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【発明の名称】 シュードモナス・フロレッセンスによる灰色かび病防除剤およびその防除方法
【発明者】 【氏名】稲見 俊一
【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内

【氏名】鈴木 恵
【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内

【氏名】安楽城 夏子
【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内

【氏名】長部 雅己
【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内

【氏名】谷川 峰子
【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内

【氏名】吉谷 敏
【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内

【要約】 【課題】本発明は、環境負荷が少なく、灰色かび病菌から植物の地上部を簡易且つ効率的に保護することができる微生物防除剤と、これを用いた防除法を提供することを課題とする。

【解決手段】本発明は、土壌分離の天然シュードモナス・フロレッセンス細菌の菌体又は培養物を含むことを特徴とする防除剤を、植物の地上部に処理することにより、灰色かび病を簡易且つ効率的に防除することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュードモナス・フロレッセンス種に属する細菌の菌株、MCIB−7(FERM P−19142)、MCIB−8(FERM P−19143)、MCIB−9(FERM P−19144)、MCIB−10(FERM P−19145)、MCIB−11(FERM P−19146)の少なくとも何れか1種の菌体又は培養物を含むことを特徴とする、灰色かび病防除剤。
【請求項2】
シュードモナス・フロレッセンス細菌の菌体が1×10個/g濃度以上含まれる請求項1記載の灰色かび病防除剤。
【請求項3】
シュードモナス・フロレッセンス細菌の菌体が1×10個/g〜1×1011個/g濃度含まれる請求項2記載の灰色かび病防除剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の灰色かび病防除剤を植物地上部に処理することを特徴とする、灰色かび病の防除方法。
【請求項5】
植物地上部が特に花部や茎葉部である、請求項4に記載の灰色かび病の防除方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は植物の地上部に処理することにより、灰色かび病菌に起因する植物の地上部病害を簡易且つ効率的に防除する防除剤および防除方法に関するものである。防除対象植物は作物(野菜、果菜、果樹、豆類、イモ類)にとどまらず、食用及び鑑賞用の花卉、街路樹や生垣に利用されるかん木等のアメニティ植物を含む。
【0002】
【従来の技術】
植物病害の主たる防除方法として、従来から数多くの化学薬剤が使用されて来ている。しかしながら、類似骨格を有する同作用系の化学薬剤の同種病害防除への頻繁な使用や過剰投与、撲滅効果の無い化学薬剤の中途半端な使用、多作用点を有する化学薬剤の欠如等、により化学薬剤に対する植物病原菌の耐性化問題が、話題にのぼらないことは過去20年にはなかった。特に、灰色かび病菌においては、化学薬剤3剤に耐性を持つ菌まで出現してきている。
【0003】
一方では昨今、化学薬剤の環境ホルモン的作用がにわかに疑問視され出し、消費者からの減又は無化学農薬作物へのニーズが高まり、有機農産物認証制度もその運用が正確化しかつ基準自体も厳格化してきている。このような状況下、以前から存在し続けたIPM(総合的病虫害防除)、すなわち化学薬剤による防除以外にも、物理化学的防除(太陽熱土壌消毒、紫外線カットフィルム、熱水土壌消毒、養液栽培での病原菌ろ過等)や、耕種的防除(輪作や病原菌クリーニングクロップや病害抵抗性品種の栽培、混植栽培等)や生物的防除(生物源天然物、天敵、拮抗微生物)等の組み合わせによる総合的病虫害管理への期待が再度高まりを見せている。なかでも生物的防除に対する期待度は大きくなってきている。
【0004】
近年、農園芸植物を各種病害から保護する方法として、安全性、効果の持続性を考慮して、各種病害を引き起こす病原菌と拮抗する微生物を用いる病害防除方法が用いられてきている。
農園芸植物の病害を防除するのに用いられてきた微生物として、トリコデルマ属、グリオクラディウム属、アンペロマイセス属、コニンシリュウム属、フザリウム属、ピシウム属、タラロマイセス属、カンディダ属等のカビ、ストレプトマイセス属の放線菌、バチルス属、シュウドモナス属、アグロバクテリウム属、エルビニア属に属する細菌等が挙げられ、これまでに、これらの微生物を含有する農園芸用殺菌剤組成物も数多く研究されて来てはいる。
【0005】
しかしながら、その多くは化学農薬でも難防除の土壌病害対象であり、その処理方法は土壌混和、土壌かん注、土壌散布等の土壌処理や、種子粉衣、種子浸漬、種子コーティング等の種子処理、移植前の植物根のディッピング処理(バクテリゼーション)が多く、いわゆる作物地下部への処理が殆どであった。
【0006】
