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【発明の名称】 野球用またはソフトボール用バットおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】岡戸 雄司
【住所又は居所】大阪府大阪市住之江区南港北1丁目12番35号 美津濃株式会社内

【要約】 【課題】バットの重量増加、製造工程の煩雑化および製造コストの増加を招くことなくテーパ部の強度を十分に確保した、打球部が積層構造の野球用またはソフトボール用バットおよびその製造方法を提供する。

【解決手段】野球用またはソフトボール用バットは、打球部3と、打球部3よりも外径が小さいグリップ部5と、打球部3とグリップ部5との間に設けられ、該打球部3から該グリップ部5に向かって外径が減少するテーパ部4とを含む金属製の外管パイプ6aと、外管パイプ6aの打球部3に挿入および接着された内管パイプ6bとを備え、外管パイプ6aはテーパ部4に該外管パイプ6aの断面積が最大となる部分を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打球部(3)と、前記打球部(3)よりも外径が小さいグリップ部(5)と、前記打球部(3)と前記グリップ部(5)との間に設けられ、該打球部(3)から該グリップ部(5)に向かって外径が減少するテーパ部(4)とを含む外管(6a)と、
前記外管(6a)に挿入された内管(6b)とを備え、
前記外管(6a)は前記テーパ部(4)に前記外管(6a)の断面積が最大となる部分を有する野球用またはソフトボール用バット。
【請求項2】
前記外管(6a)は金属製であり、
前記テーパ部(4)の断面積は、前記打球部(3)と前記テーパ部(4)との境界部から前記グリップ部(5)に向かって増加し、その後減少する、請求項1に記載の野球用またはソフトボール用バット。
【請求項3】
打球部(3)と、前記打球部(3)よりも外径が小さいグリップ部(5)と、前記打球部(3)と前記グリップ部(5)との間に設けられ、該打球部(3)から該グリップ部(5)に向かって外径が減少するテーパ部(4)とを含む外管(6a)を備えた野球用またはソフトボール用バットであって、前記打球部(3)の外径が56.0mm以上57.0mm以下、前記外管(6a)の断面積が215mm以上230mm以下であり、
前記グリップ部(5)の外径が20.5mm以上24.0mm以下、前記外管(6a)の断面積が120mm以上300mm以下であり、
前記テーパ部(4)の前記外管(6a)の最大断面積が360mm以上410mm以下である野球用またはソフトボール用バット。
【請求項4】
打球部(3)と、前記打球部(3)よりも外径が小さいグリップ部(5)と、前記打球部(3)と前記グリップ部(5)との間に設けられ、該打球部(3)から該グリップ部(5)に向かって外径が減少するテーパ部(4)とを含む外管(6a)を備えた野球用またはソフトボール用バットであって、前記打球部(3)の外径が66.0mm以上67.0mm以下、前記外管(6a)の断面積が410mm以上500mm以下であり、
前記グリップ部(4)の外径が21.5mm以上24.0mm以下、前記外管(6a)の断面積が140mm以上300mm以下であり、
前記テーパ部(4)の前記外管(6a)の最大断面積が550mm以上620mm以下である野球用またはソフトボール用バット。
【請求項5】
管状部材(6a)の一端側の厚みを減じる工程と、
前記管状部材(6a)の他端側の厚みを減じて、前記管状部材の一端と他端との間に最大の厚みの部分を形成する工程と、
前記管状部材(6a)にスエージング加工を施してバット形状の外管(6a)を作製する工程と、
前記外管(6a)内に内管(6b)を挿入する工程とを備えた野球用またはソフトボール用バットの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、野球用またはソフトボール用バットおよびその製造方法に関し、特に、打球部が積層構造で形成された野球用またはソフトボール用バットおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
野球用またはソフトボール用バットとしては、従来より、たとえば木製、チタン、チタン合金、アルミニウム合金などを含む金属製、カーボンファイバー製、グラスファイバーなどを含む繊維強化プラスチック製など様々な素材によるものが供給されている。
【0003】
金属製バットにおいては、一定外径、一定肉厚のパイプ(素管)を、肉厚分布に若干の変化を持たせたテーパ管に加工した後、肉厚を調整するスピニング加工、およびパイプをバット形状に成形するスエージング加工を経て、本体の長さ方向において外径および肉厚の変化を有するバットが形成される。
