| 【発明の名称】 |
無機質硬化体及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】宮崎 幸 【住所又は居所】京都市南区上鳥羽上調子町2−2 積水化学工業株式会社内
【氏名】蔦尾 友重 【住所又は居所】京都市南区上鳥羽上調子町2−2 積水化学工業株式会社内
【氏名】横山 祐三 【住所又は居所】京都市南区上鳥羽上調子町2−2 積水化学工業株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】製紙スラッジを原料として用い、高い強度を有するとともに、加熱エネルギーを用いることなく短時間で製造可能な無機質硬化体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】製紙スラッジ100重量部と珪酸カルシウム20〜230重量部(好ましくは、珪酸カルシウムがアスペクト比10〜25のワラストナイトを含有する)とからなる混合物の乾燥固形分100重量部に対して、3〜100重量部の割合で水が含有されてなる賦形体が炭酸化処理されてなる無機質硬化体、及び、製紙スラッジ、珪酸カルシウムからなる混合物に水を配合して、乾燥固形分100重量部に対して3〜100重量部となるように水の含有量を調整し成形した賦形体を、炭酸化処理して硬化させる上記無機質硬化体の製造方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 製紙スラッジ100重量部と珪酸カルシウム20〜230重量部とからなる混合物の乾燥固形分100重量部に対して、3〜100重量部の割合で水が含有されてなる賦形体が炭酸化処理されてなることを特徴とする無機質硬化体。 【請求項2】 珪酸カルシウムが、アスペクト比10〜25のワラストナイトを含有することを特徴とする請求項1記載の無機質硬化体。 【請求項3】 製紙スラッジ、珪酸カルシウムからなる混合物に水を配合して、乾燥固形分100重量部に対して3〜100重量部となるように水の含有量を調整し成形した賦形体を、炭酸化処理して硬化させることを特徴とする請求項1又は2記載の無機質硬化体の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は無機質硬化体及びその製造方法に関し、詳しくは製紙スラッジを原料とする無機質硬化体及びその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 製紙スラッジは、新聞紙、広告用紙、OA紙などを原料とし再生紙を製造する際に発生するパルプ繊維含有無機系廃棄物である。一般に紙には、インクの塗着性向上や表面光沢性向上のためカオリナイト、タルク、炭酸カルシウムなどの無機材料がコーティングされており、これらが製紙スラッジの主成分となっている。 【0003】 上記製紙スラッジは、製紙メーカーにおいて日々廃棄物として多量に発生しており、環境対応の点から再利用技術の開発が鋭意検討されてきたが、今日では焼却による熱源原料としての利用、即ちサーマルリサイクルが主である。しかし、サーマルリサイクルの場合、廃棄物量としては減容するものの,結果的に焼却灰として廃棄物となるため、この焼却灰の再利用が新たな課題となっている。 【0004】 これに対し、サーマルリサイクル以外のリサイクルの現状としては、一部がセメントなど水硬性原料の充填材として利用されているものの、その多くが埋め立て廃棄という手段をとっているのが現実である。しかしながら、近年、埋め立て地の減少の問題や環境負荷低減の要望により、更なる再利用技術の開発が求められている。 【0005】 上記の問題に対し、例えば特許文献1には、古新聞、雑誌等の製紙スラッジと繊維分の多い製紙スラッジを原料とし、両者をパルパーで離解した後ワイヤープレス装置を通過せしめて、圧縮脱水したものを所要寸法に切断し、これをドライヤーで乾燥し、更にホットプレス加工を施して製品とする、製紙スラッジを原料とするボードの製造法が開示され、また、特許文献2には、特定割合の、傾瀉盤からの製紙スラッジ、天然または合成のラテックス、及び鉱物性または有機性の充填材から組成された、建築用、塗装用、絶縁用、若しくは包装用の、天然色または人工着色の可撓性生成物が開示されている。 【0006】 しかし、上記の製造法や可撓性生成物においては、本発明者の検討によれば、製紙スラッジをサーマルリサイクル以外に使用するという点で有効な手法であるものの、得られるボードや生成物における機械的物性の発生メカニズムが、含水製紙スラッジの脱水過程に発生する繊維間のファンデルワールス力によるものであるので、ボードなどを製造する場合、その製造工程において長時間の加熱・乾燥処理が必要となるばかりで無く、繊維成分のスプリングバックにより、ごく薄いボード以外は層間剥離による極端な強度低下が発生する可能性があった。