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【発明の名称】 ビニル安息香酸の製造方法
【発明者】 【氏名】曽我 真一

【氏名】久保 雅滋

【要約】 【課題】ビニル安息香酸の製造方法としては、p−クロロスチレンをテトラヒドロフラン中にてグリニャール化した後、炭酸ガスによりカルボニル化する製造方法が知られているが、該方法は、グリニャール化工程において重合物の生成を避けることができず重合物が製品中に混入するため精製を繰り返す必要があり、工業的な製法ではなかった。

【解決手段】ハロスチレンから調製したグリニャール試薬を炭酸ガスと反応させビニル安息香酸を製造する方法において、反応溶媒として、芳香族炭化水素とテトラヒドロフランとの混合溶媒を使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロスチレンから調製したグリニャール試薬を炭酸ガスと反応させビニル安息香酸を製造する方法において、反応溶媒として、芳香族炭化水素とテトラヒドロフランとの混合溶媒を使用することを特徴とするビニル安息香酸の製造方法。
【請求項2】
芳香族炭化水素として、炭素数6〜10の芳香族炭化水素を用いることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ハロスチレンから調製したグリニャール試薬と炭酸ガスを同時に反応系内へ供給することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性樹脂原料、その他機能性高分子等の原料として有用なビニル安息香酸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ビニル安息香酸の製造方法としては、
(1)4−(2’−ハロエチル)安息香酸を塩基の存在下、脱ハロゲン化水素して製造する方法(例えば、特許文献1参照)、
(2)4−ホルミル−安息香酸エステルをケテンによりビニル化し、4−ビニル安息香酸エステルとした後、加水分解して製造する方法(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【0003】
しかしながら、(1)の方法は原料合成が煩雑な上、反応温度が高いことから重合物が生成し、生成物中に混入するため、精製にかなりの労力を必要とする等、工業的な製造方法として満足できるものではない。また、(2)の方法も、高価な原料を使用し、取り扱いの難しいケテンを用いる等、決して工業的に満足できる製法とは言い難い。
【0004】
一方、安価な原料を使用する工業的な製法として、
(3)p−クロロスチレンをテトラヒドロフラン中にてグリニャール化した後、炭酸ガスによりカルボニル化して製造する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、(3)の方法ではグリニャール化工程において重合物の生成を避けることができず、該重合物が製品中に混入するため、精製を繰り返す必要があり、やはり工業的な製法とは言い難い。
【0006】
このようにビニル安息香酸の製造方法については、これまで種々の方法が提案されているが、いずれも工業的に満足できる製造方法とは言えないのが実情である。
【0007】
【特許文献1】
特開昭63−145253号公報
【特許文献2】
国際公開第2000−035850号パンフレット
【特許文献3】
特開昭54−160365号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の方法では満足できなかったビニル安息香酸の製造方法を提供することにある。すなわち、従来法の問題点を解決し、高い収率でかつ効率良くビニル安息香酸を得る経済性に優れた製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、ハロスチレンから調製したグリニャール試薬を炭酸ガスと反応させ、ビニル安息香酸を製造する方法において、反応溶媒として芳香族炭化水素とテトラヒドロフランとの混合溶媒を使用することにより、高い収率でかつ効率良くビニル安息香酸が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ハロスチレンから調整したグリニャール試薬を炭酸ガスと反応させ、ビニル安息香酸を製造する方法において、反応溶媒として芳香族炭化水素とテトラヒドロフランとの混合溶媒を使用することを特徴とするビニル安息香酸の製造方法である。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の方法において使用されるグリニャ−ル試薬は、ハロスチレン類から調製したグリニャ−ル試薬であれば特に限定するものではなく、常法により容易に調製できる。例えば、溶媒中で金属マグネシウムとハロスチレンとを反応させる方法等を実施することにより、本発明のグリニャール試薬は容易に調製できる。本調製反応では、活性化した金属マグネシウムを用いた場合、特に良好な結果が得られる。