このうち国内でシュードモナス属に属する細菌については、例えば、特開昭60−186230号公報では、シュードモナス・ソラナセアルム種(M4S菌株)によるナス科植物青枯れ病防除例、特開昭63−190806号公報では、シュードモナス・フロレッセンス種(SCBNoの3菌株)によるウリ科野菜の苗立枯病防除例、特開昭63−246306号公報では、シュードモナス・グルメ種菌株によるナス科野菜の土壌病害防除例、特開平1−42410号公報では、シュードモナス・グラディオリ種(M−2196菌株)による土壌病害防除例、特開平1−193203号公報では、シュードモナス・フロレッセンス種(MD−4f菌株)によるバレイショそうか病防除例、特開平2−59504号公報では、シュードモナス・グルメ種菌株によるフザリウム病の防除例、特開平3−220108号公報では、シュードモナス・バンディー種(VA−1316菌株)によるフザリウム病の防除例、特開平7−25716号公報では、シュードモナス・セパシア種(AGF−158菌株)によるイネ苗床病害の防除例、特開平9−37771号公報では、シュードモナス・オーレオファシエンス種(TB−57菌株)による黒根病防除例、特開平9−37772号公報では、シュードモナス・フロレッセンス種(H−3982菌株)による黒根病防除例、特開平9−124427号公報では、シュードモナス属・エスピー(CAB02菌株)によるイネ苗立枯れ性病害、特開平9−124427号公報では、シュードモナス属エスピー(CAB02菌株)によるイネ苗立枯れ性病害、特開平9−255513号公報では、シュードモナス属エスピー(CGF−72菌株)によるフザリウム病、バーティシリウム病防除例等が報告されている。
【0007】
地上部処理による地上部病害防除例は特開平2−149507号公報では、シュードモナス・フロレッセンス種とシュードモナス・プチダ種の菌株による小麦の茎葉汚染病害の防除例、特開平10−007515号公報では、キチン分解能力のあるシュードモナス属の4種の細菌によるセントポーリアのうどんこ病防除例が報告されているが、土壌病害防除微生物資材に比べると圧倒的に少ない。
【0008】
さらに、実際の農業場面を含む使用場面において、使用者が満足のゆく高い効果を発揮できる微生物による植物病害防除剤はいまだ乏しく、現在もなお化学薬剤防除に頼らなければならないのが実状である。一方、化学薬剤の環境への影響や、化学薬剤耐性菌出現頻度の増加の危惧も払拭されていない。環境負荷の少ない総合的防除(前記載)に貢献でき、且つ防除活性の高い微生物による植物病害防除剤の不足は否定できない。またこの不足は、化学薬剤耐性菌出現頻度の高い地上部病害分野においてなおさら顕著である。
【0009】
【特許文献1】特開昭60−186230号公報
【特許文献2】特開昭63−190806号公報
【特許文献3】特開昭63−246306号公報
【特許文献4】特開平1−42410号公報
【特許文献5】特開平1−193203号公報
【特許文献6】特開平2−59504号公報
【特許文献7】特開平3−220108号公報
【特許文献8】特開平7−25716号公報
【特許文献9】特開平9−37771号公報
【特許文献10】特開平9−37772号公報
【特許文献11】特開平9−124427号公報
【特許文献12】特開平9−124427号公報
【特許文献13】特開平9−255513号公報
【特許文献12】特開平2−149507号公報
【特許文献14】特開平10−007515号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、境負荷の少ない総合的防除(前記載)に貢献でき、且つ防除活性の高い微生物による植物病害防除剤を提供することにある。
【0011】
本発明の目的は、土壌分離シュードモナス・フロレッセンスに属する細菌の菌体又は培養物を含む防除剤を提供することにあり、これら防除剤を植物地上部に処理することにより、灰色かび病を簡易且つ効率的に防除する方法を提供することにある。
【0012】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは、このような状況を鑑み、化学薬剤耐性菌の出現頻度の高い灰色かび病地上部病害防除分野に、使用者が満足のゆく、より高活性な未利用の微生物素材を提供すべく、鋭意検討を重ねた。その結果、土壌分離シュードモナス・フロレッセンスに属する細菌の菌体又は培養物を含む防除剤を、植物地上部に処理することにより、灰色かび病を簡易且つ効率的に防除することを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、以下に示す灰色かび病防除剤及びその防除方法である。
(1)シュードモナス・フロレッセンス種に属する細菌の菌株、MCIB−7(FERM P−19142)、MCIB−8(FERM P−19143)、MCIB−9(FERM P−19144)、MCIB−10(FERM P−19145)、MCIB−11(FERM P−19146)の少なくとも何れか1種の菌体又は培養物を含むことを特徴とする灰色かび病防除剤。(2)シュードモナス・フロレッセンス細菌の菌体が1×10個/g濃度以上、好ましくは1×10乗個/g〜1×1011個/g含まれる請求項1記載の灰色かび病防除剤。(3)(1)〜(2)のいずれか一項に記載の灰色かび病防除剤を植物地上部、特に花部や茎葉部に処理する、灰色かび病の防除方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明に用いる微生物
先ず本発明に用いた微生物であるシュードモナス・フロレッセンス(Pseudomonas fluorescens)菌株は、MCIB−7菌株、MCIB−8菌株、MCIB−9菌株、MCIB−10菌株,MCIB−11菌株であり、全て千葉県茂原市の土壌から分離したものである。これらの菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番1 中央第6)に、各々FERM P−19142、FERM P−19143、FERM P−19144、FERM P−19145、FERM P−19146の受託番号で平成14年12月9日から受託されている。これら菌株の同定時の分類学的諸性質を第1表、第2表に示す。
【0015】
【表1】


