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【発明の名称】 ウイルス性心筋炎の予防または治療剤
【発明者】 【氏名】松森 昭

【要約】 【課題】ウイルスの種類にかかわらず種々の臓器における細胞傷害の発症予防および治療を行うことによりウイルス性心筋炎およびウイルス性心筋炎に関連するウイルス性疾患の予防または治療剤を提供する。

【解決手段】セチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含むウイルス性心筋炎およびウイルス性心筋炎に関連するウイルス性疾患の予防または治療剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セチリジン([2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]酢酸)、またはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有するウイルス性心筋炎の予防または治療剤。
【請求項2】
前記ウイルス性心筋炎が、RNAウイルスまたは肝炎ウイルスによって引き起こされるものである請求項1に記載のウイルス性心筋炎の予防または治療剤。
【請求項3】
前記RNAウイルスがオルトミクソウイルスまたはピコルナウイルスである請求項2に記載のウイルス性心筋炎の予防または治療剤。
【請求項4】
セチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、ウイルス性心筋炎に関連するウイルス性疾患の予防または治療剤。
【請求項5】
前記ウイルス性心筋炎に関連するウイルス性疾患が、RNAウイルスまたは肝炎ウイルスによって引き起こされるものである請求項4に記載のウイルス性疾患の予防または治療剤。
【請求項6】
前記RNAウイルスがオルトミクソウイルスまたはピコルナウイルスである請求項5に記載のウイルス性疾患の予防または治療剤。
【請求項7】
前記ウイルス性疾患が、ウイルス性肝炎(A型、B型、C型、E型、G型、TTV型)、アデノウイルス感染症、インフルエンザ、ヘルペス感染症、ウイルス性脳炎、サイトメガロウイルス感染症、ウイルス性腸炎またはウイルス性心膜炎からなる群から選ばれる請求項4に記載のウイルス性疾患の予防または治療剤。
【請求項8】
セチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、ウイルス性の細胞傷害の改善または予防剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含むウイルス性心筋炎またはウイルス性心筋炎に関連する(ないしは、ウイルス性心筋炎により惹起される)ウイルス性疾患の予防または治療剤、並びにウイルス性の細胞傷害の改善または予防剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ウイルス性疾患の予防にはウイルスワクチンが主として用いられて来たが、ワクチンは一般に各々のウイルスに特異的であり、それぞれに対応するウイルスに対してのみ有効である。しかしながら、ウイルスの種類は多いため、現在、極めて限られたウイルスに対してのみワクチンが実用化されている。また、ウイルスは変異株が多く、同一のウイルスに対してもワクチンが有効でないことも多い。更に、副作用の少ないワクチンを数多く開発することは極めて困難である。
【0003】
他方、種々の抗ウイルス剤(アシクロビル、ガンシクロビル、アラAなど)も開発され、実用化されているが、極めて限られたウイルス感染症にのみ有効で、広範なウイルス性疾患に有効な薬剤は見出されていない。また、これらの抗ウイルス剤は副作用が強く、広く臨床に用いることは困難である。更に、近年はインターフェロンがウイルス性肝炎等の治療に応用されているが、発熱などの副作用が高頻度に出現している。また、インターフェロンはウイルスの増殖を抑制するが、細胞傷害を直接防御するとの報告はみられない。更に、ガンマグロブリンは、広くウイルス性疾患の治療に用いられているが、その成績は必ずしも一定ではない。
【0004】
上記したように、ウイルスには数多くの種類があり、各ウイルスに対する特異的な治療を行うことは、一般的には困難である。従って、多くのウイルス性疾患において発生する種々の臓器における細胞傷害等を予防または治療することが、極めて重要である。
【0005】
