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【発明の名称】 アミノ酸の迅速製造方法
【発明者】 【氏名】アマンド・キタイン

【氏名】加藤 俊作

【氏名】森吉 孝

【要約】 【課題】タンパク質を加水分解してアミノ酸を製造する従来法では、高濃度の塩酸を加え、長時間還流して分解する方法、または200℃以上の高温高圧水中で数時間加水分解するが、加水分解に長時間を要するため、不安定なアミノ酸が分解し、必要なアミノ酸を制御して回収することが困難である。このため、従来法に比べて、穏和な条件で迅速に加水分解し、有用なアミノ酸を効率的に製造できる技術の確立を目指すものである。

【解決手段】本発明は高温高圧下における水熱分解にマイクロ波を用いることにより、水のみで200℃、16.5気圧以下の低温、低圧の条件で迅速に分別分解できること、アルカリを用いることにより、100〜110℃の低温で、迅速に完全加水分解できる方法を提供するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質系材料を加水分解してアミノ酸混合物を製造する際に、マイクロ波照射下で水熱加水分解することを特徴とするアミノ酸混合物の製造方法。
【請求項2】
マイクロ波照射下、200℃以下の熱水中でタンパク質系材料を加水分解することを特徴とする請求項1のアミノ酸混合物の製造方法。
【請求項3】
アルカリの存在下、マイクロ波を照射しながら100℃以上の温度でタンパク質系材料を加水分解して、アミノ酸混合物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動植物系素材及び食品廃棄物などタンパク質を含む素材から組成の異なるアミノ酸混合物を得ることができるアミノ酸混合物の迅速製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】魚のあらや魚粉等の水産加工廃棄物、大豆カスや糠などの食品廃棄物については再利用率を上げ、排出量を削減することが求められている。このような状況で廃棄物を単に焼却あるいは発酵処理するだけでは不十分であり、タンパク質を加水分解して、調味料、医薬品、化粧品、飲料などとして注目されて付加価値の高いアミノ酸へ転換して再利用する技術の研究が進められている。
【0003】天然素材からアミノ酸を製造する方法として一般に酸加水分解法が用いられてきた。この方法では加水分解するのに長時間加熱処理する必要がある。このため、生成したアミノ酸のうち、熱や酸に不安定なアミノ酸はさらに分解される。
【0004】また、超臨界水は反応性が高く、有害物質や有機性廃棄物は超臨界水によって極短時間に酸化分解されることから、各種の有害排水や廃棄物の超臨界水酸化による無害化研究が盛んに行われている。この方法では有機性廃棄物が分子量の小さな炭化水素や二酸化炭素まで分解される。
【0005】超臨界水の反応性を利用してタンパク質を加水分解してアミノ酸やペプチドを製造する研究がなされている(特開H09−268166、特開2002−060376)。この方法では高速でタンパク質が分解できることを報告しているが、分解速度が大きく、反応制御が困難で、任意の成分の回収が困難である。
【0006】また、超臨界水は腐食性が大きく、且つ、無機塩類の溶解性が小さくなるため塩析が起こり、管の閉塞などが問題となるため、様々な研究がなされている。
【0007】一方、亜臨界の高温高圧水も活性で、触媒なしで、有機化合物を加水分解でき、低分子化できる。これを利用してタンパク質系廃棄物を加水分解してアミノ酸に転換して、再利用する試みがなされている(特開20002−332265、特開2001−332272)。タンパク質系材料又はタンパク質系廃棄物を200℃以上の飽和水蒸気圧下の水熱条件で温度・圧力を変化させて生成するアミノ酸組成を制御する方法が提案されている。
【0008】魚腸骨のモデル物質として、アジやカツオの魚肉を用いて実験が行われ、200℃以上の高温高圧水で処理し、アミノ酸(主としてシスチン、アラニン、グリシン、ロイシン)及び数種の有機酸(リン酸、乳酸)などが生成することが報告されている。その際に油状物質も生成し、その中にドコサヘキサンエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)など高付加価値の長鎖の不飽和脂肪酸が含まれていることも報告されている(特開H11−342379)。しかし、この方法では処理温度が高く、処理時間が長く、効率が悪いうえに、温度に不安定なアミノ酸の製造が困難である。これまでに、タンパク質を低温・高速で加水分解して、安定した成分組成のアミノ酸を製造する方法は開発されていない。
【0009】電子レンジは水などの極性物質を加熱する内部加熱法で、食品の急速加熱法として、一般家庭に広く普及している。電子レンジの利用法としては食品の暖め、調理、膨化、乾燥などである。
【0010】最近、マイクロ波による著しい化学反応促進効果が認められ、有機合成・分解反応、無機微粒子の合成などが従来の外部加熱による反応に比べ、反応条件の穏和化、反応速度の著しい高速化、反応選択性の向上などが報告されている。
【0011】高圧密閉容器中に生体材料や鉱物材料を入れ、強酸性下でマイクロ波照射して高温高圧の状態で加熱処理して、試料を分解して溶液化した後、窒素やTOC分析及びICP、原子吸光分析用の試料とする方法が確立されている。従来の分解法に比べ、分解速度が1〜2桁大きくなることが知られており、分析の前処理法として広く利用されている。
【0012】近年、高圧密閉容器を用いたマイクロ波水熱法で、金属、金属酸化物、硫化物、リン酸塩、複合酸化物等のナノ粒子が高速で得られることが報告されている。
【0013】
