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【発明の名称】 コランダム型結晶相を含むITO膜の製造方法及び該方法で成膜した透明電極用ITO膜
【発明者】 【氏名】上林 和利
【住所又は居所】東京都品川区南大井6丁目25−3 ビリーヴ大森2階 株式会社インターテック内

【要約】 【課題】複雑な工程を経ずに良好なコランダム型結晶相を含むITO膜を形成することができるITO膜の製造方法及び該方法で形成された透明電極用ITO膜の提供。

【解決手段】溶液中の金属成分の比率が1.0mol/l、金属成分中のスズの原子数比が5〜10atm.%になるように、塩化インジウム及び塩化スズからなる原材料をエタノールに溶かした溶液を作製し、常圧下において、200〜500℃に加熱した基板上に、アトマイザーを用いて溶液をスプレー塗布し、溶液の塗布により低下した基板の温度が復帰するまで待機する処理を繰り返し行うものであり、低抵抗、かつ、紫外線照射や高湿度条件における透過率や抵抗値の変化が小さいコランダム型結晶相を含むITO膜を形成することができ、このITO膜を透明電極膜として用いることにより、表示装置や太陽電池等の信頼性を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化インジウム及び塩化スズからなる原材料を溶媒に溶かした所定の成分比率の溶液を作製し、常圧下において、所定の温度に加熱した基板上に前記溶液を塗布してコランダム結晶相を含むITO膜を形成することを特徴とするITO膜の製造方法。
【請求項2】
前記溶液の塗布に際し、アトマイザーを用いて前記基板上に前記溶液をスプレー塗布する工程と、前記溶液の塗布により低下した前記基板の温度が復帰するまで待機する工程とを繰り返し行うことを特徴とする請求項1記載のITO膜の製造方法。
【請求項3】
前記溶液中の金属成分の比率を略1.0mol/lに設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のITO膜の製造方法。
【請求項4】
前記金属成分中のスズの原子数比(Sn/(In+Sn))を略5乃至10atm.%に設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のITO膜の製造方法。
【請求項5】
前記基板の加熱温度を略200乃至500℃に設定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のITO膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一に記載の方法により形成されたコランダム結晶相を含む透明電極用ITO膜。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一に記載の方法により形成されたコランダム結晶相を含むITO膜を透明電極膜として備えることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池、光センサ、CRT、タッチパネル等の透明電極膜として用いられるITO(Indium−Tin−Oxide、スズ添加酸化インジウム)膜の製造方法に関し、特に、コランダム型結晶相を含むITO膜の製造方法及び該方法で成膜した透明電極用ITO膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置が普及しており、これらの表示装置では透明電極膜が不可欠な構成要素である。例えば、液晶ディスプレイでは、対向する基板に形成した透明電極膜に電圧を印加することにより基板間に電界を発生させ、この電界により基板間に狭持した液晶の配向方向を制御してバックライト光の透過特性を変化させる。従って、透明電極膜は可視光に対する透過率が高く、電気的に低抵抗であることや、薄膜の熱的安定性ならびにエッチングによるパターン形成の容易性が求められる。このような透明電極膜としては、酸化インジウム系、酸化スズ系、酸化亜鉛系などが知られているが、比較的容易に高い導電性が得られることから酸化インジウム系の材料にスズを添加したITO膜が広く使用されている。
【0003】
酸化インジウム系を用いたITO膜の結晶構造として、立方晶系ビックスバイト(bixbyte)型の結晶構造が知られている。この結晶構造は蛍石(CaF)型結晶構造の単位格子に似たサブユニットを8個寄せ集めたものであり、CaFの陽イオンサイトにIn3+を配置し、陰イオンサイトの3/4にO2−を配置し、全体としてIn3+とO2−とを2対3の割合で配置して電気的中性を保っている。そして、このInのIn3+のサイトにSn4+が置換してITOが形成されると考えられている。