また、ウイルス性疾患においては、しばしば細胞傷害が伴うことが知られている。この細胞傷害は、ウイルスの増殖による直接的な傷害のほか、ウイルス感染によって引き起こされる種々の免疫反応が関与すると考えられている。このようなウイルス性疾患に伴う細胞傷害を予防または治療することも、極めて重要である。
【0006】
一般に、心筋炎は心筋の炎症性病変に基づく心筋障害であり、病因的にはウイルス、細菌等による感染性心筋炎と、膠原病やサルコイドーシス等による非感染性心筋炎に分類される。日常遭遇する心筋炎の殆どはウイルスによるものであり、コクサッキーB、エコー、単純ヘルペスウイルス等が多く、原因不明の特発性心筋炎も、それらの殆どがウイルス性であると考えられている。一般に、心筋炎は、急性に発症し、ほぼ完全に治癒するものが多いが、心機能障害が長期にわたり持続するものもある。
【0007】
心筋炎の臨床症状は、炎症症状と心症状とからなり、殆ど無症状のものから、心不全や不整脈により急速に死に至るものまで種々である。ウイルス性心筋炎においては、発熱、咳嗽、咽頭痛などのかぜ症状や、下痢、腹痛等の消化器症状が先行し、10日間以内に胸痛、不整脈、心不全、アダムスーストークス症候群など、多彩な心症状が出現する。
【0008】
すなわち、それまで心臓に異常のなかった人が発熱、咳、頭痛、咽頭痛、倦怠感などの風邪症状や、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状に引き続いて、動悸、胸痛、呼吸困難やむくみ、顔面蒼白、チアノーゼ、不整脈や失神発作、四肢末梢の冷感、関節痛、筋肉痛、発疹などの症状が出現した場合、急性ウイルス性心筋炎が強く疑われる。
【0009】
風邪と思われる患者を診察する際、心筋炎(特にウィルス性心筋炎)の合併を生じている可能性があるが、風邪として見過ごされやすい疾患の一つとされている。
【0010】
従って、臨床的診断が必ずしも容易でない心筋炎(特にウィルス性心筋炎)、および/又はこれに伴うウイルス性疾患、ないしはウイルス性の細胞傷害を効果的に治療ないし予防可能な薬剤を開発することは、極めて有意義である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ウイルスの種類にかかわらず、ウイルス性心筋炎の予防または治療を効果的に行うことを可能とする薬剤を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、ウイルス性心筋炎に関連するウイルス性疾患の予防または治療を可能とする薬剤を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、ウイルス性の細胞傷害の改善または予防を可能とする薬剤を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究の結果、意外にもセチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩が有効であることを見いだし、本発明を完成した。即ち、本発明によれば、セチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含むウイルス性心筋炎の予防または治療剤が提供される。
【0015】
本発明によれば、更に、以下のものが提供される。
【0016】
(1)セチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含むウイルス性心筋炎に関連するウイルス性疾患の予防または治療剤。
【0017】
(2)ウイルス性心筋炎またはそれに関連するウイルス性疾患がRNAウイルスまたは肝炎ウイルスによって引き起こされるものである予防または治療剤。
【0018】
(3)RNAウイルスがオルトミクソウイルスまたはピコルナウイルスである予防または治療剤。
【0019】
(4)ウイルス性疾患がウイルス性肝炎(A型、B型、C型、E型、G型、TTV型)、アデノウイルス感染症、インフルエンザ、ヘルペス感染症、ウイルス性脳炎、サイトメガロウイルス感染症、ウイルス性腸炎またはウイルス性心膜炎である予防または治療剤。
【0020】
(5)セチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩を有効成分として含むウイルス性の細胞傷害の改善または予防剤。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0022】
(セチリジン)
本発明において、セチリジン、すなわち、(±)−[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]酢酸は、下記構造式を有する化合物である。
【0023】
