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【発明の名称】 ケミカルリサイクル方法
【発明者】 【氏名】豊田 宏

【氏名】山本 雅英

【氏名】ウォルター カミンスキー

【要約】 【課題】PTFEを含む素材から、テトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを、水蒸気を用いることによる不具合がなく取出せるケミカルリサイクル技術を提供する。

【解決手段】本発明は、PTFEを含む素材から、PTFEを熱分解することによって発生するテトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを取出すケミカルリサイクル方法である。このケミカルリサイクル方法では、不活性の粒状材料によって形成された流動床をその内部に有するとともに、その内部に前記素材が供給された流動床反応器を加熱し、流動ガスとしての窒素ガスを前記流動床反応器内に導入するとともに、前記窒素ガスとともに前記加熱によってPTFEが熱分解されることによって発生したテトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを、前記流動床反応器から取出す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTFEを含む素材から、PTFEを熱分解することによって発生するテトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを取出すケミカルリサイクル方法であって、
不活性の粒状材料によって形成された流動床をその内部に有するとともに、その内部に前記素材が供給された流動床反応器を加熱する過程、
流動ガスとしての不活性ガスを前記流動床反応器内に導入するとともに、前記不活性ガスとともに前記加熱によってPTFEが熱分解されることによって発生したテトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを、前記流動床反応器から取出す過程、
を含むケミカルリサイクル方法。
【請求項2】
前記不活性ガスとして、窒素ガスを用いる、
請求項1記載のケミカルリサイクル方法。
【請求項3】
前記素材は、PTFEによってコーティングされた建築用膜材を裁断したものである、
請求項1記載のケミカルリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、PTFE(polytetrafluoroethylene:ポリ四フッ化エチレン)樹脂を含む材料から、テトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを取出す、PTFEのケミカルリサイクル技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
PTFEは、滑性や耐熱性、耐薬品性を備えており広く使用されている。例えば、建築用の膜材にも使用されている。
このような建築用の膜材は、一般的に、ガラス繊維等で構成された膜基材をPTFEでコーティングしてなる。PTFEによるコーティングを行われたこのような膜材は、撥水性、防汚性、耐候性を備えたものとなり、建築用材料として好ましい特性をもつ。
【0003】
上述の如きPTFEによるコーティングのなされた膜材は、建築物の屋根などに大面積で用いられるから、建築物の取壊しや改築等の際に処分しなければならない膜材の量は膨大となる。
ここで、PTFEによるコーティングのなされた膜材の処分をどのように行うかが問題となる。PTFEのようなフッ素樹脂系の材料は、焼却を行うと環境に好ましくない物質が発生することがあり、他方、単なる埋立ては、処分する量が膨大なこと、廃棄物処分場の不足が問題視されていることなどから妥当でないからである。
そこで、PTFEによるコーティングのなされた膜材のうち、PTFEからテトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを取出すケミカルリサイクルを行うべきであるという提案がなされている。テトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーは、PTFEに再生できるため、上述の如きケミカルリサイクルを行えれば、上述の如き膜材の処分の問題は解消できる。
他方、このようなケミカルリサイクルを行うべきことは、PTFEによるコーティングをなされた膜材のみならず、PTFEを用いた他の製品についても同様である。
このような事情を考慮して、PTFEを含む製品をケミカルリサイクルする技術についての研究がなされている。
【0004】
