル可溶画分について逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(以下HPLCと称する)で分画を行った。そして各画分について抗菌活性を調べ、抗菌活性を持つ画分を得た(サンプル1)。
【0011】
当該サンプル1について12株の細菌(グラム陽性菌4株、グラム陰性菌8株)で抗菌活性を調べた結果、全てに抗菌活性が認められた。また、サンプル1についてペプチド分解酵素処理を行ったところ、抗菌活性の低下が認められた。このことから、サンプル1の抗菌活性成分は、ペプチド結合を有しているものであることが分かった。
【0012】
このサンプル1を更に逆相カラムを用いたHPLCで精製を行い、サンプル2およびサンプル3と称する抗菌ペプチドを得た。
サンプル2を加水分解してアミノ酸分析を行った結果、プロリン、グルタミン酸、グリシン、アラニンおよびトレオニンが検出された。また、サンプル3についても同様の操作を行い、イソロイシン、ロイシンおよびチロシン(1:2:1の比率)で検出された。なお、サンプル2で検出されたグルタミン酸は、塩酸加水分解を行った検体を用いてアミノ酸分析を行っているため、ペプチド中での存在がグルタミン酸かグルタミンかは不明である。
サンプル2およびサンプル3ともに、一般的な抗菌ペプチドにおいて抗菌活性の作用点となる塩基性アミノ酸が検出されなかった。また、従来報告されている非カチオン性の抗菌ペプチドとは異なるアミノ酸組成を有し、且つより高い抗菌活性を有していた。
【0013】
サンプル3の分子量を飛行時間型−質量分析計(TOF−Mass)を用いて測定したところ約l065であることが分かった。
【0014】
本発明の抗菌ペプチドは、各当該ペプチドのアミノ酸配列に従って合成することができる。この合成したペプチドは、セイヨウミツバチの雄蛹から得たサンプル2およびサンプル3と同じ構造および活性を有することは明らかであり、同じ用途に用いることができる。
【0015】
本発明の抗菌ペプチドは、広い抗菌スペクトルを有していることから、抗菌剤、殺菌剤、消毒剤、防腐剤、防臭剤などの成分として好適に用いられる。例えば、細菌感染症の治療、創傷面の消毒、眼病予防、ロ腔内洗浄(例えばうがい)や練り歯磨き用の抗菌剤または殺菌剤、化粧品の防腐剤、コンタクトレンズの保存、食品の防腐剤や鮮度保持剤、台所用品、浴室用品およびトイレ用品などの静菌剤または殺菌剤、家具や衛生機器表面の殺菌剤または静菌剤などに用いることができる。また、衣類やカーテンなどの繊維製品の静菌剤または殺菌剤、壁や床の静菌剤または殺菌剤、さらには各種用水例えば工業用水、ビル管理用水および浴用水などの殺菌剤、静菌剤または防腐剤などに用いることができる。また、抗菌または殺菌作用から防臭効果も期待できる。更に、農業分野での静菌剤または殺菌剤として、例えば作物や農業資材に対する農薬などとして使用できる。また、畜産・養蜂業分野での静菌剤または殺菌剤として、例えば畜産飼料の防腐剤として、養蜂箱の静菌剤または殺菌剤などに用いることができる。また、漁業分野での静菌剤または殺菌剤として、例えば養魚場において細菌に感染した魚の治療、網や手袋などの資材の殺菌などに用いることができる。
【0016】
本発明の抗菌ペプチドを含有する抗菌剤の形態に関して特に限定はない。例えば、内用剤および外用剤の典型的な形態として、液剤、懸濁剤、乳剤、エアロゾル、泡沫剤、顆粒剤、粉末剤、錠剤、カプセル、軟膏、クリームなどが挙げられる。また、注射などに用いるため、使用直前に生理食塩水などに溶解して薬液を調製するための凍結乾燥物、造粒物とすることもできる。
【0017】
本発明の抗菌ペプチドを含有する抗菌剤などの製剤において、他の担体すなわち副次的成分(製薬上許容されるもの)としては、抗菌剤などの用途や形態に応じて適宜異なり得るが、種々の充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、表面活性剤、賦形剤、色素、香料など一般的に製剤として製造するときに用いるものが使用できる。
なお、本発明の抗菌ペプチドおよび種々の担体を材料にして上記形態の各種薬剤を調製するプロセス自体は公知の方法に準じればよく、かかる製剤方法自体は本発明を特徴付けるものでもないため詳細な説明は省略する。
【0018】
本発明の抗菌ペプチドによって提供される抗菌剤は、その形態および目的に応じた方法や用量で使用することができる。例えば、液剤は、静脈内、筋肉内、皮下、皮内若しくは腹腔内への注射によって投与することができる。また、錠剤などの固体形態のものは経口投与することができる。このときの投与量は、目的とする菌に対する抗菌活性から算出することができる。