【化1】


【0024】
このセチリジンは公知の化合物であり、その製法は特に制限されない。セチリジンは、例えば、下記文献に開示の方法等によって製造することができる。本発明において、セチリジンは(±)−体(すなわち、ラセミ体)として使用することができるが、必要に応じて、光学分割その他の常法により光学異性体の一方の含有量を増大ないし単離させてもよい。
より具体的には、ここで用いる用語「セチリジンの個々の光学異性体」は、セチリジンの左旋性および右旋性のエナンチオマーを言う。より正確には、それは、少なくとも90質量%(好ましくは少なくとも95質量%)のセチリジンの1つの個々の光学異性体と、多くとも10質量%(好ましくは多くとも5質量%)の他の個々の光学異性体を含むものを言う。セチリジンの右旋性のエナンチオマーは、(そのジヒドロクロリド塩の形が左旋性であるため)レボセチリジン(levocetirizine)としても知られている。それぞれの個々の光学異性体は、コンベンショナルな手段で(すなわち対応するラセミ混合物からの分割、または不斉合成により)得ることができる。
セチリジン、その個々の光学異性体、または薬理学的に許容可能な塩の製造プロセスは、ヨーロッパ特許EP−0 058 146 B1、英国特許第2,225,320および2,225,321号、米国特許第5,478,941号、公表されたヨーロッパ特許出願EP−0 601 028 Al、EP−0 801 064 Al、および公表された国際特許出願WO 97/37982号に記載されている。
【0025】
セチリジンは、従来より持続性選択H−受容体拮抗剤として、アレルギー性鼻炎、湿疹・皮膚炎等に使用されている(例えば、薬業時報社「医療薬 日本医薬品集」1998〜99年版、第831頁を参照)。
【0026】
(薬理学的に許容可能な塩)
セチリジンは遊離の状態でも使用可能であるが、必要に応じて、薬理学的に許容可能な塩としてもよい。このような塩を形成する方法は特に制限されないが、例えば、適当な溶媒中で、適当な酸と処理することにより、薬理学的に許容可能な塩とすることができる。この際に使用可能な溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等が挙げられる。塩形成の際に使用可能な酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、10−カンファースルホン酸等が挙げられる。
【0027】
(予防または治療剤)
本発明において、セチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩は、低毒性でありため、動物とりわけ哺乳動物(例えば、ヒト、イヌ、ウサギ、マウス、ラット等)に対するウイルス性心筋炎またはそれに関連するウイルス性疾患の予防または治療剤、更にはウイルス性の細胞傷害の改善または予防剤として有用である。
【0028】
(ウイルス性心筋炎)
本発明において、「心筋炎」とは、心筋の炎症性病変に基づく心筋障害を言う。また、「ウイルス性心筋炎」とは、感染性心筋炎のうち、ウイルスを病因(agent)とするものを言う。この「ウイルス性心筋炎」は、膠原病やサルコイドーシス等による非感染性心筋炎、ないしは細菌等(ウイルス以外)による感染性心筋炎とは、以下の点で区別することができる(このような区別に関しては、例えば、文献Viral infection of the heart, J.E.Banatvala編集、Edward Arnold社出版、ロンドン1993 pp1−257を参照することができる)。
<心筋炎細菌等による感染性心筋炎との区別>
ウイルス抗体、細菌に対する抗体価の測定
心筋組織からのウイルス、細菌の検出
<非感染性心筋炎との区別>
ウイルス抗体、細菌に対する抗体価の測定
心筋組織からのウイルス、細菌の検出
【0029】
(ウイルス)
本発明において、ウイルス性心筋炎を引き起こすウイルスは、特に制限されない。また、ウイルス性心筋炎に関連するウイルス性疾患(ないしはウイルス性の細胞傷害)を引き起こすウイルスも、特に制限されない。
【0030】
ウイルス性心筋炎および/又は関連するウイルス性疾患(ないしはウイルス性の細胞傷害)を引き起こすウイルスには、DNAウイルスまたはRNAウイルスのいずれに属する病原ウイルスも含まれる。そのような病原ウイルスのうち、DNAウイルスとしては、例えば、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス等)、アデノウイルス、パルボウイルス等を挙げることができる。
【0031】
