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【発明の名称】 被覆粒子及びその製造方法
【発明者】 【氏名】坂本 浩

【氏名】小林 誠

【要約】 【課題】ゼロ次溶出の溶出態様又はそれに近い溶出態様を実現する。

【解決手段】被覆粒子は、薬物を含有する粒子または担体粒子の表面に薬物層を形成した粒子の表面に、薬物の溶出を制御するための溶出制御膜を形成したものである。溶出制御膜は、膜剤固形分としての水不溶性高分子物質と溶出制御物質とを含有する2以上の被覆層で構成され、各被覆層は、水不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合が相互に異なっている。この被覆粒子は、いわゆるゼロ次溶出の溶出態様を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を含有する粒子、及び、担体粒子の表面に薬物層を形成した粒子、の中から選択される1の粒子の表面に、前記薬物の溶出を制御するための溶出制御膜を形成した被覆粒子であって、
前記溶出制御膜は、膜剤固形分としての水不溶性高分子物質と溶出制御物質とを含有する2以上の被覆層で構成され、
前記各被覆層は、前記水不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合が相互に異なっていることを特徴とする被覆粒子。
【請求項2】
前記水不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合が200%以下であることを特徴とする請求項1に記載の被覆粒子。
【請求項3】
薬物を含有する粒子、及び、担体粒子の表面に薬物層を形成した粒子、の中から選択される1の粒子を作製し、該粒子の表面に前記薬物の溶出を制御するための溶出制御膜を形成して被覆粒子を製造する方法において、
前記溶出制御膜を形成するに際して、
膜剤固形分としての水不溶性高分子物質と溶出制御物質とを含有し、かつ、前記水不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合が相互に異なる2種類以上の膜剤液を作製し、
前記各膜剤液を逐次的に用いて、前記粒子の表面に、前記各膜剤液による被覆層を積層状に形成することを特徴とする被覆粒子の製造方法。
【請求項4】
上層の前記被覆層を形成する前の段階で、下層の前記被覆層を乾燥させる中間乾燥工程を設けたことを特徴とする請求項3に記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項5】
前記水不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合が200%以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の被覆粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品、農薬品の顆粒剤、細粒剤、錠剤等に用いられる被覆粒子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、経口医薬品製剤に含まれる薬物(有効成分)が服用後直ちに体内に溶出して血中濃度が高くなると薬物による副作用等が生じ易く、また、血中濃度の半減期が短いと薬効が持続しない。そのため、薬物の薬物活性等に応じて血中濃度を制御することが望まれている。
【0003】
薬物の適度な血中濃度を持続するために、以前は、1回に投与する薬の薬物含有量を少なくし、投与回数を多くしていたが、投与回数が多くなると患者の負担が大きい。そこで、製剤粒子の表面に薬物の溶出を制御する溶出制御膜を形成して、胃溶性、腸溶性、時間依存溶出性(徐放性)等の特性をもたせた経口医薬品製剤が提供されている。
【0004】
しかし、例えば、投与時から6時間で薬物の溶出が完了するように設計された徐放性製剤の多くは、投与後30分から2時間頃までの溶出速度が最も高く、2時間頃以降は溶出速度が時間の経過とともに減少する傾向、言い換えれば、2次曲線的な溶出態様を示す傾向がある。したがって、薬物による副作用の発現を抑制しかつ薬効を持続させる観点から改善の必要性が認められる。
【0005】
また、薬物含有芯物質の表面に、互いに異なる疎水性有機化合物−水溶性高分子混合物を含有する多層被覆層を形成することが特開2001―278781号公報に記載されている。また、その効果として、少ない被覆量で効率的に薬物の放出速度を制御でき、薬物放出の頭打ち現象を防止できることが記載されている。
【0006】
一方、同号記載の技術では、上記の被覆層を形成する膜剤液の溶媒として有機溶剤を使用しているが、近年、有機溶剤の使用は環境負荷の点から問題視される傾向にある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、投与直後から薬物(有効成分)が一定速度で持続して溶出する態様、すなわち、いわゆるゼロ次溶出の溶出態様又はそれに近い溶出態様を有する被覆粒子及びその製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の課題は、被覆粒子を製造する際の環境負荷を軽減することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、薬物を含有する粒子、及び、担体粒子の表面に薬物層を形成した粒子、の中から選択される1の粒子の表面に、前記薬物の溶出を制御するための溶出制御膜を形成した被覆粒子であって、前記溶出制御膜は、膜剤固形分としての水不溶性高分子物質と溶出制御物質とを含有する2以上の被覆層で構成され、前記各被覆層は、前記水不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合が相互に異なっている構成を提供する。
【0010】
