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【発明の名称】 TGFβ作用抑制剤
【発明者】 【氏名】竹鼻 健司
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1            味の素株式会社内

【氏名】二木 史恵
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1            味の素株式会社内

【氏名】小野 幸胤
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1            味の素株式会社内

【氏名】飯野 幸生
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1            味の素株式会社内

【氏名】小林 幹
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1            味の素株式会社内

【要約】 【課題】TGFβが関与する組織線維化を予防、または治療するのに有効な薬剤を提供することである。

【解決手段】シクロプロパンカルボン酸アミド化合物または製薬学的に許容されるその塩を有効成分とするTGFβ作用抑制剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるシクロプロパンカルボン酸アミド化合物またはその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有するTGFβ作用抑制剤。
【化1】


〔式中、R、Rはそれぞれ同じでも異なってもよく、アルキル基またはハロゲン原子を示し、R、Rはそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子またはアルキル基を示し、Rは置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を示し、B,Bはそれぞれ同じでも異なってもよく、置換基を有してもよい芳香環または置換基を有してもよい芳香族複素環を示し、−X−は、原子間結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−CR10−、−O−CHR11−、−CHR12−O−、−S−CHR13−、−CHR14−S−(ここで、R、R、Rは水素原子、アルキル基、またはアシル基のいずれかを示し、R、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミノ保護基で置換されたアミノ基、カルボキシル基アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、またはシアノ基を示す)を示し、−Y−は−CO−または−CH−を示し、nは0〜6から選ばれる整数を示す。〕
【請求項2】
一般式(I)の−X−が、−O−,−S−,−NH−,−CH−,−CH(OH)−、または−S−CH−のいずれかである請求項1記載TGFβ作用抑制剤。
【請求項3】
一般式(I)のBおよびBが、共にベンゼン環である請求項2記載のTGFβ作用抑制剤。
【請求項4】
一般式(I)のBが、置換基を有してもよいピジリン、置換基を有してもよいピリミジンのいずれかを示し、Bが、置換基を有してもよいベンゼン環である請求項3記載のTGFβ作用抑制剤。
【請求項5】
一般式(I)のR、Rがそれぞれ同じでも異なってもよく、メチル基または塩素原子であり、Rが2,2−ジメチルシクロプロピル基または2,2−ジクロロシクロプロピル基のいずれかであり、−Y−が−CO−であり、n=0である請求項4記載のTGFβ作用抑制剤。
【請求項6】
一般式(I)のR、Rがそれぞれ同じでも異なってもよく、メチル基または塩素原子であり、Rが置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよいヘテロアリール基であり、−Y−が−CO−であり、nが0〜3から選ばれる整数である請求項4記載のTGFβ作用抑制剤。
【請求項7】
一般式(I)のR、Rがそれぞれ同じでも異なってもよく、メチル基または塩素原子であり、Rが置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよいヘテロアリール基であり、−Y−が−CH−であり、nが0〜3から選ばれる整数である請求項4記載のTGFβ作用抑制剤。
【請求項8】
一般式(I)のR、Rが水素原子である請求2〜7のいずれか1項記載のTGFβ作用抑制剤。
【請求項9】
一般式(I)で示されるシクロプロパンアミド誘導体が下記の式で示される化合物であるTGFβ作用抑制剤。
【化2】