上記病原ウイルスのうち、RNAウイルスとしては、例えば、レオウイルス、トガウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、オルトミクソウイルス、ブンヤウイルス、アレナウイルス、レトロウイルス、ピコルナウイルス、カリシウイルス等を挙げることができる。
【0032】
本発明の薬剤は、とりわけ、RNAウイルスまたは肝炎ウイルスによって引き起こされるウイルス性心筋炎またはそれに関連するウイルス性疾患に罹患した患者の治療または予防に好ましく適用し得る。ここで、本発明の薬剤が特に好適に適用可能なRNAウイルスとしては、オルトミクソウイルスまたはピコルナウイルスが挙げられる。
【0033】
(関連するウイルス性疾患)
ウイルス性心筋炎に関連するウイルス性疾患の疾患は、ウイルス性心筋炎により惹起される疾患である限り、特に制限されない。このような疾患としては、例えば、ウイルス性肝炎(A型、B型、C型、E型、G型、TTV型)、アデノウイルス感染症、インフルエンザ、ウイルス性肺炎、ウイルス性気管支炎、ヘルペス感染症(単純ヘルペス、EBウイルス(伝染性単核症)、帯状疱疹)、ポリオ、エイズ(HIV感染症)、成人T細胞白血病(ATL)、パピローマ、麻疹、風疹、突発性発疹、伝染性紅斑、ウイルス性脳炎、ウイルス性髄膜炎、サイトメガロウイルス感染症、流行性耳下腺炎、水痘、狂犬病、ウイルス性腸炎、ウイルス性心膜炎、コクサッキーウイルス感染症、エコーウイルス感染症、腎症候性出血熱、ラッサ熱等が挙げられる。
【0034】
更に上記に挙げたウイルス性疾患の中でも、本発明の薬剤は、ウイルス性肝炎(A型、B型、C型、E型、G型、TTV型)、アデノウイルス感染症、インフルエンザ、ヘルペス感染症、ウイルス性脳炎、サイトメガロウイルス感染症、ウイルス性腸炎、ウイルス性心膜炎に対して特に好ましく適用可能である。
【0035】
(細胞障害)
本発明の薬剤は、ウイルス性の細胞傷害の改善または予防剤としても有効である。ここに、「ウイルス性の細胞傷害」とは、心筋細胞の壊死、細胞浸潤線維化などを言う(この「ウイルス性の細胞傷害」の詳細に関しては、例えば文献Viral infection of the heart, J.E.Banatvala編集、Edward Arnold社出版、ロンドン1993 pp1−257を参照することができる)。
【0036】
(投与法)
本発明のセチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩は、経口的または非経口的のいずれでも用いることができ、例えば吸入法、直腸投入、または局所投与等により用いることができる。本発明のセチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩の剤型は、特に制限されない。本発明のセチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩は、例えば医薬品組成物または製剤(例えば、粉末、顆粒、錠剤、ピル剤、カプセル剤、注射剤、シロップ剤、エマルジョン剤、エリキシル剤、懸濁剤、溶液剤等)として用いることができる。
【0037】
これらの組成物または製剤は、例えば、本発明のセチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩を単独で、または必要に応じて医薬として許容可能な担体(アジュバント剤、賦形剤、補形剤及び/又は希釈剤等)と混合した後に、通常の方法に従って製剤化することにより得ることができる。
【0038】
(非経口投与)
本発明において、非経口投与は、例えば、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射または点滴法等を含む。
【0039】
注射用調剤、例えば無菌注射用水性懸濁物または油性懸濁物は、適当な分散化剤または湿化剤及び懸濁化剤を用いて当該分野で知られた方法で調製することができる。その無菌注射用調剤は、また、例えば水溶液等の製剤上許容可能な非経口投与可能な希釈剤または溶媒中の無菌の注射のできる溶液または懸濁液であってもよい。使用可能なビヒクル(vehicle)ないしは溶媒として許容可能なものとしては、水、リンゲル液、等張食塩液等を挙げることができる。
【0040】
更に、通常溶媒または懸濁化溶媒として無菌の不揮発性油も使用可能である。この不揮発性油としては、任意の不揮発性油も脂肪酸、天然または合成または半合成の脂肪油または脂肪酸、および天然または合成または半合成のモノまたはジまたはトリグリセリド類も包含される。
【0041】
