トップ :: C 化学 冶金 :: C02 水,廃水,下水または汚泥の処理

【発明の名称】 排水の処理方法
【発明者】 【氏名】浜辺 秀典
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿三丁目4番7号 栗田工業株式会社内
【氏名】上野 智恵
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿三丁目4番7号 栗田工業株式会社内
【課題】有機物を含む排水をフェントン処理する方法において、鉄化合物の必要量を低減し、これにより汚泥発生量を低減し、同時に過酸化水素の反応寄与率を高めて、有機物の除去率を著しく向上させる。

【解決手段】フェントン反応系内にFe3+→Fe2+還元作用を有する有機酸を存在させる。Fe3+→Fe2+還元作用を有する有機酸により系内でFe3+をFe2+に還元することにより、鉄化合物の必要量を低減すると共に、Hの反応寄与率を高めることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む排水を過酸化水素及び鉄化合物の存在下にフェントン処理する方法において、系内に第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する作用を有する有機酸を存在させることを特徴とする排水の処理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記有機酸がCOOH基とOH基とを併せ持つことを特徴とする排水の処理方法。
【請求項3】
請求項2において、前記有機酸が酒石酸及び/又はリンゴ酸であることを特徴とする排水の処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記有機酸の存在量が、鉄イオンの0.1〜5.0モル倍であることを特徴とする排水の処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、フェントン処理時のpHが1.5〜5.0であることを特徴とする排水の処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、フェントン処理液に水酸化カルシウム及び/又は水酸化マグネシウムを添加して固液分離することを特徴する排水の処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェントン法による排水の処理方法に係り、特に、有機物を含む排水を過酸化水素及び鉄化合物の存在下にフェントン処理するに当たり、フェントン反応系内に第二鉄イオン(Fe3+)を第一鉄イオン(Fe2+)に還元する作用を有する有機酸を存在させることにより、効率的な処理を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
排水中の有機物の分解処理方法として、生物学的な活性汚泥法が一般に広く行われているが、有機化学物質を多く含む排水の場合には、このような微生物分解による処理では多くの時間を要し、また、多くの場合、発生した余剰汚泥の処理にも問題を生じる。そこで、このような排水を処理する場合には、活性汚泥処理に先立ち、予め物理・化学的な処理法で有機物の一部を分解し、生物処理の負荷を軽減することが行われている。
【0003】
このような物理・化学的な処理法として、オゾン酸化、過酸化水素酸化、フェントン酸化などの酸化分解法があり、このうち、フェントン酸化法は有機物の分解効率の良さと、大きな設備を必要としない点で優れている。
【0004】
フェントン酸化法は、過酸化水素(H)が第一鉄イオン(Fe2+)などの金属イオンによってヒドロキシラジカル(HO・)とヒドロキシイオン(HO)に分解するフェントン反応を利用するものであり、Hの分解で生じたヒドロキシラジカル(HO・)により有機物を酸化させる方法である(例えば、特公昭59−1120号公報、特開平10−277568号公報参照)。
【0005】
具体的には、有機物を含む水に第一鉄化合物(Fe2+)と過酸化水素を加えると、下式の反応によりヒドロキシラジカル(HO・)が発生し、このヒドロキシラジカルにより水中の有機物が酸化分解される。
+Fe2+→HO・+OH+Fe3+
【0006】
しかし、従来のフェントン法では、Fe2+とHを完全に反応させることが困難であり、このためOH・の発生量が少なく、有機物の除去率が低く、残留Hの処理が必要であった。Hを完全に反応させ、OH・の発生量を多くして、有機物の除去率を高めるには、Fe2+を多量に使用する必要があるが、この場合には、Fe(OH)主体の汚泥が多量に排出され、汚泥処分費が高くなる。
【0007】
従来、フェントン反応に必要なFe2+及び過酸化水素の有効利用率を高めるために、Hについては、Hの自己分解を抑制するべく、Hを多段注入する方法が提案されている(例えば、特開平3−52692号公報参照)。
【0008】