【0004】
また、反発性能を向上させる観点から、打球部からグリップ部の全体を形成する外管パイプを薄肉に形成し、打球部の内側にさらに薄肉の補強パイプを挿入した積層構造のバットが従来から採用されている。
【0005】
上記のような積層構造のバットとしては、たとえば、特開平11−137752号公報に掲載されたものなどが挙げられる。
【0006】
特開平11−137752号公報においては、バット本体の打球部の中空部内に、金属や繊維強化プラスチックなどの素材から選択される第1および第2管状挿入部材を挿入固着し、打球部補強管層を形成するとともに、バット本体の打球部の肉厚および第1管状挿入部材と第2管状挿入部材の肉厚を各々薄く形成した野球用またはソフトボール用バットが開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−137752号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような積層構造バットにおいては、以下のような問題があった。
【0009】
特開平11−137752号公報で開示されたバットにおいては、打球部を含むバット本体を比較的薄肉で形成し、該打球部に管状挿入部材を挿入することによって、バットの反発性能を向上させるとともに、打球部の補強を行なっている。
【0010】
バット本体には、上記の打球部からグリップ部に向かって本体の外径が減少する部分(テーパ部)が形成される。該テーパ部の位置および形状については、バットの重量増加の抑制および応力集中緩和の観点などから決定されている。
【0011】
ここで、テーパ部は、比較的薄肉に形成されたバット本体の単層構造で形成されている。この部分は、打者が打球部を外して打撃した場合に大きな衝撃を受ける可能性があるため、上記の単層構造では、十分な強度を確保できない場合がある。
【0012】
これに対し、打球部に挿入された管状挿入部材を、テーパ部にまで延在させる構造が考えられる。しかしながら、このような構造はバットの重量増加を招くこととなる。
【0013】
また、積層構造で形成した部分においては、打球時の衝撃による異音の発生を防止するために、バット本体(外管)の内面と、管状挿入部材(内管)の外面とを精度良く沿わせて接着することが必要である。一方、バット本体のテーパ部は、打球部からグリップ部に向かって外径が減少する形状を有する。テーパ部を積層構造とした場合、外管のテーパ部の上記の形状に合わせて内管を精度良く加工する必要があり、製造工程の煩雑化および製造コストの増加を招くこととなる。また、接着面の増加は接着剤による重量増加を招くこととなる。
【0014】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、バットの重量増加、製造工程の煩雑化および製造コストの増加を招くことなくテーパ部の強度を十分に確保した、打球部が積層構造の野球用またはソフトボール用バットおよびその製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る野球用またはソフトボール用バットは、1つの局面では、打球部と、打球部よりも外径が小さいグリップ部と、打球部とグリップ部との間に設けられ、該打球部から該グリップ部に向かって外径が減少するテーパ部とを含む外管と、外管に挿入された内管とを備え、外管はテーパ部に該外管の断面積が最大となる部分を有する。
【0016】
これにより、打球時の衝撃に対して、バット本体のテーパ部の強度を十分に確保することができる。
【0017】
外管は金属製であり、テーパ部の断面積は、打球部とテーパ部との境界部からグリップ部に向かって増加し、その後減少することが好ましい。
【0018】
これにより、外管はテーパ部において最大の断面積を有することとなるので、打球時の衝撃に対して、該テーパ部の強度を十分に確保することができる。
【0019】
本発明に係る野球用またはソフトボール用バットは、他の局面では、打球部と、打球部よりも外径が小さいグリップ部と、打球部とグリップ部との間に設けられ、該打球部から該グリップ部に向かって外径が減少するテーパ部とを含む外管を備えた野球用またはソフトボール用バットであって、打球部の外径が56.0mm以上57.0mm以下、外管の断面積が215mm以上230mm以下であり、グリップ部の外径が20.5mm以上24.0mm以下、外管の断面積が120mm以上300mm以下であり、テーパ部の外管の最大断面積が360mm以上410mm以下である。
【0020】
上記寸法を採用することにより、特にソフトボール用に適した、テーパ部の強度が十分に確保されたバットを提供することができる。
【0021】
