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【発明の名称】 網入りガラス及びその製造方法
【発明者】 【氏名】菊田 雅司
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜四丁目7番28号 日本板硝子株式会社内

【氏名】塩崎 智子
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜四丁目7番28号 日本板硝子株式会社内

【要約】 【課題】切断時にクラックが発生せず強度及び耐久性が向上する網入りガラス及びその製造方法を提供する。

【解決手段】本発明の網入りガラスの製造方法は、まず、格子状の鋼製の網を焼鈍し、ロールアウト装置を用いて、焼鈍した網を溶融ガラスに挿入して網入りガラスを製造する。上記焼鈍は、鋼の再結晶化温度である400〜500℃を超える温度、例えば700〜900℃で、所定時間、例えば3時間以上保持した後、徐冷することにより行われる。このように製造された網入りガラス40は、中に予め焼鈍した鋼で作られた網10を有している。この場合、再結晶化された鋼は、JISG0552で規定されるフェライト結晶粒度の粒度番号が1〜5程度である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予めJISG0552で規定されるフェライト結晶粒度の粒度番号を1〜5とした鋼で作られた網が挿入されたことを特徴とする網入りガラス。
【請求項2】
前記鋼は再結晶化されていることを特徴とする請求項1記載の網入りガラス。
【請求項3】
前記再結晶化は焼鈍により行われることを特徴とする請求項2記載の網入りガラス。
【請求項4】
溶融ガラス中に、鋼製の網を挿入する網入りガラスの製造方法において、前記網を予め再結晶化することを特徴とする網入りガラスの製造方法。
【請求項5】
前記再結晶化を焼鈍により行うことを特徴とする請求項4記載の網入りガラスの製造方法。
【請求項6】
前記焼鈍を無酸化焼鈍により行うことを特徴とする請求項5記載の網入りガラスの製造方法。
【請求項7】
前記焼鈍を、前記鋼の再結晶化温度以上で所定時間保持した後、徐冷することにより行うことを特徴とする請求項5又は6記載の網入りガラスの製造方法。
【請求項8】
前記焼鈍の温度は700〜900℃であり、前記所定時間は3時間以上であることを特徴とする請求項7記載の網入りガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、網入りガラス及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、網入ガラスは、ロールアウト法等の型板ガラス成形法を用いて、1000〜1600°C程度の溶融ガラスを2本の成形ロールの間に通して板ガラスを成形する際に、該溶融ガラス中に格子状に編まれた鋼製の網を挿入した上で、網が挿入された溶融ガラスを2本の成形ロールの間に通すことにより製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2003−12341号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記網入りガラスの製造方法では、網を溶融ガラスに挿入した後、溶融ガラスが冷却して固化する際に、網の材料である鋼が焼鈍と同じような作用を受けて鋼の再結晶化により網の体積が微量減少するので、網の周囲のガラスに残留応力が発生する。このため、上記製造方法で製造した網入りガラスを切断した場合において、切断面に最も近い網の交点の周囲のガラスにクラックが発生し、網入りガラスの強度及び耐久性が低下する。
【0005】
本発明の目的は、切断時にクラックが発生せず強度及び耐久性が向上する網入りガラス及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1記載の網入りガラスは、予めJISG0552で規定されるフェライト結晶粒度の粒度番号を1〜5とした鋼で作られた網が挿入されたことを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の網入りガラスは、予めJISG0552で規定されるフェライト結晶粒度の粒度番号を1〜5とした鋼で作られた網が挿入されるので、切断時にクラックが発生せず強度及び耐久性が向上する。
【0008】
請求項2記載の網入りガラスは、請求項1記載の網入りガラスにおいて、前記鋼は再結晶化されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の網入りガラスは、鋼は再結晶化されているので、請求項1の効果を確実に奏することができる。
【0010】
請求項3記載の網入りガラスは、請求項2記載の網入りガラスにおいて、前記再結晶化は焼鈍により行われることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の網入りガラスは、再結晶化は焼鈍により行われるので、請求項1の効果をより確実に奏することができる。
【0012】
上述の目的を達成するために、請求項4記載の網入りガラスの製造方法は、溶融ガラス中に、鋼製の網を挿入する網入りガラスの製造方法において、前記網を予め再結晶化することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の網入りガラスの製造方法によれば、網を予め再結晶化するので、切断時にクラックが発生するのを防止して網入りガラスの強度及び耐久性を向上させることができる。
【0014】
請求項5記載の網入りガラスの製造方法は、請求項4記載の網入りガラスの製造方法において、前記再結晶化を焼鈍により行うことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の網入りガラスの製造方法によれば、再結晶化を焼鈍により行うので、請求項4の効果を確実に奏することができる。
【0016】
請求項6記載の網入りガラスの製造方法は、請求項5記載の網入りガラスの製造方法において、前記焼鈍を無酸化焼鈍により行うことを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の網入りガラスの製造方法によれば、焼鈍を無酸化焼鈍により行うので、請求項4の効果をより確実に奏することができる。
【0018】
