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【発明の名称】 タングステン錯体の製造方法
【発明者】 【氏名】広田 将司
【住所又は居所】愛媛県新居浜市惣開町5番1号 住友化学工業株式会社内
【氏名】萩谷 弘寿
【住所又は居所】大阪市此花区春日出中3丁目1番98号 住友化学工業株式会社内
【課題】その製造過程において、不溶物の濾過除去等の煩雑な操作をすることなく、容易にタングステン錯体を製造する方法を提供すること。

【解決手段】タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物、およびタングステン金属からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物と、タングステンに配位可能な有機化合物とを反応させることを特徴とするタングステン錯体の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物、およびタングステン金属からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物と、タングステンに配位可能な有機化合物とを反応させることを特徴とするタングステン錯体の製造方法。
【請求項2】
第IIIb族元素が、ホウ素である請求項1に記載のタングステン錯体の製造方法。
【請求項3】
第IVb族元素が、炭素である請求項1に記載のタングステン錯体の製造方法。
【請求項4】
第Vb族元素が、リンである請求項1に記載のタングステン錯体の製造方法。
【請求項5】
酸素を除く第VIb族元素が、硫黄である請求項1に記載のタングステン錯体の製造方法。
【請求項6】
タングステンに配位可能な有機化合物が、含窒素芳香族化合物または含窒素芳香族化合物N−オキシドである請求項1に記載のタングステン錯体の製造方法。
【請求項7】
タングステンに配位可能な有機化合物が、カルボン酸類である請求項1に記載のタングステン錯体の製造方法。
【請求項8】
タングステンに配位可能な有機化合物が三級アミンオキシド類である請求項1に記載のタングステン錯体の製造方法。
【請求項9】
タングステンに配位可能な有機化合物がホスフィンオキシド類である請求項1に記載のタングステン錯体の製造方法。
【請求項10】
タングステンに配位可能な有機化合物がカルボキシ基で置換された含窒素芳香族化合物またはカルボキシ基で置換された含窒素芳香族化合物N−オキシドであり、反応後に第四級アンモニウム塩または第四級ホスホニウム塩を加えて、タングステン錯体を塩として取り出すことを特徴とする請求項1に記載のタングステン錯体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステン錯体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タングステン酸や酸化タングステンと過酸化水素とを混合することによって得られるタングステン酸化物と、タングステンに配位可能な有機化合物とを反応させることによって調製されるタングステン錯体は、有機化合物の酸化剤として重要な化合物である(例えば特許文献1、非特許文献1参照。)。しかしながら、いずれのタングステン錯体も、その製造過程において、タングステン酸化物由来の不溶物が生成し、該不溶物を濾過、遠心分離等の方法で除去する必要があるため、操作が煩雑であり、改善が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特表平11−512335号公報
【非特許文献1】Inorg.Chem.,17,3055(1978)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況のもと、本発明者らは、その製造過程において、不溶物の濾過除去等の煩雑な操作をすることなく、容易にタングステン錯体を製造する方法について、鋭意検討したところ、タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物およびタングステン金属からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物と、タングステンに配位可能な有機化合物とを反応させることにより、タングステン酸化物由来の不溶物が生成することがなく、容易にタングステン錯体を製造することができることを見いだし、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物およびタングステン金属からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物と、タングステンに配位可能な有機化合物とを反応させることを特徴とするタングステン錯体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、入手が容易なタングステン金属やホウ化タングステン等のタングステン化合物と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物と、ピコリン酸等のタングステンに配位可能な有機化合物とを反応させることにより、不溶物を生成させることなく、種々の酸化反応の触媒として使用可能なタングステン錯体を容易に収率よく製造できるため、工業的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物およびタングステン金属からなる群から選ばれる少なくとも一種(以下、タングステン金属または化合物と略記する。)と過酸化水素とを反応せしめてなるタングステン酸化物について説明する。
【0008】
タングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物としては、例えばホウ化タングステン等が、タングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物としては、例えば炭化タングステン等が、タングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物としては、例えば窒化タングステン、リン化タングステン等が、タングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物としては、例えば硫化タングステン等が、それぞれ挙げられる。
【0009】
かかるタングステン金属または化合物のなかでも、タングステン金属が特に好ましい。また、これらタングステン金属または化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0010】
かかるタングステン金属または化合物と過酸化水素とを反応させることにより、タングステン酸化物が調製される。過酸化水素としては、通常、水溶液を用いるが、有機溶媒溶液を用いてもよい。取扱いがより容易であるという点で、過酸化水素水溶液を用いることが好ましい。過酸化水素水溶液もしくは有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%程度である。過酸化水素水溶液は、通常、市販のものをそのままもしくは必要に応じて、希釈、濃縮等により濃度調整を行なった後に用いられ、また過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水溶液を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に蒸留処理する等の手段により、調製されたものが用いられる。
【0011】
タングステン酸化物を調製する際の過酸化水素の使用量は、タングステン金属または化合物に対して、通常3モル倍以上、好ましくは5モル倍以上であり、その上限は特にない。
【0012】
タングステン金属または化合物と過酸化水素との反応は、通常、水溶液中で実施される。もちろん、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;例えば酢酸エチル等のエステル溶媒;例えばtert−ブタノール等の第三級アルコール溶媒;例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;などの有機溶媒中または該有機溶媒と水との混合溶媒中で実施してもよい。
【0013】
タングステン酸化物の調製時の調製温度は、通常−10〜100℃程度である。
【0014】
タングステン金属または化合物と過酸化水素とを、水中もしくは有機溶媒中で反応させることにより、タングステン金属または化合物が溶解し、タングステン酸化物を含む均一溶液が得られるが、該タングステン酸化物を、例えば濃縮処理等により前記均一溶液から取り出して、タングステンに配位可能な有機化合物と反応させてもよいし、該調製液をそのままタングステンに配位可能な有機化合物と反応させてもよい。
【0015】
タングステン金属または化合物と過酸化水素との接触効率を向上させるため、タングステン酸化物調製液中でタングステン金属または化合物が十分に分散するよう攪拌しながら反応を行うことが好ましい。またタングステン金属または化合物と過酸化水素の接触効率を高め、タングステン酸化物調製時の制御をより容易にするという点で、タングステン金属または化合物としては、例えば粉末状等の粒径の小さなタングステン化合物を用いることが好ましい。
【0016】
続いて、上記で得られたタングステン酸化物と、タングステンに配位可能な有機化合物とを反応させ、タングステン錯体を製造する方法について述べる。タングステンに配位可能な有機化合物(以下、有機化合物と略記する。)としては、タングステン金属または化合物と過酸化水素とを反応させて得られるタングステン酸化物に対して配位性を示す化合物であればよく、そのような有機化合物としては、例えば含窒素芳香族化合物、含窒素芳香族化合物N−オキシド、三級アミンオキシド類、カルボン酸類、α、γ−ジケトン類、ホスフィンオキシド類等が挙げられる。
【0017】
含窒素芳香族化合物としては、例えばピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−(n−ブチル)ピリジン、4−(1−ヘキシル)ピリジン、4−(1−ヘキシル)ピリジン、4−(1−オクチルピリジン)、4−(1−ノニル)ピリジン、4−(5−ノニル)ピリジン、4−(1−デシル)ピリジン、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナンスロリン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラジン、ピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸等が挙げられ、含窒素芳香族化合物N−オキシドとしては、前記含窒素芳香族化合物の芳香環を構成する窒素原子が酸化された、例えばピリジン−N−オキシド、2,2’−ビピリジル−N,N’−ジオキシド等のピリジンN−オキシド類が挙げられる。
【0018】
