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【発明の名称】 電気貯湯容器
【発明者】 【氏名】宮前 昇治
【住所又は居所】大阪府門真市速見町3番1号 タイガー魔法瓶株式会社内

【氏名】三浦 育男
【住所又は居所】新潟県西蒲原郡吉田町大字下中野1435番地 サーモス株式会社内

【要約】 【課題】容易かつ低コストに得られて、溶接接合部に溶接やヒータからの熱の影響による粒界腐食による耐食性の低下を軽減できるようにする。

【解決手段】金属製の内容器1の一重底部1aに上向きの凸をなして下向きに開口した凹部2を形成しその天井壁2a下面にヒータ3を当てがい、このヒータ3によって内容液を加熱し湯沸しや保温をして貯湯しながら、前記凹部2の天井壁2aに接続された導出路4を通じ導出して使用されるようにするものにおいて、前記一重底部1aを有した内容器1は側周部1bの下端部寄りの位置に胴部41側と底部42側との割線44を有して溶接接合されたものとすることにより、上記の目的を達成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の内容器の一重底部に上向きの凸をなして下向きに開口した凹部を形成しその天井壁下面にヒータを当てがい、このヒータによって内容液を加熱し湯沸しや保温をして貯湯しながら、内容器の一重底部に接続された導出路を通じ導出して使用されるようにした電気貯湯容器において、
前記一重底部を有した内容器は側周部の下端部寄りの位置に胴部側と底部側との割線を有して溶接接合されていることを特徴とする電気貯湯容器。
【請求項2】
溶接接合部は、前記凹部の天井壁よりも高い位置にある請求項1に記載の電気貯湯容器。
【請求項3】
底部は、平板から皿型へのプレス加工によって形成され、胴部は、平板から筒型へのロール加工と筒型での縦向きな合わせ目の溶接接合とによって形成されている請求項1、2のいずれか1項に記載の電気貯湯容器。
【請求項4】
内容器の外側に前記一重底部を残して被さる金属製の外筒を設けて双方間を真空空間としてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気貯湯容器。
【請求項5】
外筒は、内容器の口部から底部下面の外周部にまで回り込んで被さっている請求項4に記載の電気貯湯容器。
【請求項6】
外筒も側周部の下端部寄りの位置に胴部側と底部側との割線を有して溶接接合されている請求項4、5のいずれか1項に記載の電気貯湯容器。
【請求項7】
外筒の胴部側と底部側との溶接接合部よりも、内容器の胴部側と底部側との溶接接合部の方がより高い位置にある請求項6に記載の電気貯湯容器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は家庭用の電気ポットなどとして電気貯湯容器に関し、詳しくは、金属製の内容器の一重底部に上向きの凸をなして下向きに開口した凹部を形成してその天井壁下面にヒータを当てがい、このヒータによって内容液を加熱し湯沸しや保温をして貯湯しながら、前記凹部の天井壁に接続された導出路を通じ導出して使用されるようにした電気貯湯容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属製の内容器を持ったポット類には、ヒータを持たないで外容器と組み合わせて真空二重容器とした携帯用のボトルが知られているし(例えば、特許文献1、2参照。)、ヒータを持った一重容器や真空二重容器を採用した電気貯湯容器も知られている(例えば、特許文献3)。
【0003】
これらに用いる内容器は通常、口径や胴径に比して高さが格段に大きな形態となる。これを1枚の平板から加工しようとすると、深絞りといわれる絞り度の高い加工となる。保温や耐食性に有利なステンレス鋼を用いて内容器を形成すると、加工硬化の問題があって、加工途中に900℃程度の通常レベルの焼鈍をする必要がある。このような焼鈍はステンレス鋼の結晶粒子が粗大化して粒界で腐食しやすく、この腐食が粒界に沿って内部に及び耐食性が低下する。また、ステンレス鋼材にCuを含有させて抗菌性を持たせることも行われるが、前記焼鈍はCuの固溶をもたらし析出できなくするので抗菌性を損なう問題もある。
【0004】
特許文献1、2にはステンレス鋼製の内容器を分割して溶接接合することにより、それぞれの加工時の絞り度を軽減し、あるいは絞り加工を無くせるようにすることが開示されている。特に、特許文献2には内容器を胴部と底部とに分割し、胴部は平板をロール加工により筒型に湾曲させて合わせ目を溶接接合し、口部を所定の口径と形状を持つようにロール加工したものが開示されている。
【0005】