請求項7記載の網入りガラスの製造方法は、請求項5又は6記載の網入りガラスの製造方法において、前記焼鈍を、前記鋼の再結晶化温度で所定時間保持した後、徐冷することにより行うことを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の網入りガラスの製造方法は、請求項7記載の網入りガラスの製造方法において、前記焼鈍の温度は700〜900℃であり、前記所定時間は3時間以上であることを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の網入りガラスの製造方法によれば、焼鈍の温度は700〜900℃であり、所定時間は3時間以上であるので、鋼の再結晶化を確実に行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る網入りガラスの製造処理のフローチャートである。
【0023】
図1において、まず、網10(図3)を焼鈍し(ステップS1)、後述する図4のロールアウト装置を用いて、ステップS1で焼鈍した網10を溶融ガラスに挿入して網入りガラス40(図2)を製造し(ステップS2)、本処理を終了する。このように製造された網入りガラス40は、中に予め焼鈍した鋼で作られた網10を有している。
【0024】
図3は、図1のステップS1で焼鈍される鋼製の網を示す斜視図である。
【0025】
図3において、網10は、格子状に編まれた複数の金属線11から成る。金属線11の材料は鋼である。金属線11の格子ピッチは18〜21mmであり、金属線11の直径は0.4〜0.6mmである。これらは、使用目的等によりこれ以外の値も採り得る。
【0026】
上記焼鈍は、鋼の再結晶化温度である400〜500℃を超える温度、例えば700〜900℃で、所定時間、例えば3時間以上保持した後、徐冷することにより行われる。焼鈍の過程で、鋼の再結晶化により網10の体積は微量ながら減少する。この場合、再結晶化された鋼は、JISG0552で規定されるフェライト結晶粒度の粒度番号が1〜5程度である。
【0027】
図4は、図1のステップS2で用いられるロールアウト装置の図である。
【0028】
図4において、ロールアウト装置30は、ガラス原料を溶融して溶融ガラス20を作製するガラス溶融炉31と、溶融ガラス20をガラス溶融炉31から押出す押出し装置32と、押出された溶融ガラス20を後述する成形ロール35に誘導するリップタイル33及びダンパー34と、ガラス溶融炉から取出された溶融ガラス20を圧延してガラスリボンに成形する2本の成形ロール35と、焼鈍された網10を成形ロール35に誘導するガイドロール36と、製造された網入りガラス40を搬送する搬送ロール38とを備える。
【0029】
溶融炉31は、ガラス原料を溶融するとともに、その溶融温度を制御して板ガラスの成形に好適な粘度範囲と温度範囲の溶融ガラス20を作製する。網入ガラスに用いられる板ガラスの材料はソーダライムシリカガラスである。溶融ガラス20の粘度は温度に支配されるので、粘度は温度の管理をすることにより同時に管理される。溶融は、ガラス原料の組成にもよるが、通常、1000〜1600°C程度の温度範囲で、ガラスの泡欠点、組成のバラツキ、その他の欠点が解消されるように、充分な時間をかけて行われる。
【0030】
押出し装置32は、溶融炉31で作製された溶融ガラス20をリップタイル33とダンパー34の間から2本の成形ロール35の間に押出し、2本の成形ロール35はガラス溶融炉から取出された溶融ガラス20を圧延しガラスリボンに成形する。このとき、溶融ガラス20中に焼鈍された網10を挿入した上で、網10が挿入された溶融ガラス20を2本の成形ロール35の間に通す。成形ロール35により成形されたガラスリボンは、徐冷されて網10をガラスリボン内に封入し、網入りガラス40として搬送ローラ38により搬送される。
【0031】
網10が溶融ガラス20中に挿入され、溶融ガラス20が徐冷されると、網10の材料である鋼の再結晶化により、網の体積が微量減少するので、網の周囲のガラスに残留応力が発生する。残留応力の発生した網入りガラスを切断すると、切断面に最も近い網の交点の周囲のガラスにクラックが発生し、網入りガラスの強度及び耐久性が低下する。このため、溶融ガラス20が徐冷される際の再結晶化による網10の材料である鋼の結晶粒度の変化量を低減させることで、残留応力の発生を防止することができると考えられる。
【0032】
本実施の形態によれば、網10の材料である鋼を焼鈍により予め再結晶化させるので、溶融ガラス20が徐冷される際の再結晶化による網10の材料である鋼の結晶粒度の変化量を低減させ、もって切断時にクラックが発生するのを防止して網入りガラスの強度及び耐久性を向上させることができる。
【0033】
本実施の形態では、焼鈍温度を700〜900℃、所定時間を3時間以上としたが、好ましくは、焼鈍温度は800℃であり、所定時間は5時間である。
【0034】
本実施の形態では、金属線の材料を鋼としたが、ステンレス鋼等でもよい。また、鋼製の金属線にクロムメッキ、ニッケルメッキを施してもよい。
【0035】
本実施の形態では、板ガラスの材料をソーダライムシリカガラスとしたが、低アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス等でもよい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0037】
まず、網を予め焼鈍してから溶融ガラスに挿入して製造した網入りガラスと、網を予め焼鈍することなく溶融ガラスに挿入して製造した網入りガラスとを夫々作成して、表1の実施例及び比較例の網入りガラスを準備した。
【0038】
次いで、作成した網入りガラスを切断し、切断面に最も近い網の交点の内側14(図5)のガラスにおける残留応力の計測、及びクラックの発生の有無の評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
上記残留応力の計測は、直行ニコルの状態に設置された偏光子と検光子の間に試験片を配置し、偏光子を介して試験片に照射された白色光を検光子を介して鋭敏色検板上で色調の変化として表示することにより行われる。試験片がガラスの場合、応力0では鮮やかな赤色を示し、圧縮応力が作用しているときは青色、逆に引張応力が作用しているときは黄色を示す。
【0040】
結果を図6及び図7に示す。図6及び図7において、圧縮応力が作用している箇所はクロスハッチング、引張応力が作用している箇所は黒色部で示す。
【0041】
クラックの有無の評価は、目視によりクラックの有無を観察した。
【0042】
【表1】