また、Fe2+については、Fe2+から生成したFe3+をFe2+に還元して再利用する方法として、フェントン処理後に固液分離して得られたFe(OH)を主体とする汚泥の一部を、金属鉄、金属亜鉛、金属錫、塩化第一錫、アスコルビン酸、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩などの還元剤で還元してFe2+とし、フェントン処理工程に戻す方法が提案されている(例えば、特許第2506032号公報参照)。
【0009】
【特許文献1】
特公昭59−1120号公報
【特許文献2】
特開平10−277568号公報
【特許文献3】
特開平3−52692号公報
【特許文献4】
特許第2506032号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、Hを多段注入する方法では、Hの自己分解の抑制には有効であるが、Fe2+とHとの反応性を高めることはできず、Hの残留の問題がある。
【0011】
また、分離汚泥中のFe3+をFe2+に還元して再利用する方法では、Fe2+の有効利用率を高めることはできるが、分離された汚泥を還元するための装置を別途増設する必要があり、その運転管理に要する作業数や費用の面からも工業的に有利な方法とは言えない。しかも、この方法においても、Hを完全に反応させるためには、多量のFeが必要であるという問題の根本的な解決にはならず、Fe2+使用量が多く、発生汚泥量が多くなるか、或いは、Hが残留して残留Hの処理が必要であるという問題があった。
【0012】
本発明は上記従来の問題点を解決し、有機物を含む排水をフェントン処理する方法において、鉄化合物の必要量を低減し、これにより汚泥発生量を低減し、同時に過酸化水素の反応寄与率を高めて、有機物の除去率を著しく向上させることができる方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の排水の処理方法は、有機物を含む排水を過酸化水素及び鉄化合物の存在下にフェントン処理する方法において、系内に第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元する作用を有する有機酸を存在させることを特徴とする。
【0014】
即ち、本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、フェントン処理系内にFe3+→Fe2+還元作用を有する有機酸を存在させて、反応系内でフェントン反応により生成したFe3+をFe2+に還元することにより、Fe2+使用量を低減し、この結果として汚泥発生量を低減すると同時にHを完全に反応させて、有機物の除去率を著しく向上させることのできることを見出し、この知見に基いて本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明において、有機酸は、それ自身還元能力を有するが、その速度は遅く、もっぱらHの存在下にFe3+をFe2+に還元することでフェントン反応を促進すると考えられる。
【0016】
なお、有機酸もフェントン反応を受けるものであるが、CODの共存下ではCODが優先的に分解されるため、有機酸はFe3+の還元に有効に利用される。
【0017】
Fe3+→Fe2+還元作用を有する有機酸としては、COOH基とOH基を併せ持つものが好ましく、例えば、酒石酸、リンゴ酸が挙げられ、その反応系内存在量は、Feイオンの0.1〜5.0モル倍であることが好ましい。
【0018】
本発明において、フェントン処理時のpHは1.5〜5.0であることが好ましい。
【0019】
なお、残留有機酸は、水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムにより、不溶化して除去することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の排水の処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明においては、有機物を含む排水を過酸化水素及び鉄化合物の存在下にフェントン処理するに当たり、反応系内に第二鉄イオン(Fe3+)を第一鉄イオン(Fe2+)に還元する作用を有する有機酸を存在させる。
【0022】
このFe3+→Fe2+還元作用を有する有機酸としては、このような還元力を有するものであれば良く、特に制限はないが、COOH基とOH基とを併せ持つ有機酸が有効であり、具体的には、酒石酸、リンゴ酸を用いることができる。
【0023】
このような有機酸の存在量は、少な過ぎるとこの有機酸を存在させることによる本発明の効果を十分に得ることができず、逆に、多過ぎると残留有機酸の処理の問題を生じることから、反応系内の鉄イオンに対して0.1〜5.0モル倍、特に0.5〜2.0モル倍であることが好ましい。
また、本発明においては、このようにFe3+→Fe2+還元作用を有する有機酸を存在させることにより、フェントン反応で発生したFe3+を系内で逐次Fe2+に還元させることができるため、排水に対するFe2+添加量に対して、反応系内に存在する見掛けのFe2+存在量が多くなる。このためHに対して多量の鉄塩を添加しなくても、Hの反応寄与率を高め、COD分解効率を高めると共に、残留Hの問題を解決することができる。