一方、特許文献3に記載のようなヒータを持った電気ポットにおいても、従来、図 13に示す例、図14に示す例のようにステンレス鋼製の内容器aを胴部a1と底部a2とに分割して形成し、溶接接合部bにて接合することが行われているし、この内容器aの外側にステンレス鋼製の外筒cを設け、この外筒cも胴部c1と底部c2とに分割して形成し、溶接接合部dにて接合することも行われている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−57904号公報(図15、図16)
【0007】
【特許文献2】
特開2000−333848号公報(図1)
【0008】
【特許文献3】
特開2001−157635号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1の図15、図16に記載された内容器は胴部の途中で2分割しているので、溶接接合する上下2つの部材とも深絞り加工したものとなる。このため、双方の絞り度は半減して加工硬化などの問題は低減するものの、全体の加工手間としては余り省略できていない。特許文献1に記載のそれ以上に分割して形成したものを溶接接合したものは、抗菌性を有したステンレス鋼どうしの溶接接合を避ける利点はあるが、分割数に応じて加工手間が勢い増大する。
【0010】
特許文献2の図1に記載された内容器は、胴部と底部との溶接接合部が内容器の側周下端になっている。このため、溶接接合する胴部側と底部側との熱容量に大きな差ができ、溶接接合時の熱の吸収、放熱のバランスが崩れてチャッキング機構を通じるなどした放熱制御が困難で溶接接合を損ないやすいし、電流値、溶接速度などの溶接条件の選択幅が小さく、高い溶接技術が必要になる上、歩留まりが低下し製品コストが上昇する。また、熱容量の小さな底部側は高温になって溶接接合部の底部側に粒界が形成されやすく腐食しやすくなる。しかも、底部にヒータを当てがう電気貯湯容器に採用すると、前記のような溶接接合部はヒータの熱を受けやすく、かつ、高い温度で貯湯され続けることが多いので、事後の熱影響により腐食しやすくなる。
【0011】
特に、電気貯湯容器では図13に示す例、図14に示す例のように、内容器aの一重底部fに上向きの凸をなして下向きに開口した凹部gを形成し、その天井壁hの下面にヒータjを当てがい、内容液を加熱することが一般的になっている。これは、▲1▼ヒータjの熱が内容器aの外回りに放熱するのを防止して加熱効率を高める。▲2▼前記天井壁hに内容液を外部に導出して使用に供する導出路kを接続し電動ポンプや手動ポンプにて導出されるようにすることで、天井壁h以下の回りに内容液が導出されずに残って空炊き防止となる。といったことを図るためである。
【0012】
しかし、▲1▼の加熱効率の向上は同時に、特許文献2に記載のものや図13に示す例、図14に示す例を含めてヒータjの近くに位置する溶接接合部への熱影響が高く、腐食しやすいという問題がある。
【0013】
さらに、特許文献2に記載された例や図13に示す例の、内容器の側周と底部とがなすコーナ部における突き合わせ状態での溶接接合、図14に示す例の内容器の底面外周部における突き合わせ部での溶接接合のいずれも、適正な位置関係を保ちにくく溶接条件の選択幅が一層狭くさらに高い溶接技術が必要になる。また、図13で代表して示しているように、内容器aと外筒cとは底部間の溶接部mをTIG溶接した後、口部フランジ間の溶接部nをシーム溶接するが、深絞り加工による影響がある場合、どの溶接部m、nも平坦度が出にくく溶接不良を招きやすい。これらのため、歩留まりが低下し製品コストが上昇する。
【0014】
本発明の目的は、容易かつ低コストに得られて、溶接接合部に溶接やヒータからの熱の影響による粒界腐食による耐食性の低下を軽減できる電気貯湯容器を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の電気貯湯容器は、金属製の内容器の一重底部に上向きの凸をなして下向きに開口した凹部を形成してその天井壁下面にヒータを当てがい、このヒータによって内容液を加熱し湯沸しや保温をして貯湯しながら、内容器の一重底部に接続された導出路を通じ導出して使用されるようにした電気貯湯容器において、前記一重底部を有した内容器は側周部の下端部寄りの位置に胴部側と底部側との割線を有して溶接接合されていることを特徴としている。
【0016】