また、衛生陶器表面の消毒(殺菌)や食品の防腐目的に使用する場合は、比較的多量(例えば1〜100mg/ml)の本発明の抗菌ペプチドを含有する液剤を対象物の表面に直接スプレーするか、或いは、当該液剤で濡れた布や紙で対象物の表面を拭くことにより行うことができる。これらは例示にすぎず、従来の抗菌剤による農薬、医薬部外品などの抗菌剤や消毒剤と同じ形態、使用方法を適用することができる。
【0019】
例えば、放射線治療を受けているガン患者やエイズ患者は、免疫不全症を合併症として発症し、本来の疾病それ自体の原因であることよりも細菌感染により重篤な症状をきたすことがある。本発明によって提供される抗菌ペプチドは、細菌に選択的に抗菌作用を示すとともにヒトなどの哺乳動物に対しては毒性を有しない。このため、本発明に係る抗菌ペプチドは、抗菌剤の成分として有用であり、本発明によって提供される抗菌剤は人体に対して安全に適用することができる。
【0020】
再生医療の分野において、皮膚、骨、各種の臓器などの培養時における細菌感染を防止することを目的として本発明の抗菌ペプチドを用いることができる。例えば、適当な濃度で本発明の抗菌ペプチド単独または当該ペプチドを成分の一つとする抗菌剤を培養液中に添加することにより、培養中の組織や臓器などの細菌感染を防止することができる。
【0021】
また、培養細胞や培養組織に対して、本発明の抗菌ペプチドをコードするポリヌクレオチドを遺伝子治療に使用する素材として用いることができる。例えば、本発明の抗菌ペプチドをコードする遺伝子(DNAセグメントまたはRNAセグメント)を適当なベクターに組み込み、目的とする培養組織(細胞)に導入することにより、常時或いは所望する時期に培養組織(細胞)内で、本発明の抗菌ペプチドを発現させることが可能となる。従って、本発明の抗菌ペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNAセグメントまたはRNAセグメント)は、培養組織(細胞)の細菌感染を防止する薬剤として有用である。
【0022】
本発明の抗菌ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、いわゆる遣伝子治療に使用する素材として用いることができる。例えば、本発明の抗菌ペプチドをコードする遺伝子(DNAセグメントまたはRNAセグメント)を適当なベクターに組み込み、目的とする部位に導入することにより、常時生体(細胞)内で本発明の抗菌ペプチドを発現させることが可能となる。従って、本発明の抗菌ペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNAセグメントまたはRNAセグメント)は、上述した患者などに対し、細菌感染を予防または治療する薬剤として有用である。
【0023】
【実施例】
以下に説明する実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に示すものに限定するものではない。
【0024】
<実施例1>
○抗菌ペプチド成分の抽出
孵化20日後のセイヨウミツバチの雄蛹115匹を採取し、エタノール/ドライアイスで凍結した。この凍結蛹にドライアイスで冷却したアセトンを添加し、乳鉢中で粉砕した。粉砕したサンプルについて4℃で10分間遠心分離(2500×g)を行い、上清を得た(アセトン可溶画分)。このアセトン可溶画分について、減圧濃縮(70℃)を行った後、氷冷下で残留物に0.1%トリフルオロ酢酸/40%アセトニトリル水溶液を入れて撹拌・抽出した。この抽出物を4℃で5分間遠心分離(22500×g)を行い、上清を得た(アセトニトリル可溶画分)。このアセトニトリル可溶画分について逆相カラムを用いたHPLCで分画を行った。HPLCの条件は、C18逆相プレカラム(Guard−Pak社製品、製品名Deltapak C18A300)およびC18逆相カラム(ダイソー社製、DAISOPAK SP−120−5−ODS−AP、20mmI.D.×250mm)を使用し、A液:0.1%トリフルオロ酢酸/20%アセトニトリル水溶液とB液:0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル溶液によるグラジエントクロマトグラフィーである。グラジエント条件は、最初の3分間はA液のみを流し、その後、24分間かけてB液の比率を100%になるようなリニアグラジエントである。また、5ml/分の流速で、220nm検出で分画を実施した。
溶出時間および220nm吸収により分画を行い、各画分は減圧下で溶媒を留去した。得られた各画分についてStapylococcus aureus IFO−12732(以下S. aureusと称する)に対する抗菌活性を調べた。この結果、溶出時間が10〜14分の画分に抗菌が認められた(サンプル1)。