三級アミンオキシド類としては、例えばトリエチルアミン−N−オキシド、トリ(n−プロピル)アミン−N−オキシド、トリ(n−ブチル)アミン−N−オキシド、トリ(n−ペンチル)アミン−N−オキシド、トリ(n−ヘキシル)アミン−N−オキシド、トリ(n−オクチル)アミン−N−オキシド、トリ(n−デシル)アミン−N−オキシド、トリ(n−ドデシル)アミン−N−オキシド、トリ(n−テトラデシル)アミン−N−オキシド、トリ(n−ヘキサデシル)アミン−N−オキシド、トリ(n−オクタデシル)アミン−N−オキシド、ジメチル(n−オクチル)アミン−N−オキシド、ジメチル(n−デシル)アミン−N−オキシド、ジメチル(n−ドデシル)アミン−N−オキシド、ジメチル(n−テトラデシル)アミン−N−オキシド、ジメチル(n−ヘキサデシル)アミン−N−オキシド、ジメチル(n−オクタデシル)アミン−N−オキシド、ジ(n−ヘキシル)メチルアミン−N−オキシド、ジ(n−オクチル)メチルアミン−N−オキシド、ジ(n−デシル)メチルアミン−N−オキシド、ジ(n−ドデシル)メチルアミン−N−オキシド、ジ(n−テトラデシル)メチルアミン−N−オキシド、ジ(n−ヘキサデシル)メチルアミン−N−オキシド、ジ(n−オクタデシル)メチルアミン−N−オキシド、ジメチルベンジルアミン−N−オキシド、ジ(n−ブチル)ベンジルアミン−N−オキシド、ジ(n−オクチル)ベンジルアミン−N−オキシド、ジ(n−ドデシル)ベンジルアミン−N−オキシド、ジ(n−オクタデシル)ベンジルアミン−N−オキシド、N,N−ジメチルアニリン−N−オキシド、N,N−ジ(n−ブチル)アニリン−N−オキシド、N,N−ジ(n−ヘキシル)アニリン−N−オキシド、N,N−ジ(n−オクチル)アニリン−N−オキシド、N,N−ジ(n−デシル)アニリン−N−オキシド、N,N−ジ(n−ドデシル)アニリン−N−オキシド、N,N−ジ(n−オクタデシル)アニリン−N−オキシド、
【0019】
N−メチルモルホリン−N−オキシド、N−(n−ブチル)モルホリン−N−オキシド、N−(n−オクチル)モルホリン−N−オキシド、N−(n−デシル)モルホリン−N−オキシド、N−(n−ドデシル)モルホリン−N−オキシド、N−(n−ヘキサデシル)モルホリン−N−オキシド、N−(n−オクタデシル)モルホリン−N−オキシド、N−メチルピロリジン−N−オキシド、N−(n−ブチル)ピロリジン−N−オキシド、N−(n−ヘキシル)ピロリジン−N−オキシド、N−(n−オクチル)ピロリジン−N−オキシド、N−(n−デシル)ピロリジン−N−オキシド、N−(n−ドデシル)ピロリジン−N−オキシド、N−(n−ヘキサデシル)ピロリジン−N−オキシド、N−(n−オクタデシル)ピロリジン−N−オキシド、N−メチルピペリジン−N−オキシド、N−(n−ブチル)ピペリジン−N−オキシド、N−(n−ヘキシル)ピペリジン−N−オキシド、N−(n−オクチル)ピペリジン−N−オキシド、N−(n−デシル)ピペリジン−N−オキシド、N−(n−ドデシル)ピペリジン−N−オキシド、N−(n−ヘキサデシル)ピペリジン−N−オキシド、N−(n−オクタデシル)ピペリジン−N−オキシド等が挙げられる。
【0020】
かかる三級アミンオキシド類は、上記で得られたタングステン酸化物と過酸化水素との混合溶液と、対応する三級アミン類とを作用させることにより、系中で調製したものを用いてもよく、三級アミンオキシド類の生成に引き続いて、所望の錯体を得ることができる。この場合において、前記した過酸化水素の使用量は、用いる三級アミン類の量に応じて適宜調整すればよい。
【0021】
ホスフィンオキシド類としては、例えばトリ(n−ブチル)ホスフィンオキシド、トリ(n−オクチル)ホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、トリ(o−トリル)ホスフィンオキシド、トリ(2−フリル)ホスフィンオキシド、ヘキサメチルホスフォリックトリアミド等が挙げられる。
【0022】
かかるホスフィンオキシド類は、上記で得られたタングステン酸化物と過酸化水素との混合溶液と、対応するホスフィン類とを作用させることにより、系中で調製したものを用いてもよく、ホスフィンオキシド類の生成に引き続いて、所望の錯体を得ることができる。この場合において、前記した過酸化水素の使用量は、用いるホスフィン類の量に応じて適宜調整すればよい。
【0023】
カルボン酸類としては、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸等が挙げられる。α,γ−ジケトン類としては、例えばアセチルアセトン等が挙げられる。
【0024】
かかる有機化合物の使用量は、特に制限はないが、少なすぎる場合はタングステン酸化物が過剰の状態となり、また、多すぎる場合は有機化合物が過剰の状態となり、いずれの場合も経済的に不利になるため、実用的には、タングステン酸化物に対して、0.8〜1.2モル倍程度である。
【0025】
かかる有機化合物は、そのまま用いてもよいし、後述する溶媒に溶解させて溶液として用いてもよい。また、上記したタングステン酸化物の調製の際に、かかる有機化合物を予め加えておいてもよい。
【0026】
タングステン酸化物と有機化合物との反応は、通常、水溶液中、有機溶媒中または水と有機溶媒の混合溶媒中で実施される。有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;例えば酢酸エチル等のエステル溶媒;例えばtert−ブタノール等の第三級アルコール溶媒;例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;例えばジクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン溶媒;例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素溶媒;などの単独または混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒の使用量は特に制限されない。
【0027】
反応は、通常−10〜130℃程度で実施される。また、通常、常圧条件下で実施されるが、減圧あるいは加圧条件下で実施してもよい。
【0028】
反応終了後、反応液をそのまま濃縮処理、晶析処理等することにより、目的とするタングステン錯体を取り出すことができる。また、反応液に、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、タングステン錯体を取り出すこともできる。取り出したタングステン錯体は、例えば再結晶等の通常の精製方法によりさらに精製してもよい。