このような構成では、内容器が側周部の下端寄りに胴部側と底部側との割線を持つように分割して溶接接合しているので、胴部側はロール加工による合わせ目を溶接接合したものを採用できるようになり、底部は浅い皿型となって、胴部および底部はいずれも、保温および耐食性に有利なステンレス鋼製としても、深絞りはもとより、通常の絞り加工をも不要として容易かつ低コストで形成することができる。また、胴部側と底部側との溶接接合部は内容器の側周部の下端部寄りに位置していることにより、底部側が内容器の側周部への回り込み部を有することとなって、その分だけ底部側の熱容量が増大し、胴部側の熱容量が小さくなり、互いの割線部を溶接接合するときの胴部側と底部側での吸熱、放熱のバランスが改善されて溶接接合を損ないにくく、かつ双方共に筒壁を有して把持しやすく芯合わせしやすいので、電流や溶接速度など溶接条件の選択幅が広がり容易かつ歩留まりよく低コストで得られるし、底部側が胴部側に対して極端に高温となって溶接接合部の底部側に粒界が形成されるのを軽減することができる。併せ、底部側は内容器の側周部への回り込み部を有している分だけ胴部側との溶接接合部がヒータから離れることにより、ヒータの熱影響を受けて粒界が形成されるようなことも防止することができる。従って、耐食性に優れたものとなり長寿命化することができる。
【0017】
溶接接合部が、前記凹部の天井壁よりも高い位置にある、さらなる構成では、
天井壁まわりに内容液が残った空焚き防止状態の際に、内容器の胴部側と底部側との溶接接合部はヒータとの間を前記残った空焚き防止内容液の存在領域にて隔てられて内容液のない空間に開放されるので、少ない空焚き防止内容液がヒータによって加熱されている温度よりも低い温度にまで放熱されやすく、空焚き防止状態での熱的安全を図りやすい。また、底部に沈澱し、あるいは空焚き状態で濃縮される鉄粉や酸化物などの錆びが伝播するいわゆるもらい錆びを防止することができ防錆効果も高まる。
【0018】
以上から、底部が、平板から皿型へのプレス加工によって形成され、胴部が、平板から筒型へのロール加工と筒型での縦向きな合わせ目の溶接接合とによって形成されている電気貯湯容器が得られ、深絞りによる問題が解消するのは勿論、単純なプレス加工に比し通常絞り加工では手間がかかるといった不利も回避できる。
【0019】
内容器の外側に前記一重底部を残して被さる金属製の外筒を設けて双方間を真空空間としてある、さらなる構成では、
前記各場合の内容器の特徴を踏襲した上で、外側に設けた外筒および双方間の真空空間による断熱性によって、保温機能が高まり熱効率が向上するので、省エネに貢献することができる。
【0020】
外筒が、内容器の口部から底部下面の外周部にまで回り込んで被さっている、さらなる構成では、
内容器の前記ヒータによる加熱構造を損なわずに、真空空間を内容器の底面の外周部外回りにも形成して断熱効果をさらに高められる。
【0021】
外筒も側周部の下端部寄りの位置に胴部側と底部側との割線を有して溶接接合されている、さらなる構成では、
外筒は完全な底部を有していなくてよいものの、内容器よりも深いものとなるが、内容器と同じような溶接接合構造となって、内容器と同じような特徴を発揮するものとすることができる。
【0022】
外筒の胴部側と底部側との溶接接合部よりも、内容器の胴部側と底部側との溶接接合部の方がより高い位置にある、さらなる構成では、
内容器の底部が外筒の下端ないしは部分的な底部よりも上に位置する関係から、外筒の溶接接合部よりも上に溶接接合部を持つことにより、ヒータから離れやすく、天井壁よりも高くなりやすく、溶接接合に有利な熱容量の増大を図りやすい上に、溶接接合時の把持や芯出しを行うための筒壁に十分な長さを得やすい利点がある。
【0023】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の詳細な説明で明らかになる。本発明の各特徴は、それ単独で、あるいは可能な限り種々な組合せで複合して採用することができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図を参照しながら詳細に説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の説明および図示は本発明の具体例を示すものであって、特許請求の範囲の記載内容を限定するものではない。
【0025】
本実施例の電気貯湯容器は、家庭用の電気ポットの場合の一例であり、図1、図2に示すように、金属製の内容器1の一重底部1aにその外周部の残した上向きの凸をなして下向きに開口した凹部2を形成してその天井壁2a下面にヒータ3を当てがい、このヒータ3によって内容液を加熱し湯沸しや保温をして貯湯しながら、前記凹部2の天井壁2aに接続された導出路4を通じ導出して使用される基本構成を有している。内容器1は断熱性を有したものであるほど熱効率がよく、それを構成する金属としては熱伝導性の低いステンレス鋼が好適である。導出路4は図に示すように途中に設けた遠心ポンプ5によって内容液を汲み出し方式に導出して使用に供するものでもよいが、加圧式の手動ポンプや電動ポンプによって押し出し導出するものでもよい。電動ポンプと手動ポンプを併用しても、あるいは器体8を傾けて導出する方式を単独で採用したり併用するものでもよい。