【0013】
金属マグネシウムの活性化法としては、溶媒に懸濁させた金属マグネシウムを加熱攪拌する方法や、これに微量のヨウ素、ヨウ化メチルのようなヨウ化物、ジブロモエタンのような臭化物等を添加して攪拌する方法が有効である。
【0014】
本発明の方法において使用される、具体的なハロスチレンを例示すると、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、3−ブロモスチレン、4−ブロモスチレン、2−ヨードスチレン、3−ヨードスチレン、4−ヨードスチレン等が挙げられ、任意の位置にアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、フッ素、トリフルオロメチル基等のグリニャール試薬に不活性な置換基を有していてもよい。また、置換基の数については1個でも複数個でもよい。
【0015】
本発明の方法において用いられる溶媒としては、グリニャール試薬調製時における重合を抑制するために、テトラヒドロフランと芳香族炭化水素の混合溶媒が用いられる。
【0016】
芳香族炭化水素としては、特に限定するものではないが、炭素数が6〜10の芳香族炭化水素が好ましい。具体的には、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン等が挙げられ、これらのうち、経済性及び入手の容易さからトルエンの使用が好ましい。また、これらの芳香族炭化水素は単独で用いてもよいし2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0017】
本発明の方法において、テトラヒドロフランと芳香族炭化水素の混合比率としては特に限定するものではないが、通常、テトラヒドロフラン1重量部に対し芳香族炭化水素0.1〜10重量部の混合比が選ばれる。0.1重量部以下であると重合抑制効果が十分ではなく、また10重量部以上であると溶媒の極性が大きく低下し、グリニャール試薬の転化率が低下する要因となる。
【0018】
本発明の方法において、混合溶媒の使用量は、グリニャール試薬の溶解性、反応性、経済性を考慮し、グリニャール試薬1モルに対し通常200g〜2000gの範囲が選ばれる。
【0019】
本発明の方法では、上記の方法で調製したグリニャール試薬と炭酸ガスを反応させることにより、重合物の生成を抑制しつつ、ビニル安息香酸を収率よく経済的に製造することが可能となる。
【0020】
本発明の方法において用いられる炭酸ガスとしては、市販品として購入可能なボンベ、又はドライアイスより発生させることで反応に用いることができる。また添加量は、通常グリニャール試薬に対して等モル以上を吹き込めばよい。
【0021】
本発明のグリニャール試薬と炭酸ガスの反応方法は、通常、予め少量の溶媒を張り込んだ中に炭酸ガスとグリニャール試薬を同時に添加する方法が選ばれる。グリニャール試薬中に炭酸ガスの吹込みを行うと、生成した安息香酸とグリニャール試薬が更に反応し、ケトン構造を持った副生成物の生成が顕著となり収率の低下を招く結果となる。
【0022】
本発明の方法における反応温度に格別の限定はないが、0℃〜溶媒の還流温度の範囲で実施される。
【0023】
反応終了後は、常法に従い反応液に酸性水溶液を加えて処理した後、有機層を分離する。続いて、有機層を水洗処理した後、第三級−ブチルカテコ−ル等の重合禁止剤を添加して、ヘキサン等の貧溶媒を添加し晶析することにより、目的とするビニル安息香酸を得る。
【0024】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明の方法によれば、従来の問題点を解決して、ビニル安息香酸を高い収率でかつ効率良く経済的に得ることが可能となる。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明の方法を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
実施例1
