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【発明の名称】 可視光応答性バナジン酸ビスマス微粉末の新規合成法、新規な可視光応答性バナジン酸ビスマス微粉末からなる光触媒および可視光応答性バナジン酸ビスマス微粉末光触媒を用いた浄化方法
【発明者】 【氏名】甲谷 繁

【氏名】工藤 昭彦

【氏名】中垣 良一

【氏名】徳村 邦弘

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素の存在下にNHVOとBi(NOを反応させる工程を含むことを特徴とする可視光応答性のBiVO微粉末を製造する方法。
【請求項2】
前記反応工程を60℃〜95℃の範囲で実施することを特徴とする請求項1に記載の可視光応答性のBiVO微粉末を製造する方法。
【請求項3】
前記反応工程が90℃±5℃の温度で最長12時間の熟成工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の可視光応答性のBiVO微粉末を製造する方法。
【請求項4】
請求項1で製造されたBiVO微粉末から成る可視光応答性光触媒。
【請求項5】
請求項2で製造されたBiVO微粉末から成る可視光応答性光触媒。
【請求項6】
請求項3で製造されたBiVO微粉末から成る可視光応答性光触媒。
【請求項7】
可視光応答性のBiVO微粉末光触媒を用いて少なくとも可視光を含む光の照射下で内分泌攪乱物質を含有する被浄化系を処理して前記内分泌攪乱物質を光分解することを特徴とする浄化方法。
【請求項8】
可視光応答性のBiVO微粉末光触媒として請求項3、4または5に記載の可視光応答性光触媒を使用することを特徴とする請求項7に記載の浄化方法。
【請求項9】
被浄化系をアルカリ性とすることを特徴とする請求項7または8に記載の浄化方法。
【請求項10】
被浄化系に酸素を溶存させることを特徴とする請求項7、8または9に記載の浄化方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可視光応答性のバナジン酸ビスマス(BiVO)微粉末の改良された製造方法、前記方法により得られた改善された可視光応答性を示す新規な可視光応答性バナジン酸ビスマス微粉末光触媒、および可視光応答性バナジン酸ビスマス(BiVO)微粉末光触媒を利用して、少なくとも可視光下に有機系環境汚染物質、例えばノニルフェノール、ビスフェノールA、天然エストロゲンなどの低濃度で内分泌攪乱作用をする環境汚染物質を可視光分解して環境、特に水系を浄化する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールA、天然エストロゲンなどの化学物質は環境ホルモン作用があることが発見されて以来、その浄化処理が問題とされている。中でも、エストロゲン類は、前記ホルモン活性においても、また、水処理設備での除去が難しいことにおいても、非常に問題とされている。すなわち、前記女性ホルモン活性のエストロゲン類は、前記ノニルフェノール、ビスフェノールAに比べ、約1000倍から100000倍強い活性を有していると報告されている〔松井三郎:環境技術,vol.27,No.9,p665〜675(1998年)、文献1〕。また、前記女性ホルモン類は下水処理施設においても、その除去率は80%以下と低いだけでなく、活性汚泥を脱水する時に得られる脱水濾液から高濃度の女性ホルモン類が検出されることから、女性ホルモン類は一次的に生物吸着した状態で除去されているだけで、活性汚泥中の微生物による実際の分解率はかなり低いと推定されるとの報告もある〔松井三郎:環境技術,vol.27,No.9,p665〜675(1998年)文献2、建設省都市局下水道部流域下水道課「下水道における内分泌攪乱化学物質に関する調査・中間報告について」、平成11年6月22日、文献3〕
また、前記ノニルフェノール(NP)は、下水処理過程において工業用非イオン性界面活性剤であるノニルフェノールポリエトキシレート(NPEO)のバクテリアによる生分解を経て生成することが報告されている〔Giger, W., et al, Science 225. 623 (1984)、文献4〕。また、NPは下水処理の生物処理工程で活性汚泥に取り込まれて除去されるが、生分解して無毒化することが出来ず、活性汚泥中に蓄積しているとの報告もある〔Tateda, M., et al, Water Sci. Technol. 44.
