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【発明の名称】 酸化銀の熱分解による銀の作製方法、及び酸化銀の熱分解により作成される銀膜、または銀画像
【発明者】 【氏名】井上 智明
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内3丁目4番2号三菱製紙株式会社内
【氏名】三浦 偉俊
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内3丁目4番2号三菱製紙株式会社内
【氏名】兵頭 建二
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内3丁目4番2号三菱製紙株式会社内
【課題】より低温で酸化銀を銀に還元することにより、銀膜や銀画像を得るのに好適な、簡易かつ加工性よく銀を作製する方法を提供する。

【解決手段】有機物、特に環状アミン、水酸基、オキシアルキレン基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩のうちの少なくとも1つを有する有機物と酸化銀の混合物を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化銀と有機物より成る混合物を、熱により酸化銀を銀に還元する、銀の作製方法。
【請求項2】
有機物が環状アミン、水酸基、オキシアルキレン基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項1記載の銀の作製方法。
【請求項3】
有機物が数平均分子量で1000〜20000のポリエチレングリコールである、請求項1記載の銀の作製方法。
【請求項4】
加熱する温度が100〜300℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の銀の作製方法。
【請求項5】
750〜900nmの範囲内に波長を有する近赤レーザーを照射し、光熱変換により加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の銀の作製方法。
【請求項6】
酸化銀と有機物より成る混合物を膜状に加工し、請求項1〜5のいずれかに記載の方法で酸化銀を銀に還元して作製する銀膜。
【請求項7】
酸化銀と有機物より成る混合物で画像を形成し、請求項1〜5のいずれかに記載の方法で酸化銀を銀に還元して作製した銀画像。
【請求項8】
膜状に加工された、酸化銀と有機物より成る混合物に、部分的に熱を加えることで、請求項1〜5のいずれかに記載の方法で酸化銀を銀に還元して作製された銀画像。
【請求項9】
膜状に加工した酸化銀に有機物を加えた後、請求項1〜6のいずれかに記載の方法で酸化銀を銀に還元して作製された銀膜。
【請求項10】
膜状に加工した酸化銀に有機物を加えた後、請求項1〜5、7、8のいずれかに記載の方法で酸化銀を銀に還元して作製された銀画像。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱により酸化銀を還元して銀を得る方法と、その方法により得られる銀膜、または銀画像に関する。
【0002】
【従来の技術】
銀は高導電性材料や記録材料、表面の被覆剤、印刷刷版等に広汎に使われている素材である。その作製法は、化学的に銀を析出させる湿式めっき法や金属銀を直接溶融・付着、または蒸着させる方法、銀の小粒子をペースト状に加工して、所用の位置に塗布する、あるいは印刷によりパターンを形成する、ハロゲン化銀を光還元する等々多くの方法がある。
【0003】
しかし、従来より知られている方法には、様々な欠点がある。例えば、湿式めっき法の場合、洗浄、前処理等の工程が必要で、かつ薬品も多く消費する。銀を直接溶融・付着する場合、銀を融点以上の高温に加熱する必要があり、取り扱いも容易でなく、銀を付着させる対象物も高温に耐えるものに限定されてしまう。また、いずれの方法も銀を選択的に付着させることが困難で、その場合にはエッチング等の補正が必要であり、手数もかかる。
【0004】
蒸着は対象物を幅広く選べ、選択的な付着もマスキング等により比較的容易という利点もあるが、特殊な設備が必要とされる。
【0005】
