| 【発明の名称】 |
海藻水溶性成分の抽出方法および抽出物の用途 |
| 【発明者】 |
【氏名】萩野 浩志
|
| 【要約】 |
【課題】海藻類からタンパク質、ミネラル類、ビタミンCなどの水溶性成分を安定的にかつ天然状態に近い状態で抽出し、健康食品として提供する。
【解決手段】海藻類の細片または粉末に水を加えて混和した後、湿式で磨砕することによって、海藻類の水溶性成分を水に溶解せしめて抽出する。湿式磨砕のときに海砂等の磨砕剤を加えてもよい。かかる抽出方法によると、酸化されやすい成分も酸化されずに高抽出率で、しかも各成分が共存した天然状態のままで抽出することができる。抽出したものは、摂取した場合、血圧降下作用、コレステロール値および中性脂肪値低下作用、肝機能改善効果、末梢血管拡張に基づく作用、便秘改善作用等があり、液体のまま、あるいは粉末化もしくは顆粒化して、健康食品として用いることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 海藻類の細片または粉末に水を加えて混和した後、常温で湿式磨砕することによって、海藻類の水溶性成分を水に溶解せしめて抽出することを特徴とする海藻類の水溶性成分の抽出方法。 【請求項2】 湿式磨砕する時に磨砕剤を加え、あるいは加えない請求項1記載の海藻類の水溶性成分の抽出方法。 【請求項3】 海藻類が海苔、ワカメまたはコンブである請求項1記載の海藻類の水溶性成分の抽出方法。 【請求項4】 請求項1記載の抽出方法によって得られた抽出液またはこれを凍結乾燥もしくは噴霧乾燥して得られた粉末もしくは顆粒を用いた血圧降下機能を有する健康食品。 【請求項5】 請求項1記載の抽出方法によって得られた抽出液またはこれを凍結乾燥もしくは噴霧乾燥して得られた粉末もしくは顆粒を用いたコレステロールおよび中性脂肪低下機能を有する健康食品。 【請求項6】 請求項1記載の抽出方法によって得られた抽出液またはこれを凍結乾燥もしくは噴霧乾燥して得られた粉末もしくは顆粒を用いた肝機能改善機能を有する健康食品。 【請求項7】 請求項1記載の抽出方法によって得られた抽出液またはこれを凍結乾燥もしくは噴霧乾燥して得られた粉末もしくは顆粒を用いた末梢血管拡張機能を有する健康食品。 【請求項8】 請求項1記載の抽出方法によって得られた抽出液またはこれを凍結乾燥もしくは噴霧乾燥して得られた粉末もしくは顆粒を用いた便秘改善機能を有する健康食品。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、海藻に含まれる栄養豊かな水溶性成分を抽出する方法に関し、さらに、かかる抽出方法によって得られた抽出物を用いた健康食品に関する。 【0002】 【従来の技術】 海苔、ワカメ、コンブ等の海藻類にはたんぱく質、アミノ酸、ミネラル、ビタミン、食物繊維などの有用な栄養成分を含有しており、海藻類は栄養豊富な健康食品として注目されている。 【0003】 海藻類から健康に効果のある有用物質を抽出する方法については、従来から種々の方法が検討されている。例えば、熱水で抽出する方法(特公昭50−11980号、特開平01−157363号、特開平11−113529号)、酸性溶液で抽出する方法(特公昭52−48184号)、含水有機溶媒で抽出する方法(特開昭62−294068号)、超音波処理で細胞破砕して抽出する方法(特開昭58−149666号)、酵素を使う方法(特開昭62−175157号、特開平11−113529号)、微細粉化して抽出する方法(特開2002−65223号)等がある。その多くは、特定の水溶性の栄養成分を抽出し、食品として、特に健康食品素材として使用することを目的としたものである。 【0004】 これに対して、特定の成分抽出ではなく、栄養豊富な海藻成分をバランスよく抽出する方法は例が少なく、上記した特開昭58−149666号の方法の、海藻を水中に分散させて超音波処理または均質機による処理をする方法があるが、工業的にスケールアップする場合に効率面や設備面で問題がある。 【0005】 また、海藻を微細粉化して抽出する方法(特開2002−65223号)では、海藻の粉砕時にビタミンCやβ−カロチンなど酸化されやすい成分が空気に触れて酸化され、減少するという問題がある。