上述の如きケミカルリサイクルに関する技術の一つが、特開平7−188073号公報に開示されている。この技術は、砂などによって形成される流動床に、PTFEを含む材料を投入した状態で加熱を行うことによって、PTFEを熱分解するとともに、流動ガスとしての水蒸気を導入することで、PTFEが熱分解することによって発生したテトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを水蒸気とともに取出す、というものである。
このケミカルリサイクルの技術は、一定の成果をあげるものではあるが、流動ガスとして水蒸気を用いると、生成したテトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーと、ケミカルリサイクルを実行するための装置の乾燥が必要となる、ケミカルリサイクルを行う際に多量の熱量を投入することが必要となる、また、水蒸気が持つ酸化力によりケミカルリサイクルを実行するための装置の腐食が生じる、という3つの不具合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、PTFEを含む製品からテトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを取出すケミカルリサイクルを行う流動床を用いる技術を、上述の不具合のうちのケミカルリサイクルを実行するための装置が腐食するという不具合を少なくとも解消でき、より好ましくは他の2つの不具合をも解消できるように、改良することをその課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するための本発明に係る方法は、以下のようなものである。本発明の方法は、PTFEを含む素材から、PTFEを熱分解することによって発生するテトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを取出すケミカルリサイクル方法である。
そして、このケミカルリサイクル方法は、不活性の粒状材料によって形成された流動床をその内部に有するとともに、その内部に前記素材が供給された流動床反応器を加熱する過程、流動ガスとしての不活性ガスを前記流動床反応器内に導入するとともに、前記不活性ガスとともに前記加熱によってPTFEが熱分解されることによって発生したテトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを、前記流動床反応器から取出す過程、を含んでいる。
このケミカルリサイクル方法では、流動床を形成する粒状材料に不活性のものを用いるのみならず、流動ガスにも不活性のものを用いることとしている。したがって、PTFEの加熱を行う過程、テトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを取出す過程のいずれの際にも、ケミカルリサイクルを実行するための装置の腐食が生じなくなる。
【0007】
流動ガスとして用いる本発明の不活性ガスは、不活性のものであればその種類を特には問わないが、例えば、窒素ガスを用いることができる。窒素ガスは、不活性ガスの中では、比較的入手し易く、またコスト面でも優れている。また、ケミカルリサイクルを実行するにあたってこのように窒素ガスを用い、従来の如き水蒸気を用いないこととすれば、生成したテトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーと、ケミカルリサイクル装置の乾燥が不要となり、また、水蒸気を得るときのような態の変化(気化)を行う必要がないので、投入する熱量が水蒸気を用いる場合よりも少なくても済むことになる。
本発明におけるケミカルリサイクル方法で使用する素材は、PTFEを含むものであればどのようなものでも構わない。例えば、PTFEによってコーティングされた建築用膜材を、上記素材とすることができる。この場合における建築用膜材は、流動床の中で流動できる程度の大きさに裁断されていることが好ましい。
建築用膜材を素材として本発明のケミカルリサイクル方法を実施すれば、PTFEを含む建築用膜材の処分について存在する上述の如き問題を解決できることになる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるケミカルリサイクル方法の好ましい一実施形態について説明する。
【0009】
この実施形態におけるケミカルリサイクル方法は、図1に示したようなケミカルリサイクル装置を用いて実行される。
【0010】
図1中、10は貯蔵タンクである。貯蔵タンク10は、後述の素材を一時的に貯蔵するものである。
貯蔵タンク10は、ホッパー11の一端と、連通管12によって繋げられている。また、ホッパー11は、その他端で、ホッパー13の一端と、連通管14によって繋げられている。また、ホッパー13は、その他端で、流動床反応器20と接続されている。
ホッパー11、ホッパー13の内部には、スクリューコンベア11A、13Aがそれぞれ内蔵されている。
このような構成により、貯蔵タンク10内の素材は、連通管12、ホッパー11、連通管14、ホッパー13を順に通って、流動床反応器20へと適量ずつ供給されるようになっている。
【0011】