銀を導電性材料として利用するためによく使われている方法は、銀の小粒子を液体で練り上げて、ペースト状に加工したものである。このような銀ペーストは、印刷によりパターニングすることも容易で、加工性においては優れている。しかしながら、強度を出すには高温で焼結する必要があり、やはり対象物が限定されてしまう。この欠点を改良するため、近年銀のナノ粒子を用いた銀ペーストが提案されている。これはナノメートルのレベルまで微細化した銀粒子を用いることにより、焼結温度を引き下げたものである。しかし、やはり微粒子化にはコストがかかる等の欠点がある。
【0006】
銀を記録材料として用いることは、ハロゲン化銀を感光体とする銀塩写真材料として広く用いられている。特に、DTR(拡散転写反転)法はダイレクト印刷刷版の作成にも用いられ、また導電性画像を得ることももちろん可能である。しかしながら、この方法も現像と定着処理が必要であり、工程も多く、それに伴い処理薬品も多種消費するという欠点がある。
【0007】
有機または無機の銀化合物を熱分解により銀に変換しても、銀を得ることは可能である。中でも酸化銀は還元されやすく、160℃から分解が認められる。また、銀含量が高く、分解の際には酸素ガスしか発生しないので、高純度の銀が効率よく取り出せる。しかし、完全に銀に還元するには300℃以上、好ましくは400℃以上に加熱する必要があり、300℃以下の加熱では導電性は得られない。このため、銀を付着させたい基材が限定されたり、あるいは銀で画像を形成するにあたり熱膨張により画像にひびや狂いが生じることがある。水素気流中で加熱すれば100℃で容易に還元されるが、水素ガスを扱うために、安全のために熱源と水素ガスとを充分に隔離する必要が生じ、設備に気密性が要求され、簡便にはできない。過酸化水素水と接触した場合は常温で銀に還元されるが、反応が激しいためきれいな膜面や画像を作るのには適していない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、より低温で酸化銀を銀に還元することにより、銀膜や銀画像を得るのに好適な、簡易かつ加工性よく銀を作製する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は実験を繰り返し、酸化銀に有機物、とりわけ環状アミン、水酸基、オキシアルキレン基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩ののうちの少なくとも1つを有する有機物を少量添加することにより、300℃以下の比較的低温の熱処理で導電性を持つ銀に還元することができることを見いだし、上記の目的を達成することができた。
【0010】
酸化銀は一般に1価の酸化物(酸化銀(I):AgO)がよく知られている。その他に、2価の酸化物(酸化銀(II):AgOまたはAg)、過酸化銀(Ag)があるが、酸化銀(I)以外は構造が確定されていない、あるいは純粋なものが得られていない等構造的にあまり安定でない。普通に酸化銀と呼ぶ場合は、通常酸化銀(I)のことである。本特許では、酸化銀とは全て酸化銀(I)のことである。
【0011】
酸化銀は導電性は有さないので、銀めっき法や銀ペーストから作った銀とは異なり、部分的に熱を加えることにより選択的に導電性を生じさせるのに好適である。さらに、酸化銀は暗褐色ないし褐黒色で750〜900nmに吸収を有するため、この範囲に波長を有する近赤レーザーを照射することにより、光熱変換が容易に起こる。それ故、有機物の添加により還元温度が低下した酸化銀は近赤レーザーの照射により銀画像を得るのに好適な素材である。
【0012】
有機物と酸化銀は互いに混合してから膜状または画像状に加工しても良いが、どちらかを膜状または画像状に加工してから、もう一方を加えてもかまわない。後者の場合、有機物を酸化銀に加えるには、有機物は液状であることが好ましいが、有機物そのものが液状でなくても、有機物を液体に溶かした状態でも、または有機物の微小粒子を液体を分散した状態でもかまわない。酸化銀を有機物に加える場合も、同様である。また、有機物を酸化銀膜に対し、部分的に加えることにより、酸化銀の銀への還元温度に差を生じさせて、銀画像を形成させることも可能である。
【0013】
