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【発明の名称】 |
高機能ハイス工具 |
| 【発明者】 |
【氏名】加藤 範博 【住所又は居所】富山県富山市不二越本町一丁目1番1号株式会社不二越内 【氏名】園部 勝 【住所又は居所】富山県富山市不二越本町一丁目1番1号株式会社不二越内 【氏名】北島 和男 【住所又は居所】富山県富山市不二越本町一丁目1番1号株式会社不二越内 |
【課題】イオン窒化層とセラミック硬質膜の密着性が良く耐摩耗性に優れ、生産性の向上、工具費コストの低減を図ることができる高機能ハイス工具を提供。
【解決手段】高速度工具鋼、合金工具鋼からなる工具母材にアークイオンプレーティング装置を用いて、成膜前に行うイオンボンバード工程で、同時に10〜0.1Paの真空中でプラズマ窒化処理を施し、さらに前記アークイオンプレーティング装置をそのまま用いて、10〜0.1Paの真空中で直接セラミック硬質膜を形成する。前記プラズマ窒化処理された窒化層の厚さは20μm〜80μmであり、硬質被覆層直下の表面の窒化層の硬さが前記工具母材の硬さより50HV〜250HV上昇しており、窒化層の硬さが窒化表面から内部に向けて漸次減少している。前記セラミック硬質膜の厚さは2〜10μmである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高速度工具鋼、合金工具鋼からなる工具母材にアークイオンプレーティング装置を用いて、成膜前に行うイオンボンバード工程で同時に10〜0.1Paの真空中でプラズマ窒化処理を施し、さらに前記アークイオンプレーティング装置をそのまま用いて、10〜0.1Paの真空中で前記プラズマ窒化処理された窒化層の上に連続してアークイオンプレーティング法で直接セラミック硬質膜を形成し、かつ、 前記プラズマ窒化処理された窒化層の厚さは20μm〜80μmであり、硬質被覆層直下の表面の窒化層の硬さが前記工具母材の硬さより50HV〜250HV上昇しており、窒化層の硬さが窒化表面から内部に向けて漸次減少しており、 前記セラミック硬質膜は、Ti、V、Cr等の4a族、5a族、6a族の元素と、Si、Al、Bの1種以上の組み合わせからなる窒化物、炭化物、炭窒化物、酸化物の単層または2層以上の多層膜であり、前記セラミック硬質膜の厚さは2μm〜10μmであることを特徴とする高機能ハイス工具。 【請求項2】 前記プラズマ窒化処理された窒化層上に成膜されたセラミック硬質膜はロックウェル硬度計Cスケールを用いて押圧した場合に生じる圧痕を100倍の倍率で観察した結果が、前記圧痕の外周1mm以上の範囲で膜と工具母材との間で剥離が認められない程度の密着性を有することを特徴とする請求項1記載の高機能ハイス工具。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、エンドミル、ドリル、ホブなどの高速度工具鋼、合金工具鋼を母材とした鋭利な刃を有する切削工具表面にプラズマ窒化を行い、連続的にセラミック硬質膜を被覆した高機能ハイス工具に関する。 【0002】 【従来の技術】ハイス工具に適用される窒化処理、または反応ガスである窒素の負グロー放電を利用して窒化処理を行ういわゆるイオン窒化処理・プラズマ窒化処理の目的は、工具表面に窒化層を形成することで表面硬さを上げて耐摩耗性を向上させることにあるが、ビッカース硬度は600HV〜1200HV程度であり、近年の工具を使用する時の過酷な高速切削条件下では十分な硬度とはいえない。一方ではイオンプレーティング装置の普及でTiNやTiAlNなどの、ビッカース硬度が2000HV以上の硬さのセラミック硬質膜を工具表面に被覆して高速条件下での工具の寿命を大幅に向上させることが可能となった。このセラミック硬質膜被覆技術は表面改質技術として一般的に行われているものであり、工具の寿命を延長させるためには非常に有効な手法であるが、さらに工具の寿命を延ばすために、上記の窒化処理技術とセラミック硬質膜形成技術を組み合わせた技術の開発が進んでいる。 【0003】 かかる従来の窒化処理技術とセラミック硬質膜形成技術を組み合わせた技術としては、例えば特許文献1、特許文献2のように、イオン窒化処理技術とPVD法(Physical Vapour Deposition:物理蒸着)によるセラミック硬質膜の形成を複合的に行うことによって密着性と耐久性に優れた硬質膜を金属部材に形成する方法や、さらに特許文献3のように高周波電源を用いることでイオン窒化にともなう脆化層の発生を防ぎ、その上に連続的にセラミック硬質膜の形成を行うことによって窒化層上のセラミック硬質膜の密着性の改善を図った例がある。 