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【発明の名称】 カルボン酸エステルの製造方法
【発明者】 【氏名】横田 耕史郎
【住所又は居所】岡山県倉敷市潮通3丁目13番1 旭化成株式会社内

【氏名】山口 辰男
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区夜光1丁目3番1号 旭化成株式会社内

【氏名】渡部 徹
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区夜光1丁目3番1号 旭化成株式会社内

【要約】 【課題】本発明は、酸素の存在下でアルコール同士またはアルデヒドとアルコールを反応させてカルボン酸エステルを製造する方法に関し、高いアルデヒドまたはアルコール転化率と高いカルボン酸エステル選択性を実現する製造方法を提供する。

【解決手段】酸素の存在下でアルコール同士あるいはアルデヒドとアルコールを、固体触媒と反応させてカルボン酸エステルを製造するに際して、該固体触媒の粉体状態での帯電量が、明細書記載の方法により測定される絶対値として1kV以下であるものを使用することを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素の存在下でアルコール同士あるいはアルデヒドとアルコールを、固体触媒と反応させてカルボン酸エステルを製造するに際して、該固体触媒の粉体状態での帯電量Aが、絶対値として1kV以下であるものを使用することを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
該固体触媒がパラジウム、ルテニウム、金から選ばれるすくなくとも一つを含む固体触媒であることを特徴とする請求項1記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項3】
アルコールがメタノールおよび/またはエタノールで、アルデヒドがアクロレイン又はメタクロレインである請求項1および2記載のカルボン酸エステル製造用固体触媒および製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素の存在下でアルコール同士またはアルデヒドとアルコールを反応させてカルボン酸エステルを製造する方法に関し、高いアルデヒドまたはアルコール転化率と高いカルボン酸エステル選択性を実現する製造方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
アルコール2分子と酸素からパラジウム/活性炭触媒を用いてカルボン酸エステルを合成する反応は、古くは1968年 東京大学 功刀教授らの研究を嚆矢とする(非特許文献1)。この研究に先立つこと、1960年代、ロシアのMoiseevらは塩化パラジウム触媒を用いたエタノールの脱水素反応によるアセトアルデヒドの合成を、イギリス ICI社らのグループは、塩化パラジウム−塩化銅触媒を用いたアルデヒド、アルコール、酸素からのエステル合成反応をそれぞれ研究していた。功刀教授らのグループは、アルコール同士の反応、さらには、アルデヒドとアルコールの反応へと展開し、学問的興味の対象にとどまっていた該反応系の工業的有用性を飛躍的に高めた。
【0003】
一方で、工業的に有用なメタクリル酸メチル又はアクリル酸メチルを製造する方法として、メタクロレイン又はアクロレインをメタノールと反応させて直接、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチルを製造する酸化エステル化法が提案されている。この製法ではメタクロレイン又はアクロレインをメタノール中で分子状酸素と反応させることによって行われ、パラジウムと鉛、ビスマス、タリウム、水銀を含む触媒を用いた例が知られている(特許文献1〜4)。また、パラジウムとこれら金属との金属間化合物を触媒とする例が開示されている(特許文献5)。また、パラジウムとビスマスを用いた触媒が開示されていたり(たとえば特許文献6)、ルテニウムと鉛を用いた触媒が知られている(特許文献7)。また、金を用いた触媒も開示されている(特許文献8、9)。
【0004】
これらの開示例に示される触媒は全て、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナなどの担体に担持された固体触媒であり、反応は、これらの固体触媒をアルコールとアルデヒドの溶液中に分散させて(以下、場合により触媒スラリーと略記する)酸素を含むガスを吹き込んで行われるのが一般的であり、本件発明者らも気泡塔反応器を用いてメタクロレインとメタノールと固体触媒のスラリーに酸素を含むガスを吹き込んでメタクリル酸メチルを製造する実験を長期にわたり連続的に行っていた。ところが、同じ調製方法で製造した固体触媒を用いたにも関わらず、高いアルデヒドまたはアルコール転化率と高いカルボン酸エステル選択性を発揮する場合と発揮しない場合があり、固体触媒調製方法の再現性が取れず、工業化への大きな問題となっていた。