101 (2001)、文献5〕。
【0003】
こんな中で、PelizzettiらはTiOを用いて光分解によりNPおよびNPEOをCOにまで完全酸化されることを示した〔Pelizzetti, E.,et al,Environ.Sci.Technol.23.1380 (1989)、文献6〕。
また、前記女性ホルモン類を含有する液体に前記物質の酸化分解力を有する物質、例えば酸化チタン(TiO)や酸化亜鉛(ZnO)に代表される光触媒材料により発生する酸素、およびオゾン、過酸化水素水、次亜塩素酸などの酸化剤、紫外線やエキシマレーザー等から発する酸化力を有する光、及び女性ホルモン特有のステロイド構造を分解したり酸化することができる微生物等を接触させることにより、女性ホルモン類をホルモン活性のない物質に分解することが報告、または提案されている〔(特開2001−149929、平成13年6月5日公開(文献7)、2001−198584、平成13年7月24日公開(文献8)〕。
【0004】
文献8では、排水中に含まれる前記女性ホルモン類等の環境汚染化合物の問題を取り除くために、酸化チタン光触媒の優れた有機物分解活性に着目し、前記女性ホルモン類の処理に酸化チタン光触媒を活用することを提案している。また、静岡工業技術センターの鈴木光彰、松本豊等は研究報告45の報告24(2001年12月1日)では、ガラスビーズにゾルゲル法で酸化チタン薄膜を形成した光触媒を用いてメチレンブルー、非イオン系界面活性剤のポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(PONE)の光分解を試みており、特に後者の分解機構として、初期のPONEの細分化段階と、その後の二酸化炭素までへの分解からなる2段階分解を推測している。
その他、2002年3月の日本化学会第81春季年会において、日高久夫等は二酸化チタンを用いた内分泌攪乱物質の光分解のメカニズムなどを発表している。
このように光触媒を用いて、内分泌攪乱物質等の環境汚染物質を分解する研究も盛んに行われている。
【0005】
一方、光触媒については、太陽の光をクリーンなエネルギーを製造するのに利用しようという観点から、水を光分解して水素および/または酸素を製造ための触媒として利用することの研究も活発になされている。ところで、太陽光の約95%は可視光であることを考えると、前記酸化チタン光触媒は紫外光で活性であるが、可視光に応答しないので太陽光の利用効率の観点から十分とはいえないという問題がある。そこで、前記問題を改善するために可視光応答性の多くの新規な光触媒が提案されている。そのような中に、BiVOを水の光化学的分解反応の触媒として使用することが既に報告されている(Catalysis Letters 53(1998).229−230、文献9)。また、従来のBiVO製造方法は、前記文献9に記載されているようにBi(関東化学(株)、純度98%)およびNHVO(関東化学(株)、純度99%)からなる混合物をアルミナるつぼ中で、大気圧下において700℃または900℃で5時間焼成することによって合成されていた(固相法)。しかし、前記BiVOの製造方法はエネルギー的にも、製造装置的にもコストパフォーマンスがあまり良くない、および得られたBiVOの活性も高くないという問題があった。
【0006】
そこで、工藤等は、前記問題点を改善したBiVOの製造方法として、層状バナジン酸アルカリと硝酸ビスマス五水和物とを水中で室温において撹拌して反応させBiVO結晶を製造するソフト溶液プロセスを提案している〔特開2001−2419、平成13年1月9日公開、文献10〕。文献10の製造プロセスで得られたBiVO結晶は、前記焼成工程を経て合成されたBiVOよりも高い光触媒活性を持つものが得られるという利点がある。しかしながら、(1)BiVOを製造するのに三日間という長時間を必要とする、および(2)出発原料の構成元素であるアルカリ金属イオンが微量不純物として残留する恐れがある、という問題がある。また、BiVOについては、水の光分解における420nmより長波長の可視光下での活性効果については検討されているが、前記内分泌攪乱物質等を光分解する活性については未検討である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の課題は、前記問題が改善された効率的な可視光活性を有するBiVOを製造する方法を提供することであり、第2の課題は、前記内分泌攪乱物質に有用な可視光活性を示す新規光分解用触媒を提供することである。
