| 【発明の名称】 |
腎疾患患者用高カロリー輸液剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】坂田 文子 【住所又は居所】神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内
【氏名】知久 一雄 【住所又は居所】神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内
|
| 【要約】 |
【課題】急性あるいは慢性の腎疾患患者の静脈栄養施行時に使用する腎疾患患者用高カロリー輸液剤において、糖・電解質、アミノ酸を栄養学的に好ましい比率で配合し、かつ安全に投与できる腎疾患患者用高カロリー輸液剤を提供する。
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 隔離手段により2室が形成された容器の第1室にアミノ酸液、第2室に糖・電解質液が充填されている高カロリー輸液剤であり、混合後、窒素(N:単位はg)に対する非蛋白エネルギー(NPC:単位はkcal)の比率(NPC/N)が600〜300であり、かつリンおよびカリウムを含有しないことを特徴とする腎疾患患者用高カロリー輸液剤。 【請求項2】 上記輸液剤の第1室に充填されるアミノ酸液は、アミノ酸濃度5.9%〜12%であり、イソロイシン、ロイシン、バリン、リジン、スレオニン、トリプトファン、メチオニン、フェニルアラニン、シスチン、システイン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、プロリン、セリン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸より選ばれる少なくとも1種類以上のアミノ酸の遊離型、誘導体または塩を下記の範囲で含有する請求項1に記載の腎疾患患者用高カロリー輸液剤。 イソロイシン 5.0〜9.0g/L ロイシン 9.0〜14.0g/L バリン 6.0〜10.0g/L リジン 4.5〜9.0g/L スレオニン 2.0〜6.0g/L トリプトファン 1.0〜3.0g/L メチオニン 3.0〜8.0g/L フェニルアラニン 4.0〜11.0g/L シスチン 0〜0.5g/L システイン 0〜2.0g/L チロシン 0.3〜1.0g/L アルギニン 2.0〜15.0g/L ヒスチジン 2.0〜6.0g/L アラニン 2.0〜10.0g/L プロリン 1.5〜12.0g/L セリン 0.5〜5.0g/L グリシン 1.0〜17.0g/L アスパラギン酸 0.1〜3.0g/L グルタミン酸 0.1〜3.0g/L E/N比 0.8〜4.0 BCAA/TAA% 20〜45% 【請求項3】 上記輸液剤の第2室に充填される糖・電解質液は、糖濃度50%以上であり、糖としてグルコース、フルクトース、キシリトール、ソルビトール、マルトース、グリセロールより選ばれる少なくとも1種類以上を含有する請求項1または2に記載の腎疾患患者用高カロリー輸液剤。 【請求項4】 上記輸液剤の第2室に充填される糖・電解質液の電解質は、ナトリウム、クロル、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン、ヨウ素、銅、セレンより選ばれる少なくとも2種類以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の腎疾患患者用高カロリー輸液剤。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、急性あるいは慢性の腎疾患患者の静脈栄養施行時に使用する腎疾患患者用高カロリー輸液剤において、糖・電解質、アミノ酸を栄養学的に好ましい比率で配合し、かつ安全に投与できる腎疾患患者用高カロリー輸液剤に関する。 【0002】 【従来の技術】 経口摂取が不可能な患者に対して、中心静脈から栄養補給を行う中心静脈栄養療法がDudrickらにより提唱されて以来、近年めざましい発展を遂げている。腎疾患患者に静脈栄養を施行する場合には、高窒素血症の増悪、水やナトリウムの過剰投与による心不全、高カリウム血症、高リン血症を引き起こしやすいために細心の注意が必要である。 