また、ファンデルワールス力による機械的物性を得るためには、圧密体を成す事が重要となるため、場合によっては高比重成形体となりすぎて重量が過大となる場合があった。 【0007】 更に、上記製造工程においては、通常高エネルギーの加熱乾燥を必要とするため、多大な熱エネルギーを使用する事になり、リサイクルという観点では好ましい手法とは言えず、また、ボードに吸放湿性や蓄熱性などの特殊機能を付与するために機能性材料を混合する場合には、加熱処理により機能性材料が悪影響を受けるという問題があった。 【0008】 【特許文献1】 特開昭55−12853号公報 【特許文献2】 特開昭58−183753号公報 【0009】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、上記従来の問題点に鑑み、製紙スラッジを原料として用い、高い強度を有するとともに、必ずしも加熱エネルギーを用いることなく短時間で製造可能な無機質硬化体及びその製造方法を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】 請求項1記載の無機質硬化体は、製紙スラッジ100重量部と珪酸カルシウム20〜230重量部とからなる混合物の乾燥固形分100重量部に対して、3〜100重量部の割合で水が含有されてなる賦形体が炭酸化処理されてなることを特徴とする。 請求項2記載の無機質硬化体は、請求項1記載の無機質硬化体であって、珪酸カルシウムが、アスペクト比10〜25のワラストナイトを含有することを特徴とする。 請求項3記載の無機質硬化体の製造方法は、請求項1又は2記載の無機質硬化体の製造方法であって、製紙スラッジ、珪酸カルシウムからなる混合物に水を配合して、乾燥固形分100重量部に対して3〜100重量部となるように水の含有量を調整し成形した賦形体を、炭酸化処理して硬化させることを特徴とする。 【0011】 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明において用いられる製紙スラッジとは、再生紙製造工程で発生する紙表面化粧材を主成分とする廃棄物であり、その組成は特に限定されないが、例えばCaO,SiO2,Al2O3,CaCO3などと少量のパルプ繊維分、微量の塗料成分などからなるものが挙げられる。 【0012】 本発明で用いられる珪酸カルシウムとしては、例えばセメント水和物やトバモライトのような珪酸カルシウム水和物、若しくはセメントやワラストナイト(珪灰石)のような珪酸カルシウムが挙げられる。中でも、得られる硬化体の強度発現性の点から、ワラストナイトを用いることが好ましい。 【0013】 ワラストナイトとはCaSi03で示される珪酸カルシウムからなる珪酸塩鉱物であり、白色の繊維状又は塊状物として天然に産出される。一般にその繊維状の形状を利用して、アスベスト代替等の補強部材として利用されている。 【0014】 上記ワラストナイトとしては、微粉砕処理を行い比表面積を増加させたワラストナイトが好ましく、粒子の大きさは平均粒径で10μm以下が好適である。平均粒径が10μmより大きい場合、粒子の内部まで炭酸化反応が進行しにくくなることがある。 【0015】 また、上記ワラストナイトの粉体粒度の体積分布において、累積10%径が1μm以下であるものが好ましい。上記粉体粒度の体積分布とは、粉体の粒度分布を粒子の体積によって表した値であり、その累積10%径とは、粒径の小さいものから粒子全体積の10%に相当する粒子径である。累積10%径が1μmを越える場合は炭酸化処理における反応性が小さくなり、炭酸化硬化体を形成するために長時間もしくは高い圧力を必要とすることがある。 【0016】 上記の、微粉砕処理により比表面積を増加させたワラストナイト以外のワラストナイトを使用する場合は、アスペクト比が10〜25であるものが好ましく、アスペクト比が15〜23であるものがより好ましい。 【0017】 アスペクト比が10未満であると、ワラストナイトの補強効果が充分に発現せず、高強度の硬化体が得られないことがある。アスペクト比が25を超えるとワラストナイト繊維同士の絡み合いが大きくなりすぎて、嵩密度が大きくなり、賦形時に高圧かつ長時間のプレス成形が必要となる傾向がある。なお、上記のようなアスペクト比を有するワラストナイトは、特に限定されないが、たとえば、ジェットミルなどによる粉砕と分級処理により得ることができる。 【0018】 本発明における賦形体は、上記製紙スラッジ100重量部と珪酸カルシウム20〜230重量部とからなる混合物の乾燥固形分100重量部に対して、3〜100重量部の割合で水が含有されてなるものである。 