【課題を解決しようとする課題】マイクロ波水熱法を有機化合物、有機金属化合物に適用し、反応速度の著しい短縮、収率、純度及び選択性の著しい向上が報告されているが、簡便な連続反応装置が開発されていないこともあり、連続製造に関する報告はほとんど認められていない。
【0014】タンパク質を加水分解してアミノ酸を製造する従来法では、高濃度の塩酸を加え、長時間還流して分解する方法、または200℃以上の高温高圧水中で数時間加水分解するが、加水分解に長時間を要するため、不安定なアミノ酸が分解し、必要なアミノ酸を制御して回収することが困難である。このため、従来法に比べて、穏和な条件で迅速に加水分解し、有用なアミノ酸を効率的に製造できる技術の確立を目指すものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らはマイクロ波水熱法によるバイオマスの加水分解による有用成分の回収の研究を鋭意行った結果、マイクロ波水熱法によりタンパク質が通常の水熱法(200℃以上の飽和水蒸気圧下)に比べて、150〜200℃という低温・低圧条件において短時間に加水分解できること、また、温度制御してアミノ酸を分別回収できる可能性を見出した。
【0016】さらに、アルカリ性条件では100〜110℃の飽和水蒸気圧下で短時間に加水分解され、原料タンパク質のアミノ酸組成を反映したアミノ酸混合溶液が得られた。
【0017】従来の水熱分解法では、特開2002−332265にあるように、200℃以上で、且つ、飽和水蒸気圧以上の水で分解する必要があるが、マイクロ波照射すると150〜200の温度で分解できる。絹タンパク質の場合、150℃では主としてアスパラギン酸が、175℃では主としてセリン、グリシン、アラニンが、200℃ではグリシンとアラニンが回収でき、温度制御によりアミノ酸組成を制御できることを見出した。
【0018】アルカリが存在すると110℃以下という低温で加水分解でき、低温であるためさらなる分解が起こらず、ほぼ原料組成比で加水分解でき、グリシン、アラニン、セリンが効率よく回収できることを見出したものである。
【0019】
【発明の実施形態】本発明は高温高圧下での水熱分解にマイクロ波を用いることにより、水のみで200℃、16.5気圧以下の低温、低圧の条件で迅速に分別分解できること、アルカリを用いることにより、100〜110℃の低温で、迅速に完全加水分解できるものである。タンパク質源としては絹、羊毛などの他、魚介類、肉類及び植物性の大豆、糠など及びその廃棄物を用いることができる。
【0020】すなわち、水に所定量タンパク質を加えて、密閉容器に入れ、マイクロ波照射して150℃の所定温度で所定時間加熱処理する。冷却後、未分解のタンパク質を回収した後、再度、密閉容器に水にとともに入れ、マイクロ波照射下175℃で所定時間処理する。同様の手順で200℃において分解処理する。絹タンパク質の場合、150℃でアスパラギン酸を、175℃以上でセリン、グリシン、アラニンを、200℃でアラニンとグリシンを主成分とするアミノ酸を回収することができる。
【0021】また、タンパク質と所定濃度のアルカリ水溶液を密閉容器に入れ、100〜110℃の所定温度・所定時間マイクロ波水熱処理を行う。加水分解反応は目標温度(110℃)に達した時点においてほぼ終了し、原料のアミノ酸組成比に対応した組成のアミノ酸水溶液を得た。絹フィブロインではグリシン、アラニン、セリンの混合水溶液が得られた。この水溶液を酸で中和した後、透析法あるいは希釈法でアミノ酸混合溶液を得るものである。
【0022】また、本発明のマイクロ波水熱法では、タンパク質を粉砕したスラリー状とすることにより、マイクロ波オーブン中に設置したチューブラー反応管にスラリーポンプで送液し、連続的に反応させることができる。
【0023】
【作用】魚介類の廃棄物は腐りやすく、廃棄物処理が嫌われる傾向にある。これらのタンパク源を加水分解して、有用なアミノ酸を製造するものである。従来の水熱分解法では超臨界あるいは亜臨界水における分解が主体である。従来の水熱分解法の分解条件は200℃、20気圧以上が必要である。本発明のマイクロ波水熱法で処理すると、水のみでは150〜200℃、アルカリ水溶液を用いると100〜110℃の条件で数分以内の短時間に完全加水分解できることを見出したものである。マイクロ波照射することにより、反応条件が著しく緩和できること、反応速度が著しく大きくなること、熱に不安定なアミノ酸を分解させることなく、回収できることなどの特徴を有している。
【0024】絹フィブロインをマイクロ波水熱法で分解すると、水のみで加水分解するとアスパラギン酸、セリン、アラニン、グリシンなどを分別回収でき、水のみを使用しているため、不要成分のないアミノ酸混合溶液が回収でき、調味料、健康食品あるいは飲料に用いることが可能である。また、水酸化アルカリを用いると100℃以上の飽和水蒸気圧下で完全加水分解でき、原料のアミノ酸組成比に対応したアミノ酸組成水溶液が回収できる。この場合、アルカリを酸で中和した後、透析で塩を除去するかあるいは希釈して使用することができる。
【0025】
【実施例】本発明の実施例及び比較例を以下に示すが、これらは特許請求範囲を限定するものではない。
【0026】
【実施例1】シルクフィブロイン(岐阜バイオ産業研究所提供)20mgと脱イオン水10mlを樹脂製耐熱容器に入れ、高圧マイクロ波反応装置(マイルストーン製:ウルトラクレイブ)に設置し、アルゴンガスで3MPa程度に加圧した後、マイクロ波(2.45GHz)を所定時間照射して加水分解した。得られた水溶液中のアミノ酸濃度を分析した結果を表1及び図1に示す。マイクロ波水熱分解法では150℃では主としてアスパラギン酸が生成し、175℃では反応時間が短い場合(30分)はアスパラギン酸が生成し、反応時間が長くなるとセリン、グリシン、アラニンが生成し、アスパラギン酸は濃度が減少した。200℃ではグリシンとアラニンが主生成物であった。
【0027】
【表1】