本発明に係る野球用またはソフトボール用バットは、さらに他の局面では、打球部と、打球部よりも外径が小さいグリップ部と、打球部とグリップ部との間に設けられ、該打球部から該グリップ部に向かって外径が減少するテーパ部とを含む外管を備えた野球用またはソフトボール用バットであって、打球部の外径が66.0mm以上67.0mm以下、外管の断面積が410mm以上500mm以下であり、グリップ部の外径が21.5mm以上24.0mm以下、外管の断面積が140mm以上300mm以下であり、テーパ部の外管の最大断面積が550mm以上620mm以下である。
【0022】
上記寸法を採用することにより、特に硬式野球用に適した、テーパ部の強度が十分に確保されたバットを提供することができる。
【0023】
本発明に係る野球用またはソフトボール用バットの製造方法は、管状部材の一端側の厚みを減じる工程と、管状部材の他端側の厚みを減じて、管状部材の一端と他端との間に最大の厚みの部分を形成する工程と、管状部材にスエージング加工を施してバット形状の外管を作製する工程と、外管内に内管を挿入する工程とを備える。
【0024】
これにより、製造工程の煩雑化および製造コストの増加を招くことなく、バット本体のテーパ部の強度を十分に確保することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に基づく野球用またはソフトボール用バットの実施の形態について説明する。
【0026】
本実施の形態に係る野球用またはソフトボール用バットは、先端部と、打球部と、打球部よりも外径が小さいグリップ部と、打球部とグリップ部との間に設けられ、該打球部から該グリップ部に向かって外径が減少するテーパ部とを含む外管パイプと、外管パイプの打球部に挿入および接着された内管パイプとを備え、外管パイプはテーパ部に該外管パイプの断面積が最大となる部分を有する。なお、外管パイプは金属製である。
【0027】
外管パイプの材質としては、アメリカ・アルミニウム協会(AluminumAssociation of America)の制定規格に規定されるアルミニウム合金のうち、AA7046,AA6061などを採用することが好ましい。
【0028】
上記の材質を採用することで、バット本体の加工が容易となる。また、上記材質はコスト面においても比較的優れている。
【0029】
また、バット本体の反発性の向上を重視する場合は、同じくアメリカ・アルミニウム協会の制定規格に規定されるアルミニウム合金のうち、Zn,Scがより多く添加されたAA7050,AA7001などを採用してもよい。
【0030】
以下に、外管パイプの外径、肉厚および断面積について説明する。
打球部およびグリップ部において、バット本体の外径はほぼ一定に形成される。ただし、バットの先端部やテーパ部との境界部において、該外径が若干変化する場合がある。また、テーパ部においては、打球部からグリップ部に向かって外径が減少する。
【0031】
打球部およびグリップ部において、外管パイプの肉厚はほぼ一定に形成される。ただし、先端部やテーパ部との境界部において、該肉厚が若干変化する場合がある。
【0032】
テーパ部における外管パイプの肉厚は、打球部との境界部において、打球部からグリップ部に向かって増加し、その後一旦減少する。そして、グリップ部に向かって再度増加する。
【0033】
従来の積層構造バットのテーパ部においては、外管パイプの肉厚は打球部からグリップ部に向かって徐々に増加しているが、外径が減少するため、外管パイプの断面積は打球部からグリップ部に向かって徐々に減少する。
【0034】
これに対し、本実施の形態に係るバットのテーパ部においては、外管パイプの肉厚は、打球部とテーパ部との境界部において、打球部からグリップ部に向かって比較的急激に増加する。
【0035】
この結果、外管パイプの断面積は、打球部とテーパ部との境界部からグリップ部に向かって急激に増加し、テーパ部内でピークを迎えた後、グリップ部に向かって減少することとなる。
【0036】
これにより、本実施の形態に係るバットにおいて、外管パイプのテーパ部のうち、打撃による強い衝撃をうける可能性がある打球部側の部分は、従来よりも大きな断面積を有し、十分な強度を確保することができるので、打球部を外してテーパ部において打撃を行なった場合においても、バット本体がへこんだり、損傷したりするおそれがない。
【0037】
なお、上記の外管パイプの外径、肉厚および断面積については、製造時の誤差などによって若干のばらつきが生じる。具体的には、たとえば、打球部やグリップ部の外径、肉厚および断面積に若干のばらつきが生じたり、テーパ部内で打球部からグリップ部に向かって、断面積が一旦増加した後に減少し、再度増加してピークを迎えたりする場合がある。また、テーパ部内で、打球部からグリップ部に向かって一旦増加した肉厚が、その後減少することなくグリップ部に達する場合も考えられる。このような場合であっても、外管パイプのテーパ部のうち、打撃による衝撃を受ける可能性がある範囲において、該外管パイプの断面積および強度が確保されている限り、上記と同様の効果を奏するものと解するべきである。