【0019】 上記製紙スラッジは再生紙製造工程での発生過程上、含水物(以下、「含水製紙スラッジ」ともいう)として発生する場合も多いが、本発明においては、上記含水製紙スラッジをそのまま用いてもよい。この場合上記混合物における珪酸カルシウムの含有量は、含水製紙スラッジの水分を除いた製紙スラッジ100重量部に対して上記範囲とされる。また、賦形体における水の含有量は、上記含水製紙スラッジの水分を除いた製紙スラッジと珪酸カルシウムからなる乾燥固形分100重量部に対して上記範囲とされ、賦形体を成形する際に水の添加や搾水などにより水分を調整する場合には、調整後に得られた賦形体における水の含有量を意味する。 【0020】 上記珪酸カルシウムの含有量が20重量部に満たない場合には、得られる硬化体の強度が不十分になることがある。また、含有量が230重量部を超える場合には、混合可能な製紙スラッジの量が少なくなりすぎて、製紙スラッジのリサイクルとして非効率的になることがある。 【0021】 上記水の含有量は、賦形体を成形する際の成形性のみならず炭酸化処理する際の反応性に寄与する。即ち、含有量が3重量%未満であると、炭酸化処理する際の反応時に必要な水量が減少するため炭酸化反応量が不足し、硬化体の曲げ強度が低下することがある。また、含有量が100重量部を超えると、炭酸化処理する際の反応時に蒸発する水の割合が多くなりすぎて、得られる硬化体中の空気量が増加して硬化体の密度が減少したり、反応粒子間の水膜による炭酸化反応の阻害が発生したりして、硬化体の曲げ強度が低下することがある。 【0022】 本発明における炭酸化処理とは、賦形体を二酸化炭素に接触させ、珪酸カルシウムを二酸化炭素と反応させること(以下、「炭酸化」ともいう)によって賦形体を硬化させる処理をいう。このような炭酸化処理としては、例えば、気体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を利用する方法が挙げられる。 【0023】 上記二酸化炭素の濃度は任意の濃度を利用して良いが、100%に近い濃度で処理することが炭酸化の効率という点で好ましい。 【0024】 炭酸化処理の温度としては、特に限定されないが、反応量と工業生産性の観点から、室温〜80℃であることが好ましい。処理温度が低すぎると、炭酸化反応量が減少するため硬化体の強度が低下する傾向があり、処理温度が高すぎると、水分の急激な蒸発による層間剥離などで、強度の大幅な低下に繋がることがあるとともに、炭酸化反応量が少なからず増加するものの、大きなエネルギーが必要となるため工業生産性の観点からも好ましくない。 【0025】 炭酸化処理の圧力としては、特に限定されないが、反応量と工業生産性の観点から、0.2MPa〜20MPaの範囲内であることが好ましく、より好ましくは、0.5MPa〜1MPaである。すなわち、0.2MPaに満たない場合、炭酸化反応量が低下し、強度が低下する傾向があり、20MPaを超えると、炭酸化反応量はほとんど変化せず、大きなエネルギーが必要となるため工業生産性の観点から好ましくない。 【0026】 炭酸化処理時間は、特に限定されないが、反応量と工業生産性の観点から、5〜120分の範囲内であることが好ましい。すなわち、5分に満たない場合、炭酸化反応量が低下し、強度が低下する傾向があり、120分を超えると、炭酸化反応量はほとんど変化しないが、生産性の観点から効率的でない。 【0027】 本発明の無機質硬化体中には、本発明の効果を損なわない限り、弾性率低減のためにガラス、ロックウールなどの無機繊維や、ビニロン、パルプなどの有機繊維が含有されたものであってもよく、また、蓄熱性などの機能を発揮するために、マイクロカプセル化蓄熱材などの機能性材料が含有されたものであってもよい。 【0028】 上記マイクロ化蓄熱材などの機能性材料は、一般に加熱するとその機能が失われる場合が多いが、本発明の無機質硬化体においては、炭酸化処理する際に必ずしも加熱することなく製造することが可能であるため、上記機能性材料などを好適に用いることができる。 【0029】 上記マイクロ化蓄熱材としては、例えば、0〜50℃の融点を有する芯物質の周囲にラジカル付加重合により得られる熱可塑性樹脂を主成分とするカプセル壁が形成されたものなどが好適である。 【0030】 本発明の無機質硬化体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、製紙スラッジ、珪酸カルシウムからなる混合物に水を配合して、乾燥固形分100重量部に対して3〜100重量部となるように水の含有量を調整し成形した賦形体を、炭酸化処理して硬化させることで好適に製造することができる。 【0031】 (作用) 本発明の無機質硬化体は、珪酸カルシウムの炭酸化反応を利用することによって、必ずしも加熱エネルギーを用いることなく短時間で硬化させることができ、軽量で高強度の硬化体を得ることが可能となる。