本発明で言う有機物とは、実際の加熱により酸化銀が銀に還元されている時点で、酸化銀と共存している有機物を指す。例えば、「酸化銀と有機物の混合物」を希望の形状に加工するためにいったん溶媒等を加えて塗液やペーストの形にすることが好ましいが、その際添加される溶剤等のうち、加熱による酸化銀の還元の発生時には蒸発しているようなものは、酸化銀の還元に寄与していないので、請求項の有機物からは除外される。
【0014】
酸化銀の粒子が加熱またはレーザー照射により銀に還元される際、発熱反応により生成する銀粒子同士が融着し、粒子同士の導通を容易にすると同時に、酸化銀の時よりも接着強度は増大する。そして、導電性の他、金属光沢を持つ等の形態上の変化や、濡れ性等の諸性質も変化するため、記録材料や印刷用刷版として用いることも可能である。この場合、多種の薬品は必要でなく、わずかな工程で必要な画像を作製できる。
【0015】
【発明の実施の方法】
以下、発明の実施のための具体的方法を詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明に用いられる酸化銀については、特に制限はない。代表的な製法は硝酸銀の濃厚水溶液に当量の水酸化ナトリウムの希薄溶液を加え、生じる沈澱を回収することであり、純度の高い酸化銀を得ることができる。しかし、本発明で用いる酸化銀は高純度である必要は必ずしもない。従って、水酸化ナトリウム以外のアルカリ、例えばアミン等を用いてもかまわない。銀の供給源としては、硝酸銀は水溶性が高く、比較的安定であり、安全性も高いため、好ましいが、これに限定はされない。また、酸化銀の粒子径も特に制限はないが、10nmから10μmの範囲のものが好ましい。また、粒子径の調節のため、酸化銀調製時に分散剤等の薬品を添加しても、いっこうにかまわず、得られた酸化銀からこれら薬品を除去しても、あるいは除去せず酸化銀中に混在したまま用いてもどちらでもかまわない。
【0017】
酸化銀の存在はX線回折で示すことができる。図1に示すように、X線回折の測定で2θ値が33°、38°、55°付近にピークが生じる。
【0018】
酸化銀は有機物と混合した状態で加熱することにより、酸化銀単独の場合に比べてより容易に還元されやすくなり、300℃以下の比較的低い温度で充分な導電性を得ることができるようになる。また、還元時の発熱により銀の粒子間に融着が生じ、強度も確保される。酸化銀から還元によって脱離された酸素は有機物の燃焼に消費されるか、あるいは酸素ガスとして放出される。有機物の一部またはすべては燃焼により二酸化炭素や水などに分解されて、これも放出される。一部の有機物は完全には燃焼せずに残留することはあるが、別段差し支えはない。
【0019】
銀の生成は、導電性が出ること以外にX線回折でも示すことができる。図2に示すように、X線回折の測定で2θ値が38°、44°、65°、78°付近にピークが生じる。
【0020】
酸化銀と混合される有機物には、様々なものが使用できるし、また1種類だけ用いても、複数の種類を併用してもかまわない。中でも、環状アミン、水酸基、オキシアルキレン基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩の少なくとも1つを有するものが好適である。具体例としては以下のものがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0021】
1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン、4−ピペリジノピペリジン、1,3−ジ−4−ピリジルプロパン、1,3,5−トリアジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、1,2,4,5−テトラジン、ポリビニルアルコール、β−シクロデキストリン、キチン、キトサン、アミロース、セルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェニルイソ酪酸またはその銀塩、アビエチン酸またはその銀塩、2,4−ジエチルグルタル酸またはその銀塩、ベヘン酸、ベヘン酸銀等。
【0022】
ポリエチレングリコールの中でも、数平均分子量が1000〜20000であるものは、加熱処理温度を低めに設定できるので、さらに好ましい。
【0023】
