トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学




【発明の名称】 血中総ケトン体濃度上昇剤
【発明者】 【氏名】千竃 映郎
【住所又は居所】東京都墨田区文花2−1−3 花王株式会社研究所内

【氏名】友延 一市
【住所又は居所】東京都墨田区文花2−1−3 花王株式会社研究所内

【要約】 【課題】

【解決手段】非重合体カテキン類(A)を有効成分とする血中総ケトン体上昇剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非重合体カテキン類(A)を有効成分とする血中総ケトン体濃度上昇剤。
【請求項2】
非重合体カテキン類(A)及びカフェイン(B)を含有する血中総ケトン体濃度上昇剤。
【請求項3】
非重合体カテキン類(A)とカフェイン(B)の含有重量比[(A)/(B)]が0.3以上である請求項2記載の血中総ケトン体濃度上昇剤。
【請求項4】
非重合体カテキン類(A)が、茶葉由来である請求項1〜3のいずれか1項記載の血中総ケトン体濃度上昇剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の血中総ケトン体濃度上昇剤を含有する脂質代謝亢進剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血中総ケトン体濃度を上昇させ、肝臓における脂質代謝を亢進させる薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
総ケトン体は、アセト酢酸、β−ヒドロキシ酪酸、アセトンの総称である。これら一群の化合物は主として肝臓で脂肪酸のβ酸化によってアセチルCoAを生成するが、脂肪酸からのアセチルCoAが過剰になった時や、絶食、糖尿病などで生体内の糖の利用性が低下した時にその血中濃度が上昇する。特に病態時でない場合でも、糖代謝においてTCAサイクルが低下した場合にも血中総ケトン体濃度が上昇することが知られている。生成した総ケトン体は、エネルギーの必要時には心臓や骨格筋において、エネルギー源としても利用される。つまり血中に存在するケトン体は、健常者であれば筋肉などの組織で酸化を受け、二酸化炭素と水になり体外へ排出されることとなる。
【0003】
TCAサイクルが正常に機能しており、また糖代謝が正常に行われており、かつ生体外からの脂肪や糖が蓄積しない場合に、健康が維持されると考えられる。しかし、TCAサイクルや糖代謝は正常範囲内であるが、体外からの脂肪や糖の供給が慢性的に過剰になると肥満などの原因になると考えられる。
【0004】
一方、肝臓におけるβ酸化による脂質代謝亢進の結果、脂肪由来の生成物であるケトン体が生成するため、血中総ケトン体濃度は肝臓における脂質代謝亢進の一つの指標になると考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、血中総ケトン体濃度を上昇させることにより、脂質代謝を亢進させる薬剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者は、血中総ケトン体濃度を上昇させ、かつ安全性の高い成分を探索してきたところ、カテキン等の非重合体カテキン類又はこれとカフェインとの組み合せが優れた血中総ケトン体上昇作用をすることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は非重合体カテキン類(A)を有効成分とする血中総ケトン体濃度上昇剤を提供するものである。
また、本発明は非重合体カテキン類(A)及びカフェイン(B)を含有する血中総ケトン体濃度上昇剤を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される非重合体カテキン類とは、具体的には、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレートなどの非エピ体非重合体カテキン類とエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどのエピ体非重合体カテキン類をあわせての総称である。
【0009】
本発明に使用する非重合体カテキン類としては、安全性、加工容易性の点から茶葉由来のものが好ましい。当該茶葉由来の非重合体カテキン類は、Camellia属、例えばC.sinensis及びC.assamica、やぶきた種又はそれらの雑種から得られる茶葉から製茶された、煎茶、玉露、てん茶などの緑茶類;総称して烏龍茶と呼ばれる鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶などの半発酵茶、紅茶と呼ばれるダージリン、アッサム、スリランカなどの発酵茶の茶葉から水や熱水により抽出して得られる。
【0010】
