| 【発明の名称】 |
口腔用組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】坂口 英就 【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目17番11号 昭和薬品化工株式会社内
【氏名】土井 秀介 【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目17番11号 昭和薬品化工株式会社内
|
| 【要約】 |
【課題】歯牙漂白剤による漂白処理に対して歯肉や口腔粘膜を防御するための口腔用組成物を提供する。
【解決手段】フリーラジカル消去物質を含む口腔用組成物、特にフリーラジカル消去物質としてカタラーゼを含む口腔用組成物。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フリーラジカル消去物質を含む口腔用組成物。 【請求項2】 フリーラジカル消去物質が、酵素系抗酸化物質又は非酵素系抗酸化物質である請求項1に記載の口腔用組成物。 【請求項3】 基剤をさらに含む請求項1又は2に記載の口腔用組成物。 【請求項4】 乳化剤をさらに含む請求項3に記載の口腔用組成物。 【請求項5】 基剤が、ワックス類、ワセリン、トリグリセリド、スクアレン、流動パラフィン、多価アルコール、及び水溶性高分子から成る群から選ばれる請求項3に記載の口腔用組成物。 【請求項6】 基剤が、光重合可能なモノマーである請求項3に記載の口腔用組成物。 【請求項7】 歯肉又は口腔粘膜を防御するための請求項1から6のいずれかに記載の口腔用組成物。 【請求項8】 歯牙漂白剤に対する防御のための請求項1から6のいずれかに記載の口腔用組成物。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は口腔用組成物に関する。より詳しくは、本発明は、フリーラジカル消去物質を含有し、歯牙漂白剤に対して歯肉や口腔粘膜を防御するための口腔用組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、歯の審美性を改善しようとする要望が強く、歯牙の着色や変色に対する漂白治療が歯科分野において行なわれている。歯牙の漂白は、過酸化水素、過酸化尿素、次亜塩素酸などの漂白剤を歯牙表面に接触させて一定時間保持することによって行われる。漂白剤は、通常、漂白剤成分を吸水性の微粒状シリカや吸水性の高分子ゲルに含浸させ、これらを歯面に適用する。使用方法は、漂白剤を直接に歯面に直接塗布する方法のほか、治具(トレー)を介して漂白剤を歯面に接触させる方法が知られている。 【0003】 上記の漂白剤はいずれも刺激性物質であり、漂白剤が歯肉に付着すると痛みが生じるので、漂白処理をする前に処置歯周辺部の歯肉辺縁部にワセリンを塗布したり、ラバーダムを装着させる処置がなされている(非特許文献1;非特許文献2参照)。しかしながら、これらの防御処置を行っても、漂白剤がその浸出力により微小な隙間から粘膜に漏洩することがあり、さらに漂白剤の強力な酸化力により防御剤が溶けて刺激、激痛を受けることがある。 【0004】 【非特許文献1】 久光久ら編、漂白、増刊号、100頁、2000年6月1日発行、デンタルダイヤモンド社 【非特許文献2】 松風ハイライト(変色歯漂白剤)、使用説明書、SHOFU INC. 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 従って、本発明の目的は、歯牙漂白剤による漂白処理に対して上記のような問題が生じない歯肉や口腔粘膜を防御するための口腔用組成物を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、フリーラジカル消去物質を含む組成物によれば、漂白剤を歯牙に適用した場合に歯肉や口腔粘膜に漂白剤が漏洩せず、刺激性物質から歯肉や口腔粘膜を防御できることを見出し、本発明を完成させるに到った。 【0007】 すなわち、本発明は、フリーラジカル消去物質を含む口腔用組成物を提供する。 本発明の好ましい態様によれば、フリーラジカル消去物質が酵素系抗酸化物質である上記口腔用組成物、より好ましい態様によれば、フリーラジカル消去物質がカタラーゼである上記口腔用組成物が提供される。 本発明の別の好ましい態様によれば、基剤をさらに含む上記口腔用組成物;乳化剤をさらに含む上記口腔用組成物;基剤が、ワックス類、ワセリン、トリグリセリド、スクアレン、流動パラフィン、多価アルコール、及び水溶性高分子から成る群から選ばれる上記口腔用組成物;基剤が、光重合可能なモノマーである上記口腔用組成物;歯肉又は口腔粘膜を防御するための上記口腔用組成物;歯牙漂白剤に対する防御のための上記口腔用組成物が提供される。 