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【発明の名称】 マグネタイト微粒子の製造法
【発明者】 【氏名】宇田 徹
【住所又は居所】神奈川県藤沢市辻堂新町4−3−1 エヌオーケー株式会社内
【課題】鉄塩水溶液にアルカリを添加し、熟成させる共沈法によりマグネタイト微粒子を製造するに際し、良好な飽和磁化率を保持しながら、平均粒子径(FERET径)が5〜10nm程度と小さくしかも粒度分布の狭いマグネタイト微粒子を製造し得る方法を提供する。

【解決手段】共沈法によりマグネタイト微粒子を製造するに際し、鉄塩水溶液にアルコールアミンを添加した後アルカリを添加してマグネタイト微粒子を製造する。アルコールアミンとしては、2,2′,2′′−ニトリロトリエタノール(トリエタノールアミン)、1,1′,1′′−ニトリロ−トリス(2−プロパノール)(トリイソプロパノールアミン)が好んで用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共沈法によりマグネタイト微粒子を製造するに際し、鉄塩水溶液にアルコールアミンを添加した後アルカリを添加することを特徴とするマグネタイト微粒子の製造法。
【請求項2】
3〜40℃の温度に保持された鉄塩水溶液中にアルコールアミンが添加される請求項1記載のマグネタイト微粒子の製造法。
【請求項3】
平均粒子径が5〜10nmのマグネタイト微粒子を生成させる請求項1記載のマグネタイト微粒子の製造法。
【請求項4】
請求項1または3記載の方法で製造されたマグネタイト微粒子を基油中に分散せしめた磁性流体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネタイト微粒子の製造法に関する。さらに詳しくは、平均粒子径が小さくかつその粒度分布の狭い微粒子を生成させるマグネタイト微粒子の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、微粒子の製造法は、微粒子の生成過程から分類すると、細分化と生長法とに大別される。細分化法は、粗粒子の機械的粉砕によって微粒子を得る方法であるが、平均粒子径が1μm以下の微粒子を効率よく得ることは困難である。一方、生長法は、ガスや溶液状態での化学反応により、原子もしくは分子から核生成と成長により微粒子を得る方法であり、粒子径1μm以下の微粒子を効率よく得ることができ、また粒度分布の制御も可能である。
【0003】
マグネタイト微粒子の製造法においても、生長法が広く利用されており、特に3価の鉄イオンと2価の鉄イオンとが混在した水溶液にアルカリを添加し、加熱熟成して微粒子を生成させる共沈法は、nmサイズの平均粒子径を有するマグネタイト微粒子が容易に得られ、しかもその粒度分布も狭いことから、磁性流体等の磁性コロイドやトナー、磁気記録材料等に広く利用されている。
【0004】
最近では、磁気記録媒体のさらなる高密度化や磁性コロイドの高磁場での分散安定性が求められるにつれて、より粒子径が小さくかつ粒度分布が狭いマグネタイト微粒子が必要とされている。しかしながら、マグネタイトの粒子径が8nm以下、特に5nm以下となると、飽和磁化値は大きく低下するため、磁性微粒子としての使用に問題を生ずるようになる。
【0005】
従来周知の共沈法によるマグネタイト微粒子の製造法では、平均粒子径が10nmよりも大きくなってしまい、このため磁性流体等の磁性コロイドとした場合、凝集粒子径が大きくなるのを避けることができない。そのため、共沈法での鉄塩水溶液に予め界面活性剤(日本化学会誌 1991年9月号第1183〜1187頁)や水溶性高分子(Rep. Asahi Glass Found.第57号第143〜151頁、1990年)等を添加しておき、平均粒子径を小さくする方法が知られているが、これらの添加剤の添加によって粒子の結晶化が阻害されるため、マグネタイト微粒子の飽和磁化率が大きく低下することとなる。
【0006】
また、マグネタイト微粒子の調整後、遠心分離法や磁気分離法により粗大粒子を除去し、粒子径や粒度分布を調節することは可能であるが、所望の粒子径を有するマグネタイト微粒子の収率は大きく低下する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、鉄塩水溶液にアルカリを添加し、熟成させる共沈法によりマグネタイト微粒子を製造するに際し、良好な飽和磁化率を保持しながら、平均粒子径(FERET径)が5〜10nm程度と小さくしかも粒度分布の狭いマグネタイト微粒子を製造し得る方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、共沈法によりマグネタイト微粒子を製造するに際し、鉄塩水溶液にアルコールアミンを添加した後アルカリを添加してマグネタイト微粒子を製造する方法によって達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