【0016】
【表2】


【0017】
<2>本発明に使用する微生物の培養方法
本発明の細菌の培養は、例えば、往復式振盪培養、ロータリー培養、ジャーファメンター培養、培養タンク培養等の液体培養やシュードモナスに属する細菌の通常の培養方法に準じて行うことができる。
【0018】
培養に用いる培地は、生育しやすい培地であれば何でもよく、例えば炭素源としてグルコース、デンプン、デキストリン、シュークロース、糖蜜等の糖類、窒素源としては酵母エキス、コーン・スティープ・リーカー、肉エキス、小麦胚芽、ペプトン類、バレイショエキス、大豆粉等の有機窒素源が好ましいが、塩安,硝安、硫安等の無機塩も利用できる。また、無機塩としてリン酸、カリウム、カルシウム、マンガン、マグネシウム、鉄等の塩類、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸第一鉄などを配合することができる。また、必要に応じて消泡剤、バッファー等の種々の添加剤を用いることも可能である。
【0019】
培養の条件は特に限定されるものではないが、培養は液体培養では通気撹拌や振盪培養等の好気的条件下で行うことが好ましく、温度は15〜30℃、好ましくは25〜30℃、pHは5〜8、より好ましくは6〜8の範囲で行う。
【0020】
培養が終了したら培養物、例えば培養液から遠心分離等の通常使用されている方法で菌体を分離する。また、培養液そのものを灰色かび病の防除にそのままあるいは水などで希釈して用いることも出来る。
【0021】
<3>本発明の灰色かび病防除剤
本発明のシュードモナス・フロレッセンス細菌株の「菌体又は培養物」の「培養物」とは、上記で説明したような培養で得られた菌体を含む全てのものを意味する。すなわち「菌体又は培養物」を含む防除剤は、(菌体含有培養物)をそのまま使用することができるし、培養物から菌体を除いた培養液を使用することもできるし、菌体のみでも使用できる。この培養物(又は培養液)は、適宜希釈または濃縮して使用することができる。菌体を液体培地で培養して得た培養物は、懸濁液の状態で植物の葉や茎に散布することができるため、植物の葉や茎や花等の地上部処理に好ましい。
【0022】
植物の地上部に散布する際には、長期的に防除効果を得るためには、菌体を多数含む処理剤を散布するのが好ましい。好ましい処理時の菌体濃度は1×10の乗個/g濃度以上で、更に好ましくは1×10個/g〜1×10個/g濃度にして散布するのが好ましい。水和剤の例で示すと1×10個/g〜1×10の11個/gの濃度の防除剤を水で100倍以上に適宜希釈し、上記濃度で散布するのが好ましい。
【0023】
本発明の灰色かび病防除剤は、通常の化学農薬製剤や微生物製剤で一般的(他社権利範囲外)に利用されて来た製造方法に従って、シュードモナス・フロレッセンス細菌の「菌体又は培養物」を、必要に応じて各種任意成分と共に、粉剤、水和剤、顆粒水和剤、乳剤、液剤、フロアブル、塗布剤等として使用できる。
【0024】
上記任意成分としては、固体担体として、ベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土、酸性白土、タルク類、パーライト、バーミキュライト等の鉱物質微粉末、硫酸塩、尿素、塩化塩、硝酸塩等の無機塩、フスマ、キチン、多糖類、米糠、小麦粉等の有機物微粉末等を、また、補助剤として、カゼイン、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸、糖類、合成高分子(ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸類等)、ベントナイト等の固着剤や分散剤、その他の成分として、プロピレングリコール、エチレングリコール等の凍結防止剤、キサンタンガム等の天然多糖類、ポリアクリル酸類等の増粘剤、また展着剤、乳化剤、着色剤等を添加することができる。