このため、多量の製紙スラッジを混合することができ、製紙スラッジをサーマルリサイクル以外に有効利用することが可能となると共に、吸放湿性や蓄熱性などの特殊機能を付与するために機能性材料を混合する場合には、加熱処理により機能性材料が悪影響を受けることを防止することが可能となる。 【0032】 【実施例】 以下に実施例および比較例を示すことにより、本発明を具体的に説明する。 尚、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。 【0033】 (実施例1) 含水製紙スラッジ(丸住製紙社製 含水率50%)200重量部(白スラッジ/固形分100重量部相当)、珪酸カルシウムとしてワラストナイト(清水工業社製「H1250F」、アスペクト比10〜25)70重量部、有機繊維として叩解パルプ繊維(パルテック社製「セロファイバー」、叩解度100)8重量部、及び水600重量部を撹拌混合して得られた混合物(スラリー)を脱水プレス用成形型内(150mm×80mm)に投入した。上記脱水プレス用金型には真空排気用の孔が数箇所設けられ、金型下面上にはフェルト(市川毛織社製 通気度74cc)が設けられており、スラリーはこのフェルト上に投入した。脱水処理操作としては、まず450mmHgの負圧条件で所定時間スラリーより水を除去した後、面圧5.9MPaで10秒間プレスし賦形体を得た。得られた賦形体の水の含有量としては乾燥固形分100重量部に対して50重量部であった。 【0034】 次に得られた賦形体を温度50℃、圧力1.0MPaの二酸化炭素環境下に1時間放置して炭酸化処理を行い、無機質硬化体を得た。 【0035】 (実施例2) 珪酸カルシウムとしてワラストナイト鉱物粉砕品(比表面積4.9m2/g、平均粒径2.6μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして無機質硬化体を得た。 【0036】 (実施例3) ワラストナイトを40重量部としたこと以外は実施例1と同様にして無機質硬化体を得た。 【0037】 (実施例4) ワラストナイトを低アスペクト品(清水工業社製「GB−800」、アスペクト比8)を用いたこと以外は実施例1と同様にして無機質硬化体を得た。 【0038】 (比較例1) ワラストナイトを5重量部としたこと以外は実施例1と同様にして成形を試みたが、層間剥離のため無機質硬化体得ることができなかった。 【0039】 得られた無機質硬化体より試験片を切り出し、スパン90mm、荷重速度0.5mm/分の条件で曲げ強度を測定した。またアルキメデス法により比重を測定した。測定結果は表1に示した。 【0040】 【表1】
【0041】 表1より明らかなように、本発明の実施例においては、層間剥離の発生もなく、軽量で高強度の無機質硬化体が得られることが判明した。 【0042】 【発明の効果】 本発明の無機質硬化体は、製紙スラッジ100重量部と珪酸カルシウム20〜230重量部とからなる混合物の乾燥固形分100重量部に対して、3〜100重量部の割合で水が含有されてなる賦形体が炭酸化処理されてなることを特徴とするので、必ずしも加熱エネルギーを用いることなく短時間で製造可能な高い強度を有する無機質硬化体を得ることができ、多量の製紙スラッジを用いることが可能な無機質硬化体を提供することができる。 【0043】 上記珪酸カルシウムが、アスペクト比10〜25のワラストナイトを含有する場合には上記効果は更に確実なものとなる。 【0044】 本発明の無機質硬化体の製造方法は、上記無機質硬化体の製造方法であって、製紙スラッジ、珪酸カルシウムからなる混合物に水を配合して、乾燥固形分100重量部に対して3〜100重量部となるように水の含有量を調整し成形した賦形体を炭酸化処理して硬化させることを特徴とするので、上記同様の効果を発揮する無機質硬化体を得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002174 【氏名又は名称】積水化学工業株式会社 【住所又は居所】大阪府大阪市北区西天満2丁目4番4号
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| 【出願日】 |
平成15年5月26日(2003.5.26) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2004−345933(P2004−345933A) |
| 【公開日】 |
平成16年12月9日(2004.12.9) |
| 【出願番号】 |
特願2003−147863(P2003−147863) |
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