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 本発明はかかる状況に対処してなされたもので、海苔に含まれている栄養価の高い水溶性成分を自然そのままの組成で、かつできるだけ損失なく抽出する方法を提供し、さらにその抽出したものを健康食品として有効に利用することを目的としたものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは鋭意研究の結果、海苔、ワカメ、コンブ等の海藻類に含まれるビタミン類、たんぱく質、アミノ酸、ミネラル類など、種々の水溶性栄養成分は、海藻類の細片または粉末を水とともに常温で湿式磨砕しながら抽出することにより、熱や酸化による損失が少なく、かつ自然のままの組成で抽出できること見出し、本発明に到達した。 【0008】 すなわち、本発明は、海藻類の細片または粉末に水を加えて混和した後、湿式で磨砕することによって、海藻類の水溶性成分を水に溶解せしめて抽出することを特徴とする海藻類の水溶性成分の抽出方法に関する。さらに本発明は、かかる方法によって抽出したものを含有する種々の機能をもった健康食品に関する。 【0009】 本発明の抽出方法では、湿式による磨砕で海藻の細胞破砕による抽出が行われ、栄養成分を安定的に細胞外に取り出すことができるので、天然素材の組成状態で成分を共存させたまま抽出することができる。また、常温での湿式磨砕なので空気との接触が少なく、酸化されやすい栄養成分の損失が少ない。 【0010】 これに対して海藻をまず微粉砕した後、別工程で水で抽出する方法、すなわち乾式磨砕後水で抽出する方法では、空気中で細胞が破砕されて空気との接触面が多くなるので、酸化されやすい栄養成分であるビタミンCなどは減少する。 湿式磨砕の際には磨砕剤を添加してもしなくてもよい。例えばグラインダー(石臼)方式の磨砕機を用いる場合は磨砕剤の添加は必ずしも必要ではない。 【0011】 本発明の抽出方法で得られた海藻抽出物は、その機能を調べた結果、血圧効果作用、コレステロールおよび中性脂肪減少作用、肝機能改善作用、末梢血管拡張作用、便秘改善作用があることがわかった。したがって、これらの機能をもつ健康食品として用いることができる。この健康食品は、海藻残渣を遠心分離または濾過により分離したものでもよいし、あるいは分離しないものでもよい。また、抽出液のままでもよいし、さらに凍結乾燥、噴霧乾燥等により粉末化もしくは顆粒化して用いてもよい。 【0012】 なお、海苔のタンパク質に豚由来のペプシンを加えて反応させて得た海苔ペプチドは血圧を低下させること(医学と薬学44(2) 297−306(2000))、血漿中のコレステロールや中性脂肪を低下させること(日本水産学会1999年度秋期大会講演要旨集)、肝機能を改善すること(特開2000−157226)、が報告されている。本発明の抽出物にはいずれもタンパク質が含まれており、同様にペプシンで処理することにより、海苔ペプチドができることは当然予想される。しかしペプシンの反応至適pHは2.0付近であり、そのため酸を用いてpH調整すると、食品として用いる場合アルカリで中和する必要がある。そうすると新たに無機塩が発生し、また豚由来ペプシンという他種タンパクの混入によりアレルギー問題が発生する可能性がある。したがってこの方法は必ずしも望ましいものではない。 【0013】 これに対して本発明では、このような問題がない。そして本発明の抽出物中に含まれるタンパク質は、ヒトの胃の中でタンパク分解酵素で分解され、ペプチドが生成される。実際にこれを確認するためにヒトの胃からカテーテルを用いて胃液10mlを採取し、これに本発明の海苔抽出液を10ml(タンパク質0.18g含有)加え、塩酸でpH2.0に調整し、38℃で8時間反応させた。その結果、アンジオテンシンI変換酵素阻害活性を有するAla−Lys−Tyr−Ser−Tyr(海苔ペプチドの一成分)が生成していることが確認された。この結果から、本発明の海藻抽出物を摂取した場合、胃で抽出物中のタンパク質が消化酵素ペプシンで消化され、活性ペプチドが生成することが明らかとなった。 【0014】 【発明の実施の形態】 本発明の抽出方法は、海苔、ワカメ、コンブ等の海藻類の細片または疎粉砕粉末に適量の水を加えて十分混和し、必要ならば磨砕剤を加え、常温で磨砕する。磨砕後さらに適当量の水を加えて、遠心分離または濾過処理で磨砕剤や、細胞膜、細胞壁などの細胞残渣、または不溶性成分を分離除去し、上澄み液を採取する。磨砕剤を用いない場合は、上記のように上澄み液を採取してもよいが、遠心分離または濾過処理を行わずに細胞断片や不溶性成分を含んだままの懸濁液として使用してもよい。 