【化3】


【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載のTGFβ作用抑制剤を有効成分とする、臓器組織線維化の予防薬または治療薬。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項記載のTGFβ作用抑制剤を有効成分とする、肺線維症、肝硬変、動脈硬化症、強皮症、経皮経管冠動脈血管拡張術後の冠動脈再狭窄、間質性肺炎、間質性心筋炎、間質性膀胱炎、糸球体腎炎、血管炎、糖尿病性腎症、高血圧性腎硬化症、HIV腎症、IgA腎症、ループス腎症、間質性腎炎、尿管閉塞による閉塞腎、または熱傷後の皮膚瘢痕化に伴う線維化いずれかの予防薬または治療薬。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項記載のTGFβ作用抑制剤を有効成分とする、薬剤投与により引き起こされる線維化の予防薬または治療薬。
【請求項13】
薬剤が、抗腫瘍剤、抗生剤、抗菌剤、抗不整脈剤、消炎剤、抗リウマチ剤、インターフェロン又は小柴胡湯である、請求項11記載の線維化の予防薬または治療薬。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか1項記載のTGFβ作用抑制剤を有効成分とする、抗腫瘍剤投与に伴う肺線維症の予防薬または治療薬。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項記載のTGFβ作用抑制剤を有効成分とする、TGFβによるα平滑筋型アクチン(αSMA)の産生増強作用、TGFβによるコラーゲンの産生増強作用、またはTGFβによるプラスミノーゲンアクチベーター阻害因子1(PAI−1)の産生増強作用いずれかの抑制剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は難治性かつ進行性の臓器障害を引き起こす種々の線維化疾患を、予防または治療するのに有効なTGFβ作用抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
臓器の線維化は、炎症などにより障害を受けた組織の修復反応が何らかの理由により正常性を失った結果、過剰な組織修復として引き起こされる。線維化した臓器は著しい機能障害を伴い、臓器特異的に種々の難治性疾患の原因となる。このような線維化が原因となる疾患としては、肺線維症、肝硬変、動脈硬化症、強皮症、経皮経管冠動脈血管拡張術後の冠動脈再狭窄、間質性肺炎、間質性心筋炎、間質性膀胱炎、糸球体腎炎、血管炎、糖尿病性腎症、高血圧性腎硬化症、HIV腎症、IgA腎症、ループス腎症、間質性腎炎、尿管閉塞による閉塞腎、熱傷後の皮膚瘢痕化などの疾患が挙げられる。
線維化疾患の成因の共通機序は過剰な組織修復反応であり次のように考えられている。ある種の炎症性病変が先行した後に、その修復過程において主として免疫担当細胞や血小板などから、種々のサイトカイン・増殖因子が産生・活性化され、それらが線維芽細胞の増殖や活性化、形質転換を促進し、またコラーゲンなどの細胞外基質の沈着を起こす。この過程において過剰な修復反応が惹き起こされると、組織の線維化が進行する。なかでもTGFβは種々の線維化疾患の成因に共通のサイトカインとして、その役割が強調されている。TGFβは血管内皮細胞や上皮細胞、リンパ球細胞には増殖抑制作用を示す一方で、線維芽細胞には増殖を促進し、また平滑筋αアクチン(αSMA)などを発現する筋線維芽細胞への形質転換を促す。さらにコラーゲンなどの細胞外基質の合成を強力に増加させ、同時にプラスミノーゲアクチベータ阻害因子(PAI−1)などの線溶系阻害物質の産生を亢進するなど、組織線維化の原因となる分子である。
それゆえ、線維化疾患の治療を目的として、TGFβの中和抗体や受容体拮抗物質がさかんに研究されているが、未だ有効な治療手段は見出されていない。
【0003】
一方、本発明で用いるシクロプロパンカルボン酸アミド化合物は、公開特許(WO00/15603およびWO01/02359)に記載されており、その作用としてはNF−kappaB阻害活性が知られているが、本発明で対象とするTGFβ作用抑制効果については開示されていない。一般に、TGFβ作用により細胞内で引き起こされるシグナル伝達経路は、NF−kappaBの活性化に関わる経路とは異なることが知られており、本発明で用いるシクロプロパンカルボン酸アミド化合物がTGFβ作用を抑制することは類推できない。
また本発明と類似の骨格を有するシクロプロパンカルボン酸アミド化合物としては、たとえば公開特許(WO99/61013)に下記化合物の記載があるが、本発明で対象とするTGFβ作用抑制効果については開示されていない。
【0004】
【化4】


【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、TGFβ刺激による組織線維化の促進作用を選択的に抑制する薬剤を開発し提供する事である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、TGFβによる臓器組織の線維化促進作用を抑制する薬物を見出すべく鋭意検討した結果、一般式(I)で示されるシクロプロパンカルボン酸アミド化合物がTGFβ作用を強く抑制することを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で示されるシクロプロパンカルボン酸アミド化合物または製薬学的に許容されるその塩を有効成分とするTGFβ作用抑制剤を提供する。
【0007】
【化5】