直腸投与用の座剤は、その薬物と適当な低刺激性の補形剤、例えばココアバターやポリエチレングリコール類等の、常温では固体であるが腸管の温度では液体で、直腸内で融解し、薬物を放出するもの等と混合することにより、製造することができる。
【0042】
(経口投与用の固形投与剤型)
経口投与用の固形投与剤型としては、例えば、粉剤、顆粒剤、錠剤、ピル剤、カプセル剤等を挙げることができる。このような固形投与剤型において、活性成分化合物は、少なくとも一つの添加物と混合することができる。この際、添加物としては、例えばショ糖、乳糖、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン類、寒天、アルギネート類、キチン類、キトサン類、ペクチン類、トラガントガム類、アラビアゴム類、ゼラチン類、コラーゲン類、カゼイン、アルブミン、合成または半合成のポリマー類またはグリセリド類を使用することができる。
【0043】
上記の固形投与剤型物は、通常の剤型と同様に、更に別の添加物を含むことができる。このような「別の添加物」としては、例えば不活性希釈剤、マグネシウムステアレート等の滑沢剤、パラベン類、ソルビン酸等の保存剤、アスコルビン酸、α−トコフェロール、システイン等の抗酸化剤、崩壊剤、結合化剤、増粘剤、緩衝化剤、甘味付与剤、フレーバー付与剤、パフューム剤等を挙げることができる。錠剤およびピル剤は、更に腸溶性(enteric)コーティングすることもできる。
【0044】
(経口投与用の液剤)
経口投与用の液剤としては、例えば、医薬として許容可能なシロップ剤、エマルジョン剤、エリキシル剤、懸濁剤、溶液剤等を挙げることができる。これらは、当該分野で普通用いられる不活性希釈剤(例えば水)を含んでいてもよい。
【0045】
(投与量)
本発明の薬剤の患者への投与量は、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組み合わせ、患者のその時に治療を行っている病状の程度に応じ、それらまたはその他の要因を考慮して決めることができる。セチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩は、低毒性であるため、安全に使用することができる。
【0046】
当該化合物の1日の投与量は、患者の状態や体重、投与経路等によって異なる場合があるが、例えば成人のウイルス性心筋炎またはそれに関連するウイルス性疾患の治療剤として投与する場合、経口投与では、一日量約0.01〜150mg、好ましくは0.1〜100mg、静注では、一日量約0.01〜50mg、好ましくは0.01〜20mgを1回または2回ないし3回に分けて投与することが好ましい。
【0047】
【実施例】
以下に、試験例によって本発明の効果を明らかにするが、これらは単なる例示であり、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0048】
試験例1
(心不全モデルにおける生存率に対する効果)
【0049】
マウスにおけるEMC(Encephalomyocarditis)ウィルス性心筋炎による心不全モデルにおいて、生存率に対するセチリジンの効果を比較検討した。
【0050】
方法
【0051】
28日齢・雄のDBA/2マウスを3つのグループに分け、全てのグループに、心筋炎を引き起こすウイルスであるEMCウイルスの1pfu/マウス(リン酸緩衝液(PBS)として0.1ml)を腹腔内接種した(ゼロ日)。ここでは、ATCC(American Type Culture Collection Manassas VA, U.S.A)から入手したEMCウイルスを用い、該EMCウイルスをPBSで稀釈して用いた。
【0052】
接種後から、対照として蒸留水のみを与えた対照群(n=10)、蒸留水で溶解したセチリジンを1mg/kg/日の量で与えたセチリジン低投与群(n=10)、セチリジンを10mg/kg/日の量で与えたセチリジン高投与群(n=10)を、連日14日後までゾンデ(和研薬社製)を用いて、一日に一回強制経口投与した。
【0053】
14日後までの上記3つのグループの生存率を、Kaplan−Meier法によって比較した(このKaplan−Meier法の詳細に関しては、例えば文献StatVien, SAS Institute Inc Cary, NC, U.S.A, 1998を参照することができる)。
【0054】
結果
【0055】
上記により得られた結果をKaplan−Meier法により解析することにより得られたデータを図1のグラフに示す。
【0056】