【0005】
そこで本件発明者らが、触媒性能の優れた固体触媒とそうでない固体触媒を比較検討したところ、触媒性能の優れた固体触媒では、帯電量が少ないことがわかった。しかしながら、帯電量が少なければ良いとはいえ、本件発明に用いる固体触媒は金属触媒であり、多かれ少なかれ静電気を帯びてしまう危険性は免れないため、どの程度まで帯電が許されるかを規定することが、本件反応を再現性良く実施するために、必ず解決しなければならない問題であった。
【0006】
【非特許文献1】
刀功 工業化学雑誌 (1968)、71、p.1517
【特許文献1】
特公昭57−35856号公報
【特許文献2】
特公昭57−35857号公報
【特許文献3】
特公昭57−35858号公報
【特許文献4】
特公昭57−35859号公報
【特許文献5】
特公昭62−7902号公報
【特許文献6】
特開平9−216850号公報
【特許文献7】
特開2001−220367号公報
【特許文献8】
特開2000−156164号公報
【特許文献9】
特開2002−361086号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、酸素の存在下でアルコール同士またはアルデヒドとアルコールを反応させてカルボン酸エステルを製造する方法に関し、高いアルデヒドまたはアルコール転化率と高いカルボン酸エステル選択性を実現する製造方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本件発明者らが鋭意検討した結果、同じ調製方法で製造した固体触媒でも、以下明細書中で定義する帯電量の違いが、触媒性能に大きく影響することがわかり本件発明の端緒を得た。
固体触媒の粉体としての帯電量が触媒性能へどのようなメカニズムで影響を与えるかは定かではない。固体触媒の帯電量は、固体触媒表面の親水性と疎水性に大きく関係すると考えられている。例えば、特開平11−43456号公報に示されるように、オレフィン類の水和反応では、本件反応系と同じように、反応基質中に固体触媒粒子を懸濁させて、その中にガスを吹き込みながら反応させるわけであるが、帯電量の小さな固体触媒、すなわち表面が親水性の固体触媒が好ましいとされている。この反応系では、反応基質が水であるため、帯電量が小さく、表面が親水性の固体触媒が好ましいとされている。
【0009】
しかしながら、本件反応系は、特開平5−148184号公報にも示されているように、水が反応を阻害する効果を持つため、表面が疎水性の固体触媒、すなわち、特開平11−43456号公報の解釈に従うならば、帯電量が大きい固体触媒が好ましい反応のはずであった。それにもかかわらず、帯電量が小さい方が優れた触媒性能を発揮するという、これまでの当該反応系や類似の反応系で知られている公知の事実とは全く逆の傾向を示した訳であり、本件発明者らも予想だにできなかった事実を見出すに至り本件発明を完成させた。
【0010】
すなわち本件発明は、
1. 酸素の存在下でアルコール同士あるいはアルデヒドとアルコールを、固体触媒と反応させてカルボン酸エステルを製造するに際して、該固体触媒の粉体状態での帯電量Aが、明細書記載の方法により測定される絶対値として1kV以下であるものを使用することを特徴とするカルボン酸エステルの製造方法に係る。
2. 該固体触媒がパラジウム、ルテニウム、金から選ばれるすくなくとも一つを含む固体触媒であることを特徴とする上記1.記載のカルボン酸エステルの製造方法に係る。
3. アルコールがメタノールおよび/またはエタノールで、アルデヒドがアクロレイン又はメタクロレインである上記1.および2.記載のカルボン酸エステル製造の製造方法に係る。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本件発明について詳細に説明する。
本発明において使用するアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキサールなどの脂肪族飽和アルデヒド;アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒドなどの脂肪族不飽和アルデヒド;ベンズアルデヒド、トリルアルデヒド、ベンジルアルデヒド、フタルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド; 並びにこれらアルデヒドの誘導体などがあげられる。これらのアルデヒドは単独もしくは任意の二種以上の混合物として用いることができる。特に、アクロレインとメタクロレインは好ましく用いられる。
【0012】