【0025】
この様にして得られる本発明の灰色かび病防除剤の地上部防除対象植物は、作物(野菜、果菜、果樹、豆類、イモ類)にとどまらず、食用及び鑑賞用の花卉、街路樹や生垣に利用されるかん木等のアメニティ植物を含む。防除対象病原菌は灰色かび病菌(Botrytis cinerea)である。以下に本発明が対象とする、具体的植物例を示す。
<野菜類・果菜類>
例えば、トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ等のナス科野菜、キュウリ、カボチャ等のウリ科野菜、キャベツ、タマネギ、ネギ、アスパラガス、レタス、ハス、イチゴ等の灰色かび病、
<果樹>
例えば、カンキツ類、ブドウ、リンゴ、ナシ、モモ、ウメ、オウトウ、カキ、ビワ、イチジク等の灰色かび病、
<豆類、イモ類、特用作物>
例えば、ジャガイモ、サツマイモ、アズキ、インゲン、エンドウ、ラッカセイ、タバコ、チャ、アマ、タイマ、ケナフ、ホップ、クワ等の灰色かび病、
<花卉類・かん木・街路樹・アメニティ植物等>
例えば、カーネーション、シクラメン、キク、バラ、トルコギキョウ、スターチス、アスター、キンギョソウ、ゼラニウム、シャクヤク、チューリップ、ダリア、スイセン、カトレア、スミレ、ツツジ、シャクナゲ、キンモクセイ、キョチクトウ、ボタン、ツバキ、クチナシ、ヤナギ、アオキ、ハナミズキ等の灰色かび病が挙げられる。
【0026】
<4>本発明の灰色かび病防除方法
本発明の病害防除法においては、上記の様な各種栽培植物の灰色かび病を防除する目的で、上記本発明の病害防除剤を栽培植物の地上部(花部、茎葉部)に施用する。
【0027】
施用の方法としては、剤型等の使用形態、作物や病害によって適宜選択され、例えば、地上液剤散布、地上固形散布、空中液剤散布、空中固形散布、施設内施用等の茎葉花部への散布処理や、その他の単花処理、栽培植物の傷口箇所、剪定部への塗布処理等の方法を挙げることができる。
【0028】
また、栽培植物への施用に際して、殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺菌剤、植物生長調節剤、液肥、葉面散布剤等を混合施用、あるいは混合せずに交互施用、または同時施用することも可能である。
【0029】
本発明の防除剤施用量は、病害の種類、適用植物の種類、防除剤の剤型等によって異なるため一概には規定できないが、例えば、水和性の剤を水で希釈して地上部散布する場合には、その施用時の菌体濃度は、通常約1×10個/mL以上であり、好ましくは約1×10個/mL〜1×10個/mLであり、施用量は、好ましくは50〜500L/10aである。また粉剤等はなんら希釈することなく製剤のままで施用することも可能であり、地上散布する場合、菌体の施用量が、5×1011個〜5×1014個/10a程度となるように散布することが好ましい。
【0030】
【実施例】
以下実施例により、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