【0015】 海藻についてはタンパク質含量が多い海苔、ワカメ、コンブ等の海藻が用いられるが、タンパク質を一定以上含む海藻であれば、いずれでも用いることができる。 磨砕・抽出操作は連続式、バッチ式いずれも可能であるが、工業的には連続式で行う方が効率的である。 【0016】 磨砕剤としては、例えば海砂、アルミナ、ビーズなど、一般的に食品の製造に適したものがよいが、グラインダー方式の粉砕機では必ずしも磨砕剤の添加は必要ではない。 【0017】 海藻原料は予め細片または粉末状にしておくことが望ましいが、特に微粉にしておく必要はない。原料海藻は抽出処理前に加熱殺菌、高圧殺菌などの操作で殺菌処理しておくことが望ましい。また、磨砕抽出装置としては、グラインダー(石臼)方式の磨砕機、撹拌羽式の湿式の分散粉砕器などが工業的に使用できる。 【0018】 かかる方法により抽出した海藻抽出液は短時間の加熱処理により殺菌を行うことによって、栄養成分を損なうことなく食品として提供できる。また、抽出溶液を凍結乾燥により粉末化したり、あるいはデキストリンや乳糖などを賦形剤として加えて噴霧乾燥することによって顆粒化することもできる。 【0019】 以下に本発明の実施例および試験例を示す。 (実施例1) 海苔、ワカメおよびコンブの乾燥粉末各々4.5gに殺菌水50mlを加え、十分攪拌し、均一に練り上げた後、海砂(キシダ化学(株)製、30〜50メッシュ)6gを加え、自動乳鉢(「ニットー自動乳鉢」、日陶科学株式会社製)にて室温で30分間攪拌・磨砕する。次に水50mlを加え、1000 rpmで5分間遠心分離を行って海砂および細胞残渣を除去し、海藻抽出液を得た。 【0020】 これに対して、上記と同量の海藻、すなわち海苔、ワカメ、コンブの乾燥粉末各々4.5gを海砂を用いて15分間自動乳鉢で磨砕後、上記と同量の水を加えて室温で15分間抽出させる方法で海藻成分を抽出した。すなわちこの方法は、水の無い状態で磨砕を行う乾式磨砕である。 【0021】 表1に、上記の湿式磨砕と乾式磨砕の2つの方法によって海苔の抽出を行ったときの、糖およびビタミンCの抽出率を示す。糖の抽出率はいずれの方法も100%で差がなかったが、ビタミンCの抽出率は、湿式磨砕で100%、乾式磨砕で90%と差が出た。 【0022】 【表1】
【0023】 (実施例2) 高圧殺菌して1g当りの菌数が300個以下の海苔粉末10kgに、殺菌脱イオン水11リットルを加えて十分に攪拌し、均質化した後、グラインダー方式の粉砕機を用いて連続磨砕することによって抽出した。次に殺菌脱イオン水11リットルを加えて抽出液を得た。同様にしてワカメおよびコンブについても抽出を行ない、抽出液を得た。 【0024】 (実施例3) 実施例2で得た海苔抽出液、ワカメ抽出液およびコンブ抽出液をそれぞれ凍結乾燥して粉末状食品とした。 【0025】 (実施例4) 実施例2で得た海苔抽出液にデキストリンまたは乳糖を賦形剤として加えて噴霧乾燥し、顆粒状食品とした。 【0026】 (試験例1) 実施例1で製造した海苔、ワカメおよびコンブの各抽出液を凍結乾燥した後、高血圧自然発症ラット(SHR)に対して400mg/kg量を0.9%食塩水に溶かして経口投与した。コントロールとして0.9%食塩水のみを投与した。1群を5匹とし、収縮期血圧を尾動脈にて1時間ごとに測定した。その結果、投与2時間後、海苔抽出液では15mmHg、ワカメ抽出液では8mmHg、コンブ抽出液では5mmHg、の収縮期血圧の低下が認められた。 【0027】 (試験例2) 実施例2で製造した海苔抽出液を用いて血圧に対する影響を調べた。収縮期血圧140〜160mmHg、拡張期血圧90〜110mmHgの軽高血圧者10名について、2週間予備的に毎日一定の時間に自宅で簡易型血圧計で血圧を計測後、1日1回100mlの海苔抽出液を摂取してもらい、毎日一定の時間に1回血圧を測定してもらった。その結果を表2に示す。 【0028】 【表2】
【0029】 表2に示されるように、収縮期血圧は飲用開始後15日目には平均値で6mmHg、30日目には平均値で10mmHgの低下が認められた。一方、拡張期血圧は15日目には平均値で5mmHg、30日目には8mmHgの血圧低下が認められた。 【0030】 (試験例3) 実施例3で製造した海苔抽出液、ワカメ抽出液およびコンブ抽出液の各凍結乾燥物を用いて、コレステロールの軽減作用を調べた。 【0031】 ICR系マウスを用い、1群を7匹として次の試験を行った。MF粉末飼料にコレステロール0.5%、コール酸1%を添加したものを基礎飼料とし、コントロール群に投与した。試験群には上記基礎飼料にそれぞれ海苔抽出凍結乾燥物1%、ワカメ抽出凍結乾燥物2%、コンブ抽出凍結乾燥物2.5%を添加した飼料を投与した。4週間の投与期間後、血漿中の総コレステロール値および中性脂肪値を測定した。結果を表3に示す。 【0032】 【表3】