前記第1の課題を解決するために、従来、触媒調製において、下記式1の反応工程による、尿素の加水分解により放出されるアンモニアによるpHの上昇を利用した均一沈殿法がしばしば用いられる。
(NHCO + HO → 2NH + CO↑ 式1
そこで,前記ソフト溶液プロセスの2つの問題を改善するために、前記方法を利用することを発想し、尿素を用いた均一沈殿法によるBiVOの合成を試みた。その結果、約6時間という短時間で可視光応答性があるBiVOを合成できること、また、得られたBiVOのX線回折と拡散反射スペクトル測定から、欠陥が少ない結晶性のよいBiVO粉末が得られることがわかり、前記課題の1を解決することができた。
【0008】
また、前記第2の課題は、光触媒BiVO微粉末を、前記内分泌攪乱物質であるノニルフェノール(NP)、ビスフェノールA、天然エストロゲンを含む水中に分散し、400nmより長波長の疑似太陽光を照射して、前記可視光活性下での前記内分泌攪乱物質の光分解性を調べたところ、ノニルフェノール(NP)は太陽光照射並びに可視光照射により分解できること、光分解は水中の溶存酸素の影響を受けること、天然エストロゲンは可視光で分解できること、また、ビスフェノールAの可視光分解においては、特に、NaOHを溶媒としたアルカリ条件下で分解反応が進むことを確認でき、前記第2の課題を解決することができた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、尿素の存在下にNHVOとBi(NOを反応させる工程を含むことを特徴とする可視光応答性のBiVO微粉末を製造する方法である。好ましくは、前記反応工程を60℃〜90℃の範囲で実施することを特徴とする前記可視光応答性のBiVO微粉末を製造する方法であり、より好ましくは、前記反応工程が90℃±5℃の温度で最長12時間の熟成工程を含むことを特徴とする前記可視光応答性のBiVO微粉末を製造する方法である。
本発明の第2〜4の発明は、前記各製造方法によって得られたBiVO微粉末から成る可視光応答性光触媒である。
【0010】
本発明の第5は、可視光応答性のBiVO微粉末光触媒を用いて少なくとも可視光を含む光の照射下で内分泌攪乱物質を含有する被浄化水を処理して前記内分泌攪乱物質を光分解することを特徴とする浄化方法である。好ましくは、可視光応答性のBiVO微粉末光触媒として前記第2、3および4の発明の可視光応答性光触媒を使用することを特徴とする前記被浄化系の浄化方法であり、より好ましくは、被浄化系をアルカリ性とするおよび/または酸素を溶存させることを特徴とする前記各浄化方法である。
【0011】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
I.本発明の新規なBiVO微粉末の製造方法において、熟成時の温度および時間は重要な条件である。例えば、熟成時間が短いと、正方晶系(tetragonal)の結晶のもの多く存在し、熟成時間が長くなるにつれて純粋な単斜晶系(monoclinic)の結晶のものが得られる。したがって、熟成時間は温度とも関連するが最長12時間、好ましくは2−12時間であり、2−3時間でも目的化合物が得られる。また、熟成時の温度も重要であり90±5℃が好ましい。
II.添加する尿素の量は得られるBiVO微粉末の特性にほとんど影響しない。
添加量は原料のNHVOが1.40gとBi(NO・5HOが5.82gに対し5−10gの範囲とすればよい。
【0012】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、この例示により本発明が限定的に解釈されるものではない。
得られた光触媒の特性の測定装置の説明;
XRDは、理学社製のMiniFlexを用いた。
BETは、Coulter社製のSA3100Bを用いた。