現在、糖、電解質およびアミノ酸をダブルバッグ(特開平5−32540、特開平10−87497)に充填した輸液剤が提案あるいは市販(商品名アミノトリパ1、2号、大塚製薬:商品名ピーエヌツイン1、2、3号、味の素ファルマ(株))されているが、これらはいずれもNPC/N比が150前後であり、蛋白代謝や窒素代謝物排泄に異常のある腎疾患患者に投与すると、腎機能を悪化させBUNの上昇を招く。また、糖を配合した室の糖濃度が30%程度、ダブルバッグを混合した後の糖濃度が20%程度、であり、水分排泄障害のある腎疾患患者に対して必要なエネルギーを投与すると、水分過剰となるおそれがある。さらに、カリウム、リンが含まれており、高カリウム血症、高リン血症を引き起こす可能性がある。 そのため、腎疾患患者に静脈栄養を施行する際には、糖・電解質液とアミノ酸液とをそれぞれ調製する必要があり、細菌汚染防止のための煩雑な作業が多く、臨床現場では大きな負担となっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の課題は、急性あるいは慢性の腎疾患患者の静脈栄養施行時に使用する腎疾患患者用高カロリー輸液剤において、糖・電解質、アミノ酸を栄養学的に好ましい比率で配合し、かつ安全に投与できる腎疾患患者用高カロリー輸液剤を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】 本発明の課題は、以下の手段により解決される。 (1)隔離手段により2室が形成された容器の第1室にアミノ酸液、第2室に糖・電解質液が充填されている高カロリー輸液剤であり、混合後、窒素(N:単位はg)に対する非蛋白エネルギー(NPC:単位はkcal)の比率(NPC/N)が600〜300であり、かつリンおよびカリウムを含有しないこ腎疾患患者用高カロリー輸液剤。 【0005】 (2)上記輸液剤の第1室に充填されるアミノ酸液は、アミノ酸濃度5.9%〜12%であり、イソロイシン、ロイシン、バリン、リジン、スレオニン、トリプトファン、メチオニン、フェニルアラニン、シスチン、システイン、チロシン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、プロリン、セリン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸より選ばれる少なくとも1種類以上のアミノ酸の遊離型、誘導体または塩を下記の範囲で含有する(1)に記載の腎疾患患者用高カロリー輸液剤。 イソロイシン 5.0〜9.0g/L ロイシン 9.0〜14.0g/L バリン 6.0〜10.0g/L リジン 4.5〜9.0g/L スレオニン 2.0〜6.0g/L トリプトファン 1.0〜3.0g/L メチオニン 3.0〜8.0g/L フェニルアラニン 4.0〜11.0g/L シスチン 0〜0.5g/L システイン 0〜2.0g/L チロシン 0.3〜1.0g/L アルギニン 2.0〜15.0g/L ヒスチジン 2.0〜6.0g/L アラニン 2.0〜10.0g/L プロリン 1.5〜12.0g/L セリン 0.5〜5.0g/L グリシン 1.0〜17.0g/L アスパラギン酸 0.1〜3.0g/L グルタミン酸 0.1〜3.0g/L E/N比 0.8〜4.0 BCAA/TAA% 20〜45% 【0006】 (3)上記輸液剤の第2室に充填される糖・電解質液は、糖濃度50%以上であり、糖としてグルコース、フルクトース、キシリトール、ソルビトール、マルトース、グリセロールより選ばれる少なくとも1種類以上を含有する(1)または(2)に記載の腎疾患患者用高カロリー輸液剤。 【0007】 (4)上記輸液剤の第2室に充填される糖・電解質液の電解質は、ナトリウム、クロル、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン、ヨウ素、銅、セレンより選ばれる少なくとも2種類以上を含有する(1)〜(3)のいずれかに記載の腎疾患患者用高カロリー輸液剤。 【0008】 【発明の実施の形態】 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A) アミノ酸液と糖・電解質液の混合後のNPC/N比を600〜300とすること、(B) 隔離手段により2室が形成された容器の第1室にアミノ酸液、第2室に糖・電解質液を充填すること、(C) 糖・電解質液の糖濃度は50重量%以上とすること、(D) 糖・電解質液にカリウムおよびリンを含まないことにより、急性あるいは慢性の腎疾患患者に栄養学的に好ましく、かつ安全に投与可能な輸液剤を提供できるという新たな知見を見出し、本発明を完成するに至った。 