【0038】
本実施の形態に係るバットのうち、特にソフトボール用に適したバットとしては、打球部の外径が56.0mm以上57.0mm以下程度、外管パイプの断面積が215mm以上230mm以下程度(より好ましくは215mm以上220mm以下程度)であり、グリップ部の外径が20.5mm以上24.0mm以下程度(より好ましくは22.0mm以上22.5mm以下程度)、外管パイプの断面積が120mm以上300mm以下程度(より好ましくは140mm以上160mm以下程度)であることが好ましい。また、テーパ部の外管パイプの最大断面積は、360mm以上410mm以下程度(より好ましくは360mm以上395mm以下程度)であることが好ましい。
【0039】
また、テーパ部における最大断面積は、打球部における断面積の150パーセント以上180パーセント以下程度であることが好ましい。
【0040】
本実施の形態に係るバットのうち、特に硬式野球用に適したバットとしては、打球部の外径が66.0mm以上67.0mm以下程度、外管パイプの断面積が410mm以上500mm以下程度(より好ましくは420mm以上470mm以下程度)であり、グリップ部の外径が21.5mm以上24.0mm以下程度(より好ましくは22.0mm以上23.0mm以下程度)、外管パイプの断面積が140mm以上300mm以下程度(より好ましくは160mm以上200mm以下程度)であることが好ましい。また、テーパ部の外管パイプの最大断面積は、550mm以上620mm以下程度であることが好ましい。
【0041】
また、テーパ部における最大断面積は、打球部における断面積の130パーセント以上180パーセント以下程度であることが好ましい。
【0042】
上記の形状を採用することにより、ソフトボール用および硬式野球用に特に適した汎用性の高いバットを提供することができる。
【0043】
ここで、テーパ部における最大断面積が打球部における断面積に対して極端に小さいと、打撃による衝撃に対してテーパ部の強度を十分に確保することができない。
【0044】
また、上記の比率が極端に大きいと、テーパ部の重量が過大となり、バット全体の重量増加を招くこととなる。また、打球部とテーパ部との肉厚差が過大となるので、外管パイプの肉厚の調整を1工程で行なうことができず、製造工程が煩雑化するという問題もある。
【0045】
これに対し、テーパ部における最大断面積と、打球部における断面積とを上記の値とすることで、製造工程を煩雑化させることなく、適正なバット重量を保ちながら、テーパ部を補強することができる。
【0046】
以下に、本実施の形態に係る野球用またはソフトボール用バットの製造方法について説明する。
【0047】
本実施の形態に係る野球用またはソフトボール用バットの製造方法は、管状部材としての外管パイプの一端側(打球部に相当する側)の厚みを減じる工程と、外管パイプの他端側(グリップ部に相当する側)の厚みを減じて、外管パイプの一端と他端との間(テーパ部に相当する部分)に最大の厚みの部分を形成する工程と、外管パイプにスエージング加工を施してバット形状の外管パイプを作製する工程と、外管パイプ内に内管パイプを挿入する工程とを備える。
【0048】
これにより、テーパ部に内管パイプを延在させなくても、打撃時の衝撃に対して十分な強度を備える。したがって、テーパ部の形状に沿った、内管パイプの高精度の仕上げは不要となり、製造工程の煩雑化および製造コストの増加を防ぐことができる。
【0049】
なお、内管パイプの材質としては、金属を用いてもよいし、繊維強化プラスチックを用いてもよい。
【0050】
【実施例】
以下に、本発明に基づく野球用またはソフトボール用バットの実施例について、図1から図7を用いて説明する。
【0051】
(実施例1)
図1は、実施例1に係るソフトボール用バットを示す側面図である。
【0052】
本実施例に係るバットは、特にソフトボール用に適した金属製バットであり、バット本体1は、図1に示すように、先端部2、打球部3、テーパ部4およびグリップ部5により形成される。
【0053】
表1および表2は、積層構造ソフトボール用バットの先端からX(mm)の位置(図1を参照)における、外管の外径(mm)、肉厚(mm)および断面積(cm)のデータを20mm刻みで示したものである。ここで、表1は、従来の積層構造ソフトボール用バットの一例に関するデータを示し、表2は、本実施例のソフトボール用バットに関するデータを示す。
【0054】
【表1】