このように鋭利な刃を持つ切削工具に適用する場合は、窒化層に異常層(窒化により形成される化合物層で白層ともいう)や酸化層がないこと、窒化層の表面硬さ分布の減少勾配が適切であること、窒化層とセラミック硬質層との密着が確保されていること及びセラミック硬質膜の厚さと窒化層の厚さのバランスが取れていること、が重要な因子となる。 【0004】 【特許文献1】特開平8−35075 図1、〔0006〕〔0023〕〔0024〕 【特許文献2】特開2000−5904〔0041〕〔0042〕 【特許文献3】特開平5−98422 図1〜図4、〔0008〕〜〔0011〕 【0005】 【解決しようとする課題】しかしながらこれらの技術は、窒化処理とセラミック硬質膜を形成する技術が製造過程において分割されているため生産上の品質面、特に窒化層上に形成するセラミック硬質膜の密着品質に大きく影響する。例えば特許文献1の〔0006〕では、窒化層を形成するためのイオン窒化装置とセラミック硬質膜を形成するためのイオンプレーティング装置(PVD装置)とは「同一装置、あるいは別の装置」で行うと記載するが、特許文献1、図1では両者を同一の装置で行う開示はなく、特許文献1、特許文献2では、両者は異なる真空装置で行っており、2つの全く別の装置で2工程の生産するのは費用面から不利であるし、また窒化処理後に一度大気中に晒されるため窒化層上の硬質膜の密着性が悪く、膜の剥離につながる要因ともなるため好ましい方法とはいえない。また特許文献3では、同一真空装置で窒化処理と硬質膜形成処理を連続で行うことを特徴としているが、窒化処理にともなう脆化層の発生を防ぐために窒化処理には高周波電源を用いており、さらにセラミック硬質膜形成には直流電源を用いるなど脆化層のない良質な窒化層を得るための工夫はあるが、窒化層形成とセラミック硬質膜形成は連続的に処理されているとはいえ、イオン窒化の処理条件においてもイオン化形成のための真空度が(0.1〜8Torr)と比較的低く、窒化処理工程を一度終了した後に、再度高真空領域までの真空引きが必要であり、イオン窒化処理とセラミック硬質膜処理は分割した工程となっているため不連続処理による密着不良が懸念される。またイオンプレーティング装置におけるイオン窒化用の高周波電源とセラミック硬質膜用の直流電源の複数電源の準備が必要であることから処理プロセスは複雑になり、安定した品質を確保する点で実用的とはいえない。一方でイオン窒化で形成した窒化層についても切削工具に適用する場合は細心の注意が必要であり、特にエンドミルのような鋭利な刃を持つ工具については窒化層の厚さが切削中のコーナ刃欠けの原因になるため、セラミック硬質膜の厚さとともに耐摩耗性のある高機能ハイス工具を製作するうえでは重要な因子となる。しかしながら上記引用例にはいずれもその範囲は明確に規定されていないため、実際の鋭利な刃を持つ工具、特にエンドミルに適用する場合には窒化処理の効果は保証されるものではない。 一方特許文献2では、窒化層を施した硬質膜被覆工具のチッピング対策として、窒化層に対して応力集中を起こさないために予め工具刃先に面取り状の切れ刃を施すことを提案しており、工具種類に応じて切れ刃の幅を細かく規定している。しかし切れ刃への面取り作業は複雑な工具形状に対しては施すことが難しく、主に手作業となるため量産に対応しきれるものではまく実用的とはいえない。 【0006】 本発明の課題は、イオン窒化層とセラミック硬質膜の密着性が良く、窒化層に異常層、白層又は酸化層がなく、窒化層の表面硬さ分布の減少勾配を有し、イオン窒化層とセラミック硬質膜の厚さのバランスがとれた、従来のセラミック被覆工具に比べて耐摩耗性に優れ、生産性の向上、工具費コストの低減を図ることができる高機能ハイス工具を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】このため本発明は、高速度工具鋼、合金工具鋼からなる工具母材にアークイオンプレーティング装置を用いて、成膜前に行うイオンボンバード工程で同時に10〜0.1Paの真空中でプラズマ窒化処理を施し、さらに前記アークイオンプレーティング装置をそのまま用いて、10〜0.1Paの真空中で前記プラズマ窒化処理された窒化層の上に連続してアークイオンプレーティング法で直接セラミック硬質膜を形成し、 