【0004】
また、陰イオンサイトの1/4には通常O2−は存在せず、この欠損部分の存在により、高圧下では更に高密度の結晶構造に転移することが知られている。このビックスバイト型結晶構造よりも密度の大きい結晶構造は菱面体晶系(六方晶系)コランダム(Corundum)型結晶構造と呼ばれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記ITO膜は、通常、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの物理的成膜法により形成されるが、これらの手段はいずれも真空を必要とするため装置が高価であり、生産性が低く、かつ製造工程が複雑であった。また、物理的成膜法で形成されたITO膜の結晶状態は非晶質(アモルファス:amorphous)構造若しくは立方晶系ビックスバイト型構造であり、特性の優れたコランダム型結晶構造を得ることができないという問題があった。
【0006】
なお、コランダム型結晶構造のITOに関する報告はあるが、いずれも水溶液中で金属水酸化物粉体を合成し、それを加熱(熱分解)して粉体状態のITOを作製する技術に関するものであり、薄膜状態のコランダム型結晶構造のITOの作製に関する報告は無い。
【0007】
例えば、特開平11−157837号公報には、インジウム塩並びにスズ塩を含む水溶液をアンモニアで中和し、反応溶液pHを6.8〜7.5の範囲で制御し、得られた中和殿物を濾過、乾燥、大気中で600〜700℃で仮焼した後、還元雰囲気中350〜450℃で還元焼成する方法が開示されている。上記方法によりコランダム型の結晶構造のITO微粉末を得ることができるが、この方法では、直接、薄膜状のITOを形成することはできず、このITOを透明電極膜として利用するためには、上記方法で得られたITO微粉末を分散させた塗料を塗布して薄膜化しなければならない。
【0008】
ここで、コランダム型結晶構造のITO粉体自体は透明で導電性を有するが、ITO粉体を塗布して得たITO膜は粉体間の接触抵抗が極めて大きいため、膜としての抵抗が大きく、このような粉体のITOを生成する方法では低抵抗な透明電極膜の実現は不可能であった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、複雑な工程を経ずに良好なコランダム型結晶相を含むITO膜を形成することができるITO膜の製造方法及び該方法で形成された透明電極用ITO膜を提供することにある。
【0010】
【問題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のITO膜の製造方法は、塩化インジウム及び塩化スズからなる原材料を溶媒に溶かした所定の成分比率の溶液を作製し、常圧下において、所定の温度に加熱した基板上に前記溶液を塗布してコランダム結晶相を含むITO膜を形成するものである。
【0011】
本発明においては、前記溶液の塗布に際し、アトマイザーを用いて前記基板上に前記溶液をスプレー塗布する工程と、前記溶液の塗布により低下した前記基板の温度が復帰するまで待機する工程とを繰り返し行うことが好ましい。
【0012】
また、本発明においては、前記溶液中の金属成分の比率を略1.0mol/l、前記金属成分中のスズの原子数比(Sn/(In+Sn))を略5乃至10atm.%、前記基板の加熱温度を略200乃至500℃に設定することが好ましい。
【0013】
また、本発明の透明電極用ITO膜は、上記方法により形成されたコランダム結晶相を含むものである。
【0014】
また、本発明の表示装置は、上記方法により形成されたコランダム結晶相を含むITO膜を透明電極膜として備えるものである。
【0015】
このように、スプレー塗布法等の化学的成膜法を用い、材料の比率や加熱温度等の条件を所望の値に設定してITO膜を成膜することにより、低抵抗かつ透明なコランダム型結晶相からなるITO膜又はコランダム型結晶相を含むITO膜を形成することができる。また、本発明の方法で成膜されるコランダム型結晶構造のITO膜は、ビックスバイト型結晶構造のITO膜に比べて紫外線照射や高湿度条件における透過率や抵抗値の変化が小さいため、コランダム型結晶構造のITO膜を透明電極膜として用いることにより、表示装置や太陽電池等の装置の信頼性を向上させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