【0008】 【発明の実施の形態】 本発明の口腔用組成物はフリーラジカル消去物質を含有する。本発明において用いる「フリーラジカル消去物質」とは、不対電子を有する化合物であるフリーラジカルを捕捉して消去する物質をいう。フリーラジカルには、代表的には活性酸素種であるスーパーオキシドアニオンラジカル(O2−・)、ヒドロキシラジカル(・OH)をいうが、HOO・、LOO・、LO・、3O2、NO2等のラジカルのほか、ラジカルにすぐに転換するいわばラジカル予備軍であるH2O2、1O2、LOOH、O3、HOClなどをも含む。 【0009】 フリーラジカル消去物質としては、例えばカタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ペルオキシダーゼ等の酵素系抗酸化物質;ビタミンE、ビタミンC、グルタチオン、カロチノイド、フラボノイド、ユビキノン、γ−オリザノール、メタロチオネイン、亜硫酸ナトリウム、クエン酸、システイン、糖類、鉄キレート剤、尿酸、セルロプラスミン、トランスフェリン、フェリチン、ハプトグロビン、アルブミン、ピリルビン、ピルビン酸、レシチン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、亜硝酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ハイドロキノン等の非酵素系抗酸化物質が挙げられる。 【0010】 これらのフリーラジカル消去物質は、漂白剤等の刺激性物質の漏洩を知らせるマーカーとして機能し、かつ該刺激性物質を失活させることができる物質が好ましい。例えば、漂白剤が過酸化水素の場合、過酸化水素の漏洩を酸素の発生を指標に捕らえることがき、かつ過酸化水素を失活できる上で、酵素系抗酸化物質が好ましく、特にカタラーゼが好ましい。 また、上記のフリーラジカル消去物質は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 【0011】 上記のフリーラジカル消去物質の配合量は、その種類により異なるが、通常、組成物全体の0〜100重量%、好ましくは0.5〜30重量%程度である。フリーラジカル消去物質が酵素系抗酸化物質、例えばカタラーゼの場合は、組成物中における酵素濃度が20 unit/ml以上であることが好ましい。 【0012】 本発明の口腔用組成物としては、上記のフリーラジカル消去物質を含む溶液をそのまま用いてもよいが、基剤を配合することもできる。 本発明の口腔用組成物は、上記のフリーラジカル消去物質を含む溶液を基剤に混合させるか、あるいは乳化剤等を用いて均一に混合攪拌することによって一液型の口腔用組成物としてもよく、あるいは、フリーラジカル消去物質を含む溶液と基剤を使用時まで別の容器等に入れ、基剤、フリーラジカル消去物質の順で積層塗布して使用するための二液型の口腔用組成物として提供してもよい。 【0013】 基剤としては、上記フリーラジカル消去物質を常温又は加温溶融状態で混和でき、使用時に歯肉や口腔表面に塗布するのに適した粘性を有するか、あるいは該粘性を有するように調整できる基剤であって、口腔用組成物に通常使用されるものであれば特に限定はされない。 【0014】 本発明において用いる基剤としては、例えばワックス類、ワセリン、トリグリセリド、スクアレン、流動パラフィン、多価アルコール、水溶性高分子、光重合可能なモノマー等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 【0015】 ワックス類としては、常温において固形又はゲル状であれば天然ワックス、合成ワックスのいずれであってもよい。天然ワックスとしては、蜜ロウ、鯨ロウ、セラックロウ等の動物由来のワックス、カルナバロウ、木ロウ、米糠ロウ(ライスワックス)、キャンデリラワックス等の植物由来のワックス、パラフィンワックス、マクロクリスタリンワックス等の石油由来のワックス、モンタンワックス等の鉱物由来のワックス;合成ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、サゾールワックス等が挙げられる。 【0016】 トリグリセリドとしては、好ましくは炭素数12〜18程度の中鎖脂肪酸トリグリセリド、具体的にはハードファットを用いることができる。 【0017】 多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ソルビット、キシリトール、マルチトール、ラクチトール等が挙げられる。 【0018】 水溶性高分子としては、例えば、デンプン、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、デキストリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸、メタアクリル酸系コポリマー(例えば「オイドラギットRS」:メタアクリル酸エチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマー等)等が挙げられる。 