拡散反射スペクトル測定は、日本分光社製のUbest V570を用いた。
光源;酸素発生光源は420nm以下の波長の光をカットオフするフィルターとXeランプを組み合わせたもの。または内分泌撹乱物質を分解する光源は400nm以下の波長の光をカットオフするフィルターとXeランプを組み合わせたものである、あるいは、ORIEL社製の68820型とエアマスフィルターAM2Dを組み合わせた擬似太陽光を放射する光源(太陽光シミュレーター)。太陽光シミュレーターのスペクトルを図12に示す。
【0013】
実施例1
新規なBiVO光触媒粉末の製造方法
2モル/Lの硝酸にNHVOと(99.0%)とBi(NO・5HO(関東化学99.9%)を 0.12モル/L溶解させた水溶液をそれぞれ調製した。これらの水溶液(100mL)を混合した後,尿素を溶解させ、ホットスターラー上で90℃(363K)に加熱した。尿素量や熟成時間を変えて合成した。得られたBiVO沈殿を濾過洗浄乾燥した。得られた粉末をXRD(RIGAKU;RINT−1400)を用いて同定した。拡散反射スペクトル計(DRS)(JASCO;Ubet V−570)を用いて吸収スペクトル特性を調べた。BET法による表面積測定(COULTER;SA−3100)を行った。
光触媒的酸素生成反応は閉鎖循環系内で行った。パイレックス反応管に触媒1gと犠牲試薬AgNO水溶液(0.05モル/L、320mL)を入れ、可視光(>420nm)を照射した。光源には、波長420nm以下の光をカットするフィルター(L42)を備えた300WXeランプを用いた。生成した酸素は,ガスクロで定量した。
【0014】
図1に90℃(363K)での熟成時間を変えた〔(a)1.5時間、(b)2時間、(c)3時間、(d)6時間、(e)8時間、(f)12時間〕ときに得られた粉末のX線回折パターンを示す。いずれもシーライト(灰重石)(scheelite)構造を持つBiVOであることがわかった。これらのXRDピークの鋭さは、この水溶液中での低温合成において,結晶性のよい粉末が得られることを示している。
BET表面積は、0.3m−1であった。熟成時間が長くなるにつれて、18.8、35、46°のピークの分裂が明瞭になった。このことは、熟成時間が短いときには正方晶系(tetragonal)の結晶構造を持ったものが得られるのに対して、長くなるにつれて純粋な単斜晶系(monoclinic)の結晶構造を持ったものが得られることを示している。
表1に,合成条件を変えて得られたBiVOの可視光照射下での酸素生成反応活性を示す.室温でも長時間反応させることによりBiVOは得られたが、90℃(363K)で3時間以上熟成して得られたBiVOが、高い光触媒活性を示した.熟成時間が短いBiVOの活性が低いのは、前記図1で示されたように不活性な正方晶系のBiVOが混ざっているためである。一方,光触媒活性は、尿素の添加量の影響を受けなかった。
【0015】
【表1】


【0016】
図2は、熟成を含む反応時間を8時間かけて、90℃で合成して得られたBiVO(連続線で示す)と827℃(1100K)での固相法で合成されたBiVOの拡散反射スペクトルである。固相法で合成したものでは吸収端が裾を引いている(点線で示す)。これは、高温合成のため構成元素の一部が揮発し、欠陥を生成していることを示唆している。これに対して、本発明の水溶液プロセスにより合成されたBiVOは、可視光領域に急な吸収端を持つスペクトルが得られた。この吸収端から見積もられたバンドギャップは、2.37eVであった。このことから、尿素を用いた加水分解により欠陥が少ない結晶性のよいBiVO粉末が、前記先行技術の水溶液プロセスに比べて、短時間で合成できることがわかった。
因みに、光触媒TiO粉末(点線)と光触媒BiVO微粉末(連続線)の拡散反射スペクトルを図11に示す。
【0017】
図3は、尿素5gを用いて熟成を含む反応時間を8時間かけて合成で得られたBiVO粉末(8時間熟成)を用いて犠牲試薬AgNO水溶液の光触媒的(λ>420nmの可視光における)酸素生成反応の経時変化を示す。効率良く酸素が光触媒的に生成していることがわかった。すなわち、可視光応答性の光触媒活性があることを示している。