〔式中、R、Rはそれぞれ同じでも異なってもよく、アルキル基またはハロゲン原子を示し、R、Rはそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子またはアルキル基を示し、Rは置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基を示し、B,Bはそれぞれ同じでも異なってもよく、置換基を有してもよい芳香環または置換基を有してもよい芳香族複素環を示し、−X−は、原子間結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−CO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−CR10−、−O−CHR11−、−CHR12−O−、−S−CHR13−、−CHR14−S−(ここで、R、R、Rは水素原子、アルキル基、またはアシル基のいずれかを示し、R、R10、R11、R12、R13、R14はそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミノ保護基で置換されたアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、またはシアノ基を示す)を示し、−Y−は−CO−または−CH−を示し、nは0〜6から選ばれる整数を示す。〕
【0008】
【発明の実施の形態】
一般式(I)中、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子があげられる。
アルキル基とは、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基を示し、具体的には例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基などがあげられ、好ましくはメチル基、エチル基などがあげられる。
【0009】
シクロアルキル基とは、炭素数3〜6の環状のアルキル基を示し、具体的には例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがあげられ、より好ましくはシクロプロピル基があげられる。
アリール基とは、炭素原子で構成される単環または2環の芳香環からなる置換基を示し、具体的には例えばフェニル基、インデニル基、ナフチル基などがあげられ、好ましくはフェニル基があげられる。
アラルキル基とは、アリール基で置換されたアルキル基を示し、そのアリール基の例は前記「アリール基」で示したものがあげられ、そのアリール基上には置換基を有していてもよい。具体的にはベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基などがあげられ、好ましくはベンジル基があげられる。
【0010】
ヘテロアリール基とは、炭素、窒素、酸素、およびイオウなどで構成される5〜7員の1〜3環の芳香族複素環からなる置換基をあらわし、具体的には例えば、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、チアジアゾリル基、インドリル基などがあげられ、好ましくはピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基であり、より好ましくはピリジル基である。
芳香環とは、炭素原子で構成される単環または2つの環からなる芳香環をあらわし、具体的には例えばベンゼン環、ナフタレン環、インデン環などがあげられ、好ましくはベンゼン環があげられる。
芳香族複素環とは、炭素および窒素、酸素、イオウなどで構成される5〜7員の1〜3つの環からなる芳香族複素環をあらわし、具体的には例えば、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、フラザン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾピラゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、プリン環、ピラゾロピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、ベンゾジアゼピン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環などがあげられる。
【0011】
アシル基とは、ホルミル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖もしくは環状のアルキル基を有するアシル基、または置換基を有してもよいアリール基を有するアシル基であり、具体的には例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基などがあげられる。
アルコキシ基とは、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖または環状のアルキル基を有するアルコキシ基を示し、具体的には例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基などがあげられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基などがあげられる。
【0012】
アリールオキシ基とは、酸素原子上に置換基を有してもよいアリール基が置換したアリールオキシ基を示し、そのアリール基の例は前記「アリール基」で示したものがあげられる。具体的には例えばフェノキシ基、インデニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などがあげられ、好ましくはフェノキシ基があげられる。
アルキルチオ基とは、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状または環状のアルキル基を有するアルキルチオ基を示し、具体的には例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロブチルチオ基などがあげられる。
【0013】
アリールチオ基とは、硫黄原子上に置換基を有してもよいアリール基が置換したアリールチオ基を示し、そのアリール基の例は前記「アリール基」で示したものがあげられる。具体的には例えばフェニルチオ基、インデニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基などがあげられ、好ましくはフェニルチオ基があげられる。
アシルオキシ基とは、ホルミルオキシ基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖もしくは環状のアルキル基を有するアシルオキシ基、または置換されていてもよいアリール基を有するアシルオキシ基を示し、具体的には例えばホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、クロトノイルオキシ基、イソクロトノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基などがあげられる。
【0014】
アルキルアミノ基とは、アルキル基で一置換もしくは二置換されたアミノ基であり、そのアルキル基の例は前記「アルキル基」で示したものがあげられる。具体的には例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、メチルエチルアミノ基などがあげられる。
「アミノ保護基で置換されたアミノ基」におけるアミノ保護基とは、通常用いられる保護基であり、アミノ基を諸反応から保護するものであれば特に限定されない。具体的には、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基などのアシル基、またはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、(フルオレン−9−イル)メトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基などがあげられる。
アルコキシカルボニル基とは、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖または環状のアルキル基を有するアルコキシカルボニル基を示し、具体的には例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基などがあげられる。
【0015】