【0031】
<培養製造例>
実施例1(培養製造例1)イーストエキス(DIFCO社)5gとポリペプトン(日本製薬社)10gと塩化ナトリウム5gを蒸留水1L当りに添加し、PH7.0前後に調整したイーストペプトン培養液を、500mlの振とう用フラスコに100ml入れ滅菌後、供試微生物菌株を無菌的に移植し、30℃、120rpmの条件で2日間ロータリー培養した。フラスコの培養本数は適宜増やした。
【0032】
実施例2(培養製造例2)グルコース(和光純薬工業)10gとポリペプトン(日本製薬社)10gと硫酸マグネシウム七水和物(和光純薬工業)1.5g、リン酸水素ニカリウム(和光純薬工業)1.5gを蒸留水1L当りに添加し、PH7.0前後に調整した培養液を、500mlの振とう用フラスコに100ml入れ滅菌後、供試微生物菌株を無菌的に移植し、30℃、120rpmの条件でロータリー培養した。得られた培養物約100mLを前記同培地5Lの入った10L容の発酵槽に植菌し、好気的条件下で30℃で40時間培養して培養液を得た。得られた約5Lの培養液を常法に従って遠心分離(6000rpm、20分間)濃縮して菌体培養物の濃縮物(約150g)を得た。この菌体培養濃縮物を減圧下で乾燥して粉砕すれば菌体培養濃縮物の乾燥物とすることができる。また、直ぐに使用しない場合は乾燥前に凍結貯蔵することもできる。得られた菌体培養濃縮物又はその乾燥物の一部を製剤に使用した。
【0033】
<製剤例>
実施例3(製剤例1)前記(培養製造例1)で培養して得られた菌体培養濃縮物に、キサンタンガムを混ぜ、5×1010個/mlになるようにして、簡易液剤を調整した。
【0034】
実施例4(製剤例2)前記(培養製造例2)で培養して得られた菌体培養濃縮物70部、グルコース30%水溶液30部を加え、凍結乾燥し、混合解砕後、約1×1011個/gの簡易水和剤を得た。
実施例5(製剤例3)前記(製剤例2)で得られた菌体乾燥物75部、ラジオライト(焼成ケイソウ土)10部、リグニンスルホン酸ナトリウム1部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、ホワイトカーボン13部を混合解砕し、水和剤100部を得た。得られた剤中の菌体濃度を測定したところ約5×1010個/gであった。
【0035】
<病害防除試験例>
(試験例1)インゲン灰色かび病防除試験(病原菌:RS菌とRR菌2種)
温室内にて直径7.5cmのプラスチックポットに子葉の展開まで生育させたインゲン(品種:グリーントップ)に製剤例1に準じて調整した懸濁状液体製剤を1×10個/mlになるように水で希釈し、6ポットあたり50mlづつスプレーガンにて散布した。薬液が完全に乾いた散布1日後に、予めPDA培地上で培養した灰色かび病菌(MBC耐性・ジカルボキシイミド系薬剤感受性:RS菌)及び(MBC耐性・ジカルボキシイミド系薬剤耐性:RR菌)2種から各々調整した培養液含有分生胞子懸濁液(1×10個/ml)を各々3ポットづつ噴霧接種した。接種後、20〜23℃、湿度95%以上の人工気象室内に6日間保った後、調査を実施した。調査はインゲン1葉当りに病斑が占める面積を次の指標に従って行った。なお、比較市販剤例として灰色かび病剤として登録されている市販微生物農薬(B剤)についても、同濃度の試験を実施した。市販ジカルボキシイミド系化学薬剤(S剤)の結果についても第3表に示した。表中の各菌株の防除効果は下記の防除価に基づきS、A、B,Cで表示した。
【0036】