【0026】
内容器1の一重底部1aに当てがったヒータ3や遠心ポンプ5の部分は最低外部から覆って、それらの保護や他への熱影響防止を図り、外観を整えるのが好適である。しかし、他の部分は特に覆う必要はない。図示する例では合成樹脂製の外装ケース6によって導出路4をも含め覆ってある。外装ケース6は合成樹脂製の肩部7と嵌め合せて接合し、前記内容器1、ヒータ3、導出路4、遠心ポンプ5を内蔵した器体8を構成している。器体8の上端に肩部7が形成している開口に合成樹脂製の中空の蓋9が設けられ、ヒンジピン11によって、開閉および着脱できるように肩部7の後部に軸受されている。しかし、蓋9の有無、その構造は特に限定されない。
【0027】
図示する具体例では、さらに、蓋9の前部には蓋9が閉じられたとき肩部7側の係止部9aに弾性係合して蓋9を閉じ状態にロックするロック部材12が係合方向にばね13で付勢して設けられるとともに、このロック部材12をばね13に抗し後退させて係止部9aから外し前記ロックを解除するロック解除部材14が設けられている。ロック解除部材14は軸15回りに弧回動するレバー部材であり、前端部14aを押し込むことで、ロック部材12を後退させ始め、そのとき起き上がる後端部14bを指に掛けて上に引き上げると、ロック部材12のロックを解除し切るのに続いて、蓋9を持ち上げ開放できるようにしている。
【0028】
導出路4は肩部7の前部に嘴状に突出した突出部7a内にまで延びて転倒時止水弁31や前傾時止水弁32などが設けられ、その先の吐出口4aが突出部7aの下面から下向きに開口し、導出内容液を流出させて使用に供するようにしている。突出部7aの上面には操作部21が設けられ、各種動作モードや保温温度の選択などを行う操作キーと、設定状態や動作状態を示す表示部などが設けられ、操作部21の内側には前記操作に応動するスイッチ類22や液晶表示部23、および表示ランプ27、あるいは全体の動作用の制御を司るマイクロコンピュータなどの制御部24を搭載した制御基板25が設けられ、各種電源を作り、かつヒータ3や遠心ポンプ5を制御部24からの制御に従って駆動する電源・駆動系基板26が遠心ポンプ5とともに、内容器1と外装ケース6の底部間に配置されている。電源・駆動系基板26は外装ケース6の底部に一体成形または装着して設けられた回路ボックス33に収容して漏水や低部からの侵入水から保護できるようにしている。回路ボックス33は上下に開閉される2部材の構造としてある。天井壁2aの中央部にさらに上に凸となる突出部2bを形成してその内側に内容液温度を検出する温度センサ36を当てがい、モニタした温度情報を制御部24の制御に供する。ここで、温度センサ36は天井壁2aを内容液の液量が少しでも下回った瞬間、前記天井壁2aまわりの最低位空間47に内容液を残す空焚き防止状態とした上での、積極的な空焚き部となるようにしてある。これにより、空焚き防止状態で残っている内容液がなくならないうちに、突出部2bでの積極的な空焚き状態による異常な昇温を即時に検出、判定して対応できるようにしている。従って、この積極的な空焚き状態を作ることで、他に熱的悪影響を与えることはない。
【0029】
外装ケース6の底部の開口6aには、合成樹脂製の底蓋34が外周に設けた複数の爪34aと図示しない1つのねじを利用するなどして着脱できるように装着され、底蓋34の外回りには回転座体35を回転自在に装着し、器体8が定置されると回転座体35で接地し、器体8が回転座体35の上で回動して向きを変えられるようにしている。
【0030】
本実施例では特に、上記のように金属製の内容器1の一重底部1aに上向きの凸をなして下向きに開口した凹部2を形成してその天井壁2a下面にヒータ3を当てがい、このヒータ3によって内容液を加熱し湯沸しや保温をして貯湯しながら、前記凹部2の天井壁2aに接続された導出路4を通じ導出して使用されるようにした電気貯湯容器としての電気ポットにおいて、図1〜図3に示すように、前記一重底部1aを有した内容器1は側周部1bの下端部寄りの位置に胴部41側と底部42側との割線43を有して溶接接合された溶接接合部44としている。この溶接接合部44は例えばTIG溶接によって行う。しかし、これに限られることはない。
【0031】