置換基を有してもよいとは、置換基を有しない場合、および置換基を有する場合には少なくとも1個以上の置換基により置換されていることを示し、該置換基は同一または異なっていてもよく、また置換基の位置は任意であって、特に限定されるものではない。置換基として具体的には例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、メルカプト基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミノ保護基で置換されたアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、またはシアノ基などがあげられる。
【0016】
本発明では、一般式(I)で表されるシクロプロパンカルボン酸アミド化合物またはその製薬学的に許容される塩としては、式中、次のものが好ましい。
【0017】
、Rしてはメチル基、塩素原子、臭素原子が好ましく、メチル基、塩素原子がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
、Rとしては水素原子またはメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
としては2,2−ジメチルシクロプロピル基、2,2−ジクロロシクロプロピル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよいヘテロアリール基が好ましく、2,2−ジメチルシクロプロピル基、2,2−ジクロロシクロプロピル基がより好ましい。
、Bとしては置換基を有してもよい芳香環または置換基を有してもよい芳香族複素環が好ましく、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいピリジン環、置換基を有してもよいピリミジン環がより好ましく、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいピリジン環がさらに好ましい。特にBおよびBが、共にベンゼン環であるのが好ましく、又は、BまたはBの少なくとも一方が、置換基を有してもよいベンゼン環ではないのが好ましく、又は、BまたはBの少なくとも一方が、置換基を有してもよい芳香族複素環であるのが好ましく、又は、Bが、置換基を有してもよいピリジン環、置換基を有してもよいピリミジン環のいずれかを示し、Bが、置換基を有してもよいベンゼン環であるのが好ましい。
−X−としては−O−、−S−、−NH−、−CH−、−CH(OH)−、−S−CH−が好ましい。
−Y−としては−CO−、−CH−が好ましく、−CO−がより好ましい。
nとしては0〜6から選ばれる整数であるのが好ましく、0〜3から選ばれる整数であるのがより好ましい。
【0018】
、Rがメチル基である場合、R、Rが置換されているシクロプロピル基上のカルボニル基の隣の炭素原子の立体配置がSであるのが好ましい。
、Rが塩素原子または臭素原子である場合、R、Rが置換されているシクロプロピル基上のカルボニル基の隣の炭素原子の立体配置がRであるのが好ましい。
【0019】
製薬学的に許容される塩とは、具体的には例えば十分に酸性である本発明化合物についてはそのアンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩などが例示され、これらが好ましい)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩などが例示され、これらが好ましい)、有機塩基の塩としてはたとえばジシクロヘキシルアミン塩、ベンザチン塩、N−メチル−D−グルカン塩、ヒドラミン塩、アルギニンまたはリジンのようなアミノ酸の塩などが挙げられる。さらに十分に塩基性である本発明化合物ついてはその酸付加塩、例えば塩酸、硫酸、硝酸、りん酸などの無機酸塩、または酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチル硫酸等の有機酸塩などが挙げられる。また、場合によっては含水物あるいは水和物であってもよい。
また本発明は、全ての光学異性体及び幾何異性体などの異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶形を包含するものである。
【0020】
本発明の化合物は公開特許(WO00/15603およびWO01/02359)に記載される方法またはそれを応用することに合成することができる。
【0021】
本発明におけるTGFβ作用とは、TGFβが生体に及ぼす生理的および病因的な種々の作用であり、ある種の遺伝子の発現変化を介して発揮されるものである。主なものとしては、発生分化過程や病因的な原因による種々の細胞の形質変化、上皮系細胞の間葉系細胞転移や、炎症や創傷の治癒過程における組織修復とその過剰反応による組織線維化などである。こうした生体反応においては、TGFβは種々の細胞に作用しさまざまな蛋白質の産生を誘導するが、代表的なものとしては、平滑筋αアクチン(αSMA)などの筋繊維芽細胞や平滑筋細胞、肝星細胞、血管周皮細胞を代表とする間葉系細胞に特異的なマーカー蛋白質や、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンなどの種々の細胞外マトリクスや、あるいはプラスミノーゲンアクチベータ−阻害因子(PAI−1)などの抗線溶系蛋白質や組織マトリクスメタロプロテアーゼ阻害因子(TIMP)などの蛋白質分解抑制因子などがあげられる。本発明のTGFβ作用抑制剤とは、こうした生体反応を抑制するものであり、例えば、TGFβ刺激により誘導される平滑筋αアクチン(αSMA)産生の抑制や、TGFβ刺激により誘導されるコラーゲン産生の抑制、TGFβ刺激により誘導されるPAI−1発現の抑制などの生物活性を有するものである。
一般式(I)の化合物は後述するように、TGFβ作用の阻害活性を有し、組織修復過程においてTGFβ作用の過剰が原因となる種々の線維化疾患の予防または治療に有用である。
【0022】
一般式(I)の化合物を線維化の予防および進行抑制剤として使用する場合、経口投与、静脈内投与、経皮投与、点眼投与することができる。投与量は投与する患者の症状、年齢、投与方法によって異なるが、通常1〜3000mg/kg/日である。
【0023】
一般式(I)の化合物は常法により製剤化することができる。製剤の形としては注射剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、クリーム剤、座薬などが挙げられ、製剤用担体としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、澱粉、結晶セルロース、炭酸カルシウム、カオリン、デンプン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、エタノール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム塩、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アセチルセルロース、白糖、酸化チタン、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル、デヒドロ酢酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガント、メチルセルロース、卵黄、界面活性剤、白糖、単シロップ、クエン酸、蒸留水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、ブドウ糖、塩化ナトリウム、フェノール、チメロサール、パラオキシ安息香酸エステル、亜硫酸水素ナトリウム等があり、製剤の形に応じて、一般式(I)の化合物と混合して使用される。
さらに、本発明の製剤中における一般式(I)の含有量は、製剤の形によって大きく変動し、特に限定されるものではないが、通常は、組成物全量に対して0.01〜100重量%、好ましくは1〜100重量%である。
【0024】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に述べる。なお、以下の実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明をこれに限定するものではない。
なお実施例にて評価を行う下記化合物1および化合物2は、公開特許(WO00/15603およびWO01/02359)に記載される方法に従い合成した。
【0025】
【化6】