各処理区および無処理区の平均値を発病度とした。防除価は以下の様に算出した。
【0037】
防除価=(1−処理区の発病度/無処理区の発病度)×100
防除効果=S:防除価80以上、A:防除価80未満〜60以上、B:防除価60未満〜40以上、C:防除価40未満
【0038】
【表3】


【0039】
(試験例2)キュウリ灰色かび病防除試験(病原菌:RS菌)
温室内にて直径7.5cmのプラスチックポットに2葉期まで生育させたキュウリ(品種:相模半白)に製剤例1に準じて調整した懸濁状液体製剤を1×10個/mlになるように水で希釈し、3ポットあたり30mlづつスプレーガンにて散布した。薬液が完全に乾いた散布1日後に、予めPDA培地上で培養した灰色かび病菌(MBC耐性:RS菌)から調整した培養液含有分生胞子懸濁液(1×10個/ml)を本葉上に噴霧接種し、20〜23℃、湿度95%以上の人工気象室内に7日間保った後、調査を実施した。調査はキュウリ1葉当りに病斑が占める面積を次の指標に従って行った。なお、比較市販剤例として灰色かび病剤として登録されている市販微生物農薬(B剤)についても、同濃度に希釈し、同じ試験を実施した。調査は試験例1と同様の方法で行い、結果を第4表に示した。表中の各菌株の防除効果についても試験例1と同様に表示した。
【0040】
【表4】


【0041】
(試験例3)インゲン開花期灰色かび病防除試験(灰色かび病菌:RR菌)
温室内にて1/5000aのワグネルポットに開花期まで生育させたインゲン(品種:グリーントップ)に、製剤例2に準じて調整した水和剤を所定濃度(2×10個/ml)に水で希釈し、4ポットあたり150mlづつスプレーガンにて1週間間隔で2回散布した。薬剤処理1日後に、予めPDA培地上で培養した灰色かび病菌(MBC耐性・ジカルボキシイミド系薬剤耐性:RR菌)から調整した培養液含有分生胞子懸濁液(1×10個/ml)を、花部を中心に1回/1週間で計2回噴霧接種し、18〜23℃、湿度90%以上の温室内恒温湿室に最終接種後10日間保った後、調査を実施した。調査は各ポットの発病莢率(インゲン莢総数に占めるインゲン発病莢数)を調査し、各処理区の平均発病莢率を求め、以下の様に防除価を算出して、防除価の結果を第5表に示した。比較剤例として灰色かび病剤として登録されている市販微生物農薬(B剤)の同濃度処理と市販ジカルボキシイミド系化学薬剤(S剤)の結果も第5表に示した。
防除価=(1−処理区の発病莢率/無処理区の発病莢率)×100
【0042】
【表5】


【0043】
(試験例4)ナス開花期灰色かび病防除試験(灰色かび病菌:RR菌)
温室内にて1/5000aのワグネルポットに開花期まで生育させたナス(品種:千両ニ号)に、製剤例3に準じて調整した水和剤を所定濃度(2×10個/ml)に希釈して、4ポットあたり200mlづつスプレーガンにて1週間間隔で2回散布した。薬剤処理1日後に、予めPDA培地上で培養した灰色かび病菌(MBC耐性・ジカルボキシイミド系薬剤耐性:RR菌)から調整した培養液含有分生胞子懸濁液(1×10個/ml)を、花部を中心に1回/1週間で計2回噴霧接種し、15〜30℃、湿度90%以上の温室内湿室に最終接種後14日間保った後、調査を実施した。調査は各ポットの発病果率(ナス果総数に占める発病果率)を調査し、各処理区の平均発病果率を求め、以下の様に防除価を算出して、結果を第6表に示した。比較剤例として灰色かび病剤として登録されている市販微生物農薬(B剤)の同濃度処理と市販ジカルボキシイミド系化学薬剤(S剤)の結果も第6表に示した。
防除価=(1−処理区の発病果率/無処理区の発病果率)×100
【0044】
【表6】