共沈法によるマグネタイト微粒子の製造は、3価の鉄イオン、例えばFeCl・6HOと2価の鉄イオン、例えば、FeCl・4HOとを等モル量混在した水溶液に、アンモニア水、水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより行われるが、本発明にあっては、アルカリの添加に先立って、水の沸点以下、好ましくは約3〜40℃の温度に保持された鉄塩水溶液中にアルコールアミンの添加が行われる。
【0010】
アルコールアミンとしては、例えば2−アミノエタノール、2−エチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、N,N−ジエチルヒドロキシアミン、2−ジメチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、3−(ジメチルアミノ)−1−プロパノール、N−n−ブチル−2,2′_イミノジエタノール、2−アニリノエタノール、2−(ベンジルアミノ)エタノール、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、2,2′,2′′−ニトリロトリエタノール、1,1′,1′′−ニトリロ−トリス(2−プロパノール)が用いられるが、特に2,2′,2′′−ニトリロトリエタノール(トリエタノールアミン)、1,1′,1′′−ニトリロ−トリス(2−プロパノール)(トリイソプロパノールアミン)が好んで用いられる。
【0011】
これらのアルコールアミンは、FeCl・6HO 1モルに対し約0.01〜1モル、好ましくは約0.1〜1モルの割合で用いられる。これ以下の添加割合では、得られるマグネタイト微粒子の平均粒子径が10μm以下とはならず、また粒度分布も大きくなり、さらにはそれから調製された磁性流体の個数50%粒子径(個数基準分布による個数中位径)も大きくなる。一方、これ以上の割合で用いることは、アルコールアミンの洗浄除去性の点から好ましくない。なお、アルコールアミンは微粒子への吸着性が弱いため、微粒子生成時の結晶化を阻害することはない。
【0012】
このようなアルコールアミンの代りに、界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸を使用した場合には、後記比較例3の結果に示されるように、マグネタイト微粒子の平均粒子径、その粒度分布およびそれから調製された磁性流体の50%粒子径はそれぞれ満足されるものの、肝心の飽和磁化率が低くなる。
【0013】
鉄塩水溶液中へのアルコールアミンの添加に引続いて、従来法での如くアルカリの添加および約80〜99℃で約0.5〜2時間程度の熟成が行われ、そこにマグネタイト微粒子ゾルを形成させる。アルコールアミンの次にアルカリを添加することは必須の条件であり、後記比較例2の結果に示されるように、この添加順序を逆にすると所望の飽和磁化率は得られるものの、マグネタイト微粒子の平均粒子径は10nm以上となりまたその粒度分布も広くなり、さらにそれから調製された磁性流体の個数50%粒子径も大きくなる。
【0014】
このようにして得られるマグネタイトゾルを用いての磁性流体の調製は、公知の任意の方法、例えば後記実施例1に記載されるような方法に従って、オレイン酸被覆マグネタイト微粒子を基油中に分散させることによって行われ、この際には特に分散剤を用いなくとも良好に基油中への分散が行われる。
【0015】
基油としては、トルエンによって代表される芳香族炭化水素等も用いられるが、一般には低蒸気圧基油が用いられる。低蒸気圧基油としては、25℃において0.1mmHg以下、好ましくは0.01mmHg以下の蒸気圧を有する液体、例えば天然油であるホワイトオイル(流動パラフィン)、鉱油、スピンドル油など、あるいは合成油である高級アルキルベンゼン、高級アルキルナフタレン、ポリブテン(分子量約300〜2000)など、また酸化防止剤、耐摩耗剤、油性剤、清浄分散剤などのいわゆる潤滑添加剤を含んだ潤滑油等が用いられる。
【0016】
【発明の効果】
本発明方法により、良好な飽和磁化率を保持しながら、平均粒子径が約5〜10nmと細かくかつその粒度分布の狭いマグネタイト微粒子を効率よく簡便な方法で製造することができる。これによって、磁性流体を始め磁性コロイドの分散安定性が改善され、この微粒子から製造された磁性流体の50%粒子径を小さくすることができる。また、遠心分離や磁気分離による微粒子の精製が不要となるため、微粒子の収率が向上する。
【0017】
このため、本発明方法で得られたマグネタイト微粒子は、磁性流体を始めとする種々のマグネタイトコロイド、トナー、磁気記録材料等の用途に有効に用いられる。
【0018】
【実施例】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0019】