【0026】
(実施例1)
TGFβ刺激により誘導される平滑筋αアクチン(αSMA)産生の抑制
ヒト肺線維芽細胞(HLF)は、Clonetics社より購入し、FGM−2培地(三光純薬)にて37℃、5% CO下で培養を行った。試験前日に、HLF細胞は96穴プレートに1穴あたり1×10細胞を蒔き一晩培養を行った。被験物質を適当な濃度で添加し、その6時間後にヒトTGFβを最終濃度10 ng/mlで添加した。さらに培養を4日間継続し、細胞内に蓄積されたαSMA量をWhole−Cell−ELIAS法にて測定した。被験物質の代わりに、その溶媒であるDMSOのみを添加した場合をTGFβ刺激のみのコントロールとした。培養終了後、培養液を除き、PBSにて細胞を洗浄後、2%パラホルムアルデヒド/PBS溶液にて30分間、室温で固定処理を行った。続いて0.2% Triton X100/PBS溶液にて10分間処理し、膜透過性を上げる処理を行った後、PBSにて洗浄した。ELISA反応は、1次抗体にαSMA抗体、2次抗体にはHRP(Horse Radish Peroxidase)標識ウサギ抗マウスIgGを用いて、Current Protocols In Immunology(Wiley社)に記載の方法で行った。HRP活性の検出はTMB(3,3’,5,5’Tetramethylbenzidine)を基質に用いて、450nMの吸光度を測定した。本評価系において、本発明の化合物はTGFβ刺激により誘導されるαSMA産生の抑制効果を示した。図1にCompound1およびCompound2の評価結果を示す。
【0027】
なお既知のAlamar Blue法(Biosource社)を用いて被験物質の細胞生育性に及ぼす影響を検討したが、試験を行った濃度でのCompound1およびCompound2の添加による、細胞生育性の変化は観察されなかった。
【0028】
(実施例2)
TGFβ刺激により誘導されるコラーゲン産生の抑制
ヒト肺線維芽細胞(HLF)は実施例2と同様に培養を行った。試験前日に、HLF細胞は96穴プレートに1穴あたり1×10細胞を蒔き一晩培養を行った。被験物質を適当な濃度で添加し、その6時間後にヒトTGFβを最終濃度10 ng/mlで添加した。さらに培養を16時間継続し、細胞内に蓄積されたコラーゲン量をWhole−Cell−ELIAS法にて測定した。被験物質の代わりに、その溶媒であるDMSOのみを添加した場合をTGFβ刺激のみのコントロールとした。培養終了後、培養液を除き、PBSにて細胞を洗浄後、2% パラホルムアルデヒド/PBS溶液にて30分間、室温で固定処理を行った。続いて0.2% Triton X100/PBS溶液にて10分間処理し、膜透過性を上げる処理を行った後、PBSにて洗浄した。ELISA反応は、1次抗体にマウス抗ヒトPIP(I型プロコラーゲン C末端ペプチド)モノクローナル抗体、2次抗体にはHRP(Horse Radish Peroxidase)標識ウサギ抗マウスIgGを用いて、Current Protocols In Immunology(Wiley社)に記載の方法で行った。HRP活性の検出は化学発光基質(ECLシステム、アマシャムファルマシア)を基質に用いて、発光度を検出した。本評価系において、TGFβは1晩後にコラーゲンの細胞内蓄積を約2倍程度上昇させたが、本発明の化合物はTGFβ刺激により上昇する細胞内コラーゲンの蓄積抑制効果を示した。図2にCompound1およびCompound2の評価結果を示す。
【0029】
(実施例3)
TGFβ刺激により誘導されるPAI−1発現の抑制