【0055】
【表2】


【0056】
表1および表2において、X=360(mm)以下の範囲は先端部2および打球部3に含まれ、X=380(mm)からX=540(mm)の範囲はテーパ部4に含まれる。そして、X=560(mm)以上の範囲はグリップ部5に含まれる。
【0057】
なお、本実施例に係るバットにおいては、先端部2と打球部3との境界は明確でない。
【0058】
従来の積層構造バット(表1)の外径と、本実施例に係る積層構造バット(表2)の外径とは、同じ分布で形成される。以下、両者の外径の分布について説明する。
【0059】
打球部3およびグリップ部5において、バット本体1の外径は一定に形成される。なお、該打球部3およびグリップ部5の外径は、テーパ部4との境界付近において若干減少または増加するが、その減少/増加量は1mm以下程度である。
【0060】
打球部3とグリップ部5との間に位置するテーパ部4においては、打球部3からグリップ部5に向かって外径が減少する。
【0061】
次に、バット本体1の外管の肉厚について、表1と表2とを比較しながら説明する。なお、図2は、本実施例に係るバットのテーパ部4付近の詳細図である。打球部3において、外管パイプ6aの内面に繊維強化プラスチックからなる内管パイプ6bが挿入および接着されている。
【0062】
従来の積層構造バット(表1)のテーパ部4においては、外管パイプ6aの肉厚は打球部3からグリップ部5に向かって徐々に増加する。なお、該テーパ部4における打球部3との境界部付近において、打球部3からグリップ部5に向かって肉厚が若干減少している箇所があるが、その減少量は0.02mm程度である。
【0063】
これに対し、本実施例に係るバット(表2)のテーパ部4においては、図2に示すように、外管パイプ6aの肉厚は、打球部3とテーパ部4との境界部付近において、打球部3からグリップ部5に向かって比較的急激に増加し、その後一旦減少する。そして、グリップ部5に向かって再度増加する。
【0064】
さらに、上記の外径および肉厚によって形成されるバット本体1の外管の断面積について、表1と表2とを比較しながら説明する。
【0065】
従来の積層構造バット(表1)のテーパ部4においては、外管パイプ6aの肉厚は打球部3からグリップ部5に向かって徐々に増加しているが、同時に外径が減少するため、外管パイプ6aの断面積は打球部3からグリップ部5に向かって徐々に減少する。
【0066】
これに対し、本実施例に係るバット(表2)のテーパ部4においては、外管パイプ6aの断面積は、打球部3とテーパ部4との境界部において、打球部3からグリップ部5に向かって増加し、その後、グリップ部5に向かって減少する。この結果、テーパ部4において打球による強い衝撃を受ける可能性のある範囲(本実施例においてはX=380mm以上X=420mm以下程度)の外管パイプ6aの断面積が、従来の積層構造バット(表1)に比べて大きくなる。
【0067】
なお、本実施例に係るバット(表2)のテーパ部4において、外管パイプ6aは打球部3における断面積の約175パーセントに相当する最大断面積を有する。
【0068】
次に、上記のような外径、肉厚および断面積を有する外管パイプ6aを形成するための工程について図3から図6を用いて説明する。
【0069】
図3は、一般的なバットの製造工程における、外管パイプ6aの外径を調整する工程を示す図である。
【0070】
図3においては、均一な肉厚を有する外管パイプ6aをマンドレル8に差し込み、ダイス7を用いて、外管パイプ6aの外径を、打球部3の外径に均一に合わせるように加工する。
【0071】
ここで、本加工工程後に外管パイプ6aをマンドレル8から抜き取りやすくするために、マンドレル8には緩やかなテーパが形成されている。したがって、ダイス7を用いて外径が均一となるように加工した際に、外管パイプ6aの肉厚には緩やかなテーパが形成されるが、該肉厚の変化のオーダーは0.01mm以下である。なお、図3から図6においては、該テーパを誇張して描いている。
【0072】
従来の単層/積層構造バットにおいては、上記の工程によって形成された外管パイプ6aを用い、肉厚の厚い側を打球部側とし、肉厚の薄い側をグリップ側として、その後のスエージング工程などの工程を行なう。
【0073】
積層構造バットの場合は、外管パイプ6aの内面に内管パイプ6bを設置して打球部3を補強するので、単層構造バットに比べて打球部3における外管パイプ6aの肉厚を薄くすることが可能である。しかしながら、図3に示すような外管パイプ6aを形成した場合、打球部3の肉厚を薄くするのに伴い、内管パイプ6bを設置しないテーパ部4の肉厚も薄くなるので、この部分の強度を十分に確保することができなくなる。
【0074】
図4は、本実施例に係るバットの製造方法において、外管パイプ6aの打球部3に相当する部分の肉厚を減じる工程を示した図である。
【0075】
図4においては、上記のようなテーパ部4の強度不足の問題に対し、均一な肉厚を有する外管パイプ6aをマンドレル8に差し込み、ダイス7を用いて、外管パイプ6aのうち打球部3に相当する部分のみの外径を、打球部3の外径に均一に合わせるように加工する。
【0076】
図5は、本実施例に係るバットの製造方法において、スピニングローラ9を用いて、外管パイプ6aのグリップ部5に相当する部分の肉厚を減じるスピニング工程を示した図である。
【0077】
表3は、本実施例の硬式野球用バットの製造工程において、スピニング工程を行なった後の外管パイプ6a先端からX(mm)の位置(図5を参照)における、外管の外径(mm)、肉厚(mm)および断面積(cm)のデータを20mm刻みで示したものである。表3においては、外管パイプ6aのテーパ部4に相当する部分に、最大の厚みを有する部分が形成されている。
【0078】
【表3】