上記構成において、前記水不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合を200%以下とするのが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するため、薬物を含有する粒子、及び、担体粒子の表面に薬物層を形成した粒子、の中から選択される1の粒子を作製し、該粒子の表面に前記薬物の溶出を制御するための溶出制御膜を形成して被覆粒子を製造する方法において、前記溶出制御膜を形成するに際して、膜剤固形分としての水不溶性高分子物質と溶出制御物質とを含有し、かつ、前記水不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合が相互に異なる2種類以上の膜剤液を作製し、前記各膜剤液を逐次的に用いて、前記粒子の表面に、前記各膜剤液による被覆層を積層状に形成する構成を提供する。
【0012】
上記構成において、上層の前記被覆層を形成する前の段階で、下層の前記被覆層を乾燥させる中間乾燥工程を設けるのが好ましい。また、前記水不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合を200%以下とするのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の被覆粒子は、例えば経口徐放性製剤であり、薬物(生理活性物質)を含有する粒子または担体粒子の表面に薬物層を形成した粒子の表面に、薬物の溶出を制御するための溶出制御膜を形成したものである。溶出制御膜は、膜剤固形分としての水不溶性高分子物質と溶出制御物質とを含有する2以上の被覆層で構成され、各被覆層は、水不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合が相互に異なっている。被覆粒子の剤型は、投与条件等に応じて、球型粒、顆粒、細粒など任意の形態とすることができる。
【0014】
各被覆層の膜剤成分となる水不溶性高分子物質としては、例えば、エチルセルロースなどの水不溶性セルロースエーテル、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体、メタアクリル酸メチル・アクリ酸エチル共重合体などの水不溶性アクリル酸系共重合体などを用いることができる。
【0015】
溶出制御物質としては、例えば、溶解性の高いマンニトールやエリスリトールなどの多糖類、不溶性のタルクなどの微粒子又は高分子物質などを用いることができる。
【0016】
溶出制御膜の形成方法は特に限定されないが、上記粒子の表面に膜剤液を噴霧して乾燥固化させる方法を採用するのが好ましい。このような被覆方法を実施するための装置として、いわゆる流動層装置やパンコーティング装置を用いることができる。特に、ワースター式と呼ばれる流動層装置を用いるのが好ましい。
【0017】
図3は、いわゆるワースター式流動層装置の基本構造例を示している。この流動層装置は、処理容器3の中央部にドラフトチューブ5を設置し、該チューブ5内を上昇する気流に乗せて粉粒体粒子に上向きの流れ(噴流)を起こさせると共に、処理容器3の底部中央に設置したスプレーガン6からドラフトチューブ5内の粉粒体粒子に向けて上向きに膜剤液を噴霧して被覆処理(コーティング処理)を行うものである。処理容器3の上部にはフィルター室7が設けられており、給気ダクトから処理容器3内に導入された流動化空気は、粉粒体粒子の流動に寄与した後、処理室3内を上昇してフィルター室7に入り、さらにフィルター室7に設置されたフィルターシステムを通って排気ダクトに排気される。この流動層装置によれば、コーティングゾーンに大量の粉粒体粒子を高速で送り込むことができるので、いわゆるスプレードライ現象(スプレー液のミストが粉粒体粒子に付着せずに乾燥して粉塵化する現象)や粒子同士の二次凝集が起こりにくく、微粒子に対しても収率の良いコーティング処理が可能である。
【0018】
膜剤液は、溶出制御膜を構成する被覆層及びその積層数に応じて、水不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合を変えた複数種類ものを作製する。配合する水不溶性高分子物質及び溶出制御物質は、各膜剤液について同じものを使用するのが好ましい。また、不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合は200%以下とするのが好ましい。さらに、必要に応じて、可塑剤等の添加物を配合しても良い。そして、形成すべき被覆層に対応する膜剤液を上記粒子の表面に噴霧して所定の被覆層を形成し、その上層に種類の異なる膜剤液を噴霧して他の被覆層を形成する。被覆層を3層以上形成する場合は、以後この操作を繰り返す。尚、薬物が被覆層中に浸透するのを防止するため、上層の被覆層を形成する前の段階で、下層の被覆層の乾燥処理を行う中間乾燥工程を設けるのが好ましい。
【0019】
このようにして形成された被覆粒子は、水不溶性高分子物質に対する溶出制御物質の配合割合が相互に異なる2以上の被覆層からなる溶出制御膜を備えた形態となる。
【0020】
【実施例】
薬物(解熱鎮静剤)としてアセトアミノフェンを含有する粒子(核粒子)の表面に膜剤液を噴霧し、乾燥固化させて溶出制御膜を形成した。溶出制御膜の被覆処理は、ワースター式流動層装置を用いて行った。
【0021】
核粒子は、アセトアミノフェン原料粉(平均粒子径70μm)に下記処方の結合剤液を噴霧して、所定の粒子径に造粒したものを用いた。結合剤液の噴霧量は、固形分重量がアセトアミノフェン原料粉の重量に対して10%となるようにした。
【0022】
[結合剤液処方]
HPMC(TC−5E):5.0重量%
トレハロース     :10.0重量%
精製水        :85.0重量%
*HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース
【0023】
膜剤液は、水不溶性高分子物質としてエチルセルロース、溶出制御物質としてD−マンニトール、さらに可塑剤としてトリアセチンを配合した水系膜剤液を用い、エチルセルロース(水不溶性高分子物質)に対するトリアセチン(溶出制御物質)の配合割合を変えた5種類のもの(第1液〜第5液)を作製した。その処方を表1に示す。尚、エチルセルロースは、米国FMC社製の「アクアコート」(商品名)を使用した。
【0024】
【表1】