【0025】
○サンプル1の抗菌活性
サンプル1について12種類の細菌に対する抗菌活性を下記記載の試験法を用いて調べた。この結果を下記表1に示す。
【0026】
○抗菌活性試験法
1.供試菌をL−broth 5mlに植菌し、37℃で24時間前培養した。
2.前培養した菌液がOD660の吸光度(濁度)が0.1になるようにNB溶液で調製した。
3.滅菌シャーレに標準寒天培地を入れて固化させたものに、2で調製した菌液100μlを入れて、滅菌綿棒(栄研器材(株)製)で均一に塗布した。
4.3で作製したプレートにペニシリンカップ(内径6mm、外径8mm、高さ10mm)を置き、この中に検定試料を10μl入れた。
5.4のプレートを37℃で24時間培養し、阻害直径(ペニシリンカップの外径を減じて表示)を測定した。
【0027】
○使用培地
L−broth:1.0質量%のバクトトリプトン(商品名、Difco社製)、0.5質量%の酵母抽出物(OXOID社製)、0.5質量%の塩化ナトリウム(関東化学社製)を含有するように蒸留水に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0〜7.2に調整した後、オートクレーブ(121℃、20分間)で滅菌した。
NB溶液:NUTRIENT BROTH DEHYDRATED(Difco社製)。
標準寒天培地:日水製薬社製の標準寒天培地
【0028】
○供試菌
・グラム陽性菌
Staphylococcus aureus IFO12732
Staphylococcus aureus NIH JC1(MRSA)
Bacillus subtilis ATCC6633
Bacillus cereus IFO1530
・グラム陰性菌
Escherichia coli IFO12713
Escherichia coli O157:H7 sakai
Pseudomonas aeruginosa ATCC27583
Klebsiella pneumoniae ATCC4352
Proteus mirabilis IFO3849
Proteus vulgaris ATCC13315
Salmonella typhimurium IFO1324
Salmonella enteritidis IFO3313
【0029】
【表1】


【0030】
<実施例2>
○抗菌活性に対するペプチド分解酵素の影響
実施例1で得たサンプル1についてペプチド分解酵素であるsubtilisin(酵素濃度1mg/ml、37℃、6時間処理)で処理した。そして、ペプチド分解酵素処理前後の検体についてS. aureusに対する抗菌活性を調べた。この結果、ペプチド分解酵素処理により抗菌活性が低下することが認められた。
このことから、サンプル1中の抗菌成分がペプチドであることが示唆された。
【0031】
<実施例3>
○抗菌ペプチドの精製
実施例1で得たサンプル1を更に逆相カラムを用いたHPLCで活性成分の精製を行った。このHPLCの条件は、C18逆相プレカラム(Guard−Pak社製品、製品名Deltapak C18A300)およびC18逆相カラム(ダイソー社製、DAISOPAK SP−120−5−ODS−AP、20mmI.D.×250mm)を使用し、A液:0.1%トリフルオロ酢酸/20%アセトニトリル水溶液とB液:0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル溶液によるグラジエントクロマトグラフィーである。グラジエント条件は、最初の3分間はA液のみを流し、その後、43分間かけてB液の比率を100%になるようなリニアグラジエントである。また、流速は3.0ml/分で、検出は220nmの波長で実施した。溶出液の分画は、220nmの吸収に従って行った。
得られた各画分についてS. aureusを用いた抗菌活性を調べた結果、サンプル2と称する活性画分(約16〜18分のピーク)とサンプル3と称する活性画分(約20〜22分のピーク)を得た。このHPLCの溶出パターンとサンプル2(図1の矢印2の溶出位置)およびサンプル3(図1の矢印3の溶出位置)の溶出位置を図1に示す。
【0032】
<実施例4>
○サンプル2およびサンプル3のアミノ酸組成
サンプル2およびサンプル3をそれぞれ真空密封管内で加水分解(6M−塩酸、110℃、24時間)を行った後、各試料を自動アミノ酸分析機でアミノ酸の分析を行った。
この結果、サンプル2からは、プロリン、グルタミン酸、グリシン、アラニンおよびトレオニンの、サンプル3からは、イソロイシン、ロイシンおよびチロシン(1:2:1の比率)のアミノ酸が検出された。