【0029】
また、有機化合物としてピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸等のカルボキシ基で置換された含窒素芳香族化合物またはそれらのN−オキシド類を用いた場合には、反応液に、例えば水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ(n−ブチル)アンモニウム等の第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩等を加え、タングステン錯体を塩として取り出すこともできる。
【0030】
かくして得られたタングステン錯体は、例えばオレフィン類の炭素−炭素二重結合を酸化切断してカルボニル化合物を製造する方法、オレフィン類を酸化してジオール類を製造する方法、オレフィン類を酸化してエポキシド類を製造する方法、アルコール類を酸化してカルボニル化合物を製造する方法、スルフィド類を酸化してスルホキシド類およびスルホン類を製造する方法、アミン類を酸化してアミンオキシド類、ニトロン類およびN−オキシラジカル類を製造する方法等の過酸化水素を酸化剤とした種々の酸化反応の触媒として用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、錯体の構造決定には、H−NMRを用いた。
【0032】
実施例1
還流冷却管を付した100mLナスフラスコを窒素置換し、室温で、タングステン金属0.92gおよび30重量%過酸化水素水3.4gを仕込み、浴温25℃で15分攪拌し、タングステン酸化物調製液を得た。該調製液中には不溶物もなく、均一であった。該調製液に、水15mLおよびピコリン酸0.62gを添加し、浴温25℃で2時間攪拌、反応させた後、40重量%水酸化テトラ(n−ブチル)アンモニウム水溶液3.3gを仕込み、浴温25℃で0.5時間攪拌、保持した。析出結晶を濾取し、タングステンピコリン酸錯体テトラ(n−ブチル)アンモニウム塩の白色結晶を2.70g得た。
タングステンピコリン酸錯体テトラ(n−ブチル)アンモニウム塩の収率:86%(タングステン金属基準)。
【0033】
比較例1
還流冷却管を付した100mLナスフラスコを窒素置換し、室温で、タングステン酸1.25gおよび30重量%過酸化水素水3.4gを仕込み、浴温100℃で3時間攪拌し、室温まで冷却した。不溶物が存在していたので、該不溶物を濾別し、タングステン酸化物調製液を得た。該調製液に、水15mLおよびピコリン酸0.62gとを添加して浴温25℃で2時間攪拌し、これに、40重量%水酸化テトラ−(n−ブチル)アンモニウム水溶液3.3gを仕込み、浴温25℃で0.5時間攪拌、保持した。析出結晶を濾取し、タングステンピコリン酸錯体テトラ(n−ブチル)アンモニウム塩の白色結晶を2.32g得た。
タングステンピコリン酸錯体テトラ(n−ブチル)アンモニウム塩の収率74%(タングステン酸基準)。
【0034】
実施例2
還流冷却管を付した100mLナスフラスコを窒素置換し、室温で、タングステン金属1.84gおよび30重量%過酸化水素水12.1gを仕込み、浴温25℃で15分攪拌し、タングステン酸化物調製液を得た。該調製液中には、不溶物もなく、均一であった。該調製液に、2,2’−ビピリジル1.56gを添加し、浴温25℃で2時間攪拌し、保持し、反応させた。析出結晶を濾取し、タングステン(2,2’−ビピリジル)錯体の白色結晶を3.45g得た。
タングステン(2,2’−ビピリジル)錯体の収率:82%(タングステン金属基準)。
【0035】
比較例2
還流冷却管を付した100mLナスフラスコを窒素置換し、室温で、酸化タングステン2.32gおよび30重量%過酸化水素水12.1gを仕込み、浴温100℃で10時間攪拌し、室温まで冷却した。不溶物が存在していたので、該不溶物を濾別し、タングステン酸化物調製液を得た。該調製液に、2,2’−ビピリジル1.56gを添加して浴温25℃で2時間攪拌、反応させた。析出結晶を濾取し、タングステン(2,2’−ビピリジル)錯体の白色結晶を1.7g得た。
タングステン(2,2’−ビピリジル)錯体の収率:40%(酸化タングステン基準)。
【0036】
参考例1
還流冷却管を付した100mLシュレンク管を窒素置換し、室温で、シクロオクテン4.4g、30重量%過酸化水素水7.2g、実施例1で得たタングステンピコリン酸錯体テトラ(n−ブチル)アンモニウム塩0.31gおよびメタノール8mLを仕込み、浴温90℃で4時間攪拌、保持し、反応させた。反応液を冷却後、トルエン5mLを加えて分液処理し、1,2−エポキシシクロオクタンを含む有機層を得た。ガスクロマトグラフィー内部標準法により収率を求めたところ、1,2−エポキシシクロオクタンの収率は90%であった(シクロオクテン基準)。
【出願人】 【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号
【出願日】 平成16年2月24日(2004.2.24)
【代理人】 【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆

【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨

【識別番号】100119471
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 雅之

【公開番号】 特開2004−307473(P2004−307473A)
【公開日】 平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願番号】 特願2004−47436(P2004−47436)