本発明においては、抽出したものを更に濃縮して使用してもよい。茶抽出物の濃縮物とは、茶葉から熱水もしくは水溶性有機溶媒により抽出された抽出物を濃縮したものであって、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報などに詳細に例示されている方法で調製したものをいう。市販品としては東京テクノフード(株)「ポリフェノン」、伊藤園(株)「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」、サントリー(株)「サンウーロン」などが挙げられる。
【0011】
当該非重合体カテキン類の含有量の30〜98重量%、好ましくは40〜90重量%がエピガロカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキン及びガロカテキンから選ばれたものであると、製剤としての呈味が更に優れ、無理なく連用できるため好ましい。
【0012】
本発明の血中総ケトン体上昇剤においては、非重合体カテキン類(A)だけでなくカフェイン(B)を含有させるのが、血中総ケトン体上昇効果が高く、体内の脂質代謝がより促進される点で更に好ましい。非重合体カテキン類(A)とカフェイン(B)の含有重量比[(A)/(B)]は、カフェインと非重合体カテキン類の相乗効果を維持しつつカフェインの持つ興奮作用などの副作用を抑える点で0.3以上、更に2.0〜10.0、特に5.0〜10.0が好ましい。
【0013】
本発明の血中総ケトン体上昇剤の投与形態は、特に限定されないが経口投与製剤の形態が好ましい。当該形態としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤等が挙げられる。
これらの経口投与製剤は、製剤分野において通常用いられる添加剤を配合し、公知の方法に従って製造することができる。これのような添加剤としては、例えば乳糖、マンニトール、無水リン酸水素カルシウム等の賦形剤、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、でんぷん、カルボキシメチルセルロース等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の湿潤剤等が用いられる。
【0014】
非重合体カテキン類として茶葉抽出物を用いる場合には、上記製剤のうち、液剤が、製剤化のし易さ、連用のし易さの点から特に好ましい。当該液剤を製造するにあたっては、甘味料、増量剤、乳化剤、エマルジョン安定剤、酸化防止剤、等を添加することができる。また、当該液剤としては、PETボトル、金属缶、ビン等の容器に充填した形態にするのがより好ましい。
【0015】
このような血中総ケトン体上昇剤の液剤中の非重合体カテキン類(A)の含有量は0.1〜0.5重量%、更に0.1〜0.26重量%、特に0.12〜0.26重量%、殊更0.128〜0.16重量%が好ましい。この量であると有効量の非重合体カテキン類の摂取が容易でありながら、強烈な苦味、渋味、強い収斂性も生じなく好ましい。
【0016】
本発明の血中総ケトン体上昇剤の成人1日投与量は有効性と連用のし易さの点から非重合カテキン類として、300mg〜800mgが好ましく、より好ましくは300mg〜700mg、更に好ましくは400mg〜700mg、特に好ましくは450mg〜650mgである。また、本発明の血中総ケトン体上昇剤のカフェインの成人1日投与量は、上記非重合体カテキン類の0.1〜0.5倍、特に0.1〜0.2倍が好ましい。
【0017】
本発明によれば非重合体カテキン類等による血中総ケトン体濃度上昇作用に基づき、肝臓におけるβ酸化による脂質代謝亢進効果が得られる。ただし、それらの作用は一時的であり、ケト−シス等の副作用を示すものではない。従って、本発明の血中総ケトン体濃度上昇剤及び脂質代謝亢進剤は、連用しても安全であり、医薬品としてだけでなく、機能性食品、特定保健用食品等としても用いることができる。
【0018】
【実施例】
非重合体カテキン類の測定
フィルター(0.8μm)で濾過した試験サンプルを、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム L−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により行った。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0019】
試験サンプルの調製
試験サンプルは340mL缶とし、長期連用に耐えられる保存安定性を保つためにレトルト殺菌処理を施した。試験サンプル中の非重合体カテキン類とカフェインを調節する為に市販のカテキン製剤とカフェイン製剤を配合し、所望の濃度とした。表1に試験サンプルの対照群と試験群の非重合体カテキン類とカフェイン含有量を示す。
【0020】
【表1】