実施例1
FeCl・6HO 270gおよびFeCl・4HO 100gを溶解させた水溶液5000mlの温度を20℃に保持しながら、これに2,2′,2′′−ニトリロトリエタノール N(CHCHOH) 220gを攪拌しながら、徐々に添加した。次いで、28%アンモニア水330mlを添加した後、90℃で60分間加熱熟成し、得られたマグネタイトゾルを脱塩水でデカンテーションする洗浄を数回行った後、マグネタイトゾルを12時間静置し、沈降したマグネタイト微粒子を分離した。
【0020】
このマグネタイト微粒子を透過型電子顕微鏡で写真撮影し、写真に投影されたマグネタイト微粒子の配向がほぼランダムであることから、FERET径(日刊工業新聞社刊「粉体工学の基礎」第285〜7頁、1992年)を微粒子径とし、母集団400に対する数平均を平均粒子径とすると、マグネタイト微粒子の平均粒子径は8.0nmであり、その標準偏差は2.6であった。また、マグネタイト微粒子の飽和磁化率を、振動試料型磁力計で測定すると、70emu/gであった。
【0021】
また、加熱熟成後のマグネタイトゾルに、オレイン酸ナトリウム40gを溶解させた水溶液500mlを加え、90℃で30分間吸着処理を行った。このオレイン酸被覆マグネタイト微粒子を、脱塩水でデカンテーションする洗浄を数回くり返した後、乾燥させた。乾燥後のオレイン酸被覆マグネタイト微粒子10gにトルエン400mlを加え、超音波照射を30分間行った後、マグネタイト微粒子分散液にアセトン400mlを加え、微粒子を凝集沈殿させて、上澄み液を除去した。
【0022】
この微粒子に、高級アルキルナフタレン(ライオン製ポンプオイルS)20gおよびトルエン400mlを加え、超音波照射を30分間行った後、遠心分離(12000G)して沈殿物を除去し、次いでトルエンを除去して磁性流体を得た。硫性流体中のマグネタイト微粒子の凝集径を、光散乱粒度計によって測定したところ、個数50%粒子径は20nmであった。
【0023】
実施例2
実施例1において、FeCl・6HOおよびFeCl・4HOを溶解させた水溶液の保持温度を5℃に変更し、平均粒子径5.5nm、その標準偏差1.9、飽和磁化率62emu/gのマグネタイト微粒子を得、またマグネタイトゾルを用いて調製された磁性流体の個数50%粒子径は18nmであった。
【0024】
実施例3
実施例1において、2,2′,2′′−ニトリロトリエタノール量を22gに変更し、平均粒子径8.2nm、その標準偏差3.1、飽和磁化率73emu/gのマグネタイト微粒子を得、またマグネタイトゾルを用いて調製された磁性流体の個数50%粒子径は23nmであった。
【0025】
実施例4
実施例1において、2,2′,2′′−ニトリロトリエタノールの代りに同量(220g)の1,1′,1′′−ニトリロ−2−プロパノールを使用し、平均粒子径8.3nm、その標準偏差2.8、飽和磁化率72emu/gのマグネタイト微粒子を得、またマグネタイトゾルから調製された磁性流体の個数50%粒子径は23nmであった。
【0026】
比較例1
実施例1において、2,2′,2′′−ニトリロトリエタノールを用いないと、平均粒子径12.0nm、その標準偏差4.0、飽和磁化率75emu/gが得られ、またマグネタイト微粒子から調製された磁性流体の個数50%粒子径は36nmであった。
【0027】
比較例2
実施例1において、鉄塩水溶液への2,2′,2′′−ニトリロトリエタノールとアンモニア水の添加順序を逆にすると、平均粒子径11.8nm、その標準偏差3.9、飽和磁化率75emu/gのマグネタイト微粒子が得られ、またマグネタイト微粒子から調製された磁性流体の個数50%粒子径は36nmであった。
【0028】
比較例3
実施例1において、2,2′,2′′−ニトリロトリエタノールの代りに同量(220g)のドデシルベンゼンスルホン酸を用いると、平均粒子径4.0nm、その標準偏差1.8、飽和磁化率28emu/gのマグネタイト微粒子が得られ、またマグネタイトゾルを用いて調製された磁性流体の個数50%粒子径は17nmであった。
【出願人】 【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝大門1丁目12番15号
【出願日】 平成14年12月3日(2002.12.3)
【代理人】 【識別番号】100066005
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 俊夫

【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子

【公開番号】 特開2004−182526(P2004−182526A)
【公開日】 平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願番号】 特願2002−350764(P2002−350764)