【0045】
(試験例5)トマト開花期灰色かび病防除試験(灰色かび病菌:RS菌)
温室内にて1/5000aのワグネルポットに開花期まで生育させたトマト(品種:ハウス桃太郎)に、製剤例2に準じて調整した水和剤を所定濃度(2×10個/ml)に希釈して、4ポットあたり150mlづつスプレーガンにて1週間間隔で2回散布した。薬剤処理1日後に、予めPDA培地上で培養した灰色かび病菌(MBC耐性・ジカルボキシイミド系薬剤感受性:RS菌)から調整した培養液含有分生胞子懸濁液(1×10個/ml)を、花部を中心に1回/1週間で計2回噴霧接種し、15〜30℃、湿度90%以上の温室内湿室に最終接種後7日間保った後、調査を実施した。調査は各ポットの発病果率(トマト幼果総数に占める発病幼果率)を調査し、各処理区の平均発病果率を求め、以下の様に防除価を算出して、結果を第7表に示した。比較剤例として灰色かび病剤として登録されている市販微生物農薬(B剤)の同濃度処理と市販ジカルボキシイミド系化学薬剤(S剤)の結果も第7表に示した。
防除価=(1−処理区の発病果率/無処理区の発病果率)×100
【0046】
【表7】


【0047】
(試験例6)イチゴ開花期灰色かび病防除試験(灰色かび病菌:RS菌)
温室内にて5寸鉢に開花期まで生育させたイチゴ(品種:女峰)に、製剤例2に準じて調整した水和剤を所定濃度(2×10個/ml)に希釈して、4ポットあたり150mlづつスプレーガンにて1週間間隔で2回散布した。薬剤処理1日後に、予めPDA培地上で培養した灰色かび病菌(MBC耐性・ジカルボキシイミド系薬剤耐性:RR菌)から調整した培養液含有分生胞子懸濁液(1×10個/ml)を、花部を中心に1回/1週間で計2回噴霧接種し、15〜30℃、湿度90%以上の温室内湿室に最終接種後10日間保った後、調査を実施した。調査は各ポットの発病果率(イチゴ幼果総数に占める発病果率)を調査し、各処理区の平均発病果率を求め、以下の様に防除価を算出して、結果を第8表に示した。比較剤例として灰色かび病剤として登録されている市販微生物農薬(B剤)の同濃度処理の結果も第8表に示した。
防除価=(1−処理区の発病果率/無処理区の発病果率)×100
【0048】
【表8】


【0049】
(試験例7)シクラメン灰色かび病防除試験(灰色かび病菌:RS菌)
温室内にて5寸鉢に開花期まで生育させたシクラメン(品種:ボレロ)に製剤例2に準じて調整した簡易水和剤を2×10個/mlになるように水で希釈し、3ポットあたり50mlづつスプレーガンにて散布した。薬液が乾いた後に、予めPDA培地上で培養した灰色かび病菌(MBC耐性:RS菌)から調整した培養液含有分生胞子懸濁液(1×10個/ml)を花部中心に噴霧接種し、20〜23℃、湿度95%以上の人工気象室内に7日間保った後、調査を実施した。調査は花弁部一花当りに病斑が占める面積を調査し、試験例1と同様に算出し、同様に結果を第9表に表示した。比較剤例として灰色かび病剤として登録されている市販微生物農薬(B剤)についても、同濃度の同試験を実施した。
【0050】
【表9】


【0051】
【発明の効果】
本発明の、シュードモナス・フロレッセンス細菌の菌体又は培養物を含む防除剤は、植物の地上部(花部や茎葉部)に処理することにより、化学薬剤耐性菌の出現頻度の高い灰色かび病を、簡易且つ効率的に防除することができ、化学薬剤耐性菌をも防除することが可能である。
【出願人】 【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
【住所又は居所】東京都港区東新橋一丁目5番2号
【出願日】 平成15年5月23日(2003.5.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2004−346028(P2004−346028A)
【公開日】 平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願番号】 特願2003−145933(P2003−145933)