このように、内容器1が側周部1bの下端寄りに胴部41側と底部42側との割線43を持つように分割して溶接接合していると、胴部41側はロール加工による縦向きの合わせ目45を溶接接合した溶接接合部46を持ったものを採用できるようになる。また、底部42は浅い皿型となる。従って、胴部41および底部42はいずれも、保温および耐食性に有利なステンレス鋼製としても、深絞りはもとより、通常の絞り加工をも不要として容易かつ低コストで形成することができる。また、胴部41側と底部42側との溶接接合部44は内容器1の側周部1bにおける下端部寄りに位置していることにより、底部42側が内容器1の側周部1bへの回り込み部42aを有することとなる。このため、その回り込み部42aの分だけ、底部42側の熱容量が増大し、胴部41側の熱容量が小さくなり、互いの割線43部を溶接接合するときの胴部41側と底部42側での吸熱、放熱のバランスが改善されて溶接接合を損ないにくく、かつ双方共に筒壁を有して把持しやすく芯合わせしやすいので、電流や溶接速度など溶接条件の選択幅が広がり容易かつ歩留まりよく低コストで得られるし、底部42側が胴部41側に対して極端に高温となって溶接接合部44の底部42側に粒界が形成されるのを軽減することができる。併せ、底部42側は内容器1の側周部1bへの回り込み部42aを有している分だけ胴部41側との溶接接合部44がヒータ3から離れることにより、ヒータ3の熱影響を受けて粒界が形成されるようなことも防止することができる。従って、耐食性に優れたものとなり長寿命化することができる。
【0032】
図示する例では、また、溶接接合部44が、前記凹部2の天井壁2aよりも高い位置にあるようにしている。このようにすると、天井壁2aまわりの最低位空間47に内容液が残った空焚き防止状態の際に、内容器1の胴部41側と底部42側との溶接接合部44はヒータ3との間を前記残った空焚き防止内容液の存在領域にて隔てられて内容液のない空間に開放されるので、少ない空焚き防止内容液がヒータ3によって加熱されている温度よりも低い温度にまで放熱されやすく、空焚き防止状態での熱的安全を図りやすい。また、底部42の上面に沈澱し、あるいは空焚き状態で濃縮される鉄粉や酸化物などに対し上部に離れて位置でき、それらからの錆びが伝播するいわゆるもらい錆びを防止することができ防錆効果も高まる。
【0033】
以上から、本実施例の図示する例では、底部42が、平板から皿型へのプレス加工によって形成され、胴部41が、平板から筒型へのロール加工と筒型での縦向きな合わせ目45の溶接接合とによって形成されている電気貯湯容器が得られ、深絞りによる問題が解消するのは勿論、単純なプレス加工に比し通常絞り加工では手間がかかるといった不利も回避できる。
【0034】
本実施例では、また、内容器1の外側に前記一重底部1aを残して被さる金属製の外筒51を設けて双方間を真空空間52としてある。これにより、前記のような内容器1の特徴を踏襲した上で、外側に設けた外筒51および双方間の真空空間52による断熱性によって、保温機能が高まり熱効率が向上するので、省エネに貢献することができる。外筒51もステンレス鋼製とするのが保温効率、耐食性の上で好適である。この場合、図示する例のように外筒51が、内容器1の口部から底部下面の外周部にまで回り込む回り込み部51aを持って被さっていると、内容器1の前記ヒータ3による加熱構造を損なわずに、真空空間52を内容器1の底面の外周部外回りにも形成して断熱効果をさらに高められる。回り込み部51aが形成する環状な下面は、内容器1と外筒51とを二重に組み合わせた後、上下を反転して真空加熱炉内に置いて真空排気を行う開口を設け、この真空排気によって相互間を真空空間としてからろう材などで封止する作業を行うのに有効であり、そのためには一定以上の幅を有しているのが好適となる。
【0035】
ここで、本実施例のように外筒51も側周部51bの下端部寄りの位置に胴部61側と底部62側との割線63を有して溶接接合された溶接接合部64を有したものとすると、外筒51は完全な底部62を有していなくてよいものの、内容器1よりも深いものとなるが、内容器1と同じような溶接接合構造となって、内容器1と同じような特徴を発揮するものとすることができる。その際、内容器1の場合同様に、外筒51の胴部61側は平板からのロール加工による縦向きの合わせ目65を溶接接合した溶接接合部66を有したものとし、底部62側は非絞り加工である浅い皿型にプレス加工したものとするのが好適である。
【0036】