従来技術において示したように、ITOの結晶構造として大別してビックスバイト型とコランダム型の結晶構造があり、コランダム型の結晶構造の方が電気的特性や光学的特性に優れていると考えられるが、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの物理的成膜法を用いると通常ビックスバイト型の結晶構造となってしまう。この物理的成膜法において、成膜温度を略1000℃程度の高温にすればコランダム構造のITO膜が得られる可能性はあるが、成膜温度が略1000℃程度となると、ガラスやプラスティック等の基板を用いることができず、表示装置として利用することができなくなってしまう。
【0017】
また、先願に記載されたように、インジウム塩並びにスズ塩を含む水溶液から得られる中和殿物を濾過、乾燥、還元焼成する方法を用いればコランダム構造のITO粉体を得ることができるが、直接ITO薄膜を形成することはできず、コランダム型ITO粉体を塗料に分散させてITO膜を形成する方法では、粉体間の電気的抵抗により良好な電気的特性を得ることはできず、透明電極膜として利用することはできなかった。
【0018】
そこで、本願発明者はコランダム型結晶構造のITO膜を形成する方法として、生産性に優れ、ガラスやプラスティック等の基板上に容易に形成することができるスプレー塗布、滴下塗布、静電塗布又は印刷等の化学的成膜法を用い、その成膜条件について鋭意検討した結果、原材料の成分比、基板加熱温度等の条件を所定の範囲に設定することによりコランダム型結晶構造を含むITO薄膜が得られることを実験により確認した。
【0019】
具体的には、所定の金属成分比率、スズ比率となるように塩化インジウムと塩化スズをエタノールなどの有機溶媒に溶かして十分に攪拌して原料となる溶液を作製し、大気中で200℃〜500℃に加熱したホットプレート上にガラス基板をのせ、上記溶液を間欠的にスプレー噴霧することにより、コランダム型結晶構造のITO膜を作製することに成功した。
【0020】
この方法で形成したコランダム型結晶構造のITO薄膜は、従来のビックスバイト型結晶構造のITO薄膜よりも電気的に低抵抗であり、可視光領域で透過率が高く、紫外線の耐性に強く又耐湿性にすぐれた安定な高品質膜であり、優れた導電性と耐久性を有し、表示素子や太陽電池等に最適な透明電極膜であることを確認した。
【0021】
【実施例】
上記した本発明の一実施形態に係るコランダム型結晶相を含むITO膜の製造方法及び該方法で成膜した透明電極用ITO膜の特性について、図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0022】
まず、原材料として、塩化インジウムInCl・3.5HOと塩化第二スズSnCl・5.0HOとを用意する。塩化スズには塩化第一スズSnClと塩化第二スズSnClがあり、コランダム型結晶相の生成率が高い点では塩化第一スズが望ましいが、塩化第二スズであってもコランダム結晶相の生成は可能である。また、塩化インジウムおよび塩化第二スズの含水量は上記の値が適切であり、塩化第一スズの場合の含水量はSnCl・3.0HOが適切であるが、含水量はこれらの値に限定されるものではない。なお、上記塩化物は乾燥状態で結晶水を含み、また潮解性により大気中の水分を吸収するため調整時には水分量が適切になるように配慮が必要である。
【0023】
そして、これらの材料をエタノールに溶解し、マグネチックスターラーを用いて12時間以上撹拌する。この撹拌時間は上記に限定されるものではないが、十分に撹拌して安定な塗布溶液とする必要がある。また、溶媒はエタノールが望ましいが、必要に応じて溶媒中に水を添加することも可能である。水、またはエタノールと水の混合溶媒、その他の有機溶媒、例えば、エタノール、アセトン等も可能であり、塩化物が溶解しない場合には塩酸などの酸を添加してもよい。
【0024】
この時、溶液中の金属成分は1.0mol/l程度(0.8〜1.3mol/l)が好ましく、ビックスバイト型結晶構造のITO膜を作成する場合の約5倍に設定している。この金属成分の比率を大きくするという発想は本願発明者の知見によって得られたものであり、金属成分の比率を従来に比べて格段に大きくすることによって初めてコランダム型結晶構造のITO膜を形成することができる。
【0025】
また、コランダム型結晶相を形成するためにはスズの添加が不可欠であり、低抵抗膜を作成するためには、金属成分中のスズの割合(Sn/(In+Sn)の原子数比)は5〜10atm.%程度が望ましいが、これに限定されるものではなく、概ね40atm.%未満であればよい。