かつ、前記プラズマ窒化処理された窒化層の厚さは20μm〜80μmであり、硬質被覆層直下の表面の窒化層の硬さが前記工具母材の硬さより50HV〜250HV上昇しており、窒化層の硬さが窒化表面から内部に向けて漸次減少しており、 前記セラミック硬質膜は、Ti、V、Cr等の4a族、5a族、6a族の元素と、Si、Al、Bの1種以上の組み合わせからなる窒化物、炭化物、炭窒化物、酸化物の単層または2層以上の多層膜であり、前記セラミック硬質膜の厚さは2〜10μmであることを特徴とする高機能ハイス工具としたものである。 【0008】 【発明の効果】本発明はかかる構成により、高速度工具鋼、合金工具鋼からなる工具母材にアークイオンプレーティング装置を用いて、成膜前に行うイオンボンバード工程で同時に10〜0.1Paの真空中でプラズマ窒化処理を施し、さらに前記アークイオンプレーティング装置をそのまま用いて、10〜0.1Paの真空中で前記プラズマ窒化処理された窒化層の上に連続してアークイオンプレーティング法で直接セラミック硬質膜を形成したので、イオン窒化層とセラミック硬質膜の密着性の良さを大きく改善し、窒化層に異常層、白層又は酸化層がないものとなった。かつ硬質被覆層直下の表面の窒化層の硬さが前記工具母材の硬さより50HV〜250HV上昇しており、窒化層の硬さが窒化表面から内部に向けて漸次減少しているので窒化層の表面硬さ分布の減少勾配を有し、プラズマ窒化処理された窒化層の厚さは20μm〜80μmであり、セラミック硬質膜の厚さは2〜10μmであり、イオン窒化層とセラミック硬質膜の厚さのバランスがとれたものとなった。このため、従来の一般ハイス工具の寿命を飛躍的に向上させることができ、従来のセラミック被覆工具に比べて耐摩耗性に優れ、生産性の向上、工具費コストの低減に極めて有効である。 【0009】 鋭利な刃を持つ切削工具として必要な窒化層の厚さと硬質膜層の厚さとしては、前記プラズマ窒化を施した硬化層の厚さは20〜80μmであり、前記セラミック硬質膜の厚さは2〜10μmであることが必要である。プラズマ窒化による硬化層の厚さは20μm以下では硬化層の効果は期待できず、80μm以上では硬化層が厚すぎるために窒化層上のセラミック硬質膜とともに切削中、特にエンドミル加工においては鋭利なコーナー部で刃こぼれを起こす危険性があるため上記の範囲に限定した。好ましくは24〜50μmである。またセラミック硬質膜では2μ以下では切削における耐摩耗性の効果は期待できず、10μ以上ではセラミック硬質膜層で微少チッピングが発生しやすくなるためこの範囲に限定した。好ましくは2.4〜5.0μmである。 【0010】 好ましくは、前記プラズマ窒化層上に成膜されたセラミック硬質膜はロックウェル硬度計Cスケールを用いて押圧した場合に生じる圧痕を100倍の倍率で観察した結果が、前記圧痕の外周1mm以上の範囲で膜と工具母材との間で剥離が認められない程度の密着性を有するようにすることにより、イオン窒化層とセラミック硬質膜の密着性の良さを確認した。 【0011】 【発明の実施の形態】本発明の実施の形態の高機能ハイス工具は、高速度工具鋼、合金工具鋼からなる工具母材に、まず窒化層とセラミック硬質膜との密着性を確保するために、プラズマ窒化処理とセラミック硬質膜処理を、従来からある一般的なイオンプレーティング装置で連続して行う方法を考案したものである。図1に代表的なアーク方式によるイオンプレーティング装置(アークイオンプレーティング装置)の概略図を示す。イオンプレーティング処理において、セラミック硬質膜の成膜直前に、真空装置内で表面清浄化を目的として通常に行われる不活性ガスによる負グロー放電を利用して行うアルゴンイオンボンバード処理工程に、通常は表面清浄を行った後すぐにコーティング工程に移行してセラミック硬質膜の成膜を行うが、コーティング工程に移行する前の表面の清浄な状態で10〜0.1Paの真空中で窒化すれば異常層や酸化層ができにくく最も効率のよい窒化処理を施すことができ、かつ10〜0.1Paの真空中でセラミック硬質膜を連続して被覆すれば窒化層との密着性も格段に向上させ、耐久性に優れた工具を提供するものとなった。 