【0018】
実施例2
可視光応答性光触媒BiVO粉末のNPの光分解特性
1,太陽光照射によるNPの光分解特性
50mLのナスフラスコに、NaOH(ナカライテスク,試薬特級)水溶液(pH=11.6)に溶かしたNP(関東化学,99.5%)2.0×10−4Mの試料溶液25mLを入れ、光触媒BiVO0.2gを加えた。1時間暗室で攪拌した後、そのまま攪拌しながら太陽光〔2001年10月15日(金沢、快晴、21−23℃)の太陽光、線量;照射直前:90.6mW/cm、照射停止直後:98.4mW/cm〕を照射した。
NPの濃度変化を図4に示す。NPの光分解が確認できる。
【0019】
2,太陽光シミュレーターによる反応
NaOH(ナカライテスク,試薬特級)水溶液(pH=13.0)に溶かしたNP(関東化学,99.5%)2.0×10−4Mの試料溶液、または蒸留水に溶かしたNP(関東化学,99.5%)2.0×10−4Mの試料溶液25mLを85mLの円筒型石英セルに入れ、光触媒BiVOまたはTiO0.2gを加えて、1時間暗室で攪拌させた後、そのまま攪拌しながら太陽光シミュレーター〔ORIEL 68820型,エアマスフィルター;AM2D、線量;26mW/cm〕で反応させた。その放射光スペクトルを図12に示す。
NPの濃度変化を図5に示す。図5における空気飽和(酸素分圧 0.2atm)させた場合の光触媒BiVO(◆)、光触媒TiO(◇)、と酸素飽和(酸素分圧 1atm)させた場合の光触媒BiVO(▲)、光触媒TiO(△)の結果から、NPの光分解が確認でき、かつ、光触媒BiVO活性は溶存酸素に影響を受けることが分かる。また、酸素飽和の条件下では、光触媒BiVOのほうが光触媒TiOよりも分解が速く、活性が高いのは明らかである。
【0020】
3,2×10−4MのNP溶液に可視光応答性光触媒BiVO微粉末を分散し、光照射をしないで攪拌だけを行ったときの濃度変化(■)、400nmより長波長の可視光を照射したときの濃度変化(●)、および光触媒を加えないで光照射した場合の濃度変化(▲)を図6に示す。この結果から、可視光応答性光触媒BiVO微粉末が400nm以上の可視光で作用して、NPを分解することは明らかである。
【0021】
4,可視光応答性光触媒BiVO微粉末を分散した2×10−4MのNP溶液における、可視光照射(400nmより長波長)による光触媒BiVO微粉末のNP分解に対する酸素の効果を調べるために、空気飽和(■)、酸素飽和(▲)、窒素飽和(◆)の条件でのNPの濃度変化を検討した。その結果を図7に示す。それぞれの条件における分解速度定数を表2に示す通り算出した。酸素の効果は明らかである。
【0022】
【表2】


【0023】
実施例3
可視光応答性光触媒BiVO微粉末のビスフェノールAの光分解特性
図8は、ビスフェノールA(関東化学,環境分析用)を水またはNaOH(pH12.8)水溶液に1.0×10−4M溶かした溶液に、可視光応答性光触媒BiVO微粉末を分散させ、これに可視光(>400nm)(水銀灯の線量は30mW/cm)を照射したときのビスフェノールAの濃度変化を示す。なお、原料の濃度はHPLC法でバレロフェノンを内部標準とした検量線から求めた。溶媒に水を用いた時はなかなか反応が進まなかったのに対し、NaOHを加えた場合には、光分解反応が活発であり、光照射7時間後にビスフェノールAの濃度は、照射前の約1/5まで減少していた。前記光分解は、1次の反応速度式に従うとして、分解速度定数をもとめ、表3にまとめた。このことより、溶媒のpHの違いで分解速度が大きく変化することがわかった。
【0024】
【表3】


【0025】
実施例4
可視光応答性光触媒BiVO微粉末を用いたエストロゲン(17β−エストラジオール,エストロン,エストリオール)の可視光による分解
エストロゲンをpH12.8の水に溶かした溶液にBiVO微粉末を分散し、これに可視光(>400nm)を照射したときのエストロゲンの濃度変化図9に示す。なお、エストロゲンの濃度はHPLC法でバレロフェノンを内部標準とした検量線から求めた。光照射8時間後の濃度はいずれも約1/4となり、可視光で3つの天然エストロゲンを分解できることが明らかとなった。分解は、1次の反応速度式に従うとして、速度定数をもとめ、逆数をとることにより、寿命を求めた。これらの値を表4にまとめた。これより、エストラジオール,エストロン,エストリオールの反応速度は、多少の違いはあるもののほとんど変わらないことがわかった。すなわち、これらエストロゲンの分解では17位での置換基の変化による影響は、ほとんど受けないということが確認できた。