酸化銀と有機物は、互いに粉体の状態で混合されてもよく、あるいは溶媒に分散または溶解された状態でも混合されてもかまわない。酸化銀が粉体、または溶媒に分散された状態では、銀と有機物の間のイオン交換により、有機銀塩が生じる余地はなく、本発明は有機銀塩を熱分解する方法とは自ずと異なるものである。
【0024】
酸化銀と有機物の混合比は特に制限はないが、酸化銀100部に対し有機物が0.1〜100部が好ましく、0.5〜50部ならばさらに好ましい。
【0025】
酸化銀と有機物の混合物を実際に熱処理する場合の温度範囲については特に制限はなく、酸化銀が金属銀に変換される温度よりさらに高温に上げても、別に差し支えはない。しかし、酸化銀単独でも充分高い温度にあげてやれば銀に還元されるので、発明の趣旨からいえば100〜300℃が、エネルギー消費や銀を付着させる基材の保護等の観点から好ましい。加熱する時間も0.1秒から数時間まで、必要な導電性またはその他の特性が得られるならば任意で差し支えない。
【0026】
酸化銀と有機物の混合物は、750〜900nmの範囲内に波長を有する近赤レーザーを照射することによっても、銀に変換することができる。これは酸化銀が750〜900nmに吸収を有することにより、この範囲に波長を有する近赤レーザーを照射することにより光熱変換が発生し、さらに有機物の添加が酸化銀の還元を容易ならしめているためである。照射されるレーザーのエネルギー量は、必要な導電性またはその他の特性が得られるならば任意で差し支えない。
【0027】
本発明の酸化銀と有機物の混合物を使用する際には、溶媒の他に必要に応じて他の薬品、例えば、分散性向上のための界面活性剤、液性改良のための増粘剤、pH調整剤、消泡剤、バインダーとしての高分子化合物、熱硬化剤、増感色素、等々を混ぜてもよい。これらの薬剤の添加は、酸化銀が銀に還元される前であればいつでもよい。酸化銀や有機物そのものを調製する段階から、必要に応じて添加してもよい。
【0028】
酸化銀と有機物の混合物は、使用時の形状に特に制限はない。粉体のまま希望する形状に加圧成形してもよく、大量の溶媒に分散または溶解して塗液として、あるいは少量の溶媒で練り上げてペースト状にして、希望する基材上の全面、あるいは一部に塗布、または付着させて用いてもよい。しかしながら、本発明の酸化銀と有機物の混合物は、酸化銀の還元時に酸素や有機物の燃焼ガスが発生するため、ガスの逃げ道を確保するために表面積は広い方が好ましい。とりわけ好適なのは、膜状に加工することである。
【0029】
膜状に加工する方法としては、酸化銀と有機物の混合物を塗液に加工し、塗布、噴霧等により任意の基材上に膜を形成することがあげられる。また、他の方法としては、インク状に加工して基材上に塗布することがあげられる。この時の塗布方法としては、具体的にはスクリーン印刷やオフセット印刷等があげられる。膜の厚みには特に制限はない。基材の材質、形状には特に制限はない。具体例としては、紙、アルミ板や銅板等金属板、PETフィルム等高分子フィルム、ガラス、セラミックス、石板等があげられる。
【0030】
酸化銀と有機物の混合物の膜を形する方法として、酸化銀と有機物の混合物を塗液、インク等に加工した後これを用いて膜形成を行う方法以外に、酸化銀の膜を形成後、これに有機物を含浸させることもできる。有機物は任意の液体に溶解または分散した状態で、酸化銀膜を浸漬する、酸化銀膜に塗布する、あるいは噴霧する等の方法で酸化銀膜に有機物を染みこませて、酸化銀と有機物の混合物膜を調製することも可能である。また、有機物が液体の場合は、そのまま酸化銀への含浸に使用してもかまわない。あるいは、逆に有機物の膜を先に調製し、これにその有機物の良溶媒に分散した酸化銀を塗布または噴霧して、酸化銀と有機物の膜状物を形成してもかまわない。
【0031】
また、酸化銀膜を形成後、後から有機物を含浸させる際、液体の含浸を選択的に行うことによっても、酸化銀と有機物の混合物による画像を形成することができる。有機物の含浸部は銀に還元されるが、非含浸部には還元が起こらない、あるいは不十分な加熱条件にすることにより、銀画像を得ることができる。選択的に含浸部を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、酸化銀と有機物の混合物を塗液状に加工し、これを画像部を切り抜いたマスクで覆った基材に塗布または噴霧後、マスクを除去する方法があげられる。さらに、インクジェット方式を用いれば、基材を覆うマスクは不要で、かつ高精細な画像を得ることができる。画像形成後、酸化銀のまま残される分については、洗浄等の手法により除去してもしなくても、どちらでもかまわない。