【0025】
[実施例1]
下記の順序で、核粒子の表面に3層の被覆層からなる溶出制御膜を形成した。
▲1▼第2液を固形分重量比(噴霧された膜剤液中の固形分の総重量と核粒子の全重量との比率)で10%噴霧して、核粒子の表面に第1被覆層を形成した。
▲2▼10分間の中間乾燥を行った。
▲3▼第3液を固形分重量比で10%噴霧して、第1被覆層の上層に第2被覆層を形成した。
▲4▼10分間の中間乾燥を行った。
▲5▼第4液を固形分重量比で10%噴霧して、第2被覆層の上層に第3被覆層を形成した。
▲6▼40分間の最終乾燥(熱処理)を行った。
【0026】
[比較例1]
第2液を固形分重量比で15%噴霧して、核粒子の表面に単層の被覆層を形成した。
【0027】
[比較例2]
第2液を固形分重量比で25%噴霧して、核粒子の表面に単層の被覆層を形成した。
【0028】
[比較例3]
第2液を固形分重量比で30%噴霧して、核粒子の表面に単層の被覆層を形成した。
【0029】
実施例1、比較例1〜3の被覆粒子について、薬物(アセトアミノフェン)の溶出率の経時変化を求めたところ図1に示す結果が得られた。同図に示すように、比較例1〜3の被覆粒子は、溶出速度が初期時に高く、時間の経過とともに減少する2次曲線的な溶出態様を示した。特に、固形分重量比を10%とした比較例1においてその傾向が顕著である。一方、実施例1の被覆粒子は、固形分重量比が比較例3と同じ30%であるにもかかわらず、溶出速度が初期時からほぼ一定であり、いわゆるゼロ次溶出に近い溶出態様を示した。
【0030】
つぎに、薬物としてテオフィリンを含有する粒子(核粒子)の表面に上記処方の膜剤液を噴霧し、乾燥固化させて溶出制御膜を形成した。溶出制御膜の被覆処理は、ワースター式流動層装置を用いて行った。尚、核粒子は、テオフィリン原料粉に上記処方の結合剤液を噴霧し、所定の粒子径に造粒したものを用いた。結合剤液の噴霧量は、固形分重量がテオフィリン原料粉の重量に対して10%となるようにした。
【0031】
[実施例2]
下記の順序で、核粒子の表面に4層の被覆層からなる溶出制御膜を形成した。
▲1▼第2液を固形分重量比で10%噴霧して、核粒子の表面に第1被覆層を形成した。
▲2▼10分間の中間乾燥を行った。
▲3▼第2液を固形分重量比で10%噴霧して、第1被覆層の上層に第2被覆層を形成した。
▲4▼10分間の中間乾燥を行った。
▲5▼第3液を固形分重量比で30%噴霧して、第2被覆層の上層に第3被覆層を形成した。
▲6▼10分間の中間乾燥を行った。
▲7▼第4液を固形分重量比で30%噴霧して、第3被覆層の上層に第4被覆層を形成した。
▲8▼40分間の最終乾燥(熱処理)を行った。
【0032】
[比較例4]
第2液を固形分重量比で80%噴霧して、核粒子の表面に単層の被覆層を形成した。
【0033】
実施例2、比較例4の被覆粒子について、薬物(テオフィリン)の溶出率の経時変化を求めたところ図2に示す結果が得られた。同図に示すように、比較例4の被覆粒子は、溶出速度が初期時に高く、時間の経過とともに減少する2次曲線的な溶出態様を示した。一方、実施例4の被覆粒子は、固形分重量比が比較例4と同じ80%であるにもかかわらず、溶出速度が初期時から殆ど一定であり、いわゆるゼロ次溶出の溶出態様を示した。
【0034】
【発明の効果】
本発明の以下に示す効果を奏する。
(1)投与直後から薬物(有効成分)が一定速度で持続して溶出する態様、すなわち、いわゆるゼロ次溶出の溶出態様又はそれに近い溶出態様を実現することができる。しかも、比較的少ない膜剤量でこの効果が実現できるので、経済的にも有利である。
【0035】
(2)水系膜剤液を使用できるので、被覆粒子を製造する際の環境負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶出率の経時変化を示す図である。
【図2】溶出率の経時変化を示す図である。
【図3】実施例で使用したワースター式流動層装置の基本構造例を示す図である。
【出願人】 【識別番号】591011384
【氏名又は名称】株式会社パウレック
【出願日】 平成14年7月5日(2002.7.5)
【代理人】 【識別番号】100064584
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 省吾

【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳

【識別番号】100101616
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 吉之

【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦

【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛

【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭

【公開番号】 特開2004−35508(P2004−35508A)
【公開日】 平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願番号】 特願2002−197440(P2002−197440)