【0024】
本発明では、このように反応系内でFe2+をFe3+に還元することができることから、排水に添加する鉄化合物は第一鉄化合物に限らず、第二鉄化合物であっても良い。従って、排水に添加する鉄化合物としては、フェントン処理液を固液分離して得られたFe(OH)を主体とする汚泥を用いることも可能である。
【0025】
鉄化合物及びHの添加量は、排水の有機物含有量、所望とする有機物除去率や、Fe3+→Fe2+還元作用を有する有機酸の使用量等によって適宜決定されるが、通常の場合、排水のCODCrに対して、Hを0.5〜5.0モル倍とし、Hに対する鉄化合物の割合をFe換算で0.01〜1.0モル倍とすることが好ましい。
【0026】
また、反応系内のpHは1.5〜5.0、特に2.0〜4.0であることが好ましい。このpHが1.5未満、あるいは5.0を超えると、ヒドロキシラジカルによるCODの酸化分解効果が著しく低下する。
【0027】
フェントン処理液中に残留する有機酸は、水酸化カルシウム(Ca(OH))や水酸化マグネシウム(Mg(OH))を添加することにより、容易に不溶化させて除去することができる。従って、本発明においては、フェントン処理液にCa(OH)及び/又はMg(OH)を添加した有機酸に対して0.5〜2.0モル倍程度添加した後固液分離することにより、残留Hが殆どなく、有機物が高度に除去された高水質処理水を得ることができる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0029】
実施例1〜3
化学工場排水(CODCr=685mg/L)を用いて、フェントン法による処理を行った。
【0030】
この化学工場排水500mLに、硫酸第二鉄・n水和物と酒石酸を表1に示す量添加し、次いでHを表1に示す量添加し、下記反応条件で処理を行った。
【0031】
(反応条件)
pH:2.5
温度:20℃
時間:15分
【0032】
フェントン処理液にCa(OH)を添加してpH7.0に調整して凝集沈殿処理を行い、上澄み液のH濃度及びCODCr濃度を測定し、結果を表1に示した。
【0033】
比較例1,2
実施例2,3において、酒石酸を添加せず、硫酸第二鉄・n水和物の代りに、硫酸第一鉄・七水和物(Fe2+)を添加したこと以外はそれぞれ同様にして処理を行い、同様にH濃度及びCODCr濃度を測定し、結果を表1に示した。
【0034】
比較例3,4
実施例2,3において、酒石酸を添加しなかったこと以外はそれぞれ同様にして処理を行い、同様にH濃度及びCODCr濃度を測定し、結果を表1に示した。
【0035】
なお、表1には、H濃度から求めたHの消費率(反応寄与率)と、COD濃度から求めたCODCr除去率を併記した。
【0036】
【表1】


【0037】
表1より次のことが明らかである。
【0038】
CODCrに対するFe濃度0.2モル倍の条件(実施例2、比較例1,3)で比較した場合、Fe2+を使用し、酒石酸を使用しなかった比較例1では、H消費率78%、CODCr除去率39%であり、Fe3+を使用し、酒石酸を使用しなかった比較例3では、排水中の還元性物質によりFe3+の一部が還元されてFe2+が生成してある程度フェントン反応が進行するものの、H消費率50%、CODCr除去率17%であった。
【0039】
このように酒石酸を使用しない比較例1,3では、いずれもH消費率が低く、また消費したHに対するCODCr除去率も低い。
【0040】
これに対して、Fe3+と酒石酸を使用した実施例1では、酒石酸をCODCrに対して0.1モル倍存在させるだけで、H消費率95%、CODCr除去率95%とH消費率もCODCr除去率も大幅に改善することができる。
【0041】
CODCrに対するFe濃度0.5モル倍の条件(実施例3、比較例2,4)においても同様の結果が得られており、本発明によれば、Hの反応寄与率を高め、CODCr除去率を著しく高めることができることが分かる。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の排水の処理方法によれば、有機物を含む排水をフェントン処理する方法において、反応系内にFe3+→Fe2+還元作用を有する有機酸を存在させて系内でFe3+をFe2+に還元することにより、鉄化合物の必要量を低減し、これにより汚泥発生量を低減すると共に、過酸化水素の反応寄与率を高めて、有機物の除去率を著しく向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿3丁目4番7号
【出願日】 平成15年2月21日(2003.2.21)
【代理人】 【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛

【公開番号】 特開2004−249258(P2004−249258A)
【公開日】 平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願番号】 特願2003−44577(P2003−44577)