【0032】
さらに、酸化銀と有機物の混合物で基材上に画像状の膜を形成し、これを熱またはレーザー照射により銀膜に変換することにより、銀画像を形成することもできる。画像を形成する方法としては、特に制限はなく、上記と同様の手法を例としてあげることができる。また、ペースト状に加工し、インクとして印刷方式で画像を形成することも、高精細な画像が得ることができ、好ましい。印刷方法には特に制限はないが、適切な膜厚を得やすいスクリーン印刷は特に好ましい。
【0033】
酸化銀と有機物の混合物から銀画像を得る方法としては、さらに、膜状に形成した酸化銀と有機物の混合物を選択的に加熱することがあげられる。選択的に加熱する手法としては、画像パターンを形成した金属塊を加熱して熱スタンプとして用いる方法、感熱方式の熱ヘッドを用いる方法等があげられる。とりわけ、近赤レーザーを照射して、光熱変換により加熱する方法は高精細な画像を得ることができるため、特に好ましい。画像形成後、酸化銀のまま残される分については、洗浄等の手法により除去してもしなくても、どちらでもかまわない。
【0034】
【実施例】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における「部」「%」はすべてそれぞれ「質量部」「質量%」を示す。
【0035】
比較例1
酸化銀(和光純薬工業(株)製特級)100部を、蒸留水150部とガラスビーズ150部とともにペイントコンディショナーで粉砕・分散した。得られた分散液を塗液とし、ワイヤーバーを用いてスライドグラスに固形分塗抹量30g/mになるように塗布した。乾燥後、褐黒色の塗布面の導通をテスターで調べたが、導通は全く見られなかった。
【0036】
この酸化銀を塗布したスライドグラスを電気炉に入れ、5℃/分の昇温速度で300℃まで加熱した。300℃で30分保持後、放冷により常温まで冷ましてから電気炉より取り出した。
【0037】
電気炉より取り出したスライドグラスの塗布面は、褐黒色のままであった。この塗布面の導通を再びテスターで調べたが、やはり導通は全く見られなかった。さらに、塗布面のX線回折を測定したが、図3に示したように、酸化銀の存在を示す結果しか得られなかった。
【0038】
実施例1
酸化銀100部、1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン(東京化成工業(株)製)5部を、蒸留水150部とガラスビーズ150部とともにペイントコンディショナーで粉砕・分散した。得られた分散液を塗液とし、比較例1と同様に、スライドグラスに塗布した。これを保持温度を200℃に変えた以外は比較例1と同様に電気炉で加熱処理を行った。加熱処理後のスライドグラス塗布面は褐黒色から白色に変化し、その導通をテスターで調べたところ、導通が生じていた。さらに、塗布面のX線回折を測定したが、図4に示したように、酸化銀のパターンは得られず、銀の存在を示す結果が得られた。
【0039】
実施例2〜8
実施例1の1,3−ジ−4−ピペリジルプロパンと加熱処理温度を、表1に示した化合物と温度にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。加熱処理後の塗布面はいずれも褐黒色から白色に変化し、導通をテスターで調べたところ、表1に示したようにいずれの試料にも導通が生じていた。
【0040】
実施例9
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製クラレポバール224)5部を蒸留水100部中で加熱撹拌し、溶解させた。冷却後,蒸留水を追加し、全量150部とした。これに酸化銀100部を加え、ガラスビーズ150部とともにペイントコンディショナーで粉砕・分散した。得られた分散液を塗液とし、実施例1と同様に、スライドグラスに塗布した。これを保持温度を250℃に変えた以外は実施例1と同様に電気炉で加熱処理を行った。加熱処理後のスライドグラスの塗布面は褐黒色から白色に変化し、導通をテスターで調べたところ、導通が生じていた。
【0041】
実施例10