流動床反応器20は、その内部に、粒状材料で形成された流動床21が作られる反応容器である。流動床反応器20は密閉されており、また、下部に設けられた加熱器22によってその内部を加熱できるようになっている。なお、加熱器22は、流動床反応器20内部の加熱を行えればよく、必ずしも流動床反応器20の下部に設けられている必要はない。
流動床反応器20の内部には、その下方から、流動ガスを供給できるようになっている。流動ガスは図示せぬ配管を介して、図1中で矢示したように、流動床反応器20内部に供給される。
また、流動床反応器20の内部上方には、サイクロン23が設けられている。このサイクロン23は、遠心分離装置として機能するものであり、素材から発生した生成物、流動ガス、流動床21を形成する粒状物を比重に応じて選別するものである。なお、サイクロン23の下方には、貯留ケース24が設けられており、比重が所定の値よりも大きいものはここに溜まるようになっている。
流動床反応器20の上方には、図示せぬ配管が接続されており、これを介して流動床反応器20はサイクロン30と接続されている。素材のうち未だ固体のもの、素材から発生した生成物、流動ガス、流動床21を形成する粒状物のうち、比重が小さく、貯留ケース24に溜まらなかったものは、この配管を介して、図1に矢示したように、サイクロン30へと運ばれるようになっている。
【0012】
サイクロン30は、遠心分離装置として機能するものであり、素材のうち未だ固体のもの、素材から発生した生成物、流動ガス、流動床21を形成する粒状物を、その比重に応じて選別するものである。サイクロン30の下方には、貯留ケース31が設けられており、比重が所定の値よりも大きいものはここに溜まるようになっている。このケミカルリサイクル装置では、ここまでで、ほぼすべての固形物が取り除かれるようになっている。
【0013】
サイクロン30は、図示せぬ配管を通じて、冷却装置群40と接続されている。冷却装置群40は、第1冷却装置41、第2冷却装置42、第3冷却装置43を含んでいる。サイクロン30は、第1冷却装置41と、第1冷却装置41は第2冷却装置42と、第2冷却装置42は第3冷却装置43と、それぞれ接続されている。第1冷却装置41、第2冷却装置42、第3冷却装置43はともに筒状体であり、例えば水冷管によって冷却されている。
サイクロン30を通過した、素材のうち未だ固体のもの、素材から発生した生成物、流動ガス、流動床21を形成する粒状物は、冷却装置群40で、その沸点に応じて選別される。つまり、第1冷却装置41、第2冷却装置42、第3冷却装置43はそれぞれ異なる温度で冷却されており(より詳細には、第1冷却装置41が一番高い温度で、第2冷却装置42が次に高い温度で、第3冷却装置43がその次に高い温度で、それぞれ冷却されており、)、その沸点の別に応じて、最も沸点が高いものが第1冷却装置41で、次に沸点の高いものが第2冷却装置42で、最も沸点の低いものが第3冷却装置で回収されるようになっている。回収されたものは、第1冷却装置41、第2冷却装置42、第3冷却装置43の底部に、それぞれ溜まるようになっている。
【0014】
第3冷却装置43の下流には、静電集塵機50が接続されている。
静電集塵機50は、冷却装置群40を通過した素材から発生した生成物、流動ガス、流動床21を形成する粒状物のうち、僅かに残った気体でないものを回収するものである。静電集塵機50の下方には、貯留ケース51が設けられており、回収された固形物はここへ溜まるようになっている。
【0015】
静電集塵機50は、その他端が流動床反応器20の下方に接続されている図示せぬ配管の一端と接続されている。静電集塵機50に供給された、冷却装置群40を通過した素材から発生した生成物、流動ガス、流動床21を形成する粒状物のうち、固形物を除いた気体は、再度流動床反応器20へと供給されるようになっている。このような配管の構成により、流動ガスと、生成物は、流動床反応器20を通って循環するようにされている。
静電集塵機50から延びる上述の配管には、静電集塵機50に近い側から、ボンベ61、圧力計62、コンプレッサ63が接続されている。
ボンベ61は、流動ガスを貯蔵するものである。必要に応じて、流動ガスが、ボンベ61から配管へと供給される。
圧力計62は、静電集塵機50から延びる上述の配管の圧力を計測するものである。
コンプレッサ63は、流動床反応器20に送られる気体の圧を高めるものである。コンプレッサ63で圧が高められた状態で、気体は流動床反応器20へと送られる。
【0016】
次に、このケミカルリサイクル装置の動作と、このケミカルリサイクル装置の動作によって実施される本発明のケミカルリサイクル方法について説明する。
【0017】
このケミカルリサイクル装置を動作させるにあたって、まず、前処理を行う。前処理には、流動床反応器20に、流動床21を形成することと、素材の準備をすることが含まれる。
流動床21の形成は、流動床反応器20の図示せぬ開口を開いて、流動床21を形成する粒状物を、流動床反応器20内に入れることで行う。この粒状物は、不活性のものであることが必要とされるが、この実施形態では、粒状物として砂を使用する。