本発明において使用するアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノールなどの脂肪族飽和アルコール;エチレングリコール、ブタンジオールなどのジオール;アリルアルコール、メタリルアルコールなどの脂肪族不飽和ア ルコール;ベンジルアルコールなどの芳香族アルコールなどがあげられる。特にメチルアルコール、エチルアルコールなどの低級アルコールが、反応が速やかで好ましい。これらのアルコールは単独もしくは任意の二種以上の混合物として用いることができる。
【0013】
本発明反応におけるアルデヒドとアルコールとの使用量比には特に限定はなく例えばアルデヒド/アルコールのモル比で10〜1/1000のような広い範囲で実施できるが、一般にはアルデヒドの量が少ない方が好ましく、1/2〜1/50の範囲にするのが好ましい。
本発明で使用する酸素は分子状酸素、すなわち酸素ガス自体又は酸素ガスを反応に不活性な希釈剤、例えば窒素、炭酸ガスなどで希釈した混合ガスの形とすることができ、空気を用いることもできる。反応系に存在させる酸素の量は、反応に必要な化学量論量以上、すなわち、アルデヒド/アルコールのモル比が1/2から1/50の好ましい条件では、アルデヒドに対して1/2モル以上の酸素。好ましくは化学量論量の1.2倍以上の酸素があれば充分である。
【0014】
反応の全圧は減圧から加圧下の任意の広い圧力範囲で実施することができるが、通常は1〜20kg/cmの圧力で実施される。反応系に供給する酸素の分圧は、反応器出口側の酸素分圧が0.8kg/cm以下となるように管理するのが好ましく、より好ましくは0.4kg/cm以下である。一方、反応器流出ガスの酸素濃度が爆発範囲(8%)を越えないように全圧を設定するとよい。本発明反応は、気相反応、液相反応、潅液反応などの任意の従来公知の方法で実施できる。例えば液相で実施する際には気泡塔反応器、ドラフトチューブ型反応器、撹拌槽反応器などの任意の反応器形式によることができる。反応器形式も固定床式、流動床式、撹拌槽式など、従来公知の任意の形式によることができる。
【0015】
反応は、無溶媒でも実施できるが、反応成分に対して不活性な溶媒、例えば、ヘキサン、デカン、ベンゼン、ジオキサンなどを用いて実施することができる。本発明に用いる固体触媒はパラジウム、ルテニウム、金から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましく、X(Xは鉛、ビスマス、水銀、タリウムから選ばれる少なくとも1種類以上の金属)を含んでいても良い。パラジウム、ルテニウム、金とXが合金、金属間化合物を形成しても良い。
【0016】
また、本発明に用いる固体触媒は、異種元素としてFe、Te、Ni、Cr、Co、Cd、In、Ta、Cu、Zn、Zr、Hf、W、Mn、As、Ag、Re、Sb、Sn、Rh、Ir、Pt、Ti、Al、B、Si、Ge、Se、Ta等を含んでもよく、これらの異種元素はカルボン酸エステルの選択性を上げるなどの好ましい効果を期待できる。これらの異種元素は通常、該触媒全重量に対して、5重量%、好ましくは1重量%を超えない範囲で含むことができる。以下、本件発明において、重量%は、該触媒全重量を100重量%としたときの値を示す。
【0017】
さらにはアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物から選ばれる少なくとも一員を含むものは反応活性が高くなるなどの利点がある。アルカリ金属、アルカリ土類金属は通常0.01〜30重量%、好ましくは0.01〜5重量%の範囲から選ばれる。
これらの異種元素、アルカリ金属、アルカリ土類金属化合物などは結晶格子間に少量、侵入したり、結晶格子金属の一部と置換したりしていてもよい。また、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属化合物は、固体触媒調製時にパラジウム化合物、ルテニウム化合物、金化合物あるいはXの化合物を含む溶液に加えておき担体に吸着あるいは付着させてもよいし、あらかじめこれらを担持した担体を利用して固体触媒を調製することもできる。また、反応条件下に反応系に添加することも可能である。
【0018】
これらの固体触媒構成要素は、担体などに担持されずに金属微粒子の形態で単独に反応系中に存在してもよいし、あるいはシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタン、炭酸塩、水酸化物、活性炭、ジルコニアなどの担体に担持されたものもよい。
本発明におけるパラジウム、ルテニウム、金担持触媒の担持量は、特に限定はないが、通常0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%であり、アルカリ金属化合物もしくはアルカリ土類金属化合物を使用する場合、担持量は、通常、0.01〜30重量%、好ましくは0.01〜15重量%である。
【0019】
本発明の固体触媒は公知の調製方法で準備することができる。代表的な固体触媒調製方法について説明すれば、たとえば、可溶性の鉛化合物および塩化パラジウムなどの可溶性のパラジウム塩を含む水溶液に担体を加えて加温含浸させ、パラジウム、鉛を含浸する。ついでホルマリン、ギ酸、ヒドラジンあるいは水素ガスなどで還元する。この例で示すならば、パラジウムを担持する前に鉛を担持してもよいし、パラジウムと鉛を同時に担持してもよい。