上記図1に示すように、対照群(n=10)は、14日後で生存は1匹(生存率10%)であった。他方、セチリジン低投与群(n=10)の14日後の生存は4匹(生存率40%)、セチリジン高投与群(n=10)の14日後の生存は5匹(生存率50%)であり、セチリジン投与によって濃度依存的に生存率が改善することが認められた(p<0.05)。
【0057】
試験例2
(心不全モデルにおける心筋の病理組織的変化に対する効果)
【0058】
マウスにおけるEMCウィルス性心筋炎による心不全モデルにおいて、心筋の病理組織的変化に対するセチリジンの効果を比較検討した。
【0059】
試験例1と同様に、28日齢・雄のDBA/2マウスを3つのグループに分け、全てのグループに、EMCウイルスの1pfu/マウスを腹腔内接種した(ゼロ日)。
【0060】
接種後から、試験例1と同様に、対照として蒸留水のみを与えた対照群(n=7)、セチリジンを1mg/kg/日の量で与えたセチリジン低投与群(n=10)、セチリジンを10mg/kg/日の量で与えたセチリジ高投与群(n=7)を、連日5日後までゾンデを用いて、試験例1と同様に、一日に一回強制経口投与した。
【0061】
5日後に心臓を採取し、ホルマリン固定後ヘマトキシリン−エオジン染色を行い、心臓壊死、細胞浸潤の2項目につき、以下のようにスコア化した(このようなホルマリン固定、ヘマトキシリン−エオジン染色、スコア化の詳細に関しては、例えば文献Csculation 1999;100;1823−1829を参照することができる)。心筋細胞壊死および細胞浸潤のスコアは、2人の観察者によって独立して評価し、平均した。統計学的分析はone way analysis of variance (ANOVA)、Fisher’s protected least significant difference testにより行った(このような統計学的分析法の詳細に関しては、例えば文献StatVien, SAS Institute Inc Cary, NC, U.S.A, 1998を参照することができる)。
【0062】
<スコア化>
0: 病変なし、
1+: 心臓の25%以下の病変、
2+: 25%より多く、50%以下の心臓の病変、
3+: 50%より多く、75%以下の心臓の病変、
4+: 75%より多く、100%以下の心臓の病変
【0063】
結果
【0064】
上記により測定した心重量、体重、心重量/体重比、心筋細胞壊死、および炎症細胞浸潤のデータを、下記表1に纏めた(なお、この表1には、上記した生存率データ、および後述する心筋内インテーフェロン産生に関するデータをも併せて示した)。
【表1】


この表1に示したように、心臓の病理組織学的所見(組織像)においても、セチリジン投与群により用量依存的に炎症性細胞・壊死の軽減の傾向が認められた。
【0065】
上記試験例1および2の結果から、セチリジン塩酸塩は、EMCウイルス感染によるマウスの死亡率を改善し、ウイルス性心筋炎を改善し、ウイルス感染に有効であることが明らかになった。
【0066】
なお、上記拡張型心筋症の動物モデルについては、Circulation.65:1230−1235,1982またはCirculation. 66:355−360,1982に記載されている。
【0067】
試験例3
(心不全モデルにおける心筋内のサイトカイン産生に対する効果)
【0068】
マウスにおけるEMCウィルス性心筋炎による心不全モデルにおいて、心筋内のサイトカイン産生に対するセチリジンの効果を比較検討した。
【0069】
試験例1と同様に、28日齢・雄のDBA/2マウスを3つのグループに分け、全てのグループに、EMCウイルスの1pfu/マウスを腹腔内接種した(ゼロ日)。
【0070】
接種後から、試験例1と同様に、対照として蒸留水のみを与えた対照群(n=10)、セチリジンを1mg/kg/日の量で与えたセチリジン低投与群(n=10)、およびセチリジンを10mg/kg/日の量で与えたセチリジン高投与群(n=10)、連日7日後までゾンデを用いて、一日に一回強制経口投与した。
【0071】
7日後にマウスから無菌的に採取した心室の重量を測定し、その採取したマウス心室を、超音波ホモジナイザー(Astrason社製、商品名:Ultrasonic Convertor)を用いてPBS(リン酸緩衝食塩液、1ml、pH=7.4)中でホモジナイズ(条件:0℃、30秒)し、4℃、14,000rpmの条件で20分間遠心分離し、得られた上清をIL−2、IL−12、IFN−γおよびTNF−αのアッセイの試料として使用した。
【0072】