本実施例によれば、予め焼鈍した網を、溶融ガラスに挿入することにより網入りガラスの製造すると、切断時にクラックが発生するのを防止して網入りガラスの強度及び耐久性を向上させることができることが分かった。
【0043】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1記載の網入りガラスは、予めJISG0552で規定されるフェライト結晶粒度の粒度番号を1〜5とした鋼で作られた網が挿入されるので、切断時にクラックが発生せず強度及び耐久性が向上する。
【0044】
請求項2記載の網入りガラスは、鋼は再結晶化されているので、請求項1の効果を確実に奏することができる。
【0045】
請求項3記載の網入りガラスは、再結晶化は焼鈍により行われるので、請求項1の効果をより確実に奏することができる。
【0046】
請求項4記載の網入りガラスの製造方法によれば、網を予め再結晶化するので、切断時にクラックが発生するのを防止して網入りガラスの強度及び耐久性を向上させることができる。
【0047】
請求項5記載の網入りガラスの製造方法によれば、再結晶化を焼鈍により行うので、請求項4の効果を確実に奏することができる。
【0048】
請求項6記載の網入りガラスの製造方法によれば、焼鈍を無酸化焼鈍により行うので、請求項4の効果をより確実に奏することができる。
【0049】
請求項8記載の網入りガラスの製造方法によれば、焼鈍の温度は700〜900℃であり、所定時間は3時間以上であるので、鋼の再結晶化を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る網入りガラスの製造処理のフローチャートである。
【図2】図1の製造処理によって製造された網入りガラスの斜視図である。
【図3】図1のステップS1で焼鈍される鋼製の網を示す斜視図である
【図4】図1のステップS2で用いられるロールアウト装置の図である。
【図5】従来及び本発明の網入りガラスの応力測定位置を説明する図である。
【図6】従来の網入りガラスの応力測定結果を示す図である。
【図7】本発明の網入りガラスの応力測定結果を示す図である。
【符号の説明】
10 網
20 溶融ガラス
30 ロールアウト装置
35 成形ロール
36 ガイドロール
40 網入りガラス
【出願人】 【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
【住所又は居所】東京都港区海岸二丁目1番7号
【出願日】 平成15年5月23日(2003.5.23)
【代理人】 【識別番号】100081880
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 敏彦

【公開番号】 特開2004−345923(P2004−345923A)
【公開日】 平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願番号】 特願2003−146730(P2003−146730)