【0019】 光重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリル系モノマー等が挙げられる。アクリル系モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類からなる群から選ばれ、これらは1又は2以上の置換基(官能基)を有していてもよい。また、これらのアクリル系モノマーは単独で用いてもよいが、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。好適なアクリル系モノマーの例としては、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ハイドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ビスフェノールA−グリシジルジメタクレート(bis−GMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(3G)等を挙げることができる。 【0020】 基剤として上記のアクリル系モノマーを用いる場合、光重合開始剤をさらに添加する。光重合開始剤としては特に限定されず、光照射によりアクリル系モノマーの光重合を開始できるものであればいかなるものを用いてもよい。例えば、歯科治療に汎用される可視光源によって短時間にアクリル系モノマーの光重合を開始できるものが好ましいが、例えば、キノン化合物と還元剤の組み合わせ(例えばカンファーキノンとアミノエチルメタクリレートとの組み合わせなど)を用いることができる。もっとも、光重合開始剤は、重合硬化させるべきアクリル系モノマーや使用する光源の種類などの条件、所望の硬化速度などの条件に応じて当業者が適宜選択可能である。 【0021】 その他の成分、例えば軽質無水ケイ酸、ナイロン糸などのフィラー等を上記の基剤の一部に添加すると組成物の安定性、口腔への滞溜性、使用後の脱着性などを向上させることができる。 【0022】 上記の基剤の配合量は、その種類により異なるが、通常、組成物全体の0〜100重量%、好ましくは70〜99.5重量%程度である。基剤の配合量が上記範囲をはずれると、期待される防御効果が得られないので好ましくない。 【0023】 また本発明の口腔用組成物は、フリーラジカル消去物質を含む溶液と基剤を均一に混合攪拌するために、必要により乳化剤を用いてもよい。乳化剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アルキノグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリソルベート、ポリオキシエチレン、ラウロマクロゴール、Tween20〜85、トライトン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン等が挙げられる。 【0024】 本発明の口腔用組成物は、当業者に利用可能な添加物を適宜使用してもよい。添加物としては、例えば、漂白剤等の刺激性物質の漏洩を知らせるマーカー(例えば、クリスタルバイオレットなどの着色指示薬)、緩衝剤、pH調節剤、界面活性剤、可塑剤、結合剤、分散剤、防腐剤、着色剤などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を口腔用組成物に配合してもよい。これらの添加物の配合量は、口腔用組成物に適するように、当業者に適宜選択可能である。 【0025】 本発明の口腔用組成物は常法に従って製造することができ、製造方法は特に限定されないが、例えば、実施例に具体的に示したように、フリーラジカル消去物質を適宜の基剤に混合攪拌することによって製造することができる。 【0026】 本発明の口腔用組成物は、歯科分野、特に美容歯科分野における歯牙の着色や変色に対する漂白処理に対して歯肉や口腔粘膜を防御するために有用である。 【0027】 【実施例】 以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。 【0028】 (実施例1) 本発明の口腔用組成物の調製(1) スノーホワイトワセリン100gを80℃に加温溶解し、溶液Aとした。一方、カタラーゼ(10,000 unit/ml)10mlをポリエチレングリコール(PEG400)55mlに希釈攪拌し、溶液Bとした。溶液Aと溶液Bを別々の容器に保持した二液型の本発明の口腔用組成物を得た。 