素材の準備は、以下のように行う。なお、この実施形態では、ケミカルリサイクルの対象として、PTFEによるコーティングのなされた膜材を用いることとした。この実施形態では、かかる膜材を裁断し、それを、一辺が0.5mm〜50mm程度になるように粉砕することにより、素材を得た。この素材は、貯蔵タンク10に入れられる。
【0018】
次に、貯蔵タンク10に入れた素材を、ホッパー11、13を介して流動床反応器20へと送る。また、それと同時に、流動床反応器20を加熱器22で加熱するとともに、ボンベ61から流動ガスを供給する。なお、流動ガスは不活性のものであることが必要とされるが、この実施形態では、流動ガスとして窒素ガスを用いた。
素材は、流動床反応器20内の流動床21を形成する粒状物と混合されながら、加熱される。流動床21には、下方から流動ガスが供給されており、また、素材から発生する生成物にも気体が含まれているので、流動床21は流動化し、素材は流動床21を形成する粒状物とよく混合される。素材の中のPTFEは熱分解され、生成物として、テトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを発生させる。
【0019】
下方から供給される流動ガスにより、素材のうち未だ固体のもの、素材から発生した生成物、流動ガス、流動床21は、流動床反応器20上方のサイクロン23まで飛ばされる。ここで、サイクロン23により、上述の如き比重による選別が行われ、比重の大きいものは貯留ケース24に溜まり、他のものはサイクロン30へと送られる。
【0020】
サイクロン30でも、サイクロン23で行われるのと同様の比重による選別が行われ、サイクロン30に送られたもののうち、比重の大きいものは貯留ケース31に溜まり、他のものは冷却装置群40へと送られる。
【0021】
冷却装置群40では、上述したとおりの沸点の別による選別が行われる。冷却装置群40に送られたもののうち、冷却されて気体でなくなったものは、ほぼすべてこの冷却装置群40で回収される。
【0022】
冷却装置群40で回収されなかったものは、静電集塵機50へと送られる。静電集塵機50では、冷却装置群40から送られたもののうち僅かに残った気体以外のものが回収され、貯留ケース51に溜められる。その他のものは、図示せぬ配管を経て流動床反応器20へと再度送られる。
このとき、必要に応じて流動ガスがボンベ61から追加される。流動床反応器20へと送られる気体は、コンプレッサ63にて適度に圧を上げられる。
【0023】
このようにして、PTFEを含む素材のケミカルリサイクルが行われる。素材のなかのPTFEを熱分解することによって発生するテトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーは、冷却装置群40に含まれる第1冷却装置41、第2冷却装置42、第3冷却装置43のいずれかで回収される。
【0024】
≪実験例≫
上述のようなケミカルリサイクル装置を用いて、PTFEを含む素材のケミカルリサイクルを行う実験を行った結果を以下の表1に示す。
なお、この実験では、上述の流動床反応器20内の温度を550℃、素材供給のスピードを0.5〜2.0kg/hとした。
【表1】


【0025】
【発明の効果】
本発明は、以上のようなものなので、PTFEを含む素材から、テトラフロロエチレン低分子量モノマー及びダイマーを取出すケミカルリサイクルを実行する際に、ケミカルリサイクルを実行する装置を腐食させずに済むようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるケミカルリサイクル方法を実行するためのケミカルリサイクル装置の構成を概念的に示す図。
【符号の説明】
10 貯蔵タンク
11 ホッパー
13 ホッパー
20 流動床反応器
21 流動床
22 加熱器
23 サイクロン
30 サイクロン
40 冷却装置群
41 第1冷却装置
42 第2冷却装置
43 第3冷却装置
50 静電集塵機
24,31,51 貯留ケース
61 ボンベ
62 圧力計
63 コンプレッサ
【出願人】 【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
【出願日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【代理人】 【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人

【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛

【公開番号】 特開2004−346000(P2004−346000A)
【公開日】 平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願番号】 特願2003−144188(P2003−144188)