さらに、図示するように、外筒51の胴部61側と底部62側との溶接接合部64よりも、内容器1の胴部41側と底部42側との溶接接合部44方がより高い位置にあるようにしている。これにより、内容器1の底部42が外筒51の下端ないしは部分的な底部62よりも上に位置する関係から、外筒51の溶接接合部64よりも上に溶接接合部44を持つことにより、ヒータ3から離れやすく、天井壁2aよりも高くなりやすく、溶接接合に有利な熱容量の増大を図りやすい上に、溶接接合時の把持や芯出しを行うための筒壁に十分な長さを得やすい利点がある。また、溶接接合部44のヒータ3に対する熱的安全のためには、その高さが図示する場合前記突出部2bよりも低いのを、突出部2bと等しく、またはそれを上まわるほど、ヒータ3からはもとより、積極的空焚き部となる突出部2bや天井壁2aからも離れるので好適である。
【0037】
以上のように内容器1と外筒51とを組み合わせた真空二重容器は、断熱性に優れ、しかも、金属製であることにより外力にも強い。そこで、外装ケースを省略して外筒51が外面に露出する構成としても性能上、強度上問題はなく、むしろスッキリした外観が得られる。この場合底部と肩部は合成樹脂製のもので形成して形状や複雑な構造となるのに対応するのが有利であるし、導出路4を覆う場合は露出した外筒51の側周面の外側に合成樹脂製の底部と肩部との間を部分的に繋ぐか、あるいはどちらかと一体の合成樹脂製で縦向きなカバーを用いたり、場合によっては導出路4を外筒51の内側や内容器1の内側を通して肩部7の突出部7aに引き出す構成とすることもできる。
【0038】
ここで、このような真空二重容器を製造する具体的な工程例について、説明する。先ず、図4、図5に示す(1a)〜(1h)によって内容器1の胴部41を形成する。(1a)では胴部41を形成するために必要な矩形の平板:アをシャーリング加工して得る。(1b)では平板:アをロール加工して筒型胴部基材:イとする。(1c)では筒型胴部基材:イの合わせ目45をTIG溶接などにより溶接接合して溶接接合部46を有したものとする。(1d)ではサーチングを行う。(1e)では筒型胴部基材:イにつきその下端を基準にして上端側を初期トリミングして整形する。(1f)では筒型胴部基材:イにつき初期トリミングをした上端から所定の軸線方向寸法位置に所定の外径を持った斜め向きの仮フランジ:ウを予備形成する。(1g)では予備整形した仮フランジ:ウを利用して所定のフランジ:エを持った口部:オを仕上げ形成する。(1h)では仕上げ形成した筒型胴部基材:イにおける下端の口部:オを基準にした上端側への所定の寸法位置にて仕上げトリミングを行って、胴部41を仕上げる。
【0039】
次いで、図6に示す(2a)、(2b)にて胴部41に底部42をTIG溶接などにて溶接接合し内容器1を形成する。(2a)では仕上げた胴部41と仕上げた底部42との割線43での溶接接合をTIG溶接などにて行い、溶接接合部44を持った内容器基材:カを形成する。(2b)では内容器基材:カにつき上端の口部:オから所定の軸線方向寸法位置に、満水位を示す打痕線:キを形成して内容器1に仕上げる。
【0040】
図7、図8に示す(3a)〜(3f)にて前述の底部42を形成している。(3a)では底部42を形成するための円形な平板:クをブランキング加工によって打ち抜き形成する。(3b)では平板:クに凹部2と突出部2bとをプレス成形した底部基材:ケを形成しておき、(3c)では底部基材:ケに外側の周壁2eをプレス加工によりベンディング形成して皿型底部基材:コとする。(3d)では凹部2および突出部2b、周壁を持った皿型底部基材:コにつき周壁2eの高さを所定寸法にトリミングして整形する。(3e)ではさらに周壁2eのトリミングをした後の皿型底部基材:コにつき、天井壁2aに導出路4の遠心ポンプ5側を接続するための接続穴2fをパンチング形成する。その後洗浄する。(3f)では皿型底部基材:コの前記接続穴2fに接続パイプ2gを嵌め合せてTIG溶接などにて溶接接合し、胴部41とTIG溶接などにて溶接接合する底部42に仕上げる。
【0041】
次に、図9〜図11に示す(4a)〜(4i)にて外筒51の胴部61を形成し、図11に示す(4j)〜(4l)にて内容器1と外筒51とを二重構造に組み合わせる。(4a)では胴部41を形成するために必要な矩形の平板:サをシャーリング加工して得る。(4b)では平板:サをロール加工して筒型胴部基材:シとする。(4c)では筒型胴部基材:シの合わせ目65をTIG溶接などにより溶接接合して溶接接合部66を有したものとする。(4d)ではサーチングを行う。(4e)では筒型胴部基材:シにつきその下端を基準にして上端側を初期トリミングし整形する。(4f)では筒型胴部基材:シにつき初期トリミングをした上端から所定の軸線方向寸法位置に所定の外径を持った斜め向きの仮フランジ:スを予備形成する。(4g)では予備整形した仮フランジ:スを利用して所定のフランジ:セを持った口部:ソを仕上げ形成する。(4h)では仕上げ形成した筒型胴部基材:シにおける上端の口部:ソを基準にした下端側への所定の寸法位置にて仕上げトリミングを行って、胴部61を仕上げる。