【0009】 すなわち、本発明の腎疾患患者用高カロリー輸液剤は、カリウムおよびリンを含まない糖濃度50%以上の糖・電解質液に、アミノ酸液をNPC/N比600〜300となるように組み合わせ、これらをダブルバッグ等の用時混合可能な容器にそれぞれ分離して収納したもので、NPC/N比600〜500は特に急性腎不全、NPC/N比400〜300は慢性腎不全患者用高カロリー輸液剤として好適である。 なお、第1室内のアミノ酸は、腎疾患時に適したアミノ酸比率で配合されていること、例えば上記(2)に記載のように配合されていることが望ましく、第2室内の糖濃度は、50%以上であれば良いが溶解性からみて70%程度までとすることが望ましい。 【0010】 【実施例】 以下、実施例を挙げて本発明の輸液剤をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。 (実施例1)図4に示したバッグ内面の弱シールからなる隔離手段4により2室が形成されたポリプロピレン製輸液バッグである容器1の第1室2に、表1に記載したアミノ酸液214mLを窒素置換して充填した。また、第2室3に表2に記載した糖・電解質液500mLを窒素置換して充填した。この容器を高圧蒸気滅菌にて滅菌し本発明の輸液剤を得た。用時混合するとNPC/N比300になる。 (実施例2)図4に示したバッグ内面の弱シールからなる隔離手段4により2室が形成されたポリプロピレン製輸液バッグである容器1の第1室2に、表1に記載したアミノ酸液107mLを窒素置換して充填した。また、第2室3に表2に記載した糖・電解質液500mLを窒素置換して充填した。この容器を高圧蒸気滅菌にて滅菌し本発明の輸液剤を得た。用時混合するとNPC/N比600になる。 【0011】 (比較例1)図4に示したバッグ内面の弱シールからなる隔離手段4により2室が形成されたポリプロピレン製輸液バッグである容器1の第1室2に、表1に記載したアミノ酸液321mLを窒素置換して充填した。また、第2室3に表2に記載した糖・電解質液500mLを窒素置換して充填した。この容器を高圧蒸気滅菌にて滅菌し本発明の輸液剤を得た。用時混合するとNPC/N比200になる。 (比較例2)図4に示したバッグ内面の弱シールからなる隔離手段4により2室が形成されたポリプロピレン製輸液バッグである容器1の第1室2に、表1に記載したアミノ酸液71mLを窒素置換して充填した。また、第2室3に表2に記載した糖・電解質液500mLを窒素置換して充填した。この容器を高圧蒸気滅菌にて滅菌し本発明の輸液剤を得た。用時混合するとNPC/N比900になる。 【0012】 【表1】
【0013】 【表2】
【0014】 (試験例1)実施例1、2、比較例1、2で調製した輸液剤を用いて、動物実験を行った。実験モデルとして、左腎を3/4切除し、この1週間後に右腎を全摘した7/8腎摘ラットを作製した。血清クレアチニンが1.3〜2.0mg/dL、尿素窒素が65〜110mg/dLに上昇したラットを慢性腎不全モデルとして実験に用いた。右外頸静脈にカテーテルを留置して、無拘束下で実施例1、2、比較例1、2の輸液剤を9日間持続投与した。エネルギー投与量は270kcal/kg/dayに設定した。輸液投与期間における体重増加率、窒素出納を算出した。血清生化学値、肝ポリソームプロファイルを測定した。 図1に体重増加率を示した。9日間の輸液投与により実施例1、2および比較例1の体重は増加したが、比較例2の体重は減少した。輸液投与9日間の累積窒素出納を図2に示した。実施例1、2および比較例1は正の出納を示したが、比較例2は負の出納であった。表3に血清生化学値を示した。TP、Albは比較例2が実施例1、2および比較例1に比べて低値を示した。BUNは比較例1が実施例1、2および比較例2に比べて高値を示した。表4に肝ポリソームプロファイルの大きさを解析した結果を示した。ポリソームの大きさは比較例1、実施例1、2、比較例2の順に小さくなった。 以上の結果から、栄養指標においては、比較例1、実施例1、2が腎疾患時のNPC/N比として適当と考えられるが、比較例1ではBUNが高値を維持することから、腎疾患時の輸液剤としては窒素投与量が過剰であり、NPC/N比としては600〜300が好適であると考えられた。 【0015】 【表3】