【0012】 プラズマ窒化層とセラミック硬質膜層の間に酸化層が存在する場合、例えば一般的な窒化装置で窒化処理を行った後に、PVD装置でその窒化した製品をコーティング処理する時は、高温で大気に曝された窒化表面に形成された酸化層の上にセラミック硬質膜が成膜されるため膜の密着性は大きく低下する。またイオン窒化(プラズマ窒化)のような真空中で処理をしたとしても、一度大気に曝せば窒化表面は酸化されセラミック硬質膜との密着は低下する。一方本発明においては、窒化処理と硬質膜処理を大気に曝されることなく10〜0.1Paの真空中で連続して行うため、窒化層上に酸化層が形成されることがなく表面が正常な状態で密着の良いセラミック硬質膜を得ることができる。また本発明の重点課題である窒化層とセラミック硬質膜層の密着性については、切削工具において不可欠な要因である窒化層と硬質膜層の密着性の判定方法を具体的に示し、その基準を特定した。以下に本発明品の実施の形態の内容についてより詳細に説明する。 【0013】 工具取り付け治具3に高速度工具鋼、合金工具鋼からなる図示しない工具を装着して真空装置1の内部を排気口11から図示しない真空ポンプを用いて所定の真空度(10〜0.1Pa)にした後、(真空排気工程)。その後加熱用ヒータ12で工具取り付け治具3に装着した工具部材を400〜550℃まで加熱して保持する(加熱工程)。そしてアルゴンガス導入口6からアルゴンガスを導入して電子銃2とアノード4との間で電子銃用直流電源9で印加してアルゴンガス放電によるイオンボンバード処理工程で同時に10〜0.1Paの真空中でプラズマ窒化を施す。プラズマ窒化処理を施した後で、そのままアークイオンプレーティング装置1を用いて、アークイオンプレーティング法で連続して、10〜0.1Paの真空中で硬化層の上に直接Ti、V、Cr等の4a族、5a族、6a族の元素と、Si、Al、Bの1種以上の組み合わせからなる窒化物、炭化物、炭窒化物、酸化物の単層または2層以上の多層膜であるセラミック硬質膜を形成する。切削工具に適用するプラズマ窒化による硬化層の厚さは20〜80μmであり、プラズマ窒化を施した硬化層は硬質被覆層直下の表面から内部の深さ方向に向かって漸次に減少している。またセラミック硬質膜の厚さは2〜10μmである。窒化層上に成膜されたセラミック硬質膜は、ロックウェル(Cスケール)硬度計を用いて押圧した場合に生ずる圧痕を100倍の倍率で観察した結果が、前記圧痕の外周1mm以上の範囲で膜と工具母材との間で剥離が認められない程度の密着性を有することを確認することが切削工具において重要となる。本発明品であるプラズマ窒化セラミック硬質膜の構成を図2に示す。また請求範囲のセラミック硬質膜下のプラズマ窒化層の硬さ分布を図3に示す。 【0014】 つぎに、本発明のプラズマ窒化セラミック硬質膜被覆工具において、窒化層の構成とセラミック硬質膜の厚さについて上記のように特定した理由について説明する。プラズマ窒化による硬化層の厚さは20μm以下では硬化層の効果は期待できず、80μm以上では硬化層が厚すぎるために、窒化層上のセラミック硬質膜とともに切削中、特にエンドミル加工においては鋭利なコーナー部で刃こぼれを起こす危険性があるため上記の範囲に限定した。好ましくは24〜50μmである。また窒化層の硬度減少勾配が大きく急な場合は工具母材とセラミック硬質膜直下の窒化硬さとの差が大きくなり、刃先に掛かる応力集中に耐えきれず窒化層からのチッピング(微少な刃欠け)が起こる。またセラミック硬質膜の厚さは2μm以下では切削における耐摩耗性の効果は期待できず、10μm以上ではセラミック硬質膜層での微少チッピングが発生しやすくなるためこの範囲に限定した。好ましくは2.4〜5.0μmである。また密着性の判定として実施するロックウェル硬度計を用いて行う剥離判定試験は、図4に示すように、ドイツ連邦共和国では規格化(VD13198 Coating of cold forging tools)されており、現在硬質被覆膜の密着判定方法として簡易的に、HF5とHF6が不良と、行うことができ、しかも信頼性の高い方法であるため本発明方法による工具の硬質膜の密着判定方法として採用し、研究結果として密着性と切削試験結果との対応から、その判定基準として請求項2で記載した。 【0015】 〔実施例1〕本発明の高機能ハイス工具を実施例1で具体的に説明する。