【0020】
固体触媒調製のために用いられるパラジウム化合物、ルテニウム化合物、金化合物は、例えば蟻酸塩、酢酸塩などの有機酸塩、硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩のごとき無機酸塩、アンミン錯体、ベンゾニトリル錯体、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体などの有機金属錯体、酸化物、水酸化物などのなかから適宜選ばれるが、パラジウム化合物としては塩化パラジウム、酢酸パラジウムなどが、ルテニウム化合物としては塩化ルテニウムなどが、金化合物としては塩化金酸が好ましい。
【0021】
Xの化合物としては硝酸塩、酢酸塩などの無機塩、ホスフィン錯体など有機金属錯体を用いることができ、硝酸塩、酢酸塩などが好適である。
またアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物についても有機酸塩、無機酸塩、水酸化物などから選ばれる。
固体触媒の使用量は、反応原料の種類、固体触媒の組成や調製法、反応条件、反応形式などによって大巾に変更することができ、特に限定はないが、固体触媒をスラリー状態で反応させる場合には反応液1リットル中に0.04〜0.5kg使用するのが好ましい。
【0022】
本発明の反応は、反応系にアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物(例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩など)を添加して反応系のpHを6〜9に保持することが好ましい。特にpHを6以上にすることで固体触媒中のX成分の溶解を防ぐ効果がある。これらのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物は単独もしくは二種以上組み合わせて使用することができる。
本発明反応は、100℃以上の高温でも実施できるが、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは60〜90℃である。
【0023】
反応時間は特に限定されるものではなく、設定した条件により異なるので一義的には決められないが 通常1〜20時間である。
本件発明においては、該固体触媒を、粉体状態において、下記に示す所定の方法により測定したときの帯電量Aの絶対値を1kV以下とすることが必須である。帯電量Aの上限は1kVであり、好ましくは0.1kV以下である。帯電量Aの絶対値が1kVを超えてしまう場合には、優れた触媒性能が発揮されず好ましくない。
【0024】
特に、パラジウムを担持した固体触媒の場合、パラジウムが常磁性を示すため、帯電しやすく、何重もの危険予知と事前対策を施すことが好ましい。
乾燥した冬場などに、人体が静電気を帯びる現象がよく知られているが、この場合の限界帯電電圧は約1.4kVといわれており(高圧ガス保安協会編 高圧ガス保安技術 平成元年改訂版 362頁)、本件発明の帯電量Aの上限は、うっかり注意を怠ると、固体触媒を容易に好ましくない状態にしてしまう。下記にも示すが、操業担当者の衣類の帯電防止、安全靴による大地への除放電、および操業プラントの接地やボンディングなどが重要である。
【0025】
固体触媒の帯電量Aと触媒性能の間に如何なる関係があるのかは、本件発明者らも未だ定かではないし、従来技術の項でも説明したように、当該技術領域の公知事実とも異なる結果を得ている。すなわち、粉体状態の固体触媒の帯電量は、固体触媒の表面が疎水性である場合には、大きな帯電量を示し、親水性であれば小さな帯電量を示す。固体触媒表面が疎水性になるのは、外表面の親水基が失われるためであり、本件反応に好ましい疎水性固体触媒の場合は、帯電量が大きくなるはずであるが、本件反応における好ましい様態は帯電量の小さな固体触媒である。したがい、本件発明を水の効果から説明することには無理がある。本件発明では、むしろ、固体触媒表面が親水性であっても、反応基質と生成物の吸脱着のバランスが本件反応にとって、より好適な状況になって、親水性表面に集まるであろう水の阻害効果を補って余りある優れた反応促進効果を発揮しているものと推定している。
【0026】
固体触媒の状態は、固体触媒が粉体の状態であればよく、特に限定されるものではない。実質的に反応液等の液体を含有していない状態で、原料アルコールなどによってスラリー化していない状態と定義される。たとえば、反応器に供給するスラリーにする前の固体触媒、固体触媒製造および再生工程における乾燥操作後の固体触媒等を例示できる。