SV40大型T抗原にて不死化させたヒトさい帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)にTGFβ10ng/mlを添加した後、6時間後に細胞を回収し、RNAを調整した。被験物質はTGFβ処理の30分前に最終濃度5μg/mlとなるように添加し、またコントロールとしてDMSOを添加した。薬剤処理を施した細胞からの総RNAの調製はRNeasyMiniキット(キアゲン社:Cat.No.74104)を用い、添付のプロトコール従って実施した。約1x10細胞から精製した総RNAを定量した後、5μg相当を、SuperscriptTM First−Strand Synthesis System for RT−PCRキット(インビトロジェン社:Cat.No.11904−018)を用い、添付のプロトコールに従ってcDNAを合成した。こうして作成したcDNAを用いてリアルタイム定量PCR解析を常法に従い実施した。すなわち、測定用PCRプライマーはヒトPAI−1遺伝子mRNA配列(Genebank accession No.M16006)のforward側5’−tgtgtgtgagcagtggacacgt−3’(2534−2555番目)、Reverse側5’−atctttgtgccctaccctctgg−3’(2630−2651番目)を、PCRプライマー設計支援ソフトウェアPrimerExpress(PEバイオシステムズ社)を用いて設計し、日本バイオサービスにて委託合成した。リアルタイム定量PCRの反応は、溶液量50μlで実施した。2xSYBR Green Master Mix(PEバイオシステムズ社、Cat.No.4309155)25μlに上記作成のcDNAテンプレートを1μl、上記プライマーを各々終濃度100nMとなるように加え、オートクレーブ滅菌水で50μlに合わせた。リアルタイム定量PCR 装置Sequence Detection System 7700(PEバイオシステムズ社)を用い、装置操作マニュアル及び2xSYBR Green Master Mix添付プロトコールに従って反応を実施し、取得したデータを解析した。本評価系において、TGFβは6時間後にPAI−1mRNAの産生を約3.5倍程度上昇させたが、本発明の化合物はTGFβ刺激により誘導されるPAI−1mRNAの抑制効果を示した。図3にCompound1の評価結果を示す。
【0030】
【発明の効果】
上記の結果からも明らかなように、本発明の化合物は、TGFβにより引き起こされる種々の作用を抑制する。特に臓器組織の線維化疾患の進展を、予防または治療するのに有用である。
【0031】
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒト肺繊維芽細胞でのTGFβ刺激による平滑筋アクチンα産生に対する効果を示す図である。
【図2】ヒト肺繊維芽細胞でのTGFβ刺激によるコラーゲン1産生に対する効果を示す図である。
【図3】ヒトさい帯静脈血管内皮細胞でのTGFβ刺激によるPAI−1産生に対する効果を示す図である
【出願人】 【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
【住所又は居所】東京都中央区京橋1丁目15番1号
【出願日】 平成14年7月3日(2002.7.3)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−35475(P2004−35475A)
【公開日】 平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願番号】 特願2002−195168(P2002−195168)