高速度工具鋼(以下ハイスと称する)SKH59相当材を母材とした外径6mmの2枚刃の無処理エンドミルを図1のアークイオンプレーティング装置の工具取り付け治具3に設置して真空容器1を所定の真空度まで真空排気し、加熱用ヒータ11で450℃に工具本体を加熱して1時間保持した。その後、真空容器内にアルゴンガス導入口から真空圧力3Paになるまでアルゴンガスを導入し、電子銃2とアノード4の間で負グロー放電によるアルゴンプラズマを発生させた状態で、取り付け治具3に負電圧200Vを印加してイオンボンバード処理により60分間工具表面を清浄化した。アルゴンイオンボンバード終了後、アルゴンガスとの流量バランスを取りながら10〜0.1Paの真空になるまで窒素ガスを導入して、負電圧を10〜500Vの範囲で印加し、中真空領域でのプラズマ窒化処理を所定時間行った。プラズマ窒化完了後は金属蒸発源(ターゲット)に取り付けた、例えばTi合金にアーク放電を起こしてTiを蒸発させ、10〜0.1Paの真空中でアルゴンガスと窒素ガスの流量を所定の比率に設定してアークイオンプレーティング方式により代表的なセラミック硬質膜であるTiNを約3μm成膜した。またTiAlNを成膜する時にはTiAlターゲットを用いて同様に成膜した。所定の膜厚を得た後は全ての電源とガスを停止して真空容器内が180℃以下になるまで冷却してから工具を取り出した。同様な方法で各種の窒化層とセラミック硬質膜の組合せを製作し、窒化層の硬さ分布とセラミック硬質膜の厚さを調べた結果を表1に示す。 【0016】 またプラズマ窒化の上に成膜されたセラミック硬質膜の密着性を評価するため、一般的に行われているロックウェル硬度計を用いた圧痕剥離試験を行った。この試験法は標準的なロックウェル(Cスケール)硬度計を用いて行うものであり、ダイヤモンド圧子を工具表面に押圧した場合に生ずる圧痕を100倍の倍率で観察した結果が、前記圧痕の外周1mm以上の範囲で膜と工具母材との間で剥離が認められない程度の密着性であれば工具の切削に十分耐えうるだけの密着性を有すると判断するものである。例えば密着性の劣るものはダイヤモンド圧子の剪断力により密着の程度に応じて圧痕の周囲に硬質被膜の剥離が生じるため密着性の判断が出来る。このためセラミック硬質膜の密着性の一般的な評価方法として良く知られている、図4に示す、ロックウェル硬度計圧痕剥離判定基準(HF5とHF6が不良)により本発明品の高機能ハイス工具の判定を行ったところ、プラズマ窒化上のセラミック硬質膜の密着性は全てHF1以上の範囲で前記圧痕の外周1mm以上の範囲で膜と工具母材との間で剥離が認められない程度で密着性で申し分のないものであった。この結果、本発明によるプラズマ窒化層には化合物による脆弱層がなく、セラミック硬質膜が密着性良く工具母材に付いていることが確認できた。本発明品と比較品のロックウェル硬度計による圧痕写真を図5に示す。(a)に示す本発明品(No8)は圧痕周囲から膜の剥離は認められなかった(密着判定HF1)。しかし(b)に示す、プラズマ窒化後に一度大気に曝し、その後セラミック硬質膜を被覆した比較品(No7)は圧痕全周に膜の剥離が生じており判定結果はHF6・不良で窒化層上のセラミック硬質膜の密着性は良好でない。 【0017】 〔ハイスエンドミル切削試験〕 本発明品であるプラズマ窒化セラミック硬質膜被覆工具の効果を確認するため以下の切削条件でハイスエンドミルによる切削比較試験を行った。 切削工具:外径6mm×柄径8mm 2枚刃 ハイスエンドミル(材質SKH59相当材) 切削条件:ドライ(エアブロー) 加工方法:側面切削(ダウンカット) 切削速度:12.4m/min(660min−1) 送り速度:0.027mm/刃(35mm/min) 切り込み:aa=6mm ar=1.5mm 切削長:1m 被削材:SKD11(硬さ180HB) 本発明品と比較品とのハイスエンドミル切削試験結果を表1に示す。 本発明品(No8〜12)は比較品(No1〜7)に比べてエンドミル切削後のVB摩耗(逃げ面摩耗量)およびVC摩耗(コーナ摩耗量)が小さく、異常摩耗も見られないことから、プラズマ窒化処理で形成された窒化層の上に、連続的に成膜されたセラミック硬質膜のとの密着性は良好であり、窒化層の表面硬さの上昇による摩耗量の低減が図られている。比較品の特徴として窒化層が深いNo2は刃先にチッピング(刃欠け)現象を引き起こしており、深い窒化処理は鋭利な工具に対して逆効果になる。一方で窒化層が浅いNo3はセラミック硬質膜による耐摩耗効果だけで窒化層による効果が認められない。またセラミック硬質膜の密着性の判定結果がHF6であった試料No7は剥離先行型の摩耗を引き起こし、大きな摩耗となった。 【0018】 【表1】