さらに、(4i)では胴部61を底部62とを合わせ目65部でTIG溶接などにて溶接接合して溶接接合部66を持った外筒基材:タを形成するとともに、上端の口部:ソから底部62の底面が所定寸法となるように曲げ仕上げ加工する。(4j)では内容器1と外筒51とを組み合わせて、双方の底部どうしの合わせ目67をTIG溶接などにて溶接接合し、底部の溶接接合部68を持った二重容器基材:チを形成する。(4k)では二重容器基材:チにつき内容器1および外筒51のフランジ:エ、セどうしをそれらの外周部にてシーム溶接などして溶接接合し、底部に加え口部にも溶接接合部69を持ったものとしている。(4l)では二重容器基材:チにおける溶接接合したフランジ:エ、セの外周部をブランキング加工によって所定の中心と外径を持ったフランジ:テに打ち抜き整形し、口部:トを仕上げ形成する。
【0042】
このように内容器1と外筒51との一体化するのに、底部の溶接接合部68の合わせ目67においても、口部の溶接接合部69のフランジ:エ、セにおいても、深絞り加工による影響がなく平坦度が確保されて首尾よく溶接することができ歩留まりが向上する。
【0043】
図12に示す(5a)〜(5g)にて前述の底部62を形成している。(5a)では底部42を形成するための円形な平板:ナをブランキング加工して打ち抜き形成する。(5b)では平板:ナに内容器1の底部1a外周部への回り込み部51aやそれによる真空空間52を形成するための凹部:ニや図1に示す遮熱板82の取付金具83を取り付ける凹部などとをプレス成形して底部基材:ノとしておき、(5c)では底部基材:ノに外側の周壁62cをプレス加工によりベンディング形成して皿型底部基材:ハとする。(5d)では皿型底部基材:ハの外周部の回り込み部51a部に真空空間52とするための排気穴81を周方向の1箇所に形成している。(5e)では皿型底部基材:ハの凹部:ニにおける外周部の回り込み部51aを残す中央部をブランキング加工して打ち抜き開口:ヒとしている。(5f)では皿形底部基材:ハの周壁62cの回り込み部51a側からの高さを所定寸法にトリミングして整形する。(5g)では皿形底部基材:ハの回り込み部51aの内側にゲッタースポットを溶接接合して周方向2箇所に設けた底部62を形成している。
【0044】
内容器1と外筒51とを組み合わせた後は、それらの間を前記排気穴81を通じた所定温度での真空排気にて真空とした後、排気穴81をロー材などで封止し真空二重容器とする。また、内容器1の板厚が0.4mm程度であるのに対し、外筒51の板厚は0.5mm程度と厚くして外力に耐えやすくしている。
【0045】
勿論、このような真空二重容器の製造方法や手順は1例であって、種々な方法や手順を採ることができる。
【0046】
【発明の効果】
本発明の電気貯湯容器によれば、内容器が側周部の下端寄りに胴部側と底部側との割線を持つように分割して溶接接合しているので、胴部側はロール加工による合わせ目を溶接接合したものを採用できるようになり、底部は浅い皿型となって、胴部および底部はいずれも、保温および耐食性に有利なステンレス鋼製としても、深絞りはもとより、通常の絞り加工をも不要として容易かつ低コストで形成することができる。また、胴部側と底部側との溶接接合部は内容器の側周部の下端部寄りに位置していることにより、底部側が内容器の側周部への回り込み部を有することとなって、その分だけ底部側の熱容量が増大し、胴部側の熱容量が小さくなり、互いの割線部を溶接接合するときの胴部側と底部側での吸熱、放熱のバランスが改善されて溶接接合を損ないにくく、かつ双方共に筒壁を有して把持しやすく芯合わせしやすいので、電流や溶接速度など溶接条件の選択幅が広がり容易かつ歩留まりよく低コストで得られるし、底部側が胴部側に対して極端に高温となって溶接接合部の底部側に粒界が形成されるのを軽減することができる。併せ、底部側は内容器の側周部への回り込み部を有している分だけ胴部側との溶接接合部がヒータから離れることにより、ヒータの熱影響を受けて粒界が形成されるようなことも防止することができる。従って、耐食性に優れたものとなり長寿命化することができる。
【0047】
溶接接合部が、前記凹部の天井壁よりも高い位置にある、さらなる構成によれば、
天井壁まわりに内容液が残った空焚き防止状態の際に、内容器の胴部側と底部側との溶接接合部はヒータとの間を前記残った空焚き防止内容液の存在領域にて隔てられて内容液のない空間に開放されるので、少ない空焚き防止内容液がヒータによって加熱されている温度よりも低い温度にまで放熱されやすく、空焚き防止状態での熱的安全を図りやすい。また、底部に沈澱し、あるいは空焚き状態で濃縮される鉄粉や酸化物などの錆びが伝播するいわゆるもらい錆びを防止することができ防錆効果も高まる。