【0028】
【比較例1】実施例と同様にシルクフィブロイン(岐阜バイオ産業研究所提供)20mgと脱イオン水10mlをステンレス容器のオートクレイブに入れ、電気的に加熱し、所定温度に達してから所定時間保持した後、加熱を止め、冷却して水溶液を取り出し、アミノ酸組成を分析した。結果を表1及び図1に示す。本法では200℃以下ではほとんど分解せず、200℃でも1時間加熱処理しても生成アミノ酸量が著しく小さく、マイクロ波水熱法の1/50以下であった。
【0029】
【実施例2】シルクフィブロイン20mgと所定濃度のアルカリ水溶液20mlを樹脂製耐熱容器に入れ、高圧マイクロ波反応装置に装填して所定温度、所定時間マイクロ波照射した。アルカリ濃度は1規定と6規定、反応温度は110と200℃、所定温度での保持時間を0,30,60分として実験を行い、得られた水溶液中のアミノ酸組成を分析した。アルカリ濃度と反応温度を変えて実験した結果を図2に、110℃で反応時間を変えて実験して結果を図3に示す。図2の結果から水酸化ナトリウムの濃度が1規定と6規定ではほとんど差がなく、また、処理温度も110℃と200℃では差がないことから、1規定、110℃でよいことが分かった。また、図3の結果から、反応温度が110℃においては、保持時間に関係なく、いずれも完全に加水分解しており、溶液温度が110℃に達すると同時に完全にアミノ酸分解することが分かった。
【0030】
【比較例2】実施例2と同様に、シルクフィブロイン20mgと所定濃度の塩酸水溶液20mlを樹脂製耐熱容器に入れ、所定温度、所定時間マイクロ波照射した。反応温度、酸濃度、反応時間を変えて実験を行った結果を図2、図3に示す。
塩酸を用いた場合は、アルカリに比べ反応性が劣り、1規定では分解率が著しく低かった。水だけでは110℃では分解しなかった。
【0031】
【実施例3】カキの廃棄物を250mgと6規定の水酸化ナトリウム水溶液50mlを樹脂製耐熱容器にとり、110℃で30分間マイクロ波照射した。得られた水溶液のアミノ酸組成を測定した結果、表2に示すようにフェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、リジンなどのアミノ酸が得られた。
【0032】
【表2】


【0033】
【発明の効果】以上詳述したように、マイクロ波水熱法ではタンパク質が迅速にアミノ酸に加水分解でき、水のみの場合は150〜200℃で、処理温度を変えることにより、アミノ酸を分別回収することができることが分かった。水のみを用いるため、安全であり、且つ、塩分等を分離精製する必要がなく、食品等にそのまま利用することができる。
【0034】アルカリの存在下でマイクロ波水熱処理すると、110℃以下の温度で短時間に加水分解すること、すなわち、マイクロ波照射して110℃に達すると同時にほぼ完全に加水分解していることが分かった。1規定の水酸化ナトリウムの存在下、100〜110℃でほぼ完全に加水分解することを認めた。使用するタンパク質量を増やすことにより高濃度のアミノ酸を回収することができ、中和のみで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高温高圧水による絹フィブロインの加水分解によるアミノ酸生成についてマイクロ波水熱法と通常の水熱法の比較
【図2】マイクロ波水熱法によるアミノ酸の生成についてアルカリ濃度と反応温度の影響及び酸添加との比較
【図3】マイクロ波水熱法によるアミノ酸の生成に対する反応時間の影響
【出願人】 【識別番号】599073917
【氏名又は名称】財団法人かがわ産業支援財団
【出願日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−345998(P2004−345998A)
【公開日】 平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願番号】 特願2003−143962(P2003−143962)