【0026】
【表4】


【0027】
実施例5
可視光応答性光触媒BiVO微粉末を用いた17β−エストラジオールの太陽光による分解
図10は晴天下で光触媒BiVO微粉末を加えた場合と、加えなかった場合の17β−エストラジオールの濃度変化である。光触媒BiVO微粉末が存在する場合、2時間後に溶液中の17β−エストラジオールはほぼ完全に消失している。一方、光触媒BiVO微粉末が存在しない場合は、若干の減少はみられるものの分解速度はかなり遅いことがわかる。従って、17β−エストラジオールは、太陽光照射によるBiVO微粉末の光触媒作用により効率よく分解できることが明らかとなった。
【0028】
【発明の効果】
以上のことから、可視光応答性BiVO微粉末光触媒、特に本発明により製造された新規な可視光応答性BiVO微粉末光触媒は、可視光を利用して被浄化系、特に被浄化水系に存在する内分泌攪乱物質であるノニルフェノール、ビスフェノールA、天然エストロゲン等を光分解できるという、現在の社会で非常に問題とされている環境汚染物質を浄化する手段として貢献すること大である。特に、新規なBiVO微粉末の製造方法は効率よく、太陽光の利用効率を改善できる可視光応答性の光触媒を合成できることも、実用可能性が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】熟成時間を変えたXRDパターン;(a)1.5時間、(b)2時間、(c)3時間、(d)6時間、(e)8時間、(f)12時間
【図2】BiVOの拡散反射スペクトル;点線は尿素を用いて製造したもの、連続線は固相反応で得られたもの
【図3】本発明で製造されたBiVOの420nmより波長可視光下における犠牲試薬AgNO水溶液からの酸素発生光触媒活性(300Wキセノンランプ)
【図4】実施例2の可視光応答性光触媒BiVO粉末を用いた太陽光照射(平成13年10月15日,金沢,快晴,21−23℃)によるNPの光分解特性
【図5】11 太陽光シミュレーターを用いたNaOH水溶液(pH=13.0)に溶かしたNPの分解特性;空気飽和(酸素分圧 0.2atm)させた場合の光触媒BiVO(◆)、光触媒TiO(◇)、酸素飽和(酸素分圧 1atm)させた場合の光触媒BiVO(▲)、光触媒TiO(△)
【図6】光触媒BiVO微粉末のNP分解に対する可視光照射の効果
【図7】可視光照射による光触媒BiVO微粉末のNP分解に対する被浄化水中の酸素の効果
【図8】実施例3のビスフェノールAを水またはNaOH(pH12.8)水溶液に1.0×10−4Mを溶かした溶液中での光触媒BiVO微粉末のビスフェノールAの光分解特性
【図9】実施例4の可視光応答性光触媒BiVO微粉末を用いたエストロゲン(17β−エストラジオール,エストロン,エストリオール)の可視光による分解特性
【図10】晴天下(平成13年10月30日,金沢,快晴,16−21℃)での光触媒BiVO微粉末による17β−エストラジオールの分解特性
【図11】光触媒TiO粉末(点線)と光触媒BiVO微粉末(連続線)の拡散反射スペクトル
【図12】太陽光シミュレーターの放射光スペクトル
【出願人】 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
【出願日】 平成14年6月21日(2002.6.21)
【代理人】 【識別番号】100110168
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 晴視

【公開番号】 特開2004−24936(P2004−24936A)
【公開日】 平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願番号】 特願2002−181107(P2002−181107)