本発明で規定している帯電量Aは、以下に示される測定法により測定したものであり、他にも種々測定方法が一般に知られている。具体的には、集電式、回転チョッパー式、振動板式等の原理を用いた方式で、非接触の状態で測定できるものを用いることができる。具体的な測定方法は用いる測定器により指定された方法を用いる。
本件発明者らが調べた範囲では、固体触媒粉体が帯びている電荷の量や電位を測定する方法を規定した標準規格はなく、個々の測定装置の指定された方法で測定して結果を比較することとなる。
【0027】
本件発明では、春日電機株式会社製 デジタル式静電気測定器 KSD−0108を用いて、湿度50%の大気中で、接地されていないステンレス製の皿中に、測定する該固体触媒を厚さ2cmとなるように均等に敷き詰め、本体検出部の電位測定器によって、正しく電位が測定されるように、測定器によって決められている測定距離50mmを、測定する固体触媒と電位検出部の間に保ち、かつプローブの先端の面が測定する固体触媒の面に平行になるようにして、測定開始後5秒後の電位測定器の指示値を読み取り、帯電量を測定する。検出部の測定面に対する固体触媒の面は充分広くなるように取る必要がある。ただし、上記の測定条件を整えて測定できる状態とするのを30秒以内とし、30秒後の時点に測定を行う。なお、接地用カールコードは必ず接地しなければならない。また、湿度50%で結露しない条件が必要である。
【0028】
本件発明において、固体触媒の帯電量Aを1kV以下にする方法としては、通常、帯電していない状態の固体触媒を原料として用い、帯電していない、または帯電しにくい装置のなかで取り扱うことが挙げられる。
すでに帯電してしまった固体触媒粒子から電荷を除去する方法も有効である。電荷を除去する方法としては、装置の接地、ボンディングの実施、導電体上での静置時間の設定、湿度の付与等が挙げられる。
固体触媒粒子への帯電を抑制する方法も本件発明では重要であり、固体触媒粒子の取扱移送時の流速制限、固体触媒粒子同士の接触や衝突の抑制などを例示することができる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明の実施の形態を具体的に説明する。
担体として富士シリシア社製のシリカゲル (キャリアクト10(登録商標)平均粒子径 50μm)にパラジウム5重量%、鉛5重量%、マグネシウム4重量%を担持した固体触媒3750gを、液相部が3リットルのステンレス製外部循環型気泡塔反応器に仕込み、34重量%のメタクロレイン/メタノールを1.35リットル/h、NaOH/メタノールを0.15リットル/hで供給し、温度80℃、圧力5.0kg/cmで空気を供給しながら反応を行った。
【0030】
反応液のpHが7.1となるようにNaOH濃度調製し、また、供給原料液中の鉛濃度が20ppmとなるように酢酸鉛をメタクロレイン/メタノールに溶かして連続的に供給した。
一方、反応器出口酸素濃度は、4%(酸素分圧0.20kg/cm)となるように空気量を調整しながら反応器に空気を供給した。
不飽和アルデヒド転化率、不飽和カルボン酸エステル選択率は以下のように評価した。
反応液ならびに反応器出口ガスの分析は、通常のガスクロマトグラム法にて、島津製作所製GC−8A型機に化学品検査協会製G−100カラム(ほぼ沸点順に溶出する)を装着し、恒温槽をプログラム昇温させて、水素炎検出器(FID)を用いて行った。
【0031】
【実施例1】
上記固体触媒を湿度50%の空気中に5時間放置したのち、上記反応に供した。明細書中で説明したデジタル式静電気測定器、KSD−0108型(春日電気株式会社製)による帯電量Aはゼロであった。
反応開始後、6時間後の反応成績は、メタクロレイン転化率61%、メタクリル酸メチル選択率90%の反応成績を得た。
【0032】
【比較例1】
上記固体触媒を、真空乾燥機にて60℃、一晩乾燥させたのち、特に消磁操作、接地操作をすることなく反応に供した。固体触媒粒子の帯電量Aを実施例1と同く測定したところ、−1.3kVであった。
反応開始後、6時間後の反応成績は、メタクロレイン転化率41%、メタクリル酸メチル選択率70%の反応成績を得た。
【0033】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、酸素の存在下でアルコール同士またはアルデヒドとアルコールを反応させてカルボン酸エステルを製造する方法に関し、高いアルデヒドまたはアルコール転化率と高いカルボン酸エステル選択性を実現でき、その有用性は高い。
【出願人】 【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区有楽町一丁目1番2号
【出願日】 平成15年5月20日(2003.5.20)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−345972(P2004−345972A)
【公開日】 平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願番号】 特願2003−142097(P2003−142097)