各サイトカインの蛋白濃度は、市販のキットを使用してELISAにより測定した(Circulation. 100:1102−1108,1999)。マウスIL−2およびIFN−γのELISAキットはGENZYME Corporation, Cambridge, U.S.A.から、マウスIL−12およびTNF−αのELISAキットはENDOGEN Inc., Cambridge, U.S.A.から購入した。
【0073】
各上清中の総蛋白濃度は、ビシンコニン酸(BCA)法により測定し、総蛋白濃度に対するサイトカイン濃度の割合を算出した(J. Am. Coll. Cardiol. 33:1400−1407,1999)。各サイトカイン蛋白濃度はpg/mg総蛋白またはng/mg総蛋白として表した。統計学的分析は、試験例2と同様にone way ANOVA、Fisher’s protected least significant difference testにより行った。
【0074】
結果
上記サイトカインのうち、心筋内のIFN‐gに関する統計学的分析結果を、図2のグラフに示す。
【0075】
図2に示すように、セチリジン投与によって濃度依存的に、ウイルス接種の7日後における心筋内のIFN‐gの増加が認められた。
【0076】
上述した表4に示したように、ウイルスに起因する細胞傷害に対してセチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩の投与によって改善効果が認められた。本発明の薬剤は、ウイルス性心筋炎またはウイルス性心筋炎に関連するウイルス性疾患の治療効果があり、また該疾患の予防にも有効である。
【0077】
処方例1
【0078】
(1)錠剤
【0079】
下記組成を有するセチリジン含有錠剤を常法により製造する。
【0080】
セチリジン 1mg、乳糖 90mg、結晶セルロース 25mg、ステアリン酸マグネシウム 4mg。
【0081】
処方例2
(2)ソフトカプセル剤(1カプセル中)
【0082】
組成: セチリジン 30mg、ポリエチレングリコール−300  300mg、ポリソルベート80  20mg
【0083】
製造方法:常法により、セチリジンにポリエチレングリコール−300およびポリソルベート80を加え、ソフトカプセルに充填して製造する。
【0084】
処方例3
(3)注射剤(1アンプル 10ml中)
【0085】
組成: セチリジン 0.3%(30mg)
ポリエチレングリコール−300 20%(2g)
エタノール 60%(6g)
注射用蒸留水で全量10mlとする。
【0086】
製造方法: 常法により、セチリジンにエタノールおよびポリエチレングリコール−300を加えて溶解し、注射用蒸留水を加えて全量10mlとする。これにより、1アンプル中セチリジンを30mg含有した注射剤を得る。
【0087】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、ウイルス性心筋炎の予防または治療剤、ウイルス性心筋炎に関連するウイルス性疾患の予防または治療剤、および/又はウイルス性の細胞傷害の改善または予防剤として有用な、セチリジンまたはその薬理学的に許容可能な塩が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1におけるマウス生存率の結果を示すグラフである。白丸は対照群(セチリジン非投与)、白四角はセチリジン高投与群、白三角はセチリジン低投与群を示す。
【図2】試験例3におけるIFN−g産生の測定結果を示す棒グラフである。
【出願人】 【識別番号】593038974
【氏名又は名称】松森  昭
【出願日】 平成14年7月2日(2002.7.2)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬

【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一

【識別番号】100089901
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 一男

【識別番号】100082898
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 雅也

【識別番号】100081330
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 外治

【公開番号】 特開2004−35448(P2004−35448A)
【公開日】 平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願番号】 特願2002−193896(P2002−193896)