【0021】
非重合体カテキン類の濃度は、対照群4.5mg/100mL、試験群175.4mg/mL、カフェイン濃度は対照群、試験群共に22.7mg/100mLとした。
【0022】
試験方法
試験サンプルと対照サンプルの2群をダブルブラインドで12週間、毎日夕食時に摂取する試験を行った。また12週から16週までの観察期間はサンプル摂取は行わずに血液分析のみを実施した。被験者はBMIから判断して普通体重から肥満(1度)に属する25〜53歳までの健常男子67名を対象とした。
摂取開始前5日以内に行った被験者のBMI、CT撮影により得られた内臓脂肪面積、ウエスト周囲長が同一になるよう2群に分けた。試験後の解析時においては中途脱落者を除外した37名(対照群n=17、試験群n=20)について解析を行った。
試験期間中は個人の普段の平均カロリー量及び平均脂質量を提示し食事内容をその線に近づけるよう指導し、運動量は普段どおりを保つよう指導した。総ケトン体の検査は4週間毎に実施した。
【0023】
血液学及び血清生化学項目の分析
各種血液生化学検査のため、採血の3日前から禁酒とし、前日21:00以降から採血まで水以外の飲食を禁止した。採取した血液はエスアールエル(株)に分析依頼した。検査項目は総ケトン体(TK;酵素法)で実施した。
【0024】
データ解析
総ケトン体の初期値及び16週目の測定値に関してはStudent’s t検定で群間の比較を行った。群間の検定は0週目の測定値を0とした4週、8週、12週の変化量に対し、繰り返しANOVA検定を用いた、群内の検定は0週目の測定値に対する4週、8週、12週、16週目の測定値に対し、Paired t検定を用いた。
【0025】
食事状況
12週目までの1日あたりの平均摂取カロリー及び平均脂質摂取量の平均値±標準誤差は対照群2182±59kcal、67.7±3.0g、試験群2165±57kcal、63.4±2.2gとなり群間有意差は認められなかった。12週目から16週目についても同様に群間に有意差は認められなかった。また試験期間から試験後観察期間にわたり、両群とも群内に有意差は認められなかった。
【0026】
【表2】


【0027】
試験結果
【0028】
【表3】


【0029】
表3に0週目の総ケトン体測定値及びその変化量を示す。0週目の総ケトン体で群間差は認められなかった。0週目の値を0とした4週目以降の変化量に関しては、試験群が対照群に対し、0週目から12週目にわたり群間で有意な増加を示し、更に12週目においては試験群のみ0週目に対し有意差が認められた。16週目において試験群の値が下がり、16週目の値について群間有意差は認められなかった。また0週目の値に対しても各群内に有意差は認められなかった。
【0030】
総ケトン体において、試験群の値の増加により群間に有意差が認められた。特に試験群においては0週目の値に対しても有意に増加していた。これは試験群の茶非重合体カテキン類摂取により、肝臓におけるβ酸化の脂質代謝亢進が関与していると思われた。また茶非重合体カテキン類摂取終了後には元に戻る傾向が見られ、茶非重合体カテキン類摂取は総ケトン体を慢性的な増加状態に保持させるものではなく、安全性が高いものと思われる。
また本試験でカテキンを長期3ヶ月摂取させた試験群において、総ケトン体基準値(26.0〜122μmol/L)を超えた被験者はいなかった。更に試験群の総ケトン体平均値の変化は、その基準値以内での変動であったことから、本カテキン摂取による総ケトン体の上昇効果は十分安全な範囲内での変動であるものと考える。
【0031】
図1に試験0週から12週目までの間の総ケトン体変化量と、血中遊離脂肪酸変化量との相関を示す。ピアソンの相関係数を用いた解析の結果、両者の間に明らかな相関が認められた。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば非重合体カテキン類を投与することによってヒトの血中総ケトン体濃度を上昇させ、脂質代謝亢進を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】総ケトン体変化量と遊離脂肪酸変化量の相関を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋茅場町1丁目14番10号
【出願日】 平成14年6月28日(2002.6.28)
【代理人】 【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所

【公開番号】 特開2004−35417(P2004−35417A)
【公開日】 平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願番号】 特願2002−190715(P2002−190715)