【0079】
図6は、本実施例に係るバットの製造方法において、スエージングダイス10を用いて、外管パイプ6aをバット形状に加工するスエージング工程を示した図である。
【0080】
この工程により、表2に示す外径、肉厚および断面積を有する外管パイプ6aが形成される。そして、該外管パイプ6aに内管パイプ6bを挿入および接着し、ヘラを用いてヘッドスピニング加工を行ない先端部の外管パイプ6aと内管パイプ6bとを一体化しながら、外管パイプ6aの先端部を閉塞する。その後、表面処理およびグリップエンドの取り付けを行なって、図1および図2に示すソフトボール用バットが形成される。
【0081】
(実施例2)
以下に、実施例2に係る、特に硬式野球用に適した金属製バットについて説明する。
【0082】
本実施例に係る硬式野球用バットの基本的な構造(打球部3、テーパ部4、グリップ部5、外管パイプ6a、内管パイプ6b)およびそれらを形成する工程については、実施例1に係るソフトボール用バットと共通であるので、説明を省略する。
【0083】
表4および表5は、硬式野球用バットの先端からX(mm)の位置(図1を参照)における、外管パイプ6aの外径(mm)、肉厚(mm)および断面積(cm)のデータを20mm刻みで示したものである。ここで、表4は、従来の単層構造硬式野球用バットの一例に関するデータを示し、表5は、本実施例に係る積層構造硬式野球用バットに関するデータを示す。
【0084】
【表4】


【0085】
【表5】


【0086】
表4および表5において、X=100(mm)からX=220(mm)の範囲は打球部3に含まれ、X=240(mm)からX=540(mm)の範囲はテーパ部4に含まれる。そして、X=560(mm)以上の範囲はグリップ部5に含まれる。
【0087】
従来の単層構造バット(表4)のテーパ部4においては、外管パイプ6aの肉厚は打球部3からグリップ部5に向かって徐々に増加しているが、外径が減少するため、外管パイプ6aの断面積は打球部3からグリップ部5に向かって徐々に減少する。
【0088】
ここで、単層構造バットのテーパ部4における打球部3との境界部付近の外管パイプ6aの断面積は、打球による強い衝撃を受ける可能性のある範囲(本実施例においてはX=240mm以上X=300mm以下程度)においても問題ない程度に確保されている。
【0089】
しかしながら、該単層構造バットと同じ製法で積層構造のバットを製造した場合、打球部3の肉厚の減少に伴い、テーパ部4の肉厚も減少するので、内管パイプ6bを挿入しないテーパ部4の強度が十分に確保されない場合がある。
【0090】
これに対し、本実施例に係るバット(表5)のテーパ部4においては、外管パイプ6aの肉厚は、打球部3とテーパ部4との境界部において、打球部3からグリップ部5に向かって急激に増加し、その後、グリップ部5に向かって減少する。この結果、テーパ部4の打球部3との境界部における外管パイプ6aの断面積が、従来の単層構造バット(表4)と同程度となる。したがって、テーパ部4の強度が、打球による強い衝撃に対しても問題ない程度に確保される。
【0091】
なお、本実施例に係るバット(表5)のテーパ部4において、外管パイプ6aは打球部3における断面積の約138パーセントに相当する最大断面積を有する。
【0092】
表6は、本実施例の硬式野球用バットの製造工程において、上述したスピニング工程を実施した後、スエージング工程を行なう前の外管パイプ6aの外径(mm)、肉厚(mm)および断面積(cm)のデータを示す。
【0093】
【表6】