サンプル2およびサンプル3には、一般的な抗菌ペプチドにおいて抗菌活性の作用点となる塩基性ペプチドが含まれていなかった。
【0033】
<実施例5>
○サンプル3の分子量測定
サンプル3の分子量についてTOF−Massを用いて測定したところ、l065にピークが観察され、これを分子量ピークと推定した。
TOF−Massは、KRATOS質量分折装置 KOMPACT MALDI III(島津製作所社製)を用いてMALDI−TOF/MS(Matrix−Assisted Laser Desorption Time of Flight Mass Spectrometry:マトリックス支援レーザーイオン化−飛行時間型−質量分析)を用いた。
【0034】
<比較例1〜3>
○比較例用の抗菌ペプチドの合成
抗菌活性の比較対象物とするため、K.Brogdenらが報告した(K.Brogden,外2名,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,1997年,41巻,p.1615−1617)アニオン性の抗菌ペプチドを3種類合成した。すなわち、比較例1の抗菌ペプチドとしては6アミノ酸残基(Val−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys)のものを、比較例2の抗菌ペプチドとしては7アミノ酸残基(Asp−Asp−Asp−Asp−Asp−Asp−Asp)のものを、および比較例3の抗菌ペプチドとしては9アミノ酸残基(Ala−Asp−Ala−Asp−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys)のものを合成した。
上述した各ペプチドは、市販のペプチド合成機(Applied Biosystems社製、ABI 433A peptide synthesizer)を用いてFast MocTM protocolに従い固相合成法(Fmoc法)により合成した。
【0035】
<実施例6>
○最小発育阻止試験
サンプル2およびサンプル3並びに比較例1、比較例2および比較例3の検定薬剤について、S. aureusに対する最小発育阻止濃度(MIC)を液体培地希釈法により求めた。
検定薬剤は、NB溶液を用いて1段2倍希釈で10段階行った希釈系列を作製した。ただし、水溶性の低いものは、あらかじめ50%エチルアルコール/無菌水または80%エチルアルコール/無菌水を用いて調製した薬剤溶液を用い、最終的にアルコール濃度が菌の成長に影響しない1%以下となるように希釈系列を作製した。
S. aureusをL−broth 5mlに植菌し、37℃で18時間静置培養(前培養)を行った。当該菌液は、電子冷熱式恒温セルホルダ付き分光光度計を用いて、菌濃度が2×10cells/mlとなるようにNB溶液で調製した(検定菌液)。
各所定濃度の希釈系列の薬剤溶液を96wellマイクロプレート(Greiner社製)に150μlずつ分注し、これに検定菌液を150μlずつ加えて、37℃で24時間静置培養した。培養後、各検定薬剤における菌の増殖を濁度により測定(660nm)し、MICを算出した。この結果を表2示す。なお、表2のMICの単位はμg/mlである。
【0036】
【表2】


【0037】
【発明の効果】
本発明の抗菌ペプチドは、食用として用いられるハチの子由来であることから本質的に人体に対して安全と考えられる。また、本発明の抗菌ペプチドは、非カチオン性のため負に帯電した共存物への吸着が生じない新しいタイプの抗菌剤として、食品保存料、抗菌剤、抗菌物質として広い範囲での応用が可能である。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】サンプル2およびサンプル3の逆相HPLC溶出パターン
横 軸:溶出時間(分)
左縦軸:220nmの吸光度を示す
右縦軸:アセトニトリルの濃度(%)を示す
実 線:220nm吸収における溶出パターン
点 線:アセトニトリルの濃度
2:サンプル2の溶出位置
3:サンプル3の溶出位置
【出願人】 【識別番号】501046958
【氏名又は名称】高麗 寛紀
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
【出願日】 平成14年9月19日(2002.9.19)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−107275(P2004−107275A)
【公開日】 平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願番号】 特願2002−273602(P2002−273602)