【0026】
この溶液をホットプレート(例えば、コーニングPC−400)を用いて300℃程度に加熱したガラス基板(例えば、無アルカリガラス、コーニング7059、25mm×75mm×0.7mm)上に香水用(噴霧器)アトマイザーを使用して3回噴霧したのち2分間待機し、これを100回反復し約60mlの塗布液を使用してITO膜を形成した。
【0027】
この場合の基板加熱温度は、200℃から500℃の範囲が好適であるが、ビックスバイト型ITO膜を作製する場合の最適温度よりも約50℃から100℃低く設定していることも大きな特徴である。上述したように、物理的成膜法において、成膜温度を略1000℃程度の高温にすればコランダム構造のITO膜が得られる可能性があることから、化学的成膜法においても基板加熱温度を上げる方法が考えられるが、本願発明者は、基板温度が低いと酸化物薄膜が堆積せずに塩化物が堆積し、基板温度が高すぎると原料が基板に到達する前に酸化物粉体が生成すると考えられ、また、基板温度が高い場合には有機溶媒が着火して危険であり、成膜再現性が低いことから、基板加熱温度としては200℃から500℃の範囲に設定している。
【0028】
また、スプレーは、化粧品(香水)などに用いられるアトマイザーを使用した。これは1回あたりの噴霧量が少なく、液滴が小さく、全ての噴霧液体を気化するところに特徴があり、従来の工業用スプレーノズルが大量の液体を大きな液滴で噴霧していたのとは異なる。スプレーノズルとしては、例えば、ショウービドー社製のものが適切であるが、これに限定されるものではない。
【0029】
本実施例では、スプレーノズルと基板の距離は約15cmとしているが、これに限定されるものではない。噴霧を行うと基板温度が1℃から数℃程度低下するため、しばらく待って基板温度が復旧するのを待って次の噴霧を実施した。基板温度復旧のための待機時間は2分程度が望ましいが、これに限定されるものではなく数秒から数分程度である。
【0030】
上記工程により得られた膜は、膜厚570nm、体積抵抗率1.5×10−4Ω・cm、キャリア電子濃度1.1×1021cm−3、キャリア移動度53cm/V・sでn型半導体のコランダム型結晶構造のITO膜を形成することができた。この値は、従来報告されているビックスバイト型結晶構造のITO膜のトップクラスと同等の値であり、簡便安価な本発明の成膜法によって低抵抗のコランダム型結晶構造のITO膜が得られることを実証した。この膜がコランダム型結晶構造であることを確認するためにX線回折を行った。その結果を図1及び図2に示す。
【0031】
図1はコランダム型ITOとビックスバイト型ITOの粉体混合物におけるX線回折図であり、高圧下でコランダム型ITOを従来技術で合成したサンプル例(色材、74[11]、558−562(2001)参照)におけるX線回折ピークを比較する図である(黒塗り三角がビックスバイト型ITO、白抜き三角がコランダム型ITO、無印がSnO)。この図から、コランダム型ITOは22.4°、31.0°、32.6°付近にX線回折ピークが現れ、一方、ビックスバイト型ITOは21.5°、30.6°35°付近にX線回折ピークが現れることがわかる。従って、成膜したITO膜のX線回折ピークから結晶構造を特定することができる。
【0032】
図2は、従来の方法(溶液中の金属成分:0.2mol/l、基板加熱温度350℃)で形成したITO膜と本発明の方法で形成したITO膜のX線回折ピークを比較する図であり、図の縦軸は相対値である。図2より、従来の方法では30.6°と35°近辺にピークが確認されることからビックスバイト型結晶構造のITO膜が得られているのに対し、本発明の方法では、32.6°にX線回折ピークがあり、本発明の方法によりコランダム型結晶構造のITO膜が得られたことが分かる。また、32.6°の回折線の強度が著しく強く、膜が強配向していることがわかる。
【0033】
本発明の方法で得られたITO膜を窒素と水素の混合ガス雰囲気(N:H=99.9:0.1)、600℃中で2時間還元熱処理したところ、体積抵抗率が6.5×10−5Ω・cmに低減し、キャリア電子濃度は1.5×1021cm−2に、ホール移動度は64cm/V・sに増加し、透明電極膜としての電気的特性が大幅に向上することを確認した。表1に従来技術により製造したビックスバイト型ITO膜と上記条件により形成した本発明のコランダム型ITO膜の特性を記載する。
【0034】
【表1】


【0035】