【0029】 (実施例2) 本発明の口腔用組成物の調製(2) マイクロクリスタリンワックス92.2重量部、ワセリン5.9重量部を100℃に加温溶解し、スリーワンモーターで攪拌しながら、軽質無水ケイ酸0.2重量部、カタラーゼ(10,000 unit/ml)1.7重量部を徐々に加え、本発明の口腔用組成物(一液混合型)を得た。 【0030】 (実施例3) 本発明の口腔用組成物の調製(3) マイクロクリスタリンワックス97.6重量部を100℃に加温溶解し、スリーワンモーターで攪拌しながら、カタラーゼ(10,000 unit/ml)1.7重量部、ソルビタン脂肪酸エステル0.7重量部を混合し、本発明の口腔用組成物(一液乳化型)を得た。 【0031】 (実施例4) 本発明の口腔用組成物の調製(4) マイクロクリスタリンワックス95.8重量部、流動パラフィン1.0重量部を100℃に加温溶解し、スリーワンモーターで攪拌しながらカタラーゼ(10,000 unit/ml)2.0重量部、ソルビタン脂肪酸エステル1.0重量部、軽質無水ケイ酸0.1重量部、クリスタルバイオレット0.1重量部、ナイロン糸(30デニール、長さ20mm)0.5重量部を混合し、本発明の口腔用組成物(一液乳化型)を得た。 【0032】 (試験例1) 図1に示すように、過酸化水素が触れることにより変色するように設定した濾紙Aの上に、表1に示す各試験組成物を約0.2mmの深さでφ6mmの円柱Bになるように成形した。この円柱上から過酸化水素30μlを滴下し、各組成物による過酸化水素漏洩防御効果を調べた。なお、組成物中のカタラーゼはレオネット(65,000unit/ml)を使用した。 【0033】 【表1】
【0034】 円柱Bを構成する試験組成物のうち、過酸化水素滴下によって円柱B自体が溶解し、濾紙Aが白く変色したのは組成物1だけであった。組成物2〜5は過酸化水素を滴下した瞬間に、表面で酸素と推察される泡が発生した。特に組成物2よりも組成物3、組成物3よりも組成物4,5のほうがその泡が発生−消失する速度が速かった。 上記結果より、組成物中のカタラーゼは過酸化水素を分解・失活させ、円柱下にある濾紙を保護したといえる。 【0035】 (試験例2) 前記表1に示す試験組成物1、2を、試験管の中に約1ml分注した。この内容物を濾紙Aの半面にそれぞれ塗布し(図2)、その上から過酸化水素50μlを滴下した。なお、濾紙Aは過酸化水素が触れることにより変色するようにした。 【0036】 組成物1と接触した過酸化水素は塗布したワセリンの微小な隙間またはワセリンを破壊して濾紙Aに到達し、濾紙を白く変色した。 これに対し、組成物2と接触した過酸化水素は最終的に濾紙に到達したが、濾紙は白く変色しなかった。 上記結果より、組成物2では過酸化水素は組成物中のカタラーゼによって分解され、刺激性が弱まった水溶液または水となってワセリンの微小な隙間から濾紙に到達したといえる。 【0037】 (試験例3) 各濃度のカタラーゼ溶液(0 unit/ml、81 unit/ml、163 unit/ml、325 unit/ml)を調製し、一定条件下で35%過酸化水素に作用させ、過酸化水素が消去される量を測定した。 なお、1 unit/mlは、10 mM過酸化水素溶液(50mM燐酸緩衛液,pH7.0)5mlに酵素液1mlを加え、30℃−5分間反応させた時、1分間に1μmolの過酸化水素を分解する活性とした。 過酸化水素100μlに各濃度のカタラーゼ溶液100μl加え、混合し、直ちに37℃で5分間、あるいは125℃で5分間保温した。保温液に5%硫酸を加え、攪拌後に20mM過マンガン酸カリウムで滴定した。結果を下記表2、3、ならびに図3に示す。 【0038】 【表2】
【0039】 【表3】
【0040】 【発明の効果】 本発明の口腔用組成物は、歯牙の歯牙漂白剤による漂白処理に対して歯肉や口腔粘膜を防御することができ、歯科治療上有用である。 【図面の簡単な説明】 【図1】試験例1における試験手法の模式図を示す。 【図2】試験例2における試験手法の模式図を示す。 【図3】酵素(カタラーゼ)による過酸化水素の消失を示す。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000187220 【氏名又は名称】昭和薬品化工株式会社 【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目17番11号
|
| 【出願日】 |
平成14年9月17日(2002.9.17) |
| 【代理人】 |
【識別番号】110000109 【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
|
| 【公開番号】 |
特開2004−107231(P2004−107231A) |
| 【公開日】 |
平成16年4月8日(2004.4.8) |
| 【出願番号】 |
特願2002−269926(P2002−269926) |
|