【0094】
表6においては、打球部3に相当する部分からグリップ部5に相当する部分に向かって、外管パイプ6aの外径が減少している。なお、打球部3とテーパ部4との境界部付近で、外径が一旦増加しているが、該増加量は2mm以上3mm以下程度である。
【0095】
ここで、打球部3に相当する部分からグリップ部5に相当する部分に向かって、外管パイプ6aの外径が減少しているのは、スピニング工程時にテーパを有するマンドレル8に押し付けながら外管パイプ6aを伸ばすためである。
【0096】
図7は、本実施例に係る硬式野球用バットの先端部2付近の詳細を示した図である。
【0097】
なお、本実施例の硬式野球用バットにおいては、スエージング工程の後、上述したヘッドスピニング加工の際に外管パイプ6aの先端部を完全には閉塞せず、図7に示すように、外管パイプ6aの先端部に切削加工により溝を形成し、該溝に先端キャップ11を嵌合して外管パイプ6aを閉塞する。したがって、上記の溝を形成するために、表4から表6に示すように、外管パイプ6aの先端部2(本実施例においてはX=80mm以下の部分)が、打球部3よりも厚く形成されている。なお、打球部3の先端部2との境界部付近は、先端部2の肉厚から打球部3の肉厚へのすりつけを行なうため、打球部3の他の部分よりも若干肉厚が大きくなるが、その量は1mm以下程度である。
【0098】
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、バット本体のテーパ部の肉厚を大きくして打球時の衝撃に対する強度を十分に確保することができるので、バットの重量増加、製造工程の煩雑化および製造コストの増加を招くことなくテーパ部の強度を十分に確保した、打球部が積層構造の野球用またはソフトボール用バットおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1および実施例2に係る野球用またはソフトボール用バットを示す側面図である。
【図2】本発明の実施例1および実施例2に係る野球用またはソフトボール用バットのテーパ部の詳細を示す側面拡大図である。
【図3】野球用またはソフトボール用バットの製造工程における、外管パイプの肉厚にテーパを形成する工程を示す図である。
【図4】本発明の実施例1および実施例2に係る野球用またはソフトボール用バットの製造方法の第1工程を示した図である。
【図5】本発明の実施例1および実施例2に係る野球用またはソフトボール用バットの製造方法の第2工程を示した図である。
【図6】本発明の実施例1および実施例2に係る野球用またはソフトボール用バットの製造方法の第3工程を示した図である。
【図7】硬式野球用バットの先端部の詳細を示した拡大側面図である。
【符号の説明】
1 バット本体、2 先端部、3 打球部、4 テーパ部、5 グリップ部、6a 外管パイプ、6b 内管パイプ、7 ダイス、8 マンドレル、9 スピニングローラ、10 スエージングダイス、11 先端キャップ。
【出願人】 【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜4丁目1番23号
【出願日】 平成15年3月31日(2003.3.31)
【代理人】 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎

【識別番号】100085132
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 俊雄

【識別番号】100083703
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 義平

【識別番号】100096781
【弁理士】
【氏名又は名称】堀井 豊

【識別番号】100098316
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 久登

【識別番号】100109162
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 將行

【公開番号】 特開2004−298364(P2004−298364A)
【公開日】 平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願番号】 特願2003−94362(P2003−94362)