窒素雰囲気で置換した100mlフラスコに、テトラヒドロフラン−トルエン混合溶媒40g(重量比1:1)、金属マグネシウム2.33g(96mmol)、ヨウ素1片を仕込み、室温条件下で攪拌した。ヨウ素の色が消えるのを確認した後、反応液を40〜50℃に保ちながら、p−クロロスチレン11.09g(80mmol)を約1時間かけて滴下した。更に、40〜50℃で1時間攪拌し、グリニャ−ル試薬を得た。
【0027】
窒素雰囲気で置換した100mlフラスコに予め上記混合溶媒4gを仕込み、上記の操作によって得られたグリニャ−ル試薬の上澄液と炭酸ガス3.87g(88mmol)を同時に、この反応液の温度を0℃〜10℃に保ちながら1時間かけて添加し、更に同温度で10分間攪拌を行った。
【0028】
反応終了後、反応液に10%塩酸水溶液を加えて生成した塩を溶解した。有機層を分取した後、これをガスクロマトグラフィ−及びGPCで分析し、p−ビニル安息香酸の収率、副生成物及び重合物生成量を求めた。反応結果を表1に示す。
【0029】
【表1】


【0030】
実施例2〜実施例4
実施例1において使用した混合溶媒の重量比を表1に示した比率に代えた以外は、実施例1の方法に準じて反応を行った。反応結果を表1にあわせて示す。
【0031】
実施例5
実施例1において使用した混合溶媒のテトラヒドロフラン−トルエンに代えて、テトラヒドロフラン−ベンゼンを使用した以外は、実施例1の方法に準じて反応を行った。反応結果を表1にあわせて示す。
【0032】
比較例1
実施例1において使用した混合溶媒のテトラヒドロフラン−トルエンに代えて、テトラヒドロフラン単独溶媒を使用した以外は、実施例1の方法に準じて反応を行った。反応結果を表1にあわせて示す。
【0033】
実施例6
窒素雰囲気で置換した100mlフラスコに、テトラヒドロフラン−トルエン混合溶媒40g(重量比1:1)、金属マグネシウム2.33g(96mmol)、ヨウ素1片を仕込み、室温条件下で攪拌した。ヨウ素の色が消えるのを確認した後、反応液を40〜50℃に保ちながら、o−クロロスチレン11.09g(80mmol)を約1時間かけて滴下した。更に、40〜50℃で1時間攪拌し、グリニャ−ル試薬を得た。
【0034】
窒素雰囲気で置換した100mlフラスコに予め上記混合溶媒4gを仕込み、上記の操作によって得られたグリニャ−ル試薬の上澄液と炭酸ガス3.87g(88mmol)を同時に、この反応液の温度を0℃〜10℃に保ちながら1時間かけて添加し、更に同温度で10分間攪拌を行った。
【0035】
反応終了後、反応液に10%塩酸水溶液を加えて生成した塩を溶解した。有機層を分取した後、これをガスクロマトグラフィ−及びGPCで分析した結果、o−ビニル安息香酸が84.7%、2、2’−ジビニルベンゾフェノンが2.5%の収率で生成していた。また、この時の重合物生成量は、1.5%であった。
【0036】
実施例7
窒素雰囲気で置換した100mlフラスコに、テトラヒドロフラン−トルエン混合溶媒40g(重量比1:1)、金属マグネシウム2.33g(96mmol)、ヨウ素1片を仕込み、室温条件下で攪拌した。ヨウ素の色が消えるのを確認した後、反応液を40〜50℃に保ちながら、p−ブロモスチレン14.64g(80mmol)を約1時間かけて滴下した。更に、40〜50℃で1時間攪拌し、グリニャ−ル試薬を得た。
【0037】
窒素雰囲気で置換した100mlフラスコに予め上記混合溶媒4gを仕込み、上記の操作によって得られたグリニャ−ル試薬の上澄液と炭酸ガス3.87g(88mmol)を同時に、この反応液の温度を0℃〜10℃に保ちながら1時間かけて添加し、更に同温度で10分間攪拌を行った。
【0038】
反応終了後、反応液に10%塩酸水溶液を加えて生成した塩を溶解した。有機層を分取した後、これをガスクロマトグラフィ−及びGPCで分析した結果、p−ビニル安息香酸が85.0%、4、4’−ジビニルベンゾフェノンが3.2%の収率で生成していた。また、この時の重合物生成量は、1.3%であった。
【出願人】 【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
【出願日】 平成15年5月20日(2003.5.20)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−345970(P2004−345970A)
【公開日】 平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願番号】 特願2003−141823(P2003−141823)