【0048】
以上から、底部が、平板から皿型へのプレス加工によって形成され、胴部が、平板から筒型へのロール加工と筒型での縦向きな合わせ目の溶接接合とによって形成されている電気貯湯容器が得られ、深絞りによる問題が解消するのは勿論、単純なプレス加工に比し通常絞り加工では手間がかかるといった不利も回避できる。
【0049】
内容器の外側に前記一重底部を残して被さる金属製の外筒を設けて双方間を真空空間としてある、さらなる構成によれば、
前記各場合の内容器の特徴を踏襲した上で、外側に設けた外筒および双方間の真空空間による断熱性によって、保温機能が高まり熱効率が向上するので、省エネに貢献することができる。
【0050】
外筒が、内容器の口部から底部下面の外周部にまで回り込んで被さっている、さらなる構成によれば、
内容器の前記ヒータによる加熱構造を損なわずに、真空空間を内容器の底面の外周部外回りにも形成して断熱効果をさらに高められる。
【0051】
外筒も側周部の下端部寄りの位置に胴部側と底部側との割線を有して溶接接合されている、さらなる構成によれば、
外筒は完全な底部を有していなくてよいものの、内容器よりも深いものとなるが、内容器と同じような溶接接合構造となって、内容器と同じような特徴を発揮するものとすることができる。
【0052】
外筒の胴部側と底部側との溶接接合部よりも、内容器の胴部側と底部側との溶接接合部の方がより高い位置にある、さらなる構成によれば、
内容器の底部が外筒の下端ないしは部分的な底部よりも上に位置する関係から、外筒の溶接接合部よりも上に溶接接合部を持つことにより、ヒータから離れやすく、天井壁よりも高くなりやすく、溶接接合に有利な熱容量の増大を図りやすい上に、溶接接合時の把持や芯出しを行うための筒壁に十分な長さを得やすい利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気貯湯容器の実施例に係る電気ポットの1つの例を示す断面図である。
【図2】図1の電気ポットの底部の断面図である。
【図3】図1の電気ポットの内容器と外筒との分解斜視図である。
【図4】図1に示す電気ポットにおける内容器の胴部を形成する前段階の手順を(1a)〜(1d)に分解して示す説明図である。
【図5】図1に示す電気ポットにおける内容器の胴部を形成する後段階の手順を(1e)〜(1h)に分解して示す説明図である。
【図6】内容器の胴部と底部とを結合する手順を(2a)、(2b)に分解して示す説明図である。
【図7】図1に示す電気ポットにおける内容器の底部を形成する前段階の手順を(3a)〜(3c)に分解して示す説明図である。
【図8】図1に示す電気ポットにおける内容器の底部を形成する後段階の手順を(3d)〜(3f)に分解して示す説明図である。
【図9】図1に示す電気ポットにおける外筒の胴部を形成する前段階の手順を(4a)〜(4d)に分解して示す説明図である。
【図10】図1に示す電気ポットにおける外筒の胴部を形成する後段階の手順を(4e)〜(4h)に分解して示す説明図である。
【図11】外筒の胴部と底部とを結合する手順を(4i)〜(4l)に分解して示す説明図である。
【図12】図1に示す電気ポットにおける外筒の底部を形成する手順を(5a)〜(5g)に分解して示す説明図である。
【図13】従来の電気ポットにおける内容器および外筒の1つの溶接構造例を示す底部の断面図である。
【図14】従来の電気ポットにおける内容器および外筒の他の溶接構造例を示す底部の断面図である。
【符号の説明】
1 内容器
1a 一重底部
1b、51b 側周部
2 凹部
2a 天井壁
3 ヒータ
4 導出路
5 遠心ポンプ
6 外装ケース
7 肩部
8 器体
9 蓋
41、61 胴部
42、62 底部
43、63 割線
44、46、64、66 溶接接合部
45、65 合わせ目
【出願人】 【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市城東区蒲生2丁目1番9号
【識別番号】591261602
【氏名又は名称】サーモス株式会社
【住所又は居所】新潟県西蒲原郡吉田町大字下中野1435番地
【出願日】 平成15年4月18日(2003.4.18)
【代理人】 【識別番号】100080827
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 勝

【公開番号】 特開2004−313612(P2004−313612A)
【公開日】 平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願番号】 特願2003−114685(P2003−114685)