【0016】 【表4】
【0017】 (実施例3)図4に示したバッグ内面の弱シールからなる隔離手段4により2室が形成されたポリプロピレン製輸液バッグである容器1の第1室2に、表5に記載したアミノ酸液412mLを窒素置換して充填した。また、第2室3に表6に記載した糖・電解質液500mLを窒素置換して充填した。用時混合するとNPC/N比300になる。 (比較例3)図4に示したバッグ内面の弱シールからなる隔離手段4により2室が形成されたポリプロピレン製輸液バッグである容器1の第1室2に、表5に記載したアミノ酸液412mLを窒素置換して充填した。また、第2室3に表7に記載した糖・電解質液700mLを窒素置換して充填した。用時混合するとNPC/N比300になる。 【0018】 【表5】
【0019】 【表6】
【0020】 【表7】
【0021】 (試験例2)実施例3、比較例3で調製した輸液剤を用いて動物実験を行った。実験モデルとして、左腎を3/4切除し、この1週間後に右腎を全摘した7/8腎摘ラットを作製した。血清クレアチニンが1.3〜2.0mg/dL、尿素窒素が65〜110mg/dLに上昇したラットを慢性腎不全モデルとして実験に用いた。右外頸静脈にカテーテルを留置して、無拘束下で実施例3、比較例3の輸液剤を9日間持続投与した。エネルギー投与量は270kcal/kg/dayに設定した。輸液投与期間における体重増加率を算出した。血清生化学値、電解質濃度を測定した。図3に体重増加率を示した。実施例3、比較例3ともに体重増加が認められた。表8に血清生化学値を示した。栄養指標であるTP、Albは実施例3、比較例3ともに同程度の値を示した。表9に血清電解質濃度を示した。比較例3の血清カリウム、マグネシウム、リンは実施例3に比べて高値を示し、比較例3の電解質組成では、電解質代謝異常および排泄障害のある腎疾患患者において、高カリウム、高マグネシウム、高リン血症を引き起こす可能性があると考えられた。 以上のことから、腎疾患時の輸液剤としては、カリウムあるいはリンを含有しない実施例3の電解質組成が好適であると考えられた。 【0022】 【表8】
【0023】 【表9】
【0024】 【発明の効果】 本発明は、糖、電解質およびアミノ酸を含有する高カロリー輸液剤であり、混合後、窒素(N:単位はg)に対する非蛋白エネルギー(NPC:単位はkcal)の比率(NPC/N)が600〜300であることを特徴とする腎疾患患者用高カロリー輸液剤であって、糖・電解質、アミノ酸を栄養学的に好ましい比率で配合しており、用時連通可能な隔離手段により2室が形成された容器の第1室にアミノ酸液、第2室に糖・電解質液が充填されているために長期保存性にすぐれ、かつ調剤の必要がなく臨床現場での作業負担の軽減が図れるとともに安全に投与できる輸液剤を提供できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】図1は実施例1、2、比較例1、2の輸液剤を投与した場合における体重増加率を示す図である(試験例1)。 【図2】図2は実施例1、2、比較例1、2の輸液剤を投与した場合における窒素出納値を示す図である(試験例1)。 【図3】図3は実施例3、比較例3の輸液剤を投与した場合における体重増加率を示す図である(試験例2)。 【図4】図4は各実施例・比較例で用いた容器の模式図である。容器の大きさ、隔壁の位置は各室の容量により異なる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000109543 【氏名又は名称】テルモ株式会社 【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目44番1号
|
| 【出願日】 |
平成14年9月13日(2002.9.13) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2004−107213(P2004−107213A) |
| 【公開日】 |
平成16年4月8日(2004.4.8) |
| 【出願番号】 |
特願2002−268297(P2002−268297) |
|