【0033】 表3に示すように、海苔、ワカメ、コンブの抽出液凍結乾燥物を添加した飼料はいずれも総コレステロール値および中性脂肪値の低下作用があり、特に海苔抽出液凍結乾燥物は効果が高いのが認められた。 【0034】 (試験例4) 実施例3で製造した海苔抽出液、ワカメ抽出液およびコンブ抽出液の各凍結乾燥物を用いて、ラットの肝機能への影響を調べた。 Wister系ラットを用い、コントロール群にコレステロール1%、コール酸1%を添加したMF粉末飼料とアルコール30%含有水を2週間自由摂取させ、アルコール性肝炎を生じさせた。試験群には、予めMF飼料に海苔抽出液凍結乾燥物2%、ワカメ抽出液凍結乾燥物3%、コンブ抽出液凍結乾燥物4%をそれぞれ添加したものを用い、それ以外はコントロール群と同様にして行った。それぞれ2週間自由摂取後のGOTおよびGPTを測定した。結果を表4に示す。 【0035】 【表4】
【0036】 表4に示すように各凍結乾燥物を添加した場合はいずれもGOTおよびGPTの低下が認められ、肝機能改善効果があることがわかった。 【0037】 (試験例5) 実施例3で製造した海苔抽出液、ワカメ抽出液およびコンブ抽出液の各凍結乾燥物を用いて、ウサギによる末梢血管拡張効果を調べた。 海苔抽出液の凍結乾燥物を4g、ワカメ抽出液の凍結乾燥物を4g、コンブ抽出液の凍結乾燥物を6g、それぞれ水10mlに溶かし、強制的にウサギに経口投与し、耳の末梢血管の拡張を肉眼的に観察した。別にコントロールとして水10mlのみを与えたウサギについて比較観察した。結果を表5に示す。投与後1時間でいずれの凍結乾燥物投与群でも末梢血管の拡張が観察された。 【0038】 【表5】
【0039】 (試験例6) 日常的に肩こりの症状がある男性4名および女性6名、計10名に、実施例1で製造した海苔抽出飲料を毎日100ml、3週間続けて飲用してもらった。その結果、10名中6名に肩こりの症状軽減が認められた。 【0040】 (試験例7) 22歳、30歳、45歳の3名の女性に実施例1で製造した海苔抽出液を100ml飲んでもらい、一定室温下安静状態で指先温度測定器により、経時的に指先温度を測定した。その結果、ほぼ30分ないし1時間後より指先温度が0.1〜0.3℃上昇することが認められた。 【0041】 (試験例8) 偏頭痛の症状がある男性4名および女性6名、計10名に、実施例1で製造した海苔抽出液を毎日100ml、2週間続けて飲用してもらった。その結果、4名は頭痛がほぼ解消し、3名は症状が軽減し、3名は改善が認められなかった。 【0042】 (試験例9) 便秘傾向のある女性16名を8名、8名の2群に分け、実施例1で製造した海苔抽出液またはワカメ抽出液の各々を毎日100ml、2週間続けて飲用してもらった。その結果、海苔抽出液摂取群では6名に、ワカメ抽出液摂取群では5名に便秘の改善が認められた。 【0043】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、海苔、ワカメ、コンブ等の海藻類から、タンパク質、ミネラル、ビタミンCなどの水溶性有効成分を、簡単な操作で、安定性よく、天然に近い各成分が共存した状態で、かつ高抽出率で抽出できる。また、この抽出液を摂取した場合は、血圧降下作用、コレステロール値および中性脂肪値低下作用、肝機能改善効果、末梢血管拡張に基づく作用、便秘改善作用等があり、液体のまま、あるいは粉末化もしくは顆粒化して、健康食品として用いることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】391017986 【氏名又は名称】株式会社白子
|
| 【出願日】 |
平成14年7月18日(2002.7.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100087332 【弁理士】 【氏名又は名称】猪股 祥晃
【識別番号】100081189 【弁理士】 【氏名又は名称】猪股 弘子
|
| 【公開番号】 |
特開2004−49072(P2004−49072A) |
| 【公開日】 |
平成16年2月19日(2004.2.19) |
| 【出願番号】 |
特願2002−209222(P2002−209222) |
|