【0019】 切削試験で用いた代表的なエンドミルの切り刃を断面で切断し、セラミック硬質被覆層直下の窒化層表面から内部の深さ方向に向かって硬さの分布を調べた結果を図6に示す。比較品である窒化が過剰なNo2はエンドミル刃のコーナ部がチッピング(刃欠け)している。また窒化不足のNo5は窒化の効果はほとんど見られない。 【0020】 〔実施例2〕ハイスドリル切削試験 実施例1と同様な工程で製作した本発明品と、本発明を施していないセラミック硬質膜のみを被覆したもの(比較品)との切削性能比較を行った。 ハイスドリル切削試験条件 切削工具:外径6mm (溶解ハイス:SKH51相当材、粉末ハイス:SKH40相当材) 切削条件:水溶性エマルジョン 加工方法:19mm通し穴 切削速度:48m/min(2550min−1) 送り速度:410mm/min(0.162mm/rev) 被削材:S50C(硬さ212HB) 【0021】 本発明品と比較品との比較試験結果を表2に示す。 一般的なハイスドリルに本発明品を施したもの(本発明品)と、本発明をほどこしていない、セラミック硬質膜のみを被覆したもの(比較品)と比べて本発明品は約1.7倍の寿命であった。 【0022】 【表2】
【0023】 〔本実施例の効果〕上記の実施例から、本発明品はハイス材を母材とするドリル、エンドミル、タップ、ホブ工具、金型等に適用することにより、従来の一般溶解ハイス工具の寿命を飛躍的に向上させることができる。その効果は高価な高級粉末ハイス工具の持つ寿命に匹敵、かつそれ以上の性能を示しており、本発明品の特徴である、母表面から内部に向かってのなだらかな窒化硬さの傾斜効果と、同一装置内での連続処理による、窒化層とセラミック硬質膜の密着性の良さ、及びセラミック硬質膜の厚さと窒化層の厚さの良好なバランスが大きく作用している。以上の様に本発明品のプラズマ窒化セラミック硬質膜被覆工具は、従来のセラミック被覆工具に比べて耐摩耗性に優れ、生産性の向上、工具費コストの低減に極めて有効である。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施の形態の高機能ハイス工具が製造されるアークイオンプレーティング装置の概略側面断面図。 【図2】本発明の実施の形態の高機能ハイス工具のプラズマ窒化セラミック硬質膜の構成を示す説明図。 【図3】本発明の実施の形態の高機能ハイス工具のプラズマ窒化硬質膜の窒化硬さ分布範囲を示す説明図。 【図4】ロックウェル硬度計によるセラミック硬質膜の密着性比較のための圧痕剥離判定基準を示す模式図。 【図5】ロックウェル硬度計によるセラミック硬質膜の密着性比較のための拡大写真。 【図6】本発明方法で製造された製品のプラズマ窒化層の表面からの深さと硬さの分布を示すグラフ。 【符号の説明】 1・・真空装置 2・・電子銃 3・・工具取り付け治具 4・・アノード 5・・金属蒸発源 6・・アルゴンガス導入口 7・・窒素ガス導入口 9・・電子銃用直流電源 10・・基板用直流電源 11・・排気口 12・・加熱用ヒータ 13・・アーク放電源
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005197 【氏名又は名称】株式会社不二越 【住所又は居所】富山県富山市不二越本町一丁目1番1号
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| 【出願日】 |
平成15年3月25日(2003.3.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077997 【弁理士】 【氏名又は名称】河内 潤二
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| 【公開番号】 |
特開2004−283995(P2004−283995A) |
| 【公開日】 |
平成16年10月14日(2004.10.14) |
| 【出願番号】 |
特願2003−82157(P2003−82157) |
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