上記表1より、コランダム型ITO膜は従来のビックスバイト型ITO膜に比べて抵抗が低減(抵抗率が低減し、キャリア濃度と移動度が増加)するのみならず、紫外線照射による可視光透過率や抵抗値の変化が小さく、また、高温多湿環境下における耐湿性試験においても可視光透過率や抵抗値の変化が小さいことが分かる。従って、本発明の方法で形成したコランダム型ITO膜は信頼性の観点からもビックスバイト型ITO膜に比べて優れていることが分かる。
【0036】
このように、スプレー法を用いたITO膜の製造方法において、原料となる塩化インジウムと塩化第二スズの比率を、金属成分の比率が1.0mol/l程度、金属成分中のスズの割合(Sn/(In+Sn)の原子数比)が5〜10atm.%程度となるように設定し、200℃〜500℃程度に加熱したガラス基板に間欠的にスプレー噴霧することにより、電気的特性、耐環境性に優れたコランダム結晶を含むITO膜を形成することができることを確認した。このITO膜を透明電極膜として用いることにより、表示装置や太陽電池等の特性及び耐環境性の向上を図ることができる。
【0037】
なお、上記方法では100%の確率でコランダム型結晶構造のITO膜が得られるわけではなく、また、図2において、わずかではあるが35°近辺にX線回折ピークが現れていることからビックスバイト型結晶構造が混在する場合があるが、少なくとも従来の条件で全く得られなかったコランダム型結晶構造を含むITO膜を形成することができることから、上記条件(溶液中の金属成分の比率、金属成分中のスズの割合、基板の加熱温度等)がコランダム型結晶構造のITO膜を得るために重要な項目であると考えられる。
【0038】
但し、スプレー塗布における一回の噴霧量や噴霧速度、待機時間、アトマイザーと基板との距離、溶媒の種類、雰囲気条件等も基板温度に関係し、また、ITO膜が厚くなるほどコランダム型結晶構造が得られやすくなることから、噴霧の繰り返し回数もコランダム型結晶構造の生成に関係していると考えられる。従って、これらの条件を絞り込むことによって更にコランダム型結晶構造のITO膜の成膜確率が向上することが期待される。
【0039】
また、上記実施例ではスプレー塗布による実験結果を示したが、滴下塗布、静電塗布又は印刷等の他の化学的成膜法を用いてもコランダム型の結晶構造のITO薄膜が得られる可能性があり、これらの方法についてもスプレー塗布の場合を参照して条件を設定すればよい。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る透明電極用ITO膜の製造方法によって、従来不可能であったコランダム型結晶構造のITO膜をスプレー法を用いて形成することができることが確認された。
【0041】
すなわち、所定の成分比率(金属成分の比率:1.0mol/l程度、金属成分中のスズの割合(Sn/(In+Sn)の原子数比):5〜10atm.%程度)の塩化インジウムと塩化第二スズ(又は塩化第一スズ)をエタノール等の有機溶媒に溶かし十分に攪拌した溶液を、大気中で200℃〜500℃程度に加熱したガラス基板に間欠的にスプレー噴霧することにより、コランダム型結晶構造のITO膜が得られる。
【0042】
このコランダム型結晶相を含むITO膜は、従来のビックスバイト型結晶構造のITO膜に比較して可視光透過率に関して、紫外線に対する耐久性が10%以上、高温耐湿性についても5%以上強化された。また、紫外線や高温高湿における抵抗の安定性に関してもコランダム型結晶相を含むITO膜は従来のビックスバイト型結晶構造のITO膜に比較して優れており、この方法で得られたITO膜は高信頼度の表示素子また太陽電池等の透明電極として最適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術で合成したサンプルのX線回折図であり、ビックスバイト型ITO膜とコランダム型ITO膜のX線回折ピークを比較するための図である。
【図2】本発明の製造方法により形成したコランダム型ITO膜と従来方法により形成したビックスバイト型ITO膜のX線回折ピークを示す図である。
【出願人】 【識別番号】399127991
【氏名又は名称】株式会社インターテック
【住所又は居所】東京都品川区南大井6丁目25ー3
【出願日】 平成14年8月13日(2002.8.13)
【代理人】 【識別番号】100114672
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 恵司

【公開番号】 特開2004−75427(P2004−75427A)
【公開日】 平成16年3月11日(2004.3.11)
【出願番号】 特願2002−235421(P2002−235421)