水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル(共栄社化学(株)製エポライト4000)5部を酸化銀100部、トルエン150部を加え、ガラスビーズ150部とともにペイントコンディショナーで粉砕・分散した。得られた分散液を塗液とし、実施例1と同様に、スライドグラスに塗布した。これを保持温度を250℃に変えた以外は実施例1と同様に電気炉で加熱処理を行った。加熱処理後のスライドグラスの塗布面は褐黒色から白色に変化し、導通をテスターで調べたところ、導通が生じていた。
【0042】
【表1】


【0043】
実施例11
酸化銀100g、ポリエチレングリコール4000(純正化学(株)製一級)5部を、蒸留水150部とガラスビーズ150部とともにペイントコンディショナーで粉砕・分散した。得られた分散液を塗液とし、ワイヤーバーを用いてPET製OHPシートに固形分塗抹量30g/mになるように塗布した。この銀組成物塗布シートに波長830nmの半導体レーザー(出力500mW)で1mmのラインアンドスペースの書き込みを行ったところ、レーザーの照射部が褐黒色から薄茶色に変化し、1mmのラインアンドスペースのパターンを肉眼で確認することができた。導通を確認したところ、薄茶色の部分は導通があったが、褐黒色のままの部分は導通がないままであった。
【0044】
実施例12
硝酸銀の20%水溶液1000部に対し、水酸化ナトリウム2%水溶液2350部をホモミキサーで強撹拌下添加し、酸化銀粒子の懸濁液を得た。生じた酸化銀を吸引濾過で回収し、真空乾燥後、乳鉢で粉砕して、粉体の酸化銀を得た。このようにして得た酸化銀100部に、ポリエチレングリコール600(純正化学(株)製一級)20部と1−メトキシ−2−プロパノール10部を加え、自転・公転式撹拌脱泡機(型式AR−250、(株)シンキー製)により、公転2000rpm、自転800rpmの条件で2分間撹拌混合して、ペースト状に調製した。このペーストを用い、アルミナ・セラミックス板(100mm×100mm×25mm)上にスクリーン印刷によりプリント回路パターンを作製した。実施例1と同様に、電気炉で200℃にて加熱処理を行った。加熱により、暗褐色のパターンは灰白色に変化した。テスターで導通を確認したところ、パターンに沿って導通が生じていることが確認できた。
【0045】
実施例13
比較例1に用いた酸化銀分散液を塗液とし、ワイヤーバーを用いて白色PET(パナック(株)製ルミラーE−22、厚み188μm)に固形分塗抹量30g/mになるように塗布した。この酸化銀塗布シートに、インクジェットシステムを用いて画像パターン状に、ジエチレングリコールの5%水溶液を吹き付けた。これを、加熱温度を200℃に設定した乾燥機中で10分間処理した。加熱処理により、ジエチレングリコールを吹き付けた部分のみが褐黒色から灰白色に変化し、吹き付けた画像パターンが明瞭に現れた。さらに、テスターで導通を調べたところ、灰白色に変化したところのみに導通が生じていた。
【0046】
【発明の効果】
有機物、特に環状アミン、水酸基、オキシアルキレン基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩のうちの少なくとも1つを有する有機物と酸化銀の混合物を用いることにより、100〜300℃の比較的低い加熱温度や近赤レーザーにより、酸化銀より簡便に銀を作製できるようになった。この方法は銀膜や銀画像を得るのに特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸化銀(AgO)のX線回折図である。
【図2】銀(Ag)のX線回折図である。
【図3】300℃で加熱処理した酸化銀のX線回折図である。
【図4】1,3−ジ−4−ピペリジルプロパンを混合して、200℃で加熱処理した酸化銀のX線回折図である。
【出願人】 【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内3丁目4番2号
【出願日】 平成14年7月29日(2002.7.29)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−58466(P2